(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087690
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】急減圧によるレコード盤クリーニング装置
(51)【国際特許分類】
G11B 3/58 20060101AFI20230616BHJP
【FI】
G11B3/58 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023067465
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591184596
【氏名又は名称】欠田 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】欠田 俊幸
(57)【要約】
【課題】レコード盤のV字型の音溝内部の微小な埃を盤面上からの吸引ではなく、音溝内部で発生した膨張圧力で取り除くことができるレコード盤クリーニング装置を提供する。
【解決手段】レコード盤をその内部に密閉格納できるレコード盤密閉格納容器と、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を上げる昇圧装置と、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を急速に下げる急減圧装置を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコード盤をその内部に密閉格納できるレコード盤密閉格納容器と、前記レコード盤密閉格納容器の内部気圧を上げる昇圧装置と、前記レコード盤密閉格納容器の内部気圧を急速に下げる急減圧装置を備えることを特徴とする、急減圧によるレコード盤クリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レコード盤のクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸引式レコード盤クリーニング装置は、レコード盤面上に配したノズルでレコード盤面の埃を吸引する方式であり、レコード再生時のノイズの原因となるV字形の音溝内部に入り込んだ微小な埃の除去は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レコード再生時のノイズの原因となるV字形の音溝内部に入り込んだ微小な埃を、盤面上からの吸引圧力ではなく、V字形の音溝内部からの膨張圧力で取り除くことができるクリーニング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達する為、急減圧によるレコード盤クリーニング装置は、レコード盤をその内部に密閉格納できるレコード盤密閉格納容器と、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を上げる昇圧装置と、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を急速に下げる急減圧装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
従来のレコード盤面上に配したノズルからは吸引力が及びにくかったV字形の音溝内部に入り込んだ微小な埃を、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を上げた後、急減圧することで、V字形の音溝内部の気体の膨張圧力で浮き上がらせて取り除くことができる。
又、従来のクリーニング装置は吸引口が狭いため、盤面を回転させながら順次クリーニングしていたが、本装置は急減圧によって全盤面を瞬時にクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は基本的な構造を説明用に簡略化したものであり、レコード盤密閉格納容器の開閉構造、気密パッキン、昇圧装置、急減圧装置等、この実施形態に必要な機械要素はすべて既存、既知の簡易な技術である為、図面及び以下の説明で詳細は省略している。
【0009】
盤面上に配したノズルで埃を連続的に吸引する従来の方式では、ポンプの吸引圧力は大気圧よりやや低い程度であり、周囲の盤面上の空気も吸引する為、V字形の音溝内部に入り込んだ微小な埃に対して働く吸引力は非常に小さかった。
【0010】
それに対して、本装置は、密閉加圧するため、容器が耐え得る限りの高圧まで加圧することでき、その高圧から大気圧まで瞬時に急減圧することができる。
従来装置より遥かに大きな気圧差により、V字型の音溝内部で圧縮された空気が急膨張し、その膨張圧力でV字型の音溝内部に入り込んだ微小な埃を、従来とは逆の音溝内部から盤面方向へ、遥かに大きな気圧で排出できるところに本装置の新規性がある。
【0011】
急減圧でレコード盤密閉格納容器内は大気圧に戻るが、減圧が急速であるほど、排気の慣性でレコード盤密閉格納容器内は瞬間的に大気圧以下まで下がる為、より効果が高まる。
【0012】
以下、機械要素について簡略に述べる。
レコード盤密閉格納容器は、
図1では蓋の回転で周囲の凹凸が勘合する圧力鍋と同じ形態であるが、内部にレコード盤が密閉格納できればよく、その形態には限定しない。
レコード盤密閉格納容器内部の昇圧が短時間で完了すること、急減圧できること、安全面等から、空間が少ない構造が望ましい。
レコード盤を縦に保持する構造であれば、排出した埃がV字型の音溝に再度落下しない。
【0013】
昇圧装置は、いわゆる空気入れであり、
図1ではシリンジ内のプランジャーを押すと、密閉圧力容器内の逆止弁が開いて容器内に空気が入る形態だが、その形態には限定しない。
極端な例では、上下二枚の円板でレコード盤を挟む形式のレコード盤密閉格納容器で、挟む時に二枚の円板の周囲をパッキンで密着させたまま円板の間隔を近づけることで内部気圧を上げることもでき、この場合、レコード盤密閉格納容器が昇圧装置を兼ねる。
【0014】
急減圧装置は、いわゆる排気弁であり、
図1ではラッチが排気弁を閉塞位置で固定しており、そのラッチを下げて排気弁を解放して容器内の空気を排出する形態だが、その形態には限定しない。
順次開くバルブより、短時間で開口部が全開になる形態が望ましく、急減圧時にレコード盤の表裏に気圧差が発生しないよう排気口はレコード盤の周囲に設けることが望ましい。
極端な例では、上下二枚の円板でレコード盤を挟んで加圧する形式のレコード盤密閉格納容器で、レコード盤を挟んだ二枚の円板相互の位置を固定しているラッチを外して、蓋が急に開く形で急減圧することもでき、この場合、レコード盤密閉格納容器が急減圧装置を兼ねる。
【0015】
本装置の基本的な使用方法としては、レコード盤密閉格納容器内にレコード盤を密閉格納し、昇圧装置で内部気圧を上げた後、急減圧装置で内部気圧を急減圧すると、レコード盤のV字型の音溝内部で圧縮された空気が急膨張し、その膨張圧力でV字型の音溝内部に入り込んだ微小な埃を音溝の内部からレコード盤面方向へ排出する。
【0016】
本装置のより効果的な使用方法としては、V字型の音溝内部を液体で満たしておくことが望ましい。
この液体は水でも良いが、レコード盤の素材に馴染む洗浄液等であれば、V字型の左右の細かな音溝内部とV字型の音溝内部に入り込んだ微小な埃の周囲にまで浸透する。
液体がV字型の音溝内部とそこに入り込んだ微小な埃の周囲にまで浸透した状態で、レコード盤密閉格納容器の内部気圧を上げ、急減圧すると、V字型の音溝内部に浸透していた液体が一瞬で気化し、空気の数百倍の容積に膨張するため、V字型の音溝内部の微小な埃をより強力に排出することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 レコード盤密閉格納容器
2 昇圧装置
3 逆止弁
4 急減圧装置
5 ラッチ
6 レコード盤