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特開2023-87741流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法、流体供給管付き鋼管杭
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087741
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法、流体供給管付き鋼管杭
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20230619BHJP
   E02D 7/20 20060101ALI20230619BHJP
   E02D 5/30 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E02D5/28
E02D7/20
E02D5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202194
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 名央
(72)【発明者】
【氏名】松井 良典
(72)【発明者】
【氏名】市川 和臣
(72)【発明者】
【氏名】粟津 進吾
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA19
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB13
2D041FA14
2D050AA06
2D050CB23
2D050EE03
(57)【要約】
【課題】回転接合されると共に杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法、流体供給管付き鋼管杭を提供する。
【解決手段】本発明に係る流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法は、回転接合されると共に杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管3を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法であって、下杭側流体供給管3bが取り付けられて地盤に打設された下杭5bの上方に、上杭側流体供給管3aが仮り取付された上杭5aを吊り支持する工程と、上杭側流体供給管3aを下杭側流体供給管3bに接続する流体供給管接続工程と、上杭側流体供給管3aを回転追従しない状態で保持して上杭5aを下杭5bに回転接合する杭回転接合工程と、上杭5aが下杭5bに接合された状態で上杭側流体供給管3aが上杭5a内面に対して移動するのを規制する上杭側流体供給管周方向移動規制工程と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転接合されると共に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法であって、
下杭側流体供給管が取り付けられて地盤に打設された下杭の上方に、上杭側流体供給管が仮り取付された上杭を吊り支持する工程と、前記上杭側流体供給管を前記下杭側流体供給管に接続する流体供給管接続工程と、上杭側流体供給管を上杭の回転に追従しない状態で保持して上杭を下杭に回転接合する杭回転接合工程と、上杭が下杭に回転接合された状態で前記上杭側流体供給管が前記上杭内面に対して周方向に移動するのを規制する上杭側流体供給管周方向移動規制工程と、を備えたことを特徴とする流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法。
【請求項2】
回転接合されると共に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法であって、
下杭側流体供給管が取り付けられて地盤に打設された下杭の上方に上杭を吊り支持する工程と、吊り支持された上杭の内部に上杭側流体供給管を挿入して前記下杭側流体供給管に接続する流体供給管接続工程と、上杭側流体供給管を上杭の回転に追従しない状態で保持して上杭を下杭に回転接合する杭回転接合工程と、上杭が下杭に回転接合された状態で前記上杭側流体供給管が前記上杭内面に対して周方向に移動するのを規制する上杭側流体供給管周方向移動規制工程と、を備えたことを特徴とする流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法。
【請求項3】
前記上杭側流体供給管周方向移動規制工程は、上杭内面に設けた係合部に前記上杭側流体供給管が杭回転接合完了時に係合することで、前記上杭側流体供給管の周方向移動が規制されることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法。
【請求項4】
前記係合部は、杭軸方向に延びて前記上杭側流体供給管が挿入される溝部と、該溝部に向かって登り傾斜となる傾斜面部とを備えてなり、
前記杭回転接合工程は、前記上杭側流体供給管の上端部を、回転方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容して保持し、
上杭側流体供給管周方向移動規制工程は、前記上杭側流体供給管が径方向に移動することで前記傾斜面部を乗り越えて前記溝部に挿入されることを特徴とする請求項3に記載の流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法。
【請求項5】
鋼管と、該鋼管の端部に設けられた継手部と、前記鋼管の管軸方向に配設されて鋼管内面及び/または鋼管先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭であって、
前記鋼管内面に設けられて前記流体供給管に係合して該流体供給管の周方向の移動を規制する係合部を備え、
該係合部は、鋼管を回転接合したときに回転嵌合完了時点で前記流体供給管が係合する位置に設けられていることを特徴とする流体供給管付き鋼管杭。
【請求項6】
前記係合部は、杭軸方向に延びて前記上杭側流体供給管が挿入される溝部と、該溝部に向かって登り傾斜となる傾斜面部とを備えてなることを特徴とする請求項5に記載の流体供給管付き鋼管杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転接合される鋼管杭の回転接合方法に関し、特に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法、流体供給管付き鋼管杭に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の接合には溶接継手が使われることが一般的であるが、火気が使えない場合や、接合時間を短縮する必要がある場合など、継ぎ部に機械式継手を用いるケースが増えてきており、このような機械式継手のひとつにねじ継手がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、鋼管杭を打設する場合、施工性を向上させるため、流体供給管を鋼管杭の上端から下端まで鋼管杭内面に沿って配管し、流体供給管に水、掘削液、空気等を供給して杭下端等から吐出することが行われる(特許文献2、3参照)。
【0004】
流体供給管は、通常、工場や現場で事前に鋼管内面に取り付けられている(固定バンドや溶接等で固定)。(特許文献3:下杭側のパイプ固定)
鋼管杭に継ぎ(現場縦継ぎ溶接部または、置き場での横継溶接部)がある場合、上杭位置決め後、継ぎ部位置での流体供給管はソケットやジョイントパイプなどの部材を介して接続(連結)し、その後に上杭と下杭を溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6575553号公報
【特許文献2】特許第4242251号公報
【特許文献3】特開2018-123670号公報
【特許文献4】特許6354911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼管杭を継杭しながら打設するに際して、流体供給管を鋼管杭の内面に配設する場合、打設時に鋼管内部に流入する土の土圧などに流体供給管が耐え切れず、破損してしまう可能性がある。そのため、流体供給管は鋼管杭の打設前に鋼管杭の内面に固定する必要がある。
また、打設されている下杭に上杭を接合する際には、上杭内に流体供給管を挿通した状態で、下杭と上杭を接合する前に、下杭側の流体供給管の上端と上杭側の流体供給管の下端を接合し、その後、下杭と上杭を接合することになる。
【0007】
このため、上杭と下杭の接合をねじ継手で行う場合、上杭への流体供給管を固定した状態で上杭を回転すると流体供給管がねじれてしまうため、上杭の回転接合ができないという問題があった。
なお、上記の問題は回転接合する機構としてねじ継手を用いたものに限られず、例えば特許文献4に開示された継手のように、外側継手管に内側継手管を挿入完了位置まで挿入して、挿入完了状態で外側継手管又は内側継手管を所定角度回転することで両者が係合して回転接合されるものでも同様の問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、回転接合されると共に杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭において、流体供給管にねじれを発生することなく回転接合が可能な流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法を提供することを目的としている。
また、このような回転接合を可能とする流体供給管付き鋼管杭を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法は、回転接合されると共に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法であって、
下杭側流体供給管が取り付けられて地盤に打設された下杭の上方に、上杭側流体供給管が仮り取付された上杭を吊り支持する工程と、前記上杭側流体供給管を前記下杭側流体供給管に接続する流体供給管接続工程と、上杭側流体供給管を上杭の回転に追従しない状態で保持して上杭を下杭に回転接合する杭回転接合工程と、上杭が下杭に回転接合された状態で前記上杭側流体供給管が前記上杭内面に対して周方向に移動するのを規制する上杭側流体供給管周方向移動規制工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、回転接合されると共に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法であって、
下杭側流体供給管が取り付けられて地盤に打設された下杭の上方に上杭を吊り支持する工程と、吊り支持された上杭の内部に上杭側流体供給管を挿入して前記下杭側流体供給管に接続する流体供給管接続工程と、上杭側流体供給管を上杭の回転に追従しない状態で保持して上杭を下杭に回転接合する杭回転接合工程と、上杭が下杭に回転接合された状態で前記上杭側流体供給管が前記上杭内面に対して周方向に移動するのを規制する上杭側流体供給管周方向移動規制工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記上杭側流体供給管周方向移動規制工程は、上杭内面に設けた係合部に前記上杭側流体供給管が杭回転接合完了時に係合することで、前記上杭側流体供給管の周方向移動が規制されることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記係合部は、杭軸方向に延びて前記上杭側流体供給管が挿入される溝部と、該溝部に向かって登り傾斜となる傾斜面部とを備えてなり、
前記杭回転接合工程は、前記上杭側流体供給管の上端部を、回転方向の移動を規制しつつ径方向の移動を許容して保持し、
上杭側流体供給管周方向移動規制工程は、前記上杭側流体供給管が径方向に移動することで前記傾斜面部を乗り越えて前記溝部に挿入されることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明に係る流体供給管付き鋼管杭は、鋼管と、該鋼管の端部に設けられた継手部と、前記鋼管の管軸方向に配設されて鋼管内面及び/または鋼管先端に流体を供給する流体供給管を備えた流体供給管付き鋼管杭であって、
前記鋼管内面に設けられて前記流体供給管に係合して該流体供給管の周方向の移動を規制する係合部を備え、
該係合部は、鋼管を回転接合したときに回転嵌合完了時点で前記流体供給管が係合する位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記係合部は、杭軸方向に延びて前記上杭側流体供給管が挿入される溝部と、該溝部に向かって登り傾斜となる傾斜面部とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転接合されると共に杭先端に流体を供給する流体供給管を備えた鋼管杭において、流体供給管にねじれを発生させることなく上杭と下杭の回転接合とを容易にかつ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る流体供給管付き鋼管杭の回転接合方法の施工手順の説明図である。
図2】実施の形態における上杭を吊り支持する工程で用いる部材の説明図である。
図3】実施の形態における上杭を吊り支持する工程の一例の説明図である。
図4】実施の形態における上杭を吊り支持する工程で用いる三又部材の設置方法の説明図である。
図5】実施の形態における流体供給管接続工程で用いる接続部材の説明図である。
図6】実施の形態における上杭側流体供給管周方向移動規制工程で用いる係合部の説明図である。
図7】実施の形態における杭回転接合工程と上杭側流体供給管周方向移動規制工程における流体供給管、上杭及び下杭の相対関係の説明図である。
図8】実施の形態の上杭を吊り支持する工程に用いる部材の他の態様の説明図であって、ねじ接合前の状態を示す図である。
図9】実施の形態の上杭を吊り支持する工程に用いる部材の他の態様の要部を説明する図である(その1)。
図10】実施の形態の上杭を吊り支持する工程に用いる部材の他の態様の説明図であって、ねじ接合後の状態を示す図である。
図11】実施の形態の上杭を吊り支持する工程に用いる部材の他の態様の要部を説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態では、杭を回転接合するための機構として、杭端部にねじ継手を用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施の形態は、図1に示すように、ねじ継手1で回転接合されると共に杭軸方向に配設されて杭内面及び/または杭先端に流体を供給する流体供給管3を備えた流体供給管付き鋼管杭5の回転接合方法であって、下杭側流体供給管3bが取り付けられて地盤に打設された下杭5bの上方に、上杭側流体供給管3aが仮り取付された上杭5aを吊り支持する工程(図1(a)参照)と、上杭側流体供給管3aを下杭側流体供給管3bに接続する流体供給管接続工程(図1(b)参照)と、上杭側流体供給管3aを上杭5aの回転に追従しない状態で保持して上杭5aを下杭5bに回転接合する杭回転接合工程(図1(c)参照)と、上杭5aが下杭5bに回転接合された状態で上杭側流体供給管3aが上杭内面に対して周方向に移動するのを規制する上杭側流体供給管3a周方向移動規制工程(図1(d)参照)と、を備えている。
以下、各工程と各工程に用いる機器について説明する。
なお、本発明においては外径が、φ300mm~φ2000mm程度の鋼管杭を対象としている。
【0018】
<上杭を吊り支持する工程>
この工程は、下杭側流体供給管3bが取り付けられて地盤に打設された下杭5bの上方に、上杭側流体供給管3aが仮り取付された上杭5aを吊り支持する工程である(図1(a)参照)。
この工程を実現するための部材としては、例えば図2に示す、吊天秤7(図2(a))と三又部材9(図2(b))が挙げられる。
【0019】
吊天秤7は、図3に示すように、ねじ継手1を有する上杭5aを2箇所で吊り、上杭5aは吊天秤7で吊られることで、吊天秤7と共に回転できる。
三又部材9は、上杭側流体供給管3aを上杭5a内に配置した状態で、上杭5aとは独立して保持するための部材である。
【0020】
三又部材9は、図2(b)に示すように、120度の間隔で配置された3つの辺部9aの基端部が中央で接合され、各辺部9aの先端には上杭側流体供給管3aを挿通するための長穴9b(図4参照)が設けられている。三又部材9を用いることで、3本の上杭側流体供給管3aを保持することができる。
三又部材9は、長穴9bに上杭側流体供給管3aを挿通して保持した状態で上杭5aに仮り取付(着脱可能な固定具で一時的に固定すること)し、図3に示す吊天秤7の中央部に設けたチェーン11などで吊り下げて、上杭5aの上端面近傍に配置する。
【0021】
上記のようにすれば、上杭5aと共に吊天秤7が回転しても、三又部材9は回転することなく上杭5aとは独立した動きをすることができる。このため、三又部材9に保持された上杭側流体供給管3aは、上杭5aの回転に追従することなく保持される。
なお、三又部材9に設けた長穴9bは径方向に長いので、長穴9bに挿通されている上杭側流体供給管3aは長穴9b内を径方向に移動することができる。
【0022】
上記の例は上杭側流体供給管3aが仮り取付された上杭5aを吊り支持するものであったが、上杭5aを吊り支持した後で上杭側流体供給管3aを上杭5a内に挿入するようにしてもよい。
【0023】
<流体供給管接続工程>
流体供給管接続工程は、上杭側流体供給管3aを下杭側流体供給管3bに接続する工程である(図1(b)参照)。
ねじ継手接合部付近の流体供給管3は、回転接合する継手付鋼管杭の鋼管内面形状に対応できるように、例えば、図5に示すように、ねじ継手1を避けるように鋼管内側に向けて屈曲する形状にする。上杭側流体供給管3aの下端や下杭側流体供給管3bの上端の接続部は例えばカプラー13によって接続する。接続用の部材としては、カプラー13の他、ソケットやジョイントパイプ等でもよい。
なお、図5では、ねじ継手1の接続後の配置関係を示している。
【0024】
<杭回転接合工程>
杭回転接合工程は、上杭側流体供給管3aを上杭5aの回転に追従しない状態で保持して上杭5aを下杭5bに回転接合する工程である(図1(c)参照)。
上杭5aを回転する方法としては、特に限定されるものではないが、回転バンド14を使った人力による回転や、牽引工具を用いた回転、施工機械の回転機構を利用した回転などが想定できるが、現場の状況に応じて適切なものを選択すればよい。
本実施の形態では、上杭5aは図3に示すように吊天秤7に吊られているので、簡単に回すことができる。また、流体供給管3aは下杭側流体供給管3bと接続され、かつ三又部材9で保持されているので、上杭5aの回転には追従しない。
【0025】
<上杭側流体供給管周方向移動規制工程>
上杭側流体供給管周方向移動規制工程は、上杭5aが下杭5bに回転接合された状態で上杭側流体供給管3aが上杭5a内面に対して周方向に移動するのを規制する工程である(図1(d)参照)。
本工程の一つの態様として、上杭5a内面に設けた係合部15に上杭側流体供給管3aが、上杭5aの杭回転接合完了時に係合することで、上杭側流体供給管3aの周方向移動が規制されるようにする態様が挙げられる。
【0026】
係合部15の例としては、図6(a)に示すように、平面視で直角三角形の2つのブロック体15aを、各部材の直角を挟む辺部9aを所定の間隔(流体供給管3の外径より少し大きい間隔)離して対向配置することで溝部15bを形成して上杭5a内面に固定したものや、図6(b)に示すように、ブロック体15aとL字片15cを組み合わせたものであって、L字片15cの開口側を上杭5aの周方向の片側に向けて上杭5a内面に固定し、上杭5aの内周面であってL字片15cの開口側にブロック体15aを固定したものが挙げられる。
係合部15の上杭周方向の個数は、流体供給管3の本数に合わせて設定する。また、係合部15の上杭軸方向の個数や設置位置は、上杭5aの寸法(径や長さ)や、杭施工機の仕様に合わせて選択すればよい。もっとも、杭頭付近とねじ継手近傍などには、軸方向の間隔を狭くして複数個設けるようにしてもよい。
【0027】
なお、図6においては、上杭5aの回転に伴い流体供給管3が上杭周方向に相対移動する様子を図示しており、図6(a)の態様では、上杭側流体供給管3が径方向に相対移動することで係合部15であるブロック体15aの傾斜面部を乗り越えて溝部15bに挿入され係止され、図6(b)の態様では、上杭側流体供給管3が径方向に相対移動して係合部15を構成するブロック体15aの傾斜面部を乗り越えてL字片15cとブロック体15aで形成される溝部15bに入って係止される。
【0028】
ねじ継手1の回転接合が完了して流体供給管3の移動規制がなされると接合が完了する。
なお、接合完了後に逆回転を防止するためのピンを設置してもよい。
係合部15によって、流体供給管3の周方向の移動を規制することで、杭貫入時に杭内に流入する土によって流体供給管3が移動するのを効果的に防止でき、杭貫入時の流体供給管3の変形や外れを防止することができる。
【0029】
上述した杭回転接合工程と上杭側流体供給管周方向移動規制工程における流体供給管3、上杭5a及び下杭5bの相対関係について図7に基づいて説明する。図7(A)は上杭5aの内面を、図7(B)は下杭5bの内面をそれぞれ示している。
また、図中のA、Bに付した数字は、図7(A-1)のねじ継手接合前の状態から上杭5aの時計回りへの回転が、数字が大きくなるにしたがって進み、図7(A-5)のねじ継手完了の状態に至ることを示したものである。
【0030】
図7(A-1)の状態から上杭5aが時計回りに回転すると、流体供給管3が係合部15に徐々に近づき(図7(A-2)~図7(A-3))、さらに回転すると、流体供給管3が係合部15の傾斜面部に乗り上げて(図7(A-4))、その後、係合部15の溝部15bに嵌り込む(図7(A-5))。これによって、流体供給管3の周方向への移動が規制される。
一連の流れの中で、図7(B-1)~図7(B-5)に示されるように、下杭5bは回転せず、また下杭5bと流体供給管3の相対位置は変わらない。
【0031】
図7(A-4)に示すように、流体供給管3が係合部15の傾斜面部を乗り越える際には流体供給管3が上杭5aの径内方向に移動しているが、これは図4に示すように、流体供給管3を保持している三又部材9の長穴9bが径方向に延びていることでこの動きの円滑化を図っている。もっとも、仮に長穴9bによる径内方向への移動を許容していなくても、流体供給管3はある程度の長さを有しており撓むことができるので、この撓みによって係合部15の山を乗り越えることもできる。
【0032】
本実施の形態によれば、ねじ継手1で回転接合されると共に杭先端に流体を供給する流体供給管3を備えた鋼管杭において、上杭5aと下杭5bの接合時において流体供給管3の接合と鋼管杭の回転接合と容易にかつ効率よく行うことができる。
【0033】
なお、上記の実施の形態の上杭5aを吊り支持する工程においては、流体供給管3を上杭5aの回転に追従しないように保持するための部材として三又部材9を用いた例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、以下に他の態様について説明する。
【0034】
<他の態様>
他の態様としては、図8図9に示すように、上杭5aの内径よりも若干小径のリング部材17の内側に上杭側流体供給管3aをサドルバンド19で固定し、リング部材17を上杭5aの内周面の4箇所に設置したストッパー21上に載置した態様である。
【0035】
ストッパー21は、図9の部分拡大図に示すように、上杭5aの内周面から径内方向に突出してリング部材17を載置する横片部21aと、横片部21aの先端から上方に立ち上がるように設けられてリング部材17の径内方向への移動を規制する縦片部21bを備えている。
また、リング部材17の外周部には、リング部材17と上杭5aの内周面との摩擦を低減するための摩擦低減部材としてのボールキャスター23を4箇所設けている。ボールキャスター23を設けることで、上杭5aが回転する際に、リング部材17が上杭5aに追従して回転するのを効果的に防止することができる。
【0036】
上記の他の態様によれば、流体供給管3を保持したリング部材17をストッパー21上に載置し、かつ流体供給管3を下杭側流体供給管3bと連結した状態で上杭5aを回転すれば、リング部材17はストッパー21に載置されているだけであり、上杭5aの回転に追従せず、上杭5aの回転接合が進むと上杭5aが下降するのでリング部材17はストッパー21から離れる。このとき、上杭側流体供給管3aはリング部材17を介して互いに支え合うことで上杭5aの内周面に近接した位置を保持している。
そして、ねじ継手1の接合が完了した時点では、上記の実施の形態で説明したように、流体供給管3が係合部15に係止する。
【0037】
図8はねじ継手1の接合前の状態を示し、図10はねじ継手1の接合完了状態を示している。
図10の状態では、リング部材17がストッパー21から離れ、流体供給管3が係合部15に係止している。
【0038】
なお、流体供給管3をリング部材17に保持する部材として、図11に示すように、Uボルト25を用いることもできる。Uボルト25を、U字の開口側を径内方向に向けると、U字の屈曲部が鋼管内面側となり、ボールキャスター23を設けなくても鋼管内面との摩擦低減効果が得られる。
【0039】
上記の実施の形態は、杭を回転接合するための機構として、杭端部にねじ継手を用いたものを例示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、接合時に回転を伴う継手部を用いるものであれば適用可能である。このような継手部の例としては、外側継手管に内側継手管を挿入完了位置まで挿入して、挿入完了状態で外側継手管又は内側継手管を所定角度回転することで両者が係合して回転接合されるものが挙げられる。
【符号の説明】
【0040】
1 ねじ継手
3 流体供給管
3a 上杭側流体供給管
3b 下杭側流体供給管
5 流体供給管付き鋼管杭
5a 上杭
5b 下杭
7 吊天秤
9 三又部材
9a 辺部
9b 長穴
11 チェーン
13 カプラー
14 回転バンド
15 係合部
15a ブロック体
15b 溝部
15c L字片
17 リング部材
19 サドルバンド
21 ストッパー
21a 横片部
21b 縦片部
23 ボールキャスター
25 Uボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11