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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087431
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】地盤面生成システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
G01C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201801
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮吾
(72)【発明者】
【氏名】王 ア
(72)【発明者】
【氏名】前橋 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】城 朋恵
(72)【発明者】
【氏名】岸本 奈都子
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 杜香
(72)【発明者】
【氏名】八木 美鈴
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、弱強度計測点データの中から地盤に反射したものを抽出して地盤面の生成に活用することができる地盤面生成システムを提供することにある。
【解決手段】本願発明の地盤面生成システムは、複数のコースを飛行しながら航空レーザスキャナで取得された点群データに基づいて地盤面を生成するシステムであって、1次フィルタリング手段と2次フィルタリング手段、調整計算手段、3次フィルタリング手段、暫定地盤面生成手段、準適正データフィルタリング手段を備えたものである。このうち準適正データフィルタリング手段は、準適正データから適用準適正データを抽出する手段であり、暫定地盤面を適用準適正データで補完することで地盤面を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空レーザスキャナで取得された複数の計測点データからなる点群データに基づいて地盤面を生成するシステムであって、
前記点群データから、計測時に受信したレーザの反射強度があらかじめ定めた強度閾値を下回る前記計測点データを1次ノイズデータとして抽出するとともに、該点群データから該1次ノイズデータを除いた前記計測点データを1次適正データに分類する1次フィルタリング手段と、
近傍点との配置関係に応じて、前記1次適正データ及び前記1次ノイズデータから2次ノイズデータを抽出するとともに、該1次適正データから該2次ノイズデータを除いた前記計測点データを2次適正データ、該1次ノイズデータから該2次ノイズデータを除いた前記計測点データを準適正データとしてそれぞれ分類する2次フィルタリング手段と、
前記2次適正データに対して前記コース間の調整計算を行うことによって、調整後2次適正データを求める調整計算手段と、
近傍点との配置関係に応じて、前記調整後2次適正データから3次ノイズデータを抽出するとともに、該調整後2次適正データから該3次ノイズデータを除いた前記計測点データを適正データに分類する3次フィルタリング手段と、
前記適正データに基づいて、暫定地盤面を生成する暫定地盤面生成手段と、
前記暫定地盤面との配置関係に応じて、前記準適正データから適用準適正データを抽出する準適正データフィルタリング手段と、を備え、
前記暫定地盤面を前記適用準適正データで補完することによって、前記地盤面を生成する、
ことを特徴とする地盤面生成システム。
【請求項2】
前記2次フィルタリング手段及び前記3次フィルタリング手段は、当該計測点データと近傍にある他の前記計測点データとの距離、及び/又は当該計測点データと近傍にある他の前記計測点データとからなる角度が、あらかじめ定めたノイズ閾値を上回る該計測点データをノイズデータとして抽出する、
ことを特徴とする請求項1記載の地盤面生成システム。
【請求項3】
前記準適正データフィルタリング手段は、前記暫定地盤面からの距離があらかじめ定めた地盤閾値を下回る前記計測点データを前記適用準適正データとして抽出する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地盤面生成システム。
【請求項4】
前記暫定地盤面を構成する前記適正データの密度があらかじめ定めた点密度閾値を下回る領域を点群不足領域として設定する不足領域設定手段を、さらに備え、
前記点群不足領域に含まれる前記適用準適正データを抽出したうえで補完することによって、前記地盤面を生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の地盤面生成システム。
【請求項5】
表示手段に表示された前記地盤面を目視しながら、所望の前記適正データ及び/又は前記適用準適正データをオペレータが除去し得る手動除去手段を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の地盤面生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レーザ計測機によって得られた計測結果に基づいて地盤高を与える技術に関するものであり、より具体的には、通常はノイズとして除去されるデータも積極的に活用したうえで地盤面を生成することができる地盤面生成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広範囲に渡って地物を計測する場合、これまでは空中写真測量によるのが主流であったが、昨今では、航空レーザ計測や、衛星写真を利用した計測、あるいは合成開口レーダを利用した計測など様々な計測手法が出現し、状況に応じて好適な手法を適宜選択できるようになった。なおここでいう「地物」とは、橋梁やオフィスビルといった人工物、あるいは河川や海、森林といった自然物など、地上に存在するあらゆる「物」の総称である。
【0003】
このうち航空レーザ計測は、計測したい対象範囲の上空を航空機で飛行し、この対象範囲にある地物に対して照射したレーザパルスの反射波を受けて計測する手法である。通常、航空機にはGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位計と、IMU(Inertial Measurement Unit)などの慣性測量装置が搭載されているため、これらGNSSとIMUによってレーザパルス照射時における照射位置(x,y,z)と照射姿勢(ω,φ,κ)を記録することができる。
【0004】
航空機からレーザパルスが照射されるとその照射時刻は記録され、また地物で反射したレーザパルスは航空機に搭載されたセンサで受信されるとともにその受信時刻が記録される。したがって、照射時刻と受信時刻との時間差によって計測点(レーザパルスが反射した地点)までの距離が得られ、レーザパルス照射時における照射位置(x,y,z)と照射姿勢(ω,φ,κ)も記録されていることから、レーザパルスの照射点(つまり、計測点)の3次元座標のデータ(以下、「計測点データ」という。)を得ることができるわけである。さらに航空機に搭載されたセンサは、レーザパルスを受信すると、そのときの反射波の強度(以下、「反射強度」という。)が記録される。この反射強度は、いわば受信した反射波のエネルギーの大きさ(レーザパルスの振幅)であり、直接的には電圧として計測され、この電圧を換算することでエネルギーの大きさが得られる。
【0005】
従来の航空レーザ計測では近赤外レーザ(波長1064ナノメートル:nm)を使用していたためレーザパルスが水面で反射して水底の地物は計測できなかったが、昨今では水底の地物(つまり水深)も取得できる航空レーザ計測が利用されるようになった。この手法は、ALB(Airborne Laser Bathymetry)と呼ばれ、近赤外レーザに加え航空機からグリーンレーザ(波長532nm)を照射することができる手法である。グリーンレーザは水中を透過して水底から反射してくることから測深が可能であり、すなわち陸域は近赤外レーザで計測し、水域部はグリーンレーザで計測するわけである。いずれにしろ、近赤外レーザやグリーンレーザを利用する航空レーザ計測は、広範囲の地物を取得するために多用される計測技術のひとつである。
【0006】
ここまで説明したように航空レーザ計測は、飛行中の航空機から地物に対してレーザパルスを照射することで計測点データを取得する手法である。そして、このレーザパルスは1秒間に100,000~2,000,000回ほど発射されることから、1回の計測(フライト)では夥しい数の計測点データが取得される。また森林などを対象に計測する場合、当然ながら樹木の間を縫って地面に対してのみレーザパルスを照射する(つまり、地面を狙ってレーザパルスを照射する)ことは不可能であり、そのため地面を照査した計測点データのほか、樹葉や樹幹に反射した計測点データも取得される。
【0007】
多くの場合、航空レーザ計測は、対象範囲の地盤の高さを把握するために行われることから、樹葉や樹幹に反射した計測点データはいわば不要なデータ、つまりノイズデータである。そのため樹葉等に反射したノイズデータを除去するいわゆるフィルタリングが一般的に実施されており、そしてフィルタリングに関する種々の改良技術が提案されいる。例えば特許文献1では写真計測による地形モデル(いわゆるサーフェイスモデル)と航空レーザ計測による計測点データを照らし合わせ、写真計測による地形モデルに近似する計測点データは樹葉や樹幹に反射したものである(サーフェイスに相当する)としてノイズ除去する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-158278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、樹葉等に反射した計測点データはノイズデータとして除去するフィルタリングを行うのが一般的である。しかしながら、1回の計測で得られる夥しい数の計測点データを人が判断しながら除去していくのは現実的ではない。そのため、一定の要件のもと自動的にノイズ除去しているのが現状である。代表的なフィルタリングの例としては、受信したレーザパルスの反射強度(レーザパルスの振幅)が所定の閾値を下回る計測点データはノイズデータとして除去するフィルタリングを挙げることができる。樹葉等に反射したレーザパルスの反射強度は地盤に反射したそれより小さいことが知られており、したがって小さい(弱い)反射強度のレーザパルスに係る計測点データは無条件にノイズデータとして取り扱うわけである。実際、計測点データを処理する多くのソフトウェアは、この反射強度を要件としたフィルタリング処理を採用している。
【0010】
ところで、小さい(閾値を下回る)反射強度のレーザパルス(以下、「弱強度レーザパルス」という。)も、条件等によっては適切に地盤に反射したものもある。つまり、現状のフィルタリング処理は、有用な計測点データを活用することなく除去しているわけである。フィルタリング処理後に相当の密度で計測点データが取得できている領域ではこのような弱強度レーザパルスに係る計測点データ(以下、「弱強度計測点データ」という。)は特に必要とされないものの、広葉樹の樹林下などフィルタリング処理後にほとんど計測点データが残らない領域ではこのような弱強度計測点データが極めて貴重となる。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、弱強度計測点データの中から地盤に反射したものを抽出して地盤面の生成に活用することができる地盤面生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、従来いわば捨てていた弱強度計測点データを有効に活用することとし、そのため弱強度計測点データの中から地盤に反射したものを選出する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0013】
本願発明の地盤面生成システムは、複数のコースを飛行しながら航空レーザスキャナで取得された複数の計測点データからなる点群データに基づいて地盤面を生成するシステムであって、1次フィルタリング手段と2次フィルタリング手段、調整計算手段、3次フィルタリング手段、暫定地盤面生成手段、準適正データフィルタリング手段を備えたものである。このうち1次フィルタリング手段は、点群データから計測時に受信したレーザの反射強度があらかじめ定めた強度閾値を下回る計測点データを「1次ノイズデータ」として抽出するとともに、点群データから1次ノイズデータを除いた計測点を「1次適正データ」として抽出する手段であり、2次フィルタリング手段は、近傍点との配置関係に応じて1次適正データと1次ノイズデータから「2次ノイズデータ」を抽出するとともに、1次適正データから2次ノイズデータを除いた計測点データを「2次適正データ」、1次ノイズデータから2次ノイズデータを除いた計測点データを「準適正データ」にそれぞれ分類する手段である。また調整計算手段は、2次適正データに対してコース間の調整計算を行うことによって「調整後2次適正データ」を求める手段であり、3次フィルタリング手段は、近傍点との配置関係に応じて調整後2次適正データから「3次ノイズデータ」を抽出するとともに、調整後2次適正データから3次ノイズデータを除いた計測点データを「適正データ」に分類する手段である。暫定地盤面生成手段は、適正データに基づいて「暫定地盤面」を生成する手段であり、準適正データフィルタリング手段は、暫定地盤面との配置関係に応じて準適正データから「適用準適正データ」を抽出する手段である。そして、暫定地盤面を適用準適正データで補完することによって、地盤面を生成する。
【0014】
本願発明の地盤面生成システムは、当該計測点データと近傍にある他の計測点データとの距離やその計測点データとの角度が、あらかじめ定めたノイズ閾値を上回る測点データをノイズデータとして抽出するものとすることもできる。
【0015】
本願発明の地盤面生成システムは、暫定地盤面からの距離があらかじめ定めた地盤閾値を下回る計測点データを適用準適正データとして抽出するものとすることもできる。
【0016】
本願発明の地盤面生成システムは、不足領域設定手段をさらに備えたものとすることもできる。この不足領域設定手段は、暫定地盤面を構成する適正データの密度があらかじめ定めた点密度閾値を下回る領域を点群不足領域として設定する手段である。この場合、点群不足領域に含まれる適用準適正データを抽出したうえで補完することによって、地盤面を生成する。
【0017】
本願発明の地盤面生成システムは、手動除去手段をさらに備えたものとすることもできる。手動除去手段は、表示手段に表示された地盤面を目視しながら、所望の適正データや適用準適正データをオペレータが除去し得る手段である。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の地盤面生成システムには、次のような効果がある。
(1)従来は取り除いていた計測点データ(弱強度計測点データ)を利用するため、より緻密な地盤面の生成が可能となる。特に、広葉樹の樹林下などフィルタリング処理後にほとんど計測点データが残らない領域では、効果的に地盤面を生成することができる。
(2)従来の航空レーザスキャナやデータ処理用ソフトウェアを改変することなくそのまま利用することができ、すなわち特段のコストがかかることなく汎用的に航空レーザ計測に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明の地盤面生成システムの主な構成を示すブロック図。
図2】(a)は2点の近傍計測点データを連結する線分と当該計測点データとの離隔を模式的に示す側面モデル図、(b)は2点の近傍計測点データを連結する線分と、当該計測点データと一方の近傍計測点データを連結する線分との挟角を模式的に示す側面モデル図。
図3】準適正データと2次適正データ、2次ノイズデータを模式的に示す側面モデル図。
図4】準適正データと暫定地盤面との配置関係を模式的に示す側面モデル図。
図5】本願発明の地盤面生成システムを使用するときの主な処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の地盤面生成システムの実施の一例を図に基づいて説明する。本願発明の地盤面生成システムは、小さい(弱い)反射強度のレーザパルスに係る計測点データ(弱強度計測点データ)を地盤面の生成に有効活用することを特徴のひとつとしている。
【0021】
図1は、本願発明の地盤面生成システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の地盤面生成システム100は、1次フィルタリング手段101と2次フィルタリング手段102、調整計算手段103、3次フィルタリング手段104、暫定地盤面生成手段105、準適正データフィルタリング手段107を含んで構成され、さらに不足領域設定手段106や地盤面生成手段108、手動除去手段109、点群データ記憶手段110などを含んで構成することもできる。
【0022】
地盤面生成システム100を構成する1次フィルタリング手段101と2次フィルタリング手段102、調整計算手段103、3次フィルタリング手段104、暫定地盤面生成手段105、不足領域設定手段106準適正データフィルタリング手段107、地盤面生成手段108、手動除去手段109は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサと、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、タブレット型コンピュータ(iPad(登録商標)など)やスマートフォンといった携帯型端末機器、あるいはパーソナルコンピュータ(PC)やサーバーなどを例示することができる。
【0023】
また、点群データ記憶手段110は、コンピュータ装置の記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバーに構築することもできる。データベースサーバーに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(有線や無線通信)で保存するクラウドサーバーとすることもできる。
【0024】
以下、地盤面生成システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0025】
(点群データ記憶手段)
点群データ記憶手段110は、近赤外レーザを用いた航空レーザ計測やグリーンレーザを用いた航空レーザ計測によって対象範囲を計測した結果得られる多数の計測点データ(つまり、点群データ)を記憶する手段である。なお、それぞれの計測点データは、レーザパルスが反射した地点(計測点)における平面座標値と高さ情報からなるいわゆる3次元座標である。ここで平面座標値とは緯度と経度あるいはX座標とY座標で表される水平面上における座標であり、高さ情報とは標高など所定の基準水平面からの鉛直方向の距離を意味する。
【0026】
(1次フィルタリング手段)
1次フィルタリング手段101は、点群データ記憶手段110から点群データを読み出すとともに(図1)、その点群データに対して1次フィルタリングの処理を実行する手段である。この1次フィルタリングは、従来行われている処理であり、レーザパルスの反射強度(レーザパルスの振幅)があらかじめ定めた閾値(以下、「強度閾値」という。)を下回る計測点データを抽出し、ここで抽出された計測点データを「1次ノイズデータ」として分類する処理である。ただし、1次ノイズデータとして分類するだけであって、直ちに除去されるわけではなく、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0027】
また1次フィルタリング手段101は、点群データから1次ノイズデータを除いた計測点データを抽出し、その抽出された計測点データを「1次適正データ」として分類する。この1次適正データも、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0028】
(2次フィルタリング手段)
2次フィルタリング手段102は、1次ノイズデータと1次適正データ(つまり、点群データ)に対して2次フィルタリングの処理を実行する手段である。この2次フィルタリングは、従来行われている処理であり、対象とする計測点データ(以下、「当該計測点データ」という。)の近傍にある計測点データ(以下、「近傍計測点データ」という。)との配置関係に応じて該当する計測点データを抽出し、ここで抽出された計測点データを「2次ノイズデータ」として分類する処理である。具体的には、図2(a)に示すように、2点の近傍計測点データを連結する線分と、当該計測点データとの離隔L(距離)が、あらかじめ定めた長さの閾値(以下、「ノイズ閾値」という。)を上回る計測点データを抽出して2次ノイズデータに分類する。また、図2(b)に示すように、2点の近傍計測点データを連結する線分と、当該計測点データと一方の近傍計測点データを連結する線分との挟角aがノイズ閾値(この場合は、角度)を上回る計測点データも2次ノイズデータに分類する。
【0029】
また2次フィルタリング手段101は、1次ノイズデータから2次ノイズデータを除いた計測点データを「準適正データ」として分類するとともに、1次適正データから2次ノイズデータを除いた計測点データを「2次適正データ」として分類する。図3に、準適正データと2次適正データ、2次ノイズデータを模式的に示す。これらの準適正データと2次適正データは、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0030】
(調整計算手段)
航空レーザ計測は、通常、広い範囲を対象とするため、複数のコース(航路)を飛行することで対象範囲を網羅している。そして、計測漏れとなる領域が生じないように隣接するコースではある程度重複(サイドラップ)して計測を行っている。つまり、サイドラップ範囲では異なるコースを飛行した2種類の計測を行っているわけである。ところで航空レーザ計測では、GNSSやIMUなどの機器に依存する誤差や、レーザパルスが大気を通過することによる誤差を持つことが知られている。したがって、サイドラップ範囲で得られた2種類の計測結果には相違が生じ、すなわち双方の計測結果が整合しないことがある。そのため航空レーザ計測を行った際には、サイドラップ範囲における2つの計測結果を比較して整合性を判断するいわゆるコース間検証が行われ、整合しないと判断された場合には双方の計測結果を整合させるコース間調整が行われる。
【0031】
調整計算手段103は、複数のコースを飛行して得られた計測点データに対してコース間調整を行う手段である。ただしこのコース間調整には、2次適正データが用いられる。ここで、2次適正データに対してコース間調整が実行された後の計測点データは、「調整後2次適正データ」として、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0032】
(3次フィルタリング手段)
3次フィルタリング手段104は、調整後2次適正データに対して2次フィルタリングの処理を実行する手段である。この3次フィルタリングも、従来行われている処理であり、2次フィルタリング処理(図2)と同様、当該計測点データと近傍計測点データとの配置関係に応じて該当する計測点データを抽出し、ここで抽出された計測点データを「3次ノイズデータ」として分類する処理である。
【0033】
また3次フィルタリング手段104は、調整後2次適正データから3次ノイズデータを除いた計測点データを「適正データ」として分類する。この適正データは、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0034】
(暫定地盤面生成手段)
暫定地盤面生成手段105は、3次フィルタリング手段104によって分類された適正データを用いて地盤面を生成する手段である。ただし、この段階における地盤面はあくまで暫定のものであって完成したものではない。したがって、暫定地盤面生成手段105によって生成される地盤面のことを、便宜上ここでは「暫定地盤面」ということとする。
【0035】
(不足領域設定手段)
不足領域設定手段106は、暫定地盤面を構成する適正データに基づいて、「不足領域」を設定する手段である。ここで不足領域とは、適正データの点密度(単位面積当たりの計測点数)が低い領域(図3)であり、より詳しくは適正データの点密度があらかじめ定められた閾値(以下、「点密度閾値」という。)を下回る領域である。既述したように、相当の密度で計測点データが取得できている領域では地盤面を生成するにあたって特段の問題はないが、広葉樹の樹林下など計測点データが不足している領域では適用準適正データ(後述する)が極めて貴重となる。そこで、不足領域設定手段106によってあらかじめ不足領域を設定し、その不足領域において適用準適正データで補完すると好適になるわけである。もちろん、不足領域設定手段106によって不足領域を設定することなく、すべての対象範囲において適用準適正データで補完する仕様とすることもでき、この場合は不足領域設定手段106を省略することができる。
【0036】
(準適正データフィルタリング手段)
準適正データフィルタリング手段107は、準適正データに対してフィルタリング処理を行うことによって「適用準適正データ」を抽出する手段である。ここで適用準適正データとは、準適正データのうち地盤に反射したレーザパルスによる計測点データであって、地盤面の生成にとって有益な計測点データである。ここで行われるフィルタリングは、暫定地盤面生成手段105によって生成された(適正データによって構成点される)暫定地盤面との配置関係に応じて該当する準適正データを抽出し、ここで抽出された準適正データを「適用準適正データ」として分類する処理である。具体的には、図4に示すように、暫定地盤面との離隔L(距離)が、あらかじめ定めた長さの閾値(以下、「地盤閾値」という。)を下回る準適正データを抽出して適用準適正データに分類する。また、近傍2点の適性データを連結する線分と、準適正データと一方の近傍適性データを連結する線分との挟角aが地盤閾値(この場合は、角度)を下回る準適正データも適用準適正データに分類することができる。この適用準適正データは、別途、記憶手段(例えば、点群データ記憶手段110)に記憶される。
【0037】
(地盤面生成手段)
地盤面生成手段108は、暫定地盤面生成手段105によって生成された暫定地盤面(つまり、適正データ)と、準適正データフィルタリング手段107によって分類された適用準適正データとによって、地盤面を生成する手段である。換言すれば、暫定地盤面のうち不足領域に対して、適用準適正データで補完することによって地盤面を完成させるわけである。
【0038】
(手動除去手段)
手動除去手段109は、地盤面生成手段108によって生成された地盤面に対して、調整を行うことができる手段である。具体的には、表示手段(ディスプレイなど)に表示された地盤面を目視しながら、オペレータがポインティングデバイス(マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックパッド、トラックボールなど)やキーボード等を利用して、地盤面を構成する適正データと適用準適正データに対して除去や移動といった編集操作を行うことができるものである。
【0039】
(処理の流れ)
続いて、図5を参照しながら本願発明の地盤面生成システム100を使用するときの主な処理の流れについて説明する。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0040】
はじめに1次フィルタリング手段101が、点群データ記憶手段110から点群データを読み出し、その点群データに対して1次フィルタリング処理を実行することによって「1次ノイズデータ」と「1次適正データ」を抽出する(図5のStep201)。次いで、2次フィルタリング手段102が、1次ノイズデータと1次適正データに対して2次フィルタリング処理を実行することによって「2次ノイズデータ」と「準適正データ」、「2次適正データ」を抽出する(図5のStep202)。
【0041】
2次適正データが抽出されると、調整計算手段103がその2次適正データに対してコース間調整を実行することによって「調整後2次適正データ」を算出する(図5のStep203)。そして、3次フィルタリング手段104が、調整後2次適正データに対して3次フィルタリングの処理を実行することによって「3次ノイズデータ」と「適正データ」を抽出する(図5のStep204)。
【0042】
適正データが抽出されると、暫定地盤面生成手段105がその適正データに基づいて「暫定地盤面」を生成し(図5のStep205)、不足領域設定手段106が、暫定地盤面を構成する適正データに基づいて「不足領域」を設定する(図5のStep206)。
【0043】
不足領域が設定されると、準適正データフィルタリング手段107が、準適正データに対してフィルタリング処理を行うことによって「適用準適正データ」を抽出する(図5のStep207)。そして、暫定地盤面(つまり、適正データ)と適用準適正データが得られると、地盤面生成手段108が、暫定地盤面のうち不足領域(あるいは、全領域)に対して適用準適正データで補完することで地盤面を完成させる(図5のStep208)。また、必要に応じてオペレータが、表示手段(ディスプレイなど)に表示された地盤面を目視しながら、手動除去手段109(ポインティングデバイスなど)を用いて適正データや適用準適正データに対して編集操作を行う(図5のStep209)。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願発明の地盤面生成システムは、山地部や海岸部、市街地など様々な場所の地盤高を取得する際に利用することができ、特に森林部を有する場所に好適に利用することができる。本願発明によれば、高い精度で地盤高を得ることができることから、社会インフラストラクチャーの計画や防災計画などに有効活用することができ、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0045】
100 本願発明の地盤面生成システム
101 (地盤面生成システムの)1次フィルタリング手段
102 (地盤面生成システムの)2次フィルタリング手段
103 (地盤面生成システムの)調整計算手段
104 (地盤面生成システムの)3次フィルタリング手段
105 (地盤面生成システムの)暫定地盤面生成手段
106 (地盤面生成システムの)不足領域設定手段
107 (地盤面生成システムの)準適正データフィルタリング手段
108 (地盤面生成システムの)地盤面生成手段
109 (地盤面生成システムの)手動除去手段
110 (地盤面生成システムの)点群データ記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5