(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087748
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】スライドシート用給電構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230619BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B60N2/90
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202208
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】長井 康弘
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の床の見栄えが向上し設計自由度が高いスライドシート用給電構造を提供する。
【解決手段】スライドシート用給電構造Eは、床FLに敷設され第1方向に延びるスリット1aを有するレール1Rと、スリットから上方に突出する延出部を有しレールに係合して移動可能なスライダ2Rと、スライダに連結したシート8と、シートに給電するハーネス55が引き出されシートのスライドに伴って第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔54を有しレールに近接配置された給電ボックス5と、スリットを給電ボックスのない側及びある側から覆い延出部の通過を湾曲変形して許容する第1レールカバー11及び第2レールカバー12と、ハーネス誘導塔の移動経路を覆いその通過を湾曲変形して許容するリップ部53とを備え、第2レールカバーがハーネス誘導塔とレールとの間を塞いでいる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床に敷設され第1方向に延びるスリットを有するレールと、
前記スリットから上方に突出する延出部を有し前記レールに係合して前記第1方向に移動可能なスライダと、
前記スライダに連結して前記レールに対しスライドするスライドシートと、
前記スライドシートに給電するためのハーネスが先端側から引き出され前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔を有し、前記レールに近接配置された給電ボックスと、
前記スリットを、前記レールを挟んで前記給電ボックスのない側及びある側からそれぞれ覆い前記延出部の通過を湾曲変形して許容する第1レールカバー及び第2レールカバーと、
前記ハーネス誘導塔の移動経路を覆い、前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容するリップ部と、
を備え、
前記第2レールカバーが前記ハーネス誘導塔と前記レールとの間を塞いでいるスライドシート用給電構造。
【請求項2】
前記リップ部は、下面における前記レールの側の縁部の近傍に、下方に延出し前記第1方向に延びるリップリブを有する請求項1記載のスライドシート用給電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両の床に取り付けられたスライド可能なシートに対し、給電を電線で行う電線配策装置が記載されている。
特許文献1に記載された電線配策装置は、床に敷設されてシートをスライド可能に支持する支持レールと、電線をシートに導くスライダと、床に支持レールと平行に配置されスライダをシートと共に同方向に移動可能に支持するレール状の移動部と、を備えている。
床には、支持レール及び移動部の内部に塵埃などが進入することを防ぐ覆いとしてのモールが、支持レールに対して一対、移動部に対して一対、の合計2対設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電線配策装置におけるモールは、車両の床に敷設した支持レール及び移動部それぞれの開口部を覆う二対の部材である。しかしながら、床の見栄えの向上のため、モールの数は少ない方が望ましい。
また、シートを支持する支持レールと給電のための移動部との間には、支持レールの一方側を覆うモール及び移動部の一方側を覆うモールの二つのモールを配置する必要がある。そのため、車両の床のレイアウト設計上、支持レールと移動部とを近づけることができず設計自由度に制約があるため、設計自由度を高くする改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両の床の見栄えが向上し設計自由度が高いスライドシート用給電構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の構成を有する。
1) 車両の床に敷設され第1方向に延びるスリットを有するレールと、
前記スリットから上方に突出する延出部を有し前記レールに係合して前記第1方向に移動可能なスライダと、
前記スライダに連結して前記レールに対しスライドするスライドシートと、
前記スライドシートに給電するためのハーネスが先端側から引き出され前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔を有し、前記レールに近接配置された給電ボックスと、
前記スリットを、前記レールを挟んで前記給電ボックスのない側及びある側からそれぞれ覆い前記突出部の通過を湾曲変形して許容する第1レールカバー及び第2レールカバーと、
前記ハーネス誘導塔の移動経路を覆い、前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容するリップ部と、
を備え、
前記第2レールカバーが前記ハーネス誘導塔と前記レールとの間を塞いでいるスライドシート用給電構造である。
2) 前記リップ部は、下面における前記レールの側の縁部の近傍に、下方に延出し前記第1方向に延びるリップリブを有する1)に記載のスライドシート用給電構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の床の見栄えが向上し設計自由度が高い、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るスライドシート用給電構造の実施例である給電構造Eを示す右後方斜め上方からみた斜視図である。
【
図2】
図2は、給電構造Eが有する給電ボックス5の外観上の概略構成を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、給電ボックス5におけるワイヤハーネス6の長さ調節機能を説明する第1の図である。
【
図3B】
図3Bは、給電ボックス5におけるワイヤハーネス6の長さ調節機能を説明する第2の図である。
【
図4】
図4は、
図1におけるS4-S4位置での概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図1におけるS5-S5位置での概略断面図である。
【
図6】
図6(a)~(e)は、シート8のスライドに伴う給電ボックス5のハーネス誘導塔54の移動を説明する第1~第5の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るスライドシート用給電構造を、実施例の給電構造Eによって説明する。説明における上下左右前後の各方向は、
図1に矢印で規定する。
【0010】
図1は、給電構造Eの全体構成を示す右後斜め上方から見た斜視図である。
スライドシート用給電構造である給電構造Eは、スライドシートシステムSTに採用される。
スライドシートシステムSTは、スライドシート8と、ベース3と、スライダ2L及びスライダ2Rと、給電ボックス5と、第1案内ブラケット31及び第2案内ブラケット32と、レール1L及びレール1Rとを含んで構成されている。
以下、スライドシート8は単にシート8と称する。
【0011】
シート8は、シートベース81と、シートベース81の上部に固定されたシートクッション82と、シートクッション82の後部に背もたれとして連結されたシートバック83とを有する。
レール1L及びレール1Rは、車両の床FL(
図4参照)の骨格となるフロアパネル85(
図4も参照)に、第1方向である前後方向に延びる姿勢で左右に平行に離隔して敷設される。
【0012】
レール1Lには、前後方向に移動可能にスライダ2Lが支持され、レール1Rには、前後方向に移動可能にスライダ2Rが支持されている。
ベース3は、スライダ2Lとスライダ2Rとに跨るように取り付けられている。ベース3は、中央に開口部3aを有し上面視で矩形となる台状の金属部材である。
ベース3の上面には、シート8のシートベース81が固定される(矢印DR8参照)。
これにより、シート8は、レール1L,1Rに沿って前後方向に移動する。
スライドシートシステムSTは、車両の進行方向左側の座席(例えば右ハンドル自動車に助手席)として搭載される。
【0013】
ベース3の後部には、第1案内ブラケット31が取り付けられており、ベース3の前部には、第2案内ブラケット32が取り付けられている。
レール1Rの下部には、フロントブラケット57とリアブラケット56とが、前後方向に離隔して左方へ張り出すように取り付けられている。
フロントブラケット57及びリアブラケット56は、給電ボックス5に連結されている。これにより、給電ボックス5は、レール1Rの内側(左側)に近接して配置されている。
【0014】
給電ボックス5には、一端が車両側の給電装置(不図示)に接続されたワイヤハーネス6(
図3A参照)のケーブル61が引き込まれている。給電ボックス5におけるレール1R側の上縁部には、上方に突出し前後方向に移動可能なハーネス誘導塔54が備えられている。ハーネス誘導塔54の上部は左方に屈曲し、屈曲した先端からは、ケーブル61の他端側であるハーネス55が延出している。ハーネス55の先端には、ハーネスコネクタ55aが装着されている。
【0015】
シート8のシートベース81の下部からは、シートハーネス84が引き出されている。シートハーネス84の一端は、シート8に設けられた給電端子(不図示)などに接続されている。
シートハーネス84の他端には、ハーネスプラグ84aが取り付けられている。ハーネスプラグ84aは、ベース3の開口部3aを通してハーネスコネクタ55aに接続される(破線矢印DR参照)。
これにより、車両の乗員は、シート8の給電端子(不図示)などを利用して手持ちの電子機器に対し車両側からの電力供給が可能である。
【0016】
図2は、給電ボックス5の外観上の概略構成を示す斜視図である。
給電ボックス5は、外観上、本体部51,カバー52,ハーネス誘導塔54,及びハーネス55を有する。
本体部51は、上下に分割された上カバー512と下カバー511とが組み合わされて箱状に構成されている。本体部51の右側面には、前後方向に延びる開口部51aが形成されている。ハーネス誘導塔54は、開口部51aから右方に突出して上方に延び、先端が左方に屈曲した筒状の部位である。内部には、本体部51の内部から引き込まれたハーネス55が通されている。ハーネス55は、ハーネス誘導塔54の先端から外部に延出している。
ハーネス誘導塔54は、概ね開口部51aの前後方向の開口範囲を従動的に移動可能となっている。
【0017】
カバー52は、本体部51の上部に取り付けられる板状の部材であり、例えば樹脂の射出成形によって形成される。カバー52の右縁部における前後方向両端側を除く中央部には、前後方向がハーネス誘導塔54の移動範囲に対応した範囲とされて左方に抉られた抉り部52aを有する。
カバー52には、抉り部52aを塞ぐように、柔軟性を有するリップ部53が取り付けられている。リップ部53はゴム或いはエラストマによって形成される。カバー52及びリップ部53は、例えば、いわゆる二色成形によって一体的に形成される。
【0018】
図3A及び
図3Bは、給電ボックス5における本体部51の内部の概略構造を示す図である。給電ボックス5は、電源供給のためのハーネス55を、シート8に対しそのスライド動作に追従して滞りなく繰り出し位置を調節する機能を有する。
図3Aは、ハーネス誘導塔54が移動範囲の最後方位置にある場合、
図3Bは、ハーネス誘導塔54が移動範囲の最前方位置にある場合が示されている。
【0019】
図3A及び
図3Bに示されるように、本体部51における下カバー511の中央部位には、下カバー511の側壁から離れて底部511bから長円柱状で上方に盛り上がった凸部511aが形成されている。車両側から引き回されてきたケーブル61は、本体部51の後面から内部に引き込まれ、湾曲可能な保護チューブ62の中に通され、ワイヤハーネス6を形成している。
【0020】
ハーネス誘導塔54が移動範囲の最後方位置にある
図3Aに示される状態で、保護チューブ62に覆われたケーブル61は、凸部511aの左縁部及び前端の円弧状の部位に沿って向きを変え、凸部511aの右縁部に沿って後方に延び、ハーネス誘導塔54内に引き込まれている。
これに対し、
図3Bに示されるように、ハーネス誘導塔54が距離L55である移動範囲の最前方位置にある状態で、保護チューブ62は次のようになっている。すなわち、保護チューブ62に覆われたケーブル61は、凸部511aの左縁部から凸部511aの円弧状の部位には沿わず前方に真っ直ぐ延び、下カバー511の内部の凸部511aの前方の空間で湾曲して後ろ向きとなり、ハーネス誘導塔54内に引き込まれる。
このような構造により、給電ボックス5は、ハーネス誘導塔54の距離L55の移動で生じるケーブル61の弛みを吸収するようになっている。
【0021】
図4は、
図1におけるS4-S4位置での断面図であり、
図5は、
図1における、ハーネス誘導塔54及びスライダ2Rを通るS5-S5位置での断面図である。
図4及び
図5において、給電構造Eは、車両の床FLに取り付けられた状態が示されている。詳しくは、車両のフロアパネル85と、フロアパネル85の上に敷かれたカーペット7とが併せて示されている。
【0022】
図4及び
図5に示されるように、レール1Rは、上部の左右中央に、第1開口部SL1としてのスリット1aを有して横断面形状が略矩形の枠状に形成された押出部材である。
スライダ2Rは、レール1Rに沿って移動できる。スライダ2Rは、レール1Rに係合してその内部に位置する基部21と、基部21からスリット1aを通して上方に突出した延出部22とを有する。
スライダ2Rには、シート8のシートベース81に固定されたベース3取り付けられている。すなわち、シート8はスライダ2Rと一体化されている。
【0023】
レール1Rは、不図示のロック構造などに利用される側面孔1bが適宜設けられている。レール1Rは、側面孔1bなどから塵埃が内部に進入するのを防止するプロテクタ13を介してフロアパネル85に固定されている。
レール1Rの上面には、スリット1aに対する右側に第1レールカバーであるレールカバー11が取り付けられ、左側に第2レールカバーであるレールカバー12が取り付けられている。
レールカバー11,12は、それぞれ基部11b,12bと、基部11b,12bに接続してそれぞれスリット1aを塞ぐように延出したフラップ11a,12aと、を有する。基部11b,12bは樹脂で形成され、フラップ11a,12aはゴムで形成されている。
レールカバー12は、基部12bの左端部に、フラップ11aに相当するフラップを備えていてもよい。基部12bの左端部にフラップを備えた場合、
図4においては、リップ基部53aと共に第2開口部SL2を塞ぐ或いは距離Laが小さくなる。また、
図5においては、そのフラップがハーネス誘導塔54の右側面に対し上方に撓んで接触する。これらにより、床FLの見栄えがより向上する。
【0024】
レールカバー11の右縁部は、庇状に右方に張り出した庇部11cが形成されている。
庇部11cとフロアパネル85との間には、カーペット7が挟みこまれている。カーペット7は、フロアパネル85に取り付けられた板状の基材部71と、基材部71の上面に植毛形成されたパイル部72とを有する。
【0025】
フラップ11a,12aは、薄く形成され、先端側が上下方向に湾曲するような変形が容易に可能である。
これにより、
図4に示されるように、移動するスライダ2Rが位置していないところでは、フラップ11a,12aは概ね水平に延在し互いの先端が近接又は接触する位置にある。すなわち、レール1Rのスリット1aはフラップ11a,12aによって概ね塞がれる。
一方、
図5に示されるように、移動するスライダ2Rが位置したところでは、フラップ11a,12aは、スライダ2Rの延出部22に接触しこれに沿うように先端側が上方に湾曲するように変形する(湾曲変形する)。
すなわち、スライダ2Rが通過する際に、フラップ11a,12aは湾曲変形してスライダ2Rの延出部22の移動を許容する。
そのため、延出部22とフラップ11a,12aとの間の隙間は、延出部22の前後両端部分のわずかな範囲となる。
【0026】
図4及び
図5に示されるように、レール1Rの左側に近接して給電ボックス5が配置されている。
給電ボックス5におけるカバー52の縁部52cは、上カバー512から張り出す庇状に形成されており、レールカバー11の庇部11cと同様に、フロアパネル85との間にカーペット7を挟んでいる。
縁部52cは、
図2に二点鎖線で示される範囲AR52において、カーペット7をフロアパネル85との間に挟んでいる。
範囲AR52は、カバー52における抉り部52aを除く周縁部である。
【0027】
一方、カバー52の抉り部52aにおいて、リップ部53は、右方の縁部53cがレールカバー12の左方の縁部12cに近接又は接触するように設けられている。すなわち、縁部53cと縁部12cとの間の開口部である第2開口部SL2は、その左右方向の幅である距離Laが0(ゼロ)以上である。
また、距離Laは、少なくともハーネス誘導塔54の左右方向の幅Ld(
図5参照)未満とされる。すなわち、0(ゼロ)≦ 距離La ≦ 幅Ldである。
さらに望ましくは、距離Laは、ハーネス誘導塔54の幅Ldの半分以下とされる。すなわち、0(ゼロ)≦ 距離La ≦ 幅Ld/2である。
【0028】
リップ部53は、自然状態で平板状のリップ基部53aを有する。リップ基部53aの下面における縁部53cの近傍に、リップ基部53aの前後方向の全範囲において下方に延出するリップリブ53bが形成されている。
【0029】
このように、レール1Rと給電ボックス5の抉り部52aとの間は、レールカバー12とリップ部53とにより実質的に塞がれる。
抉り部52aにおいてハーネス誘導塔54が位置している部分は、
図5に示されるように、リップ部53のリップ基部53aが、先端側がハーネス誘導塔54の左側面に沿って上方に湾曲するように変形している。
すなわち、リップ部53がハーネス誘導塔54に接触しているので抉り部52aとレール1Rとの間の第2開口部SL2の隙間(幅)は、ハーネス誘導塔54の位置によらずわずかなものとなる。
これにより、給電構造Eは、車両の床FLの見栄えが向上する。
【0030】
ハーネス誘導塔54は、シート8のスライド移動に伴い、その移動の一部を利用して前後方向に延びる移動経路K(
図4参照)を移動する。これについて
図1及び
図6を参照して説明する。
【0031】
図1に示されるように、シート8と一体的に移動するベース3の後部には第1案内ブラケット31が取り付けられており、ベース3の前部には第2案内ブラケット32が取り付けられている。
第1案内ブラケット31は、後方に延びると共に後方に向かうほど左右方向に広がる形状を有し、右側の先端部31aは、シート8が移動した際にハーネス誘導塔54と干渉する位置にある。
第2案内ブラケット32は、左右方向に広がる形状を有し、右側の先端部32aは、シート8が移動した際にハーネス誘導塔54と干渉する位置にある。
【0032】
ハーネス誘導塔54は、第1案内ブラケット31の先端部31aと、第2案内ブラケット32の先端部32aとの間に位置している。
【0033】
図6(a)は、シート8が、スライド移動範囲の最も後方に位置した第1位置での状態が示されている。この状態で、ハーネス誘導塔54は、移動範囲内の最も後方に位置し第2案内ブラケット32の先端部32aの後方側内面に接触している。
【0034】
シート8が第1位置から前方に移動すると、ハーネス誘導塔54の位置は変わらずにシート8のみが前方に移動する。そして、シート8の前方への移動が進むと(矢印DR1参照)、
図6(b)に示されるように、第1案内ブラケット31の先端部31aの前面がハーネス誘導塔54に後方側から接触する。この位置が第2位置である。
【0035】
シート8が第2位置からさらに前方に移動すると(矢印DR2参照)、第1案内ブラケット31の先端部31aがハーネス誘導塔54を前方に移動させる。これは
図6(c)に示されるシート8が最前位置である第3位置に達するまで継続する。
【0036】
シート8が第3位置から後方に移動すると、ハーネス誘導塔54の位置は変わらず、シート8のみが後方に移動する。そして、シート8の後方への移動が進むと(矢印DR3参照)、
図6(d)に示されるように、第2案内ブラケット32の先端部32aの後面がハーネス誘導塔54に前方側から接触する。この位置が第4位置である。
【0037】
シート8が第4位置からさらに後方に移動すると(矢印DR4参照)、第2案内ブラケット32の先端部32aがハーネス誘導塔54を後方に移動させる。これは
図6(e)に示されるシート8が最後位置である第4位置に達するまで継続する。第4位置は第1位置と同じである。
【0038】
上述の動作により、ハーネス誘導塔54は、
図6(a)及び
図6(e)に示される第1位置(第4位置)での位置P1と、
図6(c)に示される第3位置での位置P2との間の所定の距離Lbを移動する。距離Lbは、シート8のスライド距離である距離Lcよりも短い。
【0039】
以上詳述した給電構造Eは、給電ボックス5のリップ基部53aの下面の先端近傍に、ハーネス誘導塔54の移動方向に延在するリップリブ53bを有する。これにより、塵埃が、リップ基部53aの右方の縁部53cとレールカバー12の左方の縁部12cとの間の第2開口部SL2を通して給電ボックス5の内部に進入するのを、より良好に防止する。
【0040】
また、給電構造Eは、床FLのカーペット7の第1開口部SL1及び移動経路K(
図4参照)それぞれから上方に突出し前後移動する二つの部材である、スライダ2R及びハーネス誘導塔54を有する。これら二つの部材の移動のための細長い第1開口部SL1及び移動経路Kを覆う履口部材は、スライダ2Rについては二つレールカバーであるレールカバー11及びレールカバー12であり、ハーネス誘導塔54についてはレールカバー12とリップ部53とが当てられており、レールカバー12は兼用されている。
すなわち、2つの細長い第1開口部SL1及び第2開口部SL2を四つではなく三つの覆口部材で塞ぐようになっている。
これにより、給電構造Eは、部品点数が少なく低コストであり、製造コストも抑制される。
【0041】
また、給電構造Eは塞口部材が少ないことから、車両の床FLの見栄えも向上させる。
【0042】
また、給電構造Eは、第1開口部SL1と第2開口部SL2との間には、履口部材としてレールカバー12のみが配置されている。
そのため、給電構造Eは、給電ボックス5とレール1Rとを近接配置させることが可能で、設計自由度が高い。
【0043】
本発明は、以上説明した実施形態及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0044】
上述のスライドシートシステムSTは、車両の進行方向左側の座席(例えば右ハンドル自動車の助手席)として搭載されるものに限定されない。車両の進行方向右側の座席として搭載されていてもよい。
給電ボックス5は、レール1R側に取り付けられているものに限らずレール1L側にとりつけられていてもよい。
上述の給電構造Eは、第1案内ブラケット31及び第2案内ブラケット32が左右対称形状で形成されているので、給電ボックス5がレール1L及びレール1Rのどちらに取り付けられていても適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1L,1R レール
1a スリット
1b 側面孔
11,12 レールカバー
11a,12a フラップ
11b,12b 基部
11c 庇部
12c 縁部
13 プロテクタ
2L,2R スライダ
21 基部
22 延出部
3 ベース
3a 開口部
31 第1案内ブラケット
31a 先端部
32 第2案内ブラケット
32a 先端部
5 給電ボックス
51 本体部
51a 開口部
511 下カバー
511a 凸部
511b 底部
512 上カバー
52 カバー
52a 抉り部
52c 縁部
53 リップ部
53a リップ基部
53b リップリブ
53c 縁部
54 ハーネス誘導塔
55 ハーネス
55a ハーネスコネクタ
56 リアブラケット
57 フロントブラケット
6 ワイヤハーネス
61 ケーブル
62 保護チューブ
7 カーペット
71 基材部
72 パイル部
8 シート(スライドシート)
81 シートベース
82 シートクッション
83 シートバック
84 シートハーネス
84a ハーネスプラグ
85 フロアパネル
AR52 範囲
E 給電構造
FL 床
K 移動経路
L55,La,Lb,Lc 距離
Ld 幅
P1,P2 位置
SL1 第1開口部
SL2 第2開口部
ST スライドシートシステム