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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087535
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】搬送補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/08 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
A61G7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201982
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】二井内 友美
(72)【発明者】
【氏名】藤原 友莉子
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA28
4C040EE05
4C040GG17
4C040JJ01
4C040JJ08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的簡素な構成でベッドに連結可能な搬送補助装置を提供すること。
【解決手段】ベッド100に装着され、搬送作業者200による該ベッド100の搬送を補助する搬送補助装置1であって、装置本体3と、前記ベッド100のフレームに取り付けられる係合部材10と、を備え、前記装置本体3は、駆動源5bを備え、前記装置本体3を移動する走行手段と、前記係合部材10と係合することにより、前記装置本体3を前記フレーム101に連結する係合手段と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに装着され、搬送作業者による該ベッドの搬送を補助する搬送補助装置であって、
装置本体と、
前記ベッドのフレームに取り付けられる係合部材と、を備え、
前記装置本体は、
駆動源を備え、前記装置本体を移動する走行手段と、
前記係合部材と係合することにより、前記装置本体を前記フレームに連結する係合手段と、を備える、
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送補助装置であって、
前記係合手段にスロットが設けられ、前記係合部材に前記スロットに挿抜可能な挿入部が設けられ、
前記走行手段は、駆動輪を有し、
前記挿入部の挿抜方向は、前記駆動輪の転動方向と交差し、
前記係合部材は係合孔を備え、
前記係合手段は、前記係合孔に挿抜自在な係合軸を備え、
前記係合軸の挿抜方向は、前記駆動輪の転動方向及び前記挿入部の挿抜方向と交差し、
前記係合軸を、前記係合孔に対する挿抜方向に変位させる変位機構を備え、
前記装置本体は、複数のキャスタを有し、
前記複数のキャスタは、前記走行手段を接地させる上昇位置と、前記複数のキャスタが接地する降下位置とに昇降自在であり、
前記複数のキャスタは、前記係合軸の変位に連動して、前記上昇位置と前記降下位置とに昇降され、
前記装置本体は、前記ベッドの長手方向に沿う前記ベッドの側部において前記ベッドに装着され、
前記装置本体の少なくとも一部が、前記ベッドのボトムの下方に位置する、
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送補助装置であって、
前記転動方向は、前記長手方向であり、
前記挿入部の前記挿抜方向は、前記ベッドの幅方向であり、
前記係合軸の前記挿抜方向は、上下方向である、
前記スロットの位置は、前記駆動輪の前記転動方向で前記装置本体の中央部よりも、進行方向前側にオフセットしている、
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の搬送補助装置であって、
前記装置本体に取り付けられ、前記搬送作業者が把持可能なハンドルと、
前記走行手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記ハンドル及び前記ベッドのヘッドボードに着脱可能に装着される、
ことを特徴とする搬送補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドの搬送作業を補助する搬送補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等において、医療用ベッドの搬送は医療従事者の負担が大きい作業の一つであり、多くの場合、複数名の医療従事者が協働して行っている。そこで、ベッドの搬送負担を軽減する装置が提案されている。特許文献1には、駆動輪を備え、ベッドに連結して駆動輪を転動させることでベッドを搬送する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-141160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、ベッドのフレームを下から押圧するようにしてベッドと装置を連結する。多様な種類のベッドに対応可能な反面、その駆動機構を必要とする。また、搬送中の床の起伏を吸収して連結状態を一定に維持するための機構も必要となる。したがって、装置の複雑化、大型化を招き、コストアップや病室やエレベータ等の狭い空間での利便性に欠く場合がある。
【0005】
本発明の目的は、比較的簡素な構成でベッドに連結可能な搬送補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
ベッドに装着され、搬送作業者による該ベッドの搬送を補助する搬送補助装置であって、
装置本体と、
前記ベッドのフレームに取り付けられる係合部材と、を備え、
前記装置本体は、
駆動源を備え、前記装置本体を移動する走行手段と、
前記係合部材と係合することにより、前記装置本体を前記フレームに連結する係合手段と、を備える、
ことを特徴とする搬送補助装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的簡素な構成でベッドに連結可能な搬送補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送補助装置を構成する台車ユニットの斜視図。
図2】(A)は係合部材が取り付けられたベッドの側面図、(B)は係合部材の斜視図。
図3】台車ユニットの背面図。
図4】台車ユニットの平面図。
図5】(A)及び(B)は装置本体と係合部材との係合態様を示す説明図。
図6】(A)~(C)は装置本体と係合部材との係合態様を示す説明図。
図7】搬送補助装置の使用例を示す説明図。
図8】搬送補助装置の使用例を示す説明図。
図9】搬送補助装置の使用例を示す説明図。
図10】搬送補助装置の使用例を示す説明図。
図11】搬送補助装置の使用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る搬送補助装置1を構成する台車ユニット2の斜視図、図2(A)は搬送補助対象であるベッド100の例を示す側面図、図2(B)は搬送補助装置1を構成する係合部材10の斜視図である。図中、矢印X、Y、Zは台車ユニット2の奥行き方向、幅方向及び上下方向を示し、矢印L、Wはベッド100の長手方向及び幅方向を示す。
【0011】
ベッド100は、この例では病院等に配備される医療用のベッドが想定されている。ベッド100はボトム103の下方にフレーム101を備え、フレーム101には複数のキャスタ102やボトム103が支持されている。ボトム103の四方には、患者の頭部側に位置するヘッドボード104、足元側に位置するフットボード105、側方に位置するサイドパネル106が設けられている。
【0012】
搬送補助装置1は、ベッド100に装着され、搬送作業者によるベッド100の搬送を補助する装置である。搬送補助装置1は、大別すると、台車ユニット2と係合部材10とで構成され、走行機能を備えた台車ユニット2とベッド100とを係合部材10を介して連結し、台車ユニット2の走行機能の発揮によってベッド100の搬送を補助する。係合部材10は、ベッド100のフレーム101に固定される。例えば、係合部材10をベッド100の種類毎に用意することで、共通の台車ユニット2を仕様の異なるベッドに連結でき、その搬送補助が可能である。
【0013】
本実施形態の搬送補助装置1は、ベッド100の側部に装着される。このため、係合部材10はベッド100の側部においてフレーム101に固定されている。ベッド100の側部に搬送補助装置1を装着することで、搬送補助装置1が装着されたベッド100の全長が長くなることを回避し、エレベータ等への乗降を容易なものとすることができる。
【0014】
<係合部材>
図2(A)及び図2(B)を参照して係合部材10について説明する。係合部材10はベッド100に台車ユニット2を連結するためのアダプタである。係合部材10は、フレーム101に固定されるベース部11と、ベース部11に設けられた複数の係合部12及び15を備える。係合部12はベース部11からW方向に突出し、後述する装置本体3のスロット33に挿抜可能な挿入部であり、係合プレート13と、複数のリブ14とを有する。係合プレート13は水平な板状の部材であり、複数のリブ14はベース部11と係合プレート13とに接合されて係合プレート13を補強する。
【0015】
係合部15は、L方向に離間して二つ設けられており、二つの係合部15の間に係合部12が位置している。各係合部15は、上下方向に貫通した係合孔15aを形成するブロック状の部材からなり、その下端部はW方向に係合孔15aを開放する切り欠き15bを有している。
【0016】
<台車ユニット>
図1図3及び図4を参照して台車ユニット2について説明する。図3及び図4は、台車ユニット2が備える装置本体3の主要な構成を模式的に示した構造説明図(背面図と平面図)である。台車ユニット2は、扁平な装置本体3と、装置本体3に取り付けられた逆U字型のハンドル4と、を備え、全体として手押し台車の形態を有している。装置本体3の底部には複数のキャスタ34(本実施形態では四つ)が設けられており、搬送作業者はハンドル4を保持して台車ユニット2を自由に移動させることができる。
【0017】
装置本体3は、ベース部30と、ベース部30に搭載された各構成を覆うカバー部31とを有する。図3及び図4はカバー部材31を透過した装置本体3の内部構造が示されている。カバー部31には係合部12が挿抜されるスロット33に連通する開口部が形成されている。ベース部30は水平な板状の部材であり、各キャスタ34や操舵輪6aを装置本体3の下方に露出させる開口部30a、30bや、駆動輪5aを装置本体3の下方に露出させる開口部(不図示)が形成されている。
【0018】
ベース部30の上方には棚部35が設けられている。棚部35は水平な板状の部材であり、ベース部30に立設された、Z方向に延びる複数の支柱36によってベース部30からZ方向に離間してベース部30と平行に支持されている。棚部35はスロット33の底部を形成する部材である。棚部35上には、Y方向に離間した一対のローラユニット8が搭載されている。ローラユニット8はスロット33の左右の側部を形成する部材である。ローラユニット8は、X方向に延設された支持部材8aと、一対の垂直ローラ8bと、一対の水平ローラ8cと、を備え、垂直ローラ8bは支持部材8aにY方向の軸周りに回転自在に支持され、水平ローラ8cは支持部材8aの開口部内において支持部材8aにZ方向の軸周りに回転自在に支持されている。一対の垂直ローラ8bと、一対の水平ローラ8cとはX方向に位置をずらして配置されている。
【0019】
ベース部30には走行ユニット5が支持されている。走行ユニット5は、棚部35の下側に配置され、電動モータに代表される駆動源5bと、駆動源5bの駆動力により回転する駆動輪5aと、床面に対する駆動輪5aの接地性を向上するサスペンション機構(不図示)とを含む。駆動輪5aはX方向の軸周りに回転自在に支持され、その転動方向はY方向である。走行ユニット5を駆動することで、装置本体3をY方向に移動することができる。
【0020】
棚部35には操舵ユニット6が支持されている。操舵ユニット6は、電動モータに代表される駆動源(不図示)と、水平な軸周りに自由回転自在に設けられ、駆動源の駆動力によりZ方向の軸周りに操舵される操舵輪6aと、床面に対する操舵輪6aの接地性を向上するサスペンション機構(不図示)とを備える。操舵輪6aは例えば図4で矢印で示す方向に、X方向に対して±30度の範囲内でZ方向の軸周りに操舵される。操舵輪6aを操舵することで、装置本体3の進行方向の調整を補助することができる。
【0021】
ベース部30には更に、走行ユニット5や操舵ユニット6の電源となるバッテリ23や、これらのドライブ回路等の電気回路を有する制御ユニット22が搭載されている。
【0022】
キャスタ34は、車輪34aと、車輪34aを水平な軸周りに自由回転自在に支持するブラケット34bとを備える。ブラケット34bはZ方向の軸周りに自由回転自在に支持部材32に支持されている。支持部材32はX方向に延設された板状の部材であり、Y方向に離間して二つ設けられている。各支持部材32にはX方向に離間して二つのキャスタ34が支持される。支持部材32はベース部30に立設された、Z方向に延びる複数のガイド軸37が挿通し、ガイド軸37の案内によってZ方向に昇降自在である。支持部材32は係合部材10の係合孔15aに挿抜自在な係合軸9が立設されている。係合軸9はX方向で二つのキャスタ34の間の位置に配置され、支持部材32からZ方向に突出している。
【0023】
支持部材32は変位機構7によって昇降される。変位機構7は支持部材32毎に設けられており、合計で二つ設けられている。変位機構7は、レバー70に対する搬送作業者の手動操作により、支持部材32をベース部30に対して上下する操作機構である。支持部材32がベース部30に対して上下することで、複数のキャスタ34が床面に設置した状態と、駆動輪5a及び操舵輪6aが床面に設置した状態とに切り替えることができる。本実施形態の場合、変位機構7は、これら2つの状態のいずれかで機構的に安定するトグル機構である。図3は複数のキャスタ34が床面に設置した状態(降下位置)にある場合を示している。この状態では駆動輪5a及び操舵輪6aは床面から僅かに浮いている。
【0024】
ハンドル4の上段の横材4aには搬送補助装置1の存在を周囲に知らしめる表示灯20が取り付けられている。また、ハンドル4の中段の横材4bには、走行ユニット5及び操舵ユニット6を搬送作業者が制御するコントローラ21が脱着自在に装着されている。コントローラ21は、本体21aと、本体21aからフック状に設けられた係止片21bとを含み、本体21aと係止片21bとの間に横材4aを挟むようにしてコントローラ21を横材4aに引っ掛けることができる。本体21aの左右には搬送作業者が操作可能な操作子21c、21dが設けられている。
【0025】
本体21aは箱型のハウジングに電気回路を内蔵しており、有線又は無線により制御ユニット22と通信可能である。操作子21dは走行ユニット5の駆動力を搬送作業者が調整するスロットルレバーであり、操作子21cは操舵ユニット6の操舵輪6aの操舵角度を搬送作業者が調整するための揺動スイッチである。
【0026】
<係合動作>
装置本体3には、係合部材10の二種類の係合部12、15に係合する係合要素として、スロット33と係合軸9との二種類の係合要素が設けられている。以下、各係合要素について説明する。
【0027】
図5(A)及び図5(B)を参照して係合部材10の係合部12のスロット33に対する挿入と係合について説明する。図5(A)に示すように、係合部12に対してスロット33が対向する位置において、装置本体3を係合部材10に対して前進させる。複数のキャスタ34は降下位置にあり、図3に例示したように駆動輪5a及び操舵輪6aは床面から僅かに浮いている。装置本体3の前進は搬送作業者による手動作業である。係合部12は、棚部35に対して所定の高さに配置されており、装置本体3を前進させると図5(B)に示すようにスロット33に挿入される。このようにスロット33に対する係合部12の挿抜方向はX方向である。
【0028】
この時、係合プレート13は、棚部35上を移動し、係合プレート13の縁部13a(図2(B)参照)の上面には垂直ローラ8bに当接し、左右の側面には水平ローラ8cに当接する。係合プレート13は、垂直ローラ8b及び水平ローラ8cの回転と案内によってスムーズにスロット33に差し込まれ、係合部12は、棚部35、垂直ローラ8b及び水平ローラ8cに対して、上下方向とY方向に当接した係合状態となる。
【0029】
これにより、装置本体3がフレーム101とY方向及びZ方向に連結され、また、装置本体3と係合部材10との位置決めが完了する。すなわち、係合部12とスロット33とは、装置本体3と係合部材10とを所定の位置関係に案内する案内構造としても機能する。
【0030】
図6(A)~図6(C)を参照して、変位機構7の動作と、係合部材10の係合孔15aに対する係合軸9の挿入について説明する。係合孔15aに対する係合軸9の挿入は、係合部材10の係合部12のスロット33に対する挿入に続いて行われ、これにより係合部12の抜け止めとなり、装置本体3と係合部材10とが互いにロックされる。
【0031】
図6(A)は図5(A)と同様、係合部12に対してスロット33が対向する位置に装置本体3が位置している状態を示している。複数のキャスタ34は降下位置にあり、図3に例示したように駆動輪5a及び操舵輪6aは床面から僅かに浮いている。図6(B)は図5(B)と同様、装置本体3を係合部材10に対して前進させ、係合部12がスロット33に挿入された状態である。この状態のとき、係合軸9は、係合部15の下部の切り欠き15bから係合孔15aの下端に進入する。
【0032】
図6(C)は各変位機構7のレバー70を搬送作業者が回動し、支持部材32を上方へ変位させた状態を示す。支持部材32の変位により、各キャスタ34は上昇位置へ変位する。各キャスタ34が上昇位置に変位することで、駆動輪5a及び操舵輪6aが床面に設置する。また、係合軸9も上方へ変位して係合孔15aに挿入される。このように係合孔15aに対する係合軸9の挿抜方向はZ方向である。
【0033】
変位機構7は、カム溝71aが形成されたカム部材71を有しており、カム部材71は支持部材32に固定されている。カム溝71aにはベース部30の側の構成であるピン72が係合している。ベース部30の側に支持されたレバー70の回動操作でピン72がX方向に水平移動する。ピン72の水平移動に伴い、ピン72がカム溝71aを摺動することで支持部材32が、係合孔15aに対する係合軸9の挿抜方向(本実施形態では上下方向)に変位する。
【0034】
変位機構7は、ピン72がカム溝72aのX方向の一端及び他端に位置している状態で機構的に安定し、支持部材32の位置が保持される。図6(A)や図6(B)に示すように、レバー70が下向きに下げられた状態では、各キャスタ34は降下位置にあり、また、係合軸9も降下位置にある。図6(C)に示すようにレバー70が上向きに上げられた状態では、各キャスタ34は上昇位置にあり、また、係合軸9も上昇位置にある。
【0035】
各キャスタ34の昇降と係合軸9の係合孔15aに対する挿抜とを連動させることで、装置本体3と係合部材10とのロックと、キャスタ34から駆動輪5a及び操舵輪6への接地の切り替えとを同時に行うことができる。
【0036】
このようにして、装置本体3がフレーム101とX方向にも連結され、装置本体3と係合部材10とがロックされる。これにより、ベッド100に対する搬送補助装置1の装着が完了する。アダプタとして係合部材10をベッド100側に固定しておき、装置本体3が係合部材10と脱着可能な構成とすることで、搬送補助装置1とベッド100との連結機構を比較的簡素な構成とすることができる。係合部材10をベッド100の仕様に対応して個別に用意することで多様なベッド100に搬送補助装置1を装着できる。ベッド100の種類に応じて係合部材10を設計する場合においても、仕様が異なるのは高さ方向の位置程度であり、簡易な設計変更や製造変更で足りる。
【0037】
<使用例>
図7図11を参照して搬送補助装置1の使用例、特に、ベッド100への装着から搬送補助までを説明する。図7は装着前の状態を示す。ベッド100には予め係合部材10が取り付けられている。看護師に代表される医療従事者等の搬送作業者200は手押しで台車ユニット2をベッド100の側方に移動する。この時、複数のキャスタ34は降下位置にあり、搬送作業者200はキャスタ34の転動によって、比較的自由に台車ユニット2を移動させることができる。
【0038】
搬送作業者200は目視にて係合部材10の係合部12とスロット33との位置合わせを行い、図8に示すように、台車ユニット2をベッド100の側方へ前進させる。これにより図5(A)、図5(B)を参照して説明したように、係合部12がスロット33に挿入される。係合部12の係合プレート13は二つのローラユニット8間にスムーズに挿入される(図5(A)、図5(B)の状態。)。
【0039】
次に搬送作業者200はレバー70を操作し、図6(C)を参照して説明したように支持部材32を上方へ変位させる。これにより図9に示すように係合孔15aに係合軸9が挿入され、各キャスタ34は上昇位置に変位して駆動輪5a及び操舵輪6aが接地する。
【0040】
次に搬送作業者200は、作業者200は表示灯20を点灯させ、図10に示すようにコントローラ21をハンドル4から取り外し、ヘッドボード104に装着する。本体21aと係止片21bとの間にヘッドボード104を挟むようにしてコントローラ21を上からヘッドボード104に掛けることができる。搬送作業の際、搬送作業者200は手元でコントローラ21を操作することができる。
【0041】
搬送作業者200は、ベッド100の搬送作業に移る。図11に示すようにヘッドボード104を把持しつつ、ベッド100を移動する。操作子21dを操作することで走行ユニット5が駆動して駆動輪5aが回転する。本実施形態の場合、係合軸9の挿抜方向(Z方向)、駆動輪5aの転動方向(Y方向)及び係合部12の挿抜方向(X方向)は互いに交差する(本実施形態では直交している)。駆動輪5aがL方向に転動すると、ローラユニット8、係合軸9及び係合部材10を介してベッド100に移動力が伝達され、ベッド100のL方向への移動を助勢する。ベッド100の搬送には一般に複数の作業者を要するが、搬送補助装置1の助勢によって一人の搬送作業者でベッド100を搬送することも可能である。
【0042】
本実施形態の場合、スロット33の位置は、図2に示すように駆動輪5aの転動方向(Y方向)で装置本体3の中央部Cよりも、進行方向前側にオフセットしている。このため、図11に示した搬送補助動作の際、係合部12を介して装置本体3からベッド100へ伝達されるL方向の移動力が、よりベッド100の進行方向前側(フットボード105側)に伝達される。搬送作業者200が押圧する位置(ヘッドボード104付近)と、移動力の伝達位置との距離を長くとり、ベッド100が前側から引っ張られるように移動力が伝達されることで、ベッド100の移動の直進安定性を向上できる。
【0043】
ベッド100に対する駆動輪5aの位置は、ベッド100の幅方向Wの一方の側に偏っている。駆動輪5aによる助勢の程度によってベッド100の左側への旋回力が作用する場合があるが、搬送作業者200は、ベッド100の左側の押圧を強める、或いは、操作子21cを操作して操舵輪6を操舵することで、ベッド100の直進性を維持することができる。また、ベッド100の旋回時には、搬送作業者200は、ベッド100の左右一方の側の押圧を強める、或いは、操作子21cを操作して操舵輪6を操舵することでベッド100の旋回を行える。
【0044】
ベッド100の搬送中、装置本体3はその大部分がベッド100のボトム103の下に収まり、搬送補助装置1のうち、平面視でベッド100の外形からはみ出すのはハンドル4ぐらいである。病室の出入り、エレベータの乗り降り、或いは、狭い通路において、搬送補助装置1の存在が邪魔になることを防止できる。ベッド100の搬送中、表示灯20が点灯することでベッド100の搬送を周囲に知らせることができる。
【0045】
<他の実施形態>
上記実施形態では、装置本体3の側にスロット33を形成し、係合部材10の側に係合部(挿入部)12を設けたが、配置を逆にして、装置本体3の側に係合部(挿入部)12を、係合部材10の側にスロット33を形成してもよい。係合部を二種類としたが一種類であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、搬送補助装置1をベッド100の側部に装着する構成としたが、ヘッドボード104側やフットボード105側等、ベッド100の長手方向の端部に装着する構成であってもよい。駆動輪5aの転動方向等は、ベッド100に対する装置の装着部位に応じて設計すればよい。
【0047】
上記実施形態では、操舵ユニット6を設けてベッド100の旋回を補助可能な構成としたが、操舵ユニット6を設けず、ベッド100の旋回は専ら搬送作業者200に委ねる構成としてもよい。上記実施形態では、駆動輪5aを一輪としたが、複数輪であってもよい。
【0048】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 搬送補助装置、2 台車ユニット、3 装置本体、10 係合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11