(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087721
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】シャント抵抗器および電流検出装置
(51)【国際特許分類】
H01C 13/00 20060101AFI20230619BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20230619BHJP
H01C 3/00 20060101ALI20230619BHJP
H01C 1/144 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H01C13/00 J
G01R15/00 500
H01C3/00 Z
H01C1/144
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202160
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】北川 正樹
【テーマコード(参考)】
2G025
5E028
【Fターム(参考)】
2G025AA08
2G025AB05
2G025AC01
5E028BB01
5E028CA12
5E028JA11
(57)【要約】
【課題】抵抗温度係数の絶対値を小さくすることができるシャント抵抗器が提供される。
【解決手段】シャント抵抗器1は、第1突出部11と、第2突出部12と、を有している。第1突出部11は、抵抗体5の一部および一対の電極6,7の一部を有しており、第2突出部12は、抵抗体5の一部および一対の電極6,7の一部を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出に用いられるシャント抵抗器であって、
抵抗体と、
第1方向における前記抵抗体の両端に接続された一対の電極と、を備え、
前記シャント抵抗器は、
前記第1方向に平行な面である、前記シャント抵抗器の第1側面に形成された第1突出部と、
前記第1側面の反対側の面である前記シャント抵抗器の第2側面に形成された第2突出部と、を有しており、
前記第1突出部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部を有しており、
前記第2突出部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部を有している、シャント抵抗器。
【請求項2】
前記第1突出部は、前記第1方向における前記抵抗体の両端に接続された第1電圧検出部および第2電圧検出部を有しており、
前記第2突出部は、前記第1方向における前記抵抗体の両端に接続された第3電圧検出部および第4電圧検出部を有しており、
前記第1電圧検出部および前記第3電圧検出部は、同一の電極に配置されており、
前記第2電圧検出部および前記第4電圧検出部は、同一の電極に配置されている、請求項1に記載のシャント抵抗器。
【請求項3】
前記第1突出部は、前記一対の電極に接続された第1角部および第2角部を有しており、
前記第2突出部は、前記一対の電極に接続された第3角部および第4角部を有しており、
前記第1角部、前記第2角部、前記第3角部、および前記第4角部の少なくとも1つは、鈍角形状、直線形状または曲線形状を有している、請求項1または請求項2に記載のシャント抵抗器。
【請求項4】
前記シャント抵抗器は、
前記第1側面に形成された第1凹部と、
前記第2側面に形成された第2凹部と、を有しており、
前記第1突出部は、前記第1凹部に配置されており、
前記第2突出部は、前記第2凹部に配置されている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のシャント抵抗器。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のシャント抵抗器と、
前記シャント抵抗器からの電圧信号を伝達する電圧信号配線を有する電流検出回路基板と、を備え、
前記電圧信号配線は、前記第1突出部の第1電圧検出部および第2電圧検出部と、前記第2突出部の第3電圧検出部および第4電圧検出部と、に電気的に接続されている、電流検出装置。
【請求項6】
前記電流検出回路基板は、電圧端子用パッドをさらに有しており、
前記電圧端子用パッドは、前記第1電圧検出部、前記第2電圧検出部、前記第3電圧検出部、前記第4電圧検出部、および前記電圧信号配線に接続されている、請求項5に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、
前記電圧演算部は、
前記第1電圧検出部と前記第2電圧検出部との間で測定された電圧値と、前記第3電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、
前記平均化された電圧値を検出電圧値に決定する、請求項5または請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、
前記電圧演算部は、
前記第1電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値、または前記第2電圧検出部と前記第3電圧検出部との間で測定された電圧値を検出電圧値に決定する、請求項5または請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、
前記電圧演算部は、
前記第1電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値と、前記第2電圧検出部と前記第3電圧検出部との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、
前記平均化された電圧値を検出電圧値に決定する、請求項5または請求項6に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器および電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シャント抵抗器は、電流検出用途に広く用いられている。このようなシャント抵抗器は、抵抗体と、抵抗体の両端に接合された電極と、を備えている。一般に、抵抗体は、銅・ニッケル系合金、銅・マンガン系合金、鉄・クロム系合金、ニッケル・クロム系合金等の抵抗合金で構成されており、電極は、銅等の高導電性金属から構成されている。電極には電圧検出部が設けられており、電圧検出部に導線(例えば、アルミワイヤー)を接続することにより抵抗体の両端部で発生した電圧を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-329421号公報
【特許文献2】特表2013-504213号公報
【特許文献3】特開2020-102626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャント抵抗器において、温度変動による影響が小さい条件下での電流の検出を可能にするために、抵抗温度係数(TCR)の特性は、重要である。なお、抵抗温度係数は、温度による抵抗値の変化の割合を示す指標であり、その絶対値が小さいほど抵抗値の変化が小さくなる。
【0005】
そこで、本発明は、抵抗温度係数の絶対値を小さくすることができるシャント抵抗器および電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、電流検出に用いられるシャント抵抗器が提供される。シャント抵抗器は、抵抗体と、第1方向における前記抵抗体の両端に接続された一対の電極と、を備える。前記シャント抵抗器は、前記第1方向に平行な面である、前記シャント抵抗器の第1側面に形成された第1突出部と、前記第1側面の反対側の面である前記シャント抵抗器の第2側面に形成された第2突出部と、を有しており、前記第1突出部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部を有しており、前記第2突出部は、前記抵抗体の一部および前記一対の電極の一部を有している。
【0007】
一態様では、前記第1突出部は、前記第1方向における前記抵抗体の両端に接続された第1電圧検出部および第2電圧検出部を有しており、前記第2突出部は、前記第1方向における前記抵抗体の両端に接続された第3電圧検出部および第4電圧検出部を有しており、前記第1電圧検出部および前記第3電圧検出部は、同一の電極に配置されており、前記第2電圧検出部および前記第4電圧検出部は、同一の電極に配置されている。
一態様では、前記第1突出部は、前記一対の電極に接続された第1角部および第2角部を有しており、前記第2突出部は、前記一対の電極に接続された第3角部および第4角部を有しており、前記第1角部、前記第2角部、前記第3角部、および前記第4角部の少なくとも1つは、鈍角形状、直線形状または曲線形状を有している。
一態様では、前記シャント抵抗器は、前記第1側面に形成された第1凹部と、前記第2側面に形成された第2凹部と、を有しており、前記第1突出部は、前記第1凹部に配置されており、前記第2突出部は、前記第2凹部に配置されている。
【0008】
一態様では、上記シャント抵抗器と、前記シャント抵抗器からの電圧信号を伝達する電圧信号配線を有する電流検出回路基板と、を備える電流検出装置が提供される。前記電圧信号配線は、前記第1突出部の第1電圧検出部および第2電圧検出部と、前記第2突出部の第3電圧検出部および第4電圧検出部と、に電気的に接続されている。
【0009】
一態様では、前記電流検出回路基板は、電圧端子用パッドをさらに有しており、前記電圧端子用パッドは、前記第1電圧検出部、前記第2電圧検出部、前記第3電圧検出部、前記第4電圧検出部、および前記電圧信号配線に接続されている。
一態様では、前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、前記電圧演算部は、前記第1電圧検出部と前記第2電圧検出部との間で測定された電圧値と、前記第3電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、前記平均化された電圧値を検出電圧値に決定する。
一態様では、前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、前記電圧演算部は、前記第1電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値、または前記第2電圧検出部と前記第3電圧検出部との間で測定された電圧値を検出電圧値に決定する。
一態様では、前記電流検出装置は、前記シャント抵抗器に接続された電圧演算部を備えており、前記電圧演算部は、前記第1電圧検出部と前記第4電圧検出部との間で測定された電圧値と、前記第2電圧検出部と前記第3電圧検出部との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、前記平均化された電圧値を検出電圧値に決定する。
【発明の効果】
【0010】
シャント抵抗器は、第1突出部および第2突出部を有している。このような構造を有するシャント抵抗器は、その抵抗温度係数の絶対値を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】シャント抵抗器の一実施形態を示す図である。
【
図2】配線部材が接続されたシャント抵抗器を示す図である。
【
図5】
図5(a)は第1突出部に形成された角部を示す図であり、
図5(b)は第2突出部に形成された角部を示す図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、角部の他の実施形態を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るシャント抵抗器を備えた電流検出装置を示す図である。
【
図8】
図8(a)乃至
図8(d)は、比較例として、片側のみに突出部を備える従来のシャント抵抗器に接続された配線部材を示す図である。
【
図9】
図9(a)乃至
図9(d)は、一実施形態に係るシャント抵抗器に接続された配線部材を示す図である。
【
図10】比較例としての片側のみに突出部を備える従来のシャント抵抗器の、温度変化に伴う抵抗値の変化率を示すグラフである。
【
図11】本実施形態に係るシャント抵抗器の、温度変化に伴う抵抗値の変化率を示すグラフである。
【
図12】シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、シャント抵抗器の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、シャント抵抗器1は、所定の厚みおよび所定の幅を有する抵抗合金板材から構成された抵抗体5と、第1方向における抵抗体5の両端(すなわち、両側接続面)5a,5bに接続された、高導電性金属から構成された一対の電極6,7と、を備えている。
【0014】
電極6は、抵抗体5の一端(一方の接続面)5aに接触する接触面6aを有しており、電極7は、抵抗体5の他端(他方の接続面)5bに接触する接触面7aを有している。電極6,7には、シャント抵抗器1をねじなどで固定するためのボルト穴8,9がそれぞれ形成されている。
【0015】
図2は、配線部材が接続されたシャント抵抗器を示す図である。
図2に示すように、電極6は配線部材(バスバー)40に接続されており、電極7は配線部材(バスバー)41に接続されている。配線部材40,41のそれぞれは、導電性を有する金属から構成されている。配線部材40には、ボルト穴8に連通するボルト穴48が形成されており、配線部材41には、ボルト穴9に連通するボルト穴49が形成されている。
【0016】
第1方向は、抵抗体5の長さ方向であり、シャント抵抗器1の長さ方向に相当する。シャント抵抗器1の長さ方向は、電極6、抵抗体5、および電極7がこの順に配置される方向である。この第1方向に垂直な方向は、第2方向である。第2方向は、シャント抵抗器1の幅方向である。
図1に示すように、電極6,7は、同一の構造を有しており、抵抗体5に関して、対称的に配置されている。
【0017】
抵抗体5の両端5a,5bのそれぞれは、電極6,7のそれぞれに溶接(例えば、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、または、ろう接、はんだ)などの手段によって接続(接合)されている。抵抗体5の材質の一例として、Cu-Mn系合金などの低抵抗合金材を挙げることができる。電極6,7の材質の一例として、銅(Cu)を挙げることができる。抵抗体5は、電極6,7よりも高い抵抗率を有している。
【0018】
図1に示すように、シャント抵抗器1は、その第1側面S1に形成された第1突出部11と、第1側面S1の反対側の面である第2側面S2に形成された第2突出部12と、を有している。第1側面S1および第2側面S2は、第1方向に平行な面である。第1突出部11は第1側面S1から外側に延びており、第2突出部12は第2側面S2から外側に延びている。第1突出部11および第2突出部12は、シャント抵抗器1の中心に関して、対称的に配置されている。
【0019】
図3は、第1突出部の拡大図である。
図3に示すように、第1突出部11は、抵抗体5の一部および電極6,7の一部を有している。第1突出部11は、抵抗体5の両端5a,5bに発生する電圧を測定するための電圧検出部21,22を有している。
【0020】
電圧検出部21は抵抗体5の接続面5bに接続されており、電圧検出部22は抵抗体5の接続面5aに接続されている。電圧検出部21は電極7の一部であり、電圧検出部22は電極6の一部である。言い換えれば、電極7は電圧検出部21を有しており、電極6は電圧検出部22を有している。
【0021】
図4は、第2突出部の拡大図である。
図4に示すように、第2突出部12は、第1突出部11と同一の形状を有している。第2突出部12は、抵抗体5の一部および電極6,7の一部を有している。第2突出部12は、抵抗体5の両端5a,5bに発生する電圧を測定するための電圧検出部23,24を有している。
【0022】
電圧検出部23は抵抗体5の接続面5bに接続されており、電圧検出部24は抵抗体5の接続面5aに接続されている。電圧検出部23は電極7の一部であり、電圧検出部24は電極6の一部である。言い換えれば、電極7は電圧検出部23を有しており、電極6は電圧検出部24を有している。
【0023】
電圧検出部21および電圧検出部23は同一の電極7に配置されており、電圧検出部22および電圧検出部24は同一の電極6に配置されている。電圧検出部23は第2方向において電圧検出部21と同一方向に配置されており、電圧検出部24は第2方向において電圧検出部22と同一方向に配置されている。
【0024】
図5(a)は第1突出部に形成された角部を示す図であり、
図5(b)は第2突出部に形成された角部を示す図である。
図5(a)に示すように、第1突出部11は、電極6に接続された角部53と、電極7に接続された角部54と、を有している。同様に、
図5(b)に示すように、第2突出部12は、電極6に接続された角部55と、電極7に接続された角部56と、を有している。
【0025】
図5(a)に示すように、角部53は第1突出部11の側面11aと電極6の側面6cとの間に配置されており、角部54は第1突出部11の側面11bと電極7の側面7cとの間に配置されている。
図5(b)に示すように、角部55は第2突出部12の側面12aと電極6の側面6bとの間に配置されており、角部56は第2突出部12の側面12bと電極7の側面7bとの間に配置されている。
【0026】
図5(a)および
図5(b)に示す実施形態では、角部53,54,55,56のそれぞれは、曲線形状を有している。一実施形態では、角部53,54,55,56のうちの少なくとも1つは、曲線形状を有してもよい。曲面としての角部53,54,55,56の曲率を変えることにより、シャント抵抗器1は、突出部11,12に流れ込む電流を変更することができる。結果として、シャント抵抗器1は、その抵抗温度係数を調整することができる。
【0027】
角部53,54,55,56は、同一の曲率(または曲率半径)を有してもよく、異なる曲率(または曲率半径)を有してもよい。曲率を小さくすることにより(すなわち、曲率半径を大きくすることにより)、温度上昇に伴う抵抗値の変化率を正側に変化させることができる。逆に、曲率を大きくすることにより(すなわち、曲率半径を小さくすることにより)、温度上昇に伴う抵抗値の変化率を負側に変化させることができる。このように、本実施形態では、シャント抵抗器1の抵抗温度係数を調整することができる。
【0028】
図6(a)および
図6(b)は、角部の他の実施形態を示す図である。
図6(a)および
図6(b)に示すように、角部53,54,55,56の少なくとも1つは、鈍角形状または直線形状を有してもよい。
図6(a)に示す実施形態では、角部53の角度θ1は90度よりも大きく、180度よりも小さな角度である(すなわち、鈍角形状)。
図6(b)に示す実施形態では、角部53の角度θ2は180度である(すなわち、直線形状)。このような構成によっても、シャント抵抗器1の抵抗温度係数を調整することができる。
【0029】
図7は、一実施形態に係るシャント抵抗器を備えた電流検出装置を示す図である。
図7に示すように、電流検出装置30は、シャント抵抗器1と、抵抗体5の電圧を外部に出力する電圧出力装置31と、を備えている。電圧出力装置31は、シャント抵抗器1に接続されている。電圧出力装置31は、シャント抵抗器1からの電圧信号(抵抗体5の電圧)を出力するための出力コネクタ(出力端子)35を備えている。
【0030】
電圧出力装置31は、電流検出回路基板34をさらに備えている。電流検出回路基板34は、シャント抵抗器1からの電圧信号(抵抗体5の電圧)を出力コネクタ35に伝達する電圧信号配線46A,46B,46C,46Dと、グランド配線50,51と、を有している。電圧信号配線46A,46B,46C,46Dは電圧検出回路基板34上に線対称となるように配線されている。電流検出回路基板34は、シャント抵抗器1上に配置されている。
【0031】
電流検出回路基板34は、電圧端子用パッド(より具体的には、銅箔部)36A,36B,36C,36Dをさらに備えている。電圧信号配線46Aの一端は電圧端子用パッド36Aに接続されており、他端は出力コネクタ35に接続されている。電圧信号配線46Bの一端は電圧端子用パッド36Bに接続されており、他端は出力コネクタ35に接続されている。電圧信号配線46Cの一端は電圧端子用パッド36Cに接続されており、他端は出力コネクタ35に接続されている。電圧信号配線46Dの一端は電圧端子用パッド36Dに接続されており、他端は出力コネクタ35に接続されている。グランド配線50の一端は電圧端子用パッド36D(または電圧端子用パッド36C)に接続されており、他端は出力コネクタ35に接続されている。グランド配線51の一端は電圧端子用パッド36C(または電圧端子用パッド36D)に接続されている。
【0032】
電圧端子用パッド36Aは、電流検出回路基板34の内部配線(図示しない)を介して第1突出部11の電圧検出部21の電圧検出位置16Aに電気的に接続されている。電圧端子用パッド36Bは、電流検出回路基板34の内部配線(図示しない)を介して第2突出部12の電圧検出部23の電圧検出位置16Bに電気的に接続されている。電圧端子用パッド36Cは、電流検出回路基板34の内部配線(図示しない)を介して第2突出部12の電圧検出部24の電圧検出位置16Cに電気的に接続されている。電圧端子用パッド36Dは、電流検出回路基板34の内部配線(図示しない)を介して第1突出部11の電圧検出部22の電圧検出位置16Dに電気的に接続されている。
【0033】
上記内部配線と電圧検出部21,22,23,24とは、半田付けなどの手段により接続される。一実施形態では、電圧検出部21,22,23,24上に、半田付けなどの手段により電圧検出端子(垂直に延びる導電性のピン)を設け、電圧検出端子に導線(例えば、アルミワイヤー)を接続する手段や、回路基板に形成したスルーホールに電圧検出端子を挿通する手段により接続してもよい。
【0034】
作業者は、出力コネクタ35に嵌合するコネクタを備えたケーブルを接続して抵抗体5の両端5a,5bに発生した電圧を測定する。このような構成により、簡単に抵抗体5の電圧を測定することができる。一実施形態では、シャント抵抗器1からの電圧信号を増幅するためのオペアンプ(増幅器)、A/D変換器、および/または温度センサなどを電流検出回路基板34に搭載してもよい。
【0035】
図7に示すように、電流検出装置30は、出力コネクタ35および電流検出回路基板34を介してシャント抵抗器1に接続された電圧演算部65を備えている。電圧演算部65は、シャント抵抗器1の検出電圧値を決定する演算装置であり、電圧演算部65の一例として、マイクロコンピュータまたは電圧演算回路を挙げることができる。一実施形態では、電圧演算部65を電流検出回路基板34に備えてもよい。
【0036】
電圧演算部65は、電圧検出部21と電圧検出部22との間で測定された電圧値と、電圧検出部23と電圧検出部24との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、平均化された電圧値を検出電圧値に決定するように構成されている。このように、電圧演算部65は、シャント抵抗器1の第1方向に沿って配置された電圧検出部で測定された電圧の平均値を検出電圧値に決定してもよい。
【0037】
このような構成により、電圧演算部65は、シャント抵抗器1の材料や形状などのばらつきによって抵抗温度係数が影響を受けたとしても、より安定的な検出電圧を出力することができる。
【0038】
一実施形態では、電圧演算部65は、電圧検出部21と電圧検出部24との間で測定された電圧値と、電圧検出部22と電圧検出部23との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、平均化された電圧値を検出電圧値に決定するように構成されてもよい。このように、電圧演算部65は、シャント抵抗器1の第2方向において、対角線上に配置された電圧検出部で測定された電圧の平均値を検出電圧値に決定してもよい。
【0039】
一実施形態では、電圧演算部65は、電圧検出部21と電圧検出部24との間で測定された電圧値、または電圧検出部22と電圧検出部23との間で測定された電圧値を検出電圧値に決定するように構成されている。このように、電圧演算部65は、シャント抵抗器1の第2方向において、対角線上に配置された電圧検出部で測定された電圧値を検出電圧値に決定してもよい。
【0040】
図8(a)乃至
図8(d)は、比較例として、片側のみに突出部を備える従来のシャント抵抗器に接続された配線部材を示す図である。
図9(a)乃至
図9(d)は、一実施形態に係るシャント抵抗器に接続された配線部材を示す図である。
図8(a)乃至
図8(d)における矢印、および
図9(a)乃至
図9(d)における矢印は、電流の流れ方向を示している。
図9(a)では、配線部材40,41はシャント抵抗器1の第1方向に沿って電極6,7に接続されている。
図9(a)に示す配置を、便宜的に、直列配置と呼ぶことがある。
【0041】
図9(b)では、配線部材40,41は、第1突出部11側に延びるように、第2方向に沿って電極6,7に接続されている。
図9(b)に示す配置を、便宜的に、U字配置と呼ぶことがある。
図9(c)では、配線部材40,41は、第2突出部12側に延びるように、第2方向に沿って電極6,7に接続されている。
図9(c)に示す配置を、便宜的に、逆U字配置と呼ぶことがある。
【0042】
図9(d)では、配線部材40は、第1突出部11側に延びるように、第2方向に沿って電極6に接続されており、配線部材41は、第2突出部12側に延びるように、第2方向に沿って電極7に接続されている。
図9(d)に示す配置を、便宜的に、S字配置と呼ぶことがある。
【0043】
図8(a)乃至
図8(d)において、シャント抵抗器は、本実施形態に係るシャント抵抗器1の突出部12に相当する突出部を有していない。
図8(a)では、シャント抵抗器は直列的に配置されており、
図8(b)では、シャント抵抗器は、U字状に配置されており、
図8(c)では、シャント抵抗器は、逆U字状に配置されており、
図8(d)では、シャント抵抗器は、S字状に配置されている。
【0044】
図10は、比較例としての片側のみに突出部を備える従来のシャント抵抗器の、温度変化に伴う抵抗値の変化率を示すグラフである。
図11は、本実施形態に係るシャント抵抗器の、温度変化に伴う抵抗値の変化率を示すグラフである。
図10および
図11のそれぞれにおいて、横軸はシャント抵抗器の温度を示しており、縦軸はシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示している。
【0045】
図11では、電圧検出部21と電圧検出部24との間で測定された電圧値と、電圧検出部22と電圧検出部23との間で測定された電圧値と、を組み合わせた電圧値を平均化し、平均化された電圧値を検出電圧値としたときの抵抗値の変化率が示されている。
【0046】
×点を結ぶ曲線は、配線部材40,41が直列配置されたときのシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示しており、△点を結ぶ曲線は、配線部材40,41がU字配置されたときのシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示しており、○点を結ぶ曲線は、配線部材40,41が逆U字配置されたときのシャント抵抗器の抵抗値の変化率を示している。
【0047】
図10に示すように、配線部材40,41が直列配置された場合、シャント抵抗器の抵抗値の変化率は低いが、配線部材40,41がU字配置および逆U字配置された場合、シャント抵抗器の抵抗値の変化率は非常に高い。このように、片側のみに突出部を備える従来のシャント抵抗器の構造では、配線部材40,41の、シャント抵抗器への接続方向によって抵抗値変化率が異なるため、結果として、シャント抵抗器の取り付け位置を制限する等、設計上の制約になることがある。
【0048】
その一方で、
図11に示すように、配線部材40,41が直線上に配置されない、例えば、配線部材40,41がU字配置された場合、シャント抵抗器1の抵抗値の変化率は、片側のみに突出部を備えるシャント抵抗器の抵抗値の変化率よりも著しく低い。配線部材40,41が逆U字配置された場合であっても、同様に、シャント抵抗器1の抵抗値の変化率は著しく低い。
図11から明らかなように、本実施形態では、配線部材40,41の配置にかかわらず、シャント抵抗器1の抵抗値の変化率は著しく低い。
【0049】
本実施形態によれば、シャント抵抗器1は、第1突出部11および第2突出部12を有しているため、シャント抵抗器1は、配線部材40,41の配置によって変化することなく、抵抗値を測定することができる。言い換えれば、シャント抵抗器1は、自身に流れる電流経路によって変化することなく、抵抗値を測定することができる。
【0050】
本実施形態によれば、シャント抵抗器1は、自身の抵抗値の変化率を全体的に低減することができる。このようなシャント抵抗器1を採用することにより、配線部材40,41の、シャント抵抗器1への接続方向にかかわらず、安定した電流検出が可能となり、結果として、シャント抵抗器1の取り付け位置の設計上の自由度が増す。なお、
図11では示されていないが、配線部材40,41をS字配置した場合であっても、シャント抵抗器1の抵抗値の変化率を著しく低減させることができる。
【0051】
さらに本実施形態によれば、温度変化による熱膨張または熱収縮に起因して、配線部材40,41の、シャント抵抗器1との接点位置が変化し、電流経路が変化したとしても、シャント抵抗器1の抵抗温度係数に与える影響を小さくすることができる。
【0052】
図12は、シャント抵抗器の他の実施形態を示す図である。
図12に示すように、シャント抵抗器1は、第1側面S1に形成された第1凹部71と、第2側面S2に形成された第2凹部72と、を有している。
図12に示す実施形態では、第1突出部11は第1凹部71に配置されており、第2突出部12は第2凹部72に配置されている。
【0053】
このような配置により、第1突出部11と電極6との間には、スリット71bが形成され、第1突出部11と電極7との間には、スリット71aが形成される。同様に、第2突出部12と電極6との間には、スリット72bが形成され、第2突出部12と電極7との間には、スリット72aが形成される。
【0054】
図12に示す実施形態においても、シャント抵抗器1は、第1突出部11および第2突出部12を有するため、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 シャント抵抗器
5 抵抗体
5a,5b 両側接続面
6 電極
6a 接触面
6b,6c 側面
7 電極
7a 接触面
7b,7c 側面
8,9 ボルト穴
11 第1突出部
11a,11b 側面
12 第2突出部
12a,12b 側面
16A,16B,16C,16D 電圧検出位置
21,22,23,24 電圧検出部
30 電流検出装置
31 電圧出力装置
34 電流検出回路基板
35 出力コネクタ
36A,36B,36C,36D 電圧端子用パッド
40,41 配線部材
46A,46B,46C,46D 電圧信号配線
48,49 ボルト穴
50,51 グランド配線
53,54,55,56 角部
65 電圧演算部
71 第1凹部
71a,71b スリット
72 第2凹部
72a,72b スリット