(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087707
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】体操タオル
(51)【国際特許分類】
A47K 10/02 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
A47K10/02 Z
A47K10/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202129
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】399096756
【氏名又は名称】日繊商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】俣野 太一
(57)【要約】
【課題】個人健康プログラムにつながる体操タオルの提供を課題とする。また製造工程が複雑化することや製造コストを抑制することができる体操タオルの提供を課題とする。さらに、体操を行うときに求められる強度や伸縮性を備え、使用者の年齢や体躯の相違への対応について有利な体操タオルの提供を課題とする。
【解決手段】帯状のタオル地1の両端に手の挿入部2を備える。挿入部2は、タオル地を折り返し、折り返されていない非折り返し部11と、折り返された折り返し部12とが、折り返されて重ねられて二重にされ、幅方向縫着部13によって固定されたものである。タオル地は、地糸とパイル糸とを備えた編組織によって構成され、前記地糸は合成繊維が50%以上の合成繊維系糸であり、前記パイル糸は天然繊維が50%以上の天然繊維系糸とすることが適当である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイルを有する帯状のタオル地の両端に手の挿入部を備えた体操タオルにおいて、
前記挿入部は、前記タオル地を折り返し、折り返されていない非折り返し部と、折り返された折り返し部とが、折り返し辺に折り返されて重ねられて二重にされたものであり、
前記非折り返し部と前記折り返し部とは、前記タオル地の長手方向と交わる幅方向縫着部によって固定されたものであり、
前記挿入部に手を挿入した状態で体操をすることができるように構成されたことを特徴とする体操タオル。
【請求項2】
前記タオル地の少なくとも一方の端に第1挿入部と第2挿入部との前記挿入部を備え、
前記第1挿入部は、その両端が前記折り返し辺と前記幅方向逢着部とによって規定され、
前記第2挿入部は、その両端が前記幅方向逢着部によって規定されたことを特徴とする請求項1に記載の体操タオル。
【請求項3】
前記タオル地は、地糸とパイル糸とを備えた編組織によって構成され、
前記地糸は合成繊維が50%以上の合成繊維系糸であり、
前記パイル糸は天然繊維が50%以上の天然繊維系糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の体操タオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟運動や屈伸運動など種々のフィットネス運動に用いることに適する体操タオルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高齢化、超少子化がすすみ、さらにコロナウイルス感染によってテレワーク、リモートワークが新常態となりつつある今日、働き方の改革が進む一方、これにより生ずるストレスの種類が変わってきている。例えば、在宅によるストレスはうつ病につながったり、家族とのコミュニケーションが悪化したりするおれがある。また通勤という適度な運動習慣がなくなり、肩こりや腰痛、脚力等の筋力低下が、懸念される。会議はオンラインとなり、視力も悪化する。
【0003】
他方、社会保障制度は崩壊状態となり、国民全員がピンピンコロリを目標に、働き続けながら、健康な高齢社会を目指さざるを得ない状況にあると言える。
そのために、食、睡眠、入浴習慣、体操、呼吸(体幹強化)などによって自己免疫力を向上させる効果がある新たな健康増進プログラムの開発とその普及推進が進められている。
【0004】
従来、体操タオルとしては特許文献1~3に示すものが知られているが、個人健康プログラムにつなげる目的で開発されたものではなかった。
特許文献1と2には、帯状の生地を使用したタオルであって、前記生地の長手方向の端部に別素材の手の挿入部を設けたものが開示されている。特許文献3には、タオルの両端に手を挿入することができる切り目を設けた浴用タオルが開示されている。
特許文献1と2のタオルにあっては、別素材の挿入部を設けるものであり、部品点数が多くなり縫製などの製造工程も複雑となる。
特許文献3のタオルにあっては、切り目による挿入部を設けるものであり、糸のほつれを防止するには切目の周囲にかがり縫いを施すなどの製造工程が複雑となる。
またいずれの先行技術文献にあっても、体操を行うときに求められる強度や伸縮性について検討されておらず、また、使用者の年齢や体躯の相違への対応について検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3230882号公報
【特許文献2】特開2000-342482号公報
【特許文献3】特開2002-153398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造工程が複雑化することや製造コストを抑制することができると共に個人健康プログラムの推進に適する体操タオルの提供を課題とする。
本発明は、製造工程が複雑化することや製造コストを抑制することができると共に個人健康プログラムにつながる体操タオルの提供を課題とする。
本発明は、体操を行うときに求められる強度や伸縮性を備えた体操タオルの提供を課題とする。
本発明は、使用者の年齢や体躯の相違への対応について有利な体操タオルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の体操タオルは、帯状のタオル地1の両端に手の挿入部2を備える。挿入部2は、タオル地を折り返し、折り返されていない非折り返し部11と、折り返された折り返し部12とが、折り返されて重ねられて二重にされ、幅方向縫着部13によって固定されたものである。タオル地は、地糸とパイル糸とを備えた編組織によって構成され、前記地糸は合成繊維が50%以上の合成繊維系糸であり、前記パイル糸は天然繊維が50%以上の天然繊維系糸とすることが適当である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製造工程が複雑化することや製造コストを抑制することができる体操タオルを提供することができた。
本発明は、体操を行うときに求められる強度や伸縮性を備えた体操タオルを提供することができた。
本発明は、使用者の年齢や体躯の相違への対応について有利な体操タオルを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る体操タオルを示すもので、(A)は裏面図、(B)は変更例に係る裏面図、(C)は正面図。
【
図4】実施例に係る体操タオルを用いて体操を行った際の僧帽筋の筋活動の平均値を示すグラフ。
【
図5】同体操を行った際の僧帽筋の筋活動の値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(体操タオルの構造)
この実施の形態にかかる体操タオルは、パイルを有すると共に必要に応じて周囲の糸処理が施された帯状のタオル地1の両端に、使用者の手を差し入れることができる挿入部2を備えたものである。
【0011】
挿入部2は、タオル地1を折り返して幅方向縫着部13によって縫着することにより形成されている。詳しくは、タオル地1を両端寄りの折り返し辺10から折り返す。この折り返された折り返し部12は、折り返されていない非折り返し部11の上に重ねられる。
【0012】
重ねられた非折り返し部11と折り返し部12は、タオル地1の長手方向と交わる幅方向縫着部13によって固定される。図の例では、幅方向縫着部13は長手方向に対して直交しているミシン目によって設けられているが、斜交していても構わないし、曲線であっても構わないし、断続的に形成されたものであっても構わない。
このように、この体操タオルは折り返して逢着すると言うシンプルな工程で製造することができ、部品点数の削減、工程数の削減、製造コストの削減などを実現することができる。
【0013】
図1(A)の例では、左右両端に1つずつの挿入部2が配置されており、これらの挿入部2は、折り返し辺10と幅方向縫着部13とによって左右両端が規定されており、上下両端は固定されておらず開放されている。従って、使用者は
図2に示すように、挿入部2へ左右の手をそれぞれ挿入して、必要に応じて握るなどして、屈伸運動などのストレッチや様々なフィットネス運動を行うことができる。もちろん、手は、挿入するだけで体操タオルを使うことができるため、握ることが困難な方にも適するものである。
【0014】
図1(B)の例では、左右両端に2つずつの挿入部2が配置されている。挿入部2のうち第1挿入部21は、その両端が折り返し辺10と幅方向縫着部13とによって規定されている。挿入部のうち第2挿入部22は、その両端が2つの幅方向縫着部13によって規定されている。なお、第3第4と挿入部2の数を増やして実施しても構わないし、左右両端で挿入部2の数が異なるものであっても構わない。
このように複数の挿入部2を少なくとも一方の端に設けることによって、使用者の体躯や運動の種類に応じて、手を挿入する位置を変えることができる。
【0015】
例えば、体操タオルの全体の大きさが約15(±5)cm×85(±20)cmとし、1つの挿入部2の長さが約15(±5)cmとすると、
図1(B)の例では、85cm、70cm、55cmの3種類の長さを選択して手をまっすぐに伸ばして抵抗なく挿入して体操をすることができる。
したがって、肩幅を想定した長さと体操がしやすい幅感によって、小さなお子様などでも、正しい姿勢に導かれ、効果的な体操ができる。
【0016】
なお
図1(C)に示すように、体操タオルの表側はタオル地1の非折り返し部11のみが現れ、幅方向縫着部13が、
図1(A)の例の場合には2箇所、
図1(B)の例の場合には4箇所に設けられるものである。
【0017】
(体操タオルの編地の例)
タオルは織り組織で構成されるのが一般的ではあるが、この実施の形態の体操タオルは編み組織が採用されている。これによって、体操タオルの全体に程よい伸縮性をもたらすことができ、運動に際して加わる衝撃や裂ける力を吸収・分散させることができる。その結果、強度並びに使い心地共に、体操に最適なものとすることができる。
【0018】
より具体的には、タオル地1は、地組織を構成する地糸と、地糸と共に編み込まれるパイル糸から構成される。パイルは片面パイルであっても構わないし、両面パイルであっても構わないが、この例では、
図3に示すように、タオル地1の表側ではパイル糸31とパイル糸32との2種のパイル糸を用い、裏側では1種のパイル糸33を用いて、実施している。
【0019】
地糸にはポリエステルなどの合成繊維が50%以上の合成繊維系糸を用いることによって、編組織の構造と相まって、適度な伸縮性と強度を体操タオルに付与することができるし、速乾性の点においても有利となる。
【0020】
パイル糸には、肌触りなどを考慮して天然繊維が50%以上の天然繊維系糸であることが適当である。
例えば、パイル糸31とパイル糸33は綿100%、パイル糸32は綿90%、合成繊維10%として、実施することができる。パイル糸32にも合成繊維を含ませることによって、速乾性を高めたり、除菌性を付与したりするなどの種々の機能性を付与することができる。
【実施例0021】
以下本発明の理解を高めるために実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
【0022】
(実施例の作成)
図示した体操タオルを作成した。パイル糸31とパイル糸33は綿100%、パイル糸32は綿90%、合成繊維10%とし、タオル全体組成は、綿84%、ポリエステル14%、アクリル2%とした。体操タオルの全長は850mm、幅は150mmとし、長さ150mmの第1挿入部21と第2挿入部22を左右にそれぞれ設けた。
【0023】
(実施例の筋活動)
成年男子をテスターとして、僧帽筋の筋活動を筋電測定によって確認した。その結果を、
図4と
図5に示す。試験は、実施例に係る体操タオルの左右の第1挿入部21に、テスターがその左右両手先を伸ばしたまま挿入して体操タオルが弛まない状態を維持しながら、両手を肩の高さまで上げて、上半身を左右に捻る運動を行なった。この運動中の僧帽筋の筋活動を筋電計で計測し、その結果を
図4と
図5の筋電図に示した。
比較例として、体操タオルを用いない状態で同じ動きを行い、その結果を
図4と
図5に併記した。
図4は筋活動の平均値を示したものであり、
図5は時間軸(横軸)に対して筋電位を縦軸に示した筋活動の値を示すものである。両図において、タオルなしが比較例の結果であり、タオルありが実施例の結果である。
図5ではタオルなし(比較例)を濃色で示されたものであって、淡色で示したタオルあり(実施例)の結果の上に重ねて示したものである。
【0024】
(考察)
両図にて示されたとおり、筋活動の両方を示す筋電位が、実施例は比較例に比べて、有意差をもって大きくなっていることが明らかになった。僧帽筋は、主に肩の動きをつかさどっている筋肉で、この部分が緊張すると、肩こりや猫背を引き起こす原因となると言われており、僧帽筋の筋活動を促すことにより僧帽筋の緊張が緩和され、肩こりや猫背の改善につながると言われている。以上の試験の結果、実施例の体操タオルを用いて運動を行うことにより、僧帽筋の筋活動を活発化させ得ることが確認されたものであり、肩こりの改善や姿勢の適正化に寄与し得るものと考えられるものである。