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特開2023-87628同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087628
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20230616BHJP
   F24T 10/17 20180101ALI20230616BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20230616BHJP
【FI】
F03G4/00 521
F24T10/17
F24T50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113692
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2022517487の分割
【原出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】596092388
【氏名又は名称】株式会社サイネットカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】小田原 修
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 康夫
(57)【要約】
【課題】発電効率を向上させ、移動媒体を循環して使用することができる発電装置及び発電方法を提供すること。
【解決手段】熱源帯に形成された坑内に配置された移動媒体貯留槽と、前記移動媒体貯留槽に移動媒体を供給するための移動媒体供給部と、前記移動媒体貯留槽の上方の低温域と下方の高温域の間を流動する移動媒体の駆動力により発電する発電部と、を備えた発電装置であって、前記移動媒体貯留層は、前記移動媒体供給部と連通した外管と前記移動媒体を循環するための内管とを配置し、前記移動媒体貯留槽内に設置した外管と内管に前記移動媒体の流動方向を軸としてそれぞれ逆方向に回転する回転翼を備えることを特徴とする同軸循環型発電装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源帯に形成された坑内に配置された移動媒体貯留槽と、
前記移動媒体貯留槽に移動媒体を供給するための移動媒体供給部と、
前記移動媒体貯留槽の上方の低温域と下方の高温域の間を流動する移動媒体の駆動力により発電する発電部と、を備えた発電装置であって、
前記移動媒体貯留層は、前記移動媒体供給部と連通した外管と前記移動媒体を循環するための内管とを配置し、
前記移動媒体貯留槽内に設置した前記外管と前記内管に前記移動媒体の流動方向を軸としてそれぞれ逆方向に回転する回転翼を備えることを特徴とする同軸循環型発電装置。
【請求項2】
前記移動媒体供給部は、前記移動媒体を圧縮及び冷却し高密度な状態に変化させるための高密度化装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項3】
前記移動媒体貯留部は、熱溜機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項4】
前記外管は、前記移動媒体の流動方向に伸縮力が作用する管構造機能を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項5】
前記移動媒体は、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項6】
前記移動媒体貯留槽の外管及び内管は、前記移動媒体の流動方向を回転軸とした回転翼の上流側にラバルノズルを配置することによる前記移動媒体の流動速度加速機能を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項7】
前記回転翼は、回転と連動する回転電機子からなる発電機能を備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の同軸循環型発電装置。
【請求項8】
熱源帯に形成された坑内に配置された移動媒体貯留槽に移動媒体を供給する工程と、前記移動媒体貯留槽の底部に到達するまでに超臨界化した移動媒体を前記熱源帯の上方に導出する工程と、
前記超臨界化した移動媒体により同軸循環型発電をする工程と、を含むことを特徴とする同軸循環型発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源帯からの熱を間接的に利用して循環性を高めた移動媒体により発電する同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法に関する。さらに、詳しくは、二酸化炭素等を熱エネルギー、特に熱源帯が有する熱エネルギーの移動媒体とすることにより同軸循環型発電の発電効率の向上及び同軸循環型発電の循環機能の円滑化を図ることができる同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化現象や原子力発電に対する警戒感から、太陽光発電、風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギー関係の発電が注目されている。地熱発電は、高温のマグマ溜まりからの半永久的な熱エネルギーを利用するものであり、太陽の核融合エネルギーを由来としない数少ない発電の一つである。地熱発電は、ウラン、石油、石炭、オイルシェール、天然ガス等の将来的には枯渇するエネルギーには依存しない。同時に、地熱発電は、地球温暖化、大気汚染等の防止策ともなることから、環境保全及びエネルギー安全保障の観点から利用拡大が図られている。
【0003】
このような観点から、熱源帯から得られた熱量を地上において有効に利用し、発電効率を高めることができる地熱発電装置が提案されている(例えば、特許文献1)。さらに、熱源帯から得られた熱を地上において移動媒体により有効に利用するために、その当該移動媒体を移送する熱媒体移送管の保温する能力を高めることが可能な地熱発電システムが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-200161号公報
【特許文献2】特開2018-080664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載された地熱発電装置等は、熱源帯から得られた熱を地上において利用するための移動媒体として主に温泉等から発生する水蒸気を用いているため、発電効率が高くない。しかも、地熱発電装置に使用された後の移動媒体である水蒸気は、凝縮冷却して還元井を通して地下に戻しているため、移動媒体を循環して使用していない。また、熱源帯から得られた熱を地上において利用するための移動媒体は、温泉等から発生する水蒸気であることが多い。温泉等から発生する水蒸気には温泉水の成分に由来する硫黄等の不純物が混ざっている。また、移動媒体のpHや成分は使用する地熱環境によって異なる。したがって、発電を担う熱を供給する井戸や発電装置を構成する配管類やタービンの羽根等には、腐食・浸食・腐食疲労やスケールの付着などが影響する。その影響により、経年的に発電量が減少し、長期間の使用が困難となる。そこで、本発明の目的は、熱源帯のような自然環境が様々である条件での発電の発電効率を向上させるために、一般的な地熱発電システムでは対として必須な坑井である生産井と還元井のいずれか一方の単一坑の下方に存在する高温エネルギーを有効利用する発電システムを構築し、低粘性で化学的に安定な超臨界二酸化炭素などの小さな温度差で大きな体積変化による駆動を可能とする移動媒体を循環して使用することができる同軸の入出孔を形成した同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
(1)熱源帯に形成された坑内に配置された移動媒体貯留槽と、
前記移動媒体貯留槽に移動媒体を供給するための移動媒体供給部と、
前記移動媒体貯留槽の上方の低温域と下方の高温域の間を流動する移動媒体の駆動力より発電する発電部と、を備えた発電装置であって、
前記移動媒体貯留槽は、前記移動媒体供給部と連通した外管と前記移動媒体を循環するための内管とを配置し、
前記移動媒体貯留槽内に設置した前記外管と前記内管に、前記移動媒体の流動方向を軸としてそれぞれ逆方向に回転する回転翼を備えることを特徴とする同軸循環型発電装置。
(2)前記移動媒体供給部は、前記移動媒体を圧縮及び冷却し高密度な状態に変化させるための高密度化装置を備えていることを特徴とする(1)に記載の同軸循環型発電装置。
(3)前記移動媒体貯留槽は、熱溜機構を備えていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の同軸循環型発電装置。
(4)前記外管は、移動媒体の流動方向に伸縮力が作用する管構造機構を備えることを特徴とする(1)~(3)いずれか1に記載の同軸循環型発電装置。
(5)前記移動媒体は、二酸化炭素であることを特徴とする(1)~(4)のいずれか1に記載の同軸循環型発電装置。
(6)前記移動媒体貯留槽の外管及び内管は、前記移動媒体の流動方向を回転軸とした回転翼の上流側にラバルノズルを配置することによる移動媒体の流動速度加速機能を備えることを特徴とする(1)~(5)いずれか1に記載の同軸循環型発電装置。
(7)前記回転翼は、回転と連動する回転電機子からなる発電機能を備えていることを特徴とする(1)~(6)いずれか1に記載の同軸循環型発電装置。
(8)熱源帯に形成された坑内に配置された移動媒体貯留槽に移動媒体を供給する工程と、前記移動媒体貯留槽の底部に到達するまでに超臨界化した移動媒体を前記熱源帯の上方に導出し循環する工程と、
前記超臨界化した移動媒体の循環により同軸循環型発電をする工程と、を含むことを特徴とする同軸循環型発電方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱源帯からの熱エネルギーによる発電の発電効率を向上させ、移動媒体を循環して使用することができる同軸循環型発電装置及び同軸循環型発電方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の同軸循環型発電装置の概要を示した図面である。
図2】第1実施形態の同軸循環型発電装置が備えている移動媒体貯留層の断面を示した図である。
図3】第2実施形態の同軸循環発電装置が備えている移動媒体の高密度化装置の構造を示した図面である。
図4】第3実施形態の同軸循環発電装置が備えている熱溜機構の概要を示した図面である。
図5】第4実施形態~第6実施形態の管構造機能と流動加速機能を備えた同軸循環型発電装置の回転発電部の概要を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の例示的な実施形態について、以下に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、工程、処理の流れ等はあくまで一例であり、本発明の技術的範囲をそれらの記載のみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発電装置の概要を示した図面である。図1に示されるように本実施形態の同軸循環型発電装置100は、熱源帯101に形成された抗内111に配置されている。同軸循環型発電装置100は、熱源帯101の下方の高温域112に配置された移動媒体貯留槽102を備えている。移動媒体貯留槽102は、熱源帯101の下方の高温域112が形成する高温と高圧の下で固体から液体、さらに超臨界流体に変態する移動媒体を貯留する。さらに、発電装置100は、移動媒体貯留槽102に移動媒体を供給するための移動媒体供給部104を備えている。移動媒体供給部は凝縮器117と冷却器119で構成されている。移動媒体貯留槽102は、移動媒体供給部104から供給された移動媒体を底部121に移動させるための外管123と下方高温域112における加熱に伴い超臨界状態の移動媒体の密度を低下させ、いわゆる熱サイフォン作用により移動媒体を熱源帯101の上方低温域114に導出するための内管122を備えている。熱サイフォン作用は、移動媒体の下降と上昇における密度変化が大きいほど大きくなる。低温熱溜部108から導入する移動媒体は、移動媒体貯留槽102に備えた回転発電部105を通過後に外管123内に導き合流下降させるため備えた外管補助層125を通り下降する。回転発電部105には、外管補助層125内の移動媒体の下降流で回転する回転円環140と外管123内の移動媒体の下降流で回転円環140に対して反回転するリング状回転翼141が備えられ、さらにリング状回転翼141の内側は、外管122内の移動媒体の上昇流で回転する回転翼142に連動している。回転円環140外周部、リング状回転翼141の外周部と内周部、及び回転翼142外周部には、磁石電機子161あるいはコイル電機子162を備え、同じ軌道を逆回転する電機子間の電磁誘導作用で回転エネルギーを電気エネルギーに変換させる。
【0011】
下方高温域112から上方低温域114へ向けて内管122内を上昇する移動媒体は、発電部105に供給される。発電部105は、タービン151及び発電機152を備えている。密度低下による体積膨張で加速された移動媒体は、タービン151を回転させる。発電機152は、タービン151の回転により発生した機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換することにより発電を行う。タービン151で使用された移動媒体は回収され、圧縮ポンプ116により圧縮され低温熱溜部108を通過し、移動媒体凝縮器117に収容され循環される。
【0012】
このように、本実施形態の同軸循環型発電装置100によれば、移動媒体貯留槽102の内部に閉空間を形成し、移動媒体の相変化に伴う移動媒体の大きな体積変化と圧力変化を利用することによって、地熱発電の発電効率を向上することができる。さらに、同時期循環型発電装置100は、熱源帯101の下方の高温域112に配置された移動媒体貯留槽102の底部121において、移動媒体の超臨界状態を形成することができる。このため、発電装置100は、移動媒体の超臨界状態を形成することによって、加熱に伴い低密度化された移動媒体を上方低温域114に導出するために必要な高圧ポンプ等の装置を別途設置することなく、移動媒体を円滑に移動させ、かつ循環させることができる。
【0013】
図2は、本実施形態の発電装置100が備えている移動媒体貯留槽102の断面200を示した図である。図2に示されるように、移動媒体貯留槽の断面200は、外管123と内管122とを備え、移動媒体貯留槽102に配置された回転発電部105より上方に外管補助層125と内管保温層124を備えている。また、移動媒体貯留槽102は、外管123と内管122からなる二重管構造を採用してもよいし、外管123と内管122との間にさらに別の内管を設けて、多重管構造としてもよい。
【0014】
外管123は、移動媒体供給部104と連通している。外管123の外側に沿って形成された外管補助層125は、移動媒体供給部104のインジェクションポンプ119を介して高密度化され供給された移動媒体が下降し伸縮管構造部115から回転発電部を通過し外管123と合流する流路を構成する。
【0015】
移動媒体の下降流と上昇流の流路に水平に配置した回転発電部105では、外管補助層145を下降し回転円環143へ流入する移動媒体に角運動量を与えるために、回転円環143の上流側に伸縮管構造部115を備え、移動媒体の流体エネルギーを回転エネルギーに変換する。外管123落下する移動媒体を、回転円環143の内側に配置したリング状回転翼141の上流側に備えたラバルノズル部113を通過させることで加速し、リング状回転翼141を回転させ、移動媒体の流体エネルギーを回転エネルギーに変換する。さらに、内管122内を上昇する移動媒体を内管122内に配置したラバルノズル113を通過させることで加速し、下流側に配置した回転翼142の回転を誘導する。移動媒体の下降流と上昇流のエネルギーを電気エネルギーに効率よく変換するために、回転円環143とリング状回転翼141及びリング状回転翼141と回転翼142の回転方向をそれぞれ逆回転とし、その両回転力を回転子に伝え電力を発生させる。このように互いに逆方向に回転し、回転動力を内外二重の回転子にそれぞれ伝えることにより、両回転子間における相対速度は倍になり、発電性能は向上する。
【0016】
例えば、移動媒体の蒸気圧が高い場合には、移動媒体の状態は、固体から液体に状態変化する。一方、移動媒体の蒸気圧が低い場合には、移動媒体の状態は、固体から液体に状態変化した後、さらに液体から期待に状態変化する。高温・高圧の領域では、気体と液体の境界がなくなり、気体と液体の中間的な性質を持つ流体(超臨界流体)として振舞う。圧縮状態で低温熱溜部108を通過した移動媒体は、高密度化され外管123の内部に形成された流路を通過し、移動媒体貯留槽の底部121に到達するまでに状態変化し、密閉空間の体積膨張の加速で形成される高圧環境の下で高密度な超臨界状態の移動媒体となる。底部121では下方高温高圧域112における加熱に伴い超臨界状態の移動媒体の密度を低下させ、いわゆる熱サイフォン作用により外管123から流入する移動媒体の引き込みを加速させ移動媒体を低温の上方へ上昇させ循環する。
【0017】
外管123は、熱源帯101の上方低温域114から地下方向に延設されている。外管123の底部121は、熱源帯101の下方高温域112熱源帯に達していることが望ましい。移動媒体の超臨界状態が維持される環境が形成されるならば特に制限されるものではないが、例えば坑内111に鉛直に配置される場合には、底部121において移動媒体に臨界圧力以上の圧力が作用する長さであることが好ましい。
【0018】
内管122は、超臨界化した移動媒体を移動媒体貯留槽102の底部221から熱源帯101の上方大気開放域114に導出するための管である。図2において、内管122の移動媒体貯留槽102に形成された回転発電部105より下流側には、上昇する移動媒体の高温環境を維持するために、内管保温層124が内管122を取り囲んで形成されている。
【0019】
内管122内を上昇流として通過した移動媒体は、上方に設置されたタービン駆動のために流体エネルギーを供給する。タービンが駆動することにより発生した機械的エネルギーは電気的エネルギーに変換される。
【0020】
移動媒体は、移動媒体貯留槽の系内において、状態変化をして最終的に気体となることができる物質であれば特に制限されるものではない。例えば、移動媒体が移動媒体貯留槽の系内で取り得る条件下において、固定から気体に状態変化できる物質であると、状態変化に伴う密度変化の幅が大きくなる。このため、移動媒体貯留層の系内における圧力変化がきわめて大きくなり、より大きい流体による機械的エネルギーを発生させることができる。
【0021】
移動媒体としては、例えば、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の低分子炭化水素、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン系炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アンモニア、メタノール、エタノール、アセトン、これらの混合物等を例示することができるがこれらに制限されるものではない。
【0022】
これらの中でも、二酸化炭素及び水は、超臨界状態を形成することができるため好ましい。二酸化炭素は、超臨界状態を形成することができる超臨界流体物質である。超臨界流体物質は、液体と気体の療法の状態の中間の特性を有する。すなわち、超臨界流体物質は、液体の密度を有しつつ、気体が有する流動性を備えている。このため、超臨界流体物質は、圧力又は温度の微小な変化により、その密度が大きく変化する。したがって、超臨界流体物質は、より少ない仕事量で熱を電気エネルギーに変化することができる熱の移動媒体であるということができる。
【0023】
また、超臨界二酸化炭素は、化学的に不活性であり、腐食されることがなく、しかも水と比較して大きい拡散速度を有する。このため二酸化炭素は、本実施形態の地熱発電装置に使用される熱の移動媒体として好ましい。すなわち、二酸化炭素は、より少ない仕事量で熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる熱の移動媒体であることが理解できる。
【0024】
さらに、超臨界流体物質は、液体とほぼ同程度の密度を有している。このため、発電機であるタービンの圧縮機が必要とするポンピング力が少量で済むことから、発電に必要なエネルギーを節約することができる。特に、超臨界二酸化炭素の臨界点における密度は、同温度における水の密度の約半分である。このため、二酸化炭素は、蒸気の状態に比較して、圧縮が容易であり、当該圧縮段階で行われる仕事量をきわめて減少させることができる。
【0025】
このように本実施形態の同軸循環型発電装置は、熱の移動媒体を当該装置の系内において循環して使用することができる。また、本実施形態の同軸循環型発電装置は、熱の移動媒体と熱源に到達させ、発電に使用した超臨界化した移動媒体の回収に必要とする労力も少なくすることができる。特に、本実施形態の同軸循環型発電装置は、熱の移動媒体として超臨界二酸化炭素を用いることにより、発電所よりも小型、かつより安価な圧縮気及びタービンで機能することができる。さらに、本実施形態の同軸循環型発電装置は、熱の移動媒体として超臨界二酸化炭素を用いることにより、コンパクトで非常に効率的な発電装置の構成を可能にする。本実施形態の同軸循環型発電装置が備えているタービンは、いくつかのタービン段および関連する配管系をより単純に設計することができる。
【0026】
<第2実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電装置は、密閉循環過程で回収した移動媒体を高密度状態に変化させるための高密度化装置を備えていること以外は、第1実施形態の同軸循環型発電装置と同様である。以下、本実施形態の同軸循環型発電装置の特徴的部分である移動媒体の高密度化装置について説明する。
【0027】
図3は、本実施形態の発電装置が備えている移動媒体の高密度化を担う移動媒体供給部の概観300を示した図である。図3に示されるように、移動媒体の高密度化は凝縮器117とインジェクションポンプ119により達成され、移動媒体を気体状態より高密度な凝縮状態に変化させる。
【0028】
また、移動媒体供給部104は、高密度化した移動媒体を移動媒体貯留槽に供給する。移動媒体供給部104は、高密度化した移動媒体を移動媒体貯留槽102に供給する。
【0029】
移動媒体供給部104は、移動媒体貯留槽102からタービン151を通過し密閉循環過程で回収された移動媒体を原料として、高密度化された移動媒体を製造する。タービン151を通過後に回収された移動媒体は、移動媒体供給部104において、冷却し加圧させることによって高密度な凝縮状態の移動媒体となる。
【0030】
移動媒体凝縮器117により凝縮した移動媒体は、一旦移動媒体貯蔵タンク118に貯蔵され、その後インジェクションポンプ119を介して低温熱溜部108に供給される。
【0031】
<第3実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電装置は、移動媒体貯留槽が熱溜機構を備えていること以外は、上記実施形態の同軸循環型発電装置と同様である。以下、本実施形態の同軸循環型発電装置の熱溜機構の特徴的部分である低温熱溜部について説明する。
【0032】
図4は、移動媒体貯留槽が備えている熱溜機構のモデル400を示した図である。図4に示されるように、熱溜機構を担う低温熱溜部108は、タービン151より回収され圧縮ポンプ116で圧縮された移動媒体の通路を備え、さらに移動媒体供給部から流量制御バルブ131を通して流入させた移動媒体を熱源帯101に供給するための外管補助層125に繋げるように構成されている。
【0033】
<第4実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電装置は、外管補助層内に折り紙技法による伸縮力が作用する管構造を備え回転発電部を構成する回転円環の回転の効率を向上させていること以外は、上記実施形態の発電装置と同様である。以下、本実施形態の同軸循環型発電装置の特徴的部分である伸縮力が作用する管構造について説明する。
【0034】
図5は、本実施形態の発電装置が備えている回転発電部105の構成要素である回転円環143の回転に作用する移動媒体の流路である外管補助層125の上流側に配置した折り紙技法による伸縮力が作用する管構造を含む回転発電部の断面500を示す図である。図5に示されるように、管構造500は、内壁501及び内壁502から構成される内管の内部に圧縮力が作用する部位503を備えている。部位503は、内管の内部の圧力に応じて、伸縮することができる伸縮部504を備えている。図5に示されるように、移動媒体の下降流と上昇流の流路に水平に配置した回転発電部105では、外管補助層145を下降し回転円環143へ流入する移動媒体に角運動量を与えるために、回転円環143の上流側に伸縮管構造部115を備え、移動媒体の流体エネルギーを回転エネルギーに変換する。外管123落下する移動媒体を、回転円環143の内側に配置したリング状回転翼141の上流側に備えたラバルノズル部113を通過させることで加速し、リング状回転翼141を回転させ、移動媒体の流体エネルギーを回転エネルギーに変換する。外管補助層145内に形成した折り紙技法による伸縮力が作用する管構造部115は、回転円環143の回転に効率的に作用する角運動量を移動媒体に与える。さらに、内管122内を上昇する移動媒体を内管122内に配置したラバルノズル113を通過させることで加速し、下流側に配置した回転翼142の回転を誘導する。移動媒体の下降流と上昇流のエネルギーを電気エネルギーに効率よく変換するために、回転円環143とリング状回転翼141及びリング状回転翼141と回転翼142の回転方向をそれぞれ逆回転とし、その両回転力を回転子に伝え電力を発生させる。このように互いに逆方向に回転し、回転動力を内外二重の回転子にそれぞれ伝えることにより、両回転子間における相対速度は倍になり、発電性能は向上する。
【0035】
<第5実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電装置は、内管がラバルノズルを備えていること以外は上記実施形態の発電装置と同様である。以下、本実施形態の同軸循環型発電装置の特徴的部分であるラバルノズルについて説明する。図7は、本実施形態の発電装置700が備えているラバルノズルが備えている移動媒体貯留槽は、内管と外管とを備えている。外管は、内壁701と外壁702から構成されている。本実施形態の同軸循環型発電装置の特徴的部分であるラバルノズルは、移動媒体が通過する流路の一部を狭くした部分を設けることによって、移動媒体の流れを加速することができる。本実施形態の同軸循環型発電装置が備えているラバルノズルは、移動媒体が通過する流路の一部を狭くした部分が設けられていれば、その形態は特に限定されるものではない。ラバルノズル構造は、外管に1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよいし、ノズルの出口形状は円形ばかりでなく部分円環形でもよい。また、流路の一部を狭くした部分が狭くしていない部分と段差があってもよいし、緩やかに曲線を描いて狭くなって構成されていてもよい。
【0036】
<第6実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電装置は、移動媒体貯留槽102の回転発電部105に備えた回転円環140とリング状回転翼141及び回転翼142に付帯する磁石電機子161とコイル電機子162間の電磁誘導作用で回転エネルギーを電気エネルギーに変換させること以外は、上記実施形態の地熱発電装置と同様である。以下、本実施形態の地熱同軸循環型発電装置の特徴的部分である回転発電部について説明する。
【0037】
回転発電部105には、外管補助層125内の移動媒体の下降流で回転する内周に磁石電機子161を備えた回転円環140と外管123内の移動媒体の下降流で回転円環140に対して反回転する外周にコイル電機子162を内周に磁石電機子161を備えたリング状回転翼141が配置され、さらに外管122内の移動媒体の上昇流で回転する回転翼142にコイル電機子162を備える。
【0038】
回転円環140外周部、リング状回転翼141の外周部と内周部、及び回転翼142外周部に備える磁石電機子161あるいはコイル電機子162は、同じ軌道の逆回転を効率的に利用して電機子間に電磁誘導を作用すればよく、その配置についての制限はない。また、リング状回転翼141と回転翼142の回転連動部163について、外管と内管が隔離されるならば磁気ギア機構やベアリング機構を利用してよく、特段の制約はない。
【0039】
さらに、回転円環143とリング状回転翼141及びリング状回転翼141と回転翼142の回転方向をそれぞれ逆回転による回転子間における相対速度を倍にして、磁石電機子の配置を磁束密度が大きくなるハルバッハ配列型やアキシャルギャップ型として発電性能を向上すればよく、必ずしもネオジム磁石などを用いる必要はなく、一般的なフェライト磁石を選択してもよい。
【0040】
<第7実施形態>
本実施形態の同軸循環型発電方法は、熱源帯に形成された坑内111に配置され、前記熱源帯の下方の高温域に配置された移動媒体貯留槽に移動媒体を供給する工程と、前記移動媒体貯留槽の底部に到達するまでに超臨界化した移動媒体を前記熱源帯の上方に導出する工程と、前記超臨界化した移動媒体により同軸循環型発電をする工程とを含む。以下各工程について説明する。
【0041】
(移動媒体貯留槽に移動媒体を供給する工程)
本実施形態の同軸循環型発電方法は、移動媒体貯留槽に移動媒体を供給する工程を含む。凝縮状態の移動媒体は、移動媒体供給部から移動媒体貯留槽に供給される。移動媒体は、移動媒体貯留層の内部に形成された外管から形成される経路を通過して、低密度化と体積膨張を繰り返し加速しながら下降し、下方の高圧環境に到達することで超臨界状態の移動媒体となる。移動媒体貯留槽の底部の高温域に晒されることで、超臨界移動媒体の密度は低下する。
【0042】
(超臨界化した移動媒体を熱源帯の上方に導出する工程)
本実施形態の発電方法は、さらに、超臨界化した移動媒体を熱源帯の上方に導出する工程を含む。低密度化した超臨界状態の移動媒体は、熱サイフォン作用により、移動媒体貯留槽の内部に形成された内管から形成される経路を通過して、上方低温域に導出される。
【0043】
(超臨界化された移動媒体により発電をする工程)
本実施形態の発電方法は、超臨界化した移動媒体により地熱発電する工程を含む。超臨界化した移動媒体の流体エネルギーは、発電装置の発電部が備えているタービンによって機械的エネルギーに変換される。さらに、タービンによって機械的エネルギーは、発電部が備えている発電機により電気的エネルギーに変換される。
【0044】
<他の実施形態>
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせた装置又はプロセスも本願発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の地熱発電装置は、熱源帯が有する熱エネルギーを有効に利用することができるので、エネルギー産業の発達に寄与することができる。また、本発明の発電装置は、熱の移動媒体として超臨界流動物質を使用し、循環して熱の移動媒体を使用することができるので地球環境にもやさしくクリーンなエネルギーを提供することができる。さらに、本発明の発電装置は、地球のみならず熱源を有する火星等の他の惑星においても有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100 発電装置
101 熱源帯
102 移動媒体貯留槽
104 移動媒体供給部
105 回転発電部
108 低温熱溜部
111 坑内
112 下方高温域
113 ラバルノズル部
114 上方低温域
115 伸縮管構造部
116 移動媒体圧縮ポンプ
117 移動媒体凝縮器
118 移動媒体貯蔵タンク
119 インジェクションポンプ
121 底部
122 内管
123 外管
124 保温層
131 流量制御バルブ
132 逆止弁
141 リング状回転翼
142 回転翼
151 タービン
152 発電機
161 磁石電機子
162 コイル電機子
163 回転連動部
図1
図2
図3
図4
図5