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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087555
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20230616BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B60C1/00 Z
B60C15/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202009
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA11
3D131AA23
3D131AA24
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA39
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC39
3D131DA01
3D131DA34
3D131HA33
3D131HA37
3D131HA38
3D131HA45
3D131KA02
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】上ビードフィラーに用いたゴム組成物(U)における硫黄の含有量(US)と、下ビードフィラーに用いたゴム組成物(L)における硫黄の含有量(LS)と、パッドに用いたゴム組成物(P)における硫黄の含有量(PS)とが、式(1):4.0<LS-US<7.0と、式(2):4.0<LS-PS<7.0を満たす、空気入りタイヤとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ビードフィラーと下ビードフィラーの2つの部材から構成されたビードフィラーと、
前記上ビードフィラーとサイドウォールに挟まれ、前記上ビードフィラーよりも径方向外側に延在しているパッドとを有し、
ジエン系ゴム(U1)と硫黄(U2)とを含有するゴム組成物(U)を前記上ビードフィラーに用い、
ジエン系ゴム(L1)と硫黄(L2)とを含有するゴム組成物(L)を前記下ビードフィラーに用い、
ジエン系ゴム(P1)と硫黄(P2)とを含有するゴム組成物(P)を前記パッドに用いた、空気入りタイヤであって、
前記ゴム組成物(U)における前記ジエン系ゴム(U1)100質量部に対する前記硫黄(U2)の含有量(US[質量部])と、
前記ゴム組成物(L)における前記ジエン系ゴム(L1)100質量部に対する前記硫黄(L2)の含有量(LS[質量部])と、
前記ゴム組成物(P)における前記ジエン系ゴム(P1)100質量部に対する前記硫黄(P2)の含有量(PS[質量部])とが、次の式(1)、(2)を満たす、空気入りタイヤ。
式(1):4.0<LS-US<7.0
式(2):4.0<LS-PS<7.0
【請求項2】
前記ゴム組成物(U)における前記ジエン系ゴム(U1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBU[質量部])と、
前記ゴム組成物(L)における前記ジエン系ゴム(L1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBL[質量部])と、
前記ゴム組成物(P)における前記ジエン系ゴム(P1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBP[質量部])とが次の式(3)を満たす、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
式(3):CBL>CBP>CBU
【請求項3】
前記ゴム組成物(U)における硫黄の含有量(US)と、前記ゴム組成物(P)における硫黄の含有量(PS)とが、次の式(4)を満たす、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
式(4):-1.0<US-PS<2.0
【請求項4】
重荷重用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、左右一対のビード及びサイドウォールと、左右のサイドウォールの径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール間に設けられたトレッドとを備え、左右一対のビード間には、繊維コードが埋設されたカーカス層が装架され、カーカス層の端部はビードコアおよびビードフィラーの周りに内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
【0003】
特許文献1には、ビードフィラーが、上ビードフィラーと下ビードフィラーの2つの部材から構成されているものであって、これらの硫黄含有量やモジュラスを規定することで、ビードの耐久性に優れた空気入りタイヤを提供できることが記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、耐久性について更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6217326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献1には、下ビードフィラーにおける硫黄含有量(SL)と上ビードフィラーにおける硫黄含有量(SU)の差(SL-SU)が3未満であることが好ましいことが記載され、3以上である場合には、オーブン劣化後のビードの耐久性が不十分になることが記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、上ビードフィラーと下ビードフィラーの2つの部材から構成されたビードフィラーと、上記上ビードフィラーとサイドウォールに挟まれ、上記上ビードフィラーよりも径方向外側に延在しているパッドとを有し、ジエン系ゴム(U1)と硫黄(U2)とを含有するゴム組成物(U)を上記上ビードフィラーに用い、ジエン系ゴム(L1)と硫黄(L2)とを含有するゴム組成物(L)を上記下ビードフィラーに用い、ジエン系ゴム(P1)と硫黄(P2)とを含有するゴム組成物(P)を上記パッドに用いた、空気入りタイヤであって、上記ゴム組成物(U)における上記ジエン系ゴム(U1)100質量部に対する上記硫黄(U2)の含有量(US[質量部])と、上記ゴム組成物(L)における上記ジエン系ゴム(L1)100質量部に対する上記硫黄(L2)の含有量(LS[質量部])と、上記ゴム組成物(P)における上記ジエン系ゴム(P1)100質量部に対する上記硫黄(P2)の含有量(PS[質量部])とが、次の式(1)、(2)を満たすものとする。
式(1):4.0<LS-US<7.0
式(2):4.0<LS-PS<7.0
【0009】
上記ゴム組成物(U)における上記ジエン系ゴム(U1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBU)と、上記ゴム組成物(L)における上記ジエン系ゴム(L1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBL[質量部])と、上記ゴム組成物(P)における上記ジエン系ゴム(P1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBP[質量部])とが次の式(3)を満たすものとすることができる。
式(3):CBL>CBP>CBU
【0010】
上記ゴム組成物(U)における硫黄の含有量(US)と、上記ゴム組成物(P)における硫黄の含有量(PS)とが、次の式(4)を満たすものとすることができる。
式(4):-1.0<US-PS<2.0
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、重荷重用であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空気入りタイヤによれば、優れた耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの半断面図。
図2】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのビード付近を拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る空気入りタイヤについて、図1,2を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0017】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
【0018】
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。
【0019】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
【0020】
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
【0021】
図2についても同様である。
【0022】
タイヤ1は、例えばトラック、バス用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0023】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードフィラー22は、ビードコア21の外周を覆う下ビードフィラー221と、下ビードフィラー221のタイヤ径方向外側に配置されている上ビードフィラー222とにより構成されている。上ビードフィラー222は、後述するインナーライナー29、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。そして、下ビードフィラー221は、上ビードフィラー222よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。なお、下ビードフィラー221は、少なくともその一部がビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されていれば、ビードコア21の外周を覆っていない態様であってもよい。
【0024】
ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。
【0025】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0026】
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。ここで、プライ折り返し部25の折り返し端25Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0027】
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
【0028】
このプライコードは、金属製のスチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0029】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、複数層のスチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、4層のスチールベルト26が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0030】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0031】
トレッド12のタイヤ幅方向外側付近において、カーカスプライ23と、スチールベルト26およびトレッドゴム28との間の領域には、ショルダーパッド38が設けられている。このショルダーパッド38は、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域まで延出しており、その一部は、後述のサイドウォールゴム30との間で界面を形成している。すなわち、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域において、サイドウォールゴム30のタイヤ幅方向内側に、ショルダーパッド38の一部が存在している。
【0032】
ショルダーパッド38はクッション性を有するゴム部材からなり、カーカスプライ23とスチールベルト26との間において、クッション機能を発揮する。また、ショルダーパッド38は低発熱性の特性を有するゴムからなるため、サイドウォール13まで延出させることにより、効果的に発熱を抑制することができる。
【0033】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0034】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0035】
図2に示されるように、ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ23の少なくとも一部を覆うように補強プライとしてのスチールチェーハー31が設けられている。スチールチェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのスチールチェーハー31の端部31Aは、カーカスプライ23の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0036】
このスチールチェーハー31は、金属製のスチールコードにより構成された金属補強層であり、ゴムにより被覆されている。
【0037】
スチールチェーハー31のタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32は、タイヤの外表面に沿って配置されており、サイドウォールゴム30と連接している。リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。このリムストリップゴム32とサイドウォールゴム30は、タイヤの外表面を構成しているゴム部材である。
【0038】
そして、スチールチェーハー31の端部31Aのタイヤ径方向外側であって、カーカスプライ23の折り返し部25およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側には、第1のパッド35が設けられている。この第1のパッド35は、少なくともカーカスプライ23の折り返し端25Aのタイヤ幅方向外側に設けられている。第1のパッド35のタイヤ径方向外側は、タイヤ径方向外側に向かうほど、先細りとなるように形成され、その端部はリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0039】
さらに、第1のパッド35のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。より詳細には、スチールチェーハー31の一部、第1のパッド35、上ビードフィラー222の一部、カーカスプライ23のプライ本体24の一部のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。第2のパッド36のタイヤ径方向外側端部36Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりも径方向外側に延在し、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。また、第2のパッド36のタイヤ径方向内側端部36Bは、サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側端30Bよりもタイヤ径方向内側に延在し、ビードコア21の周りでタイヤ幅方向外側から内側には折り返されていない。
【0040】
そして、第2のパッド36のタイヤ径方向外側領域におけるタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配置されており、第2のパッド36のタイヤ径方向内側領域におけるタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32が配置されている。
【0041】
換言すると、第2のパッド36は、第1のパッド35等と、タイヤの外表面を構成する部材であるリムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30との間に設けられている。
【0042】
第1のパッド35および第2のパッド36は、パッド部材34を構成している。第2のパッド36は、上ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。第1のパッド35、第2のパッド36は、カーカスプライ23の折り返し端25Aおよびスチールチェーハー31の端部31Aにおける局所的な剛性の変化点に起因する急激な歪みを緩和する機能を有する。
【0043】
なお、本実施形態においては、パッド部材34が、第1のパッド35と第2のパッド36とにより構成されているが、パッド部材34は、一つの部材により構成されていてもよい。
【0044】
ここで、リムストリップゴム32と、その周囲の部材との関係を再度整理して説明すると、リムストリップゴム32は、ビードコア21の周りで折り返されたカーカスプライ23のプライ折り返し部25の少なくともタイヤ幅方向外側に配置されている。本実施形態においては、リムストリップゴム32は、カーカスプライ23の折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置されているパッド部材34のタイヤ幅方向外側の一部を覆っている。そして、サイドウォールゴム30は、リムストリップゴム32のタイヤ幅方向外側の一部と、パッド部材34のタイヤ幅方向外側の一部とを覆っている。このようなパッド部材34を設けることにより、リムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30の接合部周辺において、効果的に応力の集中を抑えることができる。
【0045】
本実施形態に係る空気入りタイヤは、ジエン系ゴム(U1)と硫黄(U2)とを含有するゴム組成物(U)を上ビードフィラー222に用い、ジエン系ゴム(L1)と硫黄(L2)とを含有するゴム組成物(L)を下ビードフィラー221に用い、ジエン系ゴム(P1)と硫黄(P2)とを含有するゴム組成物(P)を第2のパッド36に用いた、空気入りタイヤである。
【0046】
ここで、ゴム組成物(U)におけるジエン系ゴム(U1)100質量部に対する硫黄(U2)の含有量(US[質量部])と、ゴム組成物(L)におけるジエン系ゴム(L1)100質量部に対する硫黄(L2)の含有量(LS[質量部])と、ゴム組成物(P)における前記ジエン系ゴム(P1)100質量部に対する硫黄(P2)の含有量(PS[質量部])とが、次の式(1)、(2)を満たす。
式(1):4.0<LS-US<7.0
式(2):4.0<LS-PS<7.0
【0047】
また、ゴム組成物(U)におけるジエン系ゴム(U1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBU)と、ゴム組成物(L)におけるジエン系ゴム(L1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBL)と、ゴム組成物(P)におけるジエン系ゴム(P1)100質量部に対するカーボンブラックの含有量(CBP)とが次の式(3)を満たしていることが好ましい。
式(3):CBL>CBP>CBU
【0048】
また、ゴム組成物(U)における硫黄の含有量(US)と、ゴム組成物(P)における硫黄の含有量(PS)とが、次の式(4)を満たしていることが好ましい。
式(4):-1.0<US-PS<2.0
【0049】
<上ビードフィラーに用いるゴム組成物(U)>
本実施形態に係るゴム組成物(U)は、ゴム成分としてジエン系ゴム(U1)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
【0050】
本実施形態に係るゴム組成物(U)は、硫黄(U2)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられる。硫黄の含有量は、上記式(1)を満たしていれば、特に限定されないが、例えば、ジエン系ゴム(U1)100質量部に対して、0.1~8質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態に係るゴム組成物(U)は、さらに、加硫促進剤を含有するものであってもよく、その含有量は、ジエン系ゴム(U1)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましい。加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。
【0052】
本実施形態に係るゴム組成物(U)は、補強性充填剤を含有するものであってもよい。補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム(U1)100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~80質量部であり、さらに好ましくは20~60質量部である。
【0053】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量(CBU)は、ジエン系ゴム(U1)100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~50質量部である。
【0054】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム(U1)100質量部に対して0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0055】
<下ビードフィラーに用いるゴム組成物(L)>
本実施形態に係るゴム組成物(L)は、ゴム成分としてジエン系ゴム(L1)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
【0056】
本実施形態に係るゴム組成物(L)は、硫黄(L2)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられる。硫黄の含有量は、上記式(1)及び(2)を満たしていれば、特に限定されないが、例えば、ジエン系ゴム(L1)100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましく、5~10質量部であることがより好ましい。
【0057】
本実施形態に係るゴム組成物(L)は、さらに、加硫促進剤を含有するものであってもよく、その含有量は、ジエン系ゴム(L1)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましい。加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。
【0058】
本実施形態に係るゴム組成物(L)は、補強性充填剤を含有するものであってもよい。補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム(L1)100質量部に対して10~140質量部であることが好ましく、より好ましくは30~100質量部であり、さらに好ましくは50~100質量部である。
【0059】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量(CBL)は、ジエン系ゴム(L1)100質量部に対して10~140質量部であることが好ましく、より好ましくは50~90質量部である。
【0060】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム(L)100質量部に対して0.1~80質量部であることが好ましく、より好ましくは5~40質量部である。
【0061】
<第2のパッドに用いるゴム組成物(P)>
本実施形態に係るゴム組成物(P)は、ゴム成分としてジエン系ゴム(P1)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
【0062】
本実施形態に係るゴム組成物(P)は、硫黄(P2)を含有するものであり、その種類は特に限定されないが、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられる。硫黄の含有量は、上記式(2)を満たしていれば、特に限定されないが、例えば、ジエン系ゴム(P1)100質量部に対して、0.1~8質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0063】
本実施形態に係るゴム組成物(P)は、さらに、加硫促進剤を含有するものであってもよく、その含有量は、ジエン系ゴム(P1)100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましい。加硫促進剤としては、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。
【0064】
本実施形態に係るゴム組成物(P)は、補強性充填剤を含有するものであってもよい。補強性充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム(P1)100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~80質量部であり、さらに好ましくは20~60質量部である。
【0065】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。カーボンブラックの含有量(CBP)は、ジエン系ゴム(P1)100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、より好ましくは30~60質量部である。
【0066】
シリカとしても、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカを配合する場合、その含有量は、ジエン系ゴム(P1)100質量部に対して0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0067】
本実施形態に係るゴム組成物(U)、ゴム組成物(L)、ゴム組成物(P)には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているプロセスオイル、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0068】
本実施形態に係るゴム組成物(U)、ゴム組成物(L)、ゴム組成物(P)は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤と加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤と加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0069】
本実施形態の空気入りタイヤの製造方法は、上記方法で得られたゴム組成物(U)を上ビードフィラーに用い、ゴム組成物(L)を下ビードフィラーに用い、ゴム組成物(P)を第2のパッド36に用いれば特に限定されず、従来の公知の方法により製造することができる。
【0070】
本実施形態の空気入りタイヤは、乗用車など種々の車両に使用できるが、上述の通りビードの耐久性に優れるため、トラック、バス、建設用車両、産業用車両などの重荷重用タイヤとして好適に用いることができる。
【実施例0071】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、第二混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0073】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・天然ゴム:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3号」
・ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・オイル:ENEOS(株)製「NC-140」
・硫黄:四国化成工業(株)製「ミュークロンOT-20」
・加硫促進剤:三新化学工業(株)製「サンセラーNS-G」
【0074】
得られた各ゴム組成物を用いて、表2に記載のゴム組成物の組み合わせにより、空気入りタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5 14PR)を作製した。得られた空気入りタイヤについて、以下に示す評価方法に従い、未老化耐久性、及び老化後耐久性について評価し、評価結果を表2に示した。
【0075】
・未老化耐久性:ドラム試験機にて、空気内圧900kPa、荷重5400kg、速度40km/hの条件でビード部が故障するまで走行し、走行した時間をビード耐久力とした。比較例1をコントロールとして、これより走行時間が長かったものを「○」、同等のものを「△」、短かったものを「×」と評価した。
【0076】
・老化後耐久性:得られた空気入りタイヤをオーブンで70℃、4週間、加熱老化し、未老化耐久性と同様に評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示す通り、比較例1はパッドを有していない例である。比較例2は、LS-USとLS-PSがそれぞれ上限値を超える例であり、老化後耐久性が劣っていた。
【0080】
比較例3は、LS-PSが上限値を超える例であり、未老化耐久性及び老化後耐久性は向上しなかった。
【0081】
比較例4は、LS-USが上限値を超える例であり、未老化耐久性及び老化後耐久性は向上しなかった。
【0082】
比較例5は、LS-USとLS-PSが下限値未満の例であり、未老化耐久性及び老化後耐久性は向上しなかった。
【0083】
一方、実施例1~4は、LS-USとLS-PSが所定範囲内であり、未老化耐久性及び老化後耐久性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤやトラック・バス用などの大型タイヤとして使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…タイヤ
11…ビード
12…トレッド
13…サイドウォール
21…ビードコア
22…ビードフィラー
221…下ビードフィラー
222…上ビードフィラー
23…カーカスプライ
24…プライ本体
25…プライ折り返し部
25A…折り返し端
26…スチールベルト
28…トレッドゴム
29…インナーライナー
30…サイドウォールゴム
30B…タイヤ径方向内側端
31…スチールチェーハー
31A…スチールチェーハーの端部
32…リムストリップゴム
32A…タイヤ径方向外側端
34…パッド部材
35…第1のパッド
36…第2のパッド
36A…タイヤ径方向外側端
36B…タイヤ径方向内側端
図1
図2