(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087464
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】内視鏡用クリップ装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
A61B17/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201861
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 靖久
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 円
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD01
4C160DD19
4C160DD64
4C160MM32
4C160MM33
4C160NN04
4C160NN13
(57)【要約】
【課題】締付リング及びクリップがシースと同心軸上に位置するように位置決めすることが可能な内視鏡用クリップ装置を提供する。
【解決手段】内視鏡用クリップ装置は、複数の腕部2aを有するクリップ2と、長尺のシース3と、シース3に通されてクリップ2に着脱可能に接続される操作ワイヤと、腕部2aの基端側の周囲に装着され、クリップ2に対して前進移動することで腕部2aを閉じてクリップ2を把持状態に維持可能な締付リング5と、を備える。締付リング5は、シース3の内面に当接することで縮径方向に弾性変形しシース3の先端部3aから外部に移動したときに拡径方向に弾性復元してシース3への再収納を規制可能な弾性片15を有する。シース3の先端部3aの外面は、先端に向かうにつれて縮径するように傾斜している。弾性片15は、シース3の先端部3aの外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に通されて、生体組織の処置のために用いられる内視鏡用クリップ装置であって、
生体組織を把持するための複数の腕部を有するクリップと、
前記内視鏡内に挿通される長尺のシースと、
前記シースに通されて前記クリップに着脱可能に接続される操作ワイヤと、
前記腕部の基端側の周囲に前記クリップに対して進退移動可能に装着され、前記クリップに対して前進移動することで前記腕部を閉じて前記クリップを把持状態に維持可能な締付リングと、
を備え、
前記締付リングは、前記シースの内面に当接することで縮径方向に弾性変形し前記シースの先端部から外部に移動したときに拡径方向に弾性復元して前記シースへの再収納を規制可能な弾性片を有し、
前記シースの前記先端部の外面は、先端に向かうにつれて縮径するように傾斜しており、
前記弾性片は、前記シースの前記先端部の前記外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜していることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
【請求項2】
前記弾性片は、前記シースの前記先端部の前記外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜して前記外面に当接可能な当接部と、前記弾性片における前記当接部よりも突端側に、前記締付リングの径方向中央側に屈曲している屈曲部と、を有する請求項1に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項3】
前記弾性片が弾性復元した状態で、前記突端は、前記シースの前記先端部の前記外面よりも大径側に位置している請求項2に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項4】
前記クリップは、前記操作ワイヤに係止する係止部を基端部に有し、
前記突端は、前記締付リング及び前記係止部が前記シース内に収容された状態において、前記係止部の外面よりも小径側に位置している請求項2又は3に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項5】
前記クリップは、前記操作ワイヤに係止する係止部を基端部に有し、
前記弾性片が自然状態であるときに、前記突端は、前記係止部の外面よりも大径側に位置している請求項2から4のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
【請求項6】
前記弾性片は、前記締付リングの周囲に少なくとも3本以上設けられており、隣接する前記弾性片同士の配置間隔が180度以下となるように配設されている請求項1から3のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の止血等に用いられる内視鏡用クリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下で体腔内の生体組織を切除し、その切除部位を結紮して止血したり、組織の閉塞を行ったりする内視鏡用クリップ装置が提供されている。この種の内視鏡用クリップ装置に関し、特許文献1には、クリップと、クリップの腕部が閉じるように締め付ける締付リング(同文献には、押え管と記載。)と、クリップに接続された操作ワイヤと、を備えるクリップ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の締付リングには、外周方向に突没自在に設置された一対の弾性片(同文献には、突起部と記載。)が形成されており、この弾性片の基端部が、シース(同文献には、コイルパイプと記載。)の先端部に係合可能に構成されている。この締付リングをシースに係合させた状態で、操作ワイヤを牽引することで、クリップを締付リングに対して近位側に相対的に移動させて、クリップの腕部の開状態を変更できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたクリップ装置では、弾性片の基端部及びこれに係合するシースの先端部が、操作ワイヤの牽引方向に対して垂直な面で形成されていた。
このため、操作ワイヤを牽引したときに弾性片の基端部とシースの先端部とが当接することにより、牽引方向の相対的な移動を抑制できたとしても、牽引方向に垂直な方向への位置ずれ(ぐらつき)が締付リング及びクリップとシースとの間に生じることがあった。
また、例えば、弾性片の基端部がシースの先端部の端面に対して斜めに向いた状態となったときには、弾性片の基端部の一方側(片側)のみシースに入り込み、他方側がシースに入れなくなる虞があった。
【0006】
このような締付リング及びクリップとシースとの間に生じる位置ずれは、クリップ装置の操作性に関わるものである。つまり、クリップ装置の操作に関わるクリップの向きを安定させることについて改善の余地があった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、締付リング及びクリップがシースと同心軸上に位置するように位置決めすることが可能な内視鏡用クリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡用クリップ装置は、内視鏡に通されて、生体組織の処置のために用いられる内視鏡用クリップ装置であって、生体組織を把持するための複数の腕部を有するクリップと、前記内視鏡内に挿通される長尺のシースと、前記シースに通されて前記クリップに着脱可能に接続される操作ワイヤと、前記腕部の基端側の周囲に前記クリップに対して進退移動可能に装着され、前記クリップに対して前進移動することで前記腕部を閉じて前記クリップを把持状態に維持可能な締付リングと、を備え、前記締付リングは、前記シースの内面に当接することで縮径方向に弾性変形し前記シースの先端部から外部に移動したときに拡径方向に弾性復元して前記シースへの再収納を規制可能な弾性片を有し、前記シースの前記先端部の外面は、先端に向かうにつれて縮径するように傾斜しており、前記弾性片は、前記シースの前記先端部の前記外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内視鏡用クリップ装置によれば、締付リング及びクリップがシースと同心軸上に位置するように位置決めすることが可能な内視鏡用クリップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るクリップ装置の一例を示す側面図である。
【
図2】締付リングの弾性片がシースの先端部に当接している状態を示す模式図である。
【
図3】係止部を有するクリップとワイヤロープを示す模式図である。
【
図4】シースに収容された状態の締付リングを示す部分断面図である。
【
図6】変形例に係る締付リングとシースを示す模式図である。
【
図7】シース内に収容された状態の変形例に係る締付リングを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<<概要>>
まず、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置(以下、単にクリップ装置1ともいう。)について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るクリップ装置1の一例を示す側面図、
図2は、締付リング5の弾性片15がシース3の先端部3aに当接している状態を示す模式図である。
図3は、係止部12を有するクリップ2とワイヤロープ4を示す模式図である。
図4は、シース3に収容された状態の締付リング5を示す部分断面図、
図5は、腕部2aが閉じた状態を示す模式図である。
なお、
図4では、シース3と締付リング5のみを断面で示している。
【0013】
なお、本明細書において「軸方向」とは、特に断りがない限り、シース3の中心軸方向、あるいは後述するワイヤロープ4の進退方向(牽引方向を含む)を意味する。また、「断面」とは、特に断りがない限り、クリップ装置1を軸方向に切断した縦断面を意味する。「遠位側」とは、特に断りのない限り、クリップ装置1又はこれを構成するクリップ2において、クリップ装置1の操作者から遠い側を呼称し、具体的にクリップ2においてはクリップ2の腕部2aがある側をいう。また、「近位側」とは、特に断りのない限り、クリップ装置1やクリップ2において施術者に近い側をいう。また、クリップ装置1の構成要素が遠位側に移動することを前進すると呼称し、逆に近位側に移動することを後退すると呼称する場合がある。
【0014】
図1に示す、本実施形態に係る内視鏡用クリップ装置(クリップ装置1)は、不図示の内視鏡に通されて、生体組織の処置のために用いられる内視鏡用クリップ装置である。
クリップ装置1は、生体組織を把持するための複数の腕部2aを有するクリップ2と、内視鏡内に挿通される長尺のシース3と、シース3に通されてクリップ2に着脱可能に接続される操作ワイヤ(ワイヤロープ4、
図3等参照)と、腕部2aの基端側の周囲にクリップ2に対して進退移動可能に装着され、クリップ2に対して前進移動することで腕部2aを閉じてクリップ2を把持状態に維持可能な締付リング5(
図2等参照)と、を備える。
締付リング5は、シース3の内面に当接することで縮径方向に弾性変形しシース3の先端部3aから外部に移動したときに拡径方向に弾性復元してシース3への再収納を規制可能な弾性片15を有する。
シース3の先端部3aの外面は、先端に向かうにつれて縮径するように傾斜している。弾性片15は、シース3の先端部3aの外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜している。
【0015】
「生体組織の処置」とは、例えば止血処置、縫縮及びマーキング等の処置をいう。
本実施形態において、腕部2aが2本設けられたものを説明するが、このような構成に限定されず、3本以上設けられたものであってもよい。
【0016】
「クリップ2に対して前進移動する・・・締付リング5」とは、クリップ2に対する相対的な移動を指すものである。換言すると、クリップ2が締付リング5に対して相対的に後退することで、腕部2aが閉じられる構成を含む概念である。
また、上記の「傾斜」は、平面状に傾斜しているもののほかに、シース3の軸線方向に対して傾斜していればよく、例えば、側面視において、接線が傾斜するように曲面状に傾斜しているもの(湾曲)を含むものとする。
【0017】
また、上記の「外面の傾斜方向に対応する方向」とは、外面に平行な方向に限定されず、外面に平行な角度から鋭角な角度をなす方向、つまり外面に直交する方向よりも小さい角度をなす方向を意味する。
特に、本実施形態に係るシース3においては、
図2に示す側面視で、先端部3aの少なくとも一部の接線が、弾性片15の当接部15aの傾斜面と一致するように構成されている。
【0018】
上記構成によれば、締付リング5に弾性片15が設けられていることで、クリップ2及び締付リング5がシース3から出た状態から、クリップ2が操作ワイヤ(ワイヤロープ4)で牽引されたときに、締付リング5がシース3に再収納されることを防止できる。
具体的には、弾性片15が、
図4に示すようにシース3内において畳まれて(弾性変形して)収納された状態から、シース3から出たときに拡径方向に弾性復元する。
図2に示すように、弾性復元した弾性片15がシース3の先端部3aに当接することで、締付リング5がシース3に再収納されることを防止できる。
【0019】
このため、クリップ2がワイヤロープ4によって牽引されて、シース3によって位置を制限された締付リング5に対して相対的に近位側に移動することによって、締付リング5によって腕部2aを閉じさせることができる。
【0020】
特に、弾性片15が、シース3の先端部3aの外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜していることで、弾性片15がシース3の先端部3aの外面に当たったときに、締付リング5及びクリップ2がシース3と同心軸上に位置するように位置決めすることができる。
具体的には、弾性片15の当接部15aと、シース3の先端部3aとは、ワイヤロープ4の牽引方向に対して傾斜した面同士が当接する(斜め当たりする)。このため、当接部15aに、シース3の先端部3aから、軸方向成分だけでなく、径方向成分を含む反力が加わることにより、締付リング5及びこれに支持されたクリップ2が、シース3と同心軸上に位置することになる。
【0021】
<<構成>>
次に、クリップ装置1の構成の詳細について説明する。クリップ装置1は、
図1から
図4に示すように、クリップ2と、クリップ2を体内に配設させるための長尺のシース3と、シース3の基端が固定されたハウジング本体部97と、シース3内に通り、クリップ2を動作させるためのクリップ連結部4aを有するワイヤロープ4と、ワイヤロープ4を操作するための指掛けリング92及びスライダ94と、を備える。
【0022】
[クリップ]
まず、生体組織を結紮するクリップ2について、
図2から
図5を主に参照して説明する。
クリップ2は、生体組織を結紮することにより、例えば止血処置、縫縮及びマーキング等の処置を行うことができる。
クリップ2は、
図3に示すように、生体組織を把持するための一対の腕部2aを先端部に有し、操作ワイヤ(ワイヤロープ4)に係止する係止部12を基端部2bに有し、腕部2aと係止部12との間に締付リング5が取り付けられている。
【0023】
腕部2aは、閉腕して生体組織を把持するものであり、自己拡開力を有し、閉腕状態の腕部2aをシース3から突出させることで腕部2aは自然に拡開して開腕状態となる。
腕部2aは、後述するワイヤロープ4のクリップ連結部4aに係止部12が係止し、締付リング5がシース3に当接して、その移動が制限されている状態で、施術者によってワイヤロープ4が進退方向の近位側に牽引されることで、閉腕する。
【0024】
(係止部)
本実施形態に係る係止部12は、腕部2aにおける基端側の延長部位(クリップ2の基端部2b)であり、間隔を空けて対向する一対の突片部12aによって形成されている。
係止部12は、上記のように、ワイヤロープ4のクリップ連結部4aの外周面から押圧されることによって拡径方向に弾性変形して、クリップ連結部4aを一対の突片部12aの隙間に収容する。そして、係止部12が弾性復元することで、クリップ連結部4aの細径の首部分に係止可能に構成されている。
【0025】
[締付リング]
締付リング5は、腕部2aに係止することで、クリップ2を閉腕状態でロックするためのものである。締付リング5の遠位側には、クリップ2の腕部2aを通す貫通孔15dが形成されている。締付リング5は、近位側に周方向に均等に4本設けられて軸方向に延在する弾性片15を備える。
なお、弾性片15の数は4本に限定されず、一対であってもよく、3本又は5本以上であってもよい。弾性片15は、締付リング5における遠位側の部分に、基端部を接続されており、近位方向に延在するように形成されている。
【0026】
本実施形態に係る弾性片15は、シース3の先端部3aの外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜して外面に当接可能な当接部15aと、弾性片15における当接部15aよりも突端15c側に、締付リング5の径方向中央側に屈曲している屈曲部15bと、を有する。
【0027】
上記構成によれば、可撓性を有するシース3内に締付リング5が収容されている状態において、締付リング5の弾性片15の端部がシース3に食い込むことを抑制でき、弾性片15からシース3内面に加わる摩擦力を低減することができる。このため、締付リング5及び締付リング5に接続されたクリップ2をスムーズに移動させることができる。
【0028】
具体的には、弾性片15における屈曲部15bよりも遠位側(当接部15a側)は、屈曲部15bよりも近位側(突端15c側)よりも長く形成されている。また、自然状態にある弾性片15においては、屈曲部15bよりも遠位側における軸方向に対する角度が、屈曲部15bよりも近位側における軸方向に対する角度よりも大きく形成されている。
クリップ2の装填(クリップ2とワイヤロープ4との取り付け)後は、クリップ2に取り付けられた締付リング5の弾性片15が畳まれてシース3内に収納される。締付リング5がシース3から出た後は弾性片15が広がり、シース3内に再収納しなくなる。
【0029】
弾性片15が弾性復元した状態で、突端15cは、シース3の先端部3aの外面よりも大径側に位置している。
このように構成された弾性片15を有する締付リング5は、シース3の先端部3aに当接したときに、軸方向において突端15cが先端部3aに重なる位置、すなわち突端15cが先端部3aの外側を覆う位置に位置する。
上記構成によれば、弾性片15が弾性復元した状態で、内側に屈曲する屈曲部15bの先にある突端15cがシース3の先端部3aに食い込まず、当接部15aがシース3の先端部3aの外面に当接することを阻害しない。
【0030】
図4に示すように、突端15cは、締付リング5及び係止部12がシース3内に収容された状態において、係止部12の外面よりも小径側に位置している。
「係止部12の外面よりも小径側に位置している」については、具体的は、係止部12の外面のうち最も大径となる部位よりも小径側にあるということである。
上記構成によれば、弾性片15の突端15cが係止部12の外面よりも小径側に位置していることで、弾性片15を含む締付リング5が係止部12を通ってクリップ2から脱落することを防ぐことができる。
【0031】
図3に示すように、弾性片15が自然状態であるときに、突端15cは、係止部12の外面よりも大径側に位置している。
上記構成によれば、締付リング5が係止部12を通過可能となり、締付リング5を係止部12に通してクリップ2に装着する組立て作業が容易となる。
クリップ装置1の操作状態によって、弾性片15の状態を自然状態、弾性変形状態、弾性復元状態とする。弾性片15の形状としては、自然状態と弾性復元状態は同じものとなる。
【0032】
弾性片15は、締付リング5の周囲に少なくとも3本以上(本実施形態においては、4本)設けられており、隣接する弾性片15同士の配置間隔が180度以下となるように配設されている。
上記構成によれば、弾性片15の当接部15aがシース3の先端部3aの外面に当接したときに、より安定してその位置を保持できる。
なお、「隣接する弾性片15同士の配置間隔」とは、隣接する弾性片15それぞれと締付リング5の軸心とを結ぶ線分同士のなす角をいうものとする。
【0033】
[ハウジング本体部及びスライダ]
ハウジング本体部97は、
図1に示すように、全体的に長尺な棒状に形成されており、近位側本体部98と、近位側本体部98の遠位端側に組み付けられる遠位側本体部99と、から構成されている。
近位側本体部98には、圧縮ばね30が内蔵されている。圧縮ばね30は、締付リング5がシース3に当接する方向である後退方向にスライダ94の一部に荷重を付与するものである。
【0034】
遠位側本体部99は、近位側本体部98の遠位端部と接続されている。
スライダ94は、後述するワイヤロープ4の基端近傍に取り付けられており、ワイヤロープ4を介してシース3に対するクリップ2の進退操作、回転操作を行うものである。
【0035】
[ワイヤロープ]
ワイヤロープ4は、シース3の内部及びハウジング本体部97の内部を軸方向に進退可能に挿通されている。施術者は、ワイヤロープ4の前進操作を行うだけで、クリップ2及び締付リング5をシース3から突出させることができる。
ワイヤロープ4は、例えば、ステンレス鋼、耐腐食性被覆された鋼鉄線、チタン又はチタン合金等の剛性の強い金属材料により形成されている。ワイヤロープ4の遠位端部には、塊状のクリップ連結部4aが設けられている。ワイヤロープ4の外周面を覆うように、フッ素系ポリマーで作成された樹脂層(不図示)が設けられていてもよい。
【0036】
[シース]
次に、シース3について、
図1、
図3及び
図4を参照して説明する。シース3は、長尺で可撓性の管状部材である。本実施形態に係るシース3の全部は、密巻きコイルで形成されている。本実施形態に係るシース3全体が密巻きコイルで構成されているが、このような構成に限定されず、一部のみ密巻きコイルで構成されるものであってもよい。
本実施形態に係るシース3の先端部3aには、金属の口金が取り付けられている構成であるが、このような構成に限定されず、口金がない構成であってもよい。
また、施術者は、クリップ2を回転させて、生体組織を挟持する向きを調節するときには、シース3に対して指掛けリング92を回すことでワイヤロープ4を回す。ワイヤロープ4にクリップ連結部4aを介してクリップ2が接続されているため、クリップ2の向きを調節できることになる。
【0037】
<<動作>>
次に図面を参照して、ワイヤロープ4のクリップ連結部4aをクリップ2に連結し、クリップ2を閉腕させ、更にクリップ2からクリップ連結部4aを脱離させるまでの一連の手技を説明する。
【0038】
クリップ2は、初期状態において、腕部2aの外周に締付リング5が装着された状態で、カートリッジ(図示せず)に収容されている。そして、カートリッジに収容されたクリップ2の係止部12に対して基端側(近位側)からワイヤロープ4のクリップ連結部4aを押圧することにより、ワイヤロープ4とクリップ2とが連結される。
【0039】
具体的には、ワイヤロープ4のクリップ連結部4aを係止部12に対して基端側から押圧することで係止部12が外向きに弾性変形することにより、ワイヤロープ4の進退方向にクリップ連結部4aを受け入れ可能に開放される。
【0040】
施術者は、指掛けリング92に指(たとえば親指)を挿通し、スライダ94を他の指(たとえば人差し指及び中指)で挟持した状態で、ハウジング本体部97に対してスライダ94を相対移動させて操作する。これにより、スライダ94に連結されたワイヤロープ4がシース3の内部で進退移動する。
【0041】
係止部12が外向きに弾性変形して開放された状態から、クリップ連結部4aが係止部12を進退方向の遠位側に通過することで、係止部12は内向きに弾性復元する。これにより、クリップ連結部4aと係止部12とが連結される。
【0042】
クリップ2がシース3の内部に位置するときに、一対の腕部2aは閉じた状態となる。クリップ2がシース3に収容された状態で、内視鏡の鉗子孔を通じて体腔内にシース3を進入させる。シース3の遠位側端部が結紮を要する生体組織の近傍に至ったら、施術者は、スライダ94を遠位側に押し込み、ワイヤロープ4を遠位側へ押し出す。これにより、
図4に示すように、クリップ2は、シース3先端より突出し、その自己拡開力により自然に最大開口幅まで広がる。
【0043】
このとき、締付リング5の弾性片15はシース3の遠位開口より突出し、自然状態の径に拡径変形する。すなわち、シース3内において縮径変形していた弾性片15は、シース3の遠位開口から突出することで大径に弾性復元する。
【0044】
この状態からスライダ94を近位側に移動させると、スライダ94に接続されたワイヤロープ4が近位側に引かれることになる。これにより、クリップ2及び締付リング5は、腕部2aを開いた状態で近位側に移動し、
図2に示す締付リング5の弾性片15の当接部15aがシース3の先端部3aに対して当接して支持される位置まで移動する。
【0045】
このように、一対の腕部2aが開いた状態でシース3の先端部3aに締付リング5を介して間接的に支持されていることで、クリップ2は、シース3に対して傾斜したり揺れ動いたりすることがなく、安定した形状を保つことが可能となる。このため、施術者は、生体組織を掴むようにクリップ2を操作しやすい。
【0046】
そして、クリップ2の位置及び向きを決めたのち、生体組織をクリップ2で掴むときには、施術者はスライダ94を近位側に移動するように操作して、ワイヤロープ4を基端側に牽引して、クリップ2を閉腕させる。
具体的には、施術者は、
図2に示す、締付リング5がシース3に当接した状態から、ワイヤロープ4を基端側に牽引し、クリップ連結部4aによってクリップ2を引っ張る。この操作により、クリップ2は、シース3に当接して近位側への移動が制限された締付リング5に対して、相対的に近位側に移動することになり、腕部2aは、
図5に示すように閉腕して、生体組織を把持する。
【0047】
クリップ2の係止部12の突片部12aには、ワイヤロープ4が近位側に牽引されるときにクリップ連結部4aの近位端部から拡径方向外側に荷重が加わることになる。突片部12aは、突片部12a自身の剛性により、腕部2aが閉腕状態となる位置までは、上記の荷重によってはクリップ連結部4aを解放しないように構成されている。
【0048】
さらに、施術者がワイヤロープ4を近位側に引き込むことにより、突片部12aがクリップ連結部4aの周面に乗り上がったときに、クリップ連結部4aから突片部12aに径方向外向きの荷重が加わる。この荷重により、突片部12aは、拡径変形することになる。
この突片部12aの拡径変形により、クリップ連結部4aが係止部12から近位側に引き抜き可能となる。
このようにして、生体組織を結紮する際にスライダ94を後退させる動作と連続して、スライダ94を更に後退させることでクリップ連結部4aが係止部12から抜去される。これによりクリップ2はワイヤロープ4から分離し、生体組織を結紮した状態で体腔内に留置される。
【0049】
以上の動作により、クリップ連結部4aをクリップ2に連結し、クリップ2を閉腕させ、更にクリップ2からクリップ連結部4aを脱離させるまでの一連の手技が終了する。上記の手技を繰り返すことで、多数のクリップ2で生体組織を結紮することができる。
【0050】
また、クリップ2をシース3に対して突没させる構成としては、シース3に対して相対的に移動させることができれば、その構成は任意である。具体的には、本実施形態においては、シース3に接続された指掛けリング92に対して、ワイヤロープ4に接続されたスライダ94を移動させて、クリップ2を移動させているが逆の構成であってもよい。つまり、指掛けリング92にワイヤロープ4が接続され、スライダ94にシース3が接続されていてもよい。
【0051】
<変形例>
次に、
図6及び
図7を参照して、変形例に係る締付リング5Xについて説明する。
図6は、変形例に係る締付リング5Xとシース3を示す模式図、
図7は、シース3内に収容された状態の変形例に係る締付リング5Xを示す模式的な断面図である。なお、
図6においては、クリップ2の図示を省略しており、
図7においては、クリップ2及びワイヤロープ4の図示を省略している。
【0052】
上記実施形態における締付リング5は、屈曲部15bを有する弾性片15を備えるものであったが、このような構成に本発明は限定されない。変形例に係る締付リング5Xは、突端が径方向内側に延在するのではなく、径方向外側に延在する弾性片25を有する。つまり、本例に係る締付リング5は、弾性片25におけるシース3の先端部3aと当接する当接部25aの先に、屈曲部15bを備えていない。また、弾性片25は、弾性片15同様に、シース3の先端部3aの外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜している。
【0053】
このような構成であっても、弾性片25がシース3の内面に当接することで縮径方向に弾性変形しシース3の先端部3aから外部に移動したときに拡径方向に弾性復元してシース3への再収納を規制可能な構成であればよい。
【0054】
なお、本発明のクリップ装置1の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること等を許容する。
【0055】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
内視鏡に通されて、生体組織の処置のために用いられる内視鏡用クリップ装置であって、
生体組織を把持するための複数の腕部を有するクリップと、
前記内視鏡内に挿通される長尺のシースと、
前記シースに通されて前記クリップに着脱可能に接続される操作ワイヤと、
前記腕部の基端側の周囲に前記クリップに対して進退移動可能に装着され、前記クリップに対して前進移動することで前記腕部を閉じて前記クリップを把持状態に維持可能な締付リングと、
を備え、
前記締付リングは、前記シースの内面に当接することで縮径方向に弾性変形し前記シースの先端部から外部に移動したときに拡径方向に弾性復元して前記シースへの再収納を規制可能な弾性片を有し、
前記シースの前記先端部の外面は、先端に向かうにつれて縮径するように傾斜しており、
前記弾性片は、前記シースの前記先端部の前記外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜していることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
(2)
前記弾性片は、前記シースの前記先端部の前記外面の傾斜方向に対応する方向に傾斜して前記外面に当接可能な当接部と、前記弾性片における前記当接部よりも突端側に、前記締付リングの径方向中央側に屈曲している屈曲部と、を有する(1)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(3)
前記弾性片が弾性復元した状態で、前記突端は、前記シースの前記先端部の前記外面よりも大径側に位置している(2)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(4)
前記クリップは、前記操作ワイヤに係止する係止部を基端部に有し、
前記突端は、前記締付リング及び前記係止部が前記シース内に収容された状態において、前記係止部の外面よりも小径側に位置している(2)又は(3)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(5)
前記クリップは、前記操作ワイヤに係止する係止部を基端部に有し、
前記弾性片が自然状態であるときに、前記突端は、前記係止部の外面よりも大径側に位置している(2)から(4)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
(6)
前記弾性片は、前記締付リングの周囲に少なくとも3本以上設けられており、隣接する前記弾性片同士の配置間隔が180度以下となるように配設されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
【符号の説明】
【0056】
1 クリップ装置(内視鏡用クリップ装置)
2 クリップ
2a 腕部
2b 基端部
3 シース
3a 先端部
4 ワイヤロープ(操作ワイヤ)
4a クリップ連結部
5、5X 締付リング
12 係止部
12a 突片部
15 弾性片
15a 当接部
15b 屈曲部
15c 突端
15d 貫通孔
25 弾性片
25a 当接部
30 圧縮ばね
92 指掛けリング
94 スライダ
97 ハウジング本体部
98 近位側本体部
99 遠位側本体部