(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087550
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】ウエブの製造装置
(51)【国際特許分類】
B05C 9/04 20060101AFI20230616BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20230616BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20230616BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230616BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230616BHJP
B65H 23/025 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B05C9/04
B05C9/10
B05C9/12
H01M4/139
H01M4/04 Z
B65H23/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202003
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】横山 賀規
(72)【発明者】
【氏名】中村 行良
(72)【発明者】
【氏名】元野 智一
(72)【発明者】
【氏名】隅下 翔五
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英徳
(72)【発明者】
【氏名】小山 大輔
【テーマコード(参考)】
3F104
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
3F104AA05
3F104BA02
3F104BA09
3F104BA15
3F104CA15
3F104CA19
3F104DA28
3F104JD02
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA19
4F042DA09
4F042DC01
4F042DF23
4F042DF24
4F042ED01
4F042ED03
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】ウエブの両面に塗工液を塗工する場合に、第1熱処理装置によってウエブに熱膨張があっても、両面の塗工位置がずれないウエブの製造装置を提供する。
【解決手段】第1水平面F1に設けられ、走行するウエブWの表面に第1塗工液を塗工する第1塗工装置3と、第1塗工液を加熱させる第1熱処理装置4と、第1熱処理装置4で加熱したウエブWを冷却する冷却装置5と、第2水平面F2に設けられ、冷却装置5で冷却されたウエブWの裏面に第2塗工液を塗工する第2塗工装置6と、第2塗工液を加熱させる第2熱処理装置7とを有し、冷却装置5は、第1水平面F1から第2水平面F2にウエブWを引き上げる経路にウエブWを抱きかかえて冷却する冷却ロール502,503,504を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1水平面に設けられ、走行するウエブの一方の面に第1塗工液を塗工する第1塗工装置と、
前記第1水平面に設けられ、前記第1塗工装置で前記ウエブに塗工された前記第1塗工液を加熱して第1塗工層を形成する第1熱処理装置と、
前記第1熱処理装置で加熱した前記ウエブと前記第1塗工層を冷却する冷却装置と、
前記第1水平面より上にある第2水平面に設けられ、前記冷却装置で冷却された前記ウエブの他方の面に第2塗工液を塗工する第2塗工装置と、
前記第2塗工装置で前記ウエブに塗工された前記第2塗工液を加熱して第2塗工層を形成する第2熱処理装置と、
を有し、
前記冷却装置は、前記第1水平面から前記第2水平面に前記ウエブを引き上げる経路に前記ウエブを抱きかかえて冷却する冷却ロールを有する、
ことを特徴とするウエブの製造装置。
【請求項2】
前記冷却ロールは、複数本配され、
全ての前記冷却ロールは、同期して回転し、
前記ウエブは、全ての前記冷却ロールに順番に抱きかかえられて走行する、
請求項1に記載のウエブの製造装置。
【請求項3】
複数本の前記冷却ロールは、上下方向に順番に配され、
前記ウエブは、下から上の前記冷却ロールを順番に走行する、
請求項2に記載のウエブの製造装置。
【請求項4】
前記冷却ロールの手前にエキスパンダーロールが配され、
前記ウエブは、前記エキスパンダーロールを経て前記冷却ロールに案内される、
請求項1に記載のウエブの製造装置。
【請求項5】
前記エキスパンダーロールの手前に上下動する上下動ロールが配され、
前記ウエブは、前記上下動ロールを経て前記エキスパンダーロールに案内される、
請求項4に記載のウエブの製造装置。
【請求項6】
前記第1塗工装置で前記ウエブの前記一方の面に前記第1塗工液がストライプ塗工され、
前記第2塗工装置で前記ウエブの前記他方の面に前記第2塗工液がストライプ塗工されている、
請求項1に記載のウエブの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池などを製造する場合には、長手状の金属箔(ウエブ)の両面に電極材料を形成する製造装置が用いられている。この製造装置は、ウエブの表面に第1塗工装置で第1塗工液(第1電極材料)をストライプ塗工し、その後に第1熱処理装置によって第1塗工液を加熱して第1塗工層を形成し、次に、第2塗工装置でウエブの裏面に第2塗工液(第2電極材料)をストライプ塗工し、その後に第2熱処理装置によって第2塗工液を加熱させて第2塗工層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、2台の塗工装置によってウエブの表面と裏面にそれぞれ塗工液をストライプ塗工する場合に、その塗工位置が合致しているか、又は目的の位置に塗工されている必要がある。しかし、金属箔などのウエブは、第1熱処理装置によって熱膨張し、第1塗工装置で塗工した一方の面の塗工位置と、第2塗工装置で塗工した他方の面の塗工位置がずれるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ウエブの両面に塗工液を塗工する場合に、第1熱処理装置によってウエブに熱膨張があっても、両面の塗工位置がずれないウエブの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1水平面に設けられ、走行するウエブの一方の面に第1塗工液を塗工する第1塗工装置と、前記第1水平面に設けられ、前記第1塗工装置で前記ウエブに塗工された前記第1塗工液を加熱して第1塗工層を形成する第1熱処理装置と、前記第1熱処理装置で加熱した前記ウエブと前記第1塗工層を冷却する冷却装置と、前記第1水平面より上にある第2水平面に設けられ、前記冷却装置で冷却された前記ウエブの他方の面に第2塗工液を塗工する第2塗工装置と、前記第2塗工装置で前記ウエブに塗工された前記第2塗工液を加熱して第2塗工層を形成する第2熱処理装置と、を有し、前記冷却装置は、前記第1水平面から前記第2水平面に前記ウエブを引き上げる経路に前記ウエブを抱きかかえて冷却する冷却ロールを有する、ことを特徴とするウエブの製造装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1塗工装置でウエブの一方の面に塗工した後に、第1熱処理装置によってウエブを加熱乾燥させてウエブに熱膨張があっても、冷却装置によってウエブを冷却するためその熱膨張が収縮し、第2塗工装置でウエブの他方の面に第2塗工液を塗工しても、ウエブの両面の塗工位置がずれない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ウエブの製造装置の側面から見た全体図である。
【
図4】冷却装置の前から見た一部欠裁縦断面図である。
【
図5】下冷却ロールとエキスパンダーロールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態であるウエブWの製造装置1について
図1~
図7を参照して説明する。
【0010】
本実施形態におけるウエブWは、
図6、
図7に示すように、リチウムイオン電池などの電極材に使用される長尺状の金属箔であり、製造装置1は、このウエブW(金属箔)の表面に電極材料である第1塗工液をストライプ塗工して第1塗工層aを形成し、裏面に電極材料である第2塗工液をストライプ塗工して第2塗工層bを形成する。なお、ストライプ塗工とは、ウエブWの幅方向において所定間隔の間隙を設けて塗工層を形成するものである。また、ウエブWは、製造装置1に一定の走行速度と一定の張力で搬送されてくる。
【0011】
(1)製造装置1の構造
製造装置1の構造について
図1を参照して説明する。製造装置1は、水平な床(以下、「第1水平面」という)F1に設置台2を有する。設置台2は、第1水平面F1に垂直に立設された複数本の柱10と、それら柱10の上端に水平に設けられた設置板12を有する。以下この設置板12の上面を「第2水平面F2」という。
【0012】
図1に示すように、第1水平面F1には、第1塗工装置3と第1熱処理装置4が設置されている。第1塗工装置3は、走行するウエブWの表面に第1塗工液をストライプ塗工する。第1熱処理装置4は、第1塗工装置3によってウエブWの表面にストライプ塗工された第1塗工液を熱風によって加熱し、第1塗工層aを形成する。
【0013】
図1に示すように、第1水平面F1と第2水平面F2の間には、冷却装置5が設けられている。冷却装置5は、第1熱処理装置4によって加熱されたウエブWと第1塗工層aを常温まで冷却しながら上方に移動させ、第2水平面F2に搬出する。
【0014】
図1に示すように、第2水平面F2には、第2塗工装置6と第2熱処理装置7が設けられている。第2塗工装置6は、冷却装置5で冷却されたウエブWの裏面に第2塗工液をストライプ塗工する。第2熱処理装置7は、第2塗工装置6によってウエブWの裏面にストライプ塗工された第2塗工液を、熱風によって加熱し、第2塗工層bを形成する。
【0015】
以下、各装置3~7について順番に説明する。なお、説明においてウエブWの走行方向を前後方向といい、ウエブの幅方向を左右方向といい、第1水平面F1と第2水平面F2の関係は上下方向という。
【0016】
(2)第1塗工装置3
第1塗工装置3について
図1を参照して説明する。第1塗工装置3は、第1水平面F1に水平に設置された基台31にフレーム32が設置されている。
【0017】
フレーム32の内部には、バックアップロール33が回転自在に設置されている。バックアップロール33の回転軸は、水平方向となっている。
【0018】
フレーム32の内部であって、基台31には、ベンド装置35が設けられ、ベンド装置35の上方にはダイ34が支持されている。ダイ34の上端には、第1塗工液の吐出口36が左右方向に開口している。ダイ34は、塗工圧でウエブWの幅方向に対し中央部が凹まないように、すなわち、左右方向に水平になるようにベンド装置35でダイ34の中央部が上方に押圧されている。
【0019】
第1塗工装置3の前方には、案内ロール37、案内ロール38が回転自在に配され、走行するウエブWをバックアップロール33に案内する。
【0020】
図1に示すように、第1塗工装置3は、ウエブWが一定の走行速度と一定の張力で案内ロール37に搬送されてくるため、この案内ロール37と案内ロール38を経たウエブWが、バックアップロール33の下周面を通過し、そのときにダイ34の吐出口36から、ウエブWの表面に第1塗工液をストライプ塗工する。ウエブWに塗工される第1塗工液の塗工厚さは、ダイ34の吐出口36とバックアップロール33との間隙寸法によって決定される。
【0021】
(3)第1熱処理装置4
次に、第1熱処理装置4について
図1を参照して説明する。
【0022】
第1塗工装置3の前方の第1水平面F1には、基台40が設置されている。基台40は複数本の柱41の上に設置板42が設けられたものであり、この設置板42は、
図1に示すように前後方向に沿ってアーチ型である。設置板42は、第1塗工装置3が配された側から次第に上方に傾斜するように配置され、最上端部を通過した後は再び下方に傾斜し、冷却装置5側で、最も低い位置になっている。設置板42の上には、複数個の熱処理室43,44,45,46が順番に設置されている。熱処理室43,44,45,46は、断熱構造を有し、ほぼ直方体である。
【0023】
熱処理室43は、第1塗工装置3に最も近い位置に設置され、熱処理室43の前面にはウエブWの搬入口431が設けられ、後面には搬出口432が設けられている。このとき搬入口431より上方に搬出口432が設けられ、ウエブWは斜め上方に移動する。
【0024】
熱処理室43の内部であって、搬入口431から搬出口432に向かうウエブWの走行路の下方には、複数の搬送ロール433が回転自在に設けられている。この搬送ロール433の回転軸は、ウエブWの幅方向に平行に設けられている。ウエブWは、この搬送ロール433上を走行する。
【0025】
ウエブWの走行路の上方には、走行方向(前後方向)にダクト434が設けられている。ダクト434の下面には、ノズル435が所定間隔毎に設置されている。このノズル435は、ウエブWの幅方向(左右方向)と平行に設けられている。ダクト434には、不図示の送風機、加熱装置が設けられている。送風機で外から吸い込まれた空気は、所定温度まで加熱装置で加熱されて熱風となり、ダクト434内部に送り込まれる。ダクト434に送り込まれた熱風は、それぞれのノズル435の下面にある吹き出し口から、搬送ロール433の上を走行するウエブWの表面(第1塗工液の塗工された面)に吹き出され、第1塗工液が加熱される。この場合に、ウエブWは、下方が搬送ロール433によって支持されているため、皺が発生し難い。また、熱処理室43は上方に向かうように傾斜しているため、搬送ロール433からウエブWがずれ落ちない。
【0026】
熱処理室44は、熱処理室43の次に設けられ、熱処理室44の前面にはウエブWの搬入口441が設けられ、後面には搬出口442が設けられている。このとき搬入口441より上方に搬出口442が設けられ、ウエブWは斜め上方に移動する。熱処理室44内部の構造は、熱処理室43と同様である。
【0027】
熱処理室45は、熱処理室44の次に設けられ、熱処理室45の前面にはウエブWの搬入口451が設けられ、後面には搬出口452が設けられている。このとき搬入口451より下方に搬出口452が設けられ、ウエブWは斜め下方に移動する。熱処理室45の内部の構造は、熱処理室43と同様である。
【0028】
熱処理室46は、熱処理室45の次に設けられ、熱処理室46の前面にはウエブWの搬入口461が設けられ、後面には搬出口462が設けられている。このとき搬入口461より下方に搬出口462が設けられ、ウエブWは斜め下方に移動する。
【0029】
熱処理室46の内部の構造は、熱処理室43とは異なる。すなわち、熱処理室46内におけるウエブWの走行路の上方には、上ダクト463がウエブWの走行方向(前後方向)に設けられ、この上ダクト463の下面に上ノズル464が所定間隔毎に設けられている。この上ノズル464は、ウエブWの幅方向と平行に設けられている。
【0030】
ウエブWの走行路の下方には、下ダクト465が走行方向(前後方向)に設けられ、この下ダクト465の上面には下ノズル466が所定間隔毎に設けられている。この下ノズル466は、ウエブWの幅方向と平行に設けられている。上ダクト463と下ダクト465には、不図示の送風装置と加熱装置から熱風が送られ、上ダクト463に送られた熱風は、上ノズル464から下方に向かって吹き出され、下ダクト465に送られた熱風は、下ノズル466から上方に向かって吹き出される。上ノズル464と下ノズル466とは、千鳥状に配されているため、走行路を通るウエブWは、浮遊状態で正弦波のように移動し、ウエブWの表面と裏面が加熱されて、第1塗工液から第1塗工層aが形成され、搬出口462から搬出される。
【0031】
(4)冷却装置5
冷却装置5について
図1~
図5を参照して説明する。
【0032】
(4-1)冷却装置5の構造
冷却装置5のフレーム501は、
図1、
図4に示すように、第1熱処理装置4の前方にある設置台2の設置板12の下面に取り付けられている。フレーム501は、左右一対のフレーム板530,531と、左右一対のフレーム板530,531の下部において、左右方向に掛け渡された枠材532,533と、モータ支持部513を有する。
【0033】
図2~
図4に示すように、冷却装置5は、下冷却ロール502と中冷却ロール503と上冷却ロール504を有し、
図4に示すように、下冷却ロール502の左右一対の回転軸505,505、中冷却ロール503の左右一対の回転軸507,507、上冷却ロール504の左右一対の回転軸509,509は、左右一対のフレーム板530,531に設けられた左右一対のベアリング534,534に回転自在に支持されている。
図2に示すように、下冷却ロール502と上冷却ロール504とは上下に配され、中冷却ロール503は、上下方向において下冷却ロール502と上冷却ロール504の間で、かつ、下冷却ロール502と上冷却ロール504より前方にずれて配され、側方から見て3本の冷却ロールは全体的に三角形になるように配されている。
【0034】
図2~
図4に示すように、下冷却ロール502は、金属製であり、その内部が空洞である。下冷却ロール502の左右両端にある回転軸505,505には、スプロケット506,506がそれぞれ同軸に設けられている。左右一対の回転軸505,505の内部には、配水路518,518がそれぞれ設けられている。
【0035】
図2~
図4に示すように、中冷却ロール503は、金属製であり、その内部が空洞である。中冷却ロール503の左右両端にある回転軸507,507には、スプロケット508,508がそれぞれ同軸に設けられている。中冷却ロール503の一方の回転軸507であって、スプロケット508より外方には、従動スプロケット512が同軸に設けられている。左右一対の回転軸507,507の内部には、配水路519,519がそれぞれ設けられている。
【0036】
図2~
図4に示すように、上冷却ロール504は、金属製であり、その内部が空洞である。上冷却ロール503の左右両端にある回転軸509,509には、スプロケット510,510がそれぞれ同軸に設けられている。左右一対の回転軸509,509の内部には、配水路520,520がそれぞれ設けられている。
【0037】
図3に示すように、左右両側のスプロケット506,508,510には、左右一対の無端状チェーン511,511が架け渡されている。
【0038】
図3、
図4に示すように、モータ支持部513は、フレーム板530の外側に設けられ、モータ514と、ギアボックス515が設けられている。ギアボックス515の入力側にはモータ514の出力軸が連結され、ギアボックス515の出力回転軸には駆動スプロケット516が設けられている。駆動スプロケット516と従動スプロケット512との間には、無端状の駆動チェーン517が掛け渡されている。
【0039】
図4に示すように、下冷却ロール502の一方の配水路518と中冷却ロール503の一方の配水路519と上冷却ロール504の一方の配水路520には、常温の水を供給する給水管521が接続されている。この給水管521の先端には水を送るポンプが設けられている。下冷却ロール502の他方の配水路518と中冷却ロール503の他方の配水路519と上冷却ロール504の他方の配水路520には、水を排水するための排水管522が設けられている。この排水管522は、上冷却ロール504の上方を通り、給水管521側に至る。
【0040】
図1、
図2に示すように、第1熱処理装置4と冷却装置5の間には、ウエブWを案内するための案内ロール523、案内ロール524、案内ロール525が設けられている。そして、最も冷却装置5に近い案内ロール523の近傍には、上下動ロール526が設けられている。また、上下動ロール526と冷却装置5の下冷却ロール502との間には、エキスパンダーロール527が設けられている。エキスパンダーロール527とは、
図5に示すように弓形に湾曲したまま回転するロールのことであり、この湾曲率を調整できる。上下動ロール526は、回転軸を水平方向に維持したまま、その位置を垂直方向に上下動する。
【0041】
図1、
図2に示すように、上冷却ロール504の近傍には上案内ロール528が設けられ、この上案内ロール528の上方には上案内ロール529が設けられている。
【0042】
(4-2)冷却装置5の動作状態
次に、冷却装置5の動作状態について
図1~
図4を参照して説明する。
【0043】
図4に示すように、中冷却ロール503は、不図示のポンプから常温の水が給水管521、配水路519を経てその内部に給水されて満たされ、その後に他方の配水路519、排水管522を経て排水される。この常温の水は、ポンプによって中冷却ロール503の内部を循環する。これにより中冷却ロール503の周面全体は、常温(例えば、15~25℃)に保持される。下冷却ロール502、上冷却ロール504についても同様に周面全体が常温に保持される。
【0044】
また、
図3、
図4に示すように、モータ514が回転するとギアボックス515で所定の回転速度に調整され、駆動スプロケット516が回転する。駆動スプロケット516が所定の速度で回転すると駆動チェーン517を経て中冷却ロール503の従動スプロケット512が回転する。従動スプロケット512が回転すると、それと共にスプロケット508が回転し、このスプロケット508に架け渡されている無端状のチェーン511によってスプロケット506、510も回転する。そして、下冷却ロール502、中冷却ロール503、上冷却ロール504が同期して回転する。この同期して回転する速度は、ウエブWの走行速度と合致している。
【0045】
図2に示すように、第1熱処理装置4によってウエブWの表面にストライプ状の第1塗工層aが形成され、案内ロール523、524、525を通り、上下動ロール526を経てエキスパンダーロール527に至る。エキスパンダーロール527に至ったウエブWは、下冷却ロール502、中冷却ロール503、上冷却ロール504に抱きかかえられて通過し、上案内ロール528、上案内ロール529を経て第2水平面F2にある第2塗工装置6に走行する。ウエブWの表面と第1塗工層aが下冷却ロール502、中冷却ロール503、上冷却ロール504に抱きかかえられて直接接触する間に水冷されて、第1熱処理装置4によって加熱されてウエブWと第1塗工層aが熱膨張(特に、ウエブWの幅方向に熱膨張)していても収縮する。このとき、下冷却ロール502、中冷却ロール503、上冷却ロール504の外周面が、第1塗工層aと直接、接触している。
【0046】
図2に示すように、ウエブWは下冷却ロール502に至る前に、下冷却ロール502に対する抱き角θを、上下動ロール526を上下動させることにより、皺が発生し難いように調整する。また、
図5に示すように、エキスパンダーロール527の湾曲率を調整してウエブWに皺が発生しないように幅方向に広げ、下冷却ロール502に抱きかかえさせる。これにより、皺がない状態でウエブWは冷却されるため、冷却装置5を通過したウエブWに皺が発生しない。
【0047】
(5)第2塗工装置6
次に、第2塗工装置6について
図1を参照して説明する。第2塗工装置6は、第1塗工装置3と同様に基台61にフレーム62が設けられ、フレーム62の内部にバックアップロール63が設けられ、バックアップロール63の下方にダイ64が設けられている。このダイ64はベンド装置65に支持されている。
【0048】
冷却装置5の上案内ロール529から送られてきたウエブWは、案内ロール66、案内ロール67、案内ロール68を経てバックアップロール63の下周面に抱きかかえられ、ダイ64によってウエブWの裏面に第2塗工液がストライプ塗工される。
【0049】
(6)第2熱処理装置7
次に、第2塗工装置6について
図1を参照して説明する。第2熱処理装置7は、第1熱処理装置4と同様の構造を有している。
【0050】
第2水平面F2には、第2塗工装置6の基台70が設置されている。この基台70は第2水平面F2に垂直方向に設置された複数本の柱71に設置板72が設置されたものである。設置板72は、ウエブWの走行方向に沿ってアーチ型に形成されている。設置板72の上には熱処理室73、熱処理室74、熱処理室75、熱処理室76が順番に設置されている。熱処理室73は、熱処理室43の構造と同様であり、熱処理室74は、熱処理室44と同様の構造であり、熱処理室75は、熱処理室45と同様の構造であり、熱処理室76は、熱処理室46と同様の構造を有している。
【0051】
そして、
図1に示すように、第2塗工装置6でウエブWの裏面にストライプ塗工された第2塗工液が、第2熱処理装置7で加熱され、第2塗工層bが形成される。
【0052】
(7)効果
本発明によれば、第1熱処理装置4によって加熱されてウエブWと第1塗工層aが熱膨張(特に、ウエブWの幅方向に熱膨張)していても、ウエブWと第1塗工層aを冷却装置5によって水冷することにより、その熱膨張が収縮する。すなわち、ウエブWと第1塗工層aを下冷却ロール502、中冷却ロール503、上冷却ロール504によって順番に冷却しながら一定の速度で上下方向に下から上に引き上げるため、ウエブWへかかる重力の方向とウエブWにかかる張力の方向が一致し、ウエブWの幅方向に余分な力がかからない状態でウエブWの熱膨張、特に、ウエブWの幅方向の熱膨張を収縮させることができる。
【0053】
また、上下動ロール526によって皺が発生しないように下冷却ロール502に対する抱き角θを調整し、かつ、エキスパンダーロール527によってウエブWに発生している皺を取り除いた後に冷却するため、それ以後に皺が発生しない。
【0054】
以上により、ウエブWと第1塗工層aの熱膨張(特に、ウエブWの幅方向に熱膨張)は収縮するので、ウエブWは収縮し、かつ、皺がない状態で第2塗工装置6に至り、第2塗工装置6でウエブWの裏面に第2塗工液をストライプ塗工するので、第2塗工層bと第1塗工層aの位置と合致する。
【変更例】
【0055】
上記実施形態の変更例について説明する。
【0056】
第1熱処理装置4と冷却装置5との間に、ウエブWの蛇行を調整する蛇行調整装置を設けたり、ウエブWの張力を調整する張力調整装置を設けたりしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、冷却装置5に設けた冷却ロールは3個であったが1個でもよい。また、2個、4個以上であってもよい。また、冷却ロールは、水冷でなく空冷でもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ウエブWの材料は金属箔であったが、フィルム、紙などであってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ウエブWの両面にストライプ塗工をしたが、これに代えて、ウエブWの一方の面のみストライプ塗工、他方の面を全て塗工液で塗工する全面塗工してもよい。さらに、ウエブWの両方の面を全面塗工してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第1熱処理装置4、第2熱処理装置7の熱処理室を4個設けたが、これに限らず4個以上(例えば10個)を設けて、より完全にウエブWを乾燥させてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第2熱処理装置7を第2水平面F2の下方に設置したが、これに代えて第1水平面F1に載置してもよい。
【0062】
また、上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・製造装置、2・・・設置台、3・・・第1塗工装置、4・・・第1熱処理装置、5・・・冷却装置、6・・・第2塗工装置、7・・・第2熱処理装置、502・・・下冷却ロール、503・・・中冷却ロール、504・・・上冷却ロール、526・・・上下動ロール、527・・・エキスパンダーロール