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特開2023-8745医療機関における薬剤の需要を予測する装置、方法及びそのためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008745
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】医療機関における薬剤の需要を予測する装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20230112BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230112BHJP
【FI】
G16H20/10
G06Q10/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165822
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2021110375の分割
【原出願日】2021-07-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】516302270
【氏名又は名称】株式会社カケハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山本 惇一
(72)【発明者】
【氏名】保坂 桂佑
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】従来にない、医療機関における薬剤の需要を予測する方法を提供する。
【解決手段】装置100は、薬局が受け取った複数の処方箋に対応する処方情報を取得する(S201)。次いで、装置100は、同一疾患の治療のために今後当該薬局に再来局する患者による需要と初来局する患者による需要とを区別して別個に予測を行う(S202、S203)。そして、各薬剤に関する予測結果の各日における値に基づいて、最終的な予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する(S204)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関における薬剤の需要を予測する方法であって、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第2のステップは、
前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる1又は複数の疾患を推定するステップを含み、
前記予測来局日及び予測需要数量の少なくとも一方を、疾患別の予測モデルを用いて算出する。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、
前記第2のステップは、
前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる単一の疾患を推定するステップと、
前記患者が前記疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来局する予測回数を算出するステップと、
前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来局日及び前記疾患に用いる1又は複数の薬剤の予測需要数量を算出するステップと
を含む。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、
前記第2のステップは、
前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる複数の疾患を推定するステップと、
前記複数の疾患のそれぞれについて、
前記患者が当該疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来局する予測回数を算出するステップと、
前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来局日及び当該疾患に用いる1又は複数の薬剤の疾患別予測需要数量を算出するステップと
を含み、
前記第2のステップにより算出される予測需要数量は、前記複数の疾患のそれぞれに割り当てられた重みに応じた値を各疾患別予測需要数量に乗じて、前記複数の疾患について合計することにより算出する。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法であって、
前記第2のステップにおいて、前記患者の過去の処方情報の少なくとも一部を前記予測回数の算出に用いる。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、
前記第2のステップは、疾患別の販売履歴を用いて前記予測需要数量を算出する。
【請求項7】
コンピュータに、医療機関における薬剤の需要を予測する方法を実行させるためのプロ
グラムであって、前記方法は、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含む。
【請求項8】
医療機関における薬剤の需要を予測する装置であって、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得して、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の再来局の予測来局日及び予測需要数量を算出し、
予測来局日及び予測需要数量の前記算出を前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返し、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出し、
得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関における薬剤の需要を予測する装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬局等の医療機関は、卸売業者等の販売業者から薬剤を仕入れ、来局する患者に対して、当該患者に処方された1又は複数の医薬品を必要に応じて調製し、交付する。医療機関は、患者の求めに応じて薬剤を交付する必要があることから、種類及び量ともに、十分な在庫を確保するよう努める。
【0003】
薬剤には、各商品を識別するためのコードが付与されており、薬効成分が同一であっても、たとえば、製造業者が異なれば、別商品として異なるコードが設定されるものもある。実際の流通においては、一定の単位で各商品の販売がなされ、最小注文単位である販売包装単位、販売包装単位の商品を複数梱包した元梱包装単位等がある。これらの包装単位を識別するためのコードも付与されており、GS1と呼ばれるコード体系が国際的に用いられている。たとえば、「ロキソニン錠60mg」を10錠包装したPTP包装シート10枚という販売包装単位にはGS1体系に従ったコードとして「14987081105400」が設定されている。医療機関は、こうしたコードを指定して、必要な種類及び量の商品を仕入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-166859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状において、医療機関はどの種類の薬剤に対してどの程度の需要がいつ発生するかを予測できておらず、過去の経験に基づいて発注処理を行っているため、在庫が不足して急遽配達を依頼したり、逆に過剰の在庫を抱えてしまったりする非効率が発生している。
【0006】
特許文献1には、医療機関において、医薬品の出庫の推移を学習し、学習結果に応じて当該医薬品の需要を予測する技術が記載されているものの、発明者らは、新たな着想を見出した。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来にない、医療機関における薬剤の需要を予測する装置、方法及びそのためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、医療機関における薬剤の需要を予測する方法であって、前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップとを含む。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記第2のステップは、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる1又は複数の疾患を推定するステップを含み、前記予測来局日及び予測需要数量の少なくとも一方を、疾患別の予測モデルを用いて算出する。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の方法であって、前記第2のステップは、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる単一の疾患を推定するステップと、前記患者が前記疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来局する予測回数を算出するステップと、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来局日及び前記疾患に用いる1又は複数の薬剤の予測需要数量を算出するステップとを含む。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、第1の態様の方法であって、前記第2のステップは、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる複数の疾患を推定するステップと、前記複数の疾患のそれぞれについて、前記患者が当該疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来局する予測回数を算出するステップと、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来局日及び当該疾患に用いる1又は複数の薬剤の疾患別予測需要数量を算出するステップとを含み、前記第2のステップにより算出される予測需要数量は、前記複数の疾患のそれぞれに割り当てられた重みに応じた値を各疾患別予測需要数量に乗じて、前記複数の疾患について合計することにより算出する。
【0012】
また、本発明の第5の態様は、第3又は第4の態様の方法であって、前記第2のステップにおいて、前記患者の過去の処方情報の少なくとも一部を前記予測回数の算出に用いる。
【0013】
また、本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様の方法であって、前記第2のステップは、疾患別の来局履歴を用いて前記予測来局日を算出する。
【0014】
また、本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様の方法であって、前記第2のステップは、前記予測来局日を、次回以降の来局週と来局曜日とを個別に予測した結果に基づいて算出する。
【0015】
また、本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様の方法であって、前記第2のステップは、疾患別の販売履歴を用いて前記予測需要数量を算出する。
【0016】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、医療機関における薬剤の需要を予測する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップとを含む。
【0017】
また、本発明の第10の態様は、医療機関における薬剤の需要を予測する装置であって、前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得して、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の再来局の予測来局日及び予測需要数量を算出し、予測来局日及び予測需要数量の前記算出を前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返し、前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、初来局の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出し、得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、薬局が受け取った複数の処方箋に対応する処方情報を取得して、今後当該薬局に再来局する患者による需要と初来局する患者による需要とを区別して別個に予測を行うことによって、従来にない、医療機関における薬剤の需要を予測する新たな手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる需要予測装置を示す図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる需要予測方法の概略を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる再来局患者に関する需要予測方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態にかかる需要予測装置である。装置100は、複数の処方箋に対応する処方情報を取得し、当該処方情報に含まれる各薬剤の予測需要数量の時系列を生成する。処方情報は、薬局が受け取った処方箋に記載された二次元コードを、当該薬局に設置された撮像素子を有する機器で撮像して生成し、生成された処方情報を装置100に有線又は無線で入力することで取得したり、薬局が受け取った処方箋に対応する処方情報を装置100がIPネットワーク等のコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な機器から電子的に受信することで取得したりすることができる。予測需要数量の時系列は、各薬剤の日単位の一連の予測需要数量とすることができる。装置100は、複数の薬局に対して需要予測サービスを提供するサーバであることが好ましい。
【0022】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、処理部102において、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置100は、1又は複数の装置、コンピュータないしサーバを含むことがある。当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部103又は装置100からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース104等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部102において実行することができる。以下で記憶部103に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース104に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0023】
図2に、本発明の一実施形態にかかる需要予測方法の概略を示す。装置100は、薬局が受け取った複数の処方箋に対応する処方情報を取得する(S201)。次いで、装置100は、同一疾患の治療のために今後当該薬局に再来局する患者による需要と初来局する患者による需要とを区別して別個に予測を行う(S202、S203)。そして、各薬剤に関する予測結果の各日における値の和を算出することで、最終的な予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する(S204)。図2では、再来局患者に関する予測の次に初来局患者に関する予測を示しているが、順序は問わない。また、図2では、最初に処方情報を取得した上で予測処理を行う順序が示されているが、処方情報は予測処理に必要な際に順次取得するようにしてもよい。また、各日における和を算出することで時系列を生成するものとして説明したが、より一般に、各薬剤に関する予測結果の各日における値に基づいて各日の最終的な予測需要数量を算出することで、予測需要数量の時系列を生成すればよい。
【0024】
以下では、再来局患者に関する予測をまず説明し、次いで初来局患者に関する予測を説明する。このように再来局患者に関する予測と初来局患者に関する予測を別個に行う理由は、発明者らは、これらの予測は独立性が高いことを見出したことにある。
【0025】
本明細書において説明する各種の予測ないし推定は、いずれも確率的な要素を考慮し、期待値並びに信頼区間の上限及び下限を結果として算出することが好ましい。たとえば、予測時需要数量について、正規分布を仮定することができ、そうすることで、予測需要数量の期待値は、再来局患者に関して予測された期待値と初来局患者に関して予測された期待値の和により求められる。また、正規分布における分散の加法性から、再来局患者に関して得られる分散と初来局患者に関して得られる分散の平方根により、標準偏差が求められ、当該標準偏差を用いて信頼区間が定まる。しかしながら、本明細書において説明する各種の予測ないし推定のすべてにおいて、確率的な要素を考慮しなければならないわけではない。
【0026】
再来局患者に関する予測
図3に、本発明の一実施形態にかかる再来局患者に関する需要予測方法の流れを示す。装置100は、需要予測の対象である薬局が受け取った複数の処方箋のそれぞれに対応する処方情報について、需要予測を行い、それらの結果が一連の予測需要数量として時系列をなす。図3は、各処方箋に対応する処方情報に対して行われる処理を示している。
【0027】
まず、装置100は、取得した処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる疾患を推定する(S301)。処方箋rには患者が治療中である疾患dについて記載はないものの、患者の1又は複数の疾患を治療するために1又は複数の薬剤が処方されているのであるから、処方情報に含まれる1又は複数の薬剤に基づいて、当該患者の1又は複数の疾患を推定することが理論的に可能である。本実施形態では、一例として、1又は複数の薬剤と各薬剤を用い得る1又は複数の疾患との結びつきの強さとの対応づけを記憶部103に記憶しておき、処方情報に含まれる各薬剤に基づいて当該対応づけを参照して、各疾患との結びつきの強さを判定することができる。そして、処方情報に含まれるすべての薬剤について判定した各疾患との結びつきの強さを疾患ごとに合計して、上位N個(Nは1以上の整数)の疾患を患者の疾患として推定すればよい。各薬剤を用い得る1又は複数の疾患との結びつきの強さの値は、たとえば、各薬剤が各疾患に対して過去に用いられた頻度に応じて決定することができる。
【0028】
当該対応づけにより保持される薬剤mと疾患dとの結びつきの強さは、当該強さの値を重みωm,dとして表すことができる。処方箋rに含まれる1又は複数の薬剤の集合をM、疾患ごとに合計した値ωは、次式により表すことができる。
【0029】
【数1】
【0030】
以下の表は、薬剤mが疾患dと2.0の強さで結びつき、疾患dと1.5の強さで結びついており、薬剤mが疾患dと3.0の強さで結びつき、疾患dと強さ1.0の強さで結びついていることを示している。
【0031】
【表1】
【0032】
疾患ごとに合計すれば、疾患dについて5.0、疾患dについて1.5、疾患dについて1.0となる。上位1個を基準とすれば疾患dが推定され、上位2個を基準とすれば疾患d及びdが推定される。以下では、上位1個を疾患として推定する例で主に説明する。なお、N個(Nは2以上の整数)の疾患が推定された場合には、それぞれの疾患dについての疾患別予測需要数量に当該疾患dに割り当てられた重みωdnに応じた値aを乗じて和を算出することで、1つの処方箋rに基づく各薬剤の予測需要数量とすることができる。例として、各疾患dに割り当てられた重みωdnに応じた値aは、次式で表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
次に、装置100は、疾患別の予測モデルに処方情報の少なくとも一部を入力して、当該処方情報に関連づけられた患者の再来局回数を予測する(S202)。入力されるデータとしては、年齢、性別、診療科等が挙げられる。0回であれば、予測処理は終了し、n回(nは1以上の整数)であれば、1回目の来局日を予測し(S303)、需要数量を予測する(S304)。nが2以上であれば必要に応じて2回目からn回目の来局日及び需要数量を予測する。たとえば、風邪、インフルエンザ等の急性疾患であれば再来局がなく、初回の来局で治療が完了することがある。糖尿病等の慢性疾患であれば、数回以上の再来局が見込まれる。
【0035】
再来局回数の予測モデルは、教師あり学習によって生成することができ、より具体的には、LightGBM、XGBoost等の勾配ブースティングを用いた教師あり学習により生成することができるが、現在利用可能であり、今後利用可能となる任意の機械学習の手法によって生成すればよい。また、再来局回数の予測モデルは、機械学習により生成されるものに限らず、処方情報の少なくとも一部が入力され、それに応じて、再来局回数が出力される任意のモデルとしてもよい。入力されるデータには、当該処方情報に関連づけられた患者の過去の処方情報の少なくとも一部も含めることがより高い精度を得る上で好ましいことがある。
【0036】
再来局日の予測についても、機械学習又はその他の現在利用可能であり、今後利用可能となる任意の手法により生成した予測モデルによって行うことができるが、当該処方情報が関連づけられた患者又は当該処方情報が関連づけられた疾患を有する患者の疾患別の過去の来局履歴から得られる来局間隔分布を用いて行うこともできる。来局間隔分布は、日数の単位で算出してもよいが、週数の単位で算出し、さらに来局曜日分布も用いることで、具体的な来局日を予測するようにしてもよい。
【0037】
再来局日の予測は、発明者らの検討から、週数単位の来局間隔の予測と来局曜日の予測は独立性が高いことを用いることが好ましい。これらを別個に予測した結果に基づいて、積事象である再来局日の予測を行うことができる。
【0038】
需要数量の予測についても、機械学習又はその他の現在利用可能であり、今後利用可能となる任意の手法により生成した予測モデルによって行うことができるが、たとえば、当該処方情報が関連づけられた疾患を有する患者に対する疾患別の過去の販売履歴から得られる販売数量分布を用いて行うこともできる。
【0039】
初来局患者に関する予測
初来局患者の来局日及び需要数量は、薬局に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、適宜時系列予測アルゴリズムを用いて予測をすればよい。
【0040】
薬局に関連づけられた処方情報は、需要予測の対象である薬局が受け取った処方箋に基づくもののほか、当該薬局と関連づけられた別の薬局が受け取った処方箋に基づくものを含んでもよい。たとえば、当該薬局と同一地域の他の1又は複数の薬局が受け取った処方箋に基づく処方情報を用いることで、当該地域における薬剤需要の季節性を判定し、当該季節性に基づいて初来局患者に関する予測を行うことができる。
【0041】
なお、上述の説明では、薬局を例に主に説明しているが、薬局に限らず、医療機関が受け取る処方箋に対応する処方情報を用いることができ、その場合には「来局」と記載した箇所は「来訪」と理解すればよい。
【0042】
上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0043】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0044】
また、図2及び3において示される「開始」及び「終了」は、一例を示すものに過ぎず、本実施形態にかかる方法が図示された手順で必ず開始され、図示された手順で必ず終了することを意味するものではない。
【符号の説明】
【0045】
100 装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
104 データベース

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機関における薬剤の需要を予測する方法であって、
コンピュータが、前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記コンピュータが、前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記コンピュータが、前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来の患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記コンピュータが、前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含み、
前記第2のステップは、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる単一の疾患を推定するステップと、
前記コンピュータが、前記患者が前記疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来訪する予測回数を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来訪日及び前記疾患に用いる1又は複数の薬剤の予測需要数量を算出するステップと
を含む。
【請求項2】
医療機関における薬剤の需要を予測する方法であって、
コンピュータが、前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局訪日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記コンピュータが、前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記コンピュータが、前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来訪の患者の予測来訪日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記コンピュータが、前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含み、
前記第2のステップは、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる複数の疾患を推定するステップと、
前記複数の疾患のそれぞれについて、
前記コンピュータが、前記患者が当該疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来する予測回数を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来日及び当該疾患に用いる1又は複数の薬剤の疾患別予測需要数量を算出するステップと
を含み、
前記第2のステップにより算出される予測需要数量は、前記複数の疾患のそれぞれに割り当てられた重みに応じた値を各疾患別予測需要数量に乗じて、前記複数の疾患について合計することにより算出する。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記第2のステップにおいて、前記患者の過去の処方情報の少なくとも一部を前記予測回数の算出に用いる。
【請求項4】
コンピュータに、医療機関における薬剤の需要を予測する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来の患者の予測来日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含み、
前記第2のステップは、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる単一の疾患を推定するステップと、
前記コンピュータが、前記患者が前記疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来訪する予測回数を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来訪日及び前記疾患に用いる1又は複数の薬剤の予測需要数量を算出するステップと
を含む。
【請求項5】
コンピュータに、医療機関における薬剤の需要を予測する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得する第1のステップと、
前記処方情報に含まれる各薬剤について、前記処方情報に関連づけられた患者の予測来局訪日及び予測需要数量を算出する第2のステップと、
前記第1及び第2のステップを、前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返す第3のステップと、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来局訪の患者の予測来局訪日及び予測需要数量を算出する第4のステップと、
前記第3のステップ及び前記第4のステップにより得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する第5のステップと
を含み、
前記第2のステップは、
前記コンピュータが、前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる複数の疾患を推定するステップと、
前記複数の疾患のそれぞれについて、
前記コンピュータが、前記患者が当該疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来訪する予測回数を算出するステップと、
前記コンピュータが、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来訪日及び当該疾患に用いる1又は複数の薬剤の疾患別予測需要数量を算出するステップと
を含み、
前記第2のステップにより算出される予測需要数量は、前記複数の疾患のそれぞれに割り当てられた重みに応じた値を各疾患別予測需要数量に乗じて、前記複数の疾患について合計することにより算出する。
【請求項6】
医療機関における薬剤の需要を予測する装置であって、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得して、(a)前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる単一の疾患を推定し、(b)前記患者が前記疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来訪する予測回数を算出し、(c)前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に、次回以降の予測来訪日及び前記疾患に用いる1又は複数の薬剤の予測需要数量を算出し、
予測来日及び予測需要数量の前記算出を前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返し、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来の患者の予測来日及び予測需要数量を算出し、
得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する。
【請求項7】
医療機関における薬剤の需要を予測する装置であって、
前記医療機関が受け取った第1の処方箋に対応する処方情報を取得して、(a)前記処方情報に含まれる1又は複数の薬剤が用いられる複数の疾患を推定し、(b)前記複数の疾患のそれぞれについて、前記患者が当該疾患に用いる1又は複数の薬剤のために再来訪する予測回数を算出し、前記予測回数が0回である場合に予測処理を終了し、前記予測回数が1回以上である場合に次回以降の予測来訪日及び当該疾患に用いる1又は複数の薬剤の疾患別予測需要数量を算出し、(c)前記複数の疾患のそれぞれに割り当てられた重みに応じた値を各疾患別予測需要数量に乗じて、前記複数の疾患について合計することにより、前記処方情報に関連づけられた患者の予測需要数量を算出し、
予測来訪日及び予測需要数量の前記算出を前記医療機関が受け取った第2の処方箋について繰り返し、
前記第1及び第2の処方箋に対応する処方情報に含まれる各薬剤について、前記医療機関に関連づけられた過去の処方情報に基づいて、初来訪の患者の予測来訪日及び予測需要数量を算出し、
得られた各薬剤に関する予測需要数量の各日における値に基づいて、予測需要数量の時系列を薬剤ごとに生成する。