(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087714
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】染料廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20230619BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20230619BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230619BHJP
C08F 220/34 20060101ALN20230619BHJP
【FI】
B01D21/01 111
B01D21/01 107A
C02F1/56 G
C02F1/28 E
C02F1/28 Q
C08F220/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202144
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米倉 温
【テーマコード(参考)】
4D015
4D624
4J100
【Fターム(参考)】
4D015BA05
4D015BA09
4D015BA11
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA09
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4D015DB18
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4D624AA04
4D624AA07
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4J100AB02Q
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4J100JA00
4J100JA18
(57)【要約】
【課題】
廃水処理として使用される有機凝結剤に関するものであり、染料廃水処理としてより性能の高い有機凝結剤及びそれを用いた処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
無機多孔質体添加後、カチオン性単量体及び疎水性単量体成分を重合して得られる高分子からなる有機凝結剤を添加することで染料廃水処理性能の向上を達成することができる。全単量体に対して、カチオン性単量体50~95質量%及び疎水性単量体5~50質量%である単量体成分を重合して得られる高分子からなる有機凝結剤が好ましい。又、無機多孔質体としてベントナイト、カオリン、タルク、シリカゲル、珪藻土から選択される一種以上を使用することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料廃水に、無機多孔質体を添加後、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体及び疎水性単量体である単量体成分を重合して得られる高分子からなる有機凝結剤を添加することを特徴とする染料廃水の処理方法。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は水素又は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記高分子が、全単量体に対して、前記一般式(1)で表されるカチオン性単量体50~95質量%及び疎水性単量体5~50質量%である単量体成分を重合して得られる高分子からなる有機凝結剤であることを特徴とする請求項1に記載の染料廃水の処理方法。
【請求項3】
前記高分子の1質量%水溶液のB型粘度計による回転数60rpm、温度25℃における粘度が5~200mPa・sであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の染料廃水の処理方法。
【請求項4】
前記無機多孔質体が、ベントナイト、カオリン、タルク、シリカゲル、珪藻土から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の染料廃水の処理方法。
【請求項5】
前記有機凝結剤を添加後、高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の染料廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料廃水の処理方法に関するものであり、詳しくは、無機多孔質体及び有機凝結剤を用いた染料を含有する廃水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬品を用いた廃水処理として、無機凝集剤及び/又は有機凝結剤を添加する処方、あるいは無機凝集剤及び/又は有機凝結剤を添加後に高分子凝集剤を添加する処方が一般的である。染料廃水に対しては、有機凝結剤が有効であり、様々な処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、反応染料を含有する着色排水に無機凝集剤、ジシアンジアミド系カチオン脱色剤及び高分子凝集剤を添加する処理方法が開示されている。
特許文献2では、有機色素化合物を含有する廃水に、無機凝集剤及び有機凝結剤、高分子凝集剤を添加する染料廃水の処理方法が開示されており、有機凝結剤としてポリアミン縮合物、ジシアンジアミド縮合物又はジアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物の使用が記載されている。
しかし、無機凝集剤を使用すると発生するスラッジ量が多くなり、又、ジシアンジアミド系高分子としてジシアンジアミド/ホルマリン縮合物の使用は、ホルムアルデヒドの環境あるいは健康への影響が懸念され、ジアルキルアミン・エピクロロヒドリン縮合物は、エピハロヒドリン類の健康への影響が懸念される。
特許文献3では、定義で表示される電荷内包率35%以上90%以下の水溶性高分子からなる染料排水処理剤について開示されている。
しかし、これら処方でも染料の脱色と廃水処理について必ずしも満足な効果が得られない場合があり、より有効な染料廃水の処理処方が要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6-343976号公報
【特許文献2】特開2018-61923号公報
【特許文献3】特開2011-062633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、染料を含有する廃水を対象として有機凝結剤を用いた処理方法に関するものであり、より性能の高い有機凝結剤を用いた染料廃水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、無機多孔質体及び特定の組成を有する高分子からなる有機凝結剤を使用することで染料を含有する廃水処理性能の向上を達成することができることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明における無機多孔質体及び有機凝結剤を使用することで、染料を含有する廃水に対して染料の脱色、廃水処理性能の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における有機凝結剤は、下記一般式(1)で表されるカチオン性単量体及び疎水性単量体を構成単位とする水溶性高分子からなる。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、R
4は水素又は炭素数1~3のアルキルあるいはアルコキシ基、7~20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2~4のアルキレン基を表わす、X
1
-は陰イオンをそれぞれ表わす
【0008】
一般式(1)で表わされるカチオン性単量体のうち三級アミノ基含有カチオン性単量体の例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩等が挙げられる。
又、四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。カチオン性単量体は全単量体に対し、50~95質量%であり、好ましくは60~90質量%であり、更に好ましくは70~90質量%である。
【0009】
本発明において、疎水性単量体とは、20℃の水への溶解度が2質量%以下である単量体を意味する。疎水性単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。疎水性単量体は全単量体に対し、5~50質量%、好ましくは10~40質量%、更に好ましくは10~30質量%である。
【0010】
本発明における高分子は重合成分として更に、非イオン性単量体を含むことができる。非イオン性単量体としては、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等がある。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
非イオン性単量体は全単量体に対し、0~50質量%、好ましくは0~30質量%である。
【0011】
更に、効果を妨げない程度にアニオン性単量体、架橋性単量体を含んでもよい。アニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。架橋性単量体の添加率は全単量体に対し1質量%以下が好ましい。
【0012】
重合に際しては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、分子内に親水性基と疎水性基を有する物質であり、中性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ペンタオキシエチレンオレイルアルコールエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物等、カチオン性界面活性剤としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。これらを二種以上組み合わせることも可能である。界面活性剤存在下、水中で重合することで疎水性単量体を微細分散させる効果が作用し、共重合が促進される。界面活性剤の量が少ないと単量体を微細分散させる効果が小さく、多すぎると溶解時、使用時に発泡の原因となる。界面活性剤の添加率は全単量体に対して0.01質量%~5質量%であり、好ましくは0.05質量%~3質量%、更に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0013】
又、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸及びそのエステル類、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、アリルアミン、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。また、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸アンモニウム等のメタリルスルホン酸塩等の単量体が挙げられる。
【0014】
本発明の高分子は、水溶液重合、乳化重合、分散重合、懸濁重合等のいずれの方法でも得ることができる。以下、水溶液重合の場合について説明する。
本発明の高分子は、カチオン性単量体及び疎水性単量体を必須成分とする単量体成分を重合することにより得られる。重合は、所定の反応容器に単量体混合物、水、ラジカル重合開始剤、必要に応じ界面活性剤、連鎖移動剤を添加し、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、攪拌、加温することにより目的の高分子を得ることができる。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、2、2’-アゾビス[2-(5-メチル-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2、2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系の重合開始剤が挙げられる。又、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等も挙げられる。これらは単独でも使用できるが、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等の還元剤と組合せてレドックス系重合開始剤としても使用できる。重合開始剤の添加率は全単量体に対し0.01質量%~2質量%、好ましくは0.1~1質量%である。
【0016】
重合濃度としては、単量体濃度として10質量%~80質量%であるが、好ましくは15質量%~60質量%である。重合反応は、通常温度30℃~100℃、時間は0.5時間~20時間で行う。
【0017】
得られた高分子は、高分子1質量%水溶液の粘度が5~200mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは10~150mPa・sである。粘度はB型粘度計で回転数60rpm、25℃で測定したものである。粘度がこれより小さいと処理効果が不十分となる。また、粘度がこれより大きいと溶解性が低下し取扱いが困難となる。B型粘度計として、東機産業株式会社製B8M型、TVB-10M型等の汎用品が適宜に使用される。粘度が100mPa・s以下の場合は、1号ローターを用いる。
【0018】
本発明における無機多孔質体として、ベントナイト、カオリン、タルク、シリカゲル、珪藻土等が挙げられる。これら無機多孔質体は多孔質構造により染料に対して高い吸着能を有することが考えられ、無機多孔質体を添加することで染料を吸着、その後、本発明における有機凝結剤を添加することで、高分子が有するより最適な組成によって懸濁物の電荷を中和して凝結反応を起こし無機多孔質体を取り込んだ微細なフロックを形成、処理効果が得られる機構が推測される。これら無機多孔質体の中でベントナイトが好ましい。ベントナイトの主成分は粘土鉱物であるモンモリロナイトである。陽イオンが主としてNa+であるものがNa-モンモリロナイト、Ca2+であるものがCa-モンモリロナイトである。Na-モンモリロナイトが好ましいが、Ca-モンモリロナイトを使用することもできる。又、これら無機多孔質体を二種以上併用することができる。これら多孔質体の表面積は、50~1000m2/gのものが好ましい。比表面積は、BET法により測定することができる。
【0019】
本発明における処理方法では、無機多孔質体及び有機凝結剤を添加後、高分子凝集剤を添加することができる。高分子凝集剤を添加することで、有機凝結剤添加により形成した微細フロック間を架橋吸着作用によりフロックの粗大化が促進され有効である。高分子凝集剤としては、一般的に廃水処理で汎用されるものが適用され、ポリアミジン系高分子凝集剤やポリアクリルアミド系高分子凝集剤等が挙げられる。特にポリアクリルアミド系高分子凝集剤が好ましい。ポリアクリルアミド系高分子凝集剤としては、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の何れでも良いが、アニオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤が好ましい。
【0020】
ポリアクリルアミド系高分子凝集剤として使用するカチオン性単量体は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物である。例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等である。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
アニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。これらを二種以上、組み合わせても差し支えない。
【0021】
ポリアクリルアミド系高分子凝集剤では非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミドを使用するが、(メタ)アクリルアミド以外にN,N’-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン等の非イオン性単量体を組み合わせても差し支えない。
【0022】
ポリアクリルアミド系高分子凝集剤は公知の方法により製造することができる。単量体あるいは単量体混合物を共重合することによって製造することができる。共重合は任意の重合法によって行なう。例えば、水溶液重合、油中水型エマルジョン重合、油中水型分散重合、塩水中分散重合等によって重合した後、水溶液、塩水中分散液、油中水型エマルジョンあるいは粉末等、任意の製品形態にすることができる。高分子凝集剤を製造する際の重合時あるいは重合後、構造変性剤として架橋性単量体を使用することができる。使用する場合は、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン等の架橋性単量体を単量体総量に対し、0.00005~0.050質量%の範囲内で存在させる。又、高分子凝集剤の重量平均分子量では、100万~2000万が好ましい。
【0023】
本発明の処理方法が適用される染料廃水とは、染料を含有する着色廃水のことを言う。着色は主に染料によるものである。染料は、直接染料、反応染料、酸性染料、建築染料、硫化染料等の種類が挙げられる。これらの中でも繊維中の官能基と化学反応して共有結合により作用する反応染料を含む廃水を対象として、より本願発明における処理方法の効果を発揮し好ましい。反応染料の色素母体として黄色系(ピラゾロンアゾ系)、青色系(アントラキノン系)、黒色、紺色系(H酸ジスアゾ系)が挙げられ、反応染料に使用されている反応基としては、スルファトエチルスルフォン等のスルフォン系、モノクロロトリアジン等のトリアジン系、トリクロロピリミジン等のピリミジン系等が導入されており、これら反応染料への適用が好ましい。
【0024】
本発明における有機凝結剤あるいは高分子凝集剤は任意の濃度に水で希釈して添加される。0.01~1.0質量%の範囲が好ましい。廃水に対する添加率は、廃水液量に対し1~1000ppmである。無機多孔質体は、任意に水溶液として用い、0.1~10質量%溶液が好ましい範囲である。添加率は、廃水に対して50~10000ppm、好ましくは100~5000ppmである。又、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄等の無機系凝集剤と併用しても良い。
【実施例0025】
以下に本発明における染料廃水の処理方法について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
(有機凝結剤試料)
本発明における有機凝結剤試料A~Hを水溶液重合により製造した。これらの組成、物性を表1に示す。又、比較有機凝結剤試料1~5を調製、準備した。これらの組成、物性を表2に示す。
【0027】
(表1)
カチオン性単量体;DMM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
疎水性単量体;St:スチレン、BMA:ブチルメタクリレート
形態;AQ:水溶液重合体
1質量%水溶液粘度:高分子濃度が1質量%になるように水で溶解したときの25℃において測定した粘度(mPa・s)。
【0028】
【0029】
(実施試験例1)
黄色系アゾ系反応染料(Drimaren Yellow CL-2R p、アークロマジャパン株式会社)を添加した模擬廃水を調製[pH7.7、SS分12mg/L、吸光度0.407(測定波長390nm)]し、シリンダーテストを実施した。
模擬廃水200mLをシリンダーに採取し、無機多孔質体としてベントナイト(株式会社ボルクレイ・ジャパン品、主成分Na-モンモリロナイト)の5質量%溶液を対廃水液量1000ppm添加、上下転倒攪拌5回後、表1の有機凝結剤試料Aの0.2質量%溶解液を対廃水液量50ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒攪拌5回後、フロックの沈降速度、30分間静置後のスラッジボリューム(SV)、上澄み液の吸光度(分光光度計HACH社製DR-3000、測定波長390nm)を測定した。表1の他の試料についても同様な条件で同様な試験を実施した。又、有機凝結剤試料添加後、高分子凝集剤[市販粉末品、アニオン性ポリアクリルアミド(A-PAM)、アクリルアミド/アクリル酸(90/10モル%)共重合体、重量平均分子量1200万]の0.1質量%溶解液を対廃水液量2.5ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒攪拌5回実施する試験を行った。これらの結果を表3に示す。
【0030】
(比較試験例1)実施試験例1と同じ廃水を用い、表2の有機凝結剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表3に示す。
【0031】
【0032】
本発明における無機多孔質体としてベントナイトと有機凝結剤を添加した実施試験例1では、比較試験例1に比べて吸光度が低く、脱色効果に優れ、沈降速度も速くなることが分かった。試料1添加時では、吸光度は低いものの沈降速度、スラッジボリュームが実施試験例に比べて不良であった。又、ベントナイトを併用しないとほとんど凝集が認めれなかった。
【0033】
(実施試験例2)
黄色系アゾ系反応染料(Drimaren Yellow CL-2R p、アークロマジャパン株式会社)を添加した模擬廃水を調製[pH7.7、SS分12mg/L、吸光度0.332(測定波長390nm)]し、シリンダーテストを実施した。
模擬廃水200mLをシリンダーに採取し、無機多孔質体としてベントナイト(株式会社ボルクレイ・ジャパン品、主成分Na-モンモリロナイト)の5質量%溶液を対廃水液量1000ppm添加、上下転倒攪拌5回後、表1の有機凝結剤試料Aの0.2質量%溶解液を対廃水液量50ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒攪拌5回後、フロックの沈降速度、30分間静置後のスラッジボリューム(SV)、上澄み液の吸光度(分光光度計HACH社製DR-3000、測定波長390nm)を測定した。表1の他の有機凝結剤試料について、あるいはベントナイトの添加率を替えて同様な条件で同様な試験を実施した。又、有機凝結剤試料添加後、高分子凝集剤[市販粉末品、アニオン性ポリアクリルアミド(A-PAM)、アクリルアミド/アクリル酸(90/10モル%)共重合体、重量平均分子量1200万]の0.1質量%溶解液を対廃水液量2.5ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒攪拌5回実施する試験を行った。これらの結果を表4に示す。
【0034】
(比較試験例2)実施試験例2と同じ廃水を用い、表2の有機凝結剤試料を用いて同様な試験を実施した。又、ベントナイトと有機凝結剤の添加順序を替えて実施した。これらの結果を表4に示す。
【0035】
【0036】
本発明における無機多孔質体としてベントナイトと有機凝結剤を添加した実施試験例2では、比較試験例2に比べて沈降速度が速く、脱色効果に優れる傾向にあることが分かった。又、先に有機凝結剤添加後にベントナイトを添加するとほとんど凝集が認めれなかった。
【0037】
(実施試験例3)
青色系アントラキノン系反応染料(Drimaren Blue CL-BR p、アークロマジャパン株式会社)を添加した模擬廃水を調製[pH7.7、SS分14mg/L、吸光度0.315(測定波長592nm)]し、シリンダーテストを実施した。
模擬廃水200mLをシリンダーに採取し、無機多孔質体としてベントナイト(株式会社ボルクレイ・ジャパン品、主成分Na-モンモリロナイト)の5質量%溶液を対廃水液量1000ppm添加、上下転倒攪拌5回後、表1の有機凝結剤試料Aの0.2質量%溶解液を対廃水液量50ppm添加(ポリマー純分)、上下転倒攪拌5回後、フロックの沈降速度、30分間静置後のスラッジボリューム(SV)、上澄み液の吸光度(分光光度計HACH社製DR-3000、測定波長592nm)を測定した。表1の他の試料についても同様な条件で同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0038】
(比較試験例3)実施試験例3と同じ廃水を用い、表2の有機凝結剤試料を用いて同様な試験を実施した。これらの結果を表5に示す。
【0039】
【0040】
本発明における無機多孔質体としてベントナイトと有機凝結剤を添加した実施試験例3では、比較試験例3に比べて沈降速度が速く、吸光度が低く、脱色効果に優れることが分かった。