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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087821
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】自律型搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230619BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202307
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市来 浩一
(72)【発明者】
【氏名】原田 純一
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】荷物の載置スペースを拡大すると共に、既存の測位センサを用いて安価な構成で臨機応変に自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行を継続可能な自律型搬送装置を提供する。
【解決手段】自律走行に必要な周囲の環境を認識するための測位センサ13と、測位センサ13の入力により自己位置推定を行いながら、指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで決定して駆動指令を送出する制御部と、制御部より送出された駆動指令により駆動車輪を駆動する駆動部と、を備え、測位センサ13は、ベース部2に敷設された走行レール25に沿って移動する移動機構26に搭載されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動車輪と補助車輪を支持するベース部に支持された搭載部に荷物が搭載されて指定された地点まで自律走行して搬送可能な自律型搬送装置であって、
自律走行に必要な周囲の環境を認識するための測位センサと、
前記測位センサの入力情報により自己位置推定を行いながら、指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで決定して駆動指令を送出する制御部と、
前記制御部より送出された駆動指令により駆動車輪を駆動する駆動部と、を備え、
前記測位センサは、前記ベース部に敷設された走行レールに沿って移動する移動機構に搭載されていることを特徴とする自律型搬送装置。
【請求項2】
前記測位センサは、前記ベース部上に敷設された走行レール上を移動可能に設けられている請求項1記載の自律型搬送装置。
【請求項3】
前記走行レールは前記ベース部上に周回して敷設されている請求項2記載の自律型搬送装置。
【請求項4】
前記測位センサは、前記ベース部と前記搭載部との間の側面を覆う側面カバーに沿って周回して敷設された走行レール上を移動可能に設けられている請求項1記載の自律型搬送装置。
【請求項5】
前記走行レールは前記移動機構に対して電力や制御信号を供給する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の自律型搬送装置。
【請求項6】
前記測位センサは、レーザー距離センサの他に撮像カメラが搭載されている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自律型搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記測位センサの移動に応じて環境把握プログラムの設定を変更する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の自律型搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部に支持された搭載部に荷物が搭載され指定された地点まで自律走行して搬送する自律型搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場等においては、部品などを工程間で無人搬送したり倉庫に搬入したりするのに無人搬送装置が用いられている。製造現場では工程変更によるレイアウト変更が頻繁に行われ、かつ、様々な製造装置が配備されるため、搬送ラインが狭く、経路も複雑となり易いため小回りがきき、既存工場にも導入が容易な無人搬送装置、特に自律型の無人搬送装置であるAMR(Autonomous Mobile Robot:自律搬送ロボット、自律型搬送装置)が注目されている。
【0003】
自律型の無人搬送装置は、自律走行を行なうために必要な周囲の環境を認識しながら走行するため、環境認識用のセンサが搭載されている。
例えば、移動体の周囲の環境を認識するため、移動体の上部に8方向について環境情報を取得する画像距離センサ(レーザーライダー・イメージングユニット、レーザーレンジファインダ等)を設けている(特許文献1;特開2014-149603号)。
【0004】
また移動体の前面に、検知範囲の異なる複数の検知部を設けて障害物の見落としを防ぐ構成も提案されている。即ち、第1検知部は走行面及び被検知物の位置や距離を検知する光学センサ(LIDAR)が設けられている。第2検知部も光学センサが用いられ、レーザー光以外を照射するセンサなどが用いられる。
第1検知センサの第1検知範囲と第2検知センサの第2検知範囲は一部が重なるように設定されており、第2検知範囲は第1検知範囲の全体を覆うことで障害物の見落としを防いでいる(特許文献2;特開2017-122634号)。
【0005】
自走パレットの前面、後面、前面及び後面をつなぐ両側面の合計4面にセンサユニット(カメラ及びライダーセンサ)を設けた物品搬送ロボットも提案されている(特許文献3;特開2021-64241号)。
【0006】
また、クローラで移動する移動体本体上に、屈曲動作及び回転動作等が可能なアーム部が設けられ、アーム部の先端部に測位センサが設けられている。測位センサにより取得したデータに対して、通路を形成している物体及び領域のモデルをリアルタイムで当て嵌めることで、通路境界を認識し、モデルに対する相対自己位置を用いて移動制御を行う(特許文献4;特開2018-10412号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-149603号公報
【特許文献2】特開2017-122634号公報
【特許文献3】特開2021-64241号公報
【特許文献4】特開2018-10412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1の自律型無人搬送装置は、装置の最上部に画像距離センサ(レーザーライダー・イメージングユニット、レーザーレンジファインダ等)を設けているため、荷物の積載スペースがない。また、特許文献2及び特許文献3の自律型無人搬送装置は、移動体に複数の測位センサを設けており、装置コストが高くなる。
【0009】
また、特許文献4のようにアーム部の先端部に設けられた測位センサの設置角度を変更しながら移動体が移動する場合、移動体の基部に固定されている測位センサに比べてセンサ自重や走行時の振動などから測定精度が低下し易い。測位センサの設置角度を変更する移動時間を短縮するためモータを大型化すると重量が増加し測定精度が更に低下するため移動時間の短縮は困難であり、デッドタイムが長くなる。また、移動体上面にアームを設けるため、荷物の積載スペースが限られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、荷物の載置スペースを拡大すると共に、既存の測位センサを用いて安価な構成で臨機応変に自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行を継続可能な自律型搬送装置を提供することにある。
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
駆動車輪と補助車輪を支持するベース部に支持された搭載部に荷物が搭載されて指定された地点まで自律走行して搬送可能な自律型搬送装置であって、自律走行に必要な周囲の環境を認識するための測位センサと、前記測位センサの入力情報により自己位置推定を行いながら、指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで決定して駆動指令を送出する制御部と、前記制御部より送出された駆動指令により駆動車輪を駆動する駆動部と、を備え、前記測位センサは、前記ベース部に敷設された走行レールに沿って移動する移動機構に搭載されていることを特徴とする。
このように、測位センサは、ベース部に敷設された走行レールに沿って移動する移動機構に搭載されているので、搭載部上を広く荷物の載置スペースとすることができるうえに、測位センサを必要な個所に走行レール上を移動させて計測できるので、狭い搬送ラインに進入したり、複雑な走行経路を進んだりする場合でも、臨機応変に自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行を継続可能となる。
【0012】
前記測位センサは、前記ベース部に敷設された走行レール上を移動可能に設けられていてもよい。
これにより、測位センサはベース部に敷設された走行レール上を任意の位置へ移動させて計測できるので、搭載部上を広く荷物の載置スペースとすることができるうえに、周囲の環境を認識しながら安定した自律走行が行える。
【0013】
前記走行レールは前記ベース部上に周回して敷設されていると、測位センサを高さ方向で邪魔になることなくベース部上で任意の箇所に移動させて計測できるので、周囲の環境を認識しながら安定した自律走行が行える。
【0014】
前記測位センサは、前記ベース部と前記搭載部との間の側面を覆う側面カバーに沿って周回して敷設された走行レール上を移動可能に設けられていてもよい。
測位センサを高さ方向で邪魔になることなくベース部の周囲で任意の箇所に移動させて計測できるので、周囲の環境を認識しながら安定した自律走行が行える。
【0015】
前記走行レールは前記移動機構に対して電力や制御信号を供給するようにしてもよい。
これにより、走行レールを信号線や給電線として使用することで配線を簡略化することができる。
【0016】
前記測位センサは、レーザー距離センサの他に撮像カメラが搭載されていてもよい。
これにより、レーザー距離センサがとらえきれない範囲の障害物を撮像カメラで検知することができ、自律走行動作の信頼性を向上させることができる。
【0017】
前記制御部は、前記測位センサの移動に応じて環境把握プログラムの設定を変更することが好ましい。
測位センサの移動に伴って次の搬送位置が指示されるため地図データを更新する必要がある。これにより、環境把握プログラムの設定を変更して指定された地点の地図データを基にして走行ルートを決定することができる。
【発明の効果】
【0018】
荷物の載置スペースを拡大すると共に、既存の測位センサを用いて安価な構成で臨機応変に自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行を継続可能な自律型搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自律型搬送装置の斜視図である。
図2図1の自律型搬送装置の右側板及び駆動車輪を取り外した側面図である。
図3図1の自律型搬送装置の右側板及び前側板を取り外した斜視図である。
図4図3の自律型搬送装置の正面図である。
図5図3の自律型搬送装置の搭載部を取り外した斜視図である。
図6図5の自律型搬送装置の平面図である。
図7】自律型搬送装置の制御系のブロック構成図である。
図8】移動機構の配置形態の一例を示す模式平面図及び模式側面図である。
図9】移動機構の配置形態の一例を示す模式平面図である。
図10】移動機構の配置形態の一例を示す模式平面図及び模式側面図である。
図11】移動機構を利用した自律型搬送装置の搬送動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る自律型搬送装置の概略構成について図1乃至図7を参照して説明する。自律型搬送装置は、搭載部に作業者又は自動で荷物が積み込まれ、指定された場所まで自律走行し、作業者又は自動で荷卸しされる無軌道車両である。自律型搬送装置には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)が搭載されている。SLAMは、入力センサの違いによって、大きく3種類に分類される。LiDAR(測位センサ)を入力として用いたLiDER SLAM、撮像カメラを用いたVisual SLAM、ToFセンサなどからの測距情報を用いたDepthSLAMがある。本実施例の自律型搬送装置は、後述するようにLiDAR(測位センサ)による座標情報と撮像カメラの画像情報を組み合わせて用いることで、自律搬送動作の信頼性を高めている。
【0021】
先ず、図2に示すように、自律型搬送装置1は、ベース部2に支柱3を介して搭載部4が支持されている。ベース部2の左右両側には、中央部に一対の駆動車輪5が設けられ、その前後に一対の第1補助車輪6(前輪)と一対の第2補助車輪7(後輪)の合計6輪が設けられている(図6参照)。
図5に示すように、一対の駆動車輪5は駆動モータ11a,11bにより各々回転駆動される。ベース部2には、一対の駆動車輪5を中心にベース部2の一端側(前方側)に一対の第1補助車輪6が各々設けられ、ベース部2の他端側(後方側)に一対の第2補助車輪7が各々設けられている。
【0022】
先ず、図2に示すように、自律型搬送装置1は、ベース部2に支柱3を介して搭載部4が支持されている。ベース部2の左右両側には、中央部に一対の駆動車輪5が設けられ、その前後に一対の第1補助車輪6(前輪)と一対の第2補助車輪7(後輪)の合計6輪が設けられている。駆動車輪5と第1補助車輪6は、ベース部2に組み付けられた第1車輪支持部8に各々支持されている。第1車輪支持部8はベース部2に揺動可能に支持されている。第2補助車輪7は、ベース部2の左右に設けられた第2車輪支持部10に支持されている。第1補助車輪6と第2補助車輪7は、キャスター付の従動輪であって、左右の駆動車輪5の回転速度の相違によって旋回して小回りが利くようになっている。
また、図3に示すように、ベース部2には駆動車輪5、第1補助車輪6(前輪)及び第2補助車輪7(後輪)が設けられた位置に切欠き2a及び抜孔2bが設けられており、自律型搬送装置1の低床化が図られている。図1に示すよう、搭載部4はベース部2に支持された平坦面に、作業者又は自動で荷物が搭載される。
【0023】
第2補助車輪7は、ベース部2の左右に設けられた第2車輪支持部10にキャスター7aによって旋回可能に各々支持されている。第1補助車輪6と第2補助車輪7は、何れもキャスター付の従動輪であって、左右の駆動車輪5の回転速度の相違によって旋回して小回りが利くようになっている。本実施例では、最小回転径が800mmで、360°旋回可能となっている。
【0024】
また、図3に示すように、ベース部2には、駆動車輪5、第1補助車輪6(前輪)及び第2補助車輪7(後輪)が設けられた位置に切欠き2a及び抜孔2bが設けられており、自律型搬送装置1の低床化が図られている。図1に示すよう、搭載部4はベース部2に支持された平坦面に、作業者又は自動で荷物が搭載される。
【0025】
図4に示すように、一対の駆動車輪5は、駆動モータ11a,11bの駆動軸11cに連結されて回転駆動される。駆動モータ11a,11bには、後述するようにモータの回転センサ16a,16bが各々設けられている(図7参照)。このモータの回転信号により、左右の駆動車輪5の回転速度や回転位置が後述する制御部14に送信される。
【0026】
ベース部2の前方には、撮像カメラ12(環境把握用カメラ)が設けられている。撮像カメラ12は、自律走行に必要な周囲の環境を撮像する他に図形パターン(二次元コードなど)を読み取る。撮像カメラ12は後述する測位センサ13がとらえられない上下の障害物を検出する。撮像カメラの種類としては単眼カメラ (広角カメラ、魚眼カメラ、全天球カメラ)、複眼カメラ (ステレオカメラ、マルチカメラ)、RGB-Dカメラ (深度カメラやToFカメラ)などが用いられるが、本実施例は、ステレオカメラが用いられている。
【0027】
撮像カメラ12は、ベース部2と搭載部4の間の高さ位置に設けられていることが好ましい。これにより、搭載部4の上方のスペースは荷物の搭載用として広く利用することができ、かつ自律型搬送装置1の低床化に寄与することができる。
【0028】
また、撮像カメラ12の下方には、測位センサ13(LiDAR;レーザー距離センサ)が設けられている。測位センサ13は、レーザースキャナから照射されたレーザー光の反射光を受光するまでの時間の差により対象物までの距離を測定する。測位センサ13は、レーザー光を照射して3D(x,y,z座標)の点群データを取得して自己位置を推定すると同時に環境地図を作成する。作成された環境地図は、後述する制御部14のデータ格納部14cに記憶され、自律型搬送装置1の荷物搬送時に位置推定や障害物を検知するためなどに用いられる。
【0029】
測位センサ13は、例えばベース部2に敷設された走行レール25に沿って移動する移動機構26(例えばリニア搬送機構)に搭載されている。尚、測位センサ13の検出範囲を補うため、撮像カメラ12も一体に搭載してもよい。
移動体26aは、例えばリニアモータ可動子(永久磁石)を有し、直動レール部25aはリニアモータ固定子を各々有している。リニアモータ可動子とリニアモータ固定子とでリニアモータを形成する。直動レール部25aを互いにつなぎ合わせて電気的及び機械的に接続されて走行レール25が構成される。
【0030】
図示しないモータコントローラにより、互いに位相が異なるU相、V相、W相のうちの何れかの相の電流がリニアモータ固定子(電磁石のコイル)に供給される。これにより電磁石が通電制御され、当該電磁石に生じる磁束と対向する永久磁石の磁束との相互作用により移動体26aに推進力が生成され、この推進力により走行レール25に沿って走行する。移動体26aの停止位置は、直動レール部25aに各々備えた磁気センサにより検出される。このように、リニアモータ固定子に備えた電磁石のコイルへ通電制御することで、移動体26aを走行レール25の目標位置へ移動させて停止することができる。
【0031】
上記移動機構26は、測位センサ13がリニア搬送機構に搭載される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば移動体26aは無端状のタイミングベルトに連結され走行範囲に設けられたガイドレールに沿って往復動する移動機構26であってもよい。或いは、移動機構26はラック-ピニオン機構であり、移動体26aに設けられたラックギヤが走行レール25に沿って敷設されたピニオンギヤと噛み合って走行するようになってもよい。或いは移動機構26はワイヤ搬送機構であり、移動体26aに連結されたワイヤが走行範囲に架設されており、ワイヤを繰り出しリールと巻き取りリール間で巻取り及び繰り出し動作をすることで走行レール25上を走行するようにしてもよい。
【0032】
図6に示すようにベース部2には、地図データに基づいて指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで算出して駆動指令を送出する制御部14や、撮像カメラ12及び測位センサ13から入力データにより自己位置推定を行いながら指定された地点まで、一対の駆動モータ11a,11bの駆動を制御するモータ駆動装置15(駆動部)を備えている(図7参照)。
また、ベース部2には、充電用ケーブル端子などを備えた端子ボックス21、バッテリー22,LEDライト23などが設けられている。
【0033】
ここで、自律型搬送装置1の制御系について図7のブロック構成図を参照して説明する。制御部14は、マイクロコンピュータ14a、メモリ14b、データ格納部14c、通信回路14dと、位置推定装置14eとを有している。マイクロコンピュータ14a、メモリ14b、データ格納部14c、通信回路14dおよび位置推定装置14eは通信バス14fで接続されており、相互にデータを授受することが可能である。撮像カメラ12及び測位センサ13もまた通信インタフェース(図示せず)を介して通信バス14fに接続されており、計測結果である計測データを、マイクロコンピュータ14a、位置推定装置14eおよび/またはメモリ14bに送信する。
【0034】
マイクロコンピュータ14aは、自律型搬送装置1の動作制御するための演算を行うプロセッサまたは制御回路(コンピュータ)である。典型的にはマイクロコンピュータ14aは半導体集積回路である。マイクロコンピュータ14aは、制御信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号をモータ駆動装置15に送信してモータ駆動回路15a,15bを駆動制御し、駆動モータ11a,11bに印加する電圧を調整する。これにより一対の駆動モータ11a,11bの各々を所望の回転速度で回転させることができる。モータ駆動回路15a,15bはインバータ回路を備えており、マイクロコンピュータ14aから送出されたPWM信号により駆動モータ11a,11bに流れる電流が制御される。
【0035】
尚、左右の駆動モータ11a,11bの駆動を制御する1つ以上の制御回路(たとえばマイコン)を設けてもよい。たとえば、モータ駆動装置15が、駆動モータ11a,11bの駆動をそれぞれ制御する2つのマイコンを備えていてもよい。それらの2つのマイコンは、回転センサ16a,16bから出力されたモータの回転情報を用いた座標計算をそれぞれ行い、初期位置からの自律型搬送装置1の移動距離を推定してもよい。また、当該2つのマイコンは、図示しないエンコーダ情報を利用してモータ駆動回路15a,15bを制御してもよい。
【0036】
メモリ14bは、マイクロコンピュータ14aが実行するコンピュータプログラムを記憶する揮発性の記憶装置である。メモリ14bは、入力されたデータを一時記憶し、マイクロコンピュータ14aおよび位置推定装置14eが演算を行う際のワークエリアとしても利用され得る。
【0037】
データ格納部14cは、不揮発性の半導体メモリ装置(データベース)である。尚、データ格納部14cは、ハードディスクに代表される磁気記録媒体、または、光ディスクに代表される光学式記録媒体であってもよい。さらに、データ格納部14cは、いずれかの記録媒体にデータを書き込みおよび/または読み出すためのヘッド装置および当該ヘッド装置の制御装置を含んでもよい。
【0038】
データ格納部14cは、自律型搬送装置1が走行する移動空間の環境地図(地図データM)、および、1または複数の走行経路のデータ(走行経路データR)を記憶する。地図データMは、自律型搬送装置1が環境地図作成モードで走行することによって作成され、データ格納部14cに随時記憶される。1または複数の走行経路データRは、地図データMが作成された後にデータ格納部14cに記憶される。本実施形態では、地図データMおよび走行経路データRは同じデータ格納部14cに記憶されているが、異なるデータ格納部14cに記憶されてもよい。
【0039】
通信回路14dは、たとえば、無線LANや無線WANに準拠した無線通信を行う無線通信回路である。たとえば自律型搬送装置1を走行させて環境地図を作成する環境地図作成モードでは、通信回路14dは、無線LANや無線WANに準拠した無線通信を行い、端末17と1対1で無線通信する。尚、端末17は例えばタブレット型コンピュータなどが用いられる。
【0040】
自律型搬送装置1は、予め作成された環境地図(地図データM)と走行中に取得された測位センサ13が出力した点群データとを比較して自己位置を推定しながら、走行経路データRより決定された走行ルートに沿って走行する。
位置推定装置14eは、環境地図の作成処理、および、荷物搬送時には自己位置の推定処理を行う。位置推定装置14eは、自律型搬送装置1の走行位置及び測位センサ13の走査結果により、移動空間の地図データM(3D座標の点群データ)を作成する。荷物搬送時には、位置推定装置14eは、測位センサ13から3D座標データを受け取り、データ格納部14cに記憶された地図データMを読み出す。作成された局所的地図データ(3D座標の点群データ)を、より広範囲の地図データMとのマッチングを行うことにより、位置推定装置14eは、地図データM上における自己位置を推定する。
【0041】
本実施例では、撮像カメラ12は、自律走行を行なうために必要な周囲の環境を撮像する他に、作業者より提示された二次元コードを読み取るか或いは端末17より入力されたアドレス情報から指定された地点のアドレスが制御部14へ入力される。制御部14は入力情報から指定された地点のアドレス情報を地図データM上で確認し、当該指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで決定する。制御部14は、決定された走行経路データRに基づいてモータ駆動装置15に駆動指令を送出する。
【0042】
尚、撮像カメラ12が地図データMにない障害物を検出した場合には、制御部14は、モータ駆動装置15へ駆動停止指令を送出し、駆動モータ11a,11bの駆動を停止させる。そして、必要に応じて、リニア搬送機構等の移動機構26を作動させて測位センサ13(撮像カメラ12)をベース部2に対して進行方向の所定位置へ移動させて自律走行に必要な周囲の状況を確認してから目的地までの走行経路データRを再検索して走行ルートを決定する。これにより、自律型搬送装置1の自律搬送動作の信頼性を高めることができる。尚、障害物、通路の幅等の状況に応じて一時停止を行なうことなく再検索した走行ルートを走行することもできる。
【0043】
以下では、ベース部2に対する移動機構の配置形態の一例について図8から図10に示す模式図を参照して説明する。以下では、ベース部2対する移動機構26のレイアウト構成を中心に説明するものとする。尚、図8(A)のように、上部から見た図は搭載部4が省略されている。
【0044】
図8(A)は、走行レール25がベース部2上に周回して敷設されている構成例である。破線部27で囲まれたエリアに制御部14、モータ駆動装置15やバッテリー22などが配置される。また、ベース部2上であって、側面カバー28で囲まれた外側エリアに、移動機構26が配置される。具体的には、走行レール25が側面カバー28の外側に周回して敷設されている。走行レール25には移動体26aが走行可能に連繋している。
【0045】
図8(B)に示すように、移動機構26は、高さ方向にベース部2と搭載部4との間に設けられるので、搭載部4の荷物搭載スペースを広く確保することができる。また、自律型搬送装置1が狭い工程間に進入した場合でも、測位センサ13を搭載した移動体26aが高さ方向で邪魔になることなくベース部2上で任意の箇所に移動させて計測できるので、自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行が継続できる。
【0046】
図9は、走行レール25がベース部2上の中央部に長手方向に敷設されている構成例である。一対の破線部27で囲まれたエリアに制御部14、モータ駆動装置15やバッテリー22などが各々配置される。また、一対の破線部27で囲まれたエリアに挟まれたベース部2上の中央部に移動機構26が配置される。具体的には、走行レール25が前後の側面カバー28間に直線的に敷設されている。走行レール25には移動体26aが走行可能に連繋している。移動体26aに搭載された測位センサ13は、前後の側面カバー28の切欠き部28aより前方又は後方に露出して計測を行うようになっている。
【0047】
図10(A)は、走行レール25がベース部2と搭載部4との間の側面を覆う側面カバー28に沿って周回して敷設されている構成例である。破線部27で囲まれたエリアに制御部14、モータ駆動装置15やバッテリー22などが配置される。また、破線部27の外側には、ベース部2と搭載部4との間を覆う側面カバー28設けられている。この側面カバー28の外側エリアに、移動機構26が配置される。具体的には、走行レール25が側面カバー28の外側に周回して敷設されている。走行レール25には移動体26aが走行可能に連繋している。
【0048】
図10(B)に示すように、移動機構26は、高さ方向にベース部2と搭載部4との間に設けられるので、搭載部4の荷物搭載スペースを広く確保することができる。また、自律型搬送装置1が狭い工程間に進入した場合でも、測位センサ13を搭載した移動体26aが高さ方向で邪魔になることなくベース部2上で任意の箇所に移動させて計測できるので、自律走行に必要な周囲の環境を認識しながら安定した走行が継続できる。
【0049】
ここで、移動機構26を利用した自律型搬送装置1の搬送動作について図11を参照して説明する。移動機構26のレイアウトは、一例として図8(A)と同様とする。
図11(A)は、作業ラインW1,W2,W3がコ字状にレイアウトされた製造現場を示す。自律型搬送装置1は、作業ラインW1とW2に囲まれた空間部Sを作業ラインW3に向かって矢印方向に進入する。このとき、自律型搬送装置1の前方に配置した測位センサ13によって、作業ラインW1,W2,W3との距離を計測しながら進入する。撮像カメラ12は、測位センサ13がとらえきれない障害物の有無を検出する。
【0050】
図11(B)は自律型搬送装置1が作業ラインW1とW2に囲まれた空間部Sを作業ラインW3に近づいて走行停止した状態を示す。この状態で、いずれかの作業ラインから作業者によって搬送物が搭載部4(図1参照)に搭載される。すなわち、空間部Sに自律型搬送装置1に停止させることで作業ラインW1、W2およびW3の3つのラインで製造される製品を搬送することができる。これにより自律型搬送装置1の搬送待ち時間などを減らすことができるので導入する自律型搬送装置1も減らすことが可能となる。また、それぞれの作業ラインに自律型搬送装置1を停止させる空間を設ける必要が無いので作業ライン全体の面積を減らすことができる。これにより、自律型搬送装置1の走行距離を減らしたり、より効率的な走行ルートを設定したりすることが可能となる。そして、作業者より次の搬送先が指示される。搬送先の指示は、撮像カメラ12によって二次元コードを読み取るか或いは端末17より入力されたアドレス情報による。
【0051】
図11(C)に示すように、作業者は端末17を操作して移動機構26を作動させて、走行レール25上を移動体26aが自律型搬送装置1の前方位置から後方位置へ移動させる。このとき、移動体26aに搭載された測位センサ13がベース部2上を後方位置へ移動する。これに伴って、制御部14は測位センサ13の移動に伴って環境把握プログラムの設定を変更する。測位センサ13の移動に伴って次の搬送位置が指示されるため地図データを更新する必要がある。これにより、データ格納部14cから読みだされる環境把握プログラムの設定を変更して指定された地点の地図データを基にして走行ルートを再検索して決定する。
【0052】
図11(D)において、測位センサ13(及び撮像カメラ12)は、自律型搬送装置1の後方に障害物や作業者等が存在しないことを確認する。これにより、制御部14はモータ駆動装置15を起動して、自律型搬送装置1を作業ラインW1,W2,W3で囲まれた空間部Sから矢印方向に後退させる。この後、制御部14は指定された地点の地図データを基にして決定された走行ルートでモータ駆動装置15を駆動制御して自律型搬送装置1を指定された地点まで走行させる。
【0053】
以上説明したように、荷物の載置スペースを拡大すると共に、既存の測位センサ13を用いて安価な構成で臨機応変に周囲の環境を認識しながら安定した自律走行が可能な自律型搬送装置を提供することができる。
【0054】
尚、自律型搬送装置1に対する外部入力は、端末17を用いて行ったが、携帯型のノートパソコンやデスクトップタイプのパソコンを用いて行ってもよい。
また、自律型搬送装置は、上述した構成に限らず、自律走行に必要な周囲の環境を認識するための測位センサ13を搭載した無人牽引車、各種サービスロボットなど自律型搬送を行なう他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 自律型搬送装置 2 ベース部 2a 切欠き 2b 抜孔 3 支柱 4 搭載部 5 駆動車輪 6 第1補助車輪 7 第2補助車輪 8 第1車輪支持部 10 第2車輪支持部 11a,11b 駆動モータ 11c 駆動軸 12 撮像カメラ 13 測位センサ 14 制御部 14a マイクロコンピュータ 14b メモリ 14c データ格納部 14d 通信回路 14e 位置推定装置 14f 通信バス 15 モータ駆動装置 15a,15b モータ駆動回路 16a,16b 回転センサ 17 端末 20 モータ取付板 21 端子ボックス 22 バッテリー 23 LEDライト 25 走行レール 25a 直動レール部 26 移動機構 26a 移動体 27 破線部 28 側面カバー 28a 切欠き部 W1,W2,W3 作業ライン S 空間部
図1
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図5
図6
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図8
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図10
図11