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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087795
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】焼却システム及び潤滑油供給システム
(51)【国際特許分類】
   F23L 5/02 20060101AFI20230619BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20230619BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F23L5/02
C02F11/06 B ZAB
F23L15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202272
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】小関 泰志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(72)【発明者】
【氏名】台場 信弘
(72)【発明者】
【氏名】信田 一成
【テーマコード(参考)】
3K023
4D059
【Fターム(参考)】
3K023HA06
3K023HA20
3K023QA11
3K023QB01
3K023QC08
4D059AA03
4D059BB01
4D059BB13
4D059CA10
(57)【要約】
【課題】軸受に対する潤滑油の安定的な供給を行う焼却システム及び潤滑油供給システムを提供する。
【解決手段】被処理物を焼却する焼却炉と、焼却炉に供給される空気を圧縮して圧縮空気を生成するコンプレッサとコンプレッサを駆動するタービンとを有する過給機と、コンプレッサによって圧縮された圧縮空気を焼却炉から排出された排ガスにより昇温し、昇温された圧縮空気をタービンに供給する熱交換器と、過給機の軸受に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、第1タンクに貯留された潤滑油を第1タンクと軸受との間で循環させ、更に、第2タンクに貯留された潤滑油を第2タンクから軸受に供給可能な供給部と、第2タンクに対して空気を供給して第2タンク内を加圧させる空気供給器と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉に供給される空気を圧縮して圧縮空気を生成するコンプレッサと前記コンプレッサを駆動するタービンとを有する過給機と、
前記コンプレッサによって圧縮された前記圧縮空気を前記焼却炉から排出された排ガスにより昇温し、昇温された前記圧縮空気を前記タービンに供給する熱交換器と、
前記過給機の軸受に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、
前記第1タンクに貯留された前記潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、更に、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記第2タンクから前記軸受に供給可能な供給部と、
前記第2タンクに対して空気を供給して前記第2タンク内を加圧させる空気供給器と、を備えた、焼却システム。
【請求項2】
前記供給部は、前記第2タンクから前記軸受に供給する前記潤滑油の流量を調整する弁を有し、
更に、前記焼却システムにおける異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記空気供給器を制御して前記第2タンク内を加圧し、前記弁を開制御する制御装置を備えた、請求項1に記載の焼却システム。
【請求項3】
被処理物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉に供給される空気を圧縮して圧縮空気を生成するコンプレッサと前記コンプレッサを駆動するタービンとを有する過給機と、
前記コンプレッサによって圧縮された前記圧縮空気を前記焼却炉から排出された排ガスにより昇温し、昇温された前記圧縮空気を前記タービンに供給する熱交換器と、
前記過給機の軸受に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、
前記第1タンクに貯留された前記潤滑油の一部を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、前記第1タンクに貯留された前記潤滑油の他の一部を前記第1タンクと前記第2タンクとの間で循環させ、更に、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記軸受に供給可能な供給部と、を備えた、焼却システム。
【請求項4】
更に、前記焼却システムにおける異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記供給部を制御することによって、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記軸受に供給し、前記異常が発生していないと判定した場合、前記供給部を制御することによって、前記第1タンクに貯留された前記潤滑油の一部を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、前記第1タンクに貯留された前記潤滑油の他の一部を、前記軸受を迂回して前記第1タンクと前記第2タンクとの間で循環させる制御装置を備えた、請求項3に記載の焼却システム。
【請求項5】
前記供給部は、第1の量の潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させる第1配管と、前記第1配管における前記軸受の上流側と前記第1タンクの下流側との間の箇所から分岐し、前記第2タンクに連通して第2の量の潤滑油を前記第2タンクに供給する第2配管と、前記第2タンクに連通し、前記第1配管における前記軸受の下流側と前記第1タンクの上流側との間の箇所または第2タンクに合流する第3配管と、前記第3配管における前記潤滑油の流量を調整する弁を有し、
前記制御装置は、前記異常が発生していないと判定した場合、前記弁を開制御し、前記異常が発生していると判定した場合、前記弁を閉制御する、請求項4に記載の焼却システム。
【請求項6】
前記供給部は、第1の量の潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させる第1配管と、前記第1配管における前記軸受の上流側と前記第1タンクの下流側との間の箇所から分岐し、前記第2タンクに連通して第2の量の潤滑油を前記第2タンクに供給する第2配管と、前記第2配管から分岐して前記第1配管に連通する枝管と、前記第2配管における潤滑油の流量を調整する第1の弁と、前記枝管における潤滑油の流量を調整する第2の弁とを有し、
前記制御装置は、前記異常が発生していないと判定した場合、前記第1の弁を開制御し、前記第2の弁を閉制御し、前記異常が発生していると判定した場合、前記第1の弁を閉制御し、前記第2の弁を開制御する、請求項4に記載の焼却システム。
【請求項7】
前記供給部は、前記第2タンクから前記軸受に供給する前記潤滑油の流量を調整する弁を有し、
更に、前記第2タンクに対して空気を供給して前記第2タンク内を加圧させる空気供給器と、
前記焼却システムにおける異常が発生しているか否かを判定し、前記異常が発生していると判定した場合、前記空気供給器を制御して前記第2タンク内を加圧し、前記弁を開制御する制御装置を備えた、請求項3に記載の焼却システム。
【請求項8】
エネルギー変換装置と、
前記エネルギー変換装置に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、
前記第1タンクから貯留された前記潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、更に、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記第2タンクから前記軸受に供給可能な供給部と、
前記第2タンクに対して空気を供給して前記第2タンク内を加圧させる空気供給器と、を備えた、潤滑油供給システム。
【請求項9】
エネルギー変換装置と、
前記エネルギー変換装置に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、
前記第1タンクに貯留された前記潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、前記第1タンクに貯留された前記潤滑油の一部を前記第1タンクと前記第2タンクとの間で循環させ、更に、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記軸受に供給可能な供給部と、を備えた、潤滑油供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却システム及び潤滑油供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水汚泥(以下、単に汚泥または被処理物とも呼ぶ)を焼却する焼却炉では、熱交換器により焼却炉から排出される高温の排ガスから廃熱を回収する。そして、焼却炉では、回収された廃熱による昇温された燃焼用空気を用いることによって汚泥を焼却する(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-227441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような焼却炉には、例えば、炉内に燃焼用空気を供給する過給機を設けられる。これにより、焼却炉では、炉内に燃焼用空気を供給する送風機等の稼働に要する電力を抑制することが可能になり、汚泥の焼却に要するコストを抑制することが可能になる。
【0005】
しかしながら、上記のような過給機の運転中において、何からの理由により、過給機の軸受に対する潤滑油の供給が中断された場合、軸受の損傷が発生する可能性がある。そのため、過給機では、軸受に対する潤滑油を安定的な供給が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における焼却システムは、被処理物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉に供給される空気を圧縮して圧縮空気を生成するコンプレッサと前記コンプレッサを駆動するタービンとを有する過給機と、前記コンプレッサによって圧縮された前記圧縮空気を前記焼却炉から排出された排ガスにより昇温し、昇温された前記圧縮空気を前記タービンに供給する熱交換器と、前記過給機の軸受に対して供給される潤滑油をそれぞれ貯留する第1及び第2タンクと、前記第1タンクに貯留された前記潤滑油を前記第1タンクと前記軸受との間で循環させ、更に、前記第2タンクに貯留された前記潤滑油を前記第2タンクから前記軸受に供給可能な供給部と、前記第2タンクに対して空気を供給して前記第2タンク内を加圧させる空気供給器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明における焼却システム及び潤滑油供給システムによれば、軸受に対する潤滑油の安定的な供給を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、焼却システム100を説明する図である。
図2図2は、比較例における潤滑油供給システム90の構成例を説明する図である。
図3図3は、第1の実施の形態における潤滑油供給システム10の構成例を説明する図である。
図4図4は、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の構成例を説明する図である。
図5図5は、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0010】
[焼却システム100]
初めに、焼却システム100について説明を行う。図1は、焼却システム100の構成例を説明する図である。なお、以下に示すライン(配管)、ポンプ及び弁等の配置位置や数は例示であり、これに限られるものではない。
【0011】
焼却システム100は、図1に示すように、例えば、焼却炉1と、過給機2と、空気予熱器3と、空気予熱器4とを有する。
【0012】
焼却炉1は、例えば、ラインL11を介して供給された汚泥を焼却する流動焼却炉である。なお、焼却炉1は流動焼却炉に限定されず、様々な形式の焼却炉で良い。焼却炉1は、いわゆる流動層1aを有する。また、前記した汚泥は、脱水ケーキとも呼ばれる。以下、焼却炉1を流動焼却炉として説明を行う。
【0013】
過給機2は、図示しない軸受に支持された回転軸2cを介して接続されたコンプレッサ2a及びタービン2bを有する。
【0014】
具体的に、コンプレッサ2aは、吸引した空気を圧縮して圧縮空気を生成し、生成した圧縮空気を空気予熱器4に供給する。また、タービン2bは、空気予熱器4から供給された圧縮空気のエネルギー(換言すれば、焼却炉1から排出される廃熱量)を利用して回転軸2cを回転させる。なお、コンプレッサ2aは、タービン2bによる回転軸2cの回転に伴って駆動することにより、吸引した空気を圧縮して圧縮空気を生成し、生成した圧縮空気を空気予熱器4に供給する。
【0015】
空気予熱器3は、焼却炉1から排出された排ガスと、タービン2bから供給された圧縮空気との間において熱交換を行う。
【0016】
また、空気予熱器4は、空気予熱器3から供給された排ガスと、コンプレッサ2aから供給された圧縮空気との間において熱交換を行う。
【0017】
具体的に、空気予熱器4は、ラインL21を介して空気予熱器3から供給された排ガスを用いることによって、ラインL41を介してコンプレッサ2aから供給された圧縮空気を昇温し、ラインL42を介して昇温後の圧縮空気をタービン2bに供給する。ラインL21は、焼却炉1の出口側と空気予熱器4における排ガスの入口側とを連通する配管である。また、ラインL41は、コンプレッサ2aの出口側と空気予熱器4における圧縮空気の入口側とを連通する配管である。さらに、ラインL42は、空気予熱器4における圧縮空気の出口側とタービン2bの入口側とを連通する配管である。そして、空気予熱器3は、ラインL21を介して焼却炉1から供給された排ガスを用いることによって、ラインL31を介してタービン2bから供給された圧縮空気を昇温し、ラインL32を介して昇温後の圧縮空気を焼却炉1(焼却炉1における流動層1a)に供給する。
【0018】
なお、空気予熱器4から排出された排ガスは、例えば、白煙防止空気予熱器、スクラバ及び洗煙処理塔等を有する排ガス処理設備(図示せず)に供給される。
【0019】
[比較例における潤滑油供給システム90]
次に、比較例における潤滑油供給システム90について説明を行う。図2は、比較例における潤滑油供給システム90の構成例を説明する図である。なお、潤滑油供給システム90、後述する潤滑油供給システム10及び後述する潤滑油供給システム20のそれぞれは、図1で説明した焼却システム100における過給機2を含むものとして説明を行う。
【0020】
潤滑油供給システム90は、図2に示すように、例えば、過給機2と、潤滑油タンク5(以下、第1タンク5とも呼ぶ)と、緊急油タンク6(以下、第2タンク6とも呼ぶ)と、ポンプP1とを有する。ラインL51(以下、第1配管とも呼ぶ)は、潤滑油タンク5、ポンプP1及び過給機2を順に連結する循環配管である。すなわち、ラインL51は、潤滑油タンク5とポンプP1の入口側とを連通する配管、ポンプP1の出口側と過給機2の入口側とを連通する配管、及び、過給機2の出口側と潤滑油タンク5とを連通する配管とからなる循環配管である。そして、ラインL51には、潤滑油タンク5から過給機2に供給する潤滑油の流量を調整する弁V1が設けられている。また、ラインL52は、緊急油タンク6と、ラインL51における過給機2の上流側と潤滑油タンク5の下流側(弁V1の下流側)との間の箇所とを連通する配管である。そして、ラインL52には、緊急油タンク6から過給機2に供給する潤滑油の流量を調整する弁V2が設けられている。
【0021】
潤滑油タンク5は、過給機2の回転軸2cを支持する軸受(図示せず)に対して供給する潤滑油を貯留する。
【0022】
具体的に、潤滑油タンク5に貯留された潤滑油は、例えば、ポンプP1によって、ラインL51を介して過給機2の軸受に供給される。この場合、ラインL51に設けられた弁V1は、潤滑油が通過することができるように開いている状態である。そして、過給機2に供給された潤滑油は、例えば、ラインL51を介して潤滑油タンク5に再度供給される。
【0023】
すなわち、潤滑油タンク5に貯留された潤滑油は、ラインL51を循環することによって、過給機2の軸受に対して潤滑油を連続的に供給する。
【0024】
緊急油タンク6は、潤滑油タンク5と同様に、過給機2の軸受に対して供給する潤滑油を貯留する。
【0025】
具体的に、緊急油タンク6は、例えば、ポンプP1等の故障等の異常(以下、単に異常とも呼ぶ)が発生したことに起因して、過給機2に対する潤滑油の供給が中断した場合、ラインL52を介して過給機2に対して潤滑油の供給を行う。この場合、ラインL52に設けられた弁V2は、潤滑油が通過することができるように開いている状態である。そして、過給機2に供給された潤滑油は、例えば、ラインL51の一部を介して潤滑油タンク5に供給される。
【0026】
なお、緊急油タンク6に貯留された潤滑油を過給機2に供給する場合、ラインL51における弁V1は、潤滑油が通過することができないように閉じている状態であってよい。
【0027】
ここで、緊急油タンク6に貯留された潤滑油のヘッド圧(以下、単にヘッド圧とも呼ぶ)は、緊急油タンク6に貯留された潤滑油の量の減少に伴って低下する。そのため、緊急油タンク6に貯留された潤滑油の過給機2に対する供給がヘッド圧によって行われる場合、過給機2に対する潤滑油の供給量は、緊急油タンク6に貯留されている潤滑油の量の減少に伴うヘッド圧の低下によって徐々に減少する。
【0028】
また、過給機2に対する潤滑油の供給がヘッド圧によって行われる場合、緊急油タンク6は、過給機2の上方に設置する必要がある。そのため、この場合、緊急油タンク6を設置することが可能な位置が制限される。
【0029】
さらに、潤滑油供給システム90が設定された場所の温度が低い場合、緊急油タンク6やラインL52では、潤滑油が冷却されて潤滑油の粘度が上昇する。そのため、潤滑油供給システム90では、この場合、潤滑油の粘度の上昇に起因して、緊急油タンク6から過給機2に対する潤滑油の供給が安定的に行われなくなる。
【0030】
この点、例えば、緊急油タンク6やラインL52の温度を上げるためのヒータ(図示せず)等を設けることによって、緊急油タンク6に貯留されている潤滑油やラインL52を流れる潤滑油を昇温させることが可能になる。
【0031】
しかしながら、この場合、ヒータ等を設けるスペースが必要となるとともに、ヒータ等を稼働させるための電力が必要となるため、潤滑油供給システム90の稼働に要するコストが増加する。
【0032】
[第1の実施の形態における潤滑油供給システム10]
次に、第1の実施の形態における潤滑油供給システム10について説明を行う。図3は、第1の実施の形態における潤滑油供給システム10の構成例を説明する図である。以下、比較例における潤滑油供給システム90と異なる点について説明を行う。
【0033】
潤滑油供給システム10は、図3に示すように、例えば、空気供給器7を有する。
【0034】
空気供給器7は、例えば、空気(圧縮空気)が充填された空気タンクであり、緊急油タンク6に対して内部の空気を供給することによって、緊急油タンク6内を加圧する。
【0035】
具体的に、空気供給器7は、例えば、ポンプP1等において異常が発生したことに起因して、過給機2に対する潤滑油の供給が中断する可能性が生じた場合、ラインL53を介して緊急油タンク6に対して空気を供給する。ラインL53は、空気供給器7の出口側と緊急油タンク6とを連通する配管である。また、この場合、ラインL53に設けられた弁V3は、空気が通過することができるように開いている状態である。以下、以下、ラインL51、ラインL52、弁V1、弁V2及びポンプP1を総称して供給部40とも呼ぶ。そして、供給部40には、ラインL53及び弁V3が含まれるものとする。
【0036】
そして、緊急油タンク6は、空気供給器7によって内部が加圧された状態で、ラインL52を介して過給機2に対する潤滑油の供給を行う。
【0037】
これにより、本実施の形態における潤滑油供給システム10では、緊急油タンク6に貯留された潤滑油の量が少ない場合であっても(換言すれば、緊急油タンク6に貯留された潤滑油のヘッド圧が低い場合)、過給機2に対して安定した量の潤滑油を供給することが可能になる。さらに、本実施の形態における潤滑油供給システム10では、空気供給器7からの空気によって緊急油タンク6内を加圧させて潤滑油の供給を行うため、ヘッド圧のみによる潤滑油の供給を行わない。そのため、潤滑油供給システム10では、緊急油タンク6を過給機2の上方に設置する必要がなくなり、緊急油タンク6の設置位置の制約を緩和することが可能になる。
【0038】
なお、上記の例では、潤滑油供給システム10が焼却システム100に含まれる過給機2に対して潤滑油を供給する場合について説明を行ったが、潤滑油供給システム10は、例えば、焼却システム100以外に含まれる過給機に対して潤滑油を供給するものであってもよい。具体的に、潤滑油供給システム10は、例えば、船舶等に搭載された過給機2の軸受に対して潤滑油を供給するものであってもよい。
【0039】
さらに、潤滑油供給システム10は、例えば、過給機以外のエネルギー変換装置(例えば、発電機)に対して潤滑油を供給するものであってもよい。
【0040】
なお、潤滑油供給システム10は、例えば、弁V1、弁V2及び弁V3の開閉制御を行う制御装置(図示せず)を有するものであってもよい。制御装置は、例えば、CPU(Central Computing Unit)及びメモリ等を有するコンピュータであり、記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムとCPUとが協働することによって、弁V1、弁V2及び弁V3の開閉制御を行う。なお、弁の開制御とは、弁の開度を大きくすることであり、例えば完全閉から開度を大きくすることも意味する。また、弁の閉制御とは、弁の開度を小さくすることであり、例えば完全開から開度を小さくすることも意味する。なお、以下の説明では、弁の開制御とは、弁を完全に開くこと(開度100%)として説明し、また、弁の閉制御とは、弁を完全に閉ること(開度0%)として説明するが、限定されるものではない。
【0041】
具体的に、制御装置は、この場合、例えば、潤滑油供給システム10(焼却システム100)においてポンプP1の故障等の異常が発生しているか否かについての判定を行う。
【0042】
そして、異常が発生していると判定した場合、制御装置は、例えば、空気供給器7を制御して緊急油タンク6内を加圧することによって、緊急油タンク6に貯留された潤滑油を過給機2(軸受)に供給する。すなわち、制御装置は、この場合、例えば、弁V2及び弁V3の開制御を行うとともに、弁V1の閉制御を行う。
【0043】
一方、異常が発生していないと判定した場合、制御装置は、例えば、潤滑油タンク5に貯留された潤滑油を、潤滑油タンク5と過給機2(軸受)との間で循環させる。すなわち、制御装置は、この場合、例えば、弁V2及び弁V3の閉制御を行うとともに、弁V1の開制御を行う。
【0044】
これにより、潤滑油供給システム10では、異常の発生時において、緊急油タンク6から過給機2に対する潤滑油の供給を自動的に開始することが可能になる。そのため、潤滑油供給システム10では、過給機2に対する潤滑油の供給を、異常発生時においても自動的に継続させることが可能になる。
【0045】
[第2の実施の形態における潤滑油供給システム20]
次に、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20について説明を行う。図4は、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の構成例を説明する図である。以下、比較例における潤滑油供給システム90と異なる点について説明を行う。
【0046】
潤滑油供給システム20は、図4に示すように、ラインL51を循環する潤滑油の一部を緊急油タンク6に供給するラインL54と、緊急油タンク6に貯留された潤滑油の一部をラインL51に供給するラインL55とを有する。
【0047】
ラインL54は、図4に示すように、過給機2の上流側(弁V1の上流側)と潤滑油タンク5の下流側との間の箇所においてラインL51から分岐し、緊急油タンク6と連通する配管である。ラインL54には、潤滑油タンク5から緊急油タンク6に供給する潤滑油の流量を調整する弁V4が設けられている。
【0048】
また、ラインL55は、緊急油タンク6と連通し、過給機2の下流側と潤滑油タンク5の上流側との間の箇所においてラインL51に合流する配管である。
【0049】
以下、ラインL54を第2配管とも呼び、ラインL55を第3配管とも呼ぶ。また、以下、ラインL51を介して潤滑油タンク5から供給された潤滑油のうち、過給機2に供給される潤滑油の量を第1の量とも呼び、ラインL54を介して緊急油タンク6に供給される潤滑油の量を第2の量とも呼ぶ。
【0050】
具体的に、潤滑油供給システム20では、例えば、ポンプP1によって潤滑油タンク5から過給機2に対して供給された潤滑油の一部を、ラインL54を介して緊急油タンク6に供給する。そして、潤滑油供給システム20では、例えば、ラインL54を介して供給された潤滑油と同じ量の潤滑油を、ラインL55を介してラインL51に供給する。この場合、ラインL54に設けられた弁V4は、潤滑油が通過することができるように開いている状態である。以下、供給部40には、ラインL54及び弁V4、ラインL55が含まれるものとする。
【0051】
すなわち、潤滑油供給システム20では、ラインL51を循環する潤滑油の一部を緊急油タンク6に供給させながら循環させることで、緊急油タンク6に貯留されている潤滑油の温度低下を抑制することが可能になる。
【0052】
これにより、本実施の形態における潤滑油供給システム20では、潤滑油供給システム20が設定された場所の温度が低い場合であっても、緊急油タンク6に貯留されている潤滑油やラインL52を流れる潤滑油の粘度の上昇を抑制することが可能になり、過給機2に対して安定した量の潤滑油を供給することが可能になる。そのため、潤滑油供給システム20では、緊急油タンク6やラインL52の温度を上げるためのヒータ等を設ける必要がなくなり、又はヒータの運転時間が短くなり、潤滑油供給システム20の稼働に要するコストの増加を抑えることが可能になる。
【0053】
なお、潤滑油供給システム20は、潤滑油供給システム10の場合と同様に、例えば、弁V1、弁V2及び弁V4の開閉制御を行う制御装置を有するものであってもよい。
【0054】
具体的に、制御装置は、この場合、例えば、潤滑油供給システム20(焼却システム100)においてポンプP1の故障等の異常が発生しているか否かについての判定を行う。
【0055】
そして、異常が発生していると判定した場合、制御装置は、例えば、緊急油タンク6に貯留された潤滑油を過給機2(軸受)に供給する。すなわち、制御装置は、この場合、例えば、弁V2の開制御を行うとともに、弁V1及び弁V4の閉制御を行う。
【0056】
一方、異常が発生していないと判定した場合、制御装置は、例えば、潤滑油タンク5に貯留された潤滑油の一部を、潤滑油タンク5と過給機2との間で循環させるとともに、潤滑油タンク5に貯留された潤滑油の他の一部を、過給機2を迂回して潤滑油タンク5と緊急油タンク6との間で循環させる。すなわち、制御装置は、この場合、例えば、弁V2の閉制御を行うとともに、弁V1及び弁V4の開制御を行う。
【0057】
これにより、潤滑油供給システム20では、潤滑油供給システム10の場合と同様に、異常の発生時において、緊急油タンク6から過給機2に対する潤滑油の供給を自動的に開始することが可能になる。そのため、潤滑油供給システム20では、過給機2に対する潤滑油の供給を、異常発生時においても自動的に継続させることが可能になる。また、潤滑油供給システム20は、潤滑油供給システム10と同様に、空気供給器7を有するものであってよい。そして、空気供給器7は、例えば、ポンプP1等において異常が発生したことに起因して、過給機2に対する潤滑油の供給が中断する可能性が生じた場合、ラインL53を介して緊急油タンク6に対して空気を供給するものであってもよい。
【0058】
[第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の変形例]
次に、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の変形例について説明を行う。図5は、第2の実施の形態における潤滑油供給システム20の変形例を説明する図である。具体的に、図5(A)は、異常発生時における潤滑油の流れを説明する図であり、図5(B)は、通常時における潤滑油の流れを説明する図である。
【0059】
ラインL52は、図5に示すように、例えば、ラインL54における箇所P(ライン51とラインL54との接続箇所と緊急油タンク6との間の箇所)から分岐してラインL51に連通するものであってもよい。以下、ラインL54のうちの緊急油タンク6と箇所Pとの間の部分をラインL54aとも呼ぶ。また、以下、ラインL52を枝管L52とも呼ぶ。
【0060】
すなわち、異常発生時において、緊急油タンク6に貯留された潤滑油は、ラインL54aとラインL52とを順に経由してラインL51(過給機2)に供給されるものであってもよい。また、通常時において、ラインL51を介して潤滑油タンク5から供給された潤滑油は、ラインL54(ラインL54aを含む)を経由して緊急油タンク6に供給されるものであってもよい。
【0061】
具体的に、制御装置は、異常が発生していると判定した場合、例えば、図5(A)に示すように、弁V2(以下、第2の弁V2とも呼ぶ)の開制御を行うとともに、ラインL54に設けられた弁V5(以下、第1の弁V5とも呼ぶ)の閉制御を行う。なお、弁V5は逆止弁であってもよい。一方、制御装置は、異常が発生していないと判定した場合、例えば、図5(B)に示すように、弁V2の閉制御を行うとともに、弁V5の開制御を行う。
【0062】
これにより、潤滑油供給システム20では、緊急油タンク6に貯留された潤滑油をラインL51(過給機2)に供給する際に、温度が上げられたラインL54aを経由させることが可能になる。そのため、潤滑油供給システム20では、ラインL52を流れる潤滑油の粘度の上昇をより抑制することが可能になり、過給機2に対してより安定した量の潤滑油を供給することが可能になる。
【符号の説明】
【0063】
1:焼却炉 1a:流動層
2:過給機 2a:コンプレッサ
2b:タービン 2c:回転軸
3:空気予熱器 4:空気予熱器
5:潤滑油タンク 6:緊急油タンク
7:空気供給器 10:潤滑油供給システム
20:潤滑油供給システム 40:供給部
90:潤滑油供給システム 100:焼却システム
P1:ポンプ L11:ライン
L21:ライン L31:ライン
L32:ライン L33:バイパス
L41:ライン L42:ライン
L51:ライン L52:ライン
L53:ライン L54:ライン
L54a:ライン L55:ライン
V1:弁 V2:弁
V3:弁 V4:弁
V5:弁
図1
図2
図3
図4
図5