(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087817
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】近赤外光を用いた植物葉撮像装置、植物葉特定成分比率推定システム、植物葉特定成分推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20230619BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230619BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/27 A
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202302
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164013
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】福井 謙一
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE02
2G059EE11
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK04
2G059LL04
2G059MM05
2G059NN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】近赤外光を植物葉に照射してその画像を取得する場合に外光の影響を防ぐことができる植物葉撮像装置、植物葉特定成分比率推定システムを提供する。
【解決手段】植物葉を遮光状態で載置し近赤外光の照射による植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する装置であって、天辺が平坦で両端部が閉塞された半円筒形状からなる植物葉載置部と、この植物葉載置部と連接し内部に近赤外光を発光する光源部とカメラモジュールとを収容する収容部と、植物葉載置部に嵌め合う内面形状を有し植物葉を植物葉載置部に載置したときに植物葉を遮光する蓋部と、外部接続端子とを含み、天辺の中央部には開口部が設けられ、カメラモジュールは開口部に対して設定した距離を離間して収容部に配置され、かつ、光源部から照射される近赤外光を遮光する遮光部を有し、光源部は開口部に載置された植物葉に近赤外光を照射するように収容部に配置された構成からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光の照射による前記植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する植物葉撮像装置であって、
天辺が平坦で、両端部が閉塞された半円筒形状からなる植物葉載置部と、
前記植物葉載置部と連接し、近赤外光を発光する光源部と前記カメラモジュールとを内部に収容する収容部と、
前記植物葉載置部に嵌め合う内面形状を有し、前記植物葉載置部に載置して外光を遮光する蓋部と、
前記光源部と前記カメラモジュールとを制御するコンピュータに接続するための外部接続端子とを含み、
前記植物葉載置部の前記天辺の中央部には開口部が設けられ、
前記カメラモジュールは、前記開口部に対して垂直方向に設定した距離を離間して前記収容部に配置され、かつ、前記光源部から照射される近赤外光を遮光する遮光部を有し、
前記光源部は、前記開口部に載置された前記植物葉に近赤外光を照射するように前記収容部に配置されたことを特徴とする植物葉撮像装置。
【請求項2】
前記開口部には、近赤外光を透過する透過板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の植物葉撮像装置。
【請求項3】
前記透過板の表面には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の植物葉撮像装置。
【請求項4】
前記植物葉載置部の両端部と前記蓋部の両端部には、前記蓋部を前記植物葉載置部に固定するための嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記植物葉載置部の両端部に設けられたガイド溝と前記蓋部に設けられた突起部、または前記植物葉載置部の両端部に設けられた突起部と前記蓋部に設けられたガイド溝、とからなることを特徴とする請求項4に記載の植物葉撮像装置。
【請求項6】
前記植物葉載置部の長手方向の一方の端部にヒンジが設けられており、前記蓋部の一方の端部が前記ヒンジに取り付けられ、前記蓋部は前記ヒンジを中心に回転して、前記蓋部の他方の端部が前記植物葉載置部の他方の端部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定システムであって、
前記コンピュータは、前記植物葉撮像装置を作動させて撮像した前記植物葉の画像を表示する表示部と、前記画像から明度を算出する算出部と、前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を記憶した記憶部と、前記算出部により算出された明度をもとに前記相関関数を用いて前記特定成分比率を推定する推定値計算部と、前記推定値計算部で得られた推定特定成分比率を前記表示部に表示することを特徴とする植物葉特定成分比率推定システム。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定システムであって、
前記コンピュータは、前記植物葉撮像装置を作動させて撮像した前記植物葉の画像を表示する表示部と、前記画像の設定した領域部の反射光強度を求める反射光検出部と、前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を記憶した記憶部と、前記反射光検出部により求めた前記植物葉の反射光強度をもとに前記相関関数を用いて特定成分比率を推定する推定値計算部と、前記推定値計算部で得られた推定特定成分比率を前記表示部に表示することを特徴とする植物葉特定成分比率推定システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、携帯情報端末またはパーソナルコンピュータであることを特徴とする請求項7または8に記載の植物葉特定成分比率推定システム。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定方法であって、
植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光を照射して前記植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する工程と、
前記カメラモジュールにより撮像された画像データを前記コンピュータの表示部に表示する工程と、
前記表示部に表示された画像から明度測定のための撮像領域を選定する工程と、
選定した撮像領域の画像データをもとにして前記コンピュータにより明度を算出する工程と、
前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を前記コンピュータの記憶部に格納する工程と、
前記記憶部から前記相関関数を読み込み、前記相関関数と算出した前記明度から推定特定成分比率を前記コンピュータにより求める工程と、
前記推定特定成分比率を前記表示部に表示する工程とを含むことを特徴とする植物葉特定成分推定方法。
【請求項11】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定方法であって、
植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光を照射して前記植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する工程と、
前記カメラモジュールにより撮像された画像データを前記コンピュータの表示部に表示する工程と、
前記表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を選定する工程と、
選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求める工程と、
前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を前記コンピュータの記憶部に格納する工程と、
前記記憶部から前記相関関数を読み込み、前記相関関数と前記反射光強度とを用いて推定特定成分比率を前記コンピュータにより求める工程と、
前記推定特定成分比率を前記表示部に表示する工程とを含むことを特徴とする植物葉特定成分推定方法。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記コンピュータに対して、
前記植物葉撮像装置を作動させて撮像した前記植物葉の画像を表示するステップと、
前記表示部に表示された画像から明度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、
前記測定者が選定した撮像領域の画像データをもとにして明度を算出するステップと、
前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を前記コンピュータの記憶部に格納するステップと、
前記記憶部から前記相関関数を読み込み、前記相関関数と算出した前記明度とを用いて推定特定成分比率を前記コンピュータにより求めるステップと、
前記推定特定成分比率を前記表示部に表示するステップとを含むことを特徴とする植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラム。
【請求項13】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の植物葉撮像装置と、
前記植物葉撮像装置の前記外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され植物葉中の特定成分比率を推定する植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記コンピュータに対して、
前記植物葉撮像装置を作動させて撮像した前記植物葉の画像を表示するステップと、
前記表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、
選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求めるステップと、
前記植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と前記特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を前記コンピュータの記憶部に格納するステップと、
前記記憶部から前記相関関数を読み込み、前記相関関数と前記反射光強度とを用いて推定特定成分比率を前記コンピュータにより求めるステップと、
前記推定特定成分比率を前記表示部に表示するステップとを含むことを特徴とする植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の植物葉中の繊維比率や葉緑素比率などの特定成分比率を推定するための近赤外光を用いた植物葉撮像装置、植物葉特定成分比率推定システム、植物葉特定成分推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の農業従事者は、2015年から2020年の5年間で46万人減少し152万人となっている。高齢化が進展しており、2020年の高齢化率は69.6%である。このため、農業を産業として持続させるために、意欲ある人材を農業に呼び込み新規就農者を増やすことが求められている。
【0003】
農業は労働集約型産業であり、かつ、多くの経験が必要とされるので新規就農者に対する大きな障害となっている。また、施肥の時期、気象条件による植え付け時期や収穫時期の判断、種々の病害虫への対応策など、多くの栽培条件は農業従事者の長年にわたる知識と経験により最適化されてきている。このような経験者は高齢者が多いが、世代交代が進んできており、経験者のノウハウの継承が求められている。経験豊富な高齢者でしかできない農業を、未経験者でも同じレベルの収穫を得られるようにすることが要求されている。そのためには、ICTの活用やドローンを用いた薬剤散布など、先端技術の採用が要求される。例えば、種々の植物の収穫時期の判断を経験と勘で行うのではなく、科学的な手法を用いて誰でも確実に測定評価できるようにすることが望まれる。
【0004】
その一つとして、植物の生育状態を診断する方法及び装置が開発されている。この装置は、植物の葉に光を照射するための光源部と、その照射光により生じる植物の葉の遅延発光を検出する第一の検出部と、所定温度条件下で遅延発光を検出するための温度調節部と、光源部が照射する光により生じる植物の葉のクロロフィル量を反映する光を検出する第二の検出部と、第一の検出部により検出した遅延発光データ及び第二の検出部によって検出したクロロフィルデータを記録する記録部とを備えた構成からなる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、植物の葉などの色測定に際して、その状態のままで測定することができる装置が開示されている。その装置は、被測定物に光を照射する光源及び被測定物からの拡散光を取出す取出口が取付けられた蓋部と、被測定物を載置する載置部とを設け、これら蓋部と載置部とにより被測定物を挟むことにより、被測定物の色測定を行うものである(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
稲作においては、幼穂形成期に穀物の収量を確保しながら稲の倒伏を防止するために穂肥が行われる。この穂肥を適切に行うための判断材料として、葉身の窒素量を簡単に、かつ正確に測定する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、測定対象物に対し発光波長の異なる複数の光を照射し、その反射光を検出して植物の生育状態を評価する生育状態評価装置が開示されている。この装置を用いれば、各光源の照射光の伝搬経路が一致するため、緑葉の葉脈の状態や緑葉自体の反り具合などによる影響が軽減され、測定誤差の発生を抑制できる (例えば、特許文献4参照)。
【0008】
さらに、植物を撮像した画像データから植物の表面の色に基づくその植物の情報を取得するようにして、低コストで植物の情報を取得可能とした植物情報取得システムが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0009】
さらに、製茶工場では、茶葉を格付けし、その結果に基づいてその後の加工条件を設定したり、買取価格の決定を行うが、そのための茶葉の格付け評価装置が開示されている。その装置は、茶葉収容部に収容した茶葉を透光性部材に対して押圧しながら、透光性部材を介して近赤外光を茶葉に照射し、この近赤外光の反射光における特定周波数成分の減衰量から茶葉に含まれる成分を特定する構成からなる(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-183702号公報
【特許文献2】特開2005-098987号公報
【特許文献3】特開平10-300665号公報
【特許文献4】特開2013-90号公報
【特許文献5】特開2016-127806号公報
【特許文献6】特開2002-139432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の発明は、樹木、園芸植物、野菜等の農産品について、その生育状態を診断し、病変、老化又は枯死等の変異を早期に判別することを目的としたものである。光を照射して葉の遅延発光を検出し、さらに葉のクロロフィル量を反映する光を検出しているが、遅延発光を検出するためには植物の葉に暗処理を施すことが要求されるので、測定装置を小型化できないという課題を有する。
【0012】
特許文献2に記載の発明は、非測定物である植物の葉を挟み込むようにして葉の色を測定している。特に、葉を切り取ったりせずそのままで測定することを特徴としている。しかし、葉の色を測定すれば葉の表面状態についての情報は得られるが定量的な評価をすることが難しい。
【0013】
特許文献3に記載の発明は、稲の葉の窒素量を測定することを目的としており、近赤外光が積分球内で散乱して葉に照射する構成からなる。しかし、装置構成が複雑であるため大型になり、容易に持ち運べないという課題を有する。
【0014】
特許文献4に記載の発明は、植物の緑葉の分光特性は、690nm~750nmにかけての波長範囲で分光反射率が急激に変化する波長領域(レッドエッジ)があり、これを求めることで植物の生育状態を評価している。このために、互いに発光波長が異なる2種類のLEDを用い、それらのLEDを回転させて同じ光検出器で検出するようにしている。そのため、回転機構が必要となり、簡単に色々な場所に持ち運んで測定することが難しいという課題を有する。
【0015】
特許文献5に記載の発明は、植物の表面の色から植物の情報を取得するものであり、分光分析装置などを用いる場合に比べて簡便である。しかし、可視光を用いるので、葉中の成分等を求めることは難しい。
【0016】
特許文献6に記載の発明は、茶葉の格付けをするためのものであり、工場内に設置して測定することを目的として構成されている。このため、測定機は大型であり、簡単に持ち運ぶことができないという課題を有する。
【0017】
本発明は、近赤外光を植物葉に照射してその画像を取得する場合に、外光の影響を簡単な構造で防ぐことができる植物葉撮像装置、それをコンピュータと接続して植物葉の特定成分比率を推定するシステム、推定する方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来の課題を解決するために、本発明の植物葉撮像装置は、植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光の照射による植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する装置であって、天辺が平坦で、両端部が閉塞された半円筒形状からなる植物葉載置部と、この植物葉載置部と連接し、近赤外光を発光する光源部とカメラモジュールとを内部に収容する収容部と、植物葉載置部に嵌め合う内面形状を有し、植物葉載置部に載置して外光を遮光する蓋部と、光源部とカメラモジュールとを制御するコンピュータに接続するための外部接続端子とを含み、植物葉載置部の天辺の中央部には開口部が設けられ、カメラモジュールはその開口部に対して垂直方向に設定した距離を離間して収容部に配置され、かつ、光源部から照射される近赤外光を遮光する遮光部を有し、光源部は開口部に載置された植物葉に近赤外光を照射するように収容部に配置された構成からなる。
【0019】
上記構成において、開口部には近赤外光を透過する透過板が設けられていてもよい。さらに、その透過板の表面には反射防止膜が形成されていてもよい。なお、近赤外光を透過する透過板としては、アクリル、ポリカーボネート、塩ビなどがあるが、アクリルは透過率が高いので好ましい。また、GATとよばれるポリオレフィンシートは可視光線と赤外線を同時に透過するものであるので、これを用いてもよい。その他に近赤外光を透過し、シート状に加工できるものであれば特に問題なく使うことができる。反射防止膜は、近赤外線領域の反射を防止するものであればよく、公知の方法でコーティングすることができる。
【0020】
このような構成とすることにより、簡単な構造でありながら、植物葉に外光が照射されるのを防止できるので、外光による測定ばらつきをなくすことができる。また、装置構成が簡単であり、かつ部品点数等が少ないので装置を安価にできる。さらに、透過板を設けることで、植物葉の表面のごみ等がカメラモジュールのレンズ表面に落下して撮像に影響することを防止できる。この透過板の表面に反射防止膜を設ければ、透過板の表面での近赤外光の反射を抑制できる。
【0021】
上記構成において、植物葉載置部の両端部と蓋部の両端部には、蓋部を植物葉載置部に固定するための嵌合部が設けられていてもよい。この嵌合部は、植物葉載置部の両端部に設けられたガイド溝と蓋部に設けられた突起部、または植物葉載置部の両端部に設けられた突起部と蓋部に設けられたガイド溝とからなる構成としてもよい。
【0022】
あるいは、上記構成において、植物葉載置部の長手方向の一方の端部にヒンジが設けられており、この蓋部の一方の端部がヒンジに取り付けられ、蓋部はヒンジを中心に回転して蓋部の他方の端部が植物葉載置部の他方の端部に嵌め込まれる構成としてもよい。
【0023】
このような構成とすることにより、蓋部を植物葉載置部にきっちりと固定でき、かつ、必要な時には簡単に取り外しできる。なお、蓋部を植物葉載置部に固定した状態で植物葉を挿入できる程度の隙間を設けておくようにしてもよい。このような構成とすれば、蓋部を固定したままで植物葉を取り換えながら測定できる。
【0024】
本発明の植物葉特定成分比率推定システムは、上記記載の植物葉撮像装置と、その植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定するシステムであって、コンピュータは、植物葉撮像装置を作動させて撮像した植物葉の画像を表示する表示部と、その画像から明度を算出する算出部と、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を記憶した記憶部と、算出部により算出された明度をもとにその相関関数を用いて特定成分比率を推定する推定値計算部と、推定値計算部で得られた推定特定成分比率を表示部に表示する構成からなる。
【0025】
さらに、本発明の植物葉特性成分比率推定システムは、上記記載の植物葉撮像装置と、植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定するシステムであって、コンピュータは、植物葉撮像装置を作動させて撮像した植物葉の画像を表示する表示部と、その画像の設定した領域部の反射光強度を求める反射光検出部と、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を記憶した記憶部と、反射光検出部により求めたその植物葉の反射光強度をもとにその相関関数を用いて特定成分比率を推定する推定値計算部と、推定値計算部で得られた推定特定成分比率を表示部に表示する構成からなる。
【0026】
このようなシステムとすることにより、植物葉撮像装置は外光を遮断する植物葉載置部、近赤外光を照射する光源部、カメラモジュールおよび外部接続端子を含むのみの簡単な構造でよいので安価にできる。そして、光源部やカメラモジュールへの電源供給と解析処理などはコンピュータですべて行うのでシステム全体としても安価にできる。さらに、コンピュータとしては携帯情報端末、例えばスマートホンやタブレット端末を用いることができるし、パーソナルコンピュータ、例えばノートパソコンなどを用いることもできる。なお、相関関数を求めるための特定成分比率は、例えば色々な植物の葉を赤外分光分析装置にかけて成分分析をすることにより定量的に求めることができる。例えば、赤外分光装置により葉緑素比率や水分比率あるいはそれぞれの植物葉に特有の成分比率などについても定量的に求めることができる。赤外分光分析装置で求めた特定成分比率と、同じ個所から採取した植物葉を上記システムにより求め、明度あるいは反射光強度のいずれかとの相関関数を求めればよい。
【0027】
上記システムにおいて、コンピュータは携帯情報端末またはパーソナルコンピュータであってもよい。携帯情報端末としては、例えばタブレット端末やスマートホンを用いることができる。また、パーソナルコンピュータは小型軽量で持ち運びが容易なタイプを用いることが好ましいが、必ずしもこのようなタイプに限定はされない。
【0028】
本発明の植物葉特定成分比率推定方法は、上記記載の植物葉撮像装置と、植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉中の特定成分比率を推定する方法であって、植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光を照射してその植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する工程と、カメラモジュールにより撮像された画像データをコンピュータの表示部に表示する工程と、表示部に表示された画像から明度測定のための撮像領域を選定する工程と、選定した撮像領域の画像データをもとにしてコンピュータにより明度を算出する工程と、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納する工程と、記憶部から相関関数を読み込み、その相関関数と算出した明度から推定特定成分比率をコンピュータにより求める工程と、求めた推定特定成分比率を表示部に表示する工程とを含む。
【0029】
また、本発明の植物葉特定成分比率推定方法は、上記記載の植物葉撮像装置と、その植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され、植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光を照射してその植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する工程と、カメラモジュールにより撮像された画像データをコンピュータの表示部に表示する工程と、表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を選定する工程と、選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求める工程と、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納する工程と、記憶部から相関関数を読み込み、その相関関数と求めた反射光強度とを用いて推定特定成分比率をコンピュータにより求める工程と、推定特定成分比率を表示部に表示する工程とを含む。
【0030】
本発明の植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラムは、上記記載の植物葉撮像装置と、その植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され植物葉中の特定成分比率を推定するシステムを作動させるプログラムであって、そのプログラムは、コンピュータに対して、植物葉撮像装置を作動させて撮像したその植物葉の画像を表示するステップと、表示部に表示された画像から明度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、測定者が選定した撮像領域の画像データをもとにして明度を算出するステップと、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納するステップと、記憶部から相関関数を読み込み、その相関関数と算出した明度とを用いて推定特定成分比率をコンピュータにより求めるステップと、その推定特定成分比率を表示部に表示するステップとを含む。
【0031】
また、本発明の植物葉特定成分比率推定システムを作動させるプログラムは、上記記載の植物葉撮像装置と、その植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され植物葉中の特定成分比率を推定するシステムを作動させるプログラムであって、そのプログラムは、コンピュータに対して、植物葉撮像装置を作動させて撮像した植物葉の画像を表示するステップと、表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求めるステップと、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納するステップと、記憶部からその相関関数を読み込み、その相関関数と求めた反射光強度とを用いて推定特定成分比率を前記コンピュータにより求めるステップと、その推定特定成分比率を表示部に表示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明の植物葉撮像装置は、簡単な構造で外光を確実に遮光でき、部品点数も少ないので安価に製作できる。この植物葉撮像装置とコンピュータとを接続した植物葉特定成分比率推定システム、植物葉特定成分推定方法及びそのプログラムは、植物葉に照射された近赤外光の反射光による画像をもとに明度または反射光強度を求め、その明度または反射光強度から特定成分比率を推定するのでシステム全体構成が簡単であり、かつ、誰でも容易に操作することができ、農業のスマート化に大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施の形態に係る植物葉撮像装置の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は上面から見た平面図、(c)は右側面図である。
【
図2】同実施の形態に係る植物葉撮像装置を長手方向に切断した断面概略図である。
【
図3】同実施の形態に係る植物葉撮像装置の蓋部と植物葉載置部を示す図面代用写真である。
【
図4】同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムを示す図で、植物葉撮像装置については蓋部を外した状態である。
【
図5】同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムを示す図で、植物葉撮像装置に植物葉を挿入した状態を示す。
【
図6】同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施の形態)
【0035】
本発明の実施の形態に係る植物葉撮像装置、植物葉特定成分比率推定システムおよび植物葉特定成分比率推定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態に係る植物葉撮像装置の構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は上面から見た平面図、(c)は右側面図である。
図2は、同実施の形態に係る植物葉撮像装置を長手方向に切断した断面概略図である。
図3は、同実施の形態に係る植物葉撮像装置の蓋部と植物葉載置部を示す図面代用写真である。
図4は、同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムを示す図で、植物葉撮像装置については蓋部を外した状態である。
図5は、同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムを示す図で、植物葉撮像装置に植物葉を挿入した状態を示す。
図6は、同実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムの構成を示すブロック図である。
以下、
図1から
図3を用いて本実施の形態に係る植物葉撮像装置について詳細に説明する。
【0037】
本実施の形態に係る植物葉撮像装置1は、植物葉15を遮光状態で載置し、近赤外光の照射による植物葉15からの反射光をカメラモジュール6により撮像する装置である。その具体的な構成は、天辺が平坦で、両端部が閉塞された半円筒形状からなる植物葉載置部2と、この植物葉載置部2と連接し、内部に近赤外光を発光する光源部5とカメラモジュール6とを収容する収容部3と、植物葉載置部2に嵌め合う内面形状を有し、植物葉載置部2に載置して外光を遮光する蓋部4と、光源部5とカメラモジュール6とを制御するコンピュータ20に接続するための外部接続端子10とを含む。
【0038】
なお、植物葉載置部2は半円筒形状と表現したが、完全な半円筒形状である必要はなく、蓋部4を嵌め合わせたときに天辺が見えない程度の曲率を有していればよい。植物葉載置部2の天辺は平坦に形成されており、この平坦面の中央領域に開口部11が設けられている。
【0039】
カメラモジュール6は開口部11に対して垂直方向に設定した距離を離間して収容部3に配置され、かつ、光源部5から照射される近赤外光を遮光する遮光部9を有する。本実施の形態では、カメラモジュール6は、底部に撮像素子7が設けられており、開口部11の上面に乗せられた植物葉15に焦点を合わせるためのレンズ8があり、それらの周囲には遮光部9があり、光源部5からの光がレンズ8を通して撮像素子7に入射することを防止している。
【0040】
光源部5は開口部11に載置された植物葉15に近赤外光を照射するように収容部3に配置されており、できる限り開口部11のみを照射し、その他の領域には光が照射されないようにしてある。
【0041】
本実施の形態では、開口部11には近赤外光を透過する透過板が設けられている。以下では、透過板を含む構成を開口部11と表現する。なお、透過板の表面に反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は近赤外光の反射を防止する膜をコーティングして形成する。この反射防止膜の形成は従来公知の技術を用いればよい。
【0042】
さらに、植物葉載置部2、収容部3、蓋部4、光源部5およびカメラモジュール6の遮光部9は、黒色の塗装を施し、さらに表面に微細な凹凸を設けておくことが好ましい。これにより、これらの領域からの反射光がカメラモジュール内に入射するのを抑制できる。なお、これらの領域から近赤外光の反射を抑制する手法としては、上記技術だけでなく他の公知の方法を用いてもよい。
【0043】
さらに、本実施の形態では、植物葉載置部2の両端部と蓋部4の両端部には、蓋部4を植物葉載置部2に固定するための嵌合部(図示せず)が設けられている。この嵌合部は、植物葉載置部2の両端部に設けられたガイド溝(図示せず)と蓋部4に設けられた突起部(図示せず)とからなる構成からなる。なお、嵌合部は、植物葉載置部2の両端部に設けられた突起部と蓋部4に設けられたガイド溝とからなる構成であってもよい。また、ガイド溝と突起部との組合せによる嵌合部に限定されず、嵌合する構造であれば他の公知の構成も採用することができる。
【0044】
さらに、本発明は上記の嵌合構成に限定されない。植物葉載置部の長手方向の一方の端部にヒンジが設けられており、この蓋部の一方の端部がヒンジに取り付けられ、蓋部はヒンジを中心に回転して、蓋部の他方の端部が植物葉載置部の他方の端部に嵌め込まれる構成としてもよい。
【0045】
なお、本実施の形態では、蓋部4を植物葉載置部2に固定した状態で植物葉を挿入できる程度の隙間を設けている。これにより、蓋部4を植物葉載置部2に固定したままで植物葉15を動かすことができ、かつ植物葉15を取り換えて測定できる。
【0046】
本実施の形態では、蓋部4は植物葉載置部2に嵌め合う構成としており、植物葉載置部2の天辺の平坦部の形状と同じ平坦部が蓋部4にも設けてある。蓋部2の平坦部と植物葉載置部2の平坦部とにより、植物葉15はこの領域では平坦な状態とされるので開口部11の撮像面領域の全体にわたり鮮明な画像を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、蓋部4を取り付けたまま植物葉15を挿入する構造としたが、本発明はこれに限定されない。蓋部4を外して植物葉15を載置し、その後に蓋部4を嵌め合わせるようにしてもよい。さらに、蓋部4の内面部にスポンジ状の弾力性を有する素材を貼り合わせておいてもよい。このようにすれば、植物葉載置部2と蓋部4との隙間をなくしながら、かつ、植物葉15を載置して画像を見ながら撮像領域を選択することができる。なお、弾力性を有する素材は黒色としておくことが好ましい。弾力性を有する素材としては、発泡ポリウレタン樹脂シートを貼り付けて用いることができる。
【0048】
次に、
図4から
図6を使って本実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムと推定方法について説明する。本実施の形態に係る植物葉特定成分比率推定システムは、上記記載の植物葉撮像装置1と、植物葉撮像装置1の外部接続端子10が接続されたコンピュータ20とを含み構成されている。
【0049】
コンピュータ20は、植物葉撮像装置1を作動させて撮像した植物葉15の画像を表示する表示部21と、その画像から明度を算出する算出部22と、その植物葉15と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数を記憶した記憶部24と、算出部22により算出された明度をもとにその相関関数を用いて特定成分比率を推定する推定値計算部23と、推定値計算部23で得られた推定特定成分比率を表示部21に表示する構成からなる。
【0050】
本実施の形態では、コンピュータ20として、USB接続端子を有するタブレット型携帯端末を用いた。植物葉撮像装置1の外部接続端子10をUSB接続端子として、タブレット型携帯端末に接続し、光源部5とカメラモジュール6への電力供給および画像データの入出力等を行う構成とした。なお、タブレット型携帯端末だけでなく、スマートホンやノートパソコンなどを用いてもよい。スマートホンの場合には外部接続端子10は、スマートホンと接続できる変換用端子を用いればよい。
このような植物葉特定成分比率推定システムを用いて植物葉特定成分を推定する方法について説明する。
植物葉15を植物葉載置部2と蓋部4との隙間に挿入する。
【0051】
つぎに、測定者がコンピュータ20に対して指示を与えると、コンピュータ20のCPU25が作動して電源部26から光源部5とカメラモジュール6に電力を供給する。本実施の形態では、光源部5は近赤外光を発光するLEDを2個用いている。光源部5が駆動されると開口部11にセットされた植物葉15に近赤外光が照射され、その反射光がカメラモジュールのレンズ8を通して撮像素子7に入射する。撮像素子7は、近赤外光に感度を有する2次元センサであり、レンズ8は植物葉15の画像をこの撮像素子7に焦点を合わせるように設定されている。あるいは、レンズ7を可動方式としてコンピュータ20に表示された画像をもとに、使用者がコンピュータ20に指令を与えて焦点を合わせるように動かす構成としてもよい。
【0052】
なお、本実施の形態では、コンピュータ20から光源部5とカメラモジュール6に電力を供給する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、植物葉撮像装置1内に電池を内蔵して、その電池から電力を供給するようにしてもよい。この場合には、植物葉特定成分比率推定システムを立ち上げる時に、植物葉撮像装置1に設けたスイッチを作動させて光源部5とカメラモジュール6に電力を供給するようにすればよい。その後の動作については同じである。このような構成とした場合には、外部接続端子10は画像データやコンピュータ20からの指令信号のやり取りだけになるのでスマートホンとの接続性が改善される。
【0053】
測定者は、表示部21に表示された画像をみながら明度を求める撮像領域を選定する。この場合、測定者は表示部21の画像を見ながら植物葉15を動かして撮像領域を選定する。
【0054】
撮像領域を選定したら、その選定した画像データをもとに、コンピュータ20の算出部22はその領域の明度を算出する。明度の算出においては、あらかじめ黒色標準と白色標準を用いて、それぞれの反射光強度を測定する。そして、黒色標準で測定した反射光強度、白色標準で測定した反射光強度、黒色標準の明度を0、および白色標準の明度を255として、反射光強度と明度との相関関数を求める。これをコンピュータ20の記憶部24に格納しておく。撮像領域を選定し、選定した画像データの反射光強度を求め、この反射光強度と上記相関関数とから明度を求め、これを算出した明度とする。反射光強度を求める場合には、一定面積の画像データから求めるものとする。
【0055】
なお、植物葉では純粋な白色や黒色は殆どないので、実際の植物葉の明度範囲に近い灰色、例えば薄い灰色で明度が200程度、濃い灰色で明度が50程度のものを標準試料としてもよい。
【0056】
つぎに、コンピュータ20の記憶部24にあらかじめ格納してある明度と植物葉特定成分比率との相関関数を用いて、算出した明度から推定特定成分比率を推定値計算部23により求める。
【0057】
明度と植物葉特定成分比率との相関関数の作成について説明する。植物葉を所定量採取し、これを粉末にしてから赤外分光分析装置にかける。赤外分光分析装置の分析データの中から注目する植物葉特定成分比率を選択し、定量化する。同じ植物葉であるが、種々の生育条件の植物葉について、同様の分析と定量化を行う。
【0058】
赤外分光分析装置で分析した植物葉と同じ場所で同じ時に採取した植物葉について、本実施の形態の植物葉特定成分比率推定システムを用いて、算出した明度を求める。これらの測定データをもとに、算出した明度と植物葉特定成分比率との相関関数を求め、記憶部24に格納する。
推定値計算部23は、記憶部24に格納してある相関関数を用いて、今回算出した明度をもとにして推定特定成分比率を求める。
その後、この推定特定成分比率を表示部21に表示する。
【0059】
これにより、植物葉15に照射された近赤外光の反射光による画像データから植物葉15中の特定成分比率を推定することができ、採取時期や施肥時期の判断を行うことができる。
【0060】
このシステムを作動させるプログラムは以下のものからなる。そのプログラムは、コンピュータ20に対して、植物葉撮像装置1を作動させて撮像したその植物葉15の画像を表示するステップと、表示部21に表示された画像から明度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、測定者が選定した撮像領域の画像データをもとにして明度を算出するステップと、その植物葉15と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について明度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部24に格納するステップと、記憶部24から相関関数を読み込み、その相関関数と算出した明度とを用いて推定特定成分比率をコンピュータにより求めるステップと、その推定特定成分比率を表示部21に表示するステップとを含む。
【0061】
このようなシステム、このシステムを用いた推定方法及びプログラムにより、種々の植物葉の明度を求めて、注目する特定成分比率を推定することができる。この結果、経験者でなくても植物の採取時期や施肥時期などを容易に判断することができる。
【0062】
なお、本発明は植物葉中の成分比率が重要となる種々の植物葉に適用可能である。例えば、桑葉、麦若葉、ドクダミ葉や長命草など、葉を主として使用する植物に応用することができる。さらに、葉緑素、葉中の窒素成分比率などの推定にも応用することができる。
【0063】
また、本発明で用いる光源5は、近赤外光のLEDとしたが、その波長は810nm程度から3000nm程度までの任意の波長を用いてもよい。さらに、1つの波長に限定することもなく、複数の波長を発光する光源を用いてもよい。あるいは、それぞれ異なる波長を発光するLEDを複数個用いてもよい。波長の選択は、求めたい特定成分比率に応じて適宜行うことができる。
【0064】
さらに、光源5の個数についても2個に限定されない。例えば、それぞれ波長の異なるLEDを3個づつ、合計9個のLEDを光源5として用い、カメラモジュール6の周囲にこれらを配置して多波長の近赤外光を照射する構成としてもよい。あるいは、光源5に多波長を発光するLEDを内蔵して用いてもよい。
【0065】
なお、用いる光源の波長の選択としては、赤外分光分析装置により目的とする特定成分比率のピーク波長を求め、この近傍の波長を選択してもよいし、そのピーク波長を含む連続的な波長の光源を選択してもよい。
【0066】
本実施の形態では、植物葉特定成分比率を求める方法として赤外分光分析装置を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、全窒素を植物葉特定成分比率とする場合には、燃焼法により求めてもよい。また、植物葉中の水分率を植物葉特定成分比率とする場合には、乾燥重量法による水分計を用いてもよい。その他に化学分析を行い、定量化する方法を用いてもよい。
(第2の実施の形態)
【0067】
本発明の第2の実施の形態の植物葉特性成分比率推定システムについて説明する。なお、本実施の形態で用いる植物葉撮像装置は、第1の実施の形態の植物葉撮像装置1と同じものを用いているので説明を省略する。
【0068】
本実施の形態では、コンピュータの構成が少し異なるのでそれを中心に説明する。コンピュータは、植物葉撮像装置1を作動させて撮像した植物葉の画像を表示する表示部を有する。これは第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、画像の設定した領域部の反射光強度を求める反射光検出部を設けている。この構成は、第1の実施の形態と異なる点である。また、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に相関関数を得るようにしている。これについても、第1の実施の形態とは異なる点である。これを記憶部に格納することは第1の実施の形態と同じである。
【0069】
そして、植物葉に近赤外光を照射して、反射光検出部でその植物葉の反射光強度を求め、記憶部に格納している相関関数を用いて特定成分比率を推定する推定値計算部を有するが、推定値計算部で使用するのは反射光強度と上記相関関数とである点が第1の実施の形態と異なる。そして、推定値計算部で得られた推定特定成分比率を表示部に表示する。表示部に表示することについては第1の実施の形態と同じである。
上記システムを用いた植物葉特定成分比率推定方法は、以下の工程を含む。
【0070】
まず、植物葉を遮光状態で載置し、近赤外光を照射してその植物葉からの反射光をカメラモジュールにより撮像する工程、カメラモジュールにより撮像された画像データをコンピュータの表示部に表示する工程、表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を選定する工程、選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求める工程、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納する工程、記憶部から相関関数を読み込み、その相関関数と求めた反射光強度とを用いて推定特定成分比率をコンピュータにより求める工程、推定特定成分比率を表示部に表示する工程を含む。なお、相関関数を求める工程は、実際に植物葉を測定する前にデータを取り、あらかじめ記憶部に格納しておくことが必要である。
なお、選定する撮像領域は植物葉によりそれぞれ異なるが、反射光強度を求めるための画像の面積は全て一定としている。
【0071】
このシステムを作動させるプログラムは、上記記載の植物葉撮像装置と、その植物葉撮像装置の外部接続端子が接続されたコンピュータとを含み構成され植物葉中の特定成分比率を推定するシステムを作動させるプログラムであって、そのプログラムは、コンピュータに対して、植物葉撮像装置を作動させて撮像した植物葉の画像を表示するステップと、表示部に表示された画像から反射光強度測定のための撮像領域を測定者に選定するよう求めるステップと、選定した撮像領域の画像データの反射光強度を求めるステップと、その植物葉と同一種で生育状態の異なる種々の植物葉について反射光強度と特定成分比率とをそれぞれ求め、それらを基に得た相関関数をコンピュータの記憶部に格納するステップと、記憶部からその相関関数を読み込み、その相関関数と求めた反射光強度とを用いて推定特定成分比率を前記コンピュータにより求めるステップと、その推定特定成分比率を表示部に表示するステップとを含む。
【0072】
このようなシステム、このシステムを用いた推定方法及びプログラムにより、種々の植物葉の反射光強度を求めて、注目する特定成分比率を推定することができる。この結果、経験者でなくても植物の採取時期や施肥時期などを容易に判断することができる。
【0073】
なお、本発明は植物葉中の成分比率が重要となる種々の植物葉に適用可能である。例えば、桑葉、麦若葉、ドクダミ葉や長命草など、葉を主として使用する植物に応用することができる。さらに、葉緑素、葉中の窒素成分比率などの推定にも応用することができる。
【0074】
また、本発明で用いる光源5は、近赤外光のLEDとしたが、その波長は810nm程度から3000nm程度までの任意の波長を用いてもよい。さらに、1つの波長に限定することもなく、複数の波長を発光する光源を用いてもよい。あるいは、それぞれ異なる波長を発光するLEDを複数個用いてもよい。波長の選択は、求めたい特定成分比率に応じて適宜行うことができる。
【0075】
さらに、光源5の個数についても2個に限定されない。例えば、それぞれ波長の異なるLEDを3個づつ、合計9個のLEDを光源5として用い、カメラモジュール6の周囲にこれらを配置して多波長の近赤外光を照射する構成としてもよい。あるいは、光源5に多波長を発光するLEDを内蔵して用いてもよい。
【0076】
なお、用いる光源の波長の選択としては、赤外分光分析装置により目的とする特定成分比率のピーク波長を求め、この近傍の波長を選択してもよいし、そのピーク波長を含む連続的な波長の光源を選択してもよい。
【0077】
なお、本実施の形態では、植物葉特定成分比率を求める方法として赤外分光分析装置を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、全窒素を植物葉特定成分比率とする場合には、燃焼法により求めてもよい。また、植物葉中の水分率を植物葉特定成分比率とする場合には、乾燥重量法による水分計を用いてもよい。その他に化学分析を行い、定量化する方法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の植物葉撮像装置、植物葉特定成分比率推定システムは、農業分野における葉物の採取時期や施肥時期の判定を行うスマート農業分野に有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 植物葉撮像装置
2 植物葉載置部
3 収容部
4 蓋部
5 光源部
6 カメラモジュール
7 撮像素子
8 レンズ
9 遮蔽部
10 外部接続端子
11 開口部
15 植物葉
20 コンピュータ
21 表示部
22 算出部
23 推定値計算部
24 記憶部
25 CPU
26 電源