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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087360
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】播種装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/08 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
A01C7/08 320V
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201696
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】306017014
【氏名又は名称】地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】521545802
【氏名又は名称】株式会社小林精機
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 義英
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇人
【テーマコード(参考)】
2B054
【Fターム(参考)】
2B054AA01
2B054AA03
2B054BA01
2B054BB03
2B054CA05
2B054DA10
2B054DB03
2B054DD04
2B054DD24
(57)【要約】
【課題】 設置を容易にするとともに、種々のセルトレイに対応できるようにして汎用性の向上を図る。
【解決手段】 開口2を上にして設置面Gに設置されたセルトレイTの上方をセルトレイTの縦側縁4に沿う方向に移動させられる本体10と、本体10に設けられ本体10の移動方向に直交する方向の一列に並ぶ各セル1に同時に種子Wを投入可能な種子投入部20と、本体10に設けられ設置面G上を走行して本体10を移動させる走行機構100とを備え、走行機構100による本体10の移動過程で、種子投入部20により本体10の移動方向上位のセル列の各セルから下位のセル列の各セルに順に種子Wを投入させるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上開放の開口を有し種子が入れられるポット状のセルが所定間隔で行列状に設けられ互いに平行な一対の横側縁及び該横側縁に直交する互いに平行な一対の縦側縁を有したセルトレイの当該セルに種子を播種する播種装置において、
上記開口を上にして設置面に設置されたセルトレイの上方を該セルトレイの横側縁及び縦側縁の何れか一方に沿う方向に移動させられる本体と、該本体に設けられ該本体の移動方向に直交する方向の一列に並ぶ各セルに同時に種子を投入可能な種子投入部と、上記本体に設けられ上記設置面上を走行して該本体を移動させる走行機構とを備え、該走行機構による上記本体の移動過程で、上記種子投入部により上記本体の移動方向上位のセル列の各セルから下位のセル列の各セルに順に種子を投入させるようにしたことを特徴とする播種装置。
【請求項2】
上記走行機構を、上記本体の移動方向両側に夫々設け、上記本体に、上記セルトレイの両側縁に夫々対峙して該本体の走行時に該セルトレイを相対的にガイドする一対のガイド板を設けたことを特徴とする請求項1記載の播種装置。
【請求項3】
上記一対のガイド板間の間隔を調整する間隔調整手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の播種装置。
【請求項4】
上記一対のガイド板の上記本体の移動方向先端部を互いに拡開する方向に折曲形成したことを特徴とする請求項2または3記載の播種装置。
【請求項5】
上記種子投入部は上記セルトレイの列に種子を投入するための投入駆動部を備え、上記走行機構を駆動する走行駆動部を備え、該走行駆動部を制御するとともに、上記種子投入部が上記セルトレイの列に種子を投入する際、一時的に本体の移動を停止させる機能を備えた走行駆動制御手段を有した制御部を備えたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の播種装置。
【請求項6】
上記セルトレイの側縁に直交する方向のセルの列を検知するセンサを設け、上記走行駆動制御手段は、上記センサがセルの列を検知したとき上記走行機構の駆動を一時的に停止することを特徴とする請求項5記載の播種装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記投入駆動部を制御するとともに、上記走行駆動制御手段が上記本体の移動を一時的に停止している間に該投入駆動部を作動させる機能を備えた投入駆動制御手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の播種装置。
【請求項8】
上記種子投入部は、複数の種子が供給され供給された種子が載置される平面状の載置面を有したベースと、該ベースの載置面に複数の種子を供給する供給部と、該ベースの載置面上を所定方向に沿って進退動可能にスライドし進出時に上記供給部から供給された該載置面上の種子から上記セルに投入する種子を受けて所定間隔で一列に整列させるスライド体と、上記ベースに設けられ上記スライド体の進出過程で上記一列に整列させた種子を上記セルに向けて落下させて排出する排出部とを備えて構成し、上記投入駆動部は、上記スライド体を駆動して進退動させることを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の播種装置。
【請求項9】
上記排出部を、上記ベースに設けられ上記セルトレイのセルの列方向ピッチに対応したピッチで列設され種子が落下可能な複数の落下穴を備えた排出板を備え、上記ベースに、上記排出板を着脱可能に保持する排出板保持部を設け、該排出板保持部に落下穴のピッチの異なる複数種の排出板を選択的に保持可能にしたことを特徴とする請求項8記載の播種装置。
【請求項10】
上記スライド体に、該スライド体の進退動方向に交叉する方向に上記セルトレイのセルの列方向ピッチに対応したピッチで列設され該スライド体の進出時に上記種子を受けて保持する複数の受け凹部を設けるとともに、該受け凹部で受けられなかった余分の種子を上記排出部から排出させないように寄せ分ける寄せ分け手段を備え、上記スライド体を着脱可能に保持するスライド体保持部を設け、該スライド体保持に受け凹部のピッチの異なる複数種のスライド体を選択的に保持可能にしたことを特徴とする請求項9記載の播種装置。
【請求項11】
上記本体に、上記ベースの載置面に複数の種子を供給する供給部を設け、該供給部を、入口及び出口を有し種子を収容する容器と、上記容器の出口を一時的に開にして種子を供給可能にするシャッタ機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項10記載の播種装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗用のセルトレイに野菜や花等の植物の種子を入れるための播種装置に係り、特に、セルトレイを屋内外の地面等の設置面に置いた状態で播種可能な播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の播種装置としては、例えば、実開昭60-77312号公報(特許文献1)に記載の播種装置が知られている。図16(a)に示すように、この播種装置Haは、セルトレイ200のセル201に野菜や花等の植物の種子を播種するものである。セルトレイ200は、上開放の開口202を有し種子が入れられるポット状のセル201が所定間隔で行列状に設けられ互いに平行な一対の横側縁203及びこの横側縁203に直交する互いに平行な一対の縦側縁204を有して構成されている。
【0003】
この播種装置Haは、開口202を上にして設置面Gに設置されたセルトレイ200の上側をこのセルトレイ200の縦側縁204に沿う方向に移動させられる本体210と、本体210に設けられ本体210の移動方向に直交する方向に並ぶ一列の各セル201に同時に種子を投入可能な種子投入部211と、本体210に設けられ本体210の移動方向に沿うセルトレイ200の両縦側縁204上を転動し本体210を移動させる複数の車輪212とを備えて構成されている。そして、車輪212をセルトレイ200の縦側縁204上に転動させて本体210を移動させながら本体210の移動方向上位の列から下位の列の各セル201に順に種子を投入せしめるようにしている。この播種装置Haによれば、セルトレイ200を屋内外の地面等の設置面に置いた状態で播種できるという利点がある。
【0004】
また、従来においては、例えば、特開昭62-272906号公報(特許文献2)に記載の播種装置も知られている。図16(b)に示すように、この播種装置Hbは、上記と同様の本体220と、本体220に設けられる上記と同様の種子投入部221とを備えている。また、本体220を移動させるための複数のスプロケット222と、スプロケット222が噛合して転動可能な一対のレール223と備えている。そして、一対のレール223をセルトレイの両縦側縁204上に載置し、スプロケット222をレール223上に転動させて本体220を移動させながら本体220の移動方向上位の列から下位の列の各セル201に順に種子を投入せしめるようにしている。この播種装置Hbにおいても、セルトレイ200を屋内外の地面等の設置面Gに置いた状態で播種できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-77312号公報
【特許文献2】特開昭62-272906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の前者の播種装置Haにあっては、セルトレイ200を屋内外の地面等の設置面Gに置いた状態で播種できる利点はあるものの、セルトレイ200に本体210を載せるので強度の高いセルトレイ200にしか使用できないことから、汎用性に劣るという問題がある。即ち、上記前者の従来の播種装置Haにあっては、車輪212をセルトレイ200の縦側縁204上を転動させて本体210を走行させるので、セルトレイ200の側縁がプラスチックで薄く形成されたものにあっては強度が弱いので潰れてしまうことから対応できない。また、縦側縁204に沿って車輪212があるので、これが邪魔になって、縦側縁204に沿うセル201(A)に種子を入れにくくなっているという問題もある。
【0007】
一方、上記後者の従来の播種装置Hbにおいても、レール223をセルトレイ200の両縦側縁204上に載置するので、前者の播種装置Haと同様に、セルトレイ200の側縁がプラスチックで薄く形成されたものにあっては強度が弱いので潰れてしまうことから対応できないという問題がある。また、縦側縁204に沿ってレール223を載せるので、これが邪魔になって、縦側縁204に沿うセル201(A)に種子を入れにくくなっているという問題もある。更に、レール223を備えているのでそれだけ装置が複雑になり、設置も面倒になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、設置を容易にするとともに、種々のセルトレイに対応できるようにして汎用性の向上を図った播種装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するための本発明の播種装置は、上開放の開口を有し種子が入れられるポット状のセルが所定間隔で行列状に設けられ互いに平行な一対の横側縁及び該横側縁に直交する互いに平行な一対の縦側縁を有したセルトレイの当該セルに種子を播種する播種装置において、
上記開口を上にして設置面に設置されたセルトレイの上方を該セルトレイの横側縁及び縦側縁の何れか一方に沿う方向に移動させられる本体と、該本体に設けられ該本体の移動方向に直交する方向の一列に並ぶ各セルに同時に種子を投入可能な種子投入部と、上記本体に設けられ上記設置面上を走行して該本体を移動させる走行機構とを備え、該走行機構による上記本体の移動過程で、上記種子投入部により上記本体の移動方向上位のセル列の各セルから下位のセル列の各セルに順に種子を投入させるようにした構成としている。
【0010】
ここで、走行機構としては、例えば、設置面を転動する車輪を備えた車輪型の機構、設置面に接触する帯体を有したクローラ型の機構、設置面を歩行する脚を備えた脚型の機構、あるいは、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0011】
これにより、本体は設置面上を走行する走行機構により移動させられ、この本体の移動過程において、種子投入部により本体の移動方向上位のセル列の各セルから下位のセル列の各セルに順に種子が投入される。この場合、走行機構は設置面上を走行するので、従来のようにレールを用いる必要がなく、それだけ、設置が容易になる。また、従来のようにセルトレイ上を走行することはないので、セルトレイを潰すような事態が生じることがなく、そのため、プラスチック製の比較的強度の弱いセルトレイにも対応することができ、汎用性を大幅に向上させることができる。更に、従来のようにセルトレイの側縁上に車輪が転動したり、レールが載置されることがないので、セルトレイの側縁側において邪魔になるものがなく、そのため、セルトレイの側縁側のセルにも確実に種子を投入することができる。このようにして、セルトレイを屋内外の地面等の設置面に置いた状態で播種できる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記走行機構を、上記本体の移動方向両側に夫々設け、上記本体に、上記セルトレイの両側縁に夫々対峙して該本体の走行時に該セルトレイを相対的にガイドする一対のガイド板を設けた構成としている。これにより、本体が移動する際、セルトレイとの位置関係が多少ずれても、ガイド板がセルトレイの側縁に当接してガイドすることから、本体をセルトレイの側縁に沿う方向に確実に移動させることができ、そのため、種子をトレイのセルに確実に投入することができるようになる。
【0013】
この場合、上記一対のガイド板間の間隔を調整する間隔調整手段を備えたことが有効である。セルトレイには、大きさが異なり、その幅も異なるものが種々あるが、間隔調整手段によってセルトレイの幅に合わせてガイド板間の間隔を調整できるので、本体をセルトレイの側縁に沿う方向に確実に移動させることができる。また、種々の大きさのセルトレイに対応できるので、この点でも、汎用性を向上させることができる。
【0014】
また、この場合、上記一対のガイド板の上記本体の移動方向先端部を互いに拡開する方向に折曲形成したことが有効である。本体をセルトレイに向けて移動させた際、セルトレイの端部がガイド板の先端部に当接すると、セルトレイが本体のガイド板間に相対的に導かれるので、これによっても、本体をセルトレイの側縁に沿う方向に確実に移動させることができる。
【0015】
また、必要に応じ、上記種子投入部は上記セルトレイの列に種子を投入するための投入駆動部を備え、上記走行機構を駆動する走行駆動部を備え、該走行駆動部を制御するとともに、上記種子投入部が上記セルトレイの列に種子を投入する際、一時的に本体の移動を停止させる機能を備えた走行駆動制御手段を有した制御部を備えた構成としている。これにより、制御部の走行駆動制御手段により、一時的に本体の移動を停止するので、セルトレイのセル列の各セルに種子を投入する際、投入駆動部からの種子を確実にセル内に投入することができるようになる。
【0016】
更に、必要に応じ、上記セルトレイの側縁に直交する方向のセルの列を検知するセンサを設け、上記走行駆動制御手段は、上記センサがセルの列を検知したとき上記走行機構の駆動を一時的に停止する構成としている。センサによりセルを検知して走行体を停止させるので、走行体の停止位置を正確にすることができ、この点でも、セルトレイのセル列の各セルに種子を投入する際、投入駆動部からの種子を確実にセル内に投入することができるようになる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記制御部は、上記投入駆動部を制御するとともに、上記走行駆動制御手段が上記本体の移動を一時的に停止している間に該投入駆動部を作動させる機能を備えた投入駆動制御手段を備えている。制御部の投入駆動制御手段が、本体を一時的に停止している間に投入駆動部を作動させるので、セルトレイのセル列の各セルに種子を投入する際、種子の投入タイミングがずれることがなく、そのため、この点でも、投入駆動部からの種子を確実にセル内に投入することができるようになる。
【0018】
更にまた、必要に応じ、上記種子投入部は、複数の種子が供給され供給された種子が載置される平面状の載置面を有したベースと、該ベースの載置面に複数の種子を供給する供給部と、該ベースの載置面上を所定方向に沿って進退動可能にスライドし進出時に上記供給部から供給された該載置面上の種子から上記セルに投入する種子を受けて所定間隔で一列に整列させるスライド体と、上記ベースに設けられ上記スライド体の進出過程で上記一列に整列させた種子を上記セルに向けて落下させて排出する排出部とを備えて構成し、上記投入駆動部は、上記スライド体を駆動して進退動させる構成としている。
【0019】
これにより、スライド体を後退させて進出させると、ベースの載置面上に供給された種子から投入すべき種子がスライド体に受けられ所定間隔で一列に整列させられ、押されて下流側に搬送される。そして、排出部に至ると、一列に整列させた種子が落下して排出される。この場合、スライド体を進退動させるだけで良いので、駆動を簡易にすることができる。また、スライド体の進出時に種子を受けて一列に整列させるので、粒径に多少のバラツキがある種子でもこれを受けて移動させることができ、そのため、汎用性を向上させることができる。粒径が均一な種子にも適用できることは勿論である。
【0020】
また、必要に応じ、上記排出部を、上記ベースに設けられ上記セルトレイのセルの列方向ピッチに対応したピッチで列設され種子が落下可能な複数の落下穴を備えた排出板を備え、上記ベースに、上記排出板を着脱可能に保持する排出板保持部を設け、該排出板保持部に落下穴のピッチの異なる複数種の排出板を選択的に保持可能にした構成としている。これにより、セルトレイには、セルのピッチの異なるものが種々あるが、予め、セルのピッチが異なる種々のセルトレイに合わせ、落下穴のピッチが異なる種々の排出板を作成しておく。そして、対象とするセルトレイに合った排出板を選択して排出板保持部に保持させる。そのため、セルのピッチが異なる種々のセルトレイに容易に対応することができ、この点でも汎用性を向上させることができる。
【0021】
更に、必要に応じ、上記スライド体に、該スライド体の進退動方向に交叉する方向に上記セルトレイのセルの列方向ピッチに対応したピッチで列設され該スライド体の進出時に上記種子を受けて保持する複数の受け凹部を設けるとともに、該受け凹部で受けられなかった余分の粒体を上記排出部から排出させないように寄せ分ける寄せ分け手段を備え、上記スライド体を着脱可能に保持するスライド体保持部を設け、該スライド体保持に受け凹部のピッチの異なる複数種のスライド体を選択的に保持可能にした構成としている。
【0022】
これにより、セルトレイには、セルのピッチの異なるものが種々あるが、予め、セルのピッチが異なる種々のセルトレイに合わせ、受け凹部のピッチが異なる種々のスライド板を作成しておく。そして、対象とするセルトレイに合ったスライド板を選択してスライド体保持部に取付ける。そのため、セルのピッチが異なる種々のセルトレイに容易に対応することができ、この点でも汎用性を向上させることができる。
【0023】
更にまた、必要に応じ、上記本体に、上記ベースの載置面に複数の種子を供給する供給部を設け、該供給部を、入口及び出口を有し種子を収容する容器と、上記容器の出口を一時的に開にして種子を供給可能にするシャッタ機構とを備えて構成している。載置面に種子を自動で供給することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、本体は設置面上を走行する走行機構により移動させられ、この本体の移動過程において、種子投入部により本体の移動方向上位のセル列の各セルから下位のセル列の各セルに順に種子が投入される。この場合、走行機構は設置面上を走行するので、従来のようにレールを用いる必要がなく、それだけ、設置が容易になる。また、従来のようにセルトレイ上を走行することはないので、セルトレイを潰すような事態が生じることがなく、そのため、プラスチック製の比較的強度の弱いセルトレイにも対応することができ、汎用性を大幅に向上させ得ることができる。更に、従来のようにセルトレイの側縁上に車輪が転動したり、レールが載置されることがないので、セルトレイの側縁側において邪魔になるものがなく、そのため、セルトレイの側縁側のセルにも確実に種子を投入することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る播種装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る播種装置を示す平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る播種装置を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る播種装置を示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る播種装置を示す側面断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る播種装置のガイド板及びその取付け状態を示す平面断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る播種装置においてスライド体の取付け状態を示し、供給部,第1シャッタ板及び第2シャッタ板を取外した状態の平面断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る播種装置において3種のスライド体と排出板の組(a~c)を示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係る播種装置においてシャッタ機構の構成をその動作とともに示し、供給部の容器を取外した状態の平面断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る播種装置においてスライド体による種子の保持作用を示し、(a)は供給モードにおける工程(F11~F13)を示す要部平面図、(b)は播種モードにおける工程(F21~F27)を示す要部平面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る播種装置においてシャッタ機構の動作工程(F31~F33)を示す要部断面図である。
図12】本発明の実施の形態に係る播種装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の実施の形態に係る播種装置の供給モードにおける動作工程を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施の形態に係る播種装置の播種モードにおける動作工程を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施の形態に係る播種装置の別の動作工程を示すフローチャートである。
図16】従来の播種装置の一例を示す図(a)(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る播種装置について詳細に説明する。
図1乃至図11に示す実施の形態に係る播種装置Hは、育苗用のセルトレイTに、このセルトレイTを屋内外の地面等の設置面Gに置いた状態で、種子Wを播種するものである。セルトレイTは、上開放の開口2を有し種子Wが入れられるポット状のセル1が所定間隔で行列状に設けられ互いに平行な一対の横側縁3及び横側縁3に直交する互いに平行な一対の縦側縁4を有して矩形状に形成されている。
【0027】
実施の形態に係る播種装置Hは、セルトレイTの上方をこのセルトレイTの横側縁3及び縦側縁4の何れか一方(実施の形態では縦側縁4)に沿う方向に移動させられる本体10と、本体10に設けられ本体10の移動方向に直交する方向の一列に並ぶ各セル1に同時に種子Wを投入可能な種子投入部20と、本体10に設けられ設置面G上を走行して本体10を移動させる走行機構100とを備え、この走行機構100による本体10の移動過程で、種子投入部20により本体10の移動方向上位のセル列の各セル1から下位のセル列の各セル1に順に種子Wを投入させるようにしている。本体10は、矩形板状のベース11を備えている。ベース11は、セルトレイTの横側縁3方向の幅よりも大きい幅を有している。ベース11の幅方向左右前後には、セルトレイTの縦側縁4側の側面に対峙する4つの脚柱12が夫々垂設されている。走行機構100は、本体10の移動方向両側に夫々設けられている。
【0028】
種子投入部20は、複数の種子Wが供給され供給された種子Wが載置される平面状の載置面を有した矩形板状の上記の本体10を構成するベース11と、ベース11の載置面21に複数の種子Wを供給する供給部22と、ベース11の載置面21上を所定方向(前後方向)に沿って進退動可能にスライドし進出時に供給部22から供給された載置面21上の種子Wからセル1に投入する種子Wを受けて所定間隔で一列に整列させるスライド体30と、ベース11に設けられスライド体30の進出過程で一列に整列させた種子Wを落下させて排出する排出部60とを備えてなる。また、種子投入部20には、セルトレイTの列に種子Wを投入するための投入駆動部50が備えられており、投入駆動部50は、スライド体30を駆動して進退動させる。
【0029】
詳しくは、供給部22は、入口23及び出口24を有し種子Wを収容する容器25と、容器25の出口24を一時的に開にして種子Wを供給可能にするシャッタ機構40とを備えて構成されている。容器25は、ベース11の幅方向に沿う細長状のもので、容器25の下面はベース11の載置面21と平行な平面で形成されている。容器25は、その両側端において支持部材26によりベース11に支持されている。また、図11に示すように、容器25の出口24は容器25の壁部を後側に切欠いて形成され種子Wが僅かに入り込むことができる凹所24aに及んでおり、後述の第1シャッタ板41及び第2シャッタ板42の開時にこの凹所24aに入り込んだ所要量の種子Wのみが排出されるようにしている。
【0030】
スライド体30は、図5図7及び図8に示すように、板状に形成され、その上面は、投入部の容器25の下面と平行な平面に形成されている。また、スライド体30には、スライド体30の進退動方向に交叉する方向にセルトレイTのセル1の列方向ピッチに対応したピッチで列設され、スライド体30の進出時に種子Wを受けて保持する複数の受け凹部31が設けられているとともに、受け凹部31で受けられなかった余分の種子Wを排出部60から排出させないように寄せ分ける寄せ分け手段32が備えられている。
【0031】
詳しくは、スライド体30は、スライド本体33と、スライド本体33の進出方向前端縁に櫛歯状に突設され先端に受け凹部31を形成した複数の突起34とを備えて構成されている。寄せ分け手段32は、突起34の先端で構成されており、スライド体30の進出により突起34の先端上の余分な種子Wを突起34の左右に寄せ分けるようにしている。また、スライド本体33には、各突起34に対応して設けられ種子Wを包容する包容空間35が形成されており、この包容空間35を形成し突起34に対向する対向部36は、スライド体30の後退により包容空間35内の種子Wを集約可能な凹状(実施の形態ではV字状)に形成されている。
【0032】
シャッタ機構40は、図1乃至図5図9及び図11に示すように、スライド体30の進退動方向の後側であって、容器25の下面を摺接可能な板状に形成されるとともに前端縁が包容空間35の上方に臨んでスライド体30の上面に固定されスライド体30と同動する第1シャッタ板41と、スライド体30の進退動方向の前側であって、容器25の下面を摺接可能な板状に形成されるとともに後端縁が包容空間35の上方に臨んでスライド体30の上面に支承される第2シャッタ板42と、第1シャッタ板41の前端縁が第2シャッタ板42の後端縁と接合する閉位置(後述の後退位置P1:図9(a)及び図11(F31)(F32))及び第1シャッタ板41の前端縁が第2シャッタ板42の後端縁から離間する開位置(後述のシャッタ開位置P2:図9(b)及び図11(F33))の2位置に移動可能になるように、第1シャッタ板41に対して第2シャッタ板42を連係する左右一対の連係部材43とを備えて構成されている。即ち、スライド体30の上面には、第1シャッタ板41及び第2シャッタ板42の裏面側が接触し、第1シャッタ板41及び第2シャッタ板42の表面には、容器25の下面が接触するようになっている。
【0033】
また、シャッタ機構40は、第1シャッタ板41と第2シャッタ板42との間に架設され第1シャッタ板41を閉位置に常時付勢する左右一対のスプリング44と、スライド体30の後退過程において第1シャッタ板41の前端縁と第2シャッタ板42の後端縁との接合部が容器25の出口24に至ったとき、第2シャッタ板42を停止させて第1シャッタ板41のみの後退を許容する左右一対のストッパ45とを備えて構成されている。ストッパ45は、ベース11に固定した容器25に衝止して第2シャッタ板42を停止させる。これにより、第1シャッタ板41のみの後退時に第1シャッタ板41を開位置P2に位置させて容器25の出口24から種子Wを包容空間35内に落下させるようにしている。また、ストッパ45の前後方向位置は調整可能になっており、この調整により、第2シャッタ板42の停止位置を変えることにより、第1シャッタ板41が後退したとき、その前端縁と第2シャッタ板42の後端縁との間隔を調整し、この間隔からスライド体30の包容空間35に供給される種子Wの量を調整可能にしている。
【0034】
スライド体30の投入駆動部50は、回転軸を側方に突出させて本体10の後側に設けられた電動モータ51と、回転軸に設けられた主プーリ52と、本体10の前側側方に設けられた従プーリ53と、主プーリ52及び従プーリ53間に架設されたベルト54と、一端がこのベルト54に固定され他端が上記の第1シャッタ板41に固定された連結部材55とを備えて構成されている。符号56は第1シャッタ板41の移動を円滑にするレール機構、57はベース11上を転動する車輪である。この投入駆動部50の電動モータ51の正逆転により、ベルト54,連結部材55及び第1シャッタ板41を介して、スライド体30は、前後方向に進退動させられるように構成されている。
【0035】
排出部60は、図1乃至図5図7乃至図9に示すように、ベース11に設けられセルトレイTのセル1の列方向ピッチに対応したピッチで列設され種子Wが落下可能な複数の落下穴62を備えた細長状の排出板61を備えて構成されている。排出板61の裏面側には、落下穴62に連通する通路を有し落下する種子Wをガイドするガイドパイプ63が設けられている。また、排出部60において、ベース11には、排出板61を着脱可能に保持する排出板保持部64が設けられている。排出板保持部64は、ベース11に設けられ排出板61が着脱可能に臨む貫通孔65と、貫通孔65の両側に設けられ排出板61を支承する支承部66とで構成されている。図8に示すように、セルトレイTには、セル1の列方向ピッチの異なるものが数種ある。例えば、128セル(横8×縦16)のもの、200セル(横10×縦20)のもの、288セル(横12×縦24)のもの等があり、実施の形態では、これらに対応できるように、ピッチの異なる複数の落下穴62を備えた排出板61を複数種類用意している。これにより、排出板保持部64に落下穴62のピッチの異なる複数種の排出板61を選択的に保持可能にしている。そのため、セル1のピッチが異なる種々のセルトレイTに容易に対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0036】
また、本播種装置Hにおいては、スライド体30を着脱可能に保持するスライド体保持部70が設けられている。図5に示すように、上記の第1シャッタ板41には、面方向に直交する方向に軸線を有したピン71の貫通穴72が幅方向左右に一対設けられており、スライド体30には、この貫通穴72に対応したピン71の差込穴73が形成されており、第1シャッタ板41の下面にスライド体30の表面を接合して、ピン71を貫通穴72に挿通して差込穴73に差し込むことにより、スライド体30を第1シャッタ板41に対して着脱可能にしてある。スライド体保持部70は、このピン71で構成されている。上述もしたように、セルトレイTには、セル1の列方向ピッチの異なるものが数種あるが、図8に示すように、実施の形態では、これらに対応できるように、ピッチの異なる複数の受け凹部31を備えたスライド体30を複数種類用意している。これにより、スライド体保持部70に受け凹部31のピッチの異なる複数種のスライド体30を選択的に保持可能にしている。そのため、セル1のピッチが異なる種々のセルトレイTに容易に対応することができ、この点でも汎用性を向上させることができる。
【0037】
更にまた、排出部60の前側のベース11には、不要な種子Wを回収可能な回収穴80が形成されている。ベース11の裏面側には、この回収穴80から落下した種子Wを受ける受け皿81が着脱可能に設けられている。
【0038】
走行機構100は、車輪で構成されており、前側の脚柱12に取付板101を介して回転自在に設けられた前輪102と、後側の脚柱12に取付部材103を介して回転自在に設けられた後輪104とで構成されている。また、走行機構100を駆動する走行駆動部105が備えられている。走行駆動部105は、前側の脚柱12に設けられ、前輪102を回転させる電動モータ106で構成されている。
【0039】
また、本播種装置Hにおいて、図1図3乃至図6に示すように、本体10には、セルトレイTの両側縁に夫々対峙して本体10の走行時にセルトレイTを相対的にガイドする一対のガイド板110が設けられている。ガイド板110は、前後方向に長い板であり、本体10の側方側にある前後の脚柱12間に、取付手段111を介して架設されている。一対のガイド板110の本体10の移動方向先端部112は、互いに拡開する方向に折曲形成されている。本体10の移動方向後端部113も、互いに拡開する方向に折曲形成されており、逆走においても先端部112と同様に対応できるようにしている。
【0040】
取付手段111は、図6に示すように、ボルト114と、ガイド板110の脚柱12側に溶接等で固定されボルト114が螺合するナット115と、脚柱12に設けられ進行方向に直交する方向の軸線を有したボルト114の挿通孔116とを備えて構成されている。ボルト114を挿通孔116に挿通してナット115に螺合して締め付けることによりガイド板110は脚柱12に取付けられる。
【0041】
更に、一対のガイド板110間の間隔を調整する間隔調整手段120が設けられている。間隔調整手段120は、図6に示すように、ボルト114及びナット115と同軸で且つボルト114及びナット116が挿通され脚柱12とガイド板110間に設けられる円筒状のカラー121で構成されている。122はカラー121の両端部に設けられるスプリングワッシャーである。長さの異なるカラー121を数種用意しておき、ガイド板110がセルトレイTの両側縁に当接してセルトレイTを相対的にガイドできるように、所要の長さのカラー121を選択して、これを用いるようにしている。セルトレイTには、大きさが異なり、その幅も異なるものが種々あるが、間隔調整手段120によってセルトレイTの幅に合わせてガイド板110間の間隔を調整できるので、本体10をセルトレイTの側縁に沿う方向に確実に移動させることができる。また、種々の大きさのセルトレイTに対応できるので、この点でも、汎用性を向上させることができる。
【0042】
また、本播種装置Hは、図12に示すように、走行駆動部105を制御する走行駆動制御手段131及び投入駆動部50を制御する投入駆動制御手段133を有した制御部130を備えている。具体的には、制御部130は、種子投入部20の投入駆動部50の電動モータ51及び走行駆動部105の電動モータ106を制御する。走行駆動制御手段131は、種子投入部20がセルトレイTの列に種子Wを投入する際、走行駆動部105の電動モータ106を制御して、一時的に本体10の移動を停止させる機能を有している。図3及び図5に示すように、ガイド板110には、セルトレイTの側縁に直交する方向のセル1の列を検知するセルセンサ132が設けられており、走行駆動制御手段131は、セルセンサ132がセル1の列を検知したとき走行機構100の駆動を一時的に停止する。
【0043】
更に、投入駆動制御手段133は、走行駆動制御手段131が本体10の移動を一時的に停止している間に投入駆動部50の電動モータ51を作動させる機能を備えている。スライド体30は、投入駆動制御手段133によりシャッタ機構40を閉じた状態で移動範囲の途中にある始動開始の位置となる基準位置P0(図11(F31))に停止させられるようになっている。そして、本体10には、図4に示すように、スライド体30がシャッタ機構40を閉じた状態で基準位置P0より後退した後退位置P1(図9(a),図11(F32))を検知する後退位置センサ134と、後退位置P1からスライド体30及びシャッタ機構40の第1シャッタ板41が最も後退した位置であって種子Wを容器25からスライド体30の包容空間35に供給し終わるシャッタ開位置P2(図9(b),図11(F33))を検知するシャッタ開位置センサ135と、スライド体30が後退位置P1を通過して進出して排出部60の落下穴62からが種子Wを落下させる播種位置P3を検知する播種位置センサ136と、スライド体30が播種位置P3から更に進出して不要な種子Wを回収穴80に落下させる回収位置P4を検知する回収位置センサ137が設けられている。また、後述の別の制御で使用するもので、後退位置センサ134と播種位置センサ136との間には所定位置を検知する所定位置センサ138(図4にはその位置のみ示す)も設けられている。これらの後退位置センサ134,シャッタ開位置センサ135,播種位置センサ136,回収位置センサ137及び所定位置センサ138は、投入駆動部50の連結部材55を検知する。走行駆動制御手段131及び投入駆動制御手段133は、これらのセンサからの検知信号に基づいて所要の制御を行う。尚、これらのセンサは、スライド体30の往復の際にいずれも検知信号を送出するが、制御部130は、制御に必要な往動時の検知信号及び/または復動時の検知信号を採用する。
【0044】
次に、この実施の形態に係る播種装置Hの動作について説明する。播種装置Hの動作としては、種子Wを容器25からスライド体30の包容空間35に供給する供給モード(1)、スライド体30の包容空間35に供給された種子をセルトレイTのセル1の列に順次投入して播種する播種モード(2)、スライド体30の包容空間35に残った不要の種子を落下穴62から落下させて回収する回収モード(3)がある。以下各モードについて説明する。
【0045】
(1)供給モード
図13に示すフローチャートを参照し、制御部130は、基準位置P0にあるスライド体30を後進させる(S101)。図11に示すように、スライド体30の後退過程では、容器25の出口24に臨む種子Wが第1シャッタ板41及び第2シャッタ板42の移動により、出口24の凹所24aに僅かに入り込んでいく(図11(F31)(F32))。そして、図9乃至図11に示すように、第1シャッタ板41の前端縁と第2シャッタ板42の後端縁との接合部が容器25の出口24に至ると、ストッパ45により第2シャッタ板42が停止させられ、第1シャッタ板41のみが後退する。これにより、図10にも示すように、第1シャッタ板41が開位置P2に移動し、容器25の出口24から種子Wがスライド体30の包容空間35内に落下させられ、種子が供給される(図10(a)の(F11)(F12),図11(F33))。この場合、凹所24aに入り込んだ所要量の種子Wのみが排出されていく。
【0046】
そして、シャッタ開位置センサ135はスライド体30がシャッタ開位置P2に至るか否かを検知しており(S102)、これを検知する(S102Y)と、投入駆動制御手段133がスライド体30を進出させる(S103)。その後、スライド体30が基準位置P0に至るとスライド体30を基準位置P0に停止させ(S104)、種子Wは、スライド体30の包容空間35内に保持される(図10(a)の(F13))。この供給モードにおいては、例えば、種子WはセルトレイTの1枚分若しくは2枚分程度を賄うことのできる数がスライド体30の包容空間35内に供給される。
【0047】
(2)播種モード
図14に示すフローチャートを参照し、供給モードでスライド体30の包容空間35内に種子Wが供給された状態(図10(b)の(F21))で、設置面Gに載置されたセルトレイTに向けて、播種装置Hの本体10を走行させる(S201)。セルセンサ132は、セルトレイTのセル1の有無を検知している(S202,S203)。この場合、所定時間経っても検知しないときは(S202N,S203Y)、例えば、何らかの異常があったとして走行動作及び投入動作を全停止する(S204)。
【0048】
本体10の走行が正規に行われると、セルトレイTは相対的にガイド板110間に導かれていく。この場合、一対のガイド板110の本体10の移動方向先端部112が互いに拡開する方向に折曲形成されているので、本体10をセルトレイTに向けて移動させた際、セルトレイTの端部がガイド板110の先端部112に当接すると、セルトレイTが本体10のガイド板110間に相対的に導かれるので、本体10をセルトレイTの側縁に沿う方向に確実に移動させることができる。そして、セルセンサ132がセルトレイTのセル1の有りを検知すると(S202Y)、走行駆動制御手段131が本体10の移動を停止する(S205)。この状態で、投入駆動制御手段133が機能し、スライド体30を後退させる(S206)。
【0049】
図10に示すように、スライド体30の後退過程では、包容空間35の種子Wが、突起34に対向する凹状(V字状)部位に集約させられる(図10の(F22)(F23))。その後、後退位置センサ134がスライド体30が後退位置P1に至ったことを検知する(S207Y)と、投入駆動制御手段133がスライド体30を進出させる(S208)。この進出過程においては、包容空間35内の載置面21に種子Wが多数あるが、突起34の先端にある受け凹部31に種子Wが入り込み(図10の(F24)(F25))、受け凹部31で種子Wを受けてスライド体30が移動する。この場合、他の種子Wは、突起34の先端縁によって左右に移動させられ、包容空間35を構成する後側壁に集められる。この結果、受け凹部31で種子Wが一列に整列させられる(図10の(F25))。
【0050】
そして、更に、スライド体30が進出し、播種位置センサ136が播種位置P3を検知する(S209Y)と、スライド体30は停止させられる(S210)。この播種位置P3においては、受け凹部31がこれに対応して所定間隔で列設された排出部60の複数の落下穴62に至っており(図10の(F26))、落下穴62から受け凹部31の種子Wが落下し(図10の(F27))、セルトレイTのセル1に播種される。この場合、スライド体30の進出時に種子Wを受けて一列に整列させるので、粒径に多少のバラツキがある種子Wでもこれを受けて移動させることができ、そのため、汎用性を向上させることができる。粒径が均一な種子Wにも適用できることは勿論である。また、種子Wが落下穴62及びガイドパイプ63にガイドされることから、確実に排出を行わせることができる。その後、再び、制御部130の走行駆動制御手段131により本体1は走行させられる(S201)。
【0051】
この場合、制御部130の走行駆動制御手段131により、一時的に本体10の移動を停止するので、セルトレイTのセル列の各セル1に種子Wを投入する際、投入駆動部50からの種子Wを確実にセル1内に投入することができるようになる。また、制御部130の投入駆動制御手段133が、本体10を一時的に停止している間に投入駆動部50を作動させるので、セルトレイTのセル列の各セル1に種子Wを投入する際、種子Wの投入タイミングがずれることがなく、そのため、この点でも、投入駆動部50からの種子Wを確実にセル1内に投入することができるようになる。
【0052】
そしてまた、セルセンサ132がセルトレイTのセル1の有りを検知すると(S202)、走行駆動制御手段131が本体10の移動を停止し、上記と同様に、次のセル1の列に種子Wが排出される。この場合、図10に示すように、スライド体30の後退過程では、包容空間35を構成する後側壁に集められた種子Wが、突起34に対向する凹状(V字状)部位に集約させられ(図10の(F27)(F21)~(F23))、スライド体30の進出過程で、再び、突起34の受け凹部31に受けられる機会を与えられることになる(図10の(F24)(F25))。そのため、スライド体30が進出する際に、受け凹部31で種子Wを受け易くすることができ、種子Wを受け取る精度を向上させることができる。
【0053】
最後のセル1の列の播種が終わると、本体10が走行しても、セルセンサ132はセル1を検知しないので、所定時間経っても検知しないことになり(S202N,S203Y)、装置は走行動作及び投入動作を全停止する(S204)。
【0054】
この一連の動作において、走行機構100は設置面G上を走行するので、従来のようにレールを用いる必要がなく、それだけ、設置が容易になる。また、従来のようにセルトレイ上を走行することはないので、セルトレイTを潰すような事態が生じることがなく、そのため、プラスチック製の比較的強度の弱いセルトレイTにも対応することができ、汎用性を大幅に向上させることができる。更に、従来のようにセルトレイTの側縁上に車輪が転動したり、レールが載置されることがないので、セルトレイTの側縁側において邪魔になるものがなく、そのため、セルトレイTの側縁側のセル1にも確実に種子Wを投入することができる。このようにして、セルトレイTを屋内外の地面等の設置面Gに置いた状態で播種できる。
【0055】
また、セルトレイTの両側縁に夫々対峙してセルトレイTを相対的にガイドする一対のガイド板110を設けたので、本体10が移動する際、セルトレイTとの位置関係が多少ずれても、ガイド板110がセルトレイTの側縁に当接してガイドすることから、本体10をセルトレイTの側縁に沿う方向に確実に移動させることができ、そのため、種子Wをトレイのセル1に確実に投入することができるようになる。
【0056】
更に、間隔調整手段120によってセルトレイTの幅に合わせてガイド板110間の間隔が調整されているので、本体10をセルトレイTの側縁に沿う方向に確実に移動させることができる。この点でも、種子Wをトレイのセル1に確実に投入することができるようになる。
【0057】
(3)回収モード
1つのセルトレイTに対して種子Wの播種が終わったならば、次のセルトレイTに上記と同様に播種を行うが、その際に、包容空間35に残った不要の種子Tを落下穴62から落下させて回収する。この場合には、回収位置センサ137が検知するまで、スライド体30を回収位置P4まで進出させる。これにより、図示しないが、包容空間35の種子Tを落下穴62から落下させることができる。その後、スライド体30を後退させ、基準位置P0に停止させる。落下した種子Wは、受け皿81に受けられて集約されるので、適時に、回収して再利用に供すればよい。
【0058】
図15には、制御の別の例を示す。これは、本体10の走行停止中及び走行期間中、常時、投入駆動制御手段133が投入駆動部50を作動させるようにしたものである。この制御においては、播種モードの場合で説明すると、制御部130は、所定位置センサ138の検出信号を利用する。図15に示すように、先に、制御部130の走行駆動制御手段131が走行駆動部105を駆動する。走行駆動制御手段131は、走行指令信号に基づいて走行を開始する(S301,S302)。最初は図示外の手動スイッチにより走行指令信号を送出し、その後は、所定位置センサ138の検出に基づいて送出する(S315)。一方、投入駆動制御手段133は、セル検知に基づく最初の走行停止時送出されるスライド体の始動信号に基づいてスライド体30を始動し(S308)、強制停止があるまで連続作動する。
【0059】
詳しくは、走行指令信号に基づいて(S301Y)、播種装置Hの本体10は設置面Gに載置されたセルトレイTに向けて走行を開始する(S302)。セルセンサ132は、セルトレイTのセル1の有無を検知する(S303,S304)。この場合、所定時間経っても検知しないときは(S303N,S304Y)、例えば、何らかの異常があったとして走行動作及び投入動作を全停止する(S305)。
【0060】
本体10の走行が正規に行われ、セルセンサ132がセルトレイTのセル1の有りを検知すると(S303Y)、走行駆動制御手段131が本体10の移動を停止する(S306)。この状態で、走行駆動制御手段131は、走行指令信号があるまで走行停止を維持する(S301)。また、最初のセル検出による停止か否かを判断し(S307)、最初なので(S307Y)、スライド体の始動信号を送出する(S308)。
【0061】
投入駆動制御手段133は、このスライド体の始動信号に基づいてスライド体30を始動し、後退させる(S309)。そして、スライド体30が所定位置に至るか否かを所定位置センサ138が検知しており(S310)、所定位置に至ると(S310Y)、最初か否かを判断し(S311)、先ずは最初なので(S311Y)、走行指令信号の送出は行わない。そして、後退位置センサ134がスライド体30が後退位置P1に至ったことを検知する(S312Y)と、今度はスライド体30を進出させる(S313)。その後、播種位置センサ136が播種位置P3を検知する(S314Y)と、再び、スライド体30を後退させる(S309)。播種位置P3においては、上記と同様に、セルトレイTのセル1に播種が行われる。
【0062】
次に、スライド体30が所定位置に至ると(S310Y)、最初か否かを判断し(S311)、2回目なので(S311N)、走行指令信号が送出される(S315)。これにより、走行駆動制御手段131が走行駆動部105を駆動し、次のセル1の列まで本体10を走行させ停止させる(S302,S303,S306)。この走行停止は2回目なので(S307N)、次の走行指令信号があるまで走行停止を維持する(S301)。
【0063】
一方、投入駆動制御手段133は、この間もスライド体30を作動させており、一連の動作を行う(S309~S315)。そのため、本体10の走行停止中及び走行期間中、常時、投入駆動制御手段133が投入駆動部50を作動し、この本体10の走行停止中に、播種が行われる。これによっても、上記と同様の作用,効果を奏する。
【0064】
尚、上記実施の形態においては、走行駆動部105は電動モータ106で構成して左右の車輪(前輪102)を夫々駆動するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、1台の電動モータにより回転伝動機構を介して左右の車輪を同期して駆動するように構成しても良く、適宜変更して差支えない。また、上記実施の形態においては、走行機構を、車輪を用いて構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、設置面に接触する帯体を有したクローラ型の機構、設置面を歩行する脚を備えた脚型の機構、あるいは、車輪型の機構を含め、これらの組み合わせた機構を用いても良く、適宜変更して差支えない。更に、上記実施の形態において、播種装置Hを、セルトレイTの縦側縁4に沿う方向に移動させるようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、横側縁3に沿う方向に移動させるように構成しても良く、適宜変更して差支えない。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
H 播種装置
G 設置面
W 種子
T セルトレイ
1 セル
2 開口
3 横側縁
4 縦側縁
10 本体
11 ベース
12 脚柱
20 種子投入部
21 載置面
22 供給部
23 入口
24 出口
24a 凹所
25 容器
26 支持部材
30 スライド体
31 受け凹部
32 寄せ分け手段
33 スライド本体
34 突起
35 包容空間
36 対向部
40 シャッタ機構
41 第1シャッタ板
42 第2シャッタ板
43 連係部材
44 スプリング
45 ストッパ
50 投入駆動部
51 電動モータ
52 主プーリ
53 従プーリ
54 ベルト
55 連結部材
56 レール機構
57 車輪
60 排出部
61 排出板
62 落下穴
63 ガイドパイプ
64 排出板保持部
65 貫通孔
66 支承部
70 スライド体保持部
71 ピン
72 貫通穴
73 差込穴
80 回収穴
81 受け皿
100 走行機構
101 取付板
102 前輪
103 取付部材
104 後輪
105 走行駆動部
106 電動モータ
110 ガイド板
111 取付手段
112 先端部
113 後端部
114 ボルト
115 ナット
116 挿通孔
120 間隔調整手段
121 カラー
122 スプリングワッシャー
130 制御部
131 走行駆動制御手段
132 セルセンサ
133 投入駆動制御手段
134 後退位置センサ
135 シャッタ開位置センサ
136 播種位置センサ
137 回収位置センサ
138 所定位置センサ
P0 基準位置
P1 後退位置
P2 シャッタ開位置
P3 播種位置
P4 回収位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16