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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000874
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/12 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B65D77/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101938
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】平塚 義嗣
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA01
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA03A
3E067BB14A
3E067BC03A
3E067CA01
3E067CA24
3E067EA06
3E067FA01
3E067FB01
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】開口部と蓋材とのシール不良の発生を十分抑制可能な容器を提供する。
【解決手段】本発明は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いて成形された容器であって、前記容器は、開口部にフランジ面を有し、高さが75mm以上、開口径が25mm以上、当該フランジ面のフランジ幅が3.0mm以下であり、90℃の温水中に10秒間浸漬した際の容器の高さ方向の収縮率が0.25%以下であることを特徴とする、容器である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いて成形された容器であって、
前記容器は、開口部にフランジ面を有し、高さが75mm以上、開口径が25mm以上、当該フランジ面のフランジ幅が3.0mm以下であり、
90℃の温水中に10秒間浸漬した際の容器の高さ方向の収縮率が0.25%以下であることを特徴とする、容器。
【請求項2】
シュリンクラベルを有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記ゴム変性スチレン系樹脂組成物が流動パラフィンを、当該ゴム変性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.3~2.5質量%含有する、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
インジェクションブロー成形により得られた、請求項1~3のいずれかに記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物は飲料物や食品などを収容する種々の容器、特に乳酸菌飲料等の飲料物、発酵乳等の食品の包装容器に用いられている。
このような容器内に飲料物等の内容物を収容する場合には、まず、当該容器の外表面に、その商品名、品質保持期限、生産者、販売者、取扱注意事項等の表示や、装飾性、機能性の付与のためシュリンクラベルを装着し、次いで、容器内に内容物を充填し、当該容器の開口部を蓋材で封止している。容器へシュリンクラベルを装着する方法の一例としては、筒状に形成したラベルで容器の外周を覆い、加熱トンネル内でその状態で容器ごとシュリンクラベルを加熱して熱収縮させる方法が知られている。また、容器の開口部を封止するための蓋材としては、例えばアルミニウム箔を基材としたアルミニウム積層体や合成樹脂の積層基材の下面にシーラント層を設けた樹脂シートが使用されている。これらの蓋材を容器の開口部のフランジ面に、例えば超音波シール、高周波誘導シール、高周波誘電シール、熱板によるヒートシール等の方法により貼り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-76565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような容器は、近年、外観の意匠性や軽量性、耐衝撃性等の機能性を付与するといった目的から多種多様な形状のものが提案されているが、特定の寸法を有する容器については、容器の開口部と蓋材との間にシール不良が発生することがあり、改善が求められていた。
【0005】
そこで本開示は、開口部と蓋材とのシール不良の発生を十分抑制可能な容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を進めた結果、(i)容器の開口部への蓋材のシール工程では、容器の開口部のフランジ面に対して蓋材全体が密着することが必要であるが、シュリンクラベルの装着工程(熱収縮工程)での加熱雰囲気下で、例えば温度ムラなどによって容器の不均等な熱収縮が生じ、蓋材の貼り付け方向に対して容器の開口部のフランジ面がわずかにずれて密着しにくくなる虞があること、(ii)容器の開口部の開口径が一定以上であるとともに、フランジ幅が小さい容器においては、開口部を封止するために開口部に蓋材を重ね合わせた際、容器の開口部に対して蓋材がずれると、容器の開口部と蓋材とのシール不良になりやすいこと、を見出した。そして、本発明者らは、シュリンクフィルムの装着工程における容器のフランジ面のずれを抑えることでシール不良の改善につながることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記に示すとおりである。
[1]本開示は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物が成形された容器であって、蓋材に密着させるためのフランジ面を有し、高さが75mm以上、口部径が25mm以上、フランジ幅が3mm以下であって、90℃の温水中に10秒間浸漬した際の容器の高さ方向の収縮率が0.25%以下であることを特徴とする容器である。
[2]本実施形態において、シュリンクラベルを装着する事を特徴とする[1]記載の容器である。
[3]本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の流動パラフィン量が0.3~2.5wt%であるゴム変性スチレン系樹脂組成物を成形してなる[1]または[2]記載の容器である。
[4]本実施形態において、前記容器がインジェクションブロー成形されたことを特徴とする[1]~[3]記載の容器である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、開口部と蓋材とのシール不良の発生を十分抑制可能な容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
<容器>
本実施形態の容器は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いて成形された容器である。また、当該容器は、開口部にフランジ面を有し、高さが75mm以上、開口径が25mm以上、当該フランジ面のフランジ幅が3.0mm以下であり、90℃の温水中に10秒間浸漬した際の容器の高さ方向の収縮率が0.25%以下である。本実施形態によれば、容器の開口部と蓋材とのシール不良の発生を十分抑制可能となる。
【0011】
ここで本実施形態の容器は、フランジ面を有する開口部を備えた凹部構造を有していれば特に限定されないが例えば、開口部を上方に備える円筒竪型の容器とすることができる。当該フランジ面に、蓋材を接着等することにより開口部を封止することができる。
また、本実施形態の容器は、高さが75mm以上、開口径が25mm以上、フランジ面のフランジ幅が3.0mm以下である。従来、このような形状の容器の場合、シール不良が発生する恐れがあったが、本実施形態の容器では、当該シール不良の発生を十分抑制することができる。
なお、本実施形態の容器の高さは上述のように75mm以上であるが、77.5mm以上とすることもでき、好ましくは80mm以上である。一方、容器強度の観点から、容器の高さの上限は120mmであることが好ましく、より好ましくは115mmである。
容器の高さは、容器の開口部が鉛直方向上方になるように水平面に載置し、当該水平面から鉛直方向上方に開口部まで測定した長さである。
【0012】
また、容器の胴径は、30~60mmとすることができ、好ましくは33~55mmであり、より好ましくは35~50mmである。
容器の胴径は、容器の開口部が鉛直方向上方になるように水平面に載置し、水平方向から見たときの容器の水平方向一方端から他方端までを測った長さのうち、最も大きい長さである。
【0013】
容器の開口部は、例えば円形であり、開口径が25~60mmである。開口径は、26~55mmとすることができ、好ましくは27~50mmである。
またフランジ面は、フランジ幅が3.0mm以下であるが、2.7mm以下とすることもでき、好ましくは2.5mm以下である。一方、蓋材による封止を十分維持する観点からは、当該フランジ幅が1.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。
開口径は、開口部の外径(開口部の外側端での直径)であり、フランジ幅は、容器を上方より見たときの、開口部の外側端から内側端までを径方向に沿って測った長さである。
なお、本実施形態の容器において、開口部と対向するよう底面部が設けられていることが好ましい。当該容器の底面部は、例えば円形であり、上記容器の胴径と同様に、円形の底面部の径は30~60mmとすることができ、好ましくは33~55mmであり、より好ましくは35~50mmである。
【0014】
また、本実施形態の容器は、高さ方向の収縮率は0.25%以下であり、好ましくは0.2%以下である。容器の高さ方向の収縮率が0.25%を超えると容器と蓋材の間でシール不良が発生する。
具体的には、比較的大きな開口径、比較的小さなフランジ幅を有する容器であるほど、容器の開口部のフランジ面に対して蓋材の貼り付け方向が直交しないなどのずれ(具体的には、フランジ面がわずかに傾斜するなど)があるとよりシール不良を起こしやすく、また、比較的高さを有する容器であるほど、当該ずれが生じやすくなる傾向がある。本実施形態の容器は、高さ方向の収縮率は0.25%以下であることから、シュリンクラベルの装着工程(熱収縮工程)において、容器の開口部のフランジ面に対する蓋材の貼り付け方向のずれが抑えられ、シール工程での、容器の開口部と蓋材との間でシール不良を抑制することができる。
一方、シール不良の発生を防止する観点からは高さ方向の収縮率の下限値は特に限定されず、0%超であることが好ましい。
なお、当該収縮率の測定は、容器を90℃の温水中に10秒間浸漬する前後の容器の高さを測定し、浸漬前後の差の浸漬前の高さに対する比率である。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法で行うことができる。
【0015】
本実施形態の容器において、容器の高さ方向の収縮率は、例えば容器の耐熱温度、配向応力によって調整することができる。容器の耐熱温度が高いほど容器の収縮率は小さくなり、また容器の配向応力が小さいほど容器の収縮率が小さくなる。
【0016】
容器の耐熱温度は、JIS K7121に準じて測定したガラス転移温度であり、96~106℃であることが好ましく、より好ましくは97~105℃である。耐熱温度が96℃未満では容器の収縮率が大きくなる傾向がある。また、耐熱温度106℃超では、容器成形時にかかる配向が大きくなり、容器の収縮率が大きくなる傾向がある。となる。容器の耐熱温度は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるスチレン系樹脂、ゴム状重合体分散粒子の含有量、任意成分である流動パラフィンの含有量によって調整することができる。
【0017】
容器の配向応力は、容器のガラス転移温度+30℃の温度としたシリコーンオイル中で測定した熱収縮応力のピーク値である。容器の耐熱温度によって好ましい範囲は異なるが、耐熱温度96℃以上では10~35N/mmであることが好ましく、より好ましくは12~30N/mmである。また、耐熱温度96℃未満では10~25N/mmであることが好ましく、より好ましくは12~23N/mmである。
配向応力が上記上限値を超えると、容器の高さ方向の収縮率が大きくなる傾向がある。また、配向応力が上記下限値を下回ると、容器強度が低下する傾向がある。
容器にかかる配向応力は、容器を成形する時の温度、圧力、冷却時間等の成形条件によって調整することができる。
【0018】
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物>
ゴム変性スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂のマトリックス中にゴム状重合体の粒子が分散したものであり、ゴム状重合体の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。以下、マトリックス中に分散されるゴム状重合体の粒子を、ゴム状重合体分散粒子と称する。
【0019】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられ、特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。
【0020】
上記ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は1種又は2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0021】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物に含まれるゴム状重合体は、内側にスチレン系樹脂を内包し、かつ、外側にスチレン系樹脂がグラフトされたものであってよい。
このようなゴム変性スチレン系樹脂組成物の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0022】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体分散粒子の含有量は、15~25質量%が好ましく、更に好ましくは17~24質量%である。ゴム状重合体分散粒子の含有量が15質量%より少ないと成形した容器の耐衝撃性が低下し、割れやすくなる。また、ゴム状重合体分散粒子の含有量が25質量%を超えると流動性が低下し、また成形した容器の剛性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体分散粒子の含有量は、後述の実施例の項で説明する手順で測定される値である。
【0023】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体分散粒子の平均粒子径は、耐衝撃性観点から、0.5~5.0μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0~4.0μmである。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体分散粒子の平均粒子径は、後述の実施例の項で説明する手順で測定される値である。
【0024】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下し、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値であり、より詳細には、後述の実施例の項で説明する手順で測定される値である。
【0025】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のメルトフローレートは、1~50g/10分であることが好ましく、より好ましくは2~40g/10分であり、さらに好ましくは3~30g/10分である。メルトフローレートが1g/10分より低いと、容器成形時の流動性が不足し、成形性が低下する。50g/10分以上であることにより、容器成形時の糸曳やバリ等の外観不良が発生しやすくなるため好ましくない。
なお、本実施形態において、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して測定することができる。
【0026】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物には容器成形時の離型のため離型剤を配合することが好ましい。該離型剤としては、高級脂肪酸と高級脂肪酸金属塩の混合物が挙げられ、その質量比率が1/3~3.5であり、また配合量は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物100質量部に対して0.1~0.4質量部であることが好ましい。配合量が0.1質量部未満の場合には、離型性に劣る傾向がある。一方配合量が0.4質量部を超える場合には、樹脂組成物の熱変色、熱劣化が起こりやすい。ここで高級脂肪酸とは、炭素数が12~22の飽和直鎖カルボン酸である。また、高級脂肪酸金属塩とは、上記高級脂肪酸の金属塩であって、金属の種類には特に制限はないが、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が例として挙げられる。
【0027】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物には成形性の観点から、ゴム変性スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、流動パラフィンを0.3~2.5質量%含有することが好ましい。好ましくは、0.5~2.0質量%である。また、別の観点では、流動パラフィンを0.3~0.95質量%含有することが好ましい。流動パラフィンの含有量が2.5質量%超では耐熱温度が低下し、容器が変形し易くなるとともに、インジェクションブロー成形時に糸曳きが発生し易くなり好ましくない。流動パラフィンが0.3質量%未満では、容器の口部強度(開口部での強度)が低下し好ましくない。流動パラフィンとしては種々のものが挙げられるが、数平均分子量375~425の範囲にあることが好ましい。このような流動パラフィンはASTMD1160(10mmHg)で測定する2.5質量%初留温度が230~290℃のものである。流動パラフィンの含有量はメタノール可溶分を液体クロマトグラフイーで分析することで求められる。
【0028】
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂組成物には所望に応じて使用が一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加することもできる。例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、染料、顔料、帯電防止剤、防曇剤、各種充填剤等を、各々の目的に合った効果を達成するために添加することができる。
なお、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中の上記各種添加剤は、当該ゴム変性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0029】
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法>
ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体をグラフト重合して得ることができ、重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。
また、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中に上記の離型剤、流動パラフィン、各種添加剤等を含有させる場合には、任意の方法が採用され、例えば、各成分をゴム変性スチレン系樹脂組成物の重合時に添加させることや、各成分を、当該重合後にブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。
【0030】
<ゴム変性スチレン系樹脂組成物の性状>
本実施形態におけるゴム変性スチレン系樹脂組成物中の低分子量成分は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物100質量%中に0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下である。低分子量成分の量が0.5質量%以下であることによって、成形時の金型汚れが低減したり、または、容器の強度を確保しやすくすることができる。
なお、本実施形態において、低分子量成分とは、スチレン単量体、スチレン二量体、スチレン三量体、未反応共重合単量体、単量体不純物、単量体の重合禁止剤、重合溶剤、重合開始剤分解物等が広く含まれる。
当該低分子量成分を所定の範囲に調整するには、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造時の未反応単量体を除去する際の温度を高くする方法や添加剤により低減する方法が挙げられる。
【0031】
また、本実施形態におけるゴム変性スチレン系樹脂組成物は、ISO179に準拠して測定したノッチ付シャルピー衝撃強度が4kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは5kJ/m以上である。当該強度が4kJ/m以上であることにより、容器として十分に適切に使用できる。なお、当該強度の測定に用いる試験片は、東芝機械株式会社製の射出成形機EC60Nにより、シリンダー温度220℃、金型温度45℃、射出圧力80MPa、射出速度26mm/sで成形したISO金型タイプAの試験片とする。
上記ノッチ付シャルピー衝撃強度は、ゴム変性樹脂組成物中のゴム量またはゴム状重合体分散粒子の膨潤度、スチレン系樹脂の還元粘度により所定の範囲に調整することができる。
【0032】
本実施形態において、ゴム状重合体分散粒子の膨潤度は8~15であることが好ましい。膨潤指数は、より好ましくは9~14、更に好ましくは10~13である。当該膨潤度の数値が小さいほど架橋密度が高くなり、ゴム成分の柔軟性が減少、硬くなり変形しづらくなる。一方、当該膨潤度の数値が大きいほど架橋密度が低く、ゴム成分の柔軟性が増加して変性しやすくなる。このゴム成分の架橋度合いを適度に調整することにより、優れた機械的強度を発現することになる。
【0033】
<容器の成形方法>
本実施形態における容器の成形方法は、特に限定するものではなく公知の成形方法により成形することができる。例えば、インジェクションブロー成形法や射出延伸ブロー成形法、ダイレクトブロー成形法が好ましく利用できる。
ここでインジェクションブロー成形法とは、まず射出成形によって有底のパリソンを成形し、ついで、このパリソンを軟化状態でコア(射出成形の雄金型)に付けたままでブロー成形金型内に移行させ、そして、コアから圧気を送り込んでブロー成形金型内壁面まで膨らませることで、中空成形品(容器)を成形する方法である。
射出延伸ブロー成形法とは、予め押出成形等で得られた有底パリソンを加熱軟化させ、金型内にセットし、パリソンを成形温度に保持の上、ロッドで縦延伸させた後、圧気を吹き込んで金型内壁面まで膨らませることで、中空成形品(容器)を成形する方法である。
ダイレクトブロー成形法とは、押出機から押し出されたチューブ状の溶融パリソンを金型内にセットし、パリソンを成形温度に保持の上、圧気を吹き込んで金型内壁面まで膨らませることで、中空成形品(容器)を成形する方法である。
【0034】
上記のパリソンは、本実施形態の容器を製造することが可能な中間体であり、上記のゴム変性スチレン系樹脂組成物により製造することができる。
パリソンの形状は、特に限定されないが例えば開口部を有す円筒竪型とすることができる。パリソンは、高さを72~116mm、胴径を23~58mmとすることができる。また、パリソンの開口部はフランジ状になっており、開口径を21~54mm、フランジ面のフランジ幅を1.0~3.0mmとすることができる。
なお、パリソンの高さは、開口部から底部までをパリソンの長手方向に沿って測った長さであり、胴径は、パリソンの長手方向に直交する方向に沿って測った長さのうち、最も大きい長さである。また、開口径は、開口部の外径(開口部の外側端での直径)であり、フランジ幅は、パリソンを上方より見たときの、開口部の外側端から内側端までを径方向に沿って測った長さである。
【0035】
上記の成形法において、樹脂又はゴム変性スチレン系樹脂組成物の溶融工程におけるシリンダーの温度は、180~280℃であることが好ましく、200~260℃であることがより好ましい。パリソンを成形する段階においてコア(射出成形の雄金型)の温度は100~180℃であることが好ましく、110~170℃であることがより好ましい。パリソンをブロー成形する段階において、金型温度は20~70℃であることが好ましく、25~65℃であることがより好ましく、30~60℃であることがさらに好ましい。
パリソンの体積に対する容器の体積の倍率(体積の延伸倍率)は、1.5~7倍であることが好ましく、2~5倍であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態では、容器の生産性の観点から、容器はインジェクションブロー成形法により製造することが好ましい。
【0037】
<容器の用途>
本実施形態の容器は、特に限定されないが例えば、乳酸菌飲料等の飲料や発酵乳等の食品などを収容する容器として用いることができる。成形された容器は、シュリンクフィルムを装着することが可能であり、装着した後、容器へ内容物を充填し、容器の開口部へ蓋材がヒートシールされ密封した容器とすることができる。当該密封した容器は、その後、検査、包装工程を経て製品として出荷される。
【0038】
本実施形態の容器は、シュリンクフィルムを有することができる(密着させた状態で用いることができる)。
なお、シュリンクフィルムはラベルの基材となる層であり、強度特性や収縮特性等を担う層である。シュリンクフィルムに用いられる樹脂は、要求物性、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド系樹脂、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル系樹脂等の樹脂を用いることができる。中でも好ましくは、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、或いはこれらの積層フィルムである。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂やポリ(エチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができ、中でも好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂である。また、ポリスチレン系樹脂としては、一般ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体(SBIS)等が特に好ましく例示される。
【0039】
容器への装着方法としては、特に限定されないが、例えば、筒状シュリンクラベルの場合、長尺筒状のシュリンクラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。具体的には、長尺筒状シュリンクラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、容器を囲い、75~200℃に加熱した熱風トンネルやスチームトンネルを通過させる。当該トンネル内でラベルが加熱されることで熱収縮し、容器に密着し、ラベル付き容器を得ることができる。
なお、容器へのシュリンクフィルムの装着にあたっては容器を殺菌して行うことができる。また、シュリンクフィルムを装着した容器は、飲料や食品を充填し、容器の開口部に蓋材を設けることで用いることができる。
なお、容器を封止するための蓋材は、アルミニウム箔を基材としたアルミニウム積層体や合成樹脂の積層基材の下面にシーラント層を設けた樹脂シートを使用することができる。これらの蓋材を容器の開口部のフランジ面にシールする方法としては、特に限定されないが、例えば、超音波シール、高周波誘導シール、高周波誘電シール、熱板によるヒートシール等が知られている。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の容器は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。
まず、実施例、比較例を評価するために用いた評価方法について以下説明する。
【0042】
1.評価方法
(1)ゴム状重合体分散粒子の含有量
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1gを精秤し(W1)、トルエン20mlを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(例えば(株)日立製作所製himac(商品名)CR-20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離する。上澄み液をデカンテーションして除き、不溶分を得る。引き続き、160℃、20mmHg以下の条件で60分間真空乾燥し、デシケーター内で室温まで冷却後、不溶分の質量を精秤する(W2)。下記式により、トルエン不溶分を求める。
トルエン不溶分(質量%)=(W2/W1)×100
【0043】
(2)ゴム状重合体分散粒子の粒子径
30μm径のアパーチャーチューブを装着したベックマンコールター株式会社製COULTER MULTISIZER III(商品名)にて、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のペレット2~5粒をジメチルホルムアミド約5ml中に入れ約2~5分間放置した。次にジメチルホルムアミド溶解分を適度の粒子濃度として測定し、体積基準のメジアン径を求めた。
【0044】
(3)低分子量成分量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物のペレット中における、スチレン単量体、スチレン二量体及びスチレン三量体の残存量(質量%)を、下記の条件や手順で測定した。
・試料調製:ゴム変性スチレン系樹脂組成物2.0gをクロロホルム20mLに溶解後、更に標準物質(トリフェニルメタン)入りのメタノール5mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器 :Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:HP-1(100%ジメチルポリシロキサン)30m、膜厚0.25μm、
0.32mmφ
注入量:1μL(スプリットレス)
カラム温度:40℃で2分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で15分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
【0045】
(4) 流動パラフィン量の測定
ゴム変性スチレン系樹脂組成物2gを精秤し、メチルエチルケトン40mlを加え23℃で40分間振とうした。ついで当該溶液をメタノール200ml中に滴下し、60℃で10分間加温した後、23℃に冷却し、穴径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。濾別した濾液を減圧蒸留濃縮し、80℃で30分間乾燥した後、23℃に冷却し、ノルマルヘキサンに溶解させ、10mlの試料を得た。得られた試料について、下記の条件下で液体クロマトグラフイーにより、流動パラフィン含有量を定量した。
【0046】
(5)メルトフローレートの測定
メルトマスフローレート(g/10分)は、ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0047】
(6)シャルピー衝撃強度の測定
ISO179に準拠してノッチ付きでシャルピー衝撃強度を測定した。当該強度の測定に用いる試験片は、東芝機械株式会社製の射出成形機EC60Nにより、シリンダー温度220℃、金型温度45℃、射出圧力80MPa、射出速度26mm/sで成形したISO金型タイプAの試験片を用いた。
【0048】
(7)還元粘度の測定
メチルエチルケトン/メタノール混合溶媒(混合重量比90/10)20mlに、ゴム変性スチレン系樹脂組成物約1gを加え、振とう機で60分かけて溶解させる。次に、R20A2型ローターを備えた日立製作所製himacCR20型遠心分離機を用い、0℃、20,000rpmで60分遠心分離後、上澄み液にメタノールを添加し、マトリックスであるスチレン系樹脂を析出させる。析出物を濾過後に、乾燥させて試料とし、0.5g/dLの濃度でトルエンに溶解し試料溶液とした。この試料溶液、及び純トルエンを30℃の恒温でキャノン・フェンスケ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式(1)にて還元粘度(ηsp)算出した。
ηsp/C=(t/t-1)/C 式(1)
(上記式(1)中、t:純トルエン流下秒数、t:試料溶液流下秒数、C:ポリマー(スチレン系樹脂)の濃度)
【0049】
(8)容器の高さ収縮率
温度23℃、湿度50%の環境下で24時間容器を静置(状態調整)した。当該容器の開口部が鉛直方向上方になるように水平面に載置し、当該水平面から鉛直方向上方に開口部まで測定して容器の高さL1を得た後、この容器を90℃の熱水中に10秒間浸漬し、取り出した容器を速やかに25℃の冷水を用いて冷却した。そして、再び、温度23℃、湿度50%の環境下で24時間容器を静置(状態調整)し、当該容器の高さL2を、高さL1と同様な方法で測定した。得られた高さL1、L2から次式(2)により収縮率を算出した。
((L1-L2)/L1)×100(%) 式(2)
【0050】
(9)容器の耐熱温度
容器の胴部よりサンプルを切り出し、JIS K7121に準じて島津製作所株式会社製の示差走査熱量計(DSC-60)を用いて測定した。具体的には、窒素気流下、10℃/minで室温から200℃まで昇温し、その後10℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで200℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度を容器の耐熱温度とした。
【0051】
(10)容器にかかる配向応力
幅10mm、長さ60mmの試験片を、試験片の長手方向が容器の高さ方向になるように、容器から切り出し、容器の耐熱温度+30℃に加熱したシリコーンオイルが入ったオイルバス中に浸漬させ、試験片が熱収縮する際の応力を測定した。
【0052】
(11)容器の開口部への蓋材の取付け評価(シール性の評価)
容器を温度85℃に設定した熱風乾燥機(株式会社加藤理機製作所社製、スピードドライオーブンKRS-III-12型)内に置き、10秒後に取り出した。加熱後の容器を水平な平面上に置き、水を100ml(5℃)入れた後、容器の開口部にアルミニウム箔を基材とし、基材の下面にLDPEのシーラント層を設けた蓋材を配置した。そして、160℃に加熱した重さ2kgの鉄板を、当該鉄板を水平に維持しつつ、容器の開口部に対して鉛直方向より1秒間接触させた。得られた容器について、下記の基準で評価した。
〇:容器を逆さにしても水が漏れ出ず、蓋材の端部をつかんで持ち上げた際でも蓋材がはがれなかった。
△:容器を逆さにしても水が漏れ出なかったが、蓋材の端部をつかんで持ち上げた際に蓋材がはがれる部分があった。
×:容器を逆さにすると水が漏れ出た。
【0053】
(12)容器の開口部衝撃強度
(株)東洋精機製作所製のデュポン衝撃試験機(No451)を用いて、容器開口部の落錘衝撃強度を測定した。落下重錘の質量0.2kg、撃心突端の半径1/2インチで、280ケの容器で試験を行い、50%破壊高さから求めた落錘衝撃強度を開口部衝撃強度とした。
落下重錘の質量0.2kg×50%破壊高さcm=開口部衝撃強度(kg・cm)
開口部衝撃強度は3.5kg・cm以上であることが好ましく、より好ましくは4.0kg・cm以上である。3.5kg・cm未満の場合、容器を落下させた際に開口部が割れることがある。
【0054】
(13)金型汚れ
1サイクル7.2秒の連続成形を1000ショット実施後、金型表面をガーゼで強く拭い、ガーゼへの油状物質の付着状況で評価した。評価基準を以下に示す。
○:油状物質の付着が全く認められない。
△:油状物質の付着がわずかに認められる。
×:油状物質の付着がかなり認められる。
【0055】
(14)容器の成形性
1サイクル7.2秒で連続成形を実施し、1000ショットの成形を行い、連続成形の可否を評価した。評価基準を以下に示す。
○:1000ショットの連続成形が可能であるか、ブロー不足もしくは糸曳跡が見られる容器が4個以下であった。
△:1000ショットの連続成形はできたが、ブロー不足もしくは糸曳跡が見られる容器が5個以上発生した。
×:1000ショットの連続成形できなかった(ブロー不良等の不具合が発生し途中で停止した)。
【0056】
2.容器の製造
続いて、以下の合成例1~9に従って、ゴム変性スチレン系樹脂組成物(HIPS-1~HIPS-9)を得た。
<合成例1>ゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-1の製造
スチレン系単量体としてスチレン87.0質量部、ゴム状重合体としてポリブタジエンゴム(旭化成株式会社製ジエン55AE)3.8質量部、溶剤としてエチルベンゼン8.5質量部、可塑剤として流動パラフィン(出光興産社製CP-68N)0.6質量部、重合開始剤1として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.002質量部、連鎖移動剤1としてα-メチルスチレンダイマー0.06質量部を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1に、3.2リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を125℃/130℃/135℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分80回転とした。反応器出口の反応率は28%であった。
【0057】
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分20回転とし、温度は137℃/138℃/139℃に設定した。
続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は142℃/143℃/148℃に設定した。
【0058】
続いて層流型反応器-3からの反応液を220℃、1.2kPaに調整された2段真空ベント付き押出機に供給して、未反応モノマーや溶媒等の揮発成分を取り除き、ストランド状に押し出した樹脂をカッティングしてペレットを得た。このペレット100質量部に対し離型剤としてステアリン酸/ステアリン酸カルシウムの3:1の混合物を0.23質量部混合して、押出機を用いて混練して、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を調整した。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造条件と分析結果を表1に示す。
【0059】
<合成例2~9>ゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-2~9の製造
ゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-2~9は、表1に示すように条件を変更したこと以外はHIPS-1と同様にして合成し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状重合体分散粒子含有率、ゴム状重合体粒子の粒子径、スチレン系樹脂の還元粘度を表1に示すように制御した。
【0060】
【表1】
【0061】
続いて、実施例、比較例について説明する。
<実施例1>
得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-1を住友重機械工業株式会社製のインジェクションブロー成型機SG-125NPを用いて容器に成形した。
具体的には、まず射出成形によって有底のパリソン(高さ80mm、開口径28mm、フランジ幅2.0mm、胴部径25mm)を成形し、このパリソンが軟化状態(260℃)でコア(射出成形の雄金型)に付けたままでブロー成形金型内に移行させ、コアから圧気を送り込んでブロー成形金型内壁面まで膨らませることで、中空成形品(容器)を成形した。この際の雄金型温度は150℃であり、樹脂温度は200℃である。また、得られた容器の大きさは、高さ83mm、開口径28mm、フランジ幅2.0mm、胴部45mmであり、パリソンに対して2.7倍延伸している。
得られた容器の成形条件と評価結果を表2に示す。
【0062】
<実施例2~7>
ゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-2~HIPS-6を用いて、表2に示す成形条件で成形した以外、実施例1と同様な方法により実施例2~7の容器を製造した。また、得られた容器の大きさは、いずれも高さ83mm、開口径28mm、フランジ幅2.0mm、胴部45mmであり、パリソンに対する延伸倍率は2.7倍である。
得られた容器の成形条件と評価結果を表2に示す。
【0063】
<比較例1~4>
ゴム変性スチレン系樹脂組成物HIPS-7~HIPS-9及びHIPS-4を用いて、表2に示す成形条件で成形した以外、実施例1と同様な方法により比較例1~4の容器を製造した。また、得られた容器の大きさは、いずれも高さ83mm、開口径28mm、フランジ幅2.0mm、胴部45mmであり、パリソンに対する延伸倍率は2.7倍である。
得られた容器の成形条件と評価結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の実施例より、本発明の容器は容器開口部に取り付けた蓋材のシール性に優れていることがわかる。一方、表2の比較例より、90℃の温水に10秒間浸漬させた後の容器高さの収縮率が大きい容器は、開口部のシール性が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、容器の開口部と蓋材とのシール不良の発生を十分抑制可能な容器を提供することができる。