(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087646
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20230616BHJP
B23Q 3/18 20060101ALI20230616BHJP
B23Q 3/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B23Q3/06 304Z
B23Q3/18 Z
B23Q3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022163232
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】070704/2021
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】502454802
【氏名又は名称】エロワ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EROWA AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ヘディガー
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016AA01
3C016AA03
3C016CA01
3C016HA04
3C016HB01
3C016HB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弾性芯出し要素を設けることなく、X‐Y平面内で各クランプ手段上のクランプ要素又は各クランプ要素によって締め付けられるワークピースキャリアの公差又は各寸法変化を受容又は補償する。
【解決手段】クランプ手段(1)は、クランプ部材が設けられたクランプモジュール(2)を有し、そのクランプモジュール(2)は、固定要素(3)によってクランプベース上に固定可能であり、固定要素(3)は、クランプモジュール(2)がX‐Y平面内においてクランプベース上でフローティング固定されるよう構成されている。固定要素(3)の固定状態におけるクランプモジュール(2)は、X‐Y平面内において固定要素(3)に対して変位可能であるが、Z方向においては変位不可能であり、固定要素(3)に、クランプ要素(26)用のZ支持面(24)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプベース(50)上に固定可能なクランプ手段(1)と、該クランプ手段(1)上に締め付け可能なクランプ要素(26)とを備えるクランプ装置であって、
前記クランプ手段(1)は、クランプ部材(15)が設けられたクランプモジュール(2)を有し、前記クランプモジュール(2)は、固定要素(3)によって前記クランプベース(50)上に固定可能であり、
前記固定要素(3)は、前記クランプモジュール(2)が、前記クランプベース(50)の上側によって形成されたX‐Y平面内において、前記クランプベース(50)上で変位可能に固定できるよう構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置であって、前記固定要素(3)の固定状態における前記クランプモジュール(2)は、X‐Y平面内において前記固定要素(3)に対して変位可能であるのに対して、Z方向ではすきまばめによって前記固定要素(3)内に収容され、前記固定要素(3)に、前記クランプ要素(26)用のZ支持面(24)が設けられていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクランプ装置であって、前記固定要素(3)は、芯出し溝(23)又は芯出しカムを有し、前記クランプ要素(26)は、前記固定要素(3)に対してX‐Y平面内において一方向に芯出しされるために、前記固定要素(3)の前記芯出し溝(23)又は前記芯出しカムに対応するよう構成された芯出しカム(28)又は芯出し溝を有することを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)は、実質的に円筒形に構成され、前記固定要素(3)は、実質的に環状に構成され、前記クランプモジュール(2)は、前記固定要素(3)内に、X‐Y平面内において半径方向遊びを有する状態でフローティングするよう収容されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)の外側に、周方向肩部(16)が設けられ、前記固定要素(3)の内側に、前記クランプモジュール(2)の外側における前記周方向肩部(16)に対応するよう構成された凹部(21)が設けられ、前記肩部(16)の外径は、前記凹部(21)の直径よりも少なくとも0.2 mm、特に少なくとも0.5 mm小さいことを特徴とするクランプ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)は、前記固定要素(3)内にすきまばめによってZ方向に収容され、特に、前記肩部(16)の高さが前記凹部(21)の高さに適合されていることにより、Z方向において前記肩部(16)と前記凹部(21)との間にすきまばめが形成されていることによって前記固定要素(3)内に収容されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
請求項3~5の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)に、周方向に亘って分散配置された複数のクランプ部材(15)が設けられ、前記クランプ要素(26)の内側に、環状に周回するクランプ面(27)が設けられ、該クランプ面(27)に、前記クランプ部材(15)が締め付けのために当接することを特徴とするクランプ装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)は、ばね負荷された作動ピストン(4)を有し、該作動ピストン(4)は、前記クランプモジュール(2)の内部で前記クランプ部材(15)を軸線方向に移動可能に作動させるよう配置されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のクランプ装置であって、前記作動ピストン(4)は、ばね(8)の作用下にあり、場合によって更に空圧的又は液圧的に負荷され、前記クランプ部材(15)を半径方向外方に向けて押圧する作動位置から、前記クランプ部材(15)が解放されると共に、半径方向内方に向けて変位できる開始位置まで空圧的又は液圧的に変位可能であり、前記作動ピストン(4)は、特にセルフロックによって前記作動位置に保持されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のクランプ装置であって、前記作動ピストン(4)は、Z方向に変位可能なイジェクト要素(19)と作動接続可能であり、前記イジェクト要素(19)は、前記作動ピストン(4)によって前記クランプモジュール(2)の上側を越えて移動可能であることを特徴とするクランプ装置。
【請求項11】
請求項8~10の何れか一項に記載のクランプ装置であって、前記作動ピストン(4)は、Z方向に延びる窪み(7)を有し、該窪み(7)は、前記クランプ要素(26)の締め付け時に、前記各クランプ部材(15)と前記作動ピストン(4)との間に拡大された支持面がもたらされるよう前記クランプ部材(15)と調整されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項12】
請求項10に記載のクランプ装置であって、前記クランプモジュール(2)の前記上側は、錐台状に構成され、前記イジェクト要素(19)は、前記錐台の中央に配置されていることを特徴とするクランプ装置。
【請求項13】
クランプベース(50,50a)と、ワークピースキャリア(44,44a)と、請求項1~12の何れか一項に従って構成された少なくとも3個のクランプ装置とを備えるクランプシステムであって、前記クランプ装置は、前記クランプベース(50,50a)上に配置された少なくとも3個のクランプ手段(1a,1b,1c,1d)、並びに前記ワークピースキャリア(44,44a)上に配置された対応個数のクランプ要素(26a,26b,26c,26d)を有し、前記クランプベース(50,50a)の上側は、X‐Y平面を形成しているクランプシステムにおいて、
前記各クランプ要素(26a,26b,26c,26d)を前記クランプ手段(1a,1b,1c,1d)に対してX‐Y平面内において一方向に芯出しするために、前記各クランプ手段(1a,1b,1c,1d)に、第1芯出し要素(23a,23b,23c,23d)が設けられ、関連する前記クランプ要素(26a,26b,26c,26d)に、前記第1芯出し要素(23a,23b,23c,23d)に対応する更なる芯出し要素(28a,28b,28c,28d)が設けられ、少なくとも2個のクランプ手段(1a,1b,1c,1d)及び前記少なくとも2個のクランプ手段(1a,1b,1c,1d)に対応するよう配置された2個のクランプ要素(26a,26b,26c,26d)においては、X‐Y平面内における方向が異なることを特徴とするクランプシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のクランプシステムであって、前記クランプベース(50)は、実質的に長方形に構成されると共に、偶数のクランプ手段(1a~1d)を有し、少なくとも各コーナー領域に、クランプ手段(1a~1d)が配置され、前記コーナー領域に配置された前記各クランプ手段(1a~1d)の前記芯出し要素(23a~23d)を通る長手方向中心軸線(L1,L2)は、互いに対角線上に位置しているクランプ手段(2a,2c;2b,2d)の中央も通ることを特徴とするクランプシステム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のクランプシステムであって、前記ワークピースキャリア(44a)は、実質的に円形に構成されると共に、外側領域に、少なくとも3個のクランプ要素(26a~26d)が設けられ、前記クランプ要素(26a~26d)は、特に、クランプ要素(26a~26d)の前記芯出し要素(28a~28d)を通る長手方向中心軸線(M1,M2)が前記ワークピースキャリア(44a)の中央で合致又は交差するよう配置されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のクランプシステムであって、前記ワークピースキャリア(44)は、実質的に長方形に構成され、少なくとも各コーナー領域に、クランプ要素(26a~26d)が配置され、前記コーナー領域に配置された前記各クランプ要素(26a~26d)の前記芯出し要素(28a~28d)を通る長手方向中心軸線は、互いに対角線上に位置しているクランプ要素(26a,26c;26b,26d)の中央も通ることを特徴とするクランプシステム。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のクランプシステムであって、前記各クランプ要素(26a~26d)は、前記各クランプ要素の平坦な下側(29)及び前記芯出し要素(28a~28d)が前記ワークピースキャリア(44,44a)の下側(48)に対して後退するよう、前記ワークピースキャリア(44,44a)の凹部(45a~45d)内に配置されていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項18】
請求項1~12の何れか一項に記載のクランプ装置、又は請求項13~17の何れか一項に記載のクランプシステムで使用するためのクランプ要素(26a~26d)であって、
前記クランプ要素(26)は、実質的に環状に構成されると共に、内側に環状に周回するクランプ面(27)を有し、該クランプ面(27)に、クランプ部材(15)が締め付け用に当接可能であり、前記クランプ要素(26)に、Z支持部として機能する平坦な下側(29)が少なくとも部分的に設けられていることを特徴とするクランプ要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従って構成されたクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るタイプのクランプ装置は、クランプ手段によってクランプ要素を所定位置に締め付けるのに役立つ。この場合、各クランプ手段は通常、加工機械における機械テーブルなどのクランプベース上にしっかりと取り付けられているのに対して、クランプ要素又は各クランプ要素は、ワークピースキャリア(パレット)上に配置されている。
【0003】
大きなワークピースキャリアを位置的に正確に締め付けるために、一般的には、クランプベース上に取り付けられた複数のクランプ手段と、ワークピースキャリアに取り付けられた対応個数のクランプ要素とを備えるクランプシステムが使用される。このようなクランプシステムにおいては、クランプベースに対するワークピースキャリアの寸法変化を補償しなければならないという問題がある。更に、クランプシステムがX‐Y平面において、形状的/機械的に過度な拘束(制約)を受けないよう留意する必要がある。
【0004】
クランプベースに対するワークピースキャリアの寸法変化を吸収できるよう、クランプボルトを締め付けるためのクランプチャックを備えるゼロ点クランプシステムが従来技術に既知である。この場合、クランプチャックには、クランプボルトのために半径方向に弾性的に取り付けられた円錐形のマウントが設けられている。このようなシステムにおいては、インフィード要素相互に関して極めて高い製造精度が必要である。
【0005】
上述した形状的に過度な拘束を回避するために、特許文献1(欧州特許出願公開第0403428号明細書)には、ワークピースを所定位置にクランプするための装置が既知である。この装置は、芯出しピンが設けられた少なくとも2個のチャックと、クランプスピゴットが設けられると共に、チャックに締め付け可能な対応個数の上側部分とを備える。上側部分は、ワークピースマウント上に配置されている。各上側部分には、芯出しスピゴットに対応する芯出しスリットが設けられている。更に、各上側部分は、円形のクランプスピゴット(引っ張りボルト)を有し、そのクランプスピゴットは、クランプボールによって各クランプチャックの中央マウントに締め付けることができる。各クランプチャックには4個の芯出しスピゴットが設けられているのに対して、1個の上側部分のみ対応個数の芯出しスリットが設けられている。他の上側部分又は他の各上側部分には、2つの芯出しスリットしか設けられていない。従って、1個の上側部分によってワークピースマウントの位置はX方向及びY方向に決定されるのに対して、他の上側部分又は他の各上側部分によってZ軸線周りの角度位置が決定される。
【0006】
このような装置は、有用性が実証されているが、その構造は比較的複雑であり、特にそれぞれの円形のクランプスピゴットがそれぞれのクランプチャックにおける同様に円形の中央マウントに対して極めて正確に配置されなければならないため、大きく重いワークピースキャリアを再現性良く正確に締め付けるには限定的にしか適していない。更に、クランプチャックに対するワークピースキャリアの寸法変化は、限定的にしか吸収することができない。
【0007】
更に、特許文献2(欧州特許出願公開第1743733号明細書)には、交換シリンダを備えるクイッククランプ装置が既知である。このクイッククランプ装置は、パレットに接続すべき引き込み可能なニップルに加えて、カバーによって上方から閉じられた閉鎖ハウジングを備える。カバーは、引き込み可能ニップル用の入口開口を有する。閉鎖ハウジングの内部には、引き込み可能ニップル用の捕捉装置が配置され、その捕捉装置は、周方向に亘って均一に分布する多数のロック体で構成されている。ロック体の作動は、閉鎖ハウジングの内側に配置されると共に、ばねアセンブリによってクランプ位置に負荷されたピストンを介して行われる。閉鎖ハウジング内においては、ポット状に構成された交換シリンダが収容され、ハウジング内にフローティング状態で取り付けられている。しかしながら、交換シリンダは、X‐Y平面内で遊びなく取り付けられている。これは、ピストンがカバー内で半径方向に遊びなくガイドされ、交換シリンダがピストンをやはり半径方向に遊びなく収容しているからである。
【0008】
特許文献3(欧州特許出願公開第0818270号明細書)は、工作機械上に配置されるクランプ要素と、そのクランプ要素に締め付け可能な工具キャリアとを備えるクランプ装置を開示している。円形のクランプ要素には、そのクランプ要素の基体に遊びなく差し込まれた中央クランプボルトが設けられている。円形のワークピースキャリアは、中央孔を有し、ワークピースキャリアのクランプボルトは、その中央孔の側壁に締め付けられるよう係合可能である。ワークピースキャリアには、環状に周回すると共に下方に突出する支持部材が設けられ、これにより芯出し部材を損傷から保護している。
【0009】
最後に、特許文献4(独国実用新案第29802835号明細書)には、2個のカップリング部材と、クランプ装置を備えるカップリングが既知であり、そのカップリングは、X‐Y平面における位置決めのために、第1カップリング部材に配置されたxy基準要素及び第2カップリング部材に配置されたxy基準カウンタ要素を備える。第2カップリング部材に配置されたxy基準カウンタ要素は固定的に形成されているのに対して、第1カップリング部材に配置されたxy基準要素は弾性的に撓むよう構成されている。弾性基準要素を適切に設計することにより、熱による位置偏差が複数の肩部、即ち弾性基準要素に分配され、これにより位置決めの密接な公差を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0403428号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1743733号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0818270号明細書
【特許文献4】独国実用新案第29802835号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、冒頭に述べた技術分野に属するクランプ装置を提供することである。本発明のクランプ装置は、弾性芯出し要素を設ける必要なく、X‐Y平面内で各クランプ手段上のクランプ要素又は各クランプ要素によって締め付けられるワークピースキャリアの公差又は各寸法変化を受容又は補償する。クランプ装置は更に、特にクランプシステムを構築するためのモジュールとしても適している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題の解決策は、請求項1の特徴によって規定されている。本発明によれば、クランプ装置は、クランプベース上に固定すべきクランプ手段と、そのクランプ手段上に締め付け可能なクランプ要素とを備え、クランプ手段は、クランプ部材が設けられたクランプモジュールを有し、クランプモジュールは、固定要素によってクランプベース上に固定可能であり、固定要素は、クランプモジュールがクランプベース上のX‐Y平面内において変位可能に固定できるよう構成されている。
【0013】
クランプ手段のクランプモジュールが固定要素によってクランプベース上のX‐Y平面内において変位可能に固定されていることにより、基本的な前提条件が満たされ、これにより各クランプ手段はクランプベース上に締め付けるべきワークピースキャリアの寸法変化を吸収することができる。
【0014】
クランプ装置の好適な実施形態及び更なる構成は、従属請求項2~12に規定されている。
【0015】
好適な更なる構成において、固定要素の固定状態におけるクランプモジュールは、X‐Y平面内において固定要素に対して変位可能であるのに対して、Z方向ではすきまばめによって固定要素内に収容され、従って実質的にZ方向に変位不可能であり、固定要素に、クランプ要素用のZ支持面が設けられている。これにより、クランプモジュールは、X‐Y平面内において公差を補償することができるが、Z方向にクランプ力を伝達することができ、またクランプ要素のZ位置決めは、クランプモジュールとは対照的に、Z方向に大きな力を受けるのに実質的により簡単に構成可能な不動の固定要素で行われる。更に、製造公差に関する要件は、円錐形の芯出し要素を備えるクランプシステムと比べて、大幅に小さい。なぜなら、インフィードは、公差を補償するために十分に大きくするだけで良いからである。
【0016】
特に好適な更なる構成において、固定要素は、芯出し溝又は芯出しカムを有し、クランプ要素は、固定要素に対してX‐Y平面内において一方向に芯出しされるために、固定要素の芯出し溝又は芯出しカムに対応する芯出しカム又は芯出し溝を有する。この構成は、特に複数のクランプ装置を備えるゼロ点クランプシステムにとって有利である。なぜなら、芯出し要素により、関連するクランプ手段に対するクランプモジュールの変位可能性を一方向に制限することができるため、クランプ手段及びクランプ要素の対応配置により、各クランプモジュールの変位可能性にもかかわらず、クランプシステムのゼロ点が常に同じ位置にあり、これにより極めて正確なクランプが可能になるからである。
【0017】
好適には、クランプモジュールは、実質的に円筒形に構成され、固定要素は、実質的に環状に構成され、クランプモジュールは、固定要素内で、X‐Y平面内において半径方向遊びを有する状態でフローティングするよう収容されている。この構成は、汎用性と共に、クランプモジュールの特に簡単な構造を可能にする。この構成のおかげで、組み立て時に、クランプ手段の芯出し要素のみ正確な角度で位置決め/整列する必要があるが、クランプモジュール自体は必要ない。
【0018】
特に好適な更なる構成においては、クランプモジュールの外側に、周方向肩部が設けられ、固定要素の内側に、クランプモジュールの外側における周方向肩部に対応するよう構成された凹部が設けられ、肩部の外径は、凹部の直径よりも少なくとも0.2 mm、特に少なくとも0.5 mm小さい。肩部の外径と凹部の直径との差は、固定状態のクランプモジュールのX‐Y平面内における最大変位量によって決まる。この構成は、簡単かつ安価に実現することができる。
【0019】
クランプモジュールは、好適には、固定要素内にすきまばめによってZ方向に収容され、特に、肩部の高さが凹部の高さに適合されていることにより、Z方向において肩部と凹部との間にすきまばめが形成されていることによって固定要素内に収容されている。このような構成により、クランプモジュールがX‐Y平面内において変位可能であるにもかかわらず、クランプモジュールが固定要素内でZ方向に形状密着的に支持されると共に、大きなクランプ力を伝達できることが保証される。
【0020】
更なる好適な構成においては、クランプモジュールに、周方向に亘って分散配置された複数のクランプ部材が設けられ、クランプ要素の内側に、環状に周回するクランプ面が設けられ、そのクランプ面に、クランプ部材が締め付けのために当接する。このような構成は、大きなクランプ力を伝達するのに特に有利に適している。なぜなら、周方向に亘って分散配置されたクランプモジュールには、約10~20個のオーダーの極めて多くのクランプ部材を設けることができ、クランプモジュールにはそれに応じて大きなクランプ面を設けることができるからである。
【0021】
特に好適には、クランプモジュールは、ばね負荷された作動ピストンを有し、その作動ピストンは、クランプモジュールの内部でクランプ部材を軸線方向に移動可能に作動させるよう配置されている。このような構成は、簡単に実現できると共に、クランプ手段の機能を信頼性高く実現することができる。
【0022】
特に好適には、作動ピストンは、ばねの作用下にあり、クランプ部材を半径方向外方に向けて押圧する作動位置から、クランプ部材が解放されると共に、半径方向内方に向けて変位できる開始位置まで空圧的又は液圧的に変位可能である。この構成において、作動ピストンは、ばねの作用により、圧力のない状態でも作動位置に留まるため、例えば空圧システム又は液圧システムで圧力低下が生じたとしても、各クランプ要素がクランプ手段上で確実に締め付けられる。これは特に、作動ピストンが特にセルフロックによって作動位置に保持されるからである。
【0023】
好適には、作動ピストンは、Z方向に変位可能なイジェクト要素と作動接続され、イジェクト要素は、作動ピストンによってクランプモジュールの上側を越えて移動可能である。このようなイジェクト要素は、ワークピースキャリアの配置中に、一種のショックアブソーバとして機能することができる。更に、ワークピースキャリアをイジェクト要素で僅かに上昇させることができ、これは特に、クランプ要素によってクランプ部材が押し戻された開始位置に持っていくのに有利である。
【0024】
クランプ装置の特に好適な更なる構成において、作動ピストンは、Z方向に延びる窪みを有し、これら窪みは、作動ピストンの作動位置において、クランプ部材に少なくとも直線状に当接するようクランプ部材と調整されている。このような窪みにより、負荷状態、即ちクランプ要素の締め付け時に、大きなクランプ力がクランプ部材に作用する際、各クランプ部材と作動ピストンとの間に拡大された支持面がもたらされるため、クランプボールが平坦な面に対して点状に当接する従来のクランプ装置と比べて、大幅に大きな力を伝達することができる。
【0025】
好適には、クランプモジュールの上側は、錐台状に構成され、イジェクト要素は、錐台の中央に配置されている。この構成は、ワークピースキャリア又はクランプ要素を配置する際に、クランプ要素が錐台に沿って自動的にスライドして自らを芯出しすることによって大まかな位置合わせが行われた後にワークピースキャリア又はクランプ要素をクランプ手段に対して芯出しするのに役立つ。
【0026】
本発明の更なる実施形態においては、本発明に従って構成されたクランプ装置が特に有利に配置されてクランプアセンブリを形成するクランプシステムが提供される。このようなクランプシステムは、請求項13の特徴によって規定され、大型から超大型のワークピースキャリアを締め付けるのに特に有利に適している。各クランプモジュールがX‐Y平面内においてフローティング又は変位可能に取り付けられ、各クランプ要素をクランプ手段に対してX‐Y平面内において一方向に芯出しするために、各クランプ手段に、第1芯出し要素が設けられ、関連するクランプ要素に、第1芯出し要素に対応する更なる芯出し要素が設けられることにより(少なくとも2個のクランプ手段及び少なくとも2個のクランプ手段に対応するよう配置された2個のクランプ要素においては、X‐Y平面内における方向が異なる)、一貫したゼロ点及び高いクランプ精度でワークピースキャリアの寸法変化を吸収することができる。
【0027】
クランプシステムの好適な更なる構成は、従属請求項14~17に規定されている。
【0028】
クランプシステムの好適な更なる構成において、クランプベースは、実質的に長方形に構成されると共に、偶数のクランプ手段を有し、少なくとも各コーナー領域に、クランプ手段が配置され、コーナー領域に配置された各クランプ手段の芯出し要素を通る長手方向中心軸線は、互いに対角線上に位置しているクランプ手段の中央も通る。この構成により、特に熱によるワークピースキャリアの寸法変化を吸収可能な極めて安定したクランプシステムが得られる。
【0029】
クランプシステムの好適な更なる構成において、ワークピースキャリアは、実質的に長方形に構成され、少なくとも各コーナー領域に、クランプ要素が配置され、コーナー領域に配置された各クランプ要素の芯出し要素を通る長手方向中心軸線は、互いに対角線上に位置しているクランプ要素の中央も通る。これにより、クランプシステムのゼロ点が規定された位置にあると共に、ワークピースキャリアがX‐Y平面内における寸法変化に適応するために個々の又は全てのクランプモジュールが移動したとしても、その位置に留まることが保証される。
【0030】
特に好適には、各クランプ要素は、各クランプ要素の平坦な下側がワークピースキャリアの下側に対して後退するよう、ワークピースキャリアの凹部内に配置されている。これにより、各クランプ要素は、特に機械的損傷から保護された状態でワークピースキャリアに収容されている。
【0031】
最後に、請求項18においては、請求項1~12の何れか一項に記載のクランプ装置又は請求項13~17の何れか一項に記載のクランプシステムで使用するのに特に有利に適したクランプ要素が規定されている。このようなクランプ要素は、頑丈であり、簡単に構成され、安価に製造することができる。
【0032】
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体から、本発明の更なる有利な実施形態及び特徴の組み合わせが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】クランプ手段及びクランプ要素で構成されるクランプ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1におけるクランプ装置の個々の部品を示す分解図である。
【
図3】クランプ手段及びクランプ要素を示す断面図である。
【
図4】開始位置にあるクランプ手段を、そのクランプ手段上に緩く配置され、かつワークピースキャリアに固定されたクランプ要素と一緒に示す断面図である。
【
図5】クランプ手段を、そのクランプ手段上に締め付けられ、かつワークピースキャリアに固定されたクランプ要素と一緒に示す断面図である。
【
図6】本発明に従って構成された4個のクランプ手段を備えるクランプシステムを示す斜視図である。
【
図7】本発明に従って構成された3個のクランプ手段を備えるクランプシステムを示す斜視図である。
【
図8】クランプ手段及びワークピースキャリアの代替的かつ例示的な実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、クランプ装置の斜視図を示す。クランプ装置は、機械テーブルなどのクランプベースに固定されると共に、クランプチャックとも称されるクランプ手段1と、そのクランプ手段に締め付け可能であると共に、ワークピースキャリア又は工具キャリアとして機能するパレット上に配置されるクランプ要素26とを備える。クランプベース上へのクランプ手段1の固定、並びにワークピースキャリア上へのクランプ要素26の固定は、複数のねじ30,31によって行われる(そのうちの幾つかは図示されている)。クランプ手段1は、クランプモジュール2及び固定要素3を含む。固定要素3は、クランプモジュール2をクランプベース上でフローティング(浮動)固定するよう機能し、従って固定要素の取り付け後もクランプモジュール2がX‐Y平面内で依然として変位可能である。具体的には、クランプモジュール2は、クランプベースの上側によって形成されるX‐Y平面内で固定要素3に対して約±0.1~1 mmのオーダーで移動できるよう、固定要素3によってクランプベース/機械テーブル上に固定される。実施形態によっては、例えば、約±2 mmまでのより大きな移動も可能である。これに関する詳細については、以下においてより正確に説明する。クランプモジュール2には、周方向に沿って分散配置されたクランプボール15の形態の複数のクランプ部材が設けられ、これによりクランプ要素26をクランプ手段1上に締め付けることができる。実質的に環状に構成された固定要素3には、互いに正反対に位置する芯出し溝23が設けられ、これら芯出し溝23は、クランプ要素26上に配置された2個の芯出しカム28に対応するよう構成及び配置されている。これら芯出し要素23,28は、クランプ要素26をクランプ手段1上に締め付ける際に、クランプ要素26の一方向への位置合わせを可能にする。
【0035】
図2は、クランプ手段1における個々の重要な部品を示す分解図であり、その助けを借りてクランプ手段1の構造をより詳細に説明する。下から上に見て、クランプモジュール2は、作動ピストン4、3個の圧縮ばね8、インサート9、3個のタペット、保持リング11、クランプボール15を収容するための半径方向孔14が設けられたクランプハウジング13、並びにイジェクト要素19を有する。クランプハウジング13の内部に配置すべき作動ピストン4には、環状溝5が設けられ、クランプボール15の内側がその環状溝内に延在可能である。溝5は、斜めに延びる環状面によって両側が画定されている。溝5の上方には、作動ピストン4の外周に沿うと共に、下方に向けて直径が小さくなる圧力面6が配置され、圧力面6は、作動ピストン4の下降時に、クランプボール15を外方に向けて、即ちクランプハウジング13から押し出すことにより、クランプボール15を作動させるよう機能する。圧力面6には、軸線方向、即ちZ方向に延びる窪み7が形成されており、これら窪みは、大きなクランプ力の伝達時に、各クランプボール15と作動ピストン4との間に拡大された支持面がもたらされるようクランプボール15と調整され、これによりクランプボールが平坦なクランプ面に点状に当接する従来のクランプ装置と比べて、より大きなクランプ力を伝達することができる。
【0036】
クランプハウジング13の下側には、環状に周回する肩部16が設けられ、その肩部は、クランプハウジング13又はクランプモジュール2を固定要素3によってクランプベースに固定するのに役立つ。クランプハウジング13の上側は、錐台状に構成され、従って円錐形の芯出し面18が形成されている。クランプハウジング13におけるこの錐台状の上側には、中央孔17が設けられ、その中央孔は、イジェクト要素19を収容するよう機能する。錐台の中央に配置されたイジェクト要素19には、クランプハウジング13における錐台状の上側の形状及び傾斜に少なくとも部分的に適合された円錐形の上側が設けられている。従って、クランプハウジング13における錐台状の上側は、イジェクト要素19と一緒に、クランプモジュール2上にクランプ要素を配置する際にクランプ要素用の大きな芯出し面を形成する。
【0037】
固定要素3の内側には、クランプハウジング13の肩部16に適合された溝21の形態の周方向凹部が設けられている。Z方向において、溝21は、上方に向けて内側に延びる突起22によって画定され、その突起22は、肩部16のためにZストッパを形成する。溝21は、クランプハウジング13の肩部よりも僅かに大きな直径を有するため、以下においてより詳細に説明するように、X‐Y平面内におけるクランプモジュール2のフローティング又は変位可能な固定が可能である。固定要素3の上側には、クランプ要素の平坦な下側用のZ支持部として機能する隆起した支持面24が設けられている。固定要素3は、その大面積の下側がクランプベースに当接するため、支持面24に対してZ方向に作用する大きなクランプ力を簡単な構造で受けることができる。何れにせよ、ワークピースキャリア又はクランプ要素26のためにそのようなZ支持面をクランプモジュール2に設けることは、実質的により複雑である。更に、固定要素3に設けられると共に、互いに正反対に位置する2つの芯出し溝23が図示されている。
【0038】
図3は、芯出しカム28領域のクランプ要素26、並びにロック状態にあるクランプ手段1の断面図を示す。クランプモジュール2は、固定要素3によって(概略的にのみ図示された)クランプベース50上に固定されている。固定状態において、クランプモジュール2の環状の肩部16は、固定要素の溝21内で半径方向に延びている。肩部の上側と固定要素内に設けられた溝21の上壁との間には、いわゆる「すきまばめ(クリアランス・フィット)」が存在し、即ち、肩部16の上側と溝21の上方画定部分との間には、例えばISO H7/g6に従って数マイクロメートルオーダーの極めて小さな距離が設けられているのに対して、クランプモジュール2の芯出し状態では、半径方向に肩部16の側面と固定要素に設けられた溝21の側壁との間には、周方向ギャップSが存在する。このギャップSにより、クランプモジュール2が図示の中央位置から半径方向、即ちX‐Y平面内において、ギャップSの大きさだけ全方向に変位可能であり、これは図示の例では場合によってフローティング取り付けとも称される。このギャップSの大きさに応じて、固定要素3に対するクランプモジュール2の最大変位経路が決まる。好適には、ギャップSは、少なくとも0.1 mmであり、従ってクランプモジュールは、中央位置からX‐Y平面内で少なくとも±0.1 mmだけ変位することができる。ただし、フローティング取り付けは、クランプモジュールが全方向、即ち360°変位可能であるとは必ずしも意味せず、むしろ、適用可能であれば、変位可能取り付け又はフローティング取り付けの領域を制限し、極端な場合には変位可能性を一方向に制限すれば十分であり得る。中型サイズのクランプ装置において、肩部16の外径は、固定要素3内の凹部21よりも約0.2 mm~1 mm小さいため、クランプモジュールは、X‐Y平面内で中央位置から半径方向に約0.1 mm~0.5 mmだけ変位することができる。中型サイズとは、クランプ手段1におけるクランプモジュール2が約8~12 cmの直径を有すると共に、約5~8 cmの高さを有するものと理解される。ギャップSの大きさ又は肩部16の外径と凹部21の内径との間の差は、特に各クランプ手段の大きさに依存する。なぜなら、特に異なるサイズのワークピースキャリアに関して異なるサイズを提供できるからである。より大きなワークピースキャリアは、絶対的には、より大きな寸法変化、特に熱によって生じる寸法変化に影響される場合があることを理解されたい。ギャップSのサイズに関する他の基準は、ワークピースキャリア及びクランプベースに使用される材料に依存する。なぜなら、特に異なる材料は通常は異なる熱膨張係数を有するからである。これは、鋼製のクランプベース及びアルミニウム製のワークピースキャリアなどにおいて、実際のケースで頻繁に起こり得る。従って、特定の実施形態においては、1ミリメートルを超えるギャップSが設けられることが十分に想定可能である。例えば、特定の構造形態、特に極めて大きな実施形態においては、約2 mmのオーダーまでのギャップSを設けることができ、これは固定要素3に対するクランプモジュール2に関して±2 mmの変位経路に対応する。
【0039】
クランプモジュール2の内部に配置された作動ピストン4は、軸線方向、即ちZ方向において、図示の上方の開始位置と下方のロック位置との間で変位可能である。図示の実施例において、圧縮ばねの作用下にある作動ピストン4は、下方に変位させたロック位置に位置している。作動ピストン4は、下降時に、その外側に配置されると共に、上方に向けてわずかに円錐形に広がる圧力面6によってクランプボール15を半径方向外方に向けて押圧する。実際の圧力面6の下方には持ち上げ面6aが延びており、その持ち上げ面は、圧力面6とは対照的に、水平方向に対して小さな角度を形成している。持ち上げ面6aは、作動ピストン4の下降に際して、作動ピストン4の経路(ストローク)毎に、クランプボール15が第1段階においては半径方向に迅速に又は外方に向けて遠く変位するよう機能するのに対して、第2段階においては作動ピストン4の経路(ストローク)毎に、圧力面6によってクランプボール15が比較的小さな半径方向変位のみを生じる。加えて、圧力面6の形状は、作動ピストン4がセルフロックによってロック位置に留まるよう設計されている。各クランプモジュールのフローティング取り付けと組み合わせたそのような二段階の「インフィード」構成は、互いに極めて正確に調整しなければならない円錐形の芯出しと比べて、芯出しにとって決定的な要素の製造公差に対する要件を小さくする。
【0040】
更に、
図3における断面図においては、液圧ライン33及び空圧ライン36が下側からインサート8のシャフトを介してクランプモジュール2の内部に通じていることが分かる。液圧又は空圧接続ライン33a,36aは、概略的にのみ図示されている。何れにせよ、2つの接続ライン33a,36aは、クランプモジュール2が所定のフレームワーク内で半径方向に変位したとしても、堅固な接続が可能になるよう構成されている。液圧ライン33は、作動ピストン4の中央部分の上方に配置された環状スペース34に対して半径方向に開口し、その環状スペースは、過剰圧力で液圧的に負荷することができる。空圧ライン36は、複数の洗浄開口37と接続され、これら開口を介して、対向面を洗浄するために空気を吹き出すことができる。一方の芯出し溝23の一方の側面には、直径が拡大された排気開口37aが設けられている。このような排気開口37aを介して空圧ライン内の圧力が急速に低下するため、芯出しカムによって閉鎖/密閉されていない場合、排気開口37aは、特に、クランプ要素26が設けられたワークピースキャリアが存在すると共に、クランプ手段1上に堅固に締め付けられているか否かを検出するのに使用することができる。少なくとも2 mmの直径を有する拡大された排気開口37aの更なる利点は、例えば1.5 mm未満の直径を有する比較的小さな開口と比べて、汚染され難くほぼ詰まりを生じないことである。更に、作動ピストン4の下方に配置された圧力チャンバ32内に通じる液圧ライン35が図示されている。クランプモジュール2の上側には、円錐状に延びる芯出し面18が図示されている。これに加えて、3個のタペット10のうちの1個及び3個の圧縮ばねのうちの1個が図示されている。各タペット10のシャフトは、作動ピストン4の孔38内に部分的に収容されており、この場合に孔38の深さは、作動ピストン4の上昇に際して、タペットシャフトの端部が、上方に向けられた移動の終了時に初めて孔38の底部に完全に立つと共に、作動ピストン4の上方に向けた持ち上げ移動の終了部分でイジェクト要素19が作動ピストン4によって押圧されるよう構成されている。作動ピストン4を上方の開始位置に向けて移動させるために、作動ピストン4の下方における圧力チャンバ32が過剰圧力で液圧的に負荷され、これにより作動ピストン4が3個の圧縮ばね力に抗して上方に向けて変位する。
【0041】
ワークピースキャリア上に配置されたクランプスピゴットと、それに対応して構成されたクランプチャックとを備えるクランプシステムと比べると、本発明に従って構成されたクランプ装置においては、大幅に大きなクランプ力を実現することができる。なぜなら、クランプモジュール2を半径方向に包囲すると共に、環状に構成されたクランプ要素26は、明らかにより大きなクランプ面を有し、特に、円筒形のクランプモジュール2は、比較的大きな外径を有すると共に、従来のクランプチャックと比べてクランプ部材15を明らかに多く有するからである。作動ピストン4に設けられた窪みにより、個々のクランプ部材15は、更により大きな力を伝達することができる。
【0042】
図4は、開始位置にあるクランプ手段を、クランプ手段上に緩く配置されると共に、ワークピースキャリア44の段付き凹部45に配置されたクランプ要素26と一緒に断面図で示す。Z支持部として機能するクランプ要素26における平坦な下側及びクランプ要素26の芯出しカム28は、ワークピースキャリア44の下側48に対して後退している。これにより、各クランプ要素26は、ワークピースキャリア44に保護された状態で収容されている。固定要素3をクランプベース50に対して固定する前に正確に位置合わせするために、ピン42が設けられ、これらピンは、固定要素3及びクランプベース50における対応の止まり孔内に差し込まれる。同様に、クランプ要素26をワークピースキャリア44に対して芯出しするためにピン43が設けられている。固定要素3をクランプベース50上に固定するために従来のねじ接続部が提供されるが、その詳細については省略するものとする。クランプ要素26もやはりワークピースキャリア44にねじ固定されるが、その詳細については省略するものとする。作動ピストン4を図示の上方における開始位置に変位させるには、ピストン4の下方における圧力チャンバ32が過剰圧力で負荷される。作動ピストン4の上方に向けられた移動に際して、各タペット10は、上方移動の終了直前に、作動ピストン4内における孔の底部に立っており、上方移動の終了部分に関与する。これにより、タペット10は、イジェクト要素19をクランプハウジング13の上側を越えて約1 mm押圧し、従ってイジェクト要素19が段付き凹部45の底部に接触し、ワークピースキャリア44がZ方向に支持されるか又は僅かに持ち上げられる。
【0043】
持ち上げられた状態において、作動ピストン4の環状溝5は、クランプ部材15の高さに位置し、これにより各クランプ部材が内側に向けて環状溝5内に変位可能であり、従って図示のクランプ手段1の開始状態において、クランプ要素26は、クランプ手段1上に配置することができ、又は取り外すこともできる。
【0044】
凹部45の深さ及び段46の高さの両方が、クランプモジュール2と一緒にクランプ手段1に調整されることにより、ワークピースキャリア44は、クランプ手段1に配置される際にイジェクト要素19に当接する。具体的には、イジェクト要素19は、クランプ要素26がそのカムを介してクランプ手段の溝に係合し、X‐Y平面内の一方向において最終的に芯出しされる前に、段付き凹部45の底部に当接する。何れにせよ、各要素、即ちワークピースキャリア44、凹部45、クランプ要素26、並びにクランプ手段1/イジェクト要素19は、ワークピースキャリア44が緩く配置された状態においては、クランプ手段1のZ支持部24(
図1参照)とクランプ要素26の平坦な下側28(
図1参照)との間に約1 mmのオーダーの隙間が存在するよう、互いに調整されている。この場合、クランプ要素26のカムは、クランプ手段1の溝に係合し、クランプ要素26をクランプ手段1に対してX‐Y平面内の一方向に大まかに芯出しする。クランプ要素26がワークピースキャリア44内の凹部に嵌め込まれると共に、Z芯出し部として機能する平坦な下側がワークピースキャリア44の下側49に対して後退していることにより、クランプ要素26は、機械的損傷などの外的影響から効果的に保護されている。クランプ要素26は、連続的に平坦な下側29の代わりに、平坦な表面部分を部分的にのみ有していてもよい。
【0045】
図5は、ロック位置にあるクランプ手段を、クランプ要素26によってクランプ手段1上に締め付けられたワークピースキャリア44と一緒に示す。作動ピストン4が開始位置から図示のロック位置に移動できるよう、圧力チャンバ32内の過剰圧力が減少され、これにより作動ピストン4が圧縮ばね8の作用によって下方に向けて移動する。この場合、作動ピストンは、その外側に配置されると共に、上方に向けて僅かに円錐状に広がる圧力面6により、クランプボール15を半径方向外方に向けて押圧する。クランプボール15は、クランプ要素26の環状に周回するクランプ面27(
図3参照)に接触し、クランプ要素26の平坦な下側がクランプ手段1のZ支持部24(
図1参照)に当接するまで、クランプ面27をZ方向において下方に向けて引っ張る。作動ピストン4の下降時にイジェクト要素19が下方の静止位置に自動的に移動しない場合、イジェクト要素19は、特にタペット10が作動ピストン4内における孔38の底部にもはや立っておらずイジェクト要素19と一緒に下方に向けて変位可能であるため、ワークピースキャリア44内における凹部45の底部によって下方に向けて押圧される。
【0046】
クランプ要素26をクランプ手段1上に締め付ける際、クランプ要素26のカムは、クランプ手段の溝上に当接し、クランプ要素26をクランプ手段1に対してX‐Y平面内の一方向に正確に芯出しする。好適には、スピゴット・溝芯出し要素は、クランプ要素26の平坦な下側がクランプ手段1のZ支持部24(
図1参照)に配置される前、即ちクランプ要素26の下側とZ支持部24との間に数マイクロメートル~数百分の一ミリメートルのオーダーの隙間が依然として存在するときに、芯出しスピゴットにおける両方の側面が各芯出し溝における両方の溝壁に当接するよう互いに調整されている。このように、クランプ要素26とクランプ手段1との間の微細な芯出しは、クランプ要素26がクランプ手段のZ支持部に当接する前に完了する。
【0047】
Z方向における芯出しプロセスを完了できるようにするために、その芯出しプロセスにとって不可欠なクランプ装置の要素は、クランプ要素の平坦な下側とクランプ手段1のZ支持部24との間の上述したギャップが、芯出しスピゴット及び芯出し溝領域における材料弾性の利用によって解消できるよう、寸法及び形状に関して互いに調整されている。従って、従来技術に従って構成されたクランプシステムの多くに存在するような、Z方向におけるばね弾性的な撓み要素を設ける必要がない。
【0048】
クランプ要素26をクランプ手段1上に締め付けた後、作動ピストン4の上方における環状スペース34を液圧又は空圧で負荷することによってクランプ力を更に高めることができる。作動ピストン4は、セルフロックによってロック位置に保持されるため、液圧的又は空圧的な過剰圧力が除去された後も大きなクランプ力が維持される。
【0049】
空圧ライン36を介して供給される洗浄開口(拡大排気開口を含む)は、クランプ要素26又はその各芯出し要素によってクランプ要素26をクランプ手段1上に締め付ける際に、閉鎖/シールされるよう配置されている。これにより、空圧ライン36内の圧力又は空気流を監視すれば、クランプ要素26が存在するか、また存在する場合には確実に締め付けられているか否かを確認することが可能である。
【0050】
図1~
図5に示すクランプ装置は、クランプシステムを形成するための基本要素を形成し、そのクランプシステムは、特に、大型及び/又は重いワークピース又はワークピースキャリアを加工機械、例えば、フライス盤、研削盤、放電加工機、又は旋盤の作業領域に締め付けることができる。大型又は超大型のワークピースキャリアという用語は、典型的には、約0.5 m~2 mの寸法を有するワークピースキャリアを意味すると理解される。そのようなワークピースキャリア上には、総重量が数千キログラムまでのワークピースを固定することができる。何れにせよ、そのようなクランプ装置は、モジュール式の構成要素を形成し、これにより大型から超大型のクランプシステムを実現することができる。
【0051】
図6は、クランプベース50上に配置されてクランプアセンブリを構成する4個のクランプ手段1a,1b,1c,1dと、ワークピースキャリア44に配置された4個のクランプ要素26a,26b,26c,26dとを備えるそのようなクランプシステムの第1実施形態を示す。図示のように、X及びY軸線は、クランプベース50の上側/表面と平行であるのに対して、Z方向はX及びY軸線に対して垂直である。このように、クランプ装置のX‐Y平面は、クランプベース50の上側/表面によって規定されている。
【0052】
4個のクランプ手段1a~1dは、クランプベース50の上側に配置され、4個のクランプ要素26a~26dは、ワークピースキャリア44における対応の凹部45a,45b,45c,45dに固定されている。クランプベース50は、例えば、加工機械のテーブルであってもよい。クランプ手段1a~1d及びクランプ要素26a~26dは、上述した例示的な実施形態に従って構成されている。ワークピースキャリア44は、連続的で平坦な下側48を有する。この場合、クランプベース50の上側は、やはりX‐Y平面を形成している。X‐Y平面における各プランプモジュール2a~2dのフローティング固定又は変位可能固定の利点は、3個以上のクランプ手段を含むクランプアセンブリの場合に特に発揮される。4個のクランプ手段1a~1dのそれぞれにおいて、各クランプモジュール2a~2dはフローティング取り付けされているのに対して、4個のクランプ要素26a~26dはワークピースキャリア44に堅固かつ不動に接続されている。互いに対角線上に位置しているクランプ手段1a,1c;1b,1d、又は各固定要素3a,3c;3b,3dにおいて、各芯出し溝は、共通の長手方向中心軸線L1,L2上にあるのに対して、互いに対角線上に位置しているクランプ要素26a,26c;26b,26dにおいて、これらの芯出しカム28a,28c;28b,28dは、共通の長手方向中心軸線M1,M2上にある。この場合、4個のクランプ手段1a~1d、又は固定要素3a,3b,3c,3dの各溝23a,23b,23c,23dは、位置及び整列に関して、クランプ要素26a~26d(これらの芯出しカム28a~28dを含む)に対応するよう配置されており、これにより4個のクランプ手段1a~1dによってワークピースキャリア44を締め付ける際にワークピースキャリア44がX、Y、並びにZ方向に位置合わせされる。クランプモジュール2a~2dは、半径方向又はX‐Y平面内において、固定要素3a~3dにフローティングするよう収容されているため、クランプベース50に対するワークピースキャリア44の長さ変化が所定の程度まで受容又は均等化可能である。ただし、取り付けに際しては、クランプベース50上に固定された固定要素3a~3dにおける各中心(中央)間の距離が、横方向のみならず斜め方向においても、ワークピースキャリア44上に固定されたクランプ要素26a~26dの各中央間の距離に可及的に正確に対応し、従ってクランプモジュール2a~2dが半径方向、即ちX‐Y平面内で、クランプベース50に対するワークピースキャリア44の寸法変化(膨張又は収縮)を均等化できるよう留意する必要がある。これにより、X‐Y平面における機械的に過度な拘束を回避する自己芯出しクランプシステムが得られる。クランプモジュール2又は作動ピストンが二段階の「インフィード」を有すると共に、各クランプモジュール2がX‐Y平面内においてフローティングするよう取り付けられることにより、クランプ及び芯出しにとって重要な要素、即ち固定要素3及びクランプ要素26と一緒のクランプモジュール2の製造公差に対して課される要件が比較的小さい。
【0053】
クランプ手段1a~1dをクランプベース50上に、またクランプモジュール2a~2dをワークピースキャリア44上に取り付ける際には、クランプベース50及びワークピースキャリア44がほぼ同じ温度を有し、これにより例えば熱によるワークピースキャリア44の寸法変化が両方向で吸収/均等化できるよう留意する必要がある。このようなクランプシステムにおけるゼロ点は、クランプベース50上において互いに対角線上に位置するクランプ手段1a~1dの2つの長手方向中心軸線L1,L2の交点P上にある。何れにせよ、ゼロ点Pは、各クランプモジュールがX‐Y平面内で例えば熱によるワークピースキャリア44の寸法変化を受容するために所定方向に移動する場合にも移動せず、従って所定のゼロ点において、ワークピースキャリア44は、クランプベース50上に繰り返し正確に締め付けることができる。試験によれば、ワークピースキャリア44の締め付けに関する繰り返し精度は、約±5マイクロメートルのオーダーで達成されることが判明した。
【0054】
図6に示すように、正方形のクランプベースの場合、隣接するクランプ手段における芯出し要素(芯出し溝)は、互いにそれぞれ約90°回転させた状態にあり、長手方向中心軸線L1,L2が互いに90°で交差している。同じことは正方形のワークピースキャリアにも当てはまり、この場合、隣接するクランプ要素における芯出し要素(芯出しカム)は、互いにやはり約90°回転させた状態にある。正方形ではなく長方形のクランプベースの場合、長手方向中心軸線L1,L2の交差角は基本的に90°から逸脱している。
【0055】
クランプ手段1a~1dのクランプモジュール2a~2cに大面積の円錐形芯出し面18(
図3参照)が設けられていることにより、クランプベース50に対するワークピースキャリア44の位置決めが比較的簡単である。なぜなら、平均的な大きさのクランプ装置の場合、そのクランプモジュール2は約8~12 cmのオーダーの直径を有するため、各クランプ要素26自体が、関連するクランプ手段に対して所定位置に配置される際に最大で約2 cmの横方向オフセットまで芯出しされる。従って、ワークピースキャリア44は、所定位置に配置される前にクランプベース50に対して大まかに、即ち約1~2 cmだけ正確に位置決めすれば十分である。その後の下降時に微細な位置決めが行われ、これは、各クランプ要素26a~26dが、関連するクランプモジュール2a~2dに同心円状に位置合わせされるまで、各クランプ要素の下側が、対応のクランプモジュール2a~2dにおける円錐形面上に沿ってスライドすることによって行われる。この芯出しプロセスにおいては更に、クランプモジュール2a~2dは、X‐Y平面内の所定方向に沿って移動することができると共に、フローティング取り付けのおかげで、関連するクランプ要素26a~26cの対角距離に実質的に対応することによって、関連するクランプ要素26a~26dに位置合わせすることができる。その後にワークピースキャリア44を下降させて各クランプ要素26a~26dの芯出しカムが対応の固定要素3a~3dにおける溝に係合し、ワークピースキャリア44を正確な角度で位置合わせすることができる。その後のワークピースキャリア44の締め付けにおいて、各クランプ要素26a~26dに係合するクランプモジュール2a~2dのクランプボールでクランプモジュール2a~2dが対応のクランプ要素26a~26dにおける中央に向けて正確に移動することにより、対角距離の正確な適合も行われる。この場合、クランプモジュール2a~2dのクランプボールは、各クランプ要素26a~26dの平坦な下側が各固定要素3a~3cのZ支持部上に当接するまで、各クランプ要素26a~26dを下方に向けて引っ張る。固定要素3a~3dがクランプベース50上に固定されると共に、各クランプモジュール2a~2dがすきまばめによって各固定要素3a~3d内にZ方向に収容されていれば、クランプモジュール2a~2dは、ワークピースキャリア44の締め付けに際して上方に向けて「逸れる」ことができず、従って十分に大きなクランプ力が適用できると共に、Z方向に伝達することができる。固定要素3がZ方向に変位不可能であると記載されている場合、一方ではすきまばめの遊びによって、他方では異なる要素及び材料の弾性によって生じる、数マイクロメートルの極めて小さな公差内でZ方向に降伏しないことを意味するわけではない。
【0056】
図7は、より小さなワークピースキャリアに適したクランプシステムの代替的な実施形態を示す。図示のクランプシステムは、クランプベース50上に配置された3個のクランプ手段1a,1b,1cと、ワークピースキャリア44上に配置された3個のクランプ要素26a,26b,26cとを備える。クランプ手段1a,1b,1cは、クランプベース上に均一に分布しているため、3個の全てのクランプ手段1a~1cは、互いに同じ距離を有し、クランプベース上に配置された固定要素3a,3b,3cの芯出し要素(溝)を通る長手方向中心軸線L1,L2,L3は互いにそれぞれ120°の角度を形成している。図示の例において、ゼロ点は、3つの長手方向中心軸線L1~L3の交点P2上にある。ワークピースキャリア44上に配置されたクランプ要素26a~26cは、クランプベース50上のクランプ手段1a~1cに対応するよう配置されている。締め付け状態において、芯出し要素(カム)を通るワークピースキャリア44の長手方向中心軸線M1,M2,M3は、固定要素3a~3cの芯出し要素(溝)を通る長手方向中心軸線L1~L3と平行である。
【0057】
ワークピースキャリア44をクランプベース50上又はクランプアセンブリ上に締め付ける動作モードは、基本的に
図6における例示的な実施形態と同じであるため、ここではこれ以上の詳細については省略するものとする。
【0058】
図8は、クランプシステムの代替的かつ例示的な実施形態を示し、そのクランプシステムは、円形のクランプベース50aと、円形のワークピースキャリア44aとを備える。これらクランプ手段及びクランプ要素は、
図6におけるクランプ手段及びクランプ要素と同じように構成されているため、同じ参照符号が付されている。図示のクランプシステムは、円周に沿ってクランプベース50上に均一に配置されてクランプアセンブリを構成する4個のクランプ手段1a,1b,1c,1cと、これらクランプ手段に対応すると共に、ワークピースキャリア44上に配置された4個のクランプ要素26a,26b,26c,26dとを備える。この場合もX及びY軸線は、クランプベース50aの上側/表面と平行であると共にX‐Y平面を形成しているのに対して、Z方向はX及びY軸線に対して垂直である。
【0059】
4個のクランプ手段1a~1dは、クランプベース50aの上側、好適にはその外側領域、即ち中央から離れた位置に配置されているのに対して、クランプ要素26a~26dは、4個のクランプ手段に対応するよう配置されると共に、ワークピースキャリア44内における対応の凹部45a,45b,45c,45dに保護された状態で収容されている。クランプモジュール2a~2dは、やはりX‐Y平面内においてフローティングするよう取り付けられている。互いに正反対に位置しているクランプ手段1a,1c;1b,1d、又は各固定要素3a,3c;3b,3dにおいて、各芯出し溝23a,23c;23b,23dは、やはり共通の長手方向中心軸線L1,L2上にあるのに対して、互いに正反対に位置しているクランプ要素26a,26c;26b,26dにおいて、これらの芯出しカム28a,28c;28b,28dは、共通の長手方向中心軸線M1,M2上にある。この場合、4個のクランプ手段1a~1d、又は固定要素3a,3b,3c,3dの各溝23a,23b,23c,23dは、位置及び整列に関して、クランプ要素26a~26d(これらの芯出しカム28a~28dを含む)に対応するよう配置されており、これにより4個のクランプ手段1a~1dによってワークピースキャリア44を締め付ける際にワークピースキャリア44aがX、Y、並びにZ方向に位置合わせされる。
【0060】
この場合も、クランプ手段1a,1b,1c,1dをクランプベース50aの外側領域に配置すれば、そのようなクランプ装置が極めて大きなねじりモーメント及び極めて大きな傾斜モーメントの両方を受容できるという利点がある。
【0061】
クランプモジュール2a~2dの各芯出し要素(芯出し溝23a,23b,23c,23d)を通る長手方向中心軸線L1,L2は、クランプベース50aの中央P1で交差しているのに対して、クランプ要素26a~26dの各芯出し要素(芯出しカム28a,28b,28c,28d)を通る長手方向中心軸線M1,M2は、ワークピースキャリア44aの中央P2で交差している。
【0062】
必要に応じて、円形のクランプベースを長方形のワークピースキャリアと組み合わせるか、又は円形のワークピースキャリアを長方形のクランプベースと組み合わせることも勿論可能である。
【0063】
上述した例示的な実施形態は、決定的又は包括的であると見なされないことを理解されたい。従って、本発明の範囲内で、
図6,
図7、並びに
図8における例示的な実施形態の代替として、3個を超える又は4個を超えるクランプ手段を備えるクランプシステムも実現可能である。例えば、6個又は8個のクランプ手段を備えるクランプシステムを形成することができ、超大型のクランプシステムの場合、各クランプモジュールは、半径方向に、即ちX‐Y平面内において、場合によっては上述した0.5 mmよりも大きく変位することができる。4個を超えるクランプ手段の場合、必ずしも全てのクランプ手段又は各クランプ要素に芯出し要素(芯出し溝/芯出しカム)が設けられている必要はなく、場合によっては、個々のクランプ手段及び/又はクランプ要素において、芯出し要素は設けられず、従って各クランプ手段がクランプ機能のみを有し、芯出し機能を有さない構成とすることができる。またワークピースキャリアという用語は、必ずしもワークピースを受けるための要素を意味するわけではなく、場合によっては、工具、又は他の異なるものをその工具上に固定することもできる。この場合、クランプ要素は、場合によってはワークピース上に直接的に固定され、従ってワークピース自体がワークピースキャリアとして機能することができる。更に、ワークピースキャリアは、円形又は長方形である必要はなく、例えば、楕円形、六角形、又は八角形であってもよい。
【0064】
本発明に従って構成されたクランプ手段又はクランプシステムにおける幾つかの利点は、以下のとおり要約することができる:
‐各クランプモジュールが、X‐Y平面内において固定された後も変位可能であるようフローティング取り付けされることにより、ワークピースキャリアの寸法変化を極めて高いクランプ精度で吸収することができる;
‐クランプモジュールのフローティング取り付けにより、X‐Y平面内におけるクランプシステムの機械的に過度な拘束を回避することができる;
‐各クランプモジュールは、極めて大きなクランプ力及び保持力を生じさせることができるだけでなく、大きな横方向力を受容することができる;
‐クランプ手段又は各クランプモジュールは、簡単かつコンパクトに構成されると共に、全体の高さが比較的小さい;
‐クランプ要素は、機械的に保護された状態でワークピースキャリアに固定することができる;
‐モジュール式に構成されたクランプ手段及びクランプ要素により、平均から超大型のクランプシステムを、平均から極めて大きく重いワークピースキャリア用に実現することができる;
‐きわめて大型のワークピースキャリアを、約10~20マイクロメートルの範囲の繰り返し精度でクランプベース上に締め付けることができる;
‐クランプ手段は、様々に構成されたクランプベース上に簡単かつ迅速に配置することができる;
‐クランプ要素は、様々に構成されたワークピースキャリア上に簡単かつ迅速に配置することができる;
‐各クランプ要素は、機械的に、場合によっては更に液圧的又は空圧的に負荷される作動ピストンによって確実にロックされる;
‐作動ピストンは、セルフロックによってロック位置に保持され、停電の際にもクランプ要素の締め付け状態が確実に維持される;
‐圧縮ばねは、エネルギーのない状態でもクランプ力が維持されることを保証する;
‐クランプ手段は、汚れに強く設計されると共に、簡単に洗浄することができる;
‐クランプシステムは、温度によるワークピースキャリアの長さ変化に対して影響を受け難い;
‐各クランプ手段が外側又はコーナー領域に配置され、従ってその位置で芯出し及び据え付けが行われることにより、特に中央近傍に配置されるクランプ手段と比べて、極めて大きなねじりモーメント及び極めて大きな傾斜モーメントの両方を受容することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 クランプ手段
2 クランプモジュール
3 固定要素
4 作動ピストン
5 環状溝
6 圧力面
7 軸線方向窪み
8 圧縮ばね
9 インサート
10 タペット
11 保持リング
12
13 クランプハウジング
14 孔
15 クランプボール(クランプ部材)
16 肩部
17 中央孔
18 円錐形芯出し面
19 イジェクト要素
20
21 凹部(固定要素)
22 突起(固定要素)
23 芯出し溝(固定要素)
24 Z支持部(固定要素)
25
26 クランプ要素
27 クランプ面
28 芯出しカム
29 平坦な下側
30 クランプ手段のねじ
31 クランプ要素のねじ
32 圧力チャンバ(ピストン下方)
33 液圧ライン
34 環状スペース(ピストン上方)
35 液圧供給ライン
36 空圧ライン
37 洗浄開口
38 孔
39 圧力チャンバ(ピストン上方)
40 クランプモジュールの下側
41
42 ベースのピン
43 ワークピースキャリアのピン
44 ワークピースキャリア(パレット)
45 段付き凹部
46 段
47 凹部のベース
48 ワークピースキャリアの下側
49
50 クランプベース
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
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63
64
65
66
67
68
69
70
【外国語明細書】