(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087552
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20230616BHJP
B05C 9/06 20060101ALI20230616BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230616BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C9/06
B05C11/00
G01B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202005
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】横山 賀規
(72)【発明者】
【氏名】見津 葵樹
(72)【発明者】
【氏名】森本 貴博
【テーマコード(参考)】
2F062
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA10
2F062CC22
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE63
2F062FF03
2F062GG18
2F062HH05
2F062MM06
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA03
4F041CA12
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042DH09
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】どの作業員であっても、バックアップロールとダイの位置決めを簡単に行うことができる塗工装置を提供する。
【解決手段】ウエブWを抱きかかえて前後方向に搬送するバックアップロール12と、バックアップロール12の下方に配されてダイ14と、ダイ14の下方に配された台座20と、ダイ14を左右両側から支持すると共に、台座20に対し前後方向に移動自在に配された左右一対の腕部34と、左右一対の芯出し治具60,60とを有し、左側の芯出し治具60のダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の外周面までの最短距離と、右側の芯出し治具60のダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の外周面までの最短距離とが同じになるように、左右一対の腕部34,34を前後方向に移動させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを抱きかかえて前後方向に搬送するバックアップロールと、
前記バックアップロールの下方に配され、塗工液を前記ウエブに塗工するダイと、
前記ダイの下方に配された台座と、
前記台座の上面に設けられ、前記ダイを左右両側から支持すると共に、前記台座に対し前後方向に移動自在に配された左右一対の腕部と、
左右一対の芯出し治具と、
を有し、
左側の前記芯出し治具は、
前記ダイの前面、又は後面の左側に着脱自在に設けられる左治具本体と、
前記バックアップロールの外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記左治具本体の上端部に設けられた左測定手段と、
を有し、
右側の前記芯出し治具は、
前記ダイの前面、又は後面の右側に着脱自在に設けられる右治具本体と、
前記バックアップロールの前記外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記右治具本体の上端部に設けられた右測定手段と、
を有し、
前記左測定手段は、前記左測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの左最短距離が測定可能であり、
前記右測定手段は、前記右測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの右最短距離が測定可能である、
ことを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
前記左測定手段と前記右測定手段とは、ダイヤルゲージである、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記左測定手段と前記右測定手段とは、前記バックアップロールの回転軸と同じ高さに設けられている、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記左治具本体は、
前記ダイの前面、又は後面の左側に着脱自在に左ボルトによって固定される直方体の左固定部と、
前記左固定部に設けられた左取っ手部と、
前記左取っ手部から上方に突設された左突出部と、
を有し、前記左測定手段は、前記左突出部の上端に設けられ、
前記右治具本体は、
前記ダイの前面、又は後面の右側に着脱自在に右ボルトによって固定される直方体の右固定部と、
前記右固定部に設けられた右取っ手部と、
前記右取っ手部から上方に突設された右突出部と、
を有し、前記右測定手段は、前記右突出部の上端に設けられている、
請求項1に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記ダイは、
第1本体と、
前記第1本体の後面に配された第2本体と、
前記第1本体、又は前記第2本体に設けられた前記塗工液を溜める液溜め部と、
前記液溜め部から前記第1本体と前記第2本体の間に延びる前記塗工液の液通路と、
前記液通路の上端に設けられ前記塗工液を吐出する吐出口と、
を有する請求項4に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記左治具本体を前記ダイに固定する左ボルトは、前記液溜め部より左側において、前記第1本体と前記第2本体を貫通し、
前記右治具本体を前記ダイに固定する右ボルトは、前記液溜め部より右側において、前記第1本体と前記第2本体を貫通する、
請求項5に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記ダイは、
左右方向に延びた縦断面三角形の中間本体と、
前記中間本体の前面に配された第1本体と、
前記中間本体の後面に配された第2本体と、
前記第1本体に設けられ前記塗工液を溜める第1液溜め部と、
前記第1液溜め部から前記第1本体と前記中間本体の間に延びる前記塗工液の第1液通路と、
前記第1液通路の上端に設けられ前記塗工液を吐出する第1吐出口と、
前記第2本体に設けられ前記塗工液を溜める第2液溜め部と、
前記第2液溜め部から前記第2本体と前記中間本体の間に延びる前記塗工液の第2液通路と、
前記第2液通路の上端に設けられ前記塗工液を吐出する第2吐出口と、
を有する請求項4に記載の塗工装置。
【請求項8】
ウエブを抱きかかえて前後方向に搬送するバックアップロールと、
前記バックアップロールの下方に配され前記ウエブに塗工液を塗工するダイと、
前記ダイの下方に配された台座と、
前記台座の上面に設けられ、前記ダイを左右両側から支持すると共に、前記台座に対し前後方向に移動自在に配された左右一対の腕部と、
左右一対の芯出し治具と、
を有し、
左側の前記芯出し治具は、
前記ダイの前面、又は後面の左側に着脱自在に設けられる左治具本体と、
前記バックアップロールの外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記左治具本体の上端部に設けられた左測定手段と、
を有し、
右側の前記芯出し治具は、
前記ダイの前面、又は後面の右側に着脱自在に設けられる右治具本体と、
前記バックアップロールの前記外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記右治具本体の上端部に設けられた右測定手段と、
を有した塗工装置の調整方法であって、
前記左測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの左最短距離と、前記右測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの右最短距離とが同じになるように、左右一対の前記腕部の中で少なくとも一方の前記腕部を前後方向に移動させる、
ことを特徴とする塗工装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブに塗工液を塗工する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックアップロールの下方にダイを設置し、ダイの上端にあるスリット状の吐出口から塗工液を吐出して、バックアップロールの下周面に抱きかかえられて搬送されているウエブに、塗工液を塗工する塗工装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-217452号公報
【特許文献2】特開2020-131084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような塗工装置において、ダイで塗工液をウエブに塗工する前に、ダイの左右方向と、バックアップロールの回転軸とが平行になるように位置決め(芯出し)しないと、ウエブに塗工した塗工液の塗工位置が斜めにずれてしまう。
【0005】
そのため、作業員が手作業によってバックアップロールとダイとを位置決めをしていたが、微妙な調整が必要であるため作業員の習熟度によって精度や調整時間が大きく変わるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、どの作業員であっても、バックアップロールとダイの位置決めを簡単に行うことができる塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエブを抱きかかえて前後方向に搬送するバックアップロールと、前記バックアップロールの下方に配され、塗工液を前記ウエブに塗工するダイと、前記ダイの下方に配された台座と、前記台座の上面に設けられ、前記ダイを左右両側から支持すると共に、前記台座に対し前後方向に移動自在に配された左右一対の腕部と、左右一対の芯出し治具と、を有し、左側の前記芯出し治具は、前記ダイの前面、又は後面の左側に着脱自在に設けられる左治具本体と、前記バックアップロールの外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記左治具本体の上端部に設けられた左測定手段と、を有し、右側の前記芯出し治具は、前記ダイの前面、又は後面の右側に着脱自在に設けられる右治具本体と、前記バックアップロールの前記外周面の前方、又は後方に配されると共に、前記右治具本体の上端部に設けられた右測定手段と、を有し、前記左測定手段は、前記左測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの左最短距離が測定可能であり、前記右測定手段は、前記右測定手段から前記バックアップロールの前記外周面までの右最短距離が測定可能である、ことを特徴とする塗工装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、左右一対の芯出し治具における左測定手段からバックアップロールの外周面までの左最短距離と、右測定手段からバックアップロールの外周面までの右最短距離とを測定し、これら最短距離が同じになるように、左右一対の腕部を前後方向に移動させてダイの位置を調整する。これによって、ダイの左右方向と、バックアップロールの回転軸とが平行になるように簡単に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1の塗工装置の前方から見た斜視図である。
【
図4】ダイでウエブに塗工液を塗工している状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの塗工装置10について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0011】
本発明の実施形態1のウエブWの塗工装置10について
図1~
図7を参照して説明する。本実施形態の塗工装置10は、フィルム、金属箔、メッシュ状の金属、紙、布帛などの長尺状のウエブWに塗工液を1層だけ塗工するものである。本説明で左側とは、塗工装置10を、
図1に示すように前面から後方を見た状態における左側を意味する。
【0012】
(1)塗工装置10の構成
塗工装置10の構成について
図1~
図7を参照して説明する。塗工装置10は、不図示のフレームに上から順番にバックアップロール12、ダイ14、台座20が設けられている。
【0013】
図1、
図2に示すように、金属製のバックアップロール12は、左右両側から左右一対の回転軸13,13が突出し、左右一対の回転軸13,13が、不図示のフレームの最上段に回転自在に水平に支持されている。
図4に示すように、バックアップロール12は、中心O(回転軸13)を中心として、反時計回りの方向に回転し、その下周面でウエブWを抱きかかえて前後方向(
図4において左から右、すなわち上流から下流)に搬送する。バックアップロール12の一方の回転軸13には、バックアップロール12を一定の回転速度で回転させるモータが連結されている。
【0014】
図4に示すように、ダイ14は、金属製であってバックアップロール12の下方に設けられ、第1本体16と第2本体18とを有している。第1本体16は、左右方向に延びた直方体であり、後面上端部から前面上端部に向かって下がる第1傾斜面22が形成され、上部が縦断面三角形となっている。第1本体16の後面は垂直であり、液溜め部24が左右方向に形成されている。第1本体16の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の第1塗工刃部が形成されている。
【0015】
第2本体18は、第1本体16の後面に配されるものであって、左右方向に延びた直方体である第2本体18の前面上端部から後面上端部に向かって下がる第2傾斜面26が形成され、上部が縦断面三角形となっている。第2本体18の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の第2塗工刃部が形成されている。
【0016】
図4、
図5に示すように、板状のシム28が、第1本体16の後面と第2本体18の前面との間に挟持されている。
図5に示すように、液溜め部24の外側にある第1本体16と第2本体18とシム28の締結ネジ孔94を貫通する複数本の締結ボルト96によって一体に固定されている。これら部材を一体に固定した場合には、第1傾斜面22と第2傾斜面26とが全体として側方から見て縦断面三角形に形成され、第1塗工刃部の上面と第2塗工刃部の上面とは同じ高さになり、その上方に塗工間隔を開けてバックアップロール12の下周面が位置する。
【0017】
図4に示すように、液溜め部24の上方であって、第1本体16と第2本体18との間には、液溜め部24の上端部から延びる液通路21が垂直に形成され、液通路21の上端部には、左右方向にスリット状になった吐出口23が形成されている。スリット状の吐出口23は、第1塗工刃部と第2塗工刃部の間に位置している。液通路21の左右両側部は、シム28の左右両側によって閉塞されている。
図1、
図2、
図4に示すように、第1本体16に設けられた液溜め部24の前面の左右方向の中心には、塗工液の供給口25が貫通し、この供給口25には、不図示のポンプから塗工液が供給される。
【0018】
図1、
図2に示すように、第1本体16の左右両側部には、左右一対の回転軸30,30が水平に突出する左右一対の軸固定部32,32がそれぞれ設けられている。
【0019】
図1、
図2、
図4に示すように、台座20は、左右方向に長い直方体であり、不図示のフレームの最下段に水平に設置されている。台座20の上面における左右両側部には左右一対の腕部34,34が設けられている。
図1、
図2、
図4~
図7に示すように、左右一対の腕部34,34は、台座20の上面に完全に固定された左右一対の腕支持台36,36をそれぞれ有し、左右一対の腕支持台36の上面に左右一対の腕本体38が前後方向に移動自在に設けられている。
図7に示すように左右一対の腕本体38,38には、ダイ14から突出している左右一対の回転軸30,30が回転自在に嵌合している。腕本体38の下部から前後方向に突出した前脚部38aと後脚部38bにはそれぞれ長孔40と長孔42が上下方向に貫通している。長孔40と長孔42は、前後方向に長い孔となっている。腕本体38の上方からこの長孔40と長孔42にそれぞれは挿入されたボルト44とボルト46が腕支持台36に螺合している。
【0020】
図7に示すように、腕支持台36の後端部から位置決め台48が突出し、位置決め台48は、腕本体38の後方に位置している。この位置決め台48には、前後方向に調整ボルト50が貫通し、調整ボルト50の後部(頭)側は位置決め台48の後面から突出し、調整ボルト50の前端部は、位置決め台48の前面から突出し、腕本体38の後面に当接している。これにより、ボルト44とボルト46を緩め、位置決め台48にある調整ボルト50を回転させることにより、調整ボルト50の前端部が腕本体38を押圧し、ボルト44が長孔40の隙間の分だけ移動し、ボルト46が長孔42の隙間の分だけ移動し、腕本体38の前後方向の位置を調整できる。調整が済んだ後には、ボルト44とボルト46を締結することにより、腕本体38が腕支持台36に完全に固定できる。そして、左右一対の腕本体38,38の前後方向の位置を左右それぞれ調整することにより、ダイ14の左右方向の傾きを調整できる。
【0021】
(2)芯出し治具60
次に、芯出し治具60について
図3を参照して説明する。
図3は、左側の芯出し治具60の斜視図である。芯出し治具60の治具本体は、固定部62、取っ手部64、突出部78を有している。
【0022】
図3に示すように、固定部62は、縦方向に長い直方体であって、この固定部62の上端と下端から環状の取っ手部64が前方に向かって設けられている。より詳しくは、取っ手部64は、直方体の固定部62の上端から斜め上方に延設された直方体の上部分66と、直方体の固定部62の下端から前方に水平に延設された下部分68と、上部分66と下部分68とを接続する縦方向の把持部分70より構成されている。また、環状の取っ手部64と固定部62によって囲まれた空間72に手を入れることができる。
【0023】
図3に示すように、固定部62の後面の下端部から支持片74が後方に突出している。この支持片74には上下方向に固定ボルト76が貫通している。
図3に示すように、固定部62には、芯出し治具60をダイ14に固定するために、上下方向に2個のネジ孔88と、上下方向に4個のネジ孔90が貫通している。また、このネジ孔88と対応した位置にある把持部分70には、凹み部92が設けられている。この凹み部92が設けられている理由は、ネジ孔88に締結ボルトを締結させるときに把持部分70が邪魔にならないようにするためである。なお、ネジ孔88の詳細は、実施形態2で説明する。
【0024】
図3に示すように、取っ手部64の上端部、すなわち、上部分66と把持部分70が接合している位置から直方体の突出部78が上方に突設されている。この突出部78の上端部には金属板を折曲したゲージ支持部82が前後方向に設けられ、このゲージ支持部82の内側には、ダイヤルゲージ80が水平に配されている。「ダイヤルゲージ」とは、短い直線距離を正確に測るための計測器であり、
図3に示すアナログ式のものは、測定子が付いたスピンドルの直線運動を歯車(ラックアンド・ピニオン)によって回転運動に変換し、さらに歯車を用いて拡大し、目盛りと指針でその動きの大きさを表す。測定域0-10mm、目量1/100mmが一般的である。目量1/1000mmの製品も存在する。デジタル式のものは、測定子が付いたスピンドルの直線の動きを、エンコーダーを用いて読み取り、液晶や表示器にエンコーダーが読み取った値を表示する。また、突出部78の上端部には、ダイヤルゲージ80の測定子84が水平に突出する孔86が前後方向に、かつ、水平に貫通している。
【0025】
なお、
図5に示すように、この芯出し治具60のサイズは、芯出し治具60をダイ14の前面に固定したときに、ダイヤルゲージ80の測定子84が、バックアップロール12の中心Oに合致するように予め設計しておく。
【0026】
右側の芯出し治具60も、左側の芯出し治具60と同じ構成であり、異なる点は把持部分70の凹み部92とネジ孔88、ネジ孔90の位置が左右対称に設けられている点である。
【0027】
(3)芯出し治具60,60による位置決め方法
次に、左右一対の芯出し治具60,60を用いて、バックアップロール12とダイ14との位置決め方法について説明する。
【0028】
まず、作業員は、左右一対の芯出し治具60,60のダイヤルゲージ80,80のゼロ点調整を行う。
【0029】
次に、作業員は、
図5に示すように、ダイ14の第1本体16とシム28と第2本体18とを貫通している左側の2本の締結ボルト96を若干緩める。
【0030】
次に、作業員は、
図5に示すように、左側の締結ネジ孔94と左側の芯出し治具60のネジ孔90とを合わせ、再び締結ボルト96を締結して、左側の芯出し治具60をダイ14の前面の左側に固定する。
【0031】
次に、作業員は、
図3、
図5に示すように、左側の芯出し治具60の下端にある支持片74の固定ボルト76を締め付けて、第1本体16の下面に、芯出し治具60を完全に固定する。このようにすることにより、左側の芯出し治具60をダイ14の前面の左側に固定することにより、
図5に示すように、左側の芯出し治具60のダイヤルゲージ80の測定子84は、バックアップロール12の中心Oの左側の高さに合致する。
【0032】
次に、作業員は、
図1、
図2に示すように、右側の芯出し治具60についても同様にダイ14の前面の右側に固定する。右側の芯出し治具60のダイヤルゲージ80の測定子84も、バックアップロール12の中心Oの右側の高さに合致する。
【0033】
次に、作業員は、左右一対のダイヤルゲージ80,80の測定子84,84をそれぞれバックアップロール12の外周面に当接させる。すると左側のダイヤルゲージ80には、ダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の外周面までの左最短距離が表示され、右側のダイヤルゲージ80には、ダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の右側の外周面までの右最短距離が表示される。これら左右両側の最短距離が同一である場合には、バックアップロール12の中心Oの左右方向が、ダイ14の吐出口23の左右方向が平行になっている。
【0034】
しかし、左右両側の最短距離が一致しない場合には、ダイ14の左右両側に対する傾きを調整する必要がある。そこで、作業員は、左右一対の腕部34の中の一方の腕部34に関して、ボルト44とボルト46を緩め、調整ボルト50で腕本体38の前後方向の位置を調整する。そして左右一対の最短距離が同一になるように調整する。なお、この場合に一方のみの腕本体38を調整してもよいが、左右両側の腕本体38,38をそれぞれ微調整してもよい。これにより、
図4に示すように、ダイ14の吐出口23の左右方向と、バックアップロール12の中心Oの左右方向が一致することになり、作業員は、位置決めを簡単に行うことができる。
【0035】
最後に、作業員は、位置決めが終了した後、締結ボルト96を緩めて左右一対の芯出し治具60,60をダイ14からそれぞれ取り外す。
【0036】
(4)効果
本実施形態によれば、作業員は、ダイ14の前面に左右一対の芯出し治具60,60を取り付け、左右一対のダイヤルゲージ80,80が測定した最短距離が一致するように、左右一対の腕部34,34の腕本体38,38を前後方向に移動させるだけで、位置決めを行うことができる。そのため、作業員は、その習熟度に関係なく位置決めを簡単に行うことができる。
【0037】
また、作業員は、芯出し治具60を持つ場合には、取っ手部64の把持部分70を手で握ればよい。特に把持部分70が細くなる凹み部92が設けられているため、この凹み部92で把持部分70を持ち易くなっている。
【実施形態2】
【0038】
本発明の実施形態2のウエブWの塗工装置10について
図8を参照して説明する。実施形態1では、ダイ14として、塗工液をウエブWに1層だけ塗工するものであったが、本実施形態では、これに代えて
図8に示すように、第1塗工液と第2塗工液を一度に2層塗工できる積層用のダイ100について説明する。なお、バックアップロール12、台座20、左右一対の芯出し治具60,60の構成については、実施形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0039】
(1)ダイ100
ダイ100の構成について
図8を参照して説明する。ダイ100は、
図8に示すように、左右方向に延び、縦断面三角形に形成された中間本体102と、中間本体102の前面に取り付けられた第1本体104と、中間本体102の後面に取り付けられた第2本体106とよりなる。中間本体102と第1本体104とは、中間本体102と第1本体104に設けられた複数個の締結ネジ孔122に螺合した複数本の締結ボルト120で固定され、中間本体102と第2本体106とは、不図示の複数本の締結ボルトで固定されている。
【0040】
図8に示すように、第1本体104の後面には第1塗工液が溜められる第1液溜め部108が形成されている。第1液溜め部108から上方に向かって第1液通路112が設けられている。中間本体102の上端と第1本体104の上端には、第1液通路112から流れてきた第1塗工液を吐出する第1吐出口116が設けられている。第2本体106の前面には第2塗工液が溜められる第2液溜め部110が形成されている。第2液溜め部110から上方に向かって第2液通路114が設けられている。中間本体102の上端と第2本体106の上端には、第2液通路114から流れてきた第2塗工液を吐出する第2吐出口118が設けられている。
【0041】
(2)塗工装置10の調整方法
左右一対の芯出し治具60,60を用いて、バックアップロール12とダイ100との位置決め方法について説明する。
【0042】
ダイ100の前面の左右両側に左右一対の芯出し治具60,60を固定する。この場合には、実施形態1の場合とは下記のように異なる。
【0043】
まず、作業員は、複数本の締結ボルト120の中で、ダイ100の左側にある2本の締結ボルト120を中間本体102と第1本体104から取り外す。
【0044】
次に、作業員は、ダイ100の前面の左側に、左側の芯出し治具60の固定部62を当接し、左側の締結ネジ孔122と左側の芯出し治具60のネジ孔88とを合わせる。
【0045】
次に、作業員は、固定部62の2個のネジ孔88に前方から2本の締結ボルト120をそれぞれ挿入して、固定部62、第1本体104、中間本体102とを一体に固定する。この場合に、2本の締結ボルト120の締結作業の障害とならないように、把持部分70には凹み部92が設けられている。
【0046】
次に、作業員は、左側の芯出し治具60の下端にある支持片74の固定ボルト76を締め付けて、第1本体16に芯出し治具60を完全に固定する。
【0047】
次に、作業員は、ダイ100の前面の右側に、右側の芯出し治具60を同様に固定する。
【0048】
次に、作業員は、左右一対のダイヤルゲージ80,80の測定子84,84をそれぞれバックアップロール12の外周面に当接させる。すると左側のダイヤルゲージ80には、ダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の外周面までの左最短距離が表示され、右側のダイヤルゲージ80には、ダイヤルゲージ80のゼロ点からバックアップロール12の右側の外周面までの右最短距離が表示される。
【0049】
次に、左右両側の最短距離が一致しない場合には、ダイ14の左右両側に対する傾きを調整する必要がある。そこで、作業員は、左右一対の腕部34,34の中の一方の腕部34に関して、ボルト44とボルト46を緩め、調整ボルト50で腕本体38の前後方向の位置を調整し、左右両側の最短距離を一致させる。
【0050】
最後に、作業員は、位置決めが終了した後、締結ボルト120を外して、左右一対の芯出し治具60,60をダイ14からそれぞれ取り外し、その後、再び締結ボルト120を締結する。
【0051】
(3)効果
本実施形態のダイ100においても、実施形態1のダイ14と同様に、作業員は、ダイ14の前面に左右一対の芯出し治具60,60を取り付け、左右一対のダイヤルゲージ80,80が測定した最短距離が一致するように、左右一対の腕部34,34の腕本体38,38を前後方向に移動させて位置決めを行うことができる。そのため、作業員は、その習熟度に関係なく位置決めを簡単に行うことができる。
【変更例】
【0052】
上記実施形態1,2では、左右一対の芯出し治具60,60をダイ14、ダイ100の前面の左右両側に設けたが、これに限らず、ダイ14、ダイ100の後面の左右両側に設けてもよい。
【0053】
上記実施形態1では、液溜め部24を第1本体16の後面に設けたが、第2本体18の前面に設けてもよい。
【0054】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10・・・塗工装置、12・・・バックアップロール、14・・・ダイ、16・・・第1本体、18・・・第2本体、20・・・台座、34・・・腕部、60・・・芯出し治具、62・・・固定部、64・・・取っ手部、70・・・把持部分、78・・・突出部、80・・・ダイヤルゲージ、84・・・測定子