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特開2023-8756自転車用スポーク、これを備えた自転車用車輪及び自転車用スポークの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008756
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】自転車用スポーク、これを備えた自転車用車輪及び自転車用スポークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 1/04 20060101AFI20230112BHJP
   B60B 5/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B60B1/04 D
B60B5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186732
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2021112356
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2021年7月18日にスポーツサイクルプロショップ555CIRCLE(ファイブサークル)のホームページ内において、超軽量ホイール「CeraLight」(カーボンスポーク)を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】709005555
【氏名又は名称】株式会社スミス
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】矢口 昌義
(57)【要約】
【課題】 従来の金属製スポークよりも軽量化を図れると共に、十分な強度を備えた自転車用スポークを提供すること。
【解決手段】 自転車の車輪に設けられる自転車用スポークであって、前記車輪のリム内側に組付けられる金属製の先端接続部材と、前記車輪のハブに開口される組付孔部に組み付けられて前記組付孔部の孔縁に係合するフランジを備えた金属製の後端係合部材と、前記先端接続部材と後端係合部材との間に設けられ両部材間を連結する繊維含有樹脂製のスポーク本体とを備え、前記先端接続部材と後端係合部材は前記スポーク本体の内側に固定されており、前記フランジを除いて前記組付孔部を挿通可能な自転車用スポークによって達成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車輪に設けられる自転車用スポークであって、前記車輪のリム内側に組付けられる金属製の先端接続部材と、前記車輪のハブに開口される組付孔部に組み付けられて前記組付孔部の孔縁に係合するフランジを備えた金属製の後端係合部材と、前記先端接続部材と後端係合部材との間に設けられ両部材間を連結する繊維含有樹脂製のスポーク本体とを備え、前記両部材は前記スポーク本体の内側に固定されており、前記フランジを除いて前記組付孔部を挿通可能とされている自転車用スポーク。
【請求項2】
前記先端接続部材と後端係合部材のうち前記スポーク本体とは逆側に位置する端縁側は前記フランジを除いて略同形の断面円形状の円形端部とされている一方、前記スポーク本体に連結する側は、端縁に向かうに連れて断面の面積が小さくなる縮形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用スポーク。
【請求項3】
前記先端接続部材と後端係合部材のうち前記スポーク本体とは逆側に位置する端縁側は前記フランジを除いて略同形の断面円形状の円形端部とされている一方、前記スポーク本体に連結する側には、固定端部が設けられており、この固定端部は、端縁に向かうに連れて断面の面積が小さくなる縮形状の第一テーパー部と、そこから端縁に向かう第一中間部と、この第一中間部から端縁に向かうに連れて断面の面積が小さくなる縮形状の第二テーパー部とが設けられており、前記第一中間部は、先端と後端の両端から互いに中央方向に向かって縮径する形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の自転車用スポーク。
【請求項4】
前記先端接続部材には前記リムに設けられたニップルにネジ付け可能なネジ部が設けられていると共に、前記先端接続部材には、断面形状が非円形であり、かつ当該スポークの軸心回りの回転を規制する工具を係合可能な工具係合部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の自転車用スポーク。
【請求項5】
前記先端接続部材及び後端係合部材において、前記スポーク本体の内側に固定される部分は、断面が楕円形状とされていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の自転車用スポーク。
【請求項6】
前記先端接続部材または後端係合部材において、前記スポーク本体の内側に固定されている部分の最外層には、補強用部材が巻き付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の自転車用スポーク。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の自転車用スポークを備えた自転車用車輪。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一つに記載の自転車用スポークを製造する方法であって、(A)繊維を含有するプリプレグを用いて、前記繊維の方向が長手方向とこの長手方向とは異なるバイアス状とした方向とを備えて積層し、中間体とする中間体製造工程、(B)前記中間体の両端の内側に金属製の先端接続部材と後端係合部材を設置した状態のスポーク原体とし、このスポーク原体を金型に組み込み加圧固定する硬化工程を備えた自転車用スポークの製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の自転車用スポークを製造する方法であって、(A)繊維を含有するプリプレグを用いて、前記繊維の方向が長手方向とこの長手方向とは異なるバイアス状とした方向とを備えて積層し、中間体とする中間体製造工程、(B)前記中間体の両端の内側に金属製の先端接続部材と後端係合部材を設置した状態のスポーク原体とし、(C)前記スポーク原体の最外層に前記補強用部材を巻き付ける糸体巻きつけ工程を経た後、金型に組み込み加圧固定する硬化工程を備えた自転車用スポークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用スポーク、これを備えた車輪及び自転車用スポークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用スポークは、その一端がリムに、他端がハブに嵌め込まれて連結されている。自転車用スポークは、一般にステンレス鋼で製造されており、リムにネジ付けて固定されるように一端側にネジ部が設けられており、他端側にはハブに引っ掛るように膨出したリブが設けられている。スポークをステンレスで製造すると、重量が重くなるため、軽量化を図る研究開発が行われている。スポーク全体をカーボンファイバーで製造すると、大幅な軽量化が図られるものの、リム及びハブとの接続部分の強度が十分には確保できない。
そこで、リム及びハブとの接続部分を金属製とし、スポーク本体分をカーボン製とする研究開発がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-535050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、カーボンファイバーにより製造されたスポーク本体と、リムに嵌め込まれて連結可能な金属製ねじ付キャップと、ハブに嵌め込まれて連結可能な金属製ヘッドキャップとを備えたカーボンファイバー製スポークであって、スポーク本体は金属製ねじ付キャップと金属製ヘッドキャップの内側に嵌め込み固定されている。
しかしながら上記構造では、カーボンファイバーと金属との間の固定力が不足し、従来の金属製スポークと同等以上の力を発揮させることができなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の金属製スポークよりも軽量化を図れると共に、十分な強度を備えた自転車用スポークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の検討によれば、スポークの両端側に設けられる金属製部材をカーボン製のスポーク本体の内側に固定することで、自転車用スポークの軽量化と十分な強度を備えることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、第一の発明に係る自転車用スポークは、自転車の車輪に設けられるものであって、前記車輪のリム内側に組付けられる金属製の先端接続部材と、前記車輪のハブに開口される組付孔部に組み付けられて前記組付孔部の孔縁に係合するフランジを備えた金属製の後端係合部材と、前記先端接続部材と後端係合部材との間に設けられ両部材間を連結する繊維含有樹脂製のスポーク本体とを備え、前記両部材は前記スポーク本体の内側に固定されており、前記フランジを除いて前記組付孔部を挿通可能とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、スポーク本体を繊維含有樹脂としたので、全体が金属製の従来スポークに比べると重量を軽くできる。また、スポーク本体の内側に金属製の先端接続部材と後端係合部材を固定したので、逆の構造(すなわち、スポーク本体の外側に金属製部材を固定する構造)に比べると、スポーク全体の強度を高くできる。更に、ハブ側のスポークを固定する構造を変更することなく、現在の構造のままで使用できる。
【0006】
繊維含有樹脂に含まれる繊維としては、例えばカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維などが使用できる。また、樹脂としては、ポロプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610)等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂などが使用できる。これらのうち、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
組付孔部とは、スポークを挿通させるように全周を周縁が覆う孔の他に、周縁の一部を切り欠いた溝状とされているものを含む。
スポーク本体は、中実状に構成しても良いし、中央に小さな孔を備えた中空状として構成しても良い。中実状に構成する場合には、スポーク本体と両部材間の固定力をより大きくできる。また中空状に構成する場合には、スポーク本体の製造がより容易となる。
後端係合部材の全体形状は、直線状でも良いし、フランジ部が折り曲げられてスポークの方向とは略直角とされた形状でも良い。
上記発明において、前記先端接続部材と後端係合部材のうち前記スポーク本体とは逆側に位置する端縁側は前記フランジを除いて略同形の断面円形状の円形端部とされている一方、前記スポーク本体に連結する側は、端縁に向かうに連れて断面の面積が小さくなる縮形状とされていることを特徴とする。
【0007】
縮形状とは、連続的にテーパー状とされている場合の他に、段差あるいはテーパーを備えて先が細くなるように形成されており、そこから先は略同形状とされている場合を含む。縮形状の断面は、円形状、楕円形状、多角形状を含む。楕円形状または多角形状の場合には、例えばプレス加工により製造できる。また、円形状の場合には、例えば研削加工、スウェージング加工により製造できる。
先端接続部材と後端係合部材において、スポーク本体に連結される部分の形状は同一である必要はなく、それぞれ別の形状を備えても良い。但し、同一の形状とすれば、加工方法を共用できるので生産性が良好となる。
本発明において、前記縮形状は、前記円形端部から同芯の円形を備えた非増大の先細形状とされていることが好ましい。このとき、研削加工によって製造することが好ましい。そのようにすれば、側面部分に微妙な溝部が形成されるので、カーボンと金属とを結合したときの結合力を強くできる。
本発明において、前記先端接続部材には前記リムに設けられたニップルにネジ付け可能なネジ部が設けられていると共に、前記先端接続部材には、断面形状が非円形であり、かつ当該スポークの軸心回りの回転を規制する工具を係合可能な工具係合部が設けられていることが好ましい。
【0008】
従来の金属製スポークに比べると、本発明のスポークはスポーク本体が樹脂であるため、直接に掴んで捻るという操作には弱いことがある。このため、金属製の先端接続部材に工具係合部を設け、ニップルへのネジ付け及び取り外しの際に、スポークの連れ回りを規制し、回転操作を円滑に行えるようにした。
工具係合部は、円周外形をプレス加工して製造された中心を挟む2辺の凹部として形成されていることが好ましい。
また、前記先端接続部材及び後端係合部材において、前記スポーク本体の内側に固定される部分は、断面が楕円形状とされていることが好ましい。
また、前記先端接続部材または後端係合部材において、前記スポーク本体の内側に固定されている部分の最外層には、補強用部材が巻き付けられていることが好ましい。補強用部材としては、糸体や帯状のプリプレグなどを用いることができる。
別の発明に係る自転車用車輪は、上記に記載の自転車用スポークを備えたことを特徴とする。
上記自転車用スポークを製造する方法として、次のような方法がある。
上記自転車用スポークを製造する方法であって、(A)繊維を含有するプリプレグを用いて、前記繊維の方向が長手方向とこの長手方向とは異なるバイアス状とした方向とを備えて積層し、中間体とする中間体製造工程、(B)前記中間体の両端の内側に金属製の先端接続部材と後端係合部材を設置した状態のスポーク原体とし、このスポーク原体を金型に組み込み加圧固定する硬化工程を備える。
【0009】
上記製造方法において、(A)中間体製造工程としては、次のような方法がある。
中間体製造工程-1
(A1-1)繊維を含有するプリプレグを先端が先細の台形状として形成し、両端に金属製の先端接続部材と後端係合部材を巻き込みながら、前記繊維の方向を長手方向として積層し、第一中間体とする第一積層工程、(A1-2)第一中間体の上層に、前記繊維の方向を長手方向とは異なるバイアス状に別のプリプレグを積層し、第二中間体とする第二積層工程を備える中間体製造工程である。
中間体製造工程-2
(A2-1)芯材となるロービングを中心として上層に繊維を含有するプリプレグを前記繊維が長手方向を向くように積層し、第一中間体とする第一積層工程、(A2-2)第一中間体の上層に両端側が突出した糊代部を設けつつ別のプリプレグを前記繊維が長手方向とは異なるようにバイアス状に積層し、第二中間体とする第二積層工程を備える中間体製造工程である。
【0010】
中間体製造工程-3
(A3-1)繊維を含有するプリプレグを前記繊維が互いに異なる方向を向くことがあるように積層するプリプレグ積層工程、(A3-2)積層した前記プリプレグを加熱・加圧して硬化させる熱硬化工程、(A3-3)硬化したプリプレグを角柱状に切り出し角柱状プリプレグとする切出し工程、(A3-4)前記角柱状プリプレグを円柱状の中間体となるまで旋削する旋削工程を備える中間体製造工程である。
また、(B)硬化工程としては、次のような方法がある。
硬化工程-1
(B1)前記中間体の両端の内側に金属製の先端接続部材と後端係合部材と設置した状態のスポーク原体とし、このスポーク原体を金型に組み込み、加熱・加圧して熱硬化させる熱硬化工程を備える硬化工程である。
【0011】
硬化工程-2
(B2-1)前記中間体の先端と後端に金属製の先端接続部材と後端係合部材を組み付けるための糊代部をドリルで開ける糊代部形成工程、(B2-2)前記糊代部と前記先端接続部材及び後端係合部材の間に接着剤が存在する状態で前記糊代部に前記両接続部を組み付け、スポーク原体とする接続部組付工程、(B2-3)スポーク原体を金型に組み込み、加熱・加圧して熱硬化させる第二熱硬化工程を備える硬化工程である。
この工程によれば、金属製部材を挿入する糊代部は、中間体の両端縁からドリルを用いて穴あけ加工をすることで設けられる。
硬化工程-3
(B3-1)前記糊代部の内側に前記プリプレグによっては固定されない前後一対の中子(例えば金属製)を挿入した後、加熱・加圧して熱硬化させる第一熱硬化工程、(B3-2)前記金属製中子を取り外した後、前記糊代部と先端接続部材及び後端係合部材の間に接着剤が存在する状態で前記先端接続部材及び後端係合部材を前記糊代部に組み付ける接続部組付工程、(B3-3)前記両部材を組み付けた状態で金型に組み込み、加熱・加圧して熱硬化させる第二熱硬化工程を備える硬化工程である。
この硬化工程によれば、ドリルによって糊代部を開口する工程を省略できる。特に糊代部の形状として、穴径に対する穴深さがd×10以上である場合に極めて有効になる。
【0012】
ロービングとプリプレグで構成した棒状中間体については、より高い温度(T1)で熱硬化する樹脂を用いる。一方、金属製部材と樹脂を接着する接着剤(例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤など)と最上層を構成するプリプレグには、より低い温度(T2)で硬化する樹脂を用いる(T1>T2)。この使い分けによって、第一中間体または第二中間体は、後工程での加熱による熱影響を受けることを少なくできる。
スポークの両端に設ける金属製の部材において、スポーク本体の内側に差し込まれる部分の形状を加工する際に、軸方向に対して垂直に線状跡を残すことにより、スポーク本体との間に強固な固定力を発揮させられるので好ましい形態となる。
最上層には、長軸方向に繊維の向きをとったカーボンプリプレグを巻きつける。このプリプレグは、第一中間体よりも長めの寸法で上端下端の金属部分に被さる寸法に裁断されている。
また、最終的に自転車用スポークとなる前の硬化工程を行う前、(C)前記スポーク原体の最外層に前記補強用部材を巻き付ける糸体巻きつけ工程を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量化と十分な強度を備えた自転車用スポーク及びこのスポーを備えた自転車用車輪を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自転車用スポークの正面図である。
図2】自転車用スポークの右側面図である。
図3図1におけるS-S線断面図である。
図4】先端接続部材の図面である。(A)正面図、(B)側面図、(C)先端側から見た図である。
図5】後端係合部材の図面である。(A)正面図、(B)先端側から見た図である。
図6】スポークの製造方法を説明する図面(1)である。
図7】スポークの製造方法を説明する図面(2)である。
図8】スポークの製造方法を説明する図面(3)である。
図9】スポークの製造方法を説明する図面(4)である。
図10】スポークの製造方法を説明する図面(5)である。
図11】スポークを製造するための一方側の金型の平面図である。
図12】スポーク原体を金型で圧縮するときの様子を説明する図面である。(A)金型を完全に組み付ける前の様子を示す断面図、(B)金型を完全に組み付けたときの様子を示す断面図である。
図13】完成したスポークを示す図面である。
図14】スポークの製造方法を示すフローチャート図(1)である。
図15】スポークを車輪に組付けるときの様子を示す図(1)である。
図16】スポークを車輪に組付けるときの様子を示す図(2)である。
図17】スポークの回止めを行うための工具の図面である。
図18】ニップルを回転させ車輪の振れを調整する際、スポークの供回りを抑制するときの様子を示す図である。
図19】全てのスポークを車輪に組付けたときの自転車用車輪の斜視図である。
図20】自転車用車輪の正面図である。
図21】スポークの製造方法を示すフローチャート図(2)である。
図22】スポークの製造方法を示すフローチャート図(3)である。
図23】スポークの製造方法を示すフローチャート図(4)である。
図24】スポークの製造方法を示すフローチャート図(5)である。
図25】先端接続部材の変形例の正面図である。
図26図25におけるA-A線断面図(A)、B-B線断面図(B)及びC-C線断面図(C)である。
図27図25におけるD-D線断面図(A)及びE-E線断面図(B)である。
図28】先端接続部材とスポーク本体の固定力を強化するための構造を示す図(1)である。
図29】先端接続部材とスポーク本体の固定力を強化するための構造を示す図(2)である。
図30】後端係合部材の変形例1の正面図である。
図31】後端係合部材の変形例2の正面図である。
図32】スポークを製造するための一方側の金型の平面図である。
図33図32におけるA-A線断面図である。
図34】金型にスポーク原体を組み付けたときの側面図である。
図35】スポークの製造方法を示すフローチャート図(6)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について、更に詳細に説明する。本発明は、下記実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を変更することなく、様々に変形して実施できる。
<自転車用スポーク>
図1及び図2には、自転車用スポーク1(以下、単に「スポーク」という)を示した。スポーク1は、両端の金属製の部材4,8と、両部材4,8間を連結するスポーク本体9とを備えている。金属製の部材のうち先端接続部材4は、車輪2のリム3の内側に組付けられる。一方、後端係合部材8は、車輪2のハブ5に開口される組付孔部6に組み付けられて孔縁6Aに係合するフランジ7を備えている。
図4に示すように、先端接続部材4の一端側には、雄ネジが切られたネジ部11が設けられている。一方、他端側には、スポーク本体9の内側に固定される固定端部12が設けられている。ネジ部11の外形は、略同形の断面円形状とされている。ネジ部11はリム3に設けられたニップル10の雌ネジ部にネジ付け可能とされている。先端接続部材4の中間には、断面形状が平行する二辺を備えた工具係合部16が設けられている。この工具係合部16には、スポーク1の回転を規制する工具13(後述する)が組付可能とされている。なお、詳細には示さないが、工具係合部16は、プレス加工により形成されており、その周辺部分は僅かに外方に膨出している。
【0016】
固定端部12は、端縁(図4(A)の右側の端縁)に向かうに連れて断面の面積が小さくなる縮形状とされている。より詳細には、傾斜面を備えた第一テーパー部12Aと、そこから略同形の第一円柱状部12Bと、更に傾斜面を備えた第二テーパー部12Cと、そこから先端まで略同形の第二円柱状部12Dとが設けられており、二段階に段差(テーパー部)を備えて縮形されている。第一円柱状部12Bと第二円柱状部12Dは、回転・研削することにより成形されており、図には示さないが、側面部分には円周方向に沿って微妙な溝部としての小さな研削跡が設けられている。この研削跡によって、固定端部12とスポーク本体9との間の結合力をより強化できるようになっている。
【0017】
図5に示すように、後端係合部材8の一端側には、径方向外側に張り出すフランジ7が設けられている。フランジ7から他端側に移動したところには、小さなテーパー面8Aが設けられて、縮径されている。一方、他端側には、スポーク本体9の内側に固定される固定端部14が設けられている。固定端部14には、傾斜面を備えた第一テーパー部14Aと、略同形の第一円柱状部14Bと、更に傾斜面を備えた第二テーパー部14Cと、略同形で先端まで第二円柱状部14Dとが設けられている。固定端部12と固定端部14の構成は同一とされている。より詳細には、第一テーパー部12A,14Aと、第一円柱状部12B,14Bと、第二テーパー部12C,14Cと、第二円柱状部12D,14Dとは、それぞれ同一の長さ及び同一の外径とされている。
スポーク本体9は、繊維含有樹脂によって製造されている。本実施形態では、カーボンファイバーを含有するエポキシ樹脂製とされている。図3に示すように、スポーク本体9の断面形状は、加熱・加圧工程を実施する際のプレス加工によって、円形から上下部分が加圧変形された略長方形状とされている。
上記のように構成されたスポーク1の外径は、後述する組付孔部6の内径と略同等かそれよりも僅かに小さく形成されており、フランジ7を除いて、組付孔部6の内側を挿通可能とされている。
【0018】
<スポークの製造方法>
次に、図6図14を参照しつつ、スポーク1の製造方法について説明する。図6には、共に金属製の先端接続部材4と後端係合部材8と、この両部材4,8を巻きつけるプリプレグ20を示した。プリプレグ20は、カーボン繊維を含有するエポキシ樹脂から構成されており、カーボン繊維がスポーク1の長手方向となるように位置させる。プリプレグ20の上側(先に両部材4,8に巻き付けられる側)は、先端が先細の台形状となるように形成されている。ここで、両部材4,8を巻き込みながら、プリプレグ20を積層する(第一積層工程(S100))。次に、加圧・加熱することでプリプレグ20を硬化させ、硬化プリプレグ20Aとすることで、円柱状の第一中間体21を形成する(S105)。
次に、図7に示すように、第一中間体21の上層に、テープ状としたプリプレグ22(カーボンテープ)をカーボン繊維がスポーク1の長手方向とは斜めとなるバイアス状となるように積層する。こうして、図8に示すように、スポーク本体の全長に渡るようにプリプレグ22を巻きつけ、第二中間体23とする(第二積層工程(S110))。
【0019】
次いで、図9に示すように、プリプレグ22よりも僅かに幅長を長くして、両部材4,8を直接に接触するようにした長方形状のプリプレグ39を繊維の方向が長手方向となるようにして、巻き付けつつ積層することで、図10に示すように、スポーク原体33を形成する。(第三積層工程(120))。
図11には、スポーク1を製造するための一方側の金型34を示した。金型34には、スポーク原体33を組み込むための同形状の溝部35が図示横方向に六条に渡って凹設されている。溝部35の一端には、フランジ7を組み付けるフランジ凹部36が設けられており、そこから他端側に向かって略同形状の溝部35が設けられている。溝部35のうち、両端の金属部材4,8が位置する部分を除き、スポーク本体9が形成されるところには、スポーク本体9の断面形状を僅かに上下方向から加圧変形するために円形から僅かに内側に向かって凹む押圧辺部37が設けられている。なお、他方側の金型38については、金型34と同形であるため、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
次に、図12(A)に示すように、スポーク原体33を金型34,38の内側に組み込み(S130)、加熱・加圧することで、スポーク原体33を加圧しつつ圧縮し(図12(B))、熱硬化させる(熱硬化工程(S140))。このとき、スポーク本体9となる部分が圧縮されることで、金属製の部材4,8とプリプレグとが適度な圧力を以って加圧・固定される。
次いで、金型34,38から取り外すことで、図13に示すように、スポーク1が製造される。
【0020】
<自転車用車輪>
次に、図15図18を参照しつつ、スポーク1を車輪2に組み付けるときの操作方法について説明する。図15には、車輪2の中央にあるハブ5の組付孔部6付近とスポーク1を示した。組付孔部6の開口部分には、やや大きく開口されて、フランジ7を係合する孔縁6Aが設けられている。孔縁6Aにおいて、組付孔部6に接続する部分は、テーパー状に縮径されており、フランジ7が良好に接触するようになっている。スポーク1の先端接続部材4が設けられている側から、組付孔部6に挿入することで、フランジ7が孔縁6Aに係合してスポーク1の位置決めがなされる。図16には、車輪2の外周内側にあるリム3に設けられたニップル10と、スポーク1の先端接続部材4を示した。ニップル10の端部(図示左側)に設けられたドライバ組付凹部(図示せず)を利用して、ドライバーでニップル10を回転させることで、ネジ部11をニップル10の雌ネジに回し付け、更にニップル回転用工具40(後述する)を用いて適当な力で締め付けることにより、スポーク1の位置決めがなされると共に、スポーク1がハブ5とリム3との間に固定される。
【0021】
このスポーク1の固定操作(又は、スポーク1を取り外す操作)の際の説明を行う。スポーク本体9は、繊維含有樹脂によって製造されているために、全体が金属(鉄、アルミニウムなど)で製造された従来のものに比べると、捻り操作には弱い可能性がある。このため、スポーク1をニップル10に取り付ける際または取り外す際(より詳細には、スポーク1とニップル10のネジの相対的な関係によって、スポーク1の張力及び車輪2のリム3の振れを調整する際、または組付・分解する際)には、スポーク本体9を把持して回転することは避けることが好ましい。
そこで、本実施形態では工具13を提供する。図17に示すように、工具13は、略長方形状の板材で形成されており、短辺の一端には、工具係合部16を挟み付ける組付縁13Aがコ字状に開口されている。組付縁13Aの内側に工具係合部16を組み付けることで、スポーク1が軸心回りに回転することを規制できる。
図18に示すように、工具13の組付縁13Aに、スポーク1の工具係合部16を組み付けておき、スポーク1の回転を規制しつつ、従来から使用されているニップル回転用工具40を用いてニップル10を回転させることで、スポーク1とニップル10の調整・組付操作(又は、分解操作)を行う。
このようにして、全てのスポーク1をリム3とハブ5の間に組み付けて自転車用車輪2としたときの様子を図19に示す。この後、リム3の外方にタイヤ15を組み付けることで、図20に示すように、タイヤ15を備えた自転車用車輪2が形成される。
【0022】
<スポークの製造方法(2)>
次に、図21を参照しつつ、スポークの製造方法について説明する。金属製の先端接続部材4と後端係合部材8と、先端側を台形状となるように形成したプリプレグ20を用意し、両部材4,8を巻き込みながら、繊維の方向を長手方向としてプリプレグ20を積層し、円柱状の中間体を形成する(第一積層工程(S200))。
次に、中間体に対し、テープ状としたプリプレグ22(カーボンテープ)をカーボン繊維がスポークの長手方向とは斜めとなるバイアス状となるように積層し、スポーク本体の全長に渡るようにプリプレグ22を巻きつける。このとき、図8に示す中間体よりも太さが太くなるように長めにプリプレグ22を巻きつけ、スポーク原体とする(第二積層工程(S210))。
次に、スポーク原体を金型34,38の内側に組み込み(S220)、上下金型を閉じて、加熱・加圧することで、スポーク原体を加圧しつつ、スポーク原体と接着剤を熱硬化させる(熱硬化工程(S230))。次いで、各金型34,38から取り外すことで、スポークが製造される。
この製造方法によれば、加熱・加圧工程が一度で済む。
【0023】
<スポークの製造方法(3)>
次に、図22を参照しつつ、スポークの製造方法について説明する。芯材となるロービングに樹脂を含浸させ、これを中心として上層に繊維を含有するプリプレグを繊維が長手方向(ロービングに沿う方向)を向くようにして積層する(第一積層工程(S300))。積層したプリプレグの上層に繊維の方向を長手方向とは異なるバイアス状にテープ状とした別のプリプレグ(カーボンテープ)を積層する。このとき、両端部分には、先端接続部材と後端係合部材を組付ける糊代部を設けるようにする(第二積層工程(S310))。
次に、加圧・加熱処理を行い、プリプレグを硬化させる(S315)。
次いで、両端の糊代部に先端接続部材と後端係合部材を組付けスポーク原体とする(S320))。このスポーク原体を金型に組み込み(S330)、上下金型を閉じて、加熱・加圧することでスポーク原体を加圧しつつ、スポーク原体と接着剤を熱硬化させる(熱硬化工程(S340))。次いで、各金型から取り外すことで、スポークが製造される。
【0024】
<スポークの製造方法(4)>
次に、図23を参照しつつ、スポークの製造方法について説明する。芯材となるロービングに樹脂を含浸させ、これを中心として上層に繊維を含有するプリプレグを繊維が長手方向(ロービングに沿う方向)を向くようにして積層する(第一積層工程(S400))。積層したプリプレグの上層に繊維の方向を長手方向とは異なるバイアス状にテープ状とした別のプリプレグ(カーボンテープ)を積層する(第二積層工程(S410))。
次に、加圧・加熱処理を行い、プリプレグを硬化させる(S415)。
次いで、両端からドリルで孔を開け、糊代部を設ける(S420)。次に、この糊代部と金属製の部材との間に接着剤を添加しながら、先端接続部材と後端係合部材を組付け、スポーク原体とする(S430))。このスポーク原体を金型に組み込み(S440)、上下金型を閉じて、加熱・加圧することでスポーク原体を加圧しつつ、スポーク原体と接着剤を熱硬化させる(熱硬化工程(S450))。次いで、各金型から取り外すことで、スポークが製造される。
【0025】
<スポークの製造方法(5)>
次に、図24を参照しつつ、スポークの製造方法について説明する。芯材となるロービングに樹脂を含浸させ、これを中心として上層に繊維を含有するプリプレグを繊維が長手方向(ロービングに沿う方向)を向くようにして積層する(第一積層工程(S500))。積層したプリプレグの上層に繊維の方向を長手方向とは異なるバイアス状にテープ状とした別のプリプレグ(カーボンテープ)を積層する。このとき、両端部分に金属製中子(金属製の両部材の先端形状と同等の形状を持つものを用いる)を巻き込む状態としておく(第二積層工程(S510))。
次に、加圧・加熱処理を行い、プリプレグを硬化させる(S515)。
次いで、金属製中子を取り出し、この糊代部に接着剤を加えて、先端接続部材と後端係合部材を組付け、スポーク原体とする(S520))。このスポーク原体を金型に組み込み(S530)、上下金型を閉じて、加熱・加圧することでスポーク原体を加圧しつつ、スポーク原体と接着剤を熱硬化させる(熱硬化工程(S540))。次いで、各金型から取り外すことで、スポークが製造される。
【0026】
<スポーク強度の確認試験>
上記実施形態で作成したスポークの引張強度試験を行った。試験は、JIS規格(JIS D9420:2018)の方法に準じて行った。5本のスポーク(2.3mm径)を用いて、引張強度を求めた(S1~S5)。
その結果を表1に示した。表に示すように、5本のスポークの破断強度は3.26~3.54(kN)であった。JIS規格によれば、2.3mm径のステンレス製スポークの場合には、破断力が3.0kN以上であることが求められている。本実施形態のスポークでは、5本の全てがこの数値を満足した。
【0027】
【表1】
【0028】
<先端接続部材の変形例>
図25図27には、先端接続部材50の変形例を示した。なお、図中には、先端接続部材4と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
この先端接続部材50では、工具係合部16から先端に向かう直近の位置では、断面が円形(図26(A))であり、そこから先端に向かうにつれて、断面が楕円形(図26(B)、(C)、図27(A)、(B))となるように、ローラー圧延処理が施されている。スポーク本体9の内側に固定される部分では、このように断面が楕円形状であっても強い固定力を発揮できる。なお、このような形状は、後端係合部材において、スポーク本体9の内側に固定される部分の形状として用いることができる。
【0029】
上記<スポーク強度の確認試験>で示したように、固定端部12,14をスポーク本体9の内側に接着固定すれば、スポーク全体としては十分な固定力を得られる。しかし、更に固定端部12,14とスポーク本体9との間の固定力を強化する方法として、図28,29に示す構造を採用できる。
<先端接続部材とスポーク本体の固定力の強化構造(1)>
図28に示すように、先端接続部材4とスポーク本体9の固定部分を強化するために、補強用部材として糸体51を使用する。糸体51としては、ケプラー繊維のような強靭なものを用いる。糸体51にエポキシ樹脂などを含浸させた状態で、スポーク本体9の端部(固定端部12が固定されているところ)の最外層において、固定端部12の端縁か、それよりも僅かに外側の位置(2~3巻分を先端接続部材4の外方に被せつける位置(図28に示す位置))から内側に向かって、糸体51を巻き付けてゆき、第二テーパー部12Cの中間位置まで巻きつける。この構造を採用することで、スポーク本体9の端部が張り裂けないように強化できる。
この工程は、スポーク1を金型34,38に組み込んで加熱・加圧する工程の前でも後でも良い。前に実施する場合には、スポーク本体9を構成する樹脂がプレス時の熱によって硬化する際に同時に硬化できるので強度を更に向上できることに加え、金型34,38に拠る加熱・加圧工程で一括して固定処理を行えるので好ましい。
なお、同様の構造は、後端係合部材とスポーク本体との固定部分にも採用できる。このとき製造方法としては、例えば図21に示すフローチャートでは、S210とS220の間に、S215として、「スポーク原体33の両端部(両固定端12,14が固定されているところか、それよりも僅かに外側の位置(2~3巻分を先端接続部材4の外方に被せつける位置)の最外層に端部から内側に向かって、糸体を巻きつけてゆき、第二テーパー部の中間位置まで巻きつける」という工程(糸体巻きつけ工程)を設ける(例えば、図35に示す通りの流れとなる)。同様の工程は、最終的な加圧・加熱工程において、スポーク原体を金型に組み込む前の段階、具体的には図14のS125(S120とS130の間)、図22のS325(S320とS330の間)、図23のS435(S430とS440の間)、図24のS525(S520とS530の間)に設ける。
【0030】
<先端接続部材とスポーク本体との固定力の強化構造(2)>
図29に示すように、先端接続部材4とスポーク本体9との固定部分を強化するために、補強用部材としてテープ状のカーボンプリプレグ52を使用する。カーボンプリプレグ51としては、構造を強化する部分(スポーク本体9の端縁またはそれよりも僅かに外側の位置で先端接続部材4の外方に被せつける位置から第二テーパー部12Cの中間位置に掛かる部分)の幅に切断したものを用いる。このカーボンプリプレグ51をスポーク本体9の最外層に巻付けた後、金型内で加熱・加圧することで硬化させることで、スポーク本体9の端部が張り裂けないように強化できる。
同様の構造は、後端係合部材とスポーク本体との固定部分にも採用できる。
【0031】
<後端係合部材の変形例>
本発明者の検討によれば、スポーク本体9と、先端接続部材4及び後端係合部材8が加圧固定された後には、各部材4,8の第一円柱状部12B,14Bには、これらを両端側に引っ張る力は、変化することなく殆ど同じ程度の力しか作用しないことが分かった。一般に2つの部材の接着部に継続的に力が加わっていると、接着剤が徐々に変形していくクリープという現象が生じる。クリープは、加わっている力が大きいほど、温度が高いほど起こりやすくなる。これらの事情を受けて、第一円柱状部12B,14Bの中央の断面形状を両端部分の断面形状よりも細くすることで、スポーク自体の強度を低減させることなく、クリープ対策を図ることができる。加えて、第一円柱状部12B,14Bの中間部分には、スポーク本体9の肉が、より多く被さることになるので、スポーク本体9と両部材4,8との固着力を強くすることができ得る。
そのような構成として、下記変形例を提供できる。なお、下記では後端係合部材60,70のみの構成を示すが、先端接続部材4,50においても同様の構成を採用することができる。
図30には、後端係合部材60の変形例1を示した。なお、図中には、後端係合部材8と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
この後端係合部材60の固定端部64では、第一円柱状部14Bの構成が変形されている。すなわち、第一中間部61の断面形状は略円形とされているものの、その半径は異なっており、第一中間部61の両端側には互いに中央方向に向かって縮径する中間テーパー部62,63が設けられている。両中間テーパー部62,63の形状は略同型とされているものの、そのテーパー方向が逆となっている。つまり、第一中間部61の中間の肉厚がやや細い形状とされている。
【0032】
図31には、後端係合部材70の変形例2を示した。なお、図中には、後端係合部材8と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
この後端係合部材70においても、固定端部14のうち、第一円柱状部14Bの構成が変形されている。第一中間部71の断面形状は略円形とされているものの、その半径は第一中間部71の両端側から互いに中央方向に向かって滑らかに縮径する円形の一部の形状とされている。こうして、第一中間部71は両端部に比べて中間に向かうに連れて肉厚が細くなる形状とされている。
上記のように構成された後端結合部材60,70では、スポーク全体の軽量化を図れると共に、スポーク本体9と後端係合部材60,70との固着力をより強化できる。
なお、本実施形態において、スポーク本体9と後端係合部材60,70の接着部分の最外層には、糸体51を設けることで更に強度の向上を図れる。
【0033】
<スポーク本体を強化するための製造方法>
次に、図32図35を参照しつつ、スポーク本体を強化するための製造方法について説明する。
図32及び図33には、金型34’を示した。金型34と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。金型34’において、スポーク原体33のネジ部11が位置する側には、引張突状80と係合溝81が設けられている。係合溝81の一端側は、引張突状80の端縁と面一とされている。
図34に示すように、金型34’を用いる際には、ネジ部11に対して適当な位置に雌ネジ体82を回しつけた状態として溝部35に組み付ける。雌ネジ体82は、ネジ部11を回し付け可能とされている。雌ネジ体82は、係合溝81に嵌まり込むと共に、その端縁が引張突状80によって移動を規制された状態となる。
雌ネジ体82を適当に回して位置を調整し、スポーク原体33のプリプレグに予備張力を与えた状態とした後に、プレスすることでスポーク本体の強度が更に向上できる。
【0034】
上記の製造工程を図35を参照しつつ説明する。なお、図21と同じ工程については同じステップ符号を付して、説明を簡略化する。
プリプレグ20の繊維の方向を長手方向として、両端に先端接続部材4と後端係合部材8を巻き込みながら積層し、円柱状の中間体を形成する(第一積層工程(S200))。
次に、中間体に対し、プリプレグ22(カーボンテープ)をバイアス状となるように積層し、スポーク本体の全長に渡るようにプリプレグ22を巻きつける(第二積層工程(S210))。
次に、スポーク原体の両端部の最外層に端部から内側に向かって、糸体を巻きつけてゆき、第二テーパー部の中間位置まで巻きつける(糸体巻きつけ工程(S215))。
次に、スポーク原体を金型34,38の内側に組み込む(S220)。このとき、雌ネジ体82をネジ部11に回しつけておく。ここで、金型内の雌ネジ体82の位置を調整し、スポーク原体のプリプレグに予備張力を与える(S225)。
次に、上下金型を閉じて、加熱・加圧することで、スポーク原体を加圧しつつ、スポーク原体と接着剤を熱硬化させる(熱硬化工程(S230))。最後に各金型から取り外すことで、スポークが製造される。
この製造方法によれば、スポーク原体に予備張力を与えた状態で加熱・加圧されるので、スポーク本体の強度がより強くできる。
このように、本実施形態によれば、従来の金属製スポークよりも軽量化を図れると共に、十分な強度を備えた自転車用スポーク等を提供できた。
【符号の説明】
【0035】
1…自転車用スポーク、2…車輪、3…リム、4…先端接続部材、5…ハブ、6…組付孔部、7…フランジ、8,60,70…後端係合部材、9…スポーク本体、10…ニップル、11…ネジ部、16…工具係合部、20,22,39…プリプレグ、21…第一中間体(中間体)、23…第二中間体(中間体)、33…スポーク原体、34,38…金型、51…糸体(補強用部材)、52…カーボンプリプレグ(補強用部材)
図1
図2
図3
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