(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087822
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】エレベーター装置、その制御方法及びトラブル解消方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230619BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202308
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷部 潤
(72)【発明者】
【氏名】中森 侑也
(72)【発明者】
【氏名】宇野木 寿仁
(72)【発明者】
【氏名】鴛渕 麻由花
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F502HA05
3F502HB15
3F502JA37
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、エレベーター制御装置に故障が発生した場合に、乗りかごの上面に乗り込むのに好都合な装置又は方法を提供することにある。
【解決手段】
乗りかご104と、乗りかご104と主ロープで繋がれた釣合いおもり105と、乗りかご104の昇降運転を制御する制御装置102と、を備え、制御装置が102嵩上げ配置されたエレベーター装置100の制御方法において、トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に乗りかご104を停止させて乗客の避難を可能にし(S2)、乗客の避難後に、乗りかご104を制御装置102が設置された特定階Nよりも下階に移動させる退避運転を行い(S7)、特定階Nよりも下階の待機階で乗りかご104を待機させる(S8)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置において、
前記制御装置は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させるように制御することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記待機階は、前記特定階の1階下の階であることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記乗りかごは、作業員がブレーキを開放することにより、前記乗りかごのかご上を前記特定階のフロアレベルに一致するように移動することができるように構成されたことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御装置は、ハザードマップで指定される冠水高さ情報に基づいて前記特定階を特定することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項5】
乗りかごと、前記乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置の制御方法において、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させることを特徴とするエレベーター装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記待機階は、前記特定階の1階下の階であることを特徴とするエレベーター装置の制御方法。
【請求項7】
乗りかごと、前記乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置のトラブル解消方法において、
前記制御装置は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させる制御を実行し、
作業員は、前記乗りかごのブレーキを開放することにより、前記乗りかごのかご上が前記特定階のフロアレベルに一致するように前記乗りかごを移動し、前記乗りかごのかご上で作業を行ってトラブルを解消することを特徴とするエレベーター装置のトラブル解消方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記待機階は、前記特定階の1階下の階であることを特徴とするエレベーター装置のトラブル解消方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置、その制御方法及びトラブル解消方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、昇降路の壁部に固定された支持部材と、昇降路内を昇降する乗りかごと干渉しないように支持部材によって昇降路内に支持されたエレベーター制御装置と、を備え、エレベーター制御装置は特定階の乗り場フロアに合わせて配置されたエレベーター装置が記載されている(段落0009参照)。特許文献1では、乗りかごの上面を特定階の乗り場フロアに合わせて乗りかごを停止させ、乗りかごの上面上に作業員が乗って保守点検することに配慮している(段落0010参照)。特許文献1のエレベーター装置では、エレベーター制御装置が昇降路の中間部ないしは上部に位置する特定階の乗場フロアに合わせて配置されているため、冠水対策を施す必要が無い(段落0011参照)。
【0003】
特許文献1では、特定階が最上階に設定されている場合に、エレベーター制御装置の点検等を行う点検モードにおいて、まず、乗りかごを昇降させ、その上面が最上階のフロアレベルに一致するように位置決めされて停止させる。この乗りかごの位置決めは、各種の位置センサなどを用いて行われる(段落0023参照)。続いて、乗り場扉を開け、作業員は、乗り場扉から乗りかごの上面に乗る。作業員は、乗りかごの上で、特定階の乗り場フロアに下端部を合わせて設置されているエレベーター制御装置の前面カバーを開けて、エレベーター制御装置に対して点検などの作業を行う(段落0024参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、点検モードにおいて、乗りかごの上面をエレベーター制御装置が配置された特定階のフロアレベルに一致するように位置決めし、作業員が乗り場扉から乗りかごの上面に乗り込むことに配慮しているものの、エレベーター制御装置に故障が発生した場合の、乗りかごの上面への乗り込み方法については配慮がない。
【0006】
本発明の目的は、エレベーター制御装置に故障が発生した場合に、乗りかごの上面に乗り込むのに好都合な装置又は方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のエレベーター装置は、
乗りかごと、乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置において、
前記制御装置は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させるように制御する。
【0008】
また上記目的を達成するために、本発明のエレベーター装置の制御方法は、
乗りかごと、前記乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置の制御方法において、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させる。
【0009】
また上記目的を達成するために、本発明のエレベーター装置のトラブル解消方法は、
乗りかごと、前記乗りかごと主ロープで繋がれた釣合いおもりと、前記乗りかごの昇降運転を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が嵩上げ配置されたエレベーター装置のトラブル解消方法において、
前記制御装置は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に前記乗りかごを停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、前記乗りかごを当該制御装置が設置された特定階よりも下階に移動させる退避運転を行い、
前記特定階よりも下階の待機階で前記乗りかごを待機させる制御を実行し、
作業員は、前記乗りかごのブレーキを開放することにより、前記乗りかごのかご上が前記特定階のフロアレベルに一致するように前記乗りかごを移動し、前記乗りかごのかご上で作業を行ってトラブルを解消する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベーター制御装置に故障が発生した場合に、乗りかごの上面に乗り込むのに好都合な装置又は方法を提供することができる。
【0011】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係るエレベーター装置について、側面側から見た断面を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るエレベーター装置について、制御装置の保守作業時に乗りかごを位置決め停止した状態を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る、乗りかごの退避運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1乃至4を用いて、本発明のエレベーター装置100の実施形態について説明する。各図において同じ構成には同じ符号を付して繰り返しの説明は省略する。なお、以下の説明において、上下方向は乗りかご104の昇降方向に一致する。
【0014】
図1を参照して、エレベーター装置100の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るエレベーター装置100について、側面側から見た断面を示す概略図である。
【0015】
エレベーター装置100は、昇降路101内を昇降する乗りかご104および釣合いおもり105と、図示しない主ロープが巻きかけられる巻上機103と、昇降路101内に上下方向に立設され、乗りかご104の昇降を案内するかご用ガイドレール106,107と、昇降路101内に上下方向に立設され、釣合いおもり105の昇降を案内する釣合いおもり用ガイドレール108,109と、乗りかご104の昇降を含むエレベーター装置100の昇降運転を制御する制御装置(エレベーター制御装置)102と、を備えている。
【0016】
乗りかご104および釣合いおもり105は、建屋に設けられる昇降路101の内部に設けられ、巻上機103に巻きかけられた主ロープによりつるべ式に吊持されている。すなわち、乗りかご104と釣合いおもり105とは、主ロープで繋がれている。
【0017】
図1及び
図2を用いて、エレベーター装置100の保守作業時におけるかご位置の自動調整について説明する。
図2は、本発明の一実施例に係るエレベーター装置102について、制御装置102の保守作業時に乗りかご104を位置決め停止した状態を示す概略図である。
【0018】
冠水に配慮したエレベーター装置100では、巻上機103及び制御装置102を嵩上げ設置する。すなわち、巻上機103及び制御装置102は、1階のフロアレベル1FLよりも高さHeだけ高い位置に嵩上げした特定階に配置される。
【0019】
特定階は、冠水する可能性のある高さ位置(以下、冠水高さという)よりも高く、かつ冠水高さに最も近い階である。また、冠水高さはハザードマップで指定される冠水の高さ位置とする。すなわち、巻上機103及び制御装置102が設置される特定階(設置階)は、ハザードマップで指定される冠水高さよりも高く、かつ冠水高さに最も近い階である。
【0020】
本実施例では、1階は地上とほぼ同じ高さにある階、すなわち地上に最も近い階とする。また冠水高さは、地上を基準として、冠水時に水位が達する地上からの高さとする。
【0021】
この場合の嵩上げ高さHeは、1階のフロアレベル1FLを基準として、設定される。
【0022】
巻上機103及び制御装置102は特定階に設置されるため、特定階を巻上機103及び制御装置102の設置階、或いは単に設置階と呼んで説明する場合もある。
【0023】
本実施例では、冠水高さは1階のフロアレベル1FLよりも高く、2階のフロアレベル2FLよりも低いものとして説明する。この場合、特定階(設置階)は2階となり、巻上機103及び制御装置102は2階に設置される。
【0024】
なお、
図1及び
図2は、巻上機103及び制御装置102の配置について、特定階が2階であることを示しているに過ぎず、巻上機103及び制御装置102の特定階の中での配置は、
図1に図示された配置に限定されない。また巻上機103と制御装置102とは異なる階に配置されていてもよい。しかし、エレベーター装置100の保守を行う上で、巻上機103及び制御装置102の両方が同じ階に配置されている方が便利である。以下、巻上機103及び制御装置102が特定階に配置された場合について説明する。
【0025】
巻上機103及び制御装置102の点検や修理等の作業を行う場合、乗りかご104のかご上(上面)104aを特定階である2階のフロアレベル2FLに位置決めして、乗りかご104のかご上104aに作業員が乗って作業を行う。すなわち本実施例では、乗りかご104のかご上104aが作業員の足場となる。
【0026】
なお、かご上104aでの作業時には、かご上104aにハンドレール104bが設置される。ハンドレール104bはかご上104aに折り畳まれた状態で収納されており、作業時にかご上104aに展開される。
【0027】
作業員が乗場フロアからかご上104aへの乗り込む場合、乗りかご104のかご上104aを乗込階(例えば1階)のフロアレベル1FLと一致するように位置決めする。この場合、かご上104aは乗込階のフロアレベル1FLと一致する必要はなく、作業員が乗り込み可能な範囲(
図2の乗り込み可能範囲)の内側に、位置付けられればよい。
【0028】
以下、制御装置102が実装する部品の故障等のトラブル時の対応について説明する。制御装置102が実装する部品にトラブルが発生した場合、乗りかご104の移動が制限される。ただしトラブル発生時に、乗りかご104の移動が完全に不可能になるとは限らず、乗りかご104の移動が不可能になる前に、数回の移動を行えるトラブルもある。
【0029】
本実施例では、乗りかご104の移動が不可能になる前に、数回の移動を行えるトラブルを対象として、乗りかご104の退避運転について説明する。具体例として、高速運転中にトラブルが発生し、このトラブルが、乗客の避難完了後に、他階への退避運転が可能なトラブルである場合について説明する。
【0030】
この場合、退避運転中に乗りかご104の移動が不可能になることも有り得るため、退避運転における移動距離は短いことが好ましい。
【0031】
またエレベーター装置では、釣合いおもり105の重さは、乗りかご104に定員の50%の乗客が乗った場合に、その乗客を含む乗りかご104の重さと釣り合う重さに設定される。従って乗客が乗っていない状態では、乗りかご104の重さは釣合いおもり105の重さよりも軽く、ブレーキを解除することで、乗りかご104を上昇する方向に移動させることができる。
【0032】
従って退避運転では、特定階よりも下階で乗りかご104を待機させることが好ましい。この場合、特定階よりも下階で待機する乗りかご104は、作業員がブレーキを解除することにより、特定階に向かって移動することができる。
【0033】
図3は、本発明の一実施例に係る制御装置102の概略構成を示すブロック図である。
退避運転においては、制御装置102が設置された特定階の近傍で、かつ特定階よりも下階に乗りかご104を移動させ、待機させる必要がある。以下、乗りかご104を待機させる階を待機階と呼ぶことにする。
【0034】
この場合、例えば待機階を特定階の1階下の階に設定するためには、エレベーター装置毎に、或いはエレベーター装置が設置された建屋毎に、ハザードマップで指定される冠水高さが異なるため、制御装置102の設置階(特定階)も異なり、退避運転における待機階も異なることになる。このため、制御装置102の設置階を特定するためのロジックが必要になる。
【0035】
本実施例では、ハザードマップで指定される冠水高さよりも高く、かつ冠水高さに最も近い階を設置階(特定階)として特定する。すなわち制御装置102は、ハザードマップで指定される冠水高さに基づいて、設置階(特定階)を推定する。ハザードマップで指定される冠水高さは「冠水高さ情報411」と呼ぶことにする。
【0036】
特定階を特定(計算)するためには、各階1FL,2FL,3FL,…の高さ(階高データ)Hfl,Hf2,Hf3,…(
図2参照)が必要であり、この階高データを「階高情報412」と呼ぶ。すなわち、階高情報412と冠水高さ情報411とを比較して、冠水高さよりも高く、かつ冠水高さに最も近い階を、設置階として特定する。なお上述した様に本実施例では、冠水高さは地上高さと一致する1階の高さ(階高)を基準として設定されるため、2階から上階の階高データHf2,Hf3,…があれば、特定階を特定することができる。
【0037】
冠水高さ情報411は上述した様にハザードマップで指定される冠水高さにより決まる情報であり、制御装置102の記憶部402に記憶される。階高情報412及びかご高さ情報413は顧客仕様より決まる情報であり、記憶部402に記憶される。
【0038】
本実施例では、故障が発生した時点での最寄り階に停止して乗客の避難を行う。この避難の完了、すなわち乗客が乗りかご104から降りたことをかご荷重センサ403で検知する。かご荷重センサ403で検知する荷重が乗りかご104の重さになったことがかご荷重情報431として制御装置102に入力される。
【0039】
制御装置102は、冠水高さ情報411、階高情報412、かご高さ情報413及びかご荷重情報431を入力して、
図4で説明する各種の処理を実行するマイコン401を備える。制御装置102は、マイコン401の処理結果に基づいて、待機階への移動運転を自動で実行する。この場合、かご荷重センサ403の検出値が乗りかご104の重さになっていることが必要である。
【0040】
図4は、本発明の一実施例に係る、乗りかご104の退避運転のフローチャートである。
図4は、本発明を用いたエレベーター装置100のトラブル解消方法のフローチャートを示す図でもある。
ステップS1において、故障等のトラブルが発生する。
【0041】
ステップS2において、故障等のトラブルが発生した時点で停止可能な最寄り階に乗りかご104を停止させ、乗客の避難(救出)を行う。乗客の避難の完了は、かご荷重センサ403の検出値が乗りかご104の重さになっていることで検知可能であり、乗客避難完了の検知後、ステップ103以降の退避運転が実行される。
【0042】
ステップS3において、他階への退避運転が可能なトラブルか否かが判定される。制御装置102のマイコン401は、トラブルに応じたエラーコードに基づいて、退避運転が可能か否かを判定する。ステップS3における判定結果がYESの場合、ステップS4に進む。ステップS3における判定結果がNOの場合、ステップS5に進む。
【0043】
ステップS4において、乗りかご104の停止階(かご停止階)が制御装置102の設置階(特定階)以下か否かが判定される。ステップS4における判定結果がYESの場合、ステップS7に進む。ステップS4における判定結果がNOの場合、ステップS9に進む。
【0044】
ステップS7において、退避運転として、特定階N(本実施例ではN=2として説明)の1階下(N-1階)の階へ乗りかご104を移動(退避)させる。
【0045】
ステップS7の退避運転後、ステップS8において、乗りかご104をN-1階(待機階)で待機させる。このステップS8の待機運転まで、制御装置102による自動運転が実施される。
【0046】
ステップS8のN-1階での待機中に作業員が到着すると、ステップS10において、作業員はブレーキを開放して乗りかご104を上昇させる。上述した様に、乗りかご104と釣合いおもり105との重量差から、乗りかご104を上昇する方向に移動させることができる。
【0047】
ステップS11において、作業員はかご上104aを特定階Nのフロアレベルに合わせ、かご上104aに乗り込む。
【0048】
ステップS12において作業員がかご上104aで部品交換等の作業を行い、作業を完了する(ステップS13)と、通常運転に復帰することができる(ステップS14)。
【0049】
ステップS3における判定結果がNOの場合、ステップS5で、最寄り階での待機が継続される。
【0050】
ステップS4における判定結果がNOの場合、乗りかご104を下降させる必要があるが、乗りかご104と釣合いおもり105との重量差から、乗りかご104を下降させることはできない。そこで、ステップS9に進み、乗りかご104内におもりWtを積み込んで乗りかご104の重さを釣合いおもり105の重さよりも重くする。これにより、作業員はブレーキを開放することで、乗りかご104を下降させることができ(ステップ10)、ステップ11に進むことができる。
【0051】
ステップS6において、乗りかご104の停止階(かご停止階)が制御装置102の設置階(特定階)以下か否かを判定する。この判定は作業員が行うことができるが、制御装置102において判定を行い、判定結果を表示するようにしてもよい。この状態では、乗りかご104を下降させることしかできない。判定結果がNOであればステップS9に進み、乗りかご104内におもりWtを積み込むことでステップS10以降のステップを実行することができる。一方、判定結果がYESの場合、ステップS10に進み、作業員がブレーキを開放することで、乗客の避難のために停止していた最寄り階から乗りかご104を上昇させる必要がある。
【0052】
退避運転として、乗りかご104をN-1階に移動させて待機することにより、作業員がかご上104aに乗り込むために、かご上(上面)104aを特定階Nのフロアレベルに移動する際の移動距離(移動時間)を短くするすることができる。
【0053】
また本実施例では、乗りかご104と釣合いおもり105との重量差を利用して、乗りかご104をできる限り上昇する方向に移動させるようにする。これにより、乗りかご104内におもりWtを積み込む作業を避け、トラブル時の作業効率向上することができる。
【0054】
上述した実施例は、エレベーター装置100、エレベーター装置100の制御方法及びエレベーター装置100のトラブル解消方法(故障の修理方法)において、下記特徴を有する。
【0055】
(1)乗りかご104と、乗りかご104と主ロープで繋がれた釣合いおもり105と、乗りかご104の昇降運転を制御する制御装置102と、を備え、制御装置102が嵩上げ配置されたエレベーター装置100において、
制御装置102は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に乗りかご104を停止させて乗客の避難を可能にし、
乗客の避難後に、乗りかご104を制御装置102が設置された特定階Nよりも下階に移動させる退避運転を行い、
特定階Nよりも下階の待機階で乗りかご104を待機させるように制御する。
【0056】
(2)このエレベーター装置100における待機階は、特定階Nの1階下の階N-1である。
【0057】
(3)乗りかご104は、作業員がブレーキを開放することにより、乗りかご104のかご上104aを特定階Nのフロアレベルに一致するように移動することができるように構成される。
【0058】
(4)制御装置102は、ハザードマップで指定される冠水高さ情報に基づいて特定階Nを特定(推定)する。
【0059】
(5)乗りかご104と、乗りかご104と主ロープで繋がれた釣合いおもり105と、乗りかご104の昇降運転を制御する制御装置102と、を備え、制御装置が102嵩上げ配置されたエレベーター装置100の制御方法において、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に乗りかご104を停止させて乗客の避難を可能にし(S2)、
乗客の避難後に、乗りかご104を制御装置102が設置された特定階Nよりも下階に移動させる退避運転を行い(S7)、
特定階Nよりも下階の待機階で乗りかご104を待機させる(S8)。
【0060】
(6)このエレベーター装置100の制御方法における待機階は、特定階Nの1階下の階N-1である。
【0061】
(7)乗りかご104と、乗りかご104と主ロープで繋がれた釣合いおもり105と、乗りかご104の昇降運転を制御する制御装置102と、を備え、制御装置102が嵩上げ配置されたエレベーター装置100のトラブル解消方法において、
制御装置102は、
トラブル発生時に、停止可能な最寄り階に乗りかご104を停止させて乗客の避難を可能にし(S2)、
乗客の避難後に、乗りかご104を制御装置102が設置された特定階Nよりも下階に移動させる退避運転を行い(S7)、
特定階Nよりも下階の待機階で乗りかご104を待機させる制御を実行し(S8)、
作業員は、乗りかご104のブレーキを開放することにより、乗りかご104のかご上104aが特定階Nのフロアレベルに一致するように乗りかご104を移動し(S10,S11)、乗りかご104のかご上104aで作業を行ってトラブルを解消する(S12)。
【0062】
(8)このエレベーター装置100のトラブル解消方法における待機階は、特定階Nの1階下の階N-1である。
【0063】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能である。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
100…エレベーター装置、102…制御装置、104…乗りかご、104a…乗りかご104のかご上、105…釣合いおもり。