(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087632
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】アンモニウムおよび炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法および希土類酸化物の使用
(51)【国際特許分類】
C01F 17/229 20200101AFI20230616BHJP
C01F 17/241 20200101ALI20230616BHJP
C01F 17/235 20200101ALI20230616BHJP
【FI】
C01F17/229
C01F17/241
C01F17/235
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130352
(22)【出願日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202111514433.5
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521181781
【氏名又は名称】包頭稀土研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】馬升峰
(72)【発明者】
【氏名】許延輝
(72)【発明者】
【氏名】李裕
(72)【発明者】
【氏名】関衛華
(72)【発明者】
【氏名】高凱
(72)【発明者】
【氏名】宋静
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB04
4G076AB09
4G076BA15
4G076BA39
4G076CA01
4G076DA07
4G076DA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】焼成時間が短く、希土類回収率が高く、かつ、アンモニウムおよび炭素資源の再利用率が高い、希土類酸化物の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の希土類炭酸塩及び第1の希土類酸化物を含む原料を、マイクロ波加熱によって500~1000℃で20~120分間焼成して第2の希土類酸化物及び二酸化炭素を得るステップ(1)、二酸化炭素を第1のアンモニア水と反応させて沈殿剤を得るステップ(2)、および、沈殿剤を希土類塩化物と反応させて第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得るステップ(3)を含むアンモニアと炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法であって
第1の希土類炭酸塩及び第1の希土類酸化物を含む原料を、マイクロ波加熱によって500~1000℃で20~120分間焼成して第2の希土類酸化物及び二酸化炭素を得るステップであって、前記希土類酸化物の使用量が希土類炭酸塩の1~30wt%であるステップ(1)、
二酸化炭素を濃度10~20wt%の第1のアンモニア水と反応させて沈殿剤を得るステップ(2)、および、
沈殿剤を希土類塩化物と反応させ、第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウムの廃水を得るステップ(3)、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の希土類炭酸塩は、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジムから選ばれた1種または複数種であり、前記第1の希土類酸化物は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジムから選ばれた1種または複数種であり、前記希土類塩化物は、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化プラセオジム、塩化ネオジムから選ばれた1種または複数種であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の希土類炭酸塩、第1の希土類酸化物及び希土類塩化物において、希土類元素が同じであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
沈殿剤の全アルカリ度が2~5mol/Lであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、沈殿剤と希土類塩化物とを20~60℃の条件で0.5~5h反応させ、そして0.5~10hエージングして反応生成物を得、反応生成物をろ過してそれぞれ第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の希土類炭酸塩における希土類元素の含有量が30~60wt%であり、そのうち、希土類元素の含有量が希土類酸化物として計算され、第1希土類酸化物の純度が80wt%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(3)で得られた第2の希土類炭酸塩をステップ(1)に戻して原料として用いるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
塩化アンモニウム廃水からアンモニウムを蒸留して第2のアンモニウム水を得るステップ(4)、および、
ステップ(4)で得られた第2のアンモニウム水をステップ(2)に戻して原料として二酸化炭素と反応させるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
希土類炭酸塩および希土類酸化物を含む原料を、マイクロ波加熱によって焼成し、前記希土類酸化物の使用量が希土類炭酸塩の1~30wt%であることを特徴とする、焼成時間の短縮および/または希土類收率の向上のための希土類酸化物の使用。
【請求項10】
焼成分解温度が500~1000℃であり、焼成分解時間が20~120分間であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニウムおよび炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法に関し、さらに希土類酸化物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、そのユニークな物理的・化学的性質を持ち、軍事防衛、触媒、発光材料、永久磁石材料などさまざまな分野で広く使用されている。新型な高性能材料の原料として、希土類酸化物は、需要量が徐々に高まっている。希土類炭酸塩を焙焼・分解して希土類酸化物を調製する方法は、低コストで環境にやさしいなどの利点を有するため、希土類酸化物を調製する主な方法となっている。現在、主にトンネルキルン、ローラーキルン、またはプッシュプレートキルンなどを反応装置として希土類炭酸塩を加熱・分解することを行っているが、加熱エネルギーである天然ガスが二酸化炭素を汚染するため、炭素資源の再利用が不可能になっている。
【0003】
CN109399689Aには、マイクロ波技術を使用して希土類酸化物を調製する方法であって、(1)シュウ酸希土類または炭酸希土類をマイクロ波装置に入れてシュウ酸希土類または炭酸希土類を水分含有量が3~5%になるようにマイクロ波で乾燥するステップ、(2)シュウ酸希土類または炭酸希土類を、含水量が0になるように加熱するマイクロ波で予備加熱するステップ、(3)700~1000℃に加熱して30~50分間焼くマイクロ波焼きステップ、および、(4)冷風を用いて降温して希土類酸化物を得る勾配冷風降温ステップを含む方法が開示されているが、希土類炭酸塩は、波吸収性能が悪く、加熱時間が長いため、焙焼効率が低下する。
【0004】
CN112850775Aには、希土類酸化物の調製プロセスにおける炭素-アンモニアのリサイクル利用方法であって、有機相の鹸化、抽出、塩酸逆抽出、沈殿および焼成のステップを含み、抽出と沈殿プロセスにおいてアンモニア窒素廃水が生成され、沈殿と焼成プロセスにおいて二酸化炭素が生成され、アンモニア窒素廃水をストリッピングすることにより、アンモニアを蒸留してアンモニアが得られ、アンモニア水、水および二酸化炭素を混合し、炭化して炭酸水素アンモニウム溶液が得られ、得られた炭酸水素アンモニウム溶液は、沈殿プロセスに戻して沈殿剤として使用される方法が公開されているが、当該方法は、伝統的な熱分解による希土類酸化物の調製方法に適し、かつ、炭素資源、アンモニア資源の利用率が低い。
【発明の概要】
【0005】
これに鑑みて、本発明は、アンモニウムおよび炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法であって、焼成時間が短く、かつ、希土類回収率、炭素、炭素資源の利用率が高い方法を提供するものである。本発明は、焼成時間の短縮および/または希土類收率の向上のための希土類酸化物の使用をさらに提供する。
【0006】
上記の技術課題は、以下の構成によって達成される。
【0007】
一態様において、本発明は、アンモニアと炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法であって、
第1の希土類炭酸塩及び第1の希土類酸化物を含む原料を、マイクロ波加熱によって500~1000℃で20~120分間焼成して第2の希土類酸化物及び二酸化炭素を得るステップであって、前記希土類酸化物の使用量が希土類炭酸塩の1~30wt%であるステップ(1)、
二酸化炭素を濃度10~20wt%の第1のアンモニア水と反応させて沈殿剤を得るステップ(2)、および、
沈殿剤を希土類塩化物と反応させ、第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウムの廃水を得るステップ(3)、
を含む方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、好ましくは、前記第1の希土類炭酸塩は、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジムから選ばれた1種または複数種であり、前記第1の希土類酸化物は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジムから選ばれた1種または複数種であり、前記希土類塩化物は、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化プラセオジム、塩化ネオジムから選ばれた1種または複数種である。
【0009】
本発明によれば、好ましくは、第1の希土類炭酸塩、第1の希土類酸化物および希土類塩化物において、希土類元素が同じである。
【0010】
本発明によれば、好ましくは、沈殿剤の全アルカリ度が2~5mol/Lである。
【0011】
本発明によれば、好ましくは、ステップ(3)において、沈殿剤と希土類塩化物とを20~60℃の条件で0.5~5h反応させ、そして0.5~10hエージングさせて反応生成物を得、反応生成物をろ過してそれぞれ第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得る。
【0012】
本発明によれば、好ましくは、第1の希土類炭酸塩における希土類元素の含有量が30~60wt%であり、そのうち、希土類元素の含有量は、希土類酸化物として計算され、第1の希土類酸化物は、純度が80wt%以上である。
【0013】
本発明によれば、好ましくは、ステップ(3)で得られた第2の希土類炭酸塩をステップ(1)に戻して原料として用いるステップをさらに含む。
【0014】
本発明によれば、好ましくは、塩化アンモニウム廃水からアンモニウムを蒸留して第2のアンモニウム水を得るステップ(4)、および、
ステップ(4)で得られた第2のアンモニウム水をステップ(2)に戻して原料として二酸化炭素と反応させるステップをさらに含む。
【0015】
一方、本発明は、焼成時間の短縮および/または希土類收率の向上のための希土類酸化物の使用であって、希土類炭酸塩および希土類酸化物を含む原料を、マイクロ波加熱によって焼成し、前記希土類酸化物の使用量が希土類炭酸塩の1~30wt%である使用を提供する。
【0016】
本発明に係る使用によれば、好ましくは、焼成分解温度が500~1000℃であり、焼成分解時間が20~120分間である。
【0017】
本発明は、希土類酸化物の存在下、希土類炭酸塩をマイクロ波加熱により焼成するため、焼成時間が短縮され、かつ希土類の收率が向上し、かつ、このような方法で生成された二酸化炭素は、ホコリなどの不純物が少なく、アンモニア水と直接に反応して沈殿剤を形成することができる。本発明は、アンモニア水の適切な濃度を選択することにより、炭素資源の利用率を向上させるだけではなく、適切な濃度を有する沈殿剤を形成し、アンモニア資源の利用率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれに限られないものである。
【0019】
<アンモニア及び炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法>
本発明に係るアンモニア及び炭素をリサイクルして希土類酸化物を調製する方法は、(1)焼成ステップ、(2)沈殿剤形成ステップ、(3)沈殿ステップを含む。いくつかの実施形態において、(4)アンモニア蒸留ステップをさらに含む。
【0020】
焼成のステップ
第1の希土類炭酸塩および第1の希土類酸化物を含む原料をマイクロ波加熱で焼成して第2の希土類酸化物および二酸化炭素を得る。いくつかの実施形態において、原料は、第1の希土類炭酸塩および第1の希土類酸化物から構成される。
【0021】
希土類炭酸塩は、マイクロ波領域での波動吸収性能が悪いため、焼成時間が全体として長くなる。本出願の発明者らは、予想外に、希土類炭酸塩に適切な希土類酸化物を添加することにより、設定温度に迅速に到達し、加熱時間を短縮し、エネルギー消費を大幅に削減し、生産効率を改善させ、そして生産コストを削減することができ、かつ、希土類の回収率も向上させることができることを見出した。
【0022】
第1の希土類炭酸塩における希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、または、スカンジウム(Sc)から選ばれた1種または複数種である。好ましくは、第1の希土類炭酸塩は、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジムから選ばれた1種または複数種である。より好ましくは、第1の希土類炭酸塩は、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸ランタンセリウム、炭酸プラセオジムネオジムから選ばれた1種である。炭酸ランタンセリウムにおける炭酸ランタンの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸ランタンの含有量は、10~80wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸ランタンの含有量は、30~60wt%である。炭酸ランタンセリウムにおける炭酸セリウムの含有量は1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸セリウムの含有量は15~75wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸セリウムの含有量は40~60wt%である。炭酸プラセオジムネオジムにおける炭酸プラセオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸プラセオジムの含有量は、10~70wt%であってもよく、他のいくつかの実施形態において、炭酸プラセオジムの含有量は20~50wt%であってもよい。炭酸プラセオジムネオジムにおける炭酸ネオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸ネオジムの含有量は30~85wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸ネオジムの含有量は60~80wt%である。
【0023】
第1の希土類炭酸塩における希土類元素の含有量は30~60wt%であってもよく、好ましくは40~60wt%であり、より好ましくは50~55wt%である。希土類元素は、希土類酸化物として計算される。
【0024】
第1の希土類酸化物における希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)またはスカンジウム(Sc)から選ばれた1種または複数種である。好ましくは、第1の希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジムから選ばれた1種または複数種である。より好ましくは、第1の希土類酸化物は、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ランタンセリウム、酸化プラセオジムネオジムから選ばれた1種または複数種である。酸化ランタンセリウムにおける酸化ランタンの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化ランタンの含有量は10~80wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化ランタンの含有量は30~60wt%である。酸化ランタンセリウムにおける酸化セリウムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化セリウムの含有量は15~75wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化セリウムの含有量は40~60wt%である。酸化プラセオジムネオジムにおける酸化プラセオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化プラセオジムの含有量は、10~70wt%であってもよく、他のいくつかの実施形態において、酸化プラセオジムの含有量は、20~50wt%であってもよい。酸化プラセオジムネオジムにおける酸化ネオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化ネオジムの含有量は30~85wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化ネオジムの含有量は60~80wt%である。
【0025】
希土類酸化物は、純度が80wt%以上であってもよく、好ましくは、89wt%以上であり、より好ましくは95~100wt%である。
【0026】
第1の希土類酸化物の使用量は、第1の希土類炭酸塩の1~30wt%であり、好ましくは3~20wt%であり、より好ましくは9~15wt%である。これにより、第1の希土類酸化物の添加量を低減し、かつ焼成時間を効果的に短縮し、希土類收率を向上させることができる。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、第1の希土類炭酸塩および第1の希土類酸化物において、希土類元素が同じである。好ましくは、第1の希土類炭酸塩が炭酸セリウムであり、第1の希土類酸化物が酸化セリウムである。
【0028】
焼成温度は500~1000℃であり、好ましくは550~800℃であり、より好ましくは600~700℃である。これにより、焼成温度を低下し、かつ希土類炭酸塩を十分に分解させることができる。
【0029】
焼成時間は、20~120分間であり、好ましくは70~100分間であり、より好ましくは85~95分間である。これにより、焼成時間を短縮し、かつ希土類炭酸塩を十分に分解させることができる。本発明に係る焼成時間は、焼成温度まで昇温する時間および焼成温度で焼成する時間を含む。
【0030】
沈殿剤形成ステップ
二酸化炭素と第1のアンモニア水とを反応させて沈殿剤を得る。
【0031】
第1のアンモニア水は、濃度が10~20wt%であり、好ましくは15~19wt%であり、より好ましくは17~18wt%である。アンモニア水濃度が低くなると、炭素資源の利用率が低下になるが、アンモニア水濃度が高く過ぎると、塩化希土類から希土類炭酸塩への生成に不利である。
【0032】
沈殿剤の全アルカリ度は、2~5mol/Lであり、好ましくは2.5~4mol/Lであり、より好ましくは3~3.5mol/Lである。このような濃度は、希土類塩化物と反応する時の塩基性炭酸塩の形成を回避できるだけでなく、塩化アンモニウム廃水のアンモニア蒸留のエネルギー消費を削減することもできる。
【0033】
沈殿ステップ
沈殿剤を希土類塩化物と反応させて第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得る。
【0034】
希土類塩化物における希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)またはスカンジウム(Sc)から選ばれた1種または複数種であってもよい。好ましくは、希土類塩化物が塩化ランタン、塩化セリウム、塩化プラセオジム、塩化ネオジムから選ばれた1種または複数種である。より好ましくは、希土類塩化物が塩化ランタン、塩化セリウム、塩化ランタンセリウム、塩化プラセオジムネオジムから選ばれた1種または複数種である。塩化ランタンセリウムにおける塩化ランタンの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、塩化ランタンの含有量は10~80wt%であり、他のいくつかの実施形態において、塩化ランタンの含有量は30~60wt%である。塩化ランタンセリウムにおける塩化セリウムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、塩化セリウムの含有量は15~75wt%であり、他のいくつかの実施形態において、塩化セリウムの含有量は40~60wt%である。塩化プラセオジムネオジムにおける塩化プラセオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、塩化プラセオジムの含有量は、10~70wt%であってもよく、他のいくつかの実施形態において、塩化プラセオジムの含有量は、20~50wt%であってもよい。塩化プラセオジムネオジムにおける塩化ネオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、塩化ネオジムの含有量は30~85wt%であり、他のいくつかの実施形態において、塩化ネオジムの含有量は60~80wt%である。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、希土類塩化物における希土類元素は、第1の希土類炭酸塩および第1の希土類酸化物における希土類元素と同じである。好ましくは、希土類塩化物が塩化セリウムであり、第1の希土類炭酸塩が炭酸セリウムであり、第1の希土類酸化物が酸化セリウムである。
【0036】
具体的に、沈殿剤を希土類塩化物と反応させ、そしてエージングして反応生成物を得、そして、反応生成物をろ過してそれぞれ第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得る。
【0037】
反応温度は、20~60℃であってもよく、好ましくは30~55℃であり、より好ましくは45~50℃である。
【0038】
反応時間は、0.5~10hであってもよく、好ましくは1~5hであり、より好ましくは2~4hである。
【0039】
エージング時間は、0.5~10hであってもよく、好ましくは1~5hであり、より好ましくは1~2hである。
【0040】
希土類塩化物は、溶液として使用される。沈殿剤と希土類塩化物溶液をパラレルフローで反応させてもよい。希土類塩化物溶液は、濃度が60g/L~300 g/Lであり、好ましくは80g/L~270 g/Lであり、より好ましくは100g/L~250 g/Lである。
【0041】
いくつかの実施形態において、第2の希土類炭酸塩を焼成ステップに戻し、原料として用いるステップをさらに含んでもよい。
【0042】
アンモニア蒸留ステップ
塩化アンモニウム廃水からアンモニアを蒸留して第2のアンモニウム水を得る。
【0043】
アンモニア蒸留の方法として、本分野の従来の方法を使用すればよい。例えば、CN101475194Bに開示されている方法を採用してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、第2のアンモニウム水を沈殿剤形成ステップに戻し、二酸化炭素と反応させるステップを含んでもよい。
【0045】
本発明において、希土類の收率が99%を超え、好ましくは、99.9%を超える。炭素資源利用率は、90%を超え、好ましくは、93%を超え、より好ましくは94.5~96%である。アンモニア資源利用率は、89%を超え、好ましくは、90%を超え、より好ましくは91~92.5%である。
【0046】
<希土類酸化物の使用>
本発明の出願人は、予想外に、原料として希土類炭酸塩および希土類酸化物を使用してマイクロ波加熱で焼成することにより、希土類炭酸塩の分解時間を短縮し、希土類の収率を向上させることができることを見出した。したがって、本発明は、希土類炭酸塩および希土類酸化物を含む原料をマイクロ波加熱で焼成することを含む焼成時間の短縮および/または希土類收率の向上のための希土類酸化物の使用を提供する。いくつかの実施形態において、原料は、希土類炭酸塩および希土類酸化物から構成される。
【0047】
希土類炭酸塩における希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、または、スカンジウム(Sc)から選ばれた1種または複数種であってもよい。好ましくは、希土類炭酸塩が炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸プラセオジム、炭酸ネオジムから選ばれた1種または複数種である。より好ましくは、希土類炭酸塩が炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸ランタンセリウム、炭酸プラセオジムネオジムから選ばれた1種である。炭酸ランタンセリウムにおける炭酸ランタンの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸ランタンの含有量は10~80wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸ランタンの含有量は30~60wt%。炭酸ランタンセリウムにおける炭酸セリウムの含有量は1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸セリウムの含有量は15~75wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸セリウムの含有量は40~60wt%である。炭酸プラセオジムネオジムにおける炭酸プラセオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸プラセオジムの含有量は10~70wt%であってもよく、他のいくつかの実施形態において、炭酸プラセオジムの含有量は、20~50wt%であってもよい。炭酸プラセオジムネオジムにおける炭酸ネオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、炭酸ネオジムの含有量は30~85wt%であり、他のいくつかの実施形態において、炭酸ネオジムの含有量は60~80wt%である。
【0048】
希土類炭酸塩における希土類元素の含有量は、30~60wt%であってもよく、好ましくは40~60wt%であり、より好ましくは50~55wt%である。希土類元素は、希土類酸化物として計算される。
【0049】
希土類酸化物における希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、または、スカンジウム(Sc)から選ばれた1種または複数種である。好ましくは、希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジムから選ばれた1種または複数種である。より好ましくは、希土類酸化物が酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ランタンセリウム、酸化プラセオジムネオジムから選ばれた1種または複数種である。酸化ランタンセリウムにおける酸化ランタンの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化ランタンの含有量は10~80wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化ランタンの含有量は30~60wt%である。酸化ランタンセリウムにおける酸化セリウムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化セリウムの含有量は15~75wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化セリウムの含有量は40~60wt%である。酸化プラセオジムネオジムにおける酸化プラセオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化プラセオジムの含有量は、10~70wt%であってもよく、他のいくつかの実施形態において、酸化プラセオジムの含有量20~50wt%であってもよい。酸化プラセオジムネオジムにおける酸化ネオジムの含有量は、1~95wt%であってもよく、いくつかの実施形態において、酸化ネオジムの含有量は30~85wt%であり、他のいくつかの実施形態において、酸化ネオジムの含有量は60~80wt%である。
【0050】
希土類酸化物は、純度が80wt%以上であってもよく、好ましくは、89 wt%以上であり、より好ましくは95~100wt%である。
【0051】
希土類酸化物の使用量は、希土類炭酸塩の1~30wt%であり、好ましくは3~20wt%であり、より好ましくは9~15wt%である。これにより、希土類酸化物の添加量を低減でき、かつ、焼成時間を効果的に短縮し、希土類收率を向上させることができる。
【0052】
本発明の1つの実施形態によれば、希土類炭酸塩、希土類酸化物における希土類元素は同じである。好ましくは、希土類炭酸塩が炭酸セリウムであり、希土類酸化物が酸化セリウムである。
【0053】
焼成温度は500~1000℃であり、好ましくは550~800℃であり、より好ましくは600~700℃である。これにより、焼成温度を低下し、かつ、希土類炭酸塩を十分に分解させることができる。
【0054】
焼成時間は、20~120分間であり、好ましくは70~100分間であり、より好ましくは85~95分間である。これにより、焼成時間を短縮し、かつ、希土類炭酸塩を十分に分解させることができる。本発明に係る焼成時間は、焼成温度まで昇温する時間および焼成温度で焼成する時間を含む。
【0055】
本発明の1つの実施形態によれば、沈殿剤形成ステップ、沈殿ステップおよび、アンモニア蒸留ステップをさらに含む。詳細は上記の通りであり、ここでは繰り返さない。
【0056】
以下、測定方法について説明する。
【0057】
希土類收率=(第2の希土類酸化物における希土類総量-第1の希土類酸化物における希土類総量)/第1の希土類炭酸塩における希土類総量
ここで、希土類酸化物と希土類炭酸塩における希土類の総量は、希土類酸化物として計算される。
【0058】
希土類酸化物と希土類炭酸塩における希土類の総量は、重量法により測定される。
【0059】
炭素資源利用率=沈殿剤に含まれる炭素と等モル量の二酸化炭素の質量/第1の希土類炭酸塩に含まれる炭素と等モル量の二酸化炭素の質量
沈殿剤における炭素含有量は、二重混合指示薬滴定法により測定される。
【0060】
希土類炭酸塩における炭素含有量は、酸塩基滴定法により測定される。
【0061】
アンモニア資源利用率=第1のアンモニア水におけるNH4
+のモル量/塩化アンモニウム廃水におけるNH4
+のモル量
NH4
+のモル量は、滴定法により測定される。
【0062】
実施例1~4
(1)第1の希土類炭酸塩および第1の希土類酸化物からなる原料をマイクロ波加熱で焼成して第2の希土類酸化物および二酸化炭素を得た。
【0063】
(2)二酸化炭素を第1のアンモニア水と反応させて沈殿剤を得た。
【0064】
(3)沈殿剤を希土類塩化物の溶液とパラレルフローで反応させ、そしてエージングして反応生成物を得、反応生成物をろ過してそれぞれ第2の希土類炭酸塩および塩化アンモニウム廃水を得た。第2の希土類炭酸塩をステップ(1)に戻して原料として用いた。
【0065】
具体的なパラメーターは、表1に示された。希土類收率、炭素資源利用率およびアンモニア資源利用率は、表1に示された。
【0066】
注:第1の希土類炭酸塩における希土類元素の含有量は、希土類酸化物として計算された。
炭酸ランタンセリウムにおける炭酸ランタンの含有量は47.8wt%であり、炭酸セリウムの含有量は 52.2wt%であった。
酸化ランタンセリウムにおける酸化ランタンの含有量は47.8 wt%であり、酸化セリウムの含有量は52.2 wt%であった。
塩化ランタンセリウムにおける塩化ランタンの含有量は47.8 wt%であり、塩化セリウムの含有量は52.2wt%であった。
炭酸プラセオジムネオジムにおける炭酸プラセオジムの含有量は27.8wt%であり、炭酸ネオジムの含有量は72.2wt%であった。
酸化プラセオジムネオジムにおける酸化プラセオジムの含有量は27.8wt%であり、酸化ネオジムの含有量は72.2wt%であった。
塩化プラセオジムネオジムにおける塩化プラセオジムの含有量は27.8 wt%であり、塩化ネオジムの含有量は72.2wt%であった。
【0067】
実施例5~8
実施例1~4で得られた塩化アンモニウム廃水からそれぞれアンモニアを蒸留して第2のアンモニウム水を得た。第2のアンモニウム水をステップ(2)に戻して原料として二酸化炭素と反応させた。
【0068】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者が想到し得るあらゆる変形、改良、置換等が本発明の範囲に含まれるものとする。