特開 2023-87459 ステントデリバリー装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023087459

(43)【公開日】2023-06-23

(54)【発明の名称】ステントデリバリー装置

(51)【国際特許分類】

   A61F 2/966 20130101AFI20230616BHJP

【ＦＩ】

A61F2/966

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021201856

(22)【出願日】2021-12-13

(71)【出願人】

【識別番号】000200035

【氏名又は名称】ＳＢカワスミ株式会社

(71)【出願人】

【識別番号】000002141

【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100137589

【弁理士】

【氏名又は名称】右田 俊介

(72)【発明者】

【氏名】福島 寛満

(72)【発明者】

【氏名】片山 貴博

(72)【発明者】

【氏名】山辺 悦朗

(72)【発明者】

【氏名】小野塚 偉師

【テーマコード（参考）】

4C267

【Ｆターム（参考）】

4C267AA56

4C267BB02

4C267BB03

4C267BB04

4C267BB10

4C267BB11

4C267BB12

4C267CC07

4C267CC08

4C267DD01

4C267HH08

4C267HH09

(57)【要約】

【課題】ステントの移動規制を行い、ステントの展開をスムーズにすることが可能なステントデリバリー装置を提供する。
【解決手段】ステントデリバリー装置（デリバリー装置１）は、インナーシース３０と、インナーシース３０の外周面上に配設された摩擦材１０と、インナーシース３０の周囲に取り付けられたステント（ステントグラフト２）と、インナーシース３０、摩擦材１０及びステントグラフト２を径方向外側から覆うアウターシース３１と、を備える。アウターシース３１は、ステントグラフト２を覆う位置と、ステントグラフト２を露出させる位置とに、インナーシース３０に対して軸方向に相対的に移動可能に構成されている。ステントグラフト２が摩擦材１０を覆うように設けられている。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

インナーシースと、
前記インナーシースの外周面上に配設された摩擦材と、
前記インナーシースの周囲に取り付けられたステントと、
前記インナーシース、前記摩擦材及び前記ステントを径方向外側から覆うアウターシースと、を備え、
前記アウターシースは、前記ステントを覆う位置と前記ステントを露出させる位置とに、前記インナーシースに対して軸方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステントが前記摩擦材を覆うように設けられていることを特徴とするステントデリバリー装置。

【請求項2】

前記摩擦材は、前記インナーシースの先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜した外周面を有する請求項１に記載のステントデリバリー装置。

【請求項3】

前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
複数の前記摩擦材のそれぞれは、前記インナーシースの先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜した外周面を有しており、
複数の前記摩擦材のうち少なくとも２つに関して、前記インナーシースの基端側にある前記摩擦材の前記外周面の傾斜は、前記インナーシースの先端側にある前記摩擦材の前記外周面の傾斜よりも緩やかである請求項２に記載のステントデリバリー装置。

【請求項4】

前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
複数の前記摩擦材のうち少なくとも２つに関して、前記インナーシースの基端側にある前記摩擦材の最大径部は、前記インナーシースの先端側にある前記摩擦材の最大径部よりも軸方向に長く形成されている請求項１から３のいずれか一項に記載のステントデリバリー装置。

【請求項5】

前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
前記インナーシースにおいて、複数の前記摩擦材の間には、Ｘ線不透過性のマーカーが設けられている請求項１から４のいずれか一項に記載のステントデリバリー装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、医療用に用いられ、ステントを体内に送り出すステントデリバリー装置に関する。

【背景技術】

【0002】

医療行為において、体内にステント（ステントグラフトを含む）等の留置具を送り出すステントデリバリー装置が用いられる。このようなものを体管（消化器管、血管等を含む。）内に送り出すために、ステントデリバリー装置のシースが体内に挿入される。このようなステントデリバリー装置によれば、シース内に保持されたステントを体内に留置することができる。

【0003】

例えば、特許文献１には、ステントを体内にデリバリーする装置として、インナーシースと、アウターシースと、インナーシースとアウターシースとの間に設けられたステントと、を備えるステントデリバリー装置（同文献にはステントデリバリーカテーテルと記載。）が開示されている。
さらに、インナーシースに設けられた段差が、ステントを露出させる際のアウターシースの近位端側への移動操作の際に、ステントがアウターシースとともに近位端側に移動しないようにするストッパの役割をすることが記載されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２００８－８６３４０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかし、特許文献１に記載されたインナーシースに形成され、上記のストッパの役割をする段差は、アウターシースの末端部に当接してその移動を制限するものである。このため、アウターシースを退行させたときに、アウターシースに引き連れて退行しようとするステントが段差に当接し、段差から加わる反力により圧縮されると、装填密度が上がってしまう。このように装填密度が上がることにより、展開荷重が増加する。

【0006】

つまり、アウターシースを近位側に牽引する際の摩擦荷重が高まることになるため、ステントのスムーズな展開に関して改善の余地があった。

【0007】

本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、ステントの移動規制を行い、ステントの展開をスムーズにすることが可能なステントデリバリー装置を提供するものである。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明のステントデリバリー装置は、インナーシースと、前記インナーシースの外周面上に配設された摩擦材と、前記インナーシースの周囲に取り付けられたステントと、前記インナーシース、前記摩擦材及び前記ステントを径方向外側から覆うアウターシースと、を備え、前記アウターシースは、前記ステントを覆う位置と前記ステントを露出させる位置とに、前記インナーシースに対して軸方向に相対的に移動可能に構成されており、前記ステントが前記摩擦材を覆うように設けられていることを特徴とする。

【発明の効果】

【0009】

ステントに摩擦材からの摩擦が加わることにより、ステントがアウターシースに引き連れられて移動すること及び展開荷重が高まることを防ぐことができることで、ステントを所望の位置でスムーズに展開、留置させやすいステントデリバリー装置を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】ステントデリバリー装置（デリバリー装置）により、ステントグラフトを大動脈弓に留置している状態を示す模式図である。

【図2】ステントグラフトを格納した状態におけるシースの先端部の断面図である。

【図3】アウターシースを退行させ、ステントグラフトを離脱させた後の状態のインナーシース周りを示す側面図である。

【図4】第１変形例に係る摩擦材を示す側面図である。

【図5】第２変形例に係る摩擦材を示す側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明の実施形態に係るステントデリバリー装置（デリバリー装置１）について説明する。
なお、本実施形態で用いる図面は、本発明のステントデリバリー装置の構成、形状、各部材の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
また、図面は、ステントデリバリー装置（デリバリー装置１）の長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
なお、近位側（基端側）は、施術時に術者の近くに配置される側をいい、遠位側（先端側）は、施術時に術者の遠くに配置される側をいう。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。

【0012】

＜概要＞
本実施形態の説明に先立って、先ず、本実施形態に係るステントデリバリー装置（デリバリー装置１）の概要を、図１及び図２を主に参照して説明する。図１は、ステントデリバリー装置（デリバリー装置１）により、ステントグラフト２を大動脈弓に留置している状態を示す模式図、図２は、ステントグラフト２を格納した状態におけるシース３の先端部３ａの断面図である。

【0013】

本実施形態に係るステントデリバリー装置（デリバリー装置１）は、インナーシース３０と、インナーシース３０の外周面上に配設された摩擦材１０と、インナーシース３０の周囲に取り付けられたステント（ステントグラフト２）と、インナーシース３０、摩擦材１０及びステントグラフト２を径方向外側から覆うアウターシース３１と、を備える。
アウターシース３１は、ステントグラフト２を覆う位置と、ステントグラフト２を露出させる位置とに、インナーシース３０に対して軸方向に相対的に移動可能に構成されている。ステントグラフト２が摩擦材１０を覆うように設けられていることを特徴とする。

【0014】

換言すると、シース３（インナーシース３０及びアウターシース３１）の径方向中心から外側に、インナーシース３０、摩擦材１０、ステントグラフト２、アウターシース３１の順に設けられている。
「摩擦材１０」とは、アウターシース３１をインナーシース３０に対して基端側に退行させる際に、アウターシース３１に内接するステントグラフト２の移動を摩擦により制限するものであり、その形状・材質等は任意である。本実施形態に係る摩擦材１０は、円筒状の樹脂材料である。
「ステント」は、本実施形態で説明する血管用のものにおいては、ステント部２ａと樹脂製のグラフト部２ｂとを備えるステントグラフト２である。しかし、ステントは、このような構成に限定されず、例えば、呼吸器系、消化器系の体管に対して用いる場合には、グラフト部２ｂがなく、ステント部２ａのみで構成されるものであってもよい。

【0015】

上記構成によれば、摩擦材１０を覆うようにステント（ステントグラフト２）が設けられていることで、アウターシース３１がステントグラフト２を露出させる位置に移動する際（退行する際）に、ステントグラフト２に摩擦材１０からの摩擦が加わることになる。このため、ステントグラフト２がアウターシース３１に引き連れられて退行するのを防ぐことができる。
したがって、ステントグラフト２を所望の位置で展開、留置させやすくなる。

【0016】

さらには、ステントグラフト２が退行してプッシャー６の手前で圧縮されると、装填密度が上がってしまう。このように装填密度が上がることにより、展開荷重が増加する。つまり、アウターシース３１を近位側に牽引する際の摩擦荷重が高まり、ステントグラフト２の展開を妨げることを、摩擦材１０がその摩擦によりステントグラフト２の退行を抑制することで、防止することができる。

【0017】

＜各部の構成＞
デリバリー装置１の各部の構成について、図１、２に加え、図３を主に参照して説明する。図３は、アウターシース３１を退行させ、ステントグラフト２を離脱させた後の状態のインナーシース３０周りを示す側面図である。
デリバリー装置１は、ステントグラフト２を体内（体管内）に送り込むものであり、長尺のシース３と、シース３内に収容されたステントグラフト２と、ステントグラフト２の近位側の移動を制限するプッシャー６と、を主に備える。
なお、本実施形態におけるデリバリー装置１によるステントグラフト２の留置箇所は、図１に示す大動脈弓５０内のうち、大動脈瘤４０のある部位である。

【0018】

本実施形態に係るステントグラフト２は、インナーシース３０に取り付けられ、施術者によってアウターシース３１がインナーシース３０に対して相対的に近位側に移動させられることにより、シース３から露出することになる。
ステントグラフト２は、金属製（例えばニッケルチタン合金製）のステント部２ａと、樹脂製のグラフト部２ｂと、から構成されている。グラフト部２ｂ内に一部のステント部２ａが網目状に配設されており、他の一部のステント部２ａが先端部から延出してインナーシース３０の先端部に取り付けられている。

【0019】

シース３は、先端部に先端チップ５を備えるインナーシース３０と、インナーシース３０の外周を覆い、インナーシース３０の軸方向に前進・退行可能に取り付けられたアウターシース３１と、から構成されている。
本実施形態においては、インナーシース３０にガイドワイヤ３４が通されて、大動脈弓５０にあるステントグラフト２の留置箇所に誘導される。
図２に示すように、本実施形態に係るインナーシース３０には、パイプ７と２つの摩擦材１０と先端チップ５が基端側から順に外周面に取り付けられている。

【0020】

パイプ７は、径方向において、インナーシース３０とプッシャー６とを接続するものであり、両者の間に設けられている。本実施形態においては、パイプ７は、プッシャー６の先端から一部（半分だけ）突出して、インナーシース３０に固定されている。

【0021】

また、パイプ７の先端側には、Ｘ線照射時に、プッシャー６の先端部の位置を認識可能とする例えばタングステン等のＸ線不透過材料で形成されコイル状に形成された近位側マーカー１４が埋設されている。
近位側マーカー１４により、ステントグラフト２の最も基端側に位置する可能性のある位置となるプッシャー６の部位を特定できる。
なお、近位側マーカー１４は、パイプ７の外周に接着剤で固定されていてもよい。

【0022】

摩擦材１０は、パイプ７よりも軸方向に長く形成されており、パイプ７よりも径方向に厚く形成されている。摩擦材１０は、インナーシース３０の外周に接着剤等でインナーシース３０に固定されている。
しかしながら、摩擦材１０は、このような構成に限定されず、弾性変形した状態で（換言すると、残留応力が残った状態で）インナーシース３０の外周に嵌着していてもよい。
つまり、ステントグラフト２の移動に伴って移動しない程度にインナーシース３０に取り付けられていればよい。

【0023】

ステントグラフト２のグラフト部２ｂにおいては、先端側の摩擦材１０に対して先端側に突出する部位よりも、基端側の摩擦材１０に対して基端側に突出する部位は短い。
つまり、２つの摩擦材１０は、グラフト部２ｂに対して、全体として基端側に偏って配設されている。

【0024】

また、先端側の摩擦材１０は、プッシャー６の先端からステントグラフト２のグラフト部２ｂの軸方向の長さだけ先端側にある位置よりも基端側に設けられている。
このような摩擦材１０の配設により、アウターシース３１に伴って基端側に移動しようとするステントグラフト２に対して、先端側の摩擦材１０がステントグラフト２に摺接する範囲が広くなる。

【0025】

軸方向における２つの摩擦材１０の間であって、ステントグラフト２のグラフト部２ｂの内側に、コイル状に形成された中間マーカー１５がインナーシース３０の外周に取り付けられている。

【0026】

中間マーカー１５は、例えばタングステンで形成されており、２つの摩擦材１０の間であって、シース３内に収容されたステントグラフト２のグラフト部２ｂの中央部分に接着剤等で固定されている。中間マーカー１５がこのように構成されていることで、Ｘ線照射時に、２つの摩擦材１０によって移動を制限されるステントグラフト２が位置する蓋然性の高い部位を特定することができる。中間マーカー１５は、Ｘ線照射時に、ステントグラフト２の位置を認識可能とするＸ線不透過材料で形成されている。

【0027】

さらに、インナーシース３０の先端部の外周であって、先端チップ５に重なる部位にコイル状に形成された遠位側マーカー１６が取り付けられている。
遠位側マーカー１６は、例えばタングステンで形成されており、先端チップ５に重なる部位に設けられている（先端チップ５に埋設されている）。このように遠位側マーカー１６が配設されていることにより、Ｘ線照射時に、先端チップ５の部位を特定するできることで、シース３を体管内に進行させる際に有益である。遠位側マーカー１６は、Ｘ線照射時に、ステントグラフト２の位置を認識可能とするＸ線不透過材料で形成されている。

【0028】

プッシャー６は、ステントグラフト２の近位側の移動を制限するものであり、径方向において、アウターシース３１内に収容されたステントグラフト２に重なる位置に配設されている。本実施形態においては、プッシャー６の内面は、パイプ７の外面に接する大きさで形成されており、プッシャー６の外面は、アウターシース３１の内面よりも小径で形成されて、アウターシース３１の内面から離間する大きさで形成されている。

【0029】

＜第１変形例＞
次に、図４を主に参照して、第１変形例に係る摩擦材１１、１２について説明する。図４は、第１変形例に係る摩擦材１１、１２を示す側面図である。
本例に係る摩擦材１１、１２は、インナーシース３０の軸方向に複数配設されていずれもステント（図２に示すステントグラフト２に係る構成と同様）に覆われている。
本例に係る複数の摩擦材１１、１２のそれぞれは、インナーシース３０の先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜した外周面１１ａ、１２ａを有する。
つまり、摩擦材１１、１２は、先端に向かうにつれて逆テーパ状のテーパ部１１ｂ、１２ｂを有する。

【0030】

上記のように、摩擦材１１、１２の外周面１１ａ、１２ａは、インナーシース３０の先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように形成されている。このように構成されていることで、先端側の大径部分でステントグラフト２に対する摩擦力を確保でき、アウターシース３１内にステントグラフト２を装填した際の位置の保持性を高めることができる。

【0031】

上記のように、摩擦材１１、１２が逆テーパ状に形成されている。
つまり、摩擦材１１、１２の外周面１１ａ、１２ａの基端側が先端側と比較して小径に形成されている。摩擦材１１、１２がこのように形成されていることで、これを覆うステントグラフト２を含めて摩擦材１１の基端側に対向する部位が遠位側に対向する部位よりも小径となる。このため、ステントグラフト２を摩擦材１１、１２に装着した後に、ステントグラフト２の基端側からその径方向外側をアウターシース３１でスムーズに覆うことができる。

【0032】

このように「摩擦材」が形成されていると好適であるが、本発明に係る摩擦材は、このような形状に限定されない。
つまり、本発明に係る摩擦材は、ステントグラフト２を露出させるためにアウターシース３１をインナーシース３０に対して近位側に相対的に移動させる際に、アウターシース３１に引き連れられてステントグラフト２が移動することを抑制できればよい。
例えば、摩擦材は、円筒状に形成されたものの他に、インナーシース３０を通す貫通孔を有して直方体状に形成されたものであってよい。側面視長円状又は楕円状に形成されていてもよく、後述のようにテーパ状の外周面を有するものであってもよい。

【0033】

図４に示すように、複数の摩擦材１１、１２のうち少なくとも２つに関して、インナーシース３０の基端側にある摩擦材１１の外周面１１ａの傾斜（傾斜角度α）は、インナーシース３０の先端側にある摩擦材１２の外周面１２ａの傾斜（傾斜角度β）よりも緩やかである（傾斜角度が小さい）。

【0034】

しかしながら、このような構成に限定されず、摩擦材１１、１２の外周面の傾斜角度は同じであってもよい。さらに、複数の摩擦材１１、１２について、本例においては、２つ設けられている例を示しているが、さらに多く設けられていてもよい。
また、摩擦材１１、１２の外周面１１ａ、１２ａに傾斜に関して、インナーシースの中心軸からの距離が同じ部位における、ステントグラフト２に接する外周面１１ａ、１２ａの少なくとも一部の傾斜について対比するものを含む。

【0035】

上記の図４に示す構成によれば、基端側の摩擦材１１の外周面１１ａの傾斜が、先端側の摩擦材１２の外周面１２ａの傾斜と比較して緩やかである。このため、アウターシース３１に引き連れられてステント（ステントグラフト２）が移動しようとするときの摩擦力を、基端側の摩擦材１１で高めることができる。このため、ステントグラフト２が摩擦材１１を越えて退行することをより好適に制限することができる。

【0036】

＜第２変形例＞
次に、図５を主に参照して、第２変形例に係る摩擦材１３（、１２）について説明する。図５は、第２変形例に係る摩擦材１３（、１２）を示す側面図である。
本例に係る摩擦材（１２、１３）は、インナーシース３０の軸方向に複数配設されていずれもステント（図２に示すステントグラフト２に係る構成と同様）に覆われている。
複数の摩擦材のうち少なくとも２つ（摩擦材１２、１３）に関して、インナーシース３０の基端側にある摩擦材１３の最大径部１３ｃは、インナーシース３０の先端側にある摩擦材１２の最大径部１２ｃよりも軸方向に長く形成されている。

【0037】

具体的には、摩擦材１３は、側面視台形状に形成されており、その外周面１３ａは、近位側にあるテーパ部１３ｂと、テーパ部１３ｂの大径部から軸方向に延在する最大径部１３ｃと、を備える。
本例に係る摩擦材１２の最大径部１２ｃは、テーパ部１２ｂの縁部であるが、このような構成に限定されず、インナーシース３０の軸方向に、ある程度の長さを有するものであってもよい。

【0038】

上記構成では、インナーシース３０の基端側にある摩擦材１３の最大径部１３ｃが、インナーシース３０の先端側にある摩擦材１２の最大径部１２ｃよりも軸方向に長く形成されている。このように構成されていることで、基端側の摩擦材１３からステントグラフト２に対して摩擦力が加わる範囲を広くでき、ステントグラフト２を、基端側の所定位置に留めやすくできる。

【0039】

上記実施形態においては、デリバリー装置１は、体管としての血管内にステントグラフト２を留置するものとして説明したが、体管内に留置するものであれば、このような構成に限定されない。例えば、呼吸器系、消化器系その他の任意の器官系の体管（消化管等）内に留置するものであってもよい。例えば、デリバリー装置１は、内視鏡に通して用いられるものであってもよい。

【0040】

なお、本発明のデリバリー装置に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。

【0041】

上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
（１）
インナーシースと、
前記インナーシースの外周面上に配設された摩擦材と、
前記インナーシースの周囲に取り付けられたステントと、
前記インナーシース、前記摩擦材及び前記ステントを径方向外側から覆うアウターシースと、を備え、
前記アウターシースは、前記ステントを覆う位置と前記ステントを露出させる位置とに、前記インナーシースに対して軸方向に相対的に移動可能に構成されており、
前記ステントが前記摩擦材を覆うように設けられていることを特徴とするステントデリバリー装置。
（２）
前記摩擦材は、前記インナーシースの先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜した外周面を有する（１）に記載のステントデリバリー装置。
（３）
前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
複数の前記摩擦材のそれぞれは、前記インナーシースの先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるように傾斜した外周面を有しており、
複数の前記摩擦材のうち少なくとも２つに関して、前記インナーシースの基端側にある前記摩擦材の前記外周面の傾斜は、前記インナーシースの先端側にある前記摩擦材の前記外周面の傾斜よりも緩やかである（２）に記載のステントデリバリー装置。
（４）
前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
複数の前記摩擦材のうち少なくとも２つに関して、前記インナーシースの基端側にある前記摩擦材の最大径部は、前記インナーシースの先端側にある前記摩擦材の最大径部よりも軸方向に長く形成されている（１）から（３）のいずれか一項に記載のステントデリバリー装置。
（５）
前記摩擦材は、前記インナーシースの軸方向に複数配設されていずれも前記ステントに覆われており、
前記インナーシースにおいて、複数の前記摩擦材の間には、Ｘ線不透過性のマーカーが設けられている（１）から（４）のいずれか一項に記載のステントデリバリー装置。

【符号の説明】

【0042】

１ デリバリー装置（ステントデリバリー装置）
２ ステントグラフト（ステント）
２ａ ステント部
２ｂ グラフト部
３ シース
３ａ 先端部（遠位部）
５ 先端チップ
６ プッシャー
７ パイプ
１０ 摩擦材
１１ 摩擦材
１１ａ 外周面
１１ｂ テーパ部
１２ 摩擦材
１２ａ 外周面
１２ｂ テーパ部
１２ｃ 最大径部
１３ 摩擦材
１３ａ 外周面
１３ｂ テーパ部
１３ｃ 最大径部
１４ 近位側マーカー
１５ 中間マーカー
１６ 遠位側マーカー
３０ インナーシース
３１ アウターシース
３４ ガイドワイヤ
４０ 大動脈瘤
５０ 大動脈弓

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】