(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087572
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】柱部材の施工方法、及び基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202035
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 慶一
(72)【発明者】
【氏名】岡島 浩平
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】柱頭部に断面が異なる鉄骨柱が接合された鋼管柱において、コンクリートの充填性を確保しつつ、鋼管柱の内部にコンクリートを充填することを目的とする。
【解決手段】柱部材の施工方法は、鋼管柱42と、鋼管柱42の内部に充填されたコンクリート44と、鋼管柱42の柱頭部42Hに接合され、鋼管柱42とは断面が異なる鉄骨柱60と、を有する柱部材の施工方法において、施工地盤G1の竪穴70に、鉄骨柱60を下にして構真柱40を落とし込んだ状態で、鋼管柱42の柱脚部42Lのコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填するコンクリート充填工程を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管柱と、前記鋼管柱の内部に充填されたコンクリートと、前記鋼管柱の柱頭部に接合され、該鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱と、を有する柱部材の施工方法において、
地盤の竪穴に、前記鉄骨柱を下にして前記柱部材を落とし込んだ状態で、前記鋼管柱の柱脚部の開口から前記鋼管柱の内部にコンクリートを充填するコンクリート充填工程を備える、
柱部材の施工方法。
【請求項2】
前記竪穴から引き上げられた前記柱部材を、前記鋼管柱を下にして建て方する建て方工程を備える、
請求項1に記載の柱部材の施工方法。
【請求項3】
前記建て方工程において、前記竪穴から引き上げられた前記柱部材を、前記鋼管柱を下にして杭用の前記竪穴に落とし込んだ状態で該竪穴に杭用コンクリートを打設し、該杭用コンクリートに前記柱部材の下端部を埋設する、
請求項2に記載の柱部材の施工方法。
【請求項4】
コンクリート杭と、
鋼管柱と、前記鋼管柱の内部に充填されたコンクリートと、前記鋼管柱の柱頭部に接合され、該鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱と、を有し、下端部が前記コンクリート杭に埋設された柱部材と、
前記コンクリート杭の杭頭部の上方で、前記柱部材に支持された基礎躯体と、
を備える基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱部材の施工方法、及び基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下部がコンクリート杭に埋設され、構真柱を構成するコンクリート充填鋼管柱が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-19503号公報
【特許文献2】特開平11-264134号公報
【特許文献3】特開平2014-1552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリート充填鋼管柱の施工では、一般に、コンクリートの充填性の観点から、鋼管柱を立てた状態(縦にした状態)で、鋼管柱の柱頭部の開口から充填用ホース等によって鋼管柱の内部にコンクリートが充填される。
【0005】
しかしながら、鋼管柱の柱頭部に、ダイアフラム等を介して、当該鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱が接合される場合がある。この場合、鋼管柱の柱頭部に開口を形成することができず、鋼管柱の内部にコンクリートを充填することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、柱頭部に断面が異なる鉄骨柱が接合された鋼管柱において、コンクリートの充填性を確保しつつ、鋼管柱の内部にコンクリートを充填することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の柱部材の施工方法は、鋼管柱と、前記鋼管柱の内部に充填されたコンクリートと、前記鋼管柱の柱頭部に接合され、該鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱と、を有する柱部材の施工方法において、地盤の竪穴に、前記鉄骨柱を下にして前記柱部材を落とし込んだ状態で、前記鋼管柱の柱脚部の開口から前記鋼管柱の内部にコンクリートを充填するコンクリート充填工程を備える。
【0008】
請求項1に係る柱部材の施工方法によれば、コンクリート充填工程において、地盤の竪穴に、鉄骨柱を下にして柱部材を落とし込み、鋼管柱の柱脚部の開口から鋼管柱の内部にコンクリートを充填する。
【0009】
このように本発明では、地盤の竪穴に、鉄骨柱を下にして柱部材を落とし込むことにより、鋼管柱の柱頭部に鉄骨柱が接合された場合であっても、柱部材の柱脚部の開口から鋼管柱の内部にコンクリートを充填することができる。
【0010】
また、本発明では、柱部材を縦にした状態で、鋼管柱にコンクリートを充填することができる。したがって、鋼管柱に対するコンクリートの充填性を確保することができる。
【0011】
さらに、本発明では、地盤の竪穴に柱部材を落とし込むことにより、地盤に近い位置で、鋼管柱の柱脚部の開口から鋼管柱の内部にコンクリートを充填することができる。したがって、施工性が向上する。
【0012】
請求項2に記載の柱部材の施工方法は、請求項1に記載の柱部材の施工方法において、前記竪穴から引き上げられた前記柱部材を、前記鋼管柱を下にして建て方する建て方工程を備える。
【0013】
請求項2に係る柱部材の施工方法によれば、建て方工程において、竪穴から引き上げられた柱部材を、鋼管柱を下にして建て方する。これにより、鋼管柱の柱頭部に鉄骨柱が接合されるとともに、鋼管柱にコンクリートが充填された柱部材を建て方することができる。
【0014】
請求項3に記載の柱部材の施工方法は、請求項2に記載の柱部材の施工方法において、前記建て方工程において、前記竪穴から引き上げられた前記柱部材を、前記鋼管柱を下にして杭用の前記竪穴に落とし込んだ状態で該竪穴に杭用コンクリートを打設し、該杭用コンクリートに前記柱部材の下端部を埋設する。
【0015】
請求項3に係る柱部材の施工方法によれば、建て方工程において、地盤の竪穴から引き上げられた柱部材を、鋼管柱を下にして杭用の竪穴に落とし込んだ状態で当該竪穴に杭用コンクリートを打設し、杭用コンクリートに柱部材の下端部を埋設する。これにより、コンクリート杭、及びコンクリート杭に下端部が埋設された柱部材が施工される。
【0016】
また、本発明では、コンクリート充填工程において、杭用の竪穴に、鉄骨柱を下にして柱部材を落とし込んだ状態で、鋼管柱の柱脚部の開口から鋼管柱の内部にコンクリートを充填する。つまり、本発明では、コンクリート充填工程において、杭用の竪穴を流用して、鋼管柱の内部にコンクリートを充填する。
【0017】
したがって、本発明では、竪穴の本数が低減されるため、施工コストを削減することができる。
【0018】
請求項4に記載の基礎構造は、コンクリート杭と、鋼管柱と、前記鋼管柱の内部に充填されたコンクリートと、前記鋼管柱の柱頭部に接合され、該鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱と、を有し、下端部が前記コンクリート杭に埋設された柱部材と、前記コンクリート杭の杭頭部の上方で、前記柱部材に支持された基礎躯体と、を備える。
【0019】
請求項4に係る基礎構造によれば、コンクリート杭には、柱部材の下端部が埋設される。柱部材は、鋼管柱と、鋼管柱の内部に充填されたコンクリートと、鋼管柱の柱頭部に接合され、鋼管柱とは断面が異なる鉄骨柱とを有する。この柱部材には、コンクリート杭の杭頭部の上方で、基礎躯体が支持される。
【0020】
このように本発明では、コンクリート杭の杭頭部の上方で、柱部材によって基礎躯体を支持することにより、地震時に、基礎躯体からコンクリート杭の杭頭部にせん断力が直接的に伝達されることが抑制される。したがって、コンクリート杭の杭頭部の破損等が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、柱頭部に断面が異なる鉄骨柱が接合された鋼管柱において、コンクリートの充填性を確保しつつ、鋼管柱の内部にコンクリートを充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係る基礎構造が適用された構造物を示す立断面図である。
【
図3】
図2に示される構真柱の施工過程を示す立面図であって、構真柱を上下反転させ、逆向き姿勢にした状態を示す立面図である。
【
図4】
図3に示される構真柱を竪穴に落とし込んだ状態を示す立面図である。
【
図6】
図2に示される構真柱の施工過程を示す立面図であって、構真柱を再び上下反転させ、順向き姿勢にした状態を示す立面図である。
【
図7】
図6に示される構真柱を竪穴に落とし込んだ状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
【0024】
(基礎構造)
図1には、本実施形態に係る基礎構造が適用された構造物10が示されている。構造物10は、地上階(地上構造体)10A及び地下階(地下構造体)10Bを有する建物とされており、逆打ち工法によって施工されている。この構造物10の基礎は、杭基礎とされている。
【0025】
具体的には、構造物10は、複数のコンクリート杭20を備えている。複数のコンクリート杭20は、場所打ちコンクリート杭とされており、間隔を空けて配列されている。また、複数のコンクリート杭20の上には、基礎躯体22が設けられている。
【0026】
基礎躯体22は、例えば、鉄筋コンクリート造の基礎梁や、基礎スラブとされている。この基礎躯体22は、複数のコンクリート杭20の杭頭部から上方に間隔Sを空けて配置されている。また、基礎躯体22の外周部には、地下外壁23及び山留壁24が設けられている。
【0027】
ここで、
図1に示される3本のコンクリート杭20のうち、両側のコンクリート杭20の上部には、構真柱30の下端部が埋設されている。一方、複数のコンクリート杭20のうち、中央のコンクリート杭20の上部には、構真柱40の下端部が埋設されている。
【0028】
各構真柱30,40は、コンクリート杭20の杭頭部から上方へ延出し、基礎躯体22を上下方向に貫通している。これらの構真柱30,40の上部は、地下階10Bの柱を構成している。また、隣り合う構真柱30の上部には、地下階10Bの梁12が架設されている。さらに、構真柱30,40の柱頭部の上には、地上階10Aの柱14がそれぞれ立てられている。隣り合う柱14には、地上階10Aの梁16がそれぞれ架設されている。
【0029】
ここで、両側の柱14の柱頭部の上には、地上階10Aの柱18がさらに立てられている。一方、中央の柱14の柱頭部の上には、柱が立てられていない。そのため、中央の構真柱40は、両側の構真柱30よりも負担軸力が小さい。
【0030】
そこで、構真柱30は、負担軸力に応じて、その全長がCFT造とされている。この構真柱30は、鋼管柱と、鋼管柱の内部に充填されたコンクリートとを有し、その断面が全長に亘って同一とされている。
【0031】
一方、構真柱40は、負担軸力に応じて、材軸方向の途中(中間部)で断面が切り替えられている。これにより、構真柱40の材料コスト等が構真柱30よりも軽減されている。
【0032】
図2に示されるように、構真柱40は、その下部(柱脚部側)がCFT造とされ、その上部(柱頭部側)が鉄骨造とされている。この構真柱40は、鋼管柱42と、鋼管柱42の内部に充填されたコンクリート44とを有している。
【0033】
鋼管柱42は、例えば、角形鋼管とされている。この鋼管柱42の柱脚部42L側は、コンクリート杭20の上部に埋設されている。また、鋼管柱42の柱脚部42L側の外周面には、複数のスタッド46が設けられている。これらのスタッド46をコンクリート杭20に埋設することにより、鋼管柱42の柱脚部42L側とコンクリート杭20との付着力が高められている。なお、鋼管柱42は、角形鋼管に限らず、丸形鋼管であっても良い。
【0034】
鋼管柱42の柱頭部42H側は、基礎躯体22に埋設されている。この鋼管柱42の柱頭部42H側の外周面には、複数のスタッド46が設けられている。これらのスタッド46を基礎躯体22に埋設することにより、鋼管柱42の柱頭部42H側と基礎躯体22との付着力が高められている。
【0035】
鋼管柱42の柱頭部42Hには、ダイアフラム48を介して鉄骨柱60の柱脚部60Lが接合されている。鉄骨柱60は、例えば、H形鋼やクロスH形鋼、鋼管鋼等によって形成されており、鋼管柱42とは断面の形状が異なっている。この鉄骨柱60の柱脚部60L側は、基礎躯体22に埋設されている。また、鉄骨柱60の柱頭部60H側は、基礎躯体22から上方へ延出している。
【0036】
なお、鋼管柱42と鉄骨柱60との断面が異なるとは、断面形状が異なる場合だけでなく、断面形状が同じであっても、断面の大きさが異なる場合も含む概念である。つまり、鋼管柱42と鉄骨柱60との断面が異なるとは、断面の形状及び大きさの少なくとも一方が異なる場合を意味する。
【0037】
ここで、前述したように、鋼管柱42の柱頭部42Hには、ダイアフラム48を介して鉄骨柱60の柱脚部60Lが接合されている。そのため、ダイアフラム48に開口を形成し、当該開口から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填することが難しい。そこで、本実施形態では、構真柱40を上下反転させ、逆向き姿勢にした状態で、鋼管柱42の柱脚部42Lから鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。
【0038】
具体的には、
図3、
図4、及び
図5には、構真柱40を上下反転させ、逆向き姿勢にした状態が示されている。
図5に示されるように、鋼管柱42の柱脚部42Lには、平面視にて矩形状のベースプレート50が設けられている。このベースプレート50の中央部には、コンクリート打設孔52が形成されている。また、ベースプレート50の四隅には、打設確認孔54がそれぞれ形成されている。なお、コンクリート打設孔52は、開口の一例である。
【0039】
コンクリート打設孔52及び打設確認孔54は、ベースプレート50を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。このコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44が充填される。また、各打設確認孔54からコンクリート44が溢れ出すことを確認することにより、鋼管柱42の内部に対するコンクリート44の充填が確認される。
【0040】
なお、鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する際には、コンクリート打設孔52及び打設確認孔54の周囲に型枠56がそれぞれ仮設される。これらの型枠56によって、コンクリート44の漏れが抑制される。なお、型枠56は、省略可能である。
【0041】
ベースプレート50には、一対の受け部材58が設けられている。一対の受け部材58は、例えば、H形鋼等の鉄骨部材によって形成されている。この一対の受け部材58は、コンクリート打設孔52の両側に配置されており、その一端側がベースプレート50に溶接等によって固定されている。
【0042】
各受け部材58の一端側には、吊り材90(
図3参照)が引っ掛けられる吊り部58Aが設けられている。一方、一対の受け部材58の他端側は、ベースプレート50から外側へ延出し、後述する架台80に支持される。なお、
図3には、
図5の矢印K方向から構真柱40を見た状態が示されている。
【0043】
(柱部材の施工方法)
次に、本実施形態に係る柱部材の一例としての構真柱40の施工方法について説明する。
【0044】
(コンクリート充填工程)
先ず、コンクリート充填工程について説明する。
図3には、地盤Gを掘削する前の施工地盤G1(
図1参照)が示されている。施工地盤G1には、コンクリート杭20用の竪穴70が形成されている。この竪穴70には、穴壁の崩壊を抑制するスタンドパイプ72が挿入されるとともに、安定液(ベントナイト溶液等)Wが充填されている。
【0045】
なお、スタンドパイプ72は、施工地盤G1から上方へ突出させておく。また、スタンドパイプ72には、図示しない下がり止めを適宜設ける。また、施工地盤G1は、地盤Gの地表面に限らず、適宜変更可能である。また、施工地盤G1は、地盤の一例である。
【0046】
図3に示されるように、コンクリート充填工程では、図示しないクレーン等の吊り材90によって構真柱40を上下反転させた状態(逆向き姿勢)で吊り上げ、施工地盤G1の竪穴70に鉄骨柱60を下にして構真柱40を落とし込む。そして、
図4に示されるように、逆向き姿勢の構真柱40を竪穴70の所定位置まで落とし込む。
【0047】
次に、スタンドパイプ72の上に架台80を仮設し、鋼管柱42の柱脚部42Lに設けられた一対の受け部材58を図示しないクランプ等によって架台80に固定する。また、架台80の上に作業床82を仮設する。さらに、鋼管柱42のベースプレート50に形成されたコンクリート打設孔52及び打設確認孔54の周囲に型枠56を仮設する。
【0048】
次に、ベースプレート50のコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部に打設用ホース84を挿入し、打設用ホース84の先端部をダイアフラム48に接近させる。この状態で、落とし込み工法により、鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。すなわち、打設用ホース84を引き上げながら、打設用ホース84の先端部からコンクリート44を打設し、鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。
【0049】
この際、検尺おもり等によって、鋼管柱42の内部に対するコンクリート44の充填高さを確認する。また、ベースプレート50の打設確認孔54からコンクリート44が溢れ出すことを確認することにより、鋼管柱42の内部に対するコンクリート44の充填を確認する。
【0050】
また、コンクリート打設孔52及び打設確認孔54の周囲に仮設した型枠56内に、図示しない余盛コンクリートを充填する。その後、コンクリート44の硬化開始を目途に、型枠56及び余盛コンクリートを撤去し、ベースプレート50の表面を均す。この状態で、鋼管柱42の内部に充填されたコンクリート44を養生させる。
【0051】
(建て方工程)
次に、建て方工程について説明する。建て方工程では、竪穴70から引き上げられた構真柱40における鉄骨柱60の柱頭部60Hに、ヤットコ(仮設部材)92を取り付ける。
【0052】
次に、
図6に示されるように、図示しないクレーン等の吊り材90によって構真柱40を再び上下反転させた状態(順向き姿勢)で吊り上げ、施工地盤G1の竪穴70に、鋼管柱42を下にして構真柱40を落とし込む。そして、
図7に示されるように、順向き姿勢の構真柱40を竪穴70の所定位置まで落とし込む。なお、竪穴70から構真柱40を引き上げる際には、架台80等を撤去する。
【0053】
次に、コンクリート杭20を施工する。具体的には、竪穴70の所定深度までコンクリート杭20用のコンクリートを打設して養生させる。これにより、鋼管柱42の柱脚部42L側が上部に埋設されたコンクリート杭20が施工される。
【0054】
その後、一般的な逆打ち工法によって、構造物10の地下階10B及び地上階10Aが並行して施工される。なお、ヤットコ92は、所定のタイミングで、鉄骨柱60の柱頭部60Hから取り外される。
【0055】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0056】
本実施形態によれば、コンクリート充填工程において、構真柱40を上下反転させ、施工地盤G1の竪穴70に鉄骨柱60を下にして構真柱40を落とし込み、鋼管柱42の柱脚部42Lのベースプレート50に形成されたコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。
【0057】
このように本実施形態では、施工地盤G1の竪穴70に、鉄骨柱60を下にして構真柱40を落とし込むことにより、鋼管柱42の柱頭部42Hに鉄骨柱60が接合された場合であっても、構真柱40における鋼管柱42の柱脚部42Lのコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填することができる。
【0058】
また、構真柱40を縦にした状態、すなわち構真柱40を上下方向に沿った状態で、鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填することができる。したがって、鋼管柱42の内部に対するコンクリート44の充填性を確保することができる。
【0059】
さらに、施工地盤G1の竪穴70に構真柱40を落とし込むことにより、施工地盤G1に近い位置で、鋼管柱42の柱脚部42Lのコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填することができる。したがって、施工性が向上する。
【0060】
また、建て方工程において、施工地盤G1の竪穴70から引き上げられた構真柱40を再び上下反転させ、鋼管柱42を下にして竪穴70に落とし込んだ状態で当該竪穴70に杭用コンクリートを打設し、杭用コンクリートに鋼管柱42の柱脚部42Lを埋設する。これにより、コンクリート杭20、及びコンクリート杭20に下端部が埋設された構真柱40を施工することができる。
【0061】
さらに、コンクリート充填工程において、杭用の竪穴70に、鉄骨柱60を下にして構真柱40を落とし込んだ状態で、鋼管柱42の柱脚部42Lのコンクリート打設孔52から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。つまり、本実施形態では、コンクリート充填工程において、コンクリート杭20用の竪穴70を流用して、鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填する。
【0062】
したがって、本実施形態では、竪穴70の本数が低減されるため、施工コストを削減することができる。
【0063】
さらに、
図2に示されるように、コンクリート杭20には、構真柱40の下端部が埋設されている。構真柱40は、鋼管柱42と、鋼管柱42の内部に充填されたコンクリート44と、鋼管柱42の柱頭部42Hに柱脚部60Lが接合され、鋼管柱42とは断面が異なる鉄骨柱60とを有している。この構真柱40によって、基礎躯体22がコンクリート杭20の杭頭部の上方で支持されている。
【0064】
このように本実施形態では、構真柱40によって、基礎躯体22をコンクリート杭20の杭頭部の上方で支持することにより、地震時に、基礎躯体22からコンクリート杭20の杭頭部にせん断力が直接的に伝達されることが抑制される。したがって、コンクリート杭20の杭頭部の破損等が抑制される。また、コンクリート杭20の杭頭部に対する補強が軽減される。
【0065】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0066】
上記実施形態では、鋼管柱42の柱脚部42Lに設けられたベースプレート50に、開口としてのコンクリート打設孔52が形成されている。しかし、ベースプレート50を省略して鋼管柱42の柱脚部42Lを開口させ、当該開口から鋼管柱42の内部にコンクリート44を充填しても良い。
【0067】
また、上記実施形態では、コンクリート充填工程において、コンクリート杭20用の竪穴70に、構真柱40を落とし込んだ。しかし、コンクリート充填工程において、構真柱40は、コンクリート杭20用の竪穴70に限らず、他の竪穴に落とし込んでも良い。
【0068】
また、上記実施形態では、柱部材が、逆打ち工法に用いられる構真柱40とされている。しかし、柱部材は、構真柱40に限らず、下端部がフーチング等の基礎や他の柱に接合される柱部材であっても良い。この場合、建て方工程では、竪穴70から引き上げられた柱部材を上下反転させ、鋼管柱を下にして基礎や他の柱の上に建て方する。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
20 コンクリート杭
22 基礎躯体
40 構真柱(柱部材)
42 鋼管柱
42H 柱頭部
42L 柱脚部
44 コンクリート
52 コンクリート打設孔(開口)
60 鉄骨柱
70 竪穴
G 地盤
G1 施工地盤(地盤)