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  • 特開-釣竿、及び、釣竿のグリップ形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087746
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】釣竿、及び、釣竿のグリップ形成方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/08 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
A01K87/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202201
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】林 陽葉莉
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA01
2B019AA06
2B019AB14
2B019AC00
2B019AD04
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷機を用いて釣竿にグリップを形成するに際して、握り心地が良く、滑りの防止効果が得られる釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿は、竿杆の表面にグリップを構成する凸部をインクジェット印刷機によって形成しており、凸部は、高さが80μm以上となるように、複数回の重ね塗りで印刷されていると共に、その表面は、エッジが存在しないようにレベリングされていることを特徴とする。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿杆の表面にグリップを構成する凸部をインクジェット印刷機によって形成した釣竿であって、
前記凸部は、厚さが80μm以上となるように、複数回の重ね塗りで印刷されていると共に、その表面は、エッジが存在しないようにレベリングされていることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記凸部は、プリプレグシートで形成された竿杆の表面を下地処理した状態で印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記凸部は、多角形状が隣接するハニカム模様で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記凸部の表面にクリア層が被着されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
インクジェット印刷機を用いて、竿杆の表面に凸部を印刷してグリップを形成する方法であって、
前記竿杆をチャックして回転させながら、ヘッドを軸方向に走査して紫外線硬化型のインクを竿杆の表面に吐出する工程と、
前記インクが塗布された後、UV照射して前記インクを硬化する紫外線硬化工程と、
を有し、
(1)竿杆の回転速度は90~360rpmに設定
(2)前記インクは粘度が10.5±1.0mPa・s(45℃)
(3)前記UV照射はインク吐出後、0.03~0.01秒後に実施
(4)前記UV照射のピーク強度は700mW/cm2 ~950mW/cm2 に設定
(5)凸部の厚さが80μm以上になるように複数回重ね塗りを行なう
の条件を満たすように、インクジェット印刷で前記凸部を形成することを特徴とする釣竿のグリップ形成方法。
【請求項6】
前記凸部を形成した後、その表面にクリア層を被着することを特徴とする請求項5に記載の釣竿のグリップ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、握持、保持するグリップに特徴を有する釣竿、及び、釣竿のグリップ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿の基端部には、グリップが設けられている。通常、グリップは、竿杆の外周面に、柔軟性のある別部材を取着することで構成されるが、このようなグリップを印刷によって形成することが可能である。グリップを印刷によって形成する場合、握持、保持した際に、滑り難く、握り心地が良いように形成する必要がある。
【0003】
印刷でグリップを形成する方法として、例えば、特許文献1に開示されているようなスクリーン印刷を用いたものが知られている。また、特許文献2には、印刷インキ層及び粘着剤層を備えた転写シートを用いたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4-59857号
【特許文献2】特開平7-298808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記したような印刷によって竿杆表面にグリップを形成しようとする場合、様々な問題が生じる。特許文献1に開示されているようなスクリーン印刷では、厚い印刷をすることが難しく、その印刷部分は、図7に示すように、竿杆80の表面80Aに、盛り上がった印刷部分(凸部)90のエッジ90aがシャープに形成されてしまう。また、スクリーン印刷を複数回行なって、凸部を高くするのは、正確な位置合わせが難しいことから現実的ではない。また、特許文献2のように、転写シートを用いるものは、そのシート分だけコストが掛かってしまう。更に、シート部材を円周表面に接着することから、接着条件によっては密着性が低くなってしまう。
【0006】
また、釣竿の表面に印刷を施す方法として、インクジェット印刷機を用いることが知られているが、通常、そのような印刷方法は、模様や文字を形成することを考慮したものである。この場合、図7に示したように、印刷部分90のエッジ90aをできるだけシャープにしないと(エッジ90aを略直角になるように形成する)、模様や文字がぼやけてしまい、視認性に劣ってしまう。すなわち、インクジェット印刷では、できるだけ角部を際立たせて視認性を向上することが行なわれている。
【0007】
さらに、釣竿では、重量化することは好ましくないため、凸部の高さ(厚さ)を十分に確保することは考慮されていない。本発明者が行った握持性の評価によれば、高さについては、少なくとも80μm無いと、グリップとして感じることができず、滑り防止効果も不十分である。従来のインクジェット印刷機を用いて竿杆に印刷するに際しては、そのような高さの凸部によるグリップを形成することは考慮されていない。
すなわち、釣竿のグリップを印刷によって形成しようとした場合、印刷する凸部の高さや表面の形状については、十分な検討がされていないので、握り心地が良く、滑りの防止効果を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、インクジェット印刷機を用いて釣竿にグリップを形成するに際して、握り心地が良く、滑りの防止効果が得られる釣竿、及び、そのような釣竿のグリップ形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明は、竿杆の表面にグリップを構成する凸部をインクジェット印刷機によって形成した釣竿であって、前記凸部は、厚さが80μm以上となるように、複数回の重ね塗りで印刷されていると共に、その表面は、エッジが存在しないようにレベリングされていることを特徴とする。
【0010】
上記のように、インクジェット印刷で形成された凸部を有するグリップは、凸部の高さが80μm以上あることから、握った際に掌及び指に掛かり易く、滑りの防止効果が得られ、釣竿の操作性が向上する。また、凸部の表面はレベリングされており、表面に角部が存在しないことから、握り心地が良好となる。
【0011】
また、本発明は、インクジェット印刷機を用いて、竿杆の表面に凸部を印刷してグリップを形成する方法であって、前記竿杆をチャックして回転させながら、ヘッドを軸方向に走査して紫外線硬化型のインクを竿杆の表面に吐出する工程と、前記インクが塗布された後、UV照射して前記インクを硬化する紫外線硬化工程と、を有し、
(1)竿杆の回転速度は90~360rpmに設定
(2)前記インクは粘度が10.5±1.0mPa・s(45℃)
(3)前記UV照射はインク吐出後、0.03~0.01秒後に実施
(4)前記UV照射のピーク強度は700mW/cm2 ~950mW/cm2 に設定
(5)凸部の厚さが80μm以上になるように複数回重ね塗りを行なう
の条件を満たすように、インクジェット印刷で前記凸部を形成することを特徴とする。
【0012】
上記した条件、すなわち、竿杆の回転速度、インクの粘性、インクが付着してからUV照射までの時間、UVの照射強度、重ね塗り(複数回、竿杆を回転して印刷する)することで、竿杆に作用する遠心力が上記した条件と相俟って、レベリングされた凸部を形成することが可能となる。すなわち、このような印刷方法によれば、握った際に掌に掛かり易く、滑りの防止効果が得られ、握り心地が良好なグリップが得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクジェット印刷機によって、握り心地が良く、滑りの防止効果が得られる釣竿、及び、そのような釣竿のグリップ形成方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図。
図2】グリップの凸部を形成するためのインクジェット印刷機の概略を示す図。
図3】竿杆の表面に凸部が形成される状態の概要を示す図。
図4】竿杆の表面に形成された凸部の形状を示す図。
図5】グリップに形成された凸部の一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図。
図6】グリップに形成された凸部の別の例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図(a)のB-B線に沿った断面図。
図7】竿杆に対して、従来の印刷方法によって凸部を形成した際の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る釣竿、及び、そのグリップの形成方法について説明する。
【0016】
図1に示される釣竿1は、例えば、振出式の釣竿であり、元竿杆3と、元竿杆3内に収納可能な複数の中竿杆5及び穂先竿杆7とを備えている(継合本数は任意)。この場合、釣竿は、並継式、インロー式等であっても良く、リールシート及び釣糸ガイドを備え、リールが装着される釣竿であっても良い。
【0017】
各竿杆は、公知のように、繊維強化樹脂材(FRP;プリプレグシート)を巻回して形成されており、元竿杆3の表面(素材表面)には、後述する印刷方法に従って、凸部を有するグリップ10が形成されている。
前記グリップ10は、インクジェット印刷機に紫外線硬化型のインク(以下、UVインクとも称する)を用い、これを竿杆の握持、保持領域に印刷することで形成される。UVインクは、無色(クリアインク)、有色(カラーインク)、メタリック色のような光輝色のあるインクを用いることができ、これを元竿杆の表面に、予め設定された印刷パターンに従って塗布される。この場合、UVインクを用いることで、連続して重ね塗りをすることが可能となり、一定の高さを有する凸部を形成することが可能である。なお、熱硬化型インクは、塗布した後に熱硬化の過程が必要となるため、重ね塗りができず、十分な高さを確保することができない。
【0018】
図2は、前記元竿杆3のグリップ10を構成する凸部を形成するためのインクジェット印刷機50の概略を示す図である。本発明に用いられるインクジェット印刷機50は、UVインク30の吐出ノズルを具備したキャリッジにより走査方向(元竿杆の軸方向)に往復動されるヘッド51と、キャリッジの設置位置とは異なる位置(図では、180°対向する位置)に配設されたUV硬化用の光源52とを備える。
【0019】
本発明のように、元竿杆3のような管状体にインクジェット印刷機50で凸部を形成する場合、元竿杆3の両端をチャックし、これを回転しながら、インクジェット印刷機のヘッド51を軸方向に走査し、表面に形成する凸部形状に応じて、ノズルから吐出されるUVインク30の液滴量、吐出位置、及び、紫外線硬化させるための光源52の照射光量、照射時間、照射までの時間等が制御される。すなわち、元竿杆3の表面に付着したUVインク30は、光源52によって硬化され、その状態で定着する。本実施形態では、クリアインクを1色で用いるようにしており、したがって吐出ノズルは、ヘッド51の走査と共に1色の吐出制御がなされるよう構成されている。
【0020】
上記したインクジェット印刷では、吐出するUVインクの粘度、元竿杆の回転速度、レベリング処理するまでの時間(UVインクが付着してから元竿杆に作用する遠心力によって液滴が広がり、光の照射によって硬化するまでの時間)、光源の照射強度を制御することで、元竿杆の表面に形成される凸部の形状を調整することが可能である。この場合、吐出ノズルからのUVインクの吐出量を制御すれば、表面にドット状に付着するインクの密度(インクの濃度)を変更することが可能である。具体的には、インクの濃度が高いと、レベリングした際に表面が平坦状になり易く、インクの濃度が低いと、レベリングした際、表面に微小な凹凸が生じ易く、反射状態(光輝性)を変えることが可能である。
【0021】
インクジェット印刷機を用いて、吐出ノズルからUVインクの液滴を吐出すると、図2に示すように、元竿杆3の表面上に付着する(付着した液滴30Aを誇張して示してある)。この場合、付着した状態で直ちに光を照射すると、液滴が直ちに硬化するため、元竿杆の回転によって作用する遠心力によってレベリングし難くなる。すなわち、個々の凸部が十分にレベリングされた形状(湾曲した滑らかな表面)にはならず、エッジ部分がシャープになってしまう。これに対し、所定の粘度のインク(転移性のあるインク)を付着させ、所定の回転速度及び光照射されるまでの時間を調整すると共に、所定の強度で光を照射することによって、付着したインクを転移させて硬化することが可能である。
【0022】
すなわち、図2から図4に示すように、UVインクの粘度、吐出されたインクの液滴30が付着した後の元竿杆3の回転速度、及び、光源52で光照射するまでの間に、遠心力が作用して、付着した液滴30は表面3Aに沿って広がることができ、このように広がった液滴に所定の強度の光を照射することで、レベリングされた凸部(表面から盛り上がってエッジを有さない凸部35)を形成することが可能である。
【0023】
この場合、握り心地が良く、滑りの防止効果が得られるグリップ10を形成するために本発明者が種々の条件で実験したところ、インクジェット印刷で印刷する際、以下の条件下で行なうことで、そのような作用効果が得られる凸部35を形成することができた。
【0024】
(1)回転速度について
元竿杆の回転速度については、使用するインクジェット印刷機の諸元にもよるが、回転速度が速すぎると、付着した液滴が飛散しやすくなり、回転速度が遅すぎると、十分な遠心力の効果が得られない。ここでは、使用するUVインクの粘性を考慮すると、元竿杆の回転速度は90~360rpmに設定される(このような回転速度は、通常のインクジェット印刷機でカバーされる範囲である)。また、このような範囲としたのは、印刷が施される元竿杆の径が変更されることを考慮したためでもある。
【0025】
(2)UVインクの粘度について
インクの粘度については、元竿杆の回転速度との関係によって設定されるが、上記した範囲で元竿杆を回転するのであれば、インク粘度は10.5±1.0mPa・s(45℃)であれば良い。すなわち、光源12でUVインクが硬化する前に、遠心力を作用させてUVインクが広がってレベリングされるような粘度のものを用いれば良い。
【0026】
(3)UV照射するまでの時間について
上述したように、キャリッジに光源を設けてUVインクの吐出と同時に硬化させると、元竿杆に作用する遠心力によるレベリング効果が十分に得られないことから、付着と同時に硬化させないようにしている。具体的には、上記した回転速度、及び、UVインクの粘度を考慮して、インク吐出後、0.03~0.01秒後に照射するようにしている。
【0027】
(4)UV照射のピーク強度について
光源によるUV光は、弱すぎると十分に硬化しないことから、ある程度の照射強度が必要とされる。UV照射のピーク強度を700mW/cm2 ~950mW/cm2 の範囲に設定したことで、レベリングされた状態で十分な硬化作用を得ることが可能である。
【0028】
(5)形成される凸部の厚さについて
凸部35の厚さ(高さ)Tについては、握り心地が良く、滑りの防止効果が得られるグリップ10を形成するためには、80μm(0.08mm)以上確保されていることが好ましい。この場合、上記した条件で凸部を形成すると、1回の印刷で約0.02~0.03mmの厚さの凸部35が形成されることから、少なくとも3回の重ね塗りを行なう。この場合、1回の印刷では、図4に示すように、凸部35にエッジが形成されていない、いわゆる略半円状(円弧状)の表面となっており、この上に重ね塗りをしても、同様な形状で厚さが増すようになる。すなわち、3回以上、重ね塗りしても、所定の厚さでエッジのない凹凸部(凹部の表面は、元竿杆の表面)で構成されるグリップ10を形成することが可能である。
【0029】
なお、一般的な印刷方法(スクリーン印刷等)では、同じ位置に重ね塗りができないのに対し、本発明のように、インクジェット印刷をすることで、UVインクの付着位置を制御することができるので、所望の凹凸形状を容易かつ素早く形成することが可能である。また、凸部35の厚さについては、限定されることはないが、加工時間、安定性等を考慮して、150μm以下であることが好ましい。
【0030】
図5は、上記したような印刷方法で凸部35を形成したグリップ10の一例を示す図である。
インクジェット印刷することで、様々な凸部35(凹部35a)を形成することができるが、この例では、表面に形成される凸部を、多角形状が隣接するハニカム模様で形成している。すなわち、六角形の部分が凸部35となっており、境目は凹部35a(印刷しない部分)となったハニカム模様となっていることから、握持、保持した際、軸方向、周方向及び傾斜方向のいずれにも所定の高さを有する凸部35が引っ掛かり易くなり、握り心地が良く、滑りの防止効果が高いグリップ構造が得られる。なお、図面では、ハニカム模様を六角形としているが、五角形、八角形等、それ以外で構成しても良い。
【0031】
図6は、上記したような印刷方法で凸部を形成したグリップの別の例を示す図である。
この例では、表面に形成される凸部を、図5に示した構成と同様、ハニカム模様で形成しているが、六角形の輪郭部分(境目部分)が凸部35となっており、六角形の内部が凹部35a(印刷しない部分)となっている。
【0032】
このように、インクジェット印刷を用いることで、レベリングされた凸部(凹凸部)の模様を容易に形成することが可能となる。従って、従来のように、軟質性の部材を取着することなく、握り心地が良く、滑りの防止効果が高いグリップ容易に形成することが可能である。
【0033】
上記したように形成される凸部35は、FRP素材の表面3Aに、そのまま印刷しても良い。この場合、表面の繊維によって凹凸が生じているので、印刷した凸部との間でアンカー効果が高められ、凸部を剥離し難くすることができる。或いは、素材表面を下地処理して下地層を形成する(プライマー等を被着したり研磨して表面に研磨筋を形成する等)ことで、UVインクの密着強度が向上して凸部を剥離し難くすることができる。特に、表面3Aが管状体による湾曲面であれば、研磨することで、付着している不純物を取り除くことができ、かつ、アンカー効果を高めることができるので、安定した凸部を形成することが可能となる。
【0034】
また、形成された凸部35の表面には、クリア層(カラークリア層を含む)による保護膜を形成しておくことが好ましい。このようなクリア層は、前記インクジェット印刷によって凸部を形成した後、そのままUV硬化型の透明インクを塗布しても良いし、別途、クリア塗装等によって形成しても良い。
このような保護膜を形成することで、凸部35の表面を保護することができると共に、図6に示したような凸部の幅が狭い形状では、破損、欠け等を効果的に防止することが可能となる。また、プリズム効果によって立体感を高めることが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
上記した実施形態では、インクジェット印刷によって形成されるグリップは、元竿杆3を例示して説明したが、元竿杆以外にも適用することが可能である。例えば、投げ竿や船の大物竿等では、元竿杆以外の部分にグリップを形成することがある。このため、図1に示す釣竿で説明すると、中竿杆5の元部や先部や中間部に滑り止めとしてグリップを設けることがあり、そのような竿杆にも、所定の領域に、上記したインクジェット印刷によるグリップを形成しても良い。
【0036】
また、例えば、下地処理については、素材の表面に、印刷、塗装、メッキなどの表面処理によって、各種の色彩模様(複数色や透明も含む)等を形成したものであっても良い。また、表面研磨についても、方向性を持たせて研磨筋を形成したり、ランダムな凹凸で研磨筋を形成したものであっても良い。
【0037】
さらに、凸部35については、滑り難く、握り心地が良ければ、その形態(パターン)については限定されることはない。形成される凸部の方向が異なる方向に指向されていれば、滑りの防止効果が得られることから、例えば、複数の方向に指向する凸部を格子状の模様に形成したり、凸部を多数形成したり、異なる凸部形状や厚さを組み合わせる等、適宜変形することが可能である。また、レベリングは、握り心地に違和感が生じないものであれば、その凸部表面に多少の凹凸があっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 釣竿
3 元竿杆
3A 素材表面
10 グリップ
35 凸部
35a 凹部
50 インクジェット印刷機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7