(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087672
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】搬送ベルトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
B65G15/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197687
(22)【出願日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2021201483
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐太
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA19
3F024BA04
3F024BA06
3F024CA01
3F024CB02
3F024CB09
3F024CB12
(57)【要約】
【課題】接合部に段差や色調の違いを生じさせることなく、ベルトコンベヤ装置へ真っすぐ取り付けることが容易であって、接合部の強度を高く保つことができる搬送ベルトを提供する。
【解決手段】搬送物を搬送する搬送面となるカバー層11と、帆布素材を含む芯体帆布層12と、保護層13とが積層された、有端状のベルトの両端を接合して無端状にした、搬送ベルトであって、保護層13の両端は、樹脂製のファスナー131によって接合されており、カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端は、接着剤或いは熱圧着によって接合されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送面となるカバー層と、
前記カバー層より内周側に積層され、帆布素材を含む、芯体帆布層と、
前記芯体帆布層より内周側に積層される、保護層と
が少なくとも積層された、有端状のベルトの両端を接合して無端状にした、搬送ベルトであって、
前記保護層の両端は、樹脂製のファスナーによって接合されており、
前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端は、接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合されていることを特徴とする、搬送ベルト。
【請求項2】
前記ファスナーによって接合された第1接合部と、前記接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合された第2接合部とは、当該搬送ベルトの周長方向の位置がずれていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項3】
前記保護層の厚みは、前記ファスナーの厚みよりも厚いことを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項4】
当該搬送ベルトは、ベルト幅が20cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項5】
前記カバー層、及び、前記保護層は、不織布で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項6】
前記カバー層、及び、前記保護層は、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項7】
前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端は、それぞれ電光形状をしており、
前記カバー層の前記電光形状をした両端、及び、前記芯体帆布層の前記電光形状をした両端は、それぞれ互いに嵌合するように突き合わされた状態で、前記カバー層の両端を覆う前記補強部材によって接合されており、
前記補強部材は、前記カバー層に熱圧着されていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送ベルト。
【請求項8】
前記搬送面に載置された搬送物を裁断する裁断機構を備えた搬送装置に使用されることを特徴とする、請求項1~7の何れかに記載の搬送ベルト。
【請求項9】
搬送物を搬送する搬送面となるカバー層と、
前記カバー層より内周側に積層され、帆布素材を含む、芯体帆布層と、
前記芯体帆布層より内周側に積層される、保護層と
が少なくとも積層された、有端状のベルトの両端を接合する接合工程を含む、搬送ベルトの製造方法であって、
前記接合工程は、
前記保護層の両端に設置された、樹脂製の複数のフック同士を嵌合する仮接合工程と、
前記複数のフック同士の嵌合によりベルト幅方向に形成された孔にピンを挿入して、前記保護層の両端を接合する、ファスナー接合工程と、
前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端を、接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合する、表面側接合工程と
を含むことを特徴とする、搬送ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に用いる、有端状のベルトを接合した無端状の搬送ベルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤ装置(搬送装置)では、複数のプーリに無端状(環状)の搬送ベルトが取り付けられている。搬送ベルトは、搬送面を形成する表面層(カバー層)と芯体帆布層とを含む、複数の層が積層された有端状(帯状)のベルトから形成される場合がある。有端状のベルトは、その両端部が互いに接合されることにより、接合部を有する無端状の搬送ベルトとして使用される。
【0003】
搬送ベルトの用途としては、例えば、特許文献1に開示されるような、生地の積層裁断装置が挙げられる。このような積層裁断装置では、搬送ベルトを装着したベルトコンベヤ上に生地が積層され、積層された生地はベルトコンベヤによって搬送される。積層された生地にはシールやラベルが貼り付けられ、カメラを使用した画像認識装置などによって制御され、搬送ベルト上で裁断される。この際、搬送ベルトの接合部に段差があると、それに伴って積層された生地にも段差が生じるため、裁断を行う際に不具合が発生する。また、搬送ベルトの接合部の色調が、接合部以外の色調と異なっていると画像認識装置に誤認識等の影響を及ぼす可能性がある。そのため、搬送ベルトの接合部は、段差や色調の違いを生じさせないように接合される必要がある。
【0004】
搬送ベルトの接合方法としては、特許文献2に開示されるようなステップ方式(ラップ式)、差し子方式(電光式、フィンガー式など)、スカイブ方式(テーパ式)などが汎用されている。これらの接合方法では、有端状のベルトの両端部を切削するなどして形状を整えた後に、熱圧着(熱プレス)、または接着剤により接合される。両端部の形状を整えることなく重ね合わせる接合方法(オーバーラップ式)では、接合部の段差が大きくなるという欠点があるが、上記の接合方法では、形状をあらかじめ整えた両端部を接合することにより、段差の発生を抑制する効果が得られる。また、別の接合方法として、特許文献3に開示されるように、両端部に設置された樹脂製フックを嵌合させた後にピンを挿入する方式(ファスナー式)も考案されている。
【0005】
ところで、ベルトコンベヤ装置に搬送ベルトを取り付ける際、あらかじめ無端状に形成された搬送ベルトを取り付ける方法と、有端状の搬送ベルトをベルトコンベヤ装置に掛けまわした後に両端部を接合し、無端状の搬送ベルトとして仕上げる方法とがある。特に、ベルトコンベヤ装置のレイアウトが複雑な場合には、無端状に形成された搬送ベルトを取り付けるのが困難であるため、有端状の搬送ベルトを掛けまわした後に接合する方法が好まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-74640号公報
【特許文献2】特開昭57-9343号公報
【特許文献3】特開2003-42231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベルトコンベヤ装置上で搬送ベルトを接合する場合、搬送ベルトにゆがみや曲がりを発生させることなく、ベルトの進行方向に沿って真っすぐに取り付ける必要がある。ゆがみや曲がりが発生した場合、搬送ベルトが蛇行したり、接合部の一部に応力が集中するためにベルトが破断しやすくなったりする虞があるからである。この点、特許文献2に開示される汎用の接合方法(ステップ方式、差し子方式、スカイブ方式)では、搬送ベルトを真っすぐに取り付けるために相当の注意が必要となり、現場での作業工数を増大させる問題があった。特に、幅の広い搬送ベルトを接合する場合、幅方向の両端における位置ずれが発生しやすいために、上記の問題は顕著であった。
【0008】
これに対し、特許文献3に開示されるファスナー式は、ベルトの両端部にあらかじめ樹脂製フックが取り付けられており、搬送ベルトの両端部の相対位置が固定されるため、ゆがみや曲がりの発生を防止でき、作業工数を低減することが可能となる。しかしながら、接合部の強度が低下しやすい上、接合部の色調が非接合部の色調と異なるために画像認識装置と組み合わせて使用する際に誤認識の原因になるといった問題があった。
【0009】
このように、これまでの接合方法では、接合部に段差や色調の違いを生じさせることなく、ベルトコンベヤ装置へ真っすぐに取り付けることが容易であって、接合部の強度を高く保つという課題を同時に達成することは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、接合部に段差や色調の違いを生じさせることなく、ベルトコンベヤ装置へ真っすぐ取り付けることが容易であって、接合部の強度を高く保つことができる搬送ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、搬送物を搬送する搬送面となるカバー層と、
前記カバー層より内周側に積層され、帆布素材を含む、芯体帆布層と、
前記芯体帆布層より内周側に積層される、保護層と
が少なくとも積層された、有端状のベルトの両端を接合して無端状にした、搬送ベルトであって、
前記保護層の両端は、樹脂製のファスナーによって接合されており、
前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端は、接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、搬送ベルトの内周側をファスナー式とし、搬送ベルトの外周側(搬送面側)を接着剤、熱圧着、或いはカバー層の両端を覆う補強部材といった汎用の接合方法にすることで、ファスナー式による取り付けの容易性、及び、搬送ベルトの両端を接合する際のゆがみの防止と、接着剤、熱圧着、或いはカバー層の両端を覆う補強部材といった汎用の接合方法による搬送ベルトの表面の平滑性及び接合強度の向上とを同時に達成することができる。
【0013】
また、本発明は、上記搬送ベルトにおいて、前記ファスナーによって接合された第1接合部と、前記接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合された第2接合部とは、当該搬送ベルトの周長方向の位置がずれていることを特徴としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1接合部と第2接合部とが、ベルト厚み方向において重なることを避けることができる。これにより、搬送ベルトの表面に段差を生じにくくし、接合強度を高めることができる。
【0015】
また、本発明は、上記搬送ベルトにおいて、前記保護層の厚みが、前記ファスナーの厚みよりも厚いことを特徴としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、搬送ベルトの表面に段差を生じにくくし、接合強度を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、上記搬送ベルトは、ベルト幅が20cm以上であることを特徴としてもよい。
【0018】
ベルト幅が20cm以上の場合は、片手で接合する部分を押さえながら接着剤を塗布するなど他の作業を行うことがとりわけ困難であるため、搬送ベルトのゆがみや曲がりの発生が生じやすい。そのため、複数人での作業が必要となり、作業工数が増加しやすい傾向にある。しかし、上記構成によれば、樹脂製のファスナーを備えることでひとり作業でも搬送ベルトの両端の仮接合を行うことができるため、搬送ベルトの接合作業の容易化に高い効果を発揮する。
【0019】
また、本発明は、上記搬送ベルトにおいて、前記カバー層、及び、前記保護層が、不織布で形成されていることを特徴としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、カバー層、保護層、及び、芯体帆布層が、通気性のある素材で形成されていることから、搬送ベルトの内周側から空気を吸引することにより、搬送面に載置された搬送物を適切な力で固定することができる。
【0021】
また、本発明は、上記搬送ベルトにおいて、前記カバー層、及び、前記保護層が、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴としてもよい。
【0022】
上記構成によれば、カバー層、及び、保護層が、清掃しやすい熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されており、また、ファスナーが搬送面に露出していないことから、食品残渣などがファスナーに堆積することを防止することができる。これにより、衛生的な使用環境が求められる、食品搬送に適した搬送ベルトを提供することができる。
【0023】
また、本発明は、上記搬送ベルトにおいて、前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端が、それぞれ電光形状をしており、
前記カバー層の前記電光形状をした両端、及び、前記芯体帆布層の前記電光形状をした両端は、それぞれ互いに嵌合するように突き合わされた状態で、前記カバー層の両端を覆う前記補強部材によって接合されており、
前記補強部材は、前記カバー層に熱圧着されていることを特徴としてもよい。
【0024】
上記構成によれば、カバー層の電光形状(ジグザグ形状:電光式)をした両端、及び、芯体帆布層の電光形状をした両端が、それぞれ互いに嵌合するように突き合わされており、カバー層の両端及び芯体帆布層の両端はそれぞれベルト厚み方向に重ね合わせていないことから、搬送ベルトの厚みにばらつきが生じないようにすることができる。また、補強部材を、カバー層に熱圧着する際に保護層に設けられたファスナーの接合部も同時に押圧され、押しつぶされているため、ファスナーの接合部における段差の発生を抑制することができる。
【0025】
また、本発明は、上記搬送ベルトは、前記搬送面に載置された搬送物を裁断する裁断機構を備えた搬送装置に使用されることを特徴としてもよい。
【0026】
上記構成の厚みを均一に保つことができる搬送ベルトを、搬送面に載置された搬送物を裁断する裁断機構を備えた搬送装置に使用すれば、生地などの搬送物を裁断機構により裁断する際に、切り込み代などを厳密に管理することができる。
【0027】
また、本発明は、搬送物を搬送する搬送面となるカバー層と、
前記カバー層より内周側に積層され、帆布素材を含む、芯体帆布層と、
前記芯体帆布層より内周側に積層される、保護層と
が少なくとも積層された、有端状のベルトの両端を接合する接合工程を含む、搬送ベルトの製造方法であって、
前記接合工程は、
前記保護層の両端に設置された、樹脂製の複数のフック同士を嵌合する仮接合工程と、
前記複数のフック同士の嵌合によりベルト幅方向に形成された孔にピンを挿入して、前記保護層の両端を接合する、ファスナー接合工程と、
前記カバー層の両端、及び、前記芯体帆布層の両端を、接着剤、熱圧着、或いは前記カバー層の両端を覆う補強部材によって接合する、表面側接合工程と、を含むことを特徴としている。
【0028】
上記方法によれば、仮接合工程により、U字状の樹脂製の複数のフック同士を嵌合させることにより、ピンを挿入しなくても、搬送ベルトの両端をある程度の強度で仮接合させることができる。これにより、搬送ベルトのベルト幅が広い場合であっても、一人作業で容易に搬送ベルトの両端を仮接合することができる。
仮接合が完了した後、複数のフック同士の嵌合によりベルト幅方向に形成された孔にピンを挿入して、本接合することで、フック同士が外れることを防止することができる。
また、フックは樹脂製であることから、表面側接合工程における熱圧着・接着処理や、搬送ベルトの使用中に外力を受けたとしても変形しやすいために、接合部に段差を生じさせにくい上に、仮に、裁断機構に用いた場合にはカット刃の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
接合部に段差や色調の違いを生じさせることなく、ベルトコンベヤ装置へ真っすぐ取り付けることが容易であって、接合部の強度を高く保つことができる搬送ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係る搬送ベルトの側面図及び上面図である。
【
図3】実施形態に係る搬送ベルトの接合部の接合工程の説明図である。
【
図4】実施形態に係る搬送ベルトの接合部の接合工程の仮接合工程の説明図である。
【
図5】実施形態に係る搬送ベルトの接合部の接合工程のファスナー接合工程の説明図である。
【
図6】その他の実施形態に係る搬送ベルトの説明図である。
【
図7】搬送ベルトの接合部におけるラップ式1での接合態様の説明図である。
【
図8】搬送ベルトの接合部におけるラップ式2での接合態様の説明図である。
【
図9】その他の実施形態に係る搬送ベルトの説明図である。
【
図10】その他の実施形態に係る搬送ベルトの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態)
以下、本発明の搬送ベルト1の実施形態を図面に従って説明する。
【0032】
(搬送ベルト1)
本実施形態に係る搬送ベルト1は、長尺な帯状のベルト本体の両端を接合することにより無端状にした平ベルトであり、
図1に示すように、ベルトコンベヤ装置の駆動プーリ2と従動プーリ3との間に巻き掛けられて使用される。本実施形態では、搬送ベルト1の搬送面上に、複数の生地を積層した積層生地(搬送物)を乗せて、従動プーリ3側から駆動プーリ2側に搬送する。なお、搬送物は、物流での各種荷物、油付着品、合板、化学製品など、ベルトコンベヤ装置の搬送用途により変更可能である。
【0033】
搬送ベルト1は、
図3(D)に示すように、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)から内周側へ順に、カバー層11と、芯体帆布層12と、保護層13とが積層された構成をしている。なお、
図3(D)は、
図1の搬送ベルト1の上面図に示すA区間の側面図であり、搬送ベルト1の厚み方向の層を示している。
【0034】
(カバー層11)
カバー層11は、搬送物に直接接触する搬送面になる層であり、本実施形態では、フェルトなどの通気性のある不織布で形成されている。なお、カバー層11としては、搬送物の性質に応じて、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されていてもよく、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリウレタン(PU)系、ポリオレフィン(PO)系のエラストマー(樹脂)などで形成されていてもよい。
【0035】
(芯体帆布層12)
芯体帆布層12は、経糸と緯糸(帆布素材)を交差させて織られた織布(平織り、綾織り、朱子織等)である。例えば、経糸、緯糸をほぼ直角に交差して織られた平織り帆布が使用できる。経糸・緯糸の材質としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、綿繊維などが用いられる。また、経糸・緯糸は、フィラメント(長繊維)を撚り合せたマルチフィラメント、またはモノフィラメントや、短繊維を撚り合せたスパン糸(紡績糸)を用いてもよい。経糸・緯糸の繊度は、フィラメント糸の場合は、500~1500dtexである(スパン糸の場合は、5~22番手)。経糸密度は、70~150本/5cm、緯糸密度は、45~80本/5cmである。
【0036】
また、芯体帆布層12は、接着剤(ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリウレタン(PU)系、ポリオレフィン(PO)系)による接着処理がなされている。この接着処理は、有機溶媒に溶かした接着剤を芯体帆布層12にコーティング、または、芯体帆布層12を接着剤に浸漬することにより行う。
【0037】
(保護層13)
保護層13は、本実施形態では、カバー層11同様に、フェルトなどの通気性のある不織布で形成されている。なお、保護層13としては、搬送物の性質に応じて、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されていてもよく、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ポリウレタン(PU)系、ポリオレフィン(PO)系のエラストマー(樹脂)で形成されていてもよく、芯体帆布層12同様に、織布(平織り、綾織り、朱子織等)で形成されていてもよい。
【0038】
(接合部20)
搬送ベルト1は、
図1~
図3に示すように、長尺な帯状のベルト本体の両端部を接合した接合部20を有している。具体的には、保護層13の両端は、樹脂製のファスナー131によって接合されており、カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端は、接着剤或いは熱圧着によって接合されている。
【0039】
(接合部20:第1接合部)
保護層13の両端は、
図2に示すように、ファスナー131(保護層13の両端に固定された多数のU字状の樹脂製のフック132及び樹脂製のピン133によって構成されている)によって接合されている(第1接合部)。ファスナー131は、
図3及び
図4に示すように、フック132が、保護層13の両端に、ベルト幅方向に、保護層13の両端のフック132同士が互い違いになるように、所定の間隔にて多数固定されている。これにより、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合されている(
図5参照)。また、ファスナー131は、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合させた際に、各フック132の内側をベルト幅方向に挿通するように形成される孔134に、樹脂製のピン133が挿通されている。
【0040】
ここで、フック132のU字状の部分は、保護層13の端から露出する部分の形状のことである。例えば、一本の棒状の部材を螺旋状に巻いたものを、保護層13の端に取り付け、保護層13の端から露出する多数のU字状の部分を、多数のフック132としてもよい(即ち、隣のフック132同士が連結された状態)。また、多数のU字状のフック132(或いはO字状のフック132)を保護層13の端に取り付け、保護層13の端から露出するU字状の部分を、多数のフック132としてもよい(即ち、隣のフック132同士が独立した状態)。
【0041】
また、フック132およびピン133の材質(樹脂)は、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ウレタン樹脂等が好ましい。また、ピン133が孔134から抜けるのを防止する観点から、ピン133の表面には螺旋形状が施されているのが好ましい。
【0042】
なお、フック132のベルト幅方向の幅は、ベルト幅方向に隣接するフック132間の間隙よりも若干広く形成されており、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合させた際に、フック132同士が互いにかみ合って拘束される。このため、保護層13の両端の相対位置が固定されることから、ピン133を孔134に挿通する作業が容易となる。また、フック132は、樹脂製であることから、フック132同士を食い違い状に嵌合させる際は、ベルト幅方向に比較的容易に圧縮されて嵌合させやすく、嵌合した後は外れにくくなっている。
【0043】
また、ファスナー131の厚みは、保護層13の厚みよりも薄くなるように形成されている。即ち、保護層13の厚みは、ファスナー131の厚みよりも厚くなるように形成されている。これにより、搬送ベルト1の搬送面に段差を生じにくくし、接合強度を高めることができる。
【0044】
また、ファスナー131の保護層13への取り付けに関して、本実施形態では、フック132が固定された布136と保護層13とを電光式で接合した後にエンドレスシート(基布とウレタンシートの積層体)で覆うことにより、ファスナー131のフック132を保護層13に設置している(
図2及び
図3(C)参照)。
【0045】
(接合部20:第2接合部)
カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端は、
図3に示すように、スカイブ式の接合方法により接合されている(第2接合部)。このスカイブ式の接合方法では、カバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端を切削して、搬送面に対して勾配を有する接合面19を形成している(
図3(B)参照)。カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端に形成された接合面19は、芯体帆布層12に接着処理がなされているため、熱圧着(熱プレス)より、接合されている。なお、接合面19に接着剤を塗布することにより、接合面19同士を接合してもよい。さらに、接合面19に接着剤を塗布した後に熱圧着を行って、接合面19同士を接合してもよい。接着剤の塗布のみで接合面19同士を接合する場合は、作業工数を低減できる効果があり、熱圧着によって接合面19同士を接合する場合は、接合部20の段差を抑制しやすい効果がある。接着剤と熱圧着とを併用する場合は、接合強度を高めつつ接合部20の段差を抑制しやすい効果がある。
【0046】
なお、本実施形態では、カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端の接合方法として、搬送面に対して勾配を有する面を接合面19とした、スカイブ式の接合方法を採用しているが、搬送面と平行な面を接合面とした、ラップ式の接合方法を採用してもよい(詳細はその他の実施形態(4)参照)。
【0047】
ここで、保護層13におけるファスナー131によって接合された第1接合部と、カバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端における接着剤或いは熱圧着によって接合された第2接合部とは、搬送ベルト1の周長方向の位置がずれている。即ち、ファスナー131(第1接合部)とカバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端(第2接合部)とは、ベルト厚み方向で重ならないように配置されている。第1接合部と第2接合部とが、ベルト厚み方向で重なる場合、段差が生じやすく、接合強度が低下しやすくなるが、第1接合部と第2接合部とを、搬送ベルト1の周長方向にずらすことにより、段差を生じにくくし、接合強度を高めることができる。
【0048】
(搬送ベルト1の使用態様)
搬送ベルト1は、例えば、搬送面上に載置した、複数の生地を積層した積層生地(搬送物)を裁断する、裁断機構を備えた搬送装置に使用される。裁断機構は、搬送ベルト1の搬送面に載置された積層生地を裁断するカット刃や、搬送ベルト1の内周側から、搬送面に載置された積層生地を吸引して、搬送面に保持する吸引機構を備えている。このような裁断機構を備えた搬送装置で積層生地を裁断する際には、切り込み代などを厳密に管理する必要があるため、搬送ベルト1の厚みを均一に保つ要請が強い。このため、上記厚みを均一に保つことができる搬送ベルト1を、裁断機構を備えた搬送装置に使用すれば、積層生地を裁断する際に、切り込み代などを厳密に管理することができる。
【0049】
更に、本実施形態の搬送ベルト1は、カバー層11、及び、保護層13が不織布で形成されており、芯体帆布層12が織布で形成されていることから、搬送ベルト1全体として通気性のある素材で形成されている。このため、吸引機構により、搬送ベルト1の内周側から空気を吸引することにより、搬送面に載置された積層生地を適切な力で固定することができる。
【0050】
(搬送ベルト1の製造方法)
搬送ベルト1の製造方法において、有端で長尺な帯状のベルト本体の両端を接合する接合工程について説明する。
【0051】
まず、
図3(A)に示すように、有端のベルト本体を用意する。そして、
図3(B)に示すように、カバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端を切削して、搬送面に対して勾配を有する接合面19を形成する。そして、
図2及び
図3(C)に示すように、フック132が固定された布136と保護層13とを電光式で接合した後にエンドレスシート(基布とウレタンシートの積層体)で覆うことにより、ファスナー131のフック132を保護層13の両端にそれぞれ設置している(
図2及び
図3(C)参照)。
【0052】
次に、搬送ベルト1の保護層13の両端に設けられたファスナー131のフック132による仮接合を行う。具体的には、
図3~
図5に示すように、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合させる(仮接合工程)。この際、フック132は樹脂で形成されており、フック132のベルト幅方向の幅は、ベルト幅方向に隣接するフック132間の間隙よりも若干広く形成されていることから、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合させた際に、フック132同士が互いにかみ合って拘束される。その結果、保護層13の両端の相対位置が固定される。
【0053】
この仮接合工程により、U字状の樹脂製の複数のフック132同士を嵌合させることにより、ピン133を挿入しなくても、搬送ベルト1の両端をある程度の強度で仮接合させることができる。これにより、搬送ベルト1のベルト幅が広い場合であっても、一人作業で容易に搬送ベルト1の両端を仮接合することができる。
【0054】
また、フック132は、金属製ではなく、樹脂製であることから、フック132同士を食い違い状に嵌合させる際は、ベルト幅方向に比較的容易に圧縮されて嵌合させやすく、嵌合した後は外れにくくなっている。
【0055】
次に、
図5に示すように、保護層13の両端のフック132同士を食い違い状に嵌合させた際に、各フック132の内側をベルト幅方向に挿通するように形成される孔134に、ピン133を挿入して、保護層13の両端を接合する(ファスナー接合工程)。
【0056】
このファスナー接合工程により、フック132同士の嵌合により形成された孔134にピン133を挿入して本接合することで、フック132同士が外れることを防止することができる。
【0057】
次に、カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端を、接着剤或いは熱圧着(熱プレス)によって接合する(表面側接合工程)。具体的には、
図3(D)に示すように、スカイブ式の接合方法により、カバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端を切削して形成された、搬送面に対して勾配を有する接合面19同士を、接着剤或いは熱圧着により接合する。この表面側接合工程を行う際には、既にファスナー131により本接合済みであるため、保護層13の外周側に積層された、カバー層11の両端及び芯体帆布層12の両端のそれぞれの相対位置は固定されており、ずれることはない。そのため、熱圧着作業を行う際や、接着剤を塗布する際に搬送ベルト1にゆがみや曲がりが発生する虞がなく、作業効率を向上させることができる。
【0058】
この表面側接合工程により、搬送ベルト1の搬送面となるカバー層11の接合部20に段差が生じにくい構成にすることができる。
【0059】
上記接合工程を経て、長尺な帯状のベルト本体の両端を接合した接合部20を有する搬送ベルト1が製造される。
【0060】
なお、上記製造方法は、ベルト幅が20cm以上の搬送ベルト1に適用されることが好ましい。ベルト幅が20cm以上の場合は、片手で接合する部分を押さえながら接着剤を塗布するなど他の作業を行うことがとりわけ困難であるため、搬送ベルト1のゆがみや曲がりの発生が生じやすい。そのため、複数人での作業が必要となり、作業工数が増加しやすい傾向にある。しかし、樹脂製のファスナー131を備えることでひとり作業でもベルト本体の両端の仮接合を行うことができるため、搬送ベルト1の接合作業の容易化に高い効果を発揮する。
【0061】
上記接合工程により製造された搬送ベルト1によれば、ファスナー131のフック132及びピン133が、樹脂製であることから、熱圧着や、搬送ベルト1の使用中に外力を受けることにより変形しやすいため、接合部20の段差を生じさせにくい上、製造された搬送ベルト1を、裁断機構を備えた搬送装置に使用した場合には、カット刃の損傷を抑制することができる。
【0062】
また、表面側接合工程により、接着剤或いは熱圧着によって接合する層が少なくとも1層の芯体帆布層12を含むことで、接合部20の強度を高めることができる。また、ファスナー131は搬送ベルト1の内周側に設置されているため、搬送面に露出することがなく、搬送ベルト1の接合部20における段差の発生と色調の変化を抑制することができる。
【0063】
上記搬送ベルト1によれば、当該搬送ベルト1の内周側をファスナー131による接合し、搬送ベルト1の外周側(搬送面側)を接着剤或いは熱圧着といった汎用の接合方法にすることで、ファスナー131による取り付けの容易性、及び、搬送ベルト1の両端を接合する際のゆがみの防止と、接着剤或いは熱圧着といった汎用の接合方法による搬送ベルト1の搬送面の平滑性及び接合強度の向上とを同時に達成することができる。
【0064】
(その他の実施形態)
(1)上記実施形態では、カバー層11、芯体帆布層12、及び、保護層13を積層した3層構造の搬送ベルト1について説明した。本発明は、少なくとも1層の芯体帆布層12を含む3層以上の層を積層した搬送ベルト1に適用可能である。
【0065】
例えば、
図6(A)に示すように、カバー層311(熱圧着や接着剤での接合)、第1芯体帆布層312(熱圧着や接着剤での接合)、保護層313(ファスナー131による接合)、第2芯体帆布層314(熱圧着や接着剤での接合)を積層した4層構造の搬送ベルトであってもよい。また、
図6(B)に示すように、カバー層411(熱圧着や接着剤での接合)、第1芯体帆布層412(熱圧着や接着剤での接合)、第1保護層413(熱圧着や接着剤での接合)、第2芯体帆布層414(熱圧着や接着剤での接合)、第2保護層415(ファスナー131による接合)を積層した5層構造の搬送ベルトであってもよい。また、
図6(C)に示すように、カバー層511(熱圧着や接着剤での接合)、第1芯体帆布層512(熱圧着や接着剤での接合)、第1保護層513(熱圧着や接着剤での接合)、第2芯体帆布層514(熱圧着や接着剤での接合)、第2保護層515(ファスナー131による接合)、第3芯体帆布層516(熱圧着や接着剤での接合)を積層した6層構造の搬送ベルトであってもよい。
【0066】
ここで、ファスナー131による接合を行う層に関し、5層構造の搬送ベルトの場合は、3層構造の搬送ベルトの場合と同様に、搬送ベルトの内周に位置する保護層(第2保護層415)に用いている。一方、搬送ベルトの内周に保護層を有しない場合は、4層構造の搬送ベルトでは保護層313にファスナー131を設け、6層構造の搬送ベルトの場合は、第2保護層515にファスナー131を設ける。つまり、ファスナー131は、保護層の中でも最も内側に位置する保護層に設置する。また、ファスナー131を保護層と当該保護層よりも内側の芯体帆布層とにまたがって設置してもよい。なぜなら、接合部20の強度を高めるためには、熱圧着や接着剤による汎用の接合に用いる芯体帆布層の数を多くするのが好ましく、ファスナー131はできるだけ搬送ベルトの内側の層に設置するのが好ましいからである。
【0067】
(2)上記実施形態では、
図2に示すように、ファスナー131は、搬送ベルト1のベルト幅方向の全体に亘って設置されている。しかし、ファスナー131は、ベルト幅方向の全体に亘って設置されている必要はなく、例えば、
図9に示すように、ベルト幅方向の中央付近で半分程度の長さに亘って設置されていてもよい。即ち、保護層の両端の、ベルト幅方向中央部分のみが、樹脂製のファスナー131によって接合されていてもよい。これは、ファスナー131での接合は最終的な搬送ベルトの接合強度に与える影響は小さく、熱圧着や接着剤による汎用の接合を行う前に必要とされる接合強度を確保できれば事足りるため、必ずしもベルト幅方向の全体に亘って設置されている必要はないためである。
【0068】
(3)上記実施形態では、主に、カバー層11及び保護層13がフェルトなどの不織布である場合について説明したが、カバー層11、及び、保護層13は、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されていてもよい。搬送ベルトで搬送する搬送物が食品等の残渣が生じやすいものである場合、カバー層11、及び、保護層13が、清掃しやすい熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂で形成されており、また、ファスナー131が搬送面に露出していないことから、食品等の残渣などがファスナー131に堆積することを防止することができる。これにより、衛生的な使用環境が求められる、食品搬送に適した搬送ベルトを提供することができる。
【0069】
(4)上記実施形態では、カバー層11の両端、及び、芯体帆布層12の両端の接合方法として、搬送面に対して勾配を有する面を接合面19とした、スカイブ式の接合方法を採用しているが、搬送面と平行な面を接合面とした、ラップ式の接合方法を採用してもよい。ラップ式の接合方法の場合、
図7に示すように、カバー層11と芯体帆布層12とに段差を付けるように切除して接合面119を形成してもよいし(ラップ式1)、
図8に示すように、芯体帆布層12をベルト厚み方向に略均等に切除して接合面219を形成してもよいし(ラップ式2)、あるいは、芯体帆布層12を切除することなく重ね合わせてもよい(不図示)。なお、芯体帆布層12を切除することなく重ね合わせた場合、接合部20に段差が生じやすくなるが、例えば熱圧着により接合する場合には各層が圧縮されたり変形されたりすることによって、搬送ベルト1を使用する際に支障がない程度に段差を小さくすることはできる。スカイブ式の接合方法は接合面19の段差をより抑制しやすく、ラップ式の接合方法では、接合面119を形成しやすい。
【0070】
(5)また、カバー層の両端、及び、芯体帆布層の両端の接合方法としては、カバー層の両端をエンドレスシート(基布とウレタンシートの積層体:補強部材に相当)で覆い、熱圧着により接合してもよい。
【0071】
更に、カバー層の両端、及び、芯体帆布層の両端を強固に固定するため、それぞれの両端をジグザグ状(電光形状)などの非直線形状に形成し、カバー層の両端の接合部をエンドレスシートで覆い、熱圧着により接合してもよい。
【0072】
具体的には、
図10に示す、外周側(搬送面側)から内周側へ順に、カバー層、芯体帆布層、中間層、及び、保護層が積層された搬送ベルトを例示して説明する。
なお、カバー層は、上記実施形態同様に、フェルトなどの通気性のある不織布で形成された層である(搬送面)。また、芯体帆布層も、上記実施形態同様に、織布で形成された層である。また、中間層は、カバー層同様に、フェルトなどの通気性のある不織布で形成された層である。また、保護層は、芯体帆布層同様に、織布で形成された層である。
【0073】
搬送ベルトの内周側は、上記実施形態と同様に、保護層の端部とファスナーのフックが固定された布とが電光式で接合され、更に、その接合部がエンドレスシートで覆われており、保護層の両端のフック同士を食い違い状に嵌合させた際に、各フックの内側に形成される孔に、ピンを挿入することで、ファスナーとして保護層の両端が接合されている。
搬送ベルトの外周側は、カバー層、芯体帆布層、及び、中間層の周長方向の両端がジグザグ状(電光形状)に形成され、ジグザグ状に形成された両端を互いに突き合わせ、その両端を互いに付き合わせた接合部を、エンドレスシート(基布とウレタンシートの積層体)で覆い、熱プレス装置を用いて、エンドレスシートとその接合部とが熱圧着されることにより接合されている。
【0074】
上記構成によれば、カバー層のジグザグ状(電光形状)をした両端、芯体帆布層のジグザグ状をした両端、及び、中間層のジグザグ状をした両端が、それぞれ互いに嵌合するように突き合わされており、カバー層の両端、芯体帆布層の両端、及び、中間層の両端はそれぞれベルト厚み方向に重ね合わせていないことから、搬送ベルトの厚みにばらつきが生じないようにすることができる。また、エンドレスシート(補強部材)を、カバー層に熱圧着する際に保護層に設けられたファスナーの接合部も同時に押圧され、押しつぶされているため、ファスナーの接合部における段差の発生を抑制することができる。
【実施例0075】
(実施例1:作業時間の比較検証)
カバー層(不織布)、芯体帆布層(ポリエステル)、保護層(不織布)を積層した3層構造、ベルト厚み4mm、ベルト幅2m、ベルト長さ10mの搬送ベルトを、裁断機構を備えた搬送装置に取り付ける作業について、実施例1(保護層をファスナーによって接合+カバー層及び芯体帆布層をスカイブ式の接合(接着剤での接合))と、比較例(全ての層をスカイブ式の接合(接着剤での接合))での取り付けに要する時間の比較を行った。ベルト本体の両端の接合部の形状(接合面の切削や、ファスナーの取付等)は予め作製済みとし、裁断機構を備えた搬送装置に取り付ける際に要する時間のみを比較した。なお、実施例1、比較例とも作業は2人で行った。
【0076】
比較例は、ベルト本体の左右端部にガイドをあててベルト本体の位置を調整するのに2分、調整した位置がずれないように固定するのに30秒、接合面に接着剤を塗布するのに3分の合計5分30秒で完了した。
【0077】
一方、実施例1は、U字状のフックを嵌合させるのに20秒、ピンを挿入するのに10秒、接合面に接着剤を塗布するのに3分の合計3分30秒で完了した。
【0078】
今回、比較例では接合面に接着剤を塗布する際に位置ずれが起こることなく比較的スムーズに進めることができたが、接着剤を塗布する際に位置ずれが起こった場合には位置調整からやり直すこととなり、工数が大幅に増加した。これに対して、先に保護層をファスナーで接合した実施例1では接合面に接着剤を塗布する際に位置ずれが起こることはない為、試行回数を重ねる程、接合作業の容易化に高い効果を発揮した。
【0079】
(実施例2)
カバー層(ポリウレタン系樹脂)、第1芯体帆布層(ポリエステル)、保護層(ポリウレタン系樹脂)、第2芯体帆布層(ポリエステル)を積層した4層構造、ベルト厚み1.8mmの搬送ベルトについて、保護層に樹脂製ファスナーを設置し、カバー層と第1芯体帆布層とをラップ式で接合した搬送ベルトを作製した。ラップ式での接合は熱溶着で行った。接合部の厚みは2.6mmであり、非接合部分の厚みと比較して厚くなった。これは元のベルト厚みが1.8mmと薄いために、ファスナーの厚みを十分に吸収できなかったことが原因と考えられるが、ファスナーは搬送ベルトの内側に突出する形となっており、搬送ベルトの搬送面の平滑性は比較的高かった。接合部の引張強力は、非接合部分の引張強力に対して50%であり、ファスナーのみで接合した場合の接合部の引張強力が通常30%程度であるのに対して、引張強力の向上が確認できた。搬送面にはファスナーが露出せず、ラップ式で接合されているため、色調は均一であった。
【0080】
(実施例3)
カバー層(ポリ塩化ビニル系樹脂)、芯体帆布層(ポリエステル)、保護層(ポリ塩化ビニル系樹脂)を積層した3層構造、ベルト厚み4.0mmの搬送ベルトについて、保護層に樹脂製のファスナーを設置し、カバー層と芯体帆布層とをスカイブ式で接合した搬送ベルトを作製した。スカイブ式の接合は接着剤で行った。接合部の厚みは4.2mmであり、非接合部分との厚みの差はほとんどなかった。接合部の引張強力は、非接合部分の引張強力に対して70%であり、ファスナーのみで接合した場合の接合部の引張強力が通常30%程度であるのに対して、引張強力の向上が確認できた。搬送面にはファスナーが露出せず、スカイブ式で接合されているため、色調は均一であった。
【0081】
以上の実施例1~3に示したように、接合部に大きな段差や色調の違いを生じさせることなく、搬送装置へ真っすぐ取り付けることが容易であって、接合部の強度を高く保つことができる搬送ベルトを提供するという課題を達成できることが確認された。