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特開2023-87779金属材の自動切断方法及び自動切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087779
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】金属材の自動切断方法及び自動切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20230619BHJP
   B23K 10/00 20060101ALN20230619BHJP
   B23K 26/38 20140101ALN20230619BHJP
【FI】
B23K7/00 505C
B23K10/00 501A
B23K26/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202255
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福地 良太
【テーマコード(参考)】
4E001
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA01
4E001BA04
4E001CA01
4E001CB01
4E001CB04
4E168AD07
4E168JA02
4E168JA03
4E168JA05
(57)【要約】
【課題】 圧延後の金属材を熱切断するに際し、切断対象の金属材の端面に凹凸が存在する場合にも、金属材の切断が不可になることを防止して、人手を介さずに自動で金属材から製品を切り出す。
【解決手段】 本発明に係る金属材の自動切断方法は、金属材を熱切断する自動切断方法であって、前記金属材の少なくとも切断開始位置において前記金属材の端面の凹凸を検出する検出工程と、前記検出工程で凹凸が検出された場合に凸部を切断する予備切断工程と、前記予備切断工程での凸部の切断後に前記端面を予熱して前記金属材を本切断する本切断工程と、を有する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材を熱切断する自動切断方法であって、
前記金属材の少なくとも切断開始位置において前記金属材の端面の凹凸を検出する検出工程と、
前記検出工程で凹凸が検出された場合に凸部を切断する予備切断工程と、
前記予備切断工程での凸部の切断後に前記端面を予熱して前記金属材を本切断する本切断工程と、
を有する、金属材の自動切断方法。
【請求項2】
前記検出工程では、前記端面の板厚方向における凹凸を検出する、請求項1に記載の金属材の自動切断方法。
【請求項3】
前記検出工程の前に、前記金属材の位置及び外形を検出し、前記金属材の切断位置を設定する切断位置決定工程を更に有する、請求項1または請求項2に記載の金属材の自動切断方法。
【請求項4】
前記切断位置決定工程では、撮像装置によって前記金属材の位置を検出し、その後、外形測定センサによって前記金属材の外形を測定する、請求項3に記載の金属材の自動切断方法。
【請求項5】
金属材を熱切断する自動切断装置であって、
前記金属材の少なくとも切断開始位置における端面の形状を測定する外形測定センサと、
前記外形測定センサで測定された前記端面の形状に基づいて、前記端面の板厚方向における凹凸の有無を判定する判定部と、
前記端面の凸部を予備切断するとともに、前記金属材を本切断する切断トーチと、
を有する、金属材の自動切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材を熱切断する自動切断方法及び自動切断装置に関し、特に、金属材の一例としての鉄鋼、アルミニウム、チタンなどの厚板を製品寸法に切り出す際の自動切断方法及び自動切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属材としての鉄鋼厚板(厚鋼板)を製造する製鉄所の厚板精製工程では、圧延後の厚板(以下、圧延後の厚板を、製品の厚板と区別するために「厚板素材」と記す)を指定された製品寸法に切り出す作業を実施している。切り出し方法としては、ガス切断、レーザー切断またはプラズマ切断などの熱切断が採用されている。
【0003】
切断作業自体は、門型の数値制御切断機や自走式切断機を使用しているので、自動化が進んでいる。しかしながら、製品寸法が圧延後の厚板素材から切り出し可能かを判断する板取可否判定や、切断位置の罫書き作業、切断位置を教示するティーチング作業、切断開始点の予熱作業といった付帯作業は、以前として人手による作業が多い。このような切断前の付帯作業は、重筋作業や、ノロ飛散による作業者の負傷の恐れがある危険作業である上に、作業ミスによる手直しによって、作業工程が増加するという課題がある。
【0004】
この問題を解決するために、近年、自動で切断位置を決定して切断作業を行う切断装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、被切断材と予め設置した基点(模様)とを上方からCCDカメラで撮影し、撮影した基点に基づいて被切断材の表面形状及び座標を算出し、切断すべき図形を割り当てて切断機を制御する切断方法及び切断装置が提案されている。また、特許文献2には、非接触型の距離センサによって被切断材の外形を認識し、被切断材の切断位置を算出する切断線(切断データ)を作成し、自動で切断ヘッドを制御する切断機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5620890号公報
【特許文献2】特開2000-158169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。
【0008】
即ち、特許文献1及び特許文献2に提案されている切断装置では、上方から見た金属材(被切断材)の位置及び外形を検出して金属材の切断位置を算出することで、切断開始位置、即ち予熱位置を決定し、金属材を自動で切断している。しかしながら、上方から見ているので、金属材の端面形状(特に、厚み方向の凹凸の有無)について測定することができない。このため、切断開始位置において金属材の端面に凹凸(特に、厚み方向の凹凸)がある場合、予熱位置の調整ができずに切断不可になる虞があるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、圧延後の金属材を熱切断するに際し、切断対象の金属材の端面に凹凸が存在する場合にも、金属材の切断が不可になることを防止して、人手を介さずに自動で金属材から製品の切り出しを行うことができる、金属材の自動切断方法及び自動切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
【0011】
[1] 金属材を熱切断する自動切断方法であって、
前記金属材の少なくとも切断開始位置において前記金属材の端面の凹凸を検出する検出工程と、
前記検出工程で凹凸が検出された場合に凸部を切断する予備切断工程と、
前記予備切断工程での凸部の切断後に前記端面を予熱して前記金属材を本切断する本切断工程と、
を有する、金属材の自動切断方法。
【0012】
[2] 前記検出工程では、前記端面の板厚方向における凹凸を検出する、上記[1]に記載の金属材の自動切断方法。
【0013】
[3] 前記検出工程の前に、前記金属材の位置及び外形を検出し、前記金属材の切断位置を設定する切断位置決定工程を更に有する、上記[1]または上記[2]に記載の金属材の自動切断方法。
【0014】
[4] 前記切断位置決定工程では、撮像装置によって前記金属材の位置を検出し、その後、外形測定センサによって前記金属材の外形を測定する、上記[3]に記載の金属材の自動切断方法。
【0015】
[5] 金属材を熱切断する自動切断装置であって、
前記金属材の少なくとも切断開始位置における端面の形状を測定する外形測定センサと、
前記外形測定センサで測定された前記端面の形状に基づいて、前記端面の板厚方向における凹凸の有無を判定する判定部と、
前記端面の凸部を予備切断するとともに、前記金属材を本切断する切断トーチと、
を有する、金属材の自動切断装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切断開始位置において金属材の端面形状(凹凸)を検出し、金属材の本切断の前に端面の凸部を予備切断することで、予熱位置を適切に設定することができ、金属材が切断不可になることを防止することができる。その結果、人手を介さずに自動で金属材から製品の切り出しを行うことができる。特に、上記[3]及び上記[4]の発明によれば、金属材の位置及び外形を検出する工程を更に有することで、金属材の自動寸法測定、目標寸法の金属材確保の判断、切断位置の自動割り当てを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の一例の自動切断装置の概略側面図である。
図2】本発明の実施形態において、距離センサが、x軸回り及びz軸回りに傾動する状態を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態の切断位置決定工程の一部を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態の切断位置決定工程の一部を示す概略図である。
図5】本発明の実施形態の予備切断工程を示す概略図である。
図6】本発明の実施形態の本切断工程を示す概略図である。
図7】本発明の他の実施形態の切断位置決定工程の一部を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る金属材の自動切断方法及び自動切断装置の実施形態の一例を説明する。本実施形態では、鋼鋳片を熱間圧延して製造した圧延後の厚板素材から、指定された製品寸法の鉄鋼厚板(厚鋼板)を切り出す、製鉄所の厚板精製工程における切断処理について説明する。
【0019】
<切断装置の構成>
本実施形態の一例の自動切断装置の概略側面図を図1に示す。本発明に係る自動切断装置1は、門型切断機2を備えている。門型切断機2は、x軸方向(水平方向)に敷設された一対のレール3の上を、車輪(図示せず)を介して走行可能な門型の台車4を備えている。台車4には、台車4の側面をy軸方向(x軸方向と直交する水平方向)に直動可能なツール5が設けられている。また、ツール5には、距離センサ6(外形測定センサの一例)及び切断トーチ7が、z軸方向(鉛直方向)に直動可能に取り付けられている。距離センサ6及び切断トーチ7は、双方が同期して、または、それぞれ独立して、z軸方向に直動可能となっている。
【0020】
自動切断装置1は、更に、門型切断機2の上方に設けられた天井クレーン9を備えている。天井クレーン9は、建屋の架台16に取り付けられた一対の相対するレール15の上を、車輪(図示せず)を介してy軸方向に移動するクレーン本体10と、クレーン本体10に取り付けられた一対のレール(図示せず)の上を、車輪11a、11bを介してx軸方向に移動可能な吊り部11と、を備えている。天井クレーン9は、金属材の一例としての圧延後の厚板素材14(厚板)及び厚板素材14から切り出された製品の鉄鋼厚板を搬送するためのものである。
【0021】
また、吊り部11の車輪11aには、吊り部11のx座標を取得可能なエンコーダ13が設置されており、同様に、レール15の上を移動するクレーン本体10の車輪(図示せず)には、吊り部11のy座標を取得可能なエンコーダ(図示せず)が具備されている。つまり、これらの2つのエンコーダによって、天井クレーン9の吊り部11のx座標及びy座標が取得できるようになっている。また、吊り部11には、厚板素材14の位置(切断作業場での置き場所)を撮影するカメラ12(撮像装置の一例)が具備されている。尚、天井クレーン9によって搬送された厚板素材14は、一対のレール3の間に設けられた切断作業場である定盤(図示せず)の上に載置される。天井クレーン9としては、例えば、吊り部11に磁力によって厚板素材14を吊り上げるマグネットが備えられたクレーンを用いることができる。
【0022】
切断トーチ7は、一例として、ガス切断トーチである。ガス切断トーチとは、ガスを用いてトーチから予熱炎を噴射して厚板素材14を予熱するとともに、予熱された厚板素材14に切断酸素気流を吹き付けて厚板素材14を切断するトーチである。尚、切断トーチ7は、レーザー切断トーチやプラズマ切断トーチでも構わない。
【0023】
切断トーチ7は、門型切断機2のx軸方向への走行、及び、ツール5の台車4に対するy軸方向への移動により、x軸方向及びy軸方向に移動し、厚板素材14を熱切断(本切断)するように構成されている。切断トーチ7によって厚板素材14を熱切断することで、厚板素材14には切断溝が形成され、切断が進行する。
【0024】
距離センサ6は、一例として、光切断法による非接触式の距離センサであり、レーザー光を用いて厚板素材14と距離センサ6との間の距離を計測することにより、厚板素材14のエッジ(周縁)を検出する。また、距離センサ6は、図2に示すように、ツール5に対して傾動可能となっている。例えば、距離センサ6を、x軸回り(x軸を中心)に20~70°の範囲で傾斜させ、更に、z軸回り(z軸を中心)に0~20°の範囲で傾斜させることにより、厚板素材14の上面形状だけではなく、厚板素材14の端面形状(特に、切断開始位置の端面形状)を測定・検出することが可能になる。図2中の符号6aは、切断作業場である定盤の上に載置される厚板素材14の端面に向けて、距離センサ6から照射されるレーザー光束である。尚、厚板素材14の外形を測定する外形測定センサとして、レーザー光を用いた距離センサ6の代わりに、物体の三次元形状を測定可能であるステレオカメラ、光のTOF方式、超音波のTOF方式などのセンサを用いてもよい。
【0025】
天井クレーン9の吊り部11のx軸方向の位置を検出するエンコーダ13は、一例として、ロータリーエンコーダであり、吊り部11の車輪11aの回転量を計測し、車輪11aの回転量の累積値を算出することで、吊り部11のx軸方向の位置を認識する。同様に、クレーン本体10の車輪に取り付けられた、吊り部11のy軸方向の位置を検出するエンコーダも、ロータリーエンコーダであり、クレーン本体10の車輪の回転量を計測し、車輪の回転量の累積値を算出することで、吊り部11のy軸方向の位置を認識する。
【0026】
また、門型切断機2には、制御装置8(判定部の一例)が設けられている。この制御装置8は、門型切断機2の各部材(台車4、ツール5、距離センサ6、切断トーチ7など)の動作を制御するとともに、後述するように、厚板素材14から製品である所定寸法の鉄鋼厚板の切り出し可否や、切断位置の自動設定、厚板素材14の端面の切断開始位置における厚み方向での凹凸の有無などを判定(判断)する。
【0027】
<自動切断方法>
厚板素材14の自動切断方法を図3から図6に示す。自動切断方法は、大きく分けて、(1)切断位置決定工程、(2)検出工程、(3)予備切断工程、(4)本切断工程の4つの工程を有しており、図3及び図4は、切断位置決定工程を示す概略図、図5は、予備切断工程を示す概略図、図6は、本切断工程を示す概略図であり、図3図4図6において、(A)は概略側面図で、(B)は概略平面図である。具体的な手順を以下に示す。
【0028】
(1)切断位置決定工程
まず、切断対象である厚板素材14を天井クレーン9によって切断作業場に搬入し、定盤上に設置する。このとき、厚板素材14の定盤の設置位置(x座標、y座標)は、天井クレーン9に備え付けられた2つのエンコーダにより記録される。次いで、図3に示すように、天井クレーン9に備え付けられたカメラ12によって厚板素材14の設置位置(定盤上)を撮影する。カメラ12で撮影した撮影画像を画像解析することで厚板素材14の外形を検出・取得し、前述のエンコーダで取得した厚板素材14の設置位置とともに、厚板素材14の設置位置・外形の座標を門型切断機2の制御装置8に送信する。
【0029】
次に、図4に示すように、カメラ12によるカメラ画像により得られた厚板素材14の四周のエッジ(周縁)に倣うように門型切断機2を走査させ、ツール5に取り付けた距離センサ6によって厚板素材14の外形を精密測定し、精密測定した厚板素材14の外形データ(x座標、y座標)を制御装置8に送信する。制御装置8は、厚板素材14の外形データと切り出す予定の製品である鉄鋼厚板の図形とを比較し、鉄鋼厚板の切り出し可否判断を実施する。制御装置8は、鉄鋼厚板を切り出し可能と判断した場合、厚板素材14の切断線(切断位置)を自動設定する。このとき、切断線の一端が切断開始位置に設定される。尚、図4では、距離センサ6をx軸周り及びz軸周りに傾斜させているが、四周のエッジ(周縁)を走査して厚板素材14の外形を精密測定する際には、傾斜させなくともよい。
【0030】
(2)検出工程
上記の切断位置決定工程で厚板素材14の切断位置を自動設定した後、ツール5に取り付けた距離センサ6をx軸周り及びz軸周りに傾斜させ、切断開始位置における厚板素材14の端面の板厚方向の形状を測定・検出し(図2を参照)、端面の板厚方向の形状データを制御装置8に送信する。尚、端面の板厚方向の形状を測定する場合、四周全面の板厚方向の形状を測定・検出してもよいが、必ずしも四周全面の形状を測定・検出する必要はなく、少なくとも、切断開始位置(予熱位置)の板厚方向の形状を測定・検出すればよい。
【0031】
制御装置8は、厚板素材14の切断開始位置の端面の板厚方向の形状データに基づいて、端面での凹凸の有無、特に、板厚方向における凹凸の有無を判定する。具体的には、端面の板厚方向において、最も出っ張っている箇所と最もへこんでいる箇所の差が閾値以上か否か判断し、閾値以上である場合は、端面に凹凸が有ると判定する。尚、閾値は例えば5.0mmとする。
【0032】
(3)予備切断工程
上記の検出工程で、切断開始位置の端面に凹凸が有ると判定した場合は、厚板素材14の端面の凸部を切断し、切断開始位置の端面の凹凸を実質的に除去する予備切断を実施する。予備切断工程の概略を図5に示す。図5(A)は、予備切断開始前に切断開始位置の端面を予熱する状態を示す斜視図であり、図5(B)は、予備切断工程を時系列に示す概略図(平面図及び側面図)である。
【0033】
予備切断工程では、まず、切断トーチ7を切断開始位置の端面に設置し、切断開始位置の端面を予熱炎で予熱し(図5(A)を参照)、その後、端面の凹凸の量(位置や高さ)に応じて、図5(B)に示すように、切断トーチ7から切断酸素気流7aを噴射させながら、切断トーチ7を、端面の最も出っ張っている箇所から最もへこんでいる箇所へと走行させ、端面の上面側の凸部を切断(溶断)する。
【0034】
上面側の凸部の切断後、切断トーチ7を端面の最も出っ張っている箇所に戻し、切断トーチ7から切断酸素気流7aを噴射させながら、再度、切断トーチ7を、端面の最も出っ張っている箇所から最もへこんでいる箇所へと走行させ、下面側の凸部を切断(溶断)する。具体的な切断方法としては、予め、切断酸素気流7aの噴射時間と端面凸部の切断量との関係を求めておき、端面の凹凸の量(位置や高さ)に応じて切断酸素気流7aの噴射時間を調整することで、端面の凸部を切断(溶断)する。
【0035】
切断トーチ7の1回の走行で上面側または下面側の凸部を切断できない場合は、端面の最も出っ張っている箇所から最もへこんでいる箇所への切断トーチ7の走行を繰り返し、上面側または下面側の凸部を完全に切断する。尚、図5(A)において、符号17は、切断位置決定工程で自動設定した切断線(切断位置)であり、図5(B)において、符号14aは、厚板素材14の未切断の断面部位で、符号14bは、厚板素材14の切断された断面部位を示す。
【0036】
このとき、端面全面の凸部を切断する(切り落とす)必要はなく、図5(B)に示すように、少なくとも切断開始位置において切断トーチ7の幅(直径)分だけ凸部を切断すれば、本切断の際に予熱位置を適切に設定することが可能となる。尚、切断開始位置の端面に凹凸が無い場合には、予備切断工程は不要である。
【0037】
(4)本切断工程
切断開始位置において、端面の凸部を切り落として端面が実質的に平坦になったら、平坦な端面に切断トーチ7を位置決めし、平坦な端面を切断トーチ7で予熱し、予熱後、図6に示すように、上記切断位置決定工程で自動設定した切断線17に沿って厚板素材14の本切断を実施する。
【0038】
以上説明した本発明に係る切断方法によれば、厚板素材14を本切断する前に予熱位置(切断開始位置)の端面の凸部を切り落とすことで、本切断の際に予熱位置を適切に設定することができ、厚板素材14の切断不良、すなわち厚板素材14が切断不可になることを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、天井クレーン9などの厚板素材14の上方に備え付けたカメラ12(撮像装置)によって厚板素材14の位置を測定した後に、門型切断機2に備え付けた非接触式の距離センサ6(外形測定センサ)で厚板素材14の外形を精密測定している。このように、2段階で厚板素材14の位置・外形を検出することで、厚板素材14の外形を短時間で精密に測定することが可能となり、切断前の厚板素材14の寸法測定作業、要求する図形(製品寸法)の切り出し可否判定、切断位置の自動設定、高精度な位置決めが必要な予熱位置合わせを自動で達成することが可能になる。
【0040】
上記説明は、本発明に係る金属材の自動切断方法及び自動切断装置を厚板素材14から鉄鋼厚板(厚鋼板)を切り出す工程に適用した場合を例として説明したが、アルミニウム及びチタンなどの厚板を製品寸法に切り出す際も、上記に準じて本発明を適用することができる。
【0041】
尚、上記の実施形態では、厚板素材14の位置を測定するカメラ12(撮像装置の一例)が、天井クレーン9の吊り部11に具備されていたが、カメラ12の設置位置は吊り部11に限らない。例えば、図7に示すように、吊り部11に加えて、または、吊り部11に代えて、定盤の周囲における建屋の架台16にカメラ12を複数台設置し、カメラ12によって切断作業場である定盤全体を撮影することで、定盤上の厚板素材14の位置を測定する構成としてもよい。
【実施例0042】
端面の中央部に凹みがある厚板素材の自動切断方法を示す。ガス切断などの熱切断においては、アセチレン・プロパンなどの燃焼炎で厚板素材の端面を、鉄の発火温度である約900℃まで予熱し、予熱後、高純度の酸素ガスを切断酸素気流として吹き付け、酸化反応により生じた熱で厚板素材を溶融させると同時に溶融した鉄を切断酸素ガスの気流で吹き飛ばすことで、連続的な切断が行われる。
【0043】
従来、厚板素材端面の切断開始位置において、例えば、端面の板厚方向の上部及び下部に凸部があって中央部にへこみがあり、最も出っ張っている箇所と最もへこんでいる箇所の差が5.0mm以上の場合も、端面を所定時間予熱した後、設定した切断線に沿って切断トーチを移動させ、厚板素材の本切断を実施していた。
【0044】
しかしながら、従来、端面の板厚方向の上下に5.0mm以上の凹凸が有る条件では、端面の断面が不連続であることから、下面側の凸部を自動で切断することが難しく、下面側の凸部が切り残り、切断不可となっていた。このため、作業員が切断トーチの火口位置を手動で微調整させ、上面側凸部と下面側凸部とをそれぞれ切り離した後に、本切断を開始する必要があった。
【0045】
これに対し、本発明に係る金属材の自動切断方法を適用して、距離センサによって切断開始位置の板厚方向の端面形状を測定・検出することで、端面の板厚方向の凹凸(凹み位置・凸部位置)を計測し、図5(B)に示すように、切断トーチの火口を、端面の最も出っ張っている箇所から最もへこんでいる箇所へと走行させて上面側凸部を切断し、その後、端面の最も出っ張っている箇所に切断トーチの火口を移動させ、再度、切断トーチの火口を、端面の最も出っ張っている箇所から最もへこんでいる箇所へと走行させて下面側凸部を切断することで、端面の上面側凸部及び下面側凸部を自動で予備切断することができた。これにより、端面の板厚方向に5.0mm以上の凹凸が有る条件であっても、本切断の予熱位置を適切に設定することができ、本切断を良好に実施できることが確認された。
【符号の説明】
【0046】
1 自動切断装置
2 門型切断機
3 レール
4 台車
5 ツール
6 距離センサ(外形測定センサの一例)
7 切断トーチ
8 制御装置(判定部の一例)
9 天井クレーン
10 クレーン本体
11 吊り部
11a、11b 車輪
12 カメラ(撮像装置の一例)
13 エンコーダ
14 厚板素材(金属材の一例)
15 レール
16 架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7