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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087593
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】固形状油性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230616BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230616BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230616BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/42
A61K8/37
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202077
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】507281937
【氏名又は名称】株式会社コスモビューティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】土肥 華子
(72)【発明者】
【氏名】引間 俊雄
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC641
4C083AC642
4C083BB04
4C083CC23
4C083DD30
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】天然ワックスを用いながらも、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、メイク汚れ落ちに優れ、たれ落ちにくく、また、メイクアップ化粧料となじませる際やマッサージ時の摩擦感が少なく、マット感を有し、洗浄後のさっぱり感を備え、また、成型性、保存安定性、使用時の被膜形成能の点でも優れた固形状油性クレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】成分(A)~(D)を含有することを特徴とする、固形状油性クレンジング化粧料:(A)天然ワックスを該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、(B)アミドアルコール誘導体を該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、(C)エステル油を含有する液状油であって、該液状油100質量%中のエステル油の含有量が35質量%以上、(D)HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を該化粧料100質量%あたり5~40質量%。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とする、固形状油性クレンジング化粧料:
(A)天然ワックスを該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(B)アミドアルコール誘導体を該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(C)エステル油を含有する液状油であって、該液状油100質量%中のエステル油の含有量が35質量%以上、
(D)HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を該化粧料100質量%あたり5~40質量%。
【請求項2】
前記天然ワックスが、ヒマワリワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、コメヌカワックス、ミツロウ、モンタンワックス及びマイクロクリスタリンワックスからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記アミドアルコール誘導体が、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドである、請求項1または2に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
【請求項4】
更に、下記成分(E1)及び(E2)からなる群より選択される少なくとも1種を、化粧料100質量%あたり0.1~20質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形状油性クレンジング化粧料:
(E1)植物由来の直鎖アルコールを脱水、蒸留及び水添して得られる炭素数20~30の直鎖状炭化水素であって融点が40以上60℃未満の炭化水素油、
(E2)25℃で固形状のグリセリン脂肪酸トリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固形状油性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐水、耐油性に優れたメイクアップ化粧料が開発され、化粧持ちが著しく向上している。そのため、洗浄時には、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れ落ちに優れた油性クレンジング化粧料が用いられている。特に、油性クレンジング化粧料のうち、液状油をベースとした液状油性クレンジング化粧料は、メイクアップ化粧料とのなじみやすさに優れ、メイクの汚れ落ちの点でも優れている。しかしながら、液状の油性クレンジング化粧料は、粘度が低く、使用時にたれ落ちが生じやすいという問題があり、また、メイクアップ化粧料となじませる際や使用中の塗擦動作が直接肌に伝わりやすく、マッサージがしにくい、皮膚への負担や刺激が強く感じられるという問題もあった。
【0003】
液状油性クレンジング化粧料のたれ落ちを改善するために、例えば、固形油として石油・石油化学製品由来の合成ワックスである高融点ポリエチレンワックスを用いて増粘させた油性クレンジング化粧料が提案されている。しかしながら、高融点ポリエチレンワックスは、近年、環境への負荷として問題になっているプラスチック原料の一種と考えられることから、高融点ポリエチレンワックスを使用することは望ましくない。
【0004】
このような観点から、近年、例えば、天然ワックスであるヒマワリワックスを用いた油性化粧品組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-502623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが固形油としてヒマワリワックスを用いて固形状油性クレンジング化粧料を得ようとしたところ、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、メイク汚れ落ちに優れていながらも、たれ落ちにくく、また、メイクアップ化粧料となじませる際のマッサージ時の摩擦感が少なく、更に、洗浄後のさっぱり感を備えたクレンジング化粧料を得ることができなかった。
【0007】
また、固形製剤を提供する上で、成型性、保存安定性に優れた固形状油性クレンジング化粧料とすることも重要である。
【0008】
更に、近年、高級志向が高く、塗布時に皮膚が覆われているような厚みのある製剤が高級に感じられるとして好まれる傾向があり、例えば、透過率が低く高級感が感じられる化粧料、すなわち使用時の被膜形成能が高いクレンジング化粧料とすることが望ましいといえる。この点からも、従来、固形油として高融点ポリエチレンワックスが使用されているが、前述の通り、環境への負荷軽減志向から高融点ポリエチレンワックスに頼ることなく、被膜形成能が高い化粧料とできることが望ましい。
【0009】
そこで、本開示は、天然ワックスを用いながらも、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、メイク汚れ落ちに優れていながらも、たれ落ちにくく、また、メイクアップ化粧料となじませる際やマッサージ時の摩擦感が少なく、マット感を有しながらも洗浄後のさっぱり感を備えた固形状油性クレンジング化粧料を提供することを目的とする。また、本開示は、更に、成型性、保存安定性、また、使用時の被膜形成能の点でも優れた固形状油性クレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが前記課題を解決可能な化粧料を開発すべく鋭意研究を重ねたところ、ヒマワリワックスを固形油として用いると共に、アミドアルコール誘導体と、液状油と、特定のHLBのノニオン性界面活性剤とを併用し、且つ、液状油総量中、エステル油の含有量を35質量%以上とすることにより、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れ落ちに優れ、たれ落ちにくく、また、マッサージ時の摩擦感、マット感、洗浄後のさっぱり感、皮膜形成性に優れ、更に、固形製剤としての成型性、保存安定性の点でも優れた固形状油性クレンジング化粧料が得られることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げる態様を包含する。
項1.下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とする、固形状油性クレンジング化粧料:
(A)天然ワックスを該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(B)アミドアルコール誘導体を該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(C)エステル油を含有する液状油であって、該液状油100質量%中のエステル油の含有量が35質量%以上、
(D)HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を該化粧料100質量%あたり5~40質量%。
項2.前記天然ワックスが、ヒマワリワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、コメヌカワックス、ミツロウ、モンタンワックス及びマイクロクリスタリンワックスからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
項3.前記アミドアルコール誘導体が、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドである、項1または2に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
項4.更に、下記成分(E1)及び(E2)からなる群より選択される少なくとも1種を、化粧料100質量%あたり0.1~20質量%含有する、項1~3のいずれか一項に記載の固形状油性クレンジング化粧料:
(E1)植物由来の直鎖アルコールを脱水、蒸留及び水添して得られる炭素数20~30の直鎖状炭化水素であって融点が40以上60℃未満の炭化水素油、
(E2)25℃で固形状のグリセリン脂肪酸トリエステル。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れ落ちに優れ、たれ落ちにくく、また、メイクアップ化粧料となじませる際のマッサージ時の摩擦感、マット感、洗浄後のさっぱり感に優れ、更に、成型性、保存安定性、皮膜形成性の点でも優れた固形状油性クレンジング化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、 下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とする、固形状油性クレンジング化粧料を提供する。
(A)天然ワックスを該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(B)アミドアルコール誘導体を該化粧料100質量%あたり0.1~20質量%、
(C)エステル油を含有する液状油であって、該液状油100質量%中のエステル油の含有量が35質量%以上、
(D)HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を該化粧料100質量%あたり5~40質量%。
【0013】
成分(A)
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、天然ワックスを含有する。本分野においてワックスは、例えば「常温で固体、加熱すると液体となる有機物」と定義されているともいえ、大別すると天然ワックスと合成ワックスとの2つに分類されるといえるところ、本開示において天然ワックスとは、該分類のうち天然ワックスを意味する。
【0014】
本開示において天然ワックスは、化粧料成分として皮膚に適用可能であれば制限されず、本開示を制限するものではなく、モクロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、コメヌカワックス、ヒマワリワックス(ヒマワリ種子ロウ)等の植物ワックス、ミツロウ等の動物ワックス、モンタンワックス等の鉱物ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックスが例示される。本開示を制限するものではないが、天然ワックスとして好ましくは植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックスが例示され、より好ましくは植物ワックスが例示され、更に好ましくはヒマワリワックスが例示される。これらはいずれも1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本開示においてワックスは、常温(25℃)で固形状の油(固形油)であり、通常、天然ワックスとして、好ましくは融点40℃以上が例示され、より好ましくは融点50~90℃、更に好ましくは融点70~80℃が例示される。
【0015】
本開示を制限するものではないが、一例として、モクロウの融点として好ましくは40~60℃、より好ましくは50~55℃が例示される。同様に一例として、キャンデリラワックスの融点として好ましくは55~80℃、より好ましくは68~72℃が例示される。同様に一例として、カルナウバワックスの融点として好ましくは70~95℃、より好ましくは80~86℃が例示される。同様に一例として、コメヌカワックスの融点として好ましくは70~90℃、より好ましくは78~83℃が例示される。同様に一例として、ヒマワリワックスの融点として好ましくは60~85℃、より好ましくは70~80℃が例示される。
【0016】
同様に一例として、ミツロウの融点として好ましくは55~70℃、より好ましくは60~65℃が例示される。同様に一例として、モンタンワックスの融点として好ましくは65~90℃、より好ましくは78~83℃が例示される。同様に一例として、マイクロクリスタリンワックスの融点として好ましくは60~110℃、より好ましくは70~90℃が例示される。
【0017】
本開示において融点は、医薬部外品原料規格2006、一般試験法融点測定法第2法(平成21年6月30日)に従って測定した値である。
【0018】
本開示を制限するものではないが、例えばヒマワリワックスとしては、Koster Keunen社からSunflower Waxの呼称で販売されているワックスや、東亜化成株式会社からTOWAX-6F2の呼称で販売されているワックスを挙げることができる。
【0019】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料中、天然ワックスの含有量は、0.1~20質量%であり、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%が例示される。
【0020】
成分(B)
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、アミドアルコール誘導体を含有する。アミドアルコール誘導体としては、従来公知のアミドアルコール誘導体である限り制限されず、例えば、アミドアルコールの窒素上に炭化水素鎖基が置換した誘導体(例えば、次の一般式(I)で表される化合物)や、更に水酸基をエステル化した誘導体(例えば、次の一般式(II)で表される化合物)等が挙げられる。
【0021】
一般式(I)
【化1】
[式中、Rは、炭素数6~22の炭化水素基を示す。
は、水素原子または炭素数6~22の炭化水素基を示す。
は、炭素数2~21の二価の炭化水素基を示す。
、R、Rで示される炭化水素基上には、それぞれ独立して、水酸基、アリール基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、アシル基、イミダゾール基及びシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基が置換していてもよい。]
【0022】
一般式(II)
【化2】
[式中、R、R及びRは、前記と同じ。
は、炭素数5~42の炭化水素基を示す。該炭化水素基上には、水酸基、アリール基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、アシル基、イミダゾール基及びシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基が置換していてもよい。]
【0023】
一般式(I)及び一般式(II)において、R、R2、で示される炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、また、飽和及び不飽和のいずれであってもよい。
【0024】
本開示を制限するものではないが、R、Rで示される炭素数6~22の炭化水素基として好ましくは、それぞれ独立して、炭素数6~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数6~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素数6~22の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキニル基が例示される。該炭素数として、好ましくは炭素数10~20、より好ましくは炭素数12~20等が例示される。該アルケニル基において、二重結合の数や位置は制限されず、好ましくは二重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。該アルキニル基において、三重結合の数や位置は制限されず、好ましくは三重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。
【0025】
前述の通り、R、Rの該炭化水素基上には、それぞれ独立して、水酸基、アリール基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、アシル基、イミダゾール基及びシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基が置換していてもよい。このように、R、Rの該炭化水素基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよいが、好ましくは、R及びRの両方が無置換の炭化水素基が例示される。
【0026】
本開示を制限するものではないが、Rの炭素数2~21の炭化水素基として好ましくは、炭素数2~21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2~21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素数2~21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキニル基が例示される。該炭素数として、好ましくは2~15、より好ましくは2~10、更に好ましくは3~8が例示される。該アルケニル基において、二重結合の数や位置は制限されず、好ましくは二重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。該アルキニル基において、三重結合の数や位置は制限されず、好ましくは三重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。
【0027】
前述の通り、Rの該炭化水素基上には、水酸基、アリール基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、アシル基、イミダゾール基及びシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基が置換していてもよい。このように、Rの該炭化水素基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよいが、好ましくは無置換の炭化水素基が例示される。
【0028】
一般式(I)で表される化合物は、この限りにおいて制限されないが、好ましくは、該式中、Rとして、置換されていない炭素数12~20の直鎖状アルキル基、置換されていない炭素数12~20の直鎖状アルケニル基(二重結合の数1または2)または置換されていない炭素数12~20の直鎖状アルキニル基(三重結合の数1または2)が例示され、Rとして水素原子が例示され、且つ、Rとして置換されていない炭素数3~8の直鎖状アルキル基、置換されていない炭素数3~8の直鎖状アルケニル基(二重結合の数1または2)または置換されていない炭素数3~8の直鎖状アルキニル基(三重結合の数1または2)が例示される。また、一般式(I)で表される化合物は、より好ましくは、該式中、Rとして置換されていない炭素数12~20の直鎖状アルケニル基(二重結合の数1)が例示され、Rとして水素原子が例示され、且つ、Rとして置換されていない炭素数3~8の直鎖状アルキル基が例示される。
【0029】
更に、一般式(II)において、Rで示される炭化水素基も直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、また、飽和及び不飽和のいずれであってもよい。本開示を制限するものではないが、Rの炭素数5~42の炭化水素基として好ましくは、炭素数5~42の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数5~42の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素数5~42の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキニル基が例示される。該アルケニル基において、二重結合の数や位置は制限されず、好ましくは二重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。該アルキニル基において、三重結合の数や位置は制限されず、好ましくは三重結合の数は1~3、より好ましくは1または2が例示される。
【0030】
前述の通り、Rの該炭化水素基上には、水酸基、アリール基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、アシル基、イミダゾール基及びシラノール基からなる群より選択される少なくとも1種の基が置換していてもよい。このように、Rの該炭化水素基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよいが、好ましくは無置換の炭化水素基が例示される。
【0031】
本開示においてアミドアルコール誘導体は、この限りにおいて制限されないが、より好ましくは、N-オレイルヒドロキシヘキサナミド、N-ステアリルヒドロキシヘキサナミド等が例示される。例えば、N-オレイルヒドロキシヘキサナミドは、アミナクトール OLH(高級アルコール工業株式会社製)として市販されている。本開示を制限するものではないが、N-オレイルヒドロキシヘキサナミは、一般式(I)で表される化合物(Rが炭素数18の直鎖状アルケニル基(無置換、二重結合数1)、Rが水素原子、Rが炭素数5の直鎖状アルキレン基(無置換))である。
【0032】
本開示においてアミドアルコール誘導体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料中、アミドアルコール誘導体の含有量は0.1~20質量%であり、好ましくは1~15質量%が例示される。
【0034】
成分(C)
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、液状油を含有する。液状油としては、常温(25℃)で流動性を有する油であれば特に制限されない。また、本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、液状油としてエステル油を含む。
【0035】
液状油として、本開示を制限するものではないが、例えば、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリグリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸へキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、フッ素変性エステル油、トリオクタノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル等のエステル油;アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、セージ油、ローマカミツレ油、チョウジ油、ラベンダー油、カロットオイル、卵黄油、牛脚脂、肝油等の動植物油;α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等のシリコーン油;オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコールなどが挙げられる。
【0036】
本開示を制限するものではないが、液状油として、より好ましくはパルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル等のエステル油、植物性スクワラン、ホホバ油、カロットオイル、マカデミアナッツ油、オリーブ油等の動植物油、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ホホバアルコール等の高級アルコール等が例示される。
【0037】
また、本開示を制限するものではないが、例えば、液状油として、好ましくは、エステル油と、動植物油、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種とを配合することが例示される。また、本開示を制限するものではないが、例えば、液状油として、好ましくは、エステル油のみを配合することが例示される。
【0038】
本開示の化粧料は、このように液状油としてエステル油が配合されている限り制限されず、液状油はいずれも1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
また、本開示の固形状油性クレンジング化粧料はこのように液状油を含み、該液状油総量中、エステル油の含有量が35質量%以上である。この限りにおいて制限されないが、該化粧料において、液状油総量中、エステル油の含有量は好ましくは40質量%以上、より好ましくは45~100質量%、更に好ましくは55~100質量%が例示される。
【0040】
この限りにおいて制限されないが、本開示の化粧料中、液状油の含有量は、好ましくは40~85質量%が例示され、より好ましくは50~80質量%が例示され、更に好ましくは55~75質量%が例示される。
【0041】
成分(D)
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を含有する。本開示を制限するものではないが、該ニオン性界面活性剤として、より好ましくはHLB値が7~12.5、更に好ましくはHLB値が8~12のノニオン性界面活性剤が例示される。
【0042】
HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤として、本開示を制限するものではないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0043】
ノニオン性界面活性剤の具体例として、本開示を制限するものではないが、ステアリン酸ポリグリセリル-2(HLB:5)、オレイン酸ポリグリセリル-2(HLB:5.5)、トリイソステアリン酸グリセリル-2(HLB:5.5)、ステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB:6)、オレイン酸ポリグリセリル-4(HLB:6)、トリステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB:7.5)、トリオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB:7)、パルミチン酸ソルビタン(HLB:6.7)、イソステアリン酸ソルビタン(HLB:5)、PEG-5水添ヒマシ油(HLB:6)、PEG-10水添ヒマシ油(HLB:6.5)、セテス-2(HLB:8)、ステアレス-2(HLB:8)、オレス-2(HLB:7.5)、ベヘネス-5(HLB:7)、(C12-14)パレス-3(HLB:8)、ジ(C12-15)パレス-2リン酸(HLB:6.5)、トリ(C12-15)パレス-2リン酸(HLB:7)、ジ(C12-15)パレス-6リン酸(HLB:8)、トリステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:5)、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:5)、トリオレイン酸PEG-10グリセリル(HLB:5)、イソステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:8)、ジイソステアリン酸PEG-10グリセリル(HLB:7)、イソステアリン酸PEG-5グリセリル(HLB:8)、イソステアリン酸PEG-6グリセリル(HLB:8)、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:8)、カプリン酸ポリグリセリン(HLB:9.5)、トリイソステアリン酸PEG-30グリセリル(HLB:10)、イソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB:12)等が例示される。
【0044】
本開示を制限するものではないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を構成するポリオキシエチレンとして、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数は好ましくは10~40程度、より好ましくは20~30程度が例示される。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成するポリオキシエチレンとして、例えばポリオキシエチレンセチルエーテルの場合にはエチレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは5~9程度、より好ましくは5.5~7程度が例示される。脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルを構成するポリオキシエチレンとして、エチレンオキシドの平均付加モル数は好ましくは3~30、より好ましくは3~20程度、更に好ましくは5~15程度が例示される。
【0045】
該ノニオン性界面活性剤として、より好ましくは、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルが例示され、更に好ましくはイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルが例示される。これらにおいて更に好ましくは、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルのそれぞれにおいてエチレンオキシドの平均付加モル数が6~30であるノニオン性界面活性剤が例示される。
【0046】
HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
ここで、HLB(親水性-親油性バランス;Hydrophile-Lypophile Balance)値は、一般に界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法に従う値である。
【0048】
該化粧料中、HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤は5~40質量%であり、好ましくは10~35質量%が例示される。
【0049】
成分(E1)及び(E2)
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、更に、次の成分(E1)及び(E2)からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。
(E1)植物由来の直鎖アルコールを脱水、蒸留及び水添して得られる炭素数20~30の直鎖炭化水素であって融点が40以上60℃未満の炭化水素油、
(E2)25℃で固形状のグリセリン脂肪酸トリエステル。
【0050】
成分(E1)としては、本開示を制限するものではないが、その炭素数として、好ましくは20~26、より好ましくは22~24等が例示される。成分(E1)として、本開示を制限するものではないが、ドコサン等が例示される。本開示を制限するものではないが、ドコサンとして、例えばSasol社から販売されているPARAFOL22-95等を挙げることができる。成分(E1)は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
成分(E2)としては、本開示を制限するものではないが、好ましくはモノグリセリン脂肪酸トリエステルが例示される。また、グリセリン脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸として、本開示を制限するものではないが、好ましくは炭素数10~22の脂肪酸が例示され、より好ましくは炭素数12~20の脂肪酸が例示される。該脂肪酸は飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸の場合、炭素間の二重結合数は制限されず、例えば1~4、好ましく1~3、より好ましくは1または2が例示される。また、該脂肪酸は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0052】
グリセリン脂肪酸トリエステルを構成する脂肪酸として、本開示を制限するものではないが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸等、また、このような脂肪酸を含むヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、マカデミアナッツ油脂肪酸、アブラナ種子油脂肪酸等の脂肪酸が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
成分(E2)としては、本開示を制限するものではないが、具体的にはトリミリスチン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリベヘン酸グリセリン等が例示される。トリステアリン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリンとして、例えばナショナル美松株式会社から販売されているエステライドG-S、エステライドG-Mなどを挙げることができる。トリベヘン酸グリセリンとして、例えばクローダジャパン株式会社から販売されているSYNCROWAX HRCなどを挙げることができる。さらにはナショナル美松株式会社から販売されているHS OIL G-APのような混合脂肪酸エステルも使用することができる。成分(E2)は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本開示の固形状油性クレンジング組成物が、成分(E1)及び(E2)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合、その含有量は適宜設定すればよいが、皮膜形成性の一層の改善等の点から、その含有量は総量で、該化粧料中、好ましくは0.1~20質量%が例示され、より好ましくは1~10質量%が例示される。
【0055】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、本開示の効果を妨げないことを限度として、更に任意の他の成分を含有してもよい。該他の成分として、デキストリン脂肪酸エステル類、イヌリン脂肪酸エステル類等の油ゲル化剤、ベヘニン酸等の固形高級脂肪酸、ベヘニルアルコール等の固形高級アルコール、粉体、保湿剤、植物エキス、ビタミン類、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、消炎剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、香料、着色剤等が例示される。該他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、その配合量も本開示の効果を妨げない範囲で適宜決定すればよい。
【0056】
また、本開示を制限するものではないが、後述の実施例から理解できる通り、本開示によれば、固形油として高融点ポリエチレンワックスを用いない場合であっても、メイクアップ化粧料とのなじみやすさ、たれ落ちの無さ等の点で優れた固形状油性クレンジング化粧料を提供することができる。この点から、本開示を制限するものではないが、本開示の固形状油性クレンジング化粧料の好ましい一実施形態として、該化粧料中、高融点ポリエチレンワックスの含有量が5質量%以下、0~4質量%以下、0~1質量%未満等が例示される。
【0057】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料の剤形は、固形状であって、すなわち、常温(25℃)、常圧(1気圧)で流動性のないクレンジング化粧料であり、その形状は、棒状、板状、容器へ流し込み成型したもの等のいずれであってもよく、目的に応じて適宜設定すればよい。また、本開示の化粧料は油性であることから、好ましくは該化粧料中、水の含有量が3質量%未満であり、より好ましくは0~1%質量未満である。
【0058】
また、本開示を制限するものではないが、本開示の固形状油性クレンジング化粧料の一実施形態として、例えば、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)とを含有し、該組成物中、これらの含有量(総量)が60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%、95~100質量%、99~100質量%、99.6~100質量%等が例示される。
【0059】
また、本開示を制限するものではないが、本開示の固形状油性クレンジング化粧料の一実施形態として、例えば、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)と、前記成分(E1)及び前記成分(E2)からなる群より選択される少なくとも1種とを含有し、該組成物中、これらの含有量(総量)が60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%、95~100質量%、99~100質量%、99.6~100質量%等が例示される。
【0060】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)、必要に応じて前記成分(E1)及び/または前記成分(E2)、更に必要に応じて前記他の成分を、前述に従う含有量で適宜混合し、次いで固化することにより製造できる。これらの成分の混合順は特に制限されない。また、本開示を制限するものではないが、該混合は、例えば均一に混合する点から、通常、各成分が流動性を有する状態となる温度条件下で行うことができ、また、固化は、得られた混合物が固化する温度(例えば常温(25℃))で行うことができる。
【0061】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、皮膚(頭皮、粘膜等を含む)に適用可能である限り制限されない。該化粧料は、皮脂、汗、ほこり、毛穴の汚れ、ファンデーション、口紅、日焼け止め剤等をはじめとする皮膚の汚れを落とすために使用されるクレンジング用組成物として使用することができ、特に、ファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧料の洗浄に使用されるクレンジング用組成物として好ましく使用される。
【0062】
本開示の固形状油性クレンジング化粧料は、従来公知のクレンジング用の化粧料と同様にして皮膚に適用すればよい。この限りにおいて制限されないが、一例として、該化粧料の適量をそのままで、または必要に応じて水等の液体と接触させて、これを皮膚上で滑らせることにより使用すればよい。該化粧料の適用量や使用回数は、特に制限されず、例えば、従来公知の皮膚用のクレンジング化粧料等と同様にして使用すればよい。また、本開示の化粧料は、皮膚への適用後、水で洗い流してもよく、コットン等を用いてふき取って使用されるものであってもよく、制限されない。
【0063】
本開示によれば、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れが落ちやすく、たれ落ちにくく、マット感、洗浄後のさっぱり感にも優れているという利点を有しながらも、マッサージ時の摩擦感が軽減されることにより塗擦による皮膚への負担が少なく、更には、成型性、保存安定性、皮膜形成性の点でも優れている固形状油性クレンジング化粧料を提供することができる。
【実施例0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示についてより詳細に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。なお、表中、各成分の含有量は質量%である。
【0065】
油性クレンジング化粧料の調製(実施例1~10、比較例1~8及び参考例1)
次の表1及び2に示す組成に従い、油性クレンジング化粧料を調製した。具体的には、表1及び2に示す各成分を95~100℃で混合溶解し、得られた混合物50gを容器に流し込み、常温(25℃)で放置することにより冷却して固形状油性クレンジング化粧料(実施例1~10、比較例2~8及び参考例1)を得た。なお、参考例1の化粧料は、天然ワックスを配合せず、合成ワックス(表中、高融点ポリエチレンワックス)を配合した固形状油性クレンジング化粧料であり、参考例(従来品)として調製した。
【0066】
表2中、比較例1の化粧料は液状油性クレンジングであり、表2の比較例1に示す各成分を95~100℃で混合し、得られた混合物50gを容器に流し込み、常温で放置することにより調製した。
【0067】
得られた油性クレンジング化粧料について、メイクアップ化粧料とのなじみやすさ、たれ落ち、汚れ落ち、使用時のマット感、マッサージ時の摩擦感、洗浄後のさっぱり感を、次の手順に従い評価した。また、クレンジング化粧料の成型性、保存安定性、被膜形成性、クレンジング力について次の手順に従い評価した。
【0068】
評価手順
前述の通り調製した油性クレンジング化粧料を、20名の専門パネラーに使用してもらい、次の評価を行った。パネラーは、市販の口紅0.1gを皮膚(3cm×3cm)に均一に塗布し、塗布後1時間後に油性クレンジング化粧料2gを指に取り、1分間まんべんなく口紅全体に接するようにマッサージしながら口紅となじませた後、水(25℃)で洗い流した。この過程において「メイクアップ化粧料とのなじみやすさ」、「たれ落ち」、「使用時のマット感」、「汚れ落ち」、「マッサージの摩擦感」、「洗浄後のさっぱり感」を次の通り評価した。
【0069】
メイクアップ化粧料とのなじみやすさ
クレンジング化粧料を用いてマッサージ開始20秒後のメイクアップ化粧料とのなじみやすさを評価した。具体的には、クレンジング化粧料へのメイクの色移りが参考例1と同等もしくは同等以上に色移りした場合に「なじみやすい」とし、メイクの色移りが参考例1より劣る場合には「なじみにくい」とし、次の基準に従い4段階で評価した。なお、該評価ではパネラー間で予め照らし合わせて基準の統一化を図った。後述の各評価でも同様に、パネラー間で予め照らし合わせて基準の統一化を図った。
【0070】
<評価基準>
◎:非常に良好(なじみやすいと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (なじみやすいと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (なじみやすいと答えたパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (なじみやすいと答えたパネラーが5名未満)
【0071】
たれ落ち
クレンジング化粧料を用いて1分間のマッサージ終了後のたれ落ちを評価した。具体的には、クレンジング化粧料が垂れることなく(流れ落ちず)皮膚に残っている場合は「たれ落ちが無い」とし、液状の油が垂れてきている場合には「たれ落ちがある」とし、次の基準に従い4段階で評価した。
【0072】
<評価基準>
◎:非常に良好(たれ落ちが無いと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (たれ落ちが無いと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (たれ落ちが無いパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (たれ落ちが無いパネラーが5名未満)
【0073】
・汚れ落ち
クレンジング化粧料を用いてマッサージ終了し洗い流し後の皮膚上のメイク残りを評価した。具体的には、参考例1のクレンジング化粧料と比較し、メイク残りが同等もしくはそれ以上に少ない場合には「汚れ落ちが良い」とし、それより劣る(多い)場合には「汚れ落ちが悪い」とし、次の基準に従い4段階で評価した。
【0074】
<評価基準>
◎:非常に良好(汚れ落ちが良いと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (汚れ落ちが良いと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (汚れ落ちが良いとパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (汚れ落ちが良いとパネラーが5名未満)
【0075】
・使用時のマット感
クレンジング化粧料を用いてマッサージ開始20秒後のマット感を評価した。具体的には、参考例1と比較して、クレンジング化粧料による肌の被覆状態が同等もしくはそれ以上(不透明な膜に覆われている)場合には「使用時のマット感が良い」とし、それより劣る場合(透明感が高い)場合には「使用時のマット感が悪い」とし、次の基準に従い4段階で評価した。
【0076】
<評価基準>
◎:非常に良好(使用時のマット感が良いと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (使用時のマット感が良いと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (使用時のマット感が良いとパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (使用時のマット感が良いとパネラーが5名未満)
【0077】
・マッサージ時の摩擦感
クレンジング化粧料を用いてマッサージ中の摩擦感(重さ)を評価した。具体的には、参考例1と比較して、摩擦感(重さ)が同等もしくはそれ以上の摩擦感がある場合には「マッサージ時の摩擦感が高い」とし、それより劣る場合(軽い)場合には「マッサージ時の摩擦感が高くない」とし、次の基準に従い4段階で評価した。
【0078】
<評価基準>
◎:非常に良好(マッサージ時の摩擦感が高いと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (マッサージ時の摩擦感が高いと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (マッサージ時の摩擦感が高いとパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (マッサージ時の摩擦感が高いとパネラーが5名未満)
【0079】
・洗浄後のさっぱり感
クレンジング化粧料を用いてマッサージ終了し洗い流し後のさっぱり感を評価した。具体的には、参考例1のクレンジング化粧料と比較し、肌に油性感を感じるかどうかを評価し、油性感が同等もしくはそれより感じない場合には「さっぱり感が高い」とし、それより劣る(油性感を感じる)場合には「さっぱり感が低い」とし、次の基準に従い4段階で評価した。
【0080】
<評価基準>
◎:非常に良好(さっぱり感が高いと答えたパネラーが15名以上)
○:良好 (さっぱり感が高いと答えたパネラーが10名以上15名未満)
△:やや悪い (さっぱり感が高いとパネラーが5名以上10名未満)
×:悪い (さっぱり感が高いとパネラーが5名未満)
【0081】
・成型性
前述の調製手順と同様にして得た混合物80gを、プラスチック製透明ジャー容器(容量100g)に厚み7.5cmとなるように流し込み、常温(25℃)で静置冷却し(蓋なし)、容器への流し込みから6時間後に各油性クレンジング化粧料の外観を目視で観察し、次の基準に従い評価を行った。
【0082】
<評価基準>
◎:表面に凹凸がなく、目立った傷がない
○:表面に凹凸がなく、側面にひびが見られる
△:表面に僅かに凹凸が見られる
×:表面に明らかに凹凸が見られる
【0083】
なお、比較例1の化粧料でも表面に凹凸がなく傷がなかったが、比較例1の化粧料は液状油性クレンジング化粧料であって、固形状製剤特有の凹凸や傷が生じないことから、表2中の評価結果では「-」と記載した。
【0084】
・保存安定性
前述と同様にして混合物80gをプラスチック製透明ジャー容器(容量100g)に厚み7.5cmとなるように流し込み密閉し、常温で静置冷却後、往復恒温槽(5℃~35℃の温度サイクル恒温槽)で2ヶ月間静置保存し、保存安定性(外観、香り、使用性)を評価した。保存安定性は、2ヶ月間保存後の各油性クレンジング化粧料の外観、香り、使用性を、冷却直後の各油性クレンジング化粧料の外観、香り、使用性と比較することにより行った。ここで、外観は目視で観察し、香りは各油性クレンジング化粧料の匂いを直接嗅くことにより行い、使用性は前述のメイクアップ化粧料とのなじみやすさ、たれ落ち、汚れ落ち、使用時のマット感、マッサージ時の摩擦感及び洗浄後のさっぱり感の評価と同様にして行い、これらを次の基準に従い評価した。
【0085】
<評価基準>
◎:外観の変化が全くなく、香り及び使用性の変化もない。
○:外観の変化はほとんどなく、香り及び使用性に若干の変化を感じる。
△:僅かに発汗(液状物の漏れ出し)が認められ、香り及び使用性に変化を感じる。
×:明らかに発汗が認められ、香り及び使用性に明らかな変化を感じる。
【0086】
・被膜形成性
市販のPMMAプレート(アズワン製樹脂サンプルプレート:50mm×50mm×1mm)の片面上に、各クレンジング化粧料を9.2mg/cmになるように乗せ、指を使って30秒間一定の力で塗布し、化粧料を該プレート上に均一になるように広げてプレート試料を作製した。吸光光度計(UV-1800、島津製作所製)で450nmの波長にてプレート試料の透過率を測定、比較した。透過率が低いほど被膜形成能が高いと評価し、本開示のクレンジング化粧料として好ましいといえる(例えば、例えば92%以下、更には85%以下が好ましい。下限値は理論的に0%)。
【0087】
・クレンジング力
疑似皮膚(株式会社ビューラックス製、2cm×2cm)上に市販の赤色の口紅0.5gを均一に塗り広げ10分間放置した。油性クレンジング化粧料0.04gを計り取り、口紅を塗布した疑似皮膚上に置き、指を使って30秒間一定の力でマッサージし、マッサージ後、30秒間一定の水量で洗い流した。次いで、10分間乾燥後、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ株式会社製)にてa値(赤味)を測定した。クレンジング前の疑似皮膚のa値と、クレンジング後の疑似皮膚のa値との差をΔaとし(Δa=「クレンジング前の疑似皮膚のa値」-「クレンジング後の疑似皮膚のa値」)、Δa値が大きいほどクレンジング力が高いことを意味する。
【0088】
結果
結果を表1及び2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1に示す通り、天然ワックス、アミドアルコール誘導体、液状油及びHLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を含有する実施例1~10に示す固形状油性クレンジング化粧料では、メイクアップ化粧料とのなじみやすさ、たれ落ち、汚れ落ち、使用時のマット感、マッサージ時の摩擦感、洗浄後のさっぱり感といった使用性の評価が◎または○であった。また、実施例1~10に示す油性クレンジング化粧料では、成型性及び保存安定性の評価が◎または○であった。更に、これらの油性クレンジング化粧料では、被膜形成性の点でも優れており(透過率91%以下)、クレンジング力の点でも優れていた(Δa値21程度以上)。
【0092】
また、表1に示す通り、パネラーによるマット感の評価結果と、被膜形成性の評価結果とに相関性が認められ、被膜形成性が高い(透過率が低い、例えば透過率91%以下)場合に良好なマット感が得られ、皮膜形成性が一定以上(透過率85%以下)の場合により高いマット感が得られる傾向にあった。また、パネラーによる汚れ落ち評価結果と、分光光度計を用いたクレンジング力の評価結果にも相関性が認められた。これはパネラーによる評価が適切に行われていることを意味するともいえる。
【0093】
一方、表2に示す通り、液状油とHLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤とを含有するものの、天然ワックスとアミドアルコール誘導体とを含有していない比較例1の液状油性クレンジング化粧料では、前述の各種使用性の点で評価結果に×が多く認められ、前記実施例1~10よりも劣っており所望のクレンジング化粧料が得られなかった。また、比較例1の化粧料は液状であることから、たれ落ちが認められた。
【0094】
また、植物ワックスを含有しているものの、アミドアルコール誘導体及びHLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤の少なくとも一方を含有していない比較例2、3、5、7及び8の固形状油性クレンジング化粧料でも、前述の使用性、成型性、また、保存安定性の点で評価結果に△、×が多く認められ、前記実施例1~10よりも劣っており所望のクレンジング化粧料は得られなかった。また、アミドアルコール誘導体、液状油及びHLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を含有しているものの植物ワックスを含有していない比較例4の油性クレンジング化粧料でも、所望のクレンジング化粧料は得られなかった。更に、植物ワックス、アミドアルコール誘導体、HLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤及び液状油を含有しているものの、該液状油総量に占めるエステル油の含有量が22.4質量%と少ない比較例6においても、所望のクレンジング化粧料は得られなかった。
【0095】
また、前述の通り、参考例1の固形状油性クレンジング化粧料は、天然ワックスを配合せず、高融点ポリエチレンワックスを用いた化粧料であって、表2に示す通り、所望の効果が得られる従来公知のクレンジング化粧料であるといえるが、比較例2、3及び5~8に示す通り、高融点ポリエチレンワックスに代えて単に天然ワックスを用いただけでは、このような所望の効果は得られなかった。
【0096】
このことから、天然ワックス、アミドアルコール誘導体、液状油及びHLB値が5~13であるノニオン性界面活性剤を配合し、且つ、該液状油中のエステル油を一定以上の割合とすることにより、前記使用性、成型性及び保存安定性のいずれにおいても優れており、更に、被膜形成性やクレンジング力の点でも優れた固形状油性クレンジング化粧料が得られることが分かった。
【0097】
処方例
以下に示す処方に従い、固形状油性クレンジング化粧料を調製した。処方例1及び2の固形状油性クレンジング化粧料も、前記実施例の場合と同様に、前記使用性、成型性、保存安定性、被膜形成性、クレンジング力の点で優れた固形状油性クレンジング化粧料である。
【0098】
処方例1 含有量(質量%)
(A)ヒマワリワックス 4
(A)カルナウバワックス 1
(B)N-オレイルヒドロキシヘキサナミド 2
(C)植物性(サトウキビ由来)スクワラン 25
(C)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン 30
(C)パルミチン酸エチルへキシル 残部
(C)メチルフェニルポリシロキサン 5
(C)ホホバ油 0.2
(C)カロットオイル 0.2
(C)マカデミアナッツ油 0.2
(D)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(HLB8.0) 10
(E1)ドコサン 1
メトキシケイヒ酸エチルへキシル 適量
香料 適量
合計 100
【0099】
処方例2 含有量(質量%)
(A)ヒマワリワックス 5
(A)コメヌカワックス 2
(B)N-オレイルヒドロキシヘキサナミド 3
(C)パルミチン酸エチルヘキシル 20
(C)イソノナン酸イソデシル 25
(C)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン 残部
(D)カプリン酸ポリグリセリン(HLB9.5) 11
(E1)ドコサン 1
(E2)トリステアリン酸グリセリン 2 ジステアリン酸デキストリン 適量
メトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル 適量
メトキシケイヒ酸エチルへキシル 適量
トコフェロール 適量
色素 適量
香料 適量
合計 100