IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

特開2023-87573プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法
<>
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図1
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図2
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図3
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図4
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図5
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図6
  • 特開-プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087573
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/16 20060101AFI20230616BHJP
   E04G 11/50 20060101ALI20230616BHJP
   E04C 3/293 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
E04B1/16 K
E04G11/50
E04C3/293
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202036
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 良輔
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 巧
(72)【発明者】
【氏名】成田 裕一
【テーマコード(参考)】
2E150
2E163
【Fターム(参考)】
2E150AA30
2E150HB21
2E150HB31
2E150HB34
2E150JA03
2E150JC01
2E150JE14
2E163DA08
2E163FA12
2E163FB09
2E163FD01
2E163FD11
(57)【要約】
【課題】支保工を支持する受部材を抜き取り、受部材の再利用が可能なプレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法を提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート梁12は、コンクリート部30にシース管14が縦方向に埋設され、シース管14の天端14Aが梁の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aより低く構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁のコンクリート部に中空管が縦方向に埋設され、前記中空管の天端が梁の上に打設されるスラブコンクリートの天端より低くされ、又は前記スラブコンクリートの前記天端と同一高さとされたプレキャストコンクリート梁。
【請求項2】
柱に組付けられた請求項1に記載のプレキャストコンクリート梁と、
前記中空管に挿入された受部材と、
前記受部材に取り付けられ、上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材が接続される接続部材と、
を有する支保工受け構造。
【請求項3】
梁のコンクリート部に中空管が縦方向に埋設された下階のプレキャストコンクリート梁を、柱に組み付ける工程と、
前記中空管へ受部材を挿入する工程と、
前記受部材に接続部材を取り付ける工程と、
上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材を前記接続部材に接続する工程と、
下階床のスラブ筋を配筋する工程と、
前記下階床の上面及び前記プレキャストコンクリート梁の上面にスラブコンクリートを打設する工程と、
前記スラブコンクリートが硬化した後、前記支保工部材及び前記接続部材を撤去し、前記受部材を前記中空管から抜き取る工程と、
前記中空管にコンクリート又はモルタルを充填して前記下階床を仕上げる工程と、
を有する支保工構築及び撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上階の梁の梁型枠を支持する支持構造が提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、PC(プレキャスト)梁部材に、上階の梁の梁型枠を支持する支持部を設けた梁型枠の支持構造が開示されている。支持部は、梁型枠を下方より支持する型枠受部材と、型枠受部材とPC梁部材とを結ぶように設けられた支持部材と、を備えている。PC梁部材には、上端にナットが取り付けられたJ字状の鋼材が埋設されており、この鋼材の上端のナットに受け部を固定し、受け部に支持部材を接続する(例えば、特許文献1の図8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-53650公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の梁型枠の支持構造では、型枠受部材と支持部材とを備えた梁型枠ユニットを撤去した後、スラブコンクリートの天端から突出した鋼材の上端部のナット付近を切断する必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、支保工を支持する受部材を抜き取り、受部材の再利用が可能なプレキャストコンクリート梁、支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載のプレキャストコンクリート梁は、梁のコンクリート部に中空管が縦方向に埋設され、前記中空管の天端が梁の上に打設されるスラブコンクリートの天端より低くされ、又は前記スラブコンクリートの前記天端と同一高さとされている。
【0008】
第1態様に記載のプレキャストコンクリート梁によれば、梁のコンクリート部には縦方向に中空管が埋設されている。この中空管に受部材を挿入し、受部材の上部を上階の梁の支保工のサポート部材の受けとする。このため、施工階の床コンクリート打設前に、上階の梁の支保工を設置することができる。
次に、支保工を撤去した後は、受部材はスラブコンクリートに埋設されていない、又は埋設長が短いので、中空管から抜き取って、再利用することができる。
また、中空管の天端が梁の上に打設されるスラブコンクリートの天端より低いか又は同一であるため、スラブコンクリートの天端より中空管が突出せず、中空管の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。
【0009】
第2態様に記載の支保工受け構造は、柱に組付けられた第1態様に記載のプレキャストコンクリート梁と、前記中空管に挿入された受部材と、前記受部材に取り付けられ、上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材が接続される接続部材と、を有する。
【0010】
第2態様に記載の支保工受け構造によれば、柱に組付けられた下階のプレキャストコンクリート梁には、中空管が埋設されており、中空管に受部材が挿入されている。受部材には、接続部材が取り付けられており、接続部材には、上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材が接続される。このため、施工階の床コンクリート打設前に、上階のプレキャストコンクリート梁の支保工を設置することができる。
次に、支保工を撤去した後は、受部材はスラブコンクリートに埋設されていない、又は埋設長が短いので、中空管から抜き取って、再利用することができる。
また、中空管の天端が梁の上に打設されるスラブコンクリートの天端より低いか又は同一であるため、スラブコンクリートの天端より中空管が突出せず、中空管の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。
【0011】
第3態様に記載の支保工構築及び撤去方法は、梁のコンクリート部に中空管が縦方向に埋設された下階のプレキャストコンクリート梁を、柱に組み付ける工程と、前記中空管へ受部材を挿入する工程と、前記受部材に接続部材を取り付ける工程と、上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材を前記接続部材に接続する工程と、下階床のスラブ筋を配筋する工程と、前記下階床の上面及び前記プレキャストコンクリート梁の上面にスラブコンクリートを打設する工程と、前記スラブコンクリートが硬化した後、前記支保工部材及び前記接続部材を撤去し、前記受部材を前記中空管から抜き取る工程と、前記中空管にコンクリート又はモルタルを充填して前記下階床を仕上げる工程と、を有する。
【0012】
第3態様に記載の支保工構築及び撤去方法によれば、梁のコンクリート部に中空管が縦方向に埋設された下階のプレキャストコンクリート梁を柱に組み付ける。下階のプレキャストコンクリート梁のコンクリート部に縦方向に埋設された中空管へ受部材を挿入する。さらに、受部材に接続部材を取り付ける。そして、接続部材に、上階のプレキャストコンクリート梁をサポートする支保工部材を接続する。このため、下階のスラブコンクリート打設前に、上階のプレキャストコンクリート梁の支保工を設置することができる。
次に、下階床のスラブ筋を配筋する。そして、下階床の上面及びプレキャストコンクリート梁の上面にスラブコンクリートを打設する。スラブコンクリートが硬化した後、支保工部材及び接続部材を撤去し、受部材を中空管から抜き取る。このとき、受部材をスラブコンクリートに埋設しない、又は埋設長を短くすることで、受部材を中空管から抜き取って、再利用することができる。
また、中空管の天端をスラブコンクリートの天端より低く又は同一とすることで、スラブコンクリートの天端より中空管が突出せず、中空管の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。中空管は、コンクリート又はモルタルを注入して閉塞する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、支保工を支持する受部材を中空管から抜き取り、受部材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の支保工受け構造を示す断面図である。
図2】(A)~(E)は、第1実施形態の支保工受け構造が適用される支保工構築及び撤去方法の一例を示す構成図である。
図3】(A)は、プレキャストコンクリート梁に埋め込まれるシース管を示す正面図であり、(B)は、シース管を示す断面図であり、(C)は、プレキャストコンクリート梁に埋め込まれるシース管の固定方法の一例を示す断面図である。
図4】第1実施形態の支保工受け構造に用いられるシース管、束材及び接続部材の一例を示す断面図である。
図5】(A)は、下側接続部材を示す正面図であり、(B)は、束材の上部に下側接続部材及び上側接続部材を取り付け、上側接続部材に支保工部材を取り付けた一部を断面で示す正面図である。
図6】第1実施形態の支保工受け構造が適用された構造物の一例を示す立面図である。
図7】(A)~(E)は、比較例の支保工構築及び撤去方法の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。各図面において、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。なお、各図面において適宜示される矢印UPで示す方向を鉛直方向の上方側とする。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1図6にしたがって、第1実施形態の支保工受け構造、並びに支保工構築及び撤去方法について説明する。
【0017】
<支保工受け構造の全体構成>
図1には、第1実施形態に係る支保工受け構造10が示されている。図1に示されるように、支保工受け構造10は、柱20(図6参照)に組付けられたプレキャストコンクリート梁(すなわち、PCa梁)12と、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に縦方向に埋設されたシース管14と、を備えている。また、支保工受け構造10は、シース管14に挿入された束材16と、束材16に取り付けられる共に上階の梁をサポートする支保工部材22が接続される接続部材18と、を備えている。ここで、シース管14は、中空管の一例であり、束材16は、受部材の一例である。
【0018】
図6には、支保工受け構造10が適用された構造物100が示されている。図6に示されるように、構造物100には、複数の柱20が設けられており、柱20には、それぞれ下階のプレキャストコンクリート梁12が組付けられている。両側の柱20に組付けられたプレキャストコンクリート梁12は、下階の梁110の長手方向の一部を構成している。下階のプレキャストコンクリート梁12には、支保工受け構造10が設けられている。下階のプレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14に束材16が挿入されており、束材16に接続部材18が取り付けられている。接続部材18には、支保工部材22が接続されている。支保工部材22は、上階のプレキャストコンクリート梁12をサポートする。
【0019】
(プレキャストコンクリート梁)
図1に示されるように、プレキャストコンクリート梁12は、予め工場で製作されており、コンクリート部30にシース管14が縦方向(本実施形態では、上下方向)に埋め込まれている。本実施形態では、プレキャストコンクリート梁12は、ハーフプレキャストコンクリート梁であり、柱20に組付けられた下階(例えば、施工階)の梁110の長手方向の一部を構成している(図6参照)。
【0020】
プレキャストコンクリート梁12には、鉄筋32が配筋されている。鉄筋32は、長手方向に配置された複数の第1鉄筋32Aと、第1鉄筋32Aを囲むように配筋された複数の第2鉄筋32Bと、上下方向に配置される共に両端部が第1鉄筋32Aに係止される第3鉄筋32Cと、を備えている。プレキャストコンクリート梁12は、工場で製作された状態で、鉄筋32の下部側(すなわち、第1鉄筋32A、第2鉄筋32B及び3鉄筋32Cの下部側)はコンクリート部30に埋め込まれており、鉄筋32の上部側(すなわち、第1鉄筋32A、第2鉄筋32B及び3鉄筋32Cの上部側)は、コンクリート部30の外部に露出している。
【0021】
一例として、コンクリート部30の上部の幅方向両側には、上方側に突出した突出部30Aがそれぞれ設けられている。突出部30Aは、スパンクリート(スラブ)36を受ける躯体である。
【0022】
柱20(図6参照)に組付けられたプレキャストコンクリート梁12の上には、現場でスラブコンクリート38が打設される。本実施形態では、スラブコンクリート38を打設する際に、シース管14の天端(上端)14Aがスラブコンクリート38の天端(上端)38Aより低くなる構成とされている。
【0023】
(シース管)
シース管14は、中心部の方向に長さを持った管体であり、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に縦方向(本実施形態では上下方向)に埋設されている。シース管14の内径は、束材16の外径よりも大きく、束材16がシース管14の内部に挿入可能とされている。シース管14は、上方から挿入された束材16を支持する機能を有する。シース管14の外径は、例えば、φ50mmである。
【0024】
シース管14の上部側は、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30から上方に露出している。すなわち、シース管14の天端14Aの高さは、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30の上面及び鉄筋32の上端部(すなわち、第1鉄筋32A、第2鉄筋32B及び3鉄筋32Cの上端部)の高さよりも高い。
【0025】
図3(A)、(B)には、シース管14の一例が示されている。図3(C)には、工場でプレキャストコンクリート梁12を製作するときのシース管14の固定構造の一例が示されている。図3(A)に示されるように、シース管14の長手方向の下端部には、コンクリートが流れ込まないように塞がれた底蓋14Bが設けられている。底蓋14Bには、貫通孔15が形成されている。底蓋14Bの下面には、貫通孔15とネジ孔の位置を合わせてナット50が接合されている(図3(C)参照)。
【0026】
図3(B)に示されるように、シース管14の上部には、保持部52が取り付けられる。保持部52には、シース管14を固定するための棒状の固定治具54(図3(C)参照)が挿通される貫通孔53が設けられている。
【0027】
図3(C)に示されるように、固定治具54には、ねじ部54Aが設けられており、固定治具54を貫通孔53に挿通させてシース管14に挿入し、固定治具54のねじ部54Aの先端をナット50に螺合させる。そして、固定治具54の上部に取り付けられたナット56に、支持枠58の貫通部59に挿通されたボルト60を螺合させることで、支持枠58にシース管14が固定支持される。この状態で、コンクリートを打設することで、プレキャストコンクリート梁12が製作される。なお、図3(C)では、鉄筋32(すなわち、第1鉄筋32A、第2鉄筋32B及び第3鉄筋32C)は省略している。
【0028】
なお、プレキャストコンクリート梁12の製作時のシース管14の固定構造は、上記構造に限定されるものではなく、変更可能である。
【0029】
(束材)
束材16は、支保工部材22を備えた支保工(図示省略)を受ける機能を有する。本実施形態では、束材16の軸方向の長さは、シース管14の長手方向(軸方向)の長さよりも長い。束材16は、シース管14の上方からシース管14の内部に挿入されたときに、束材16の下端部16Bがシース管14の底蓋14Bに接触する。この状態で、束材16の上端部16Aがシース管14の天端14Aから上方側に露出している。
【0030】
一例として、束材16は、鉄筋である。本実施形態では、束材16は、外周面に螺旋状の突起を備えたネジ筋である。束材16の外径の最も大きい部分は、例えば、46mmである。
【0031】
(接続部材)
接続部材18は、束材16と支保工部材22とを接続する機能を有する。図4及び図5(B)等に示されるように、本実施形態では、接続部材18は、束材16の上部に取り付けられる下側接続部材42と、下側接続部材42の上に取り付けられる上側接続部材44と、を備えている。
【0032】
図5(A)に示されるように、下側接続部材42は、板状のベースプレート46と、ベースプレート46から下方に延出された筒部48と、を備えている。一例として、ベースプレート46は、平面視にて略矩形状であり、幅方向の両側に固定具が挿通される貫通部46Aが設けられている。一例として、貫通部46Aは2箇所に設けられている。例えば、ベースプレート46は、平面視にて縦方向の一辺の長さが180mmで、横方向の一辺の長さが140mmである。
【0033】
筒部48は、略円筒状であり、内周面48Aを備えている。内周面48Aの内径は、束材16の外径よりも大きい。これにより、下側接続部材42の筒部48が束材16の上端部16Aに挿装される。筒部48が束材16の上端部16Aに挿装された状態で、束材16の上端部16Aの端面にベースプレート46の下面が接触する。言い換えると、下側接続部材42は、筒部48が束材16の上端部16Aに外挿されると共に束材16の上端部16Aにベースプレート46が接触することで、束材16の上端部16Aに装着されている。ベースプレート46の上面から筒部48の下端までの上下方向の長さは、例えば、85mmである。また、筒部48に挿入された束材16の入り込み深さは、例えば、76mmである。
【0034】
上側接続部材44は、ベースプレート46と、ベースプレート46から上方に延出された筒部48と、を備えている。上側接続部材44は、下側接続部材42と上下対称であり、同様の部材で構成されている。本実施形態では、下側接続部材42は、上側接続部材44と同様の部材を上下方向に逆使いで使用している。
【0035】
(支保工部材)
支保工部材22は、上階のプレキャストコンクリート梁12(図6参照)をサポートする機能を有する。支保工部材22は、上側接続部材44に接続されている。一例として、支保工部材22は、略円筒状の管体である。支保工部材22の内径は、筒部48の外径よりも僅かに大きい。これにより、支保工部材22の下端部は、上側接続部材44の筒部48の外側に挿装され、支保工部材22の下端部の端面が上側接続部材44のベースプレート46に接触する。言い換えると、支保工部材22は、上側接続部材44の筒部48に外挿された状態で上側接続部材44に装着されている。
【0036】
<支保工構築及び撤去方法>
次に、支保工構築及び撤去方法の一例について説明する。
【0037】
図2(A)~(E)には、本実施形態の支保工構築及び撤去方法の一例が示されている。図2(A)に示されるように、工場で、予めコンクリート部30にシース管14が縦方向に埋設されたプレキャストコンクリート梁12を製作し、プレキャストコンクリート梁12を現場に搬入する。プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14の上部側は、コンクリート部30から露出している。
【0038】
このプレキャストコンクリート梁12を下階の梁の一部として、構造物100の柱20(図6参照)に組み付ける。図示を省略するが、まず下階の梁の支保工を構築し、支保工をチャッキアップしてプレキャストコンクリート梁12を受けることで、下階のプレキャストコンクリート梁12を柱20に組み付ける。そして、プレキャストコンクリート梁12と柱20のジョイント部にモルタルを注入してプレキャストコンクリート梁12と柱20とを接合する。さらに、下階のプレキャストコンクリート梁12の突出部30Aにスパンクリート36(図1参照)を配置する。
【0039】
このタイミングから、上階の支保工の構築を開始する。図2(B)に示されるように、下階のプレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に縦方向に埋設されたシース管14に束材16を挿入する。この状態で、束材16の上端部16Aがシース管14の天端14Aから上方側に露出している。
【0040】
次に、束材16の上部に接続部材18を取り付ける(図2(B)参照)。本実施形態では、下側接続部材42の筒部48を束材16の上端部16Aに挿装させ、束材16の上端部16Aに下側接続部材42のベースプレート46を接触させる(図5(B)等参照)。さらに、下側接続部材42のベースプレート46に上側接続部材44のベースプレート46を配置し、これらの2枚のベースプレート46をボルトとナット等の固定具70で固定する。本実施形態では、下側接続部材42は、上側接続部材44と同様の構成であり、下側接続部材42を上下で逆使いにして束材16の上端部16Aに挿装している。
【0041】
次に、上階のプレキャストコンクリート梁12(図6参照)をサポートする支保工部材22を接続部材18に接続する。本実施形態では、支保工部材22の下端部を、上側接続部材44の筒部48の外側に挿装させ、支保工部材22の下端部を上側接続部材44のベースプレート46に接触させる(図5(B)等参照)。これにより、上側接続部材44に支保工部材22が接続される。図示を省略するが、支保工部材22に上階の支保工を構成する他の部材を取り付ける。そして、上階の柱20及びプレキャストコンクリート梁12(図6参照)の組付けを開始する。
【0042】
また、下階のプレキャストコンクリート梁12の側では、下階床のスラブ筋(図示省略)を配筋する。そして、図2(C)に示されるように、下階床の上面及びプレキャストコンクリート梁12の上面にスラブコンクリート38を打設する。このとき、シース管14の上部及び束材16の上部を布等で塞ぎ、スラブコンクリート38を打設することで、シース管14の内部にスラブコンクリート38が入らないようにする。本実施形態では、シース管14の天端14Aがスラブコンクリート38の天端38Aより低くなるようにする。一例として、スラブコンクリート38の上面には、シース管14の天端14Aの周囲に下方側に窪んだ窪み部62が形成されている。例えば、シース管14の天端14Aは、スラブコンクリート38の天端38Aよりも約10mm低いため、シース管14の天端14Aの際までスラブコンクリート38を打設することができる。
【0043】
図2(D)に示されるように、スラブコンクリート38が硬化した後、支保工部材22及び接続部材18を撤去し、束材16をシース管14から抜き取る。このとき、シース管14の天端14A及び束材16は、スラブコンクリート38に埋め込まれていないため、束材16をシース管14から抜き取ることができる。抜き取った束材16と、接続部材18と、支保工部材22は、上階の梁の支保工構築に利用する(転用する)ことができる。すなわち、本実施形態では、シース管14以外は、すべて転用することができる。例えば、支保工部材22及び接続部材18の撤去は、上階のプレキャストコンクリート梁12(図6)の柱20への組付け、上階床のスラブ筋の配筋、及び上階床のスラブコンクリートの打設後に行ってもよい。
【0044】
図2(E)に示されるように、スラブコンクリート38の窪み部62及びシース管14の内部にコンクリート64を充填して、下階床を仕上げる。なお、コンクリート64に代えて、スラブコンクリート38の窪み部62及びシース管14の内部にモルタルを充填してもよい。
【0045】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
図1等に示されるように、本実施形態のプレキャストコンクリート梁12は、コンクリート部30にシース管14が縦方向に埋設され、シース管14の天端14Aが梁及び下階床の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aより低くされている。
【0047】
上記のプレキャストコンクリート梁12では、コンクリート部30に埋設されたシース管14に束材16を挿入し、束材16の上部を上階のプレキャストコンクリート梁12をサポートする支保工部材22の受けとする。このため、施工階である下階の床コンクリート打設前に、上階の梁の支保工を設置することができる。
【0048】
次に、支保工部材22及び接続部材18を撤去した後は、束材16はスラブコンクリート38に埋設されていないので、束材16をシース管14から抜き取って、再利用することができる。
【0049】
また、シース管14の天端14Aが梁の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aより低いため、スラブコンクリート38の天端38Aよりシース管14が突出せず、シース管14の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。
【0050】
本実施形態の支保工受け構造10では、構造物100(図6参照)の柱20に組付けられた下階のプレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30には、シース管14が縦方向に埋設されており、シース管14に束材16が挿入されている。束材16には、接続部材18が取り付けられており、接続部材18には、上階のプレキャストコンクリート梁12をサポートする支保工部材22が接続される。このため、施工階の床コンクリート打設前に、上階のプレキャストコンクリート梁12(図6参照)の支保工を設置することができる。
【0051】
次に、支保工部材22及び接続部材18を撤去した後は、束材16はスラブコンクリート38に埋設されていないので、束材16をシース管14から抜き取って、再利用することができる。
【0052】
また、シース管14の天端14Aが梁の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aより低いため、スラブコンクリート38の天端38Aよりシース管14が突出せず、シース管14の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる(図2(D)参照)。
【0053】
本実施形態の支保工構築及び撤去方法では、図2(A)に示す下階のプレキャストコンクリート梁12を、構造物100の柱20に組み付ける。下階のプレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30には、シース管14が縦方向に埋設されている。次いで、下階のプレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14へ束材16を挿入する(図2(B)参照)。さらに、束材16に接続部材18を取り付ける。一例として、束材16の上部に下側接続部材42を取り付け、下側接続部材42に上側接続部材44を取り付ける(図2(B)参照)。そして、接続部材18を構成する上側接続部材44に、上階のプレキャストコンクリート梁12をサポートする支保工部材22を接続する(図2(B)参照)。このため、下階のスラブコンクリート38を打設する前に、上階のプレキャストコンクリート梁12の支保工を設置することができる。また、下階の施工フロアに支保工部材22を保管するスペースが不要となる。
【0054】
次に、下階床のスラブ筋を配筋する。そして、下階床の上面及びプレキャストコンクリート梁12の上面にスラブコンクリート38を打設する(図2(C)参照)。スラブコンクリート38が硬化した後、支保工部材22及び接続部材18を撤去し、束材16をシース管14から抜き取る。このとき、束材16をスラブコンクリート38に埋設しないようにすることで、束材16をシース管14から抜き取って、再利用することができる(図2(D)参照)。
【0055】
また、シース管14の天端14Aをスラブコンクリート38の天端38Aより低くする。これにより、スラブコンクリート38の天端38Aよりシース管14が突出せず、シース管14の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。さらに、シース管14にコンクリート64又はモルタルを注入して閉塞することで、下階床を仕上げる。
【0056】
ここで、図7を用いて、比較例の支保工構築及び撤去方法について説明する。なお、図7では、本実施形態と同様の構成部分については、同一の符号を付している。
【0057】
図7(A)に示されるように、比較例の支保工受け構造200では、工場でプレキャストコンクリート梁202を製作するとき、コンクリート部30に束材204を縦方向に埋設する(打ち込む)。束材204の上端部204A側は、コンクリート部30から上方に露出している。束材204の上端部204Aには、束材204の軸方向に対して直交する方向に延びた板状の受け部206が設けられている。
【0058】
図7(B)に示されるように、受け部206の上面に、ベースプレート208を介して、上階のプレキャストコンクリート梁202をサポートする支保工部材210を取り付ける。図示を省略するが、例えば、ベースプレート208から上方に延びた筒部の外側に支保工部材210を装着する。
【0059】
次に、下階床のスラブ筋を配筋し、図7(C)に示されるように、下階床の上面及びプレキャストコンクリート梁202の上面にスラブコンクリート214を打設する。そのとき、スラブコンクリート214の天端214Aにおける束材204の周囲に、下方側に窪んだ窪み部214Bを設けておく。
【0060】
図7(D)に示されるように、スラブコンクリート214が硬化した後、支保工部材210及びベースプレート208を撤去し、束材204の窪み部214Bから上部側を火気作業により切断する。切断した束材204の上部側は、処分する。支保工部材210及びベースプレート208は、上階のプレキャストコンクリート梁202をサポートする際に利用する。
【0061】
次に、図7(E)に示されるように、スラブコンクリート214の窪み部214Bに、コンクリート216を充填することで、下階床を仕上げる。
【0062】
比較例の支保工構築及び撤去方法では、コンクリート部30に束材204を縦方向に埋設しているため、スラブコンクリート214から上方側に露出した束材16を火気作業により切断する必要がある。
【0063】
これに対して、本実施形態の支保工構築及び撤去方法では、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14に束材16を挿入するため、束材16を抜き取って再利用することができる。また、スラブコンクリート38の天端38Aよりシース管14が突出せず、シース管14の切断作業(すなわち、火気作業)が不要となる。
【0064】
〔変更例〕
上記実施形態では、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14に束材16を挿入しているが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、プレキャストコンクリート梁12のコンクリート部30に埋設されたシース管14に、柱20にプレキャストコンクリート梁12を組付けた後の安全施設として、単管の手摺を挿入してもよい。例えば、外径がφ48.6mmの単管の手摺をシース管14に挿入してもよい。
【0065】
〔補足説明〕
上記実施形態では、シース管14の天端14Aがプレキャストコンクリート梁12の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aより低いが、本開示は、この構成に限定されるものではない。例えば、シース管14の天端14Aがプレキャストコンクリート梁12の上に打設されるスラブコンクリート38の天端38Aと略同一高さとされていてもよい。この場合は、支保工を撤去した後は、束材16のスラブコンクリート38への埋設長が短いので、束材16をシース管14から抜き取って、再利用することができる。
【0066】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0067】
12 プレキャストコンクリート梁
14 シース管(中空管)
14A 天端
16 束材(受部材)
18 接続部材
20 柱
22 支保工部材
30 コンクリート部
30A 突出部
38 スラブコンクリート
38A 天端
42 下側接続部材(接続部材)
44 上側接続部材(接続部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7