(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008784
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】コンクリート用粗骨材
(51)【国際特許分類】
C04B 14/34 20060101AFI20230112BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C04B14/34
E04C5/18
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028649
(22)【出願日】2022-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021111172
(32)【優先日】2021-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518068062
【氏名又は名称】株式会社I・B・H柴田
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 順一
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
(57)【要約】
【課題】安価に製造することができ、コンクリートの引張強度を顕著に向上させる粗骨材を提供する。
【解決手段】コンクリート用粗骨材10Aが、針金が螺旋状に線径より大きいピッチで複数回巻かれた螺旋部分1を有する。粗骨材10Aは自重では変形しない剛性を有する。粗骨材10Aは、螺旋部分1として、ソレノイド型の第1の螺旋部分1と、第1の螺旋部分1の巻方向M1を螺旋軸方向とする第2の螺旋部分2を有することができる。あるいは粗骨材10J、10Kが螺旋部分1の螺旋軸L1に沿って針金の直線状部分4を有してもよい。直線状部分4は1本又は複数本が並列した針金で形成される。この場合螺旋部分1の螺旋径を螺旋軸L1方向の両端部で小径とし、中央部で大径とした粗骨材10Jとしてもよい。あるいは、針金で立体形状が形成されており、その頂点又は辺にループ7を有するコンクリート用粗骨材10Nとしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針金で形成された、自重により変形しない剛性を有するコンクリート用粗骨材であって、針金が螺旋状に線径より大きいピッチで複数回巻かれた螺旋部分を有する粗骨材。
【請求項2】
ソレノイド型の第1の螺旋部分と、第1の螺旋部分の巻方向を螺旋軸方向とする第2の螺旋部分を有する請求項1記載の粗骨材。
【請求項3】
第2の螺旋部分が、第1の螺旋部分の螺旋軸の周りの全周に設けられている請求項2記載の粗骨材。
【請求項4】
第2の螺旋部分が、第1の螺旋部分の螺旋軸の周りの半周以下の範囲に設けられている請求項2記載の粗骨材。
【請求項5】
1本の針金で形成されている請求項1~4のいずれかに記載の粗骨材。
【請求項6】
2本の針金で形成されている請求項1~4のいずれかに記載の粗骨材。
【請求項7】
第1の螺旋部分の針金の線径と第2の螺旋部分の針金の線径が異なる請求項6記載の粗骨材。
【請求項8】
螺旋部分の螺旋軸に沿って針金の1本又は複数本が並列した直線状部分を有する請求項1記載の粗骨材。
【請求項9】
螺旋部分の螺旋径が螺旋軸方向の両端部で小径であり、中央部で大径である請求項8記載の粗骨材。
【請求項10】
1本の針金で形成されている請求項8又は9記載の粗骨材。
【請求項11】
針金で形成されたコンクリート用粗骨材であって、針金で形成された立体形状の辺又は頂点に該針金で形成されたループを有する粗骨材。
【請求項12】
1本の針金で形成されている請求項11記載の粗骨材。
【請求項13】
螺旋部分が金網に絡んでいる請求項1記載の粗骨材。
【請求項14】
螺旋部分の全長が金網に絡んでいる請求項13記載の粗骨材。
【請求項15】
一つの金網に2つの螺旋部分が交叉して絡んでいる請求項13又は14記載の粗骨材。
【請求項16】
軸の周りに、該軸と平行な螺旋面の螺旋部分が放射状に配置されている請求項1記載の粗骨材。
【請求項17】
対向する螺旋部分を二対有する請求項1記載の粗骨材。
【請求項18】
大径の螺旋部分の中に小径の螺旋部分が嵌め込まれている請求項1記載の粗骨材。
【請求項19】
1本の針金が二つ折りにされ、該針金の両端部同士が撚り合わされた形状を、輪側の端部は撚りが戻されて拡径した輪となっている形状を有する請求項1記載の粗骨材。
【請求項20】
針金として撚り線が使用されている請求項1~19のいずれかに記載の粗骨材。
【請求項21】
針金として異形断面の針金が使用されている請求項1~19のいずれかに記載の粗骨材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用粗骨材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、通常、セメント、水、粗骨材(砕石や砂利)及び細骨材(砂)を混合して得る所謂生コンクリートを、水とセメントとの水和反応に基づいて固化させたものであり、建築資材として広く使用されている。
【0003】
コンクリートは、圧縮強度に比して引張強度が1/10~1/13程度と非常に低いという欠点を有している。この欠点を補うため、コンクリート中に縦横にマトリックス状に組んだ鉄筋を配設することが一般的であるが、圧縮強度だけでなく引張強度も向上させることのできる新たな粗骨材として金属製の略四面体形状の粗骨材が提案されている(特許文献1)。この粗骨材は外形が略四面体形状であることによりモルタル中でアンカー効果を発揮するので、従前の粗骨材に比して引張強度や剪断強度を向上させることが可能となる。
【0004】
また、金属製の粗骨材とモルタルとの付着性を向上させるために、金属製の粗骨材本体に20番手以上の細いワイヤーを貫通させた粗骨材であって、粗骨材本体にワイヤーが容易に巻き付くようにしたものが提案されている(特許文献2)。この粗骨材によれば、生コンクリートの撹拌中に粗骨材本体にワイヤーが巻き付き、巻き付いたワイヤーにモルタルが捕捉され、粗骨材とモルタルが一体に移動するので生コンクリート中で粗骨材が沈降しにくく、粗骨材の分散性が良好になるというメリットを得られる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような金属製の粗骨材では、粗骨材自体の引張強度がコンクリートのモルタル部分の強度に比して強すぎるため、粗骨材とモルタルとの界面が剥離してモルタル部分が破断し、粗骨材がコンクリートの引張強度の向上に寄与できない場合がある。
【0006】
特許文献2に記載されているようにワイヤーが金属製の粗骨材本体に巻き付くようにすると粗骨材とモルタルとの付着性を向上させることができるが、ワイヤーの粗骨材本体への巻き付き方は一定しないため、引張強度にばらつきが生じる虞がある。
【0007】
これに対し、モルタルと粗骨材との付着性をさらに向上させてモルタル部分の破断を防止し、コンクリートの引張強度を向上させるため、金属製メッシュ材料を中空の球形に成形した粗骨材が提案されている(特許文献3)。
【0008】
一方、旋盤加工、スピンドル加工、ドリル穴開け加工等により形成される螺旋状金属屑を合成樹脂等と複合させて粗骨材とすることが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許6485932号公報
【特許文献2】特許6532073号公報
【特許文献3】特許6667886号公報
【特許文献4】特開2009-196868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
コンクリート用粗骨材として、特許文献3に記載の金属製メッシュ材料で形成された粗骨材を使用すると、従前の砕石や砂利からなる粗骨材を使用する場合に比して圧縮強度や引張強度が大きく向上することを本発明者は確認している。即ち、モルタルとしてハイモルを使用した供試体において、圧縮強度試験(JIS A 1108)では従来の粗骨材を使用したコンクリート試験体が46.84N/mm2で剪断破壊が生じたのに対し、特許文献3に記載の金属製メッシュ材料を用いたコンクリート試験体は47.33N/mm2で僅かに塑性変形しただけで剪断破壊が生じなかった。また、割裂引張強度試験(JIS A 1113)では従来の粗骨材を使用したコンクリート試験体が3.24N/mm2で剪断破壊が生じたのに対し、特許文献3に記載の金属製メッシュ材料を用いたコンクリート試験体は5.90N/mm2でクラックが発生したに過ぎなかった。
【0011】
特許文献3に記載の金属製メッシュ材料からなる粗骨材を用いると、コンクリートの引張強度を従来の180%以上にすることが可能となり、また、コンクリートに粘りがでるため、コンクリート建造物に過度の力がかかってもコンクリートが一気に崩壊せず、徐々に崩れるため、そのコンクリート建造物から避難することが可能となる。
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載の粗骨材は、金属製メッシュ材料を加工して成形するため、材料費が高くつく。一方、粗骨材は、通常コンクリート中の体積の約7割を占める程に大量に使用されるため、より安価に入手できることが必要とされている。
【0013】
特許文献4に記載の旋盤加工、スピンドル加工、ドリル穴開け加工等により形成される螺旋状金属屑を使用する場合、この金属屑は荷重により形状が容易に変形する為、金属屑自体のアンカー効果によるコンクリート強度の向上は期待できず、また、この金属屑を樹脂等で固めた粗骨材は、粗骨材同士の絡み合いも生じないことから、粗骨材同士の絡み合いによるコンクリート強度の向上も期待できない。実際、この粗骨材を用いたコンクリート強度の検証はなされていない。
【0014】
このような従来技術に対し、本発明は、特許文献3に記載の粗骨材のように、コンクリートに高い引張強度を付与し、且つより安価に製造することのできる粗骨材の提供を課題とし、特に、モルタルとして、混和剤や繊維を含有していないものを使用した場合でも圧縮強度や引張強度が向上する粗骨材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、針金に曲げ加工を施すことにより針金のみから、又は針金と金網を組み合わせることにより粗骨材を成形すると、その粗骨材の製造コストは極めて安価になること、粗骨材が、巻き線同士の間に隙間のある螺旋部分で形成されているか、あるいは針金で形成された立体形状の辺又は頂点にループを有すると特許文献3に記載の粗骨材と同等以上にコンクリートの強度を強められることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、本発明は、針金で形成された、自重により変形しない剛性を有するコンクリート用粗骨材であって、針金が螺旋状に線径より大きいピッチで複数回巻かれた螺旋部分を有する粗骨材を提供する。
【0017】
また、本発明は、針金で形成されたコンクリート用粗骨材であって、針金で形成された立体形状の辺又は頂点に該針金で形成されたループを有する粗骨材を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粗骨材であって針金で形成された螺旋部分を有する態様は、針金を単にL字型、C字型等に湾曲させたものに比して嵩高く、モルタル内での分散性が良好である。また、螺旋部分は針金の線径より大きいピッチで巻かれており、巻き線同士の間に隙間があいているので、本発明の粗骨材をモルタルと混合すると、螺旋部分の両端部からだけでなく、巻き線同士の隙間からもモルタルが容易に螺旋部分の内部に浸入し、螺旋部分とモルタルが強く付着した状態で一体化する。
【0019】
本発明の粗骨材であって、針金で形成された立体形状の辺又は頂点に、螺旋状部分として該針金で形成されたループを有する態様も嵩高く、モルタル内での分散性が良好である。また、針金で立体形状(例えば、四面体、立方体等)が形成されているので立体形状の辺又は頂点にあるループがアンカー効果を発揮する。
【0020】
さらに、単に、旋盤加工、スピンドル加工、ドリル穴開け加工等により形成される螺旋状金属屑からなる粗骨材は剛性が低いのに対し、本発明の粗骨材は、いずれの態様においても自重では変形しない剛性を有するので、巻き線同士の間隙がモルタル内で維持され、コンクリート内部で粗骨材同士が絡まり合い、鉄筋のように作用する。そのため、本発明の粗骨材を用いたコンクリートによれば、硬化後に強い荷重がかかっても、螺旋部分をなす針金とコンクリートのモルタル部分とが剥離することを防止でき、コンクリートの圧縮強度、引張強度、剪断強度、及び曲げ強度が、特許文献3に記載の粗骨材を使用した場合と同等以上に向上し、好ましくは圧縮強度50~60kN/mm2の高強度コンクリートと同等以上となる。高強度コンクリートは、水セメント比を低くし(セメントの割合を多くし)、混和剤を使用し、特殊な繊維を使用するのに対して、本発明の粗骨材を用いたコンクリートは、一般的なポルトランドセメントを通常の配合で調製したモルタルと混合することで製造でき、混和剤等は不要であるから、本発明の粗骨材の経済的効果は非常に大きい。
【0021】
さらに、上述のコンクリート内部で粗骨材同士の絡まり合いによりコンクリートの急激な破断や爆裂を防止することができ、従来のコンクリートであれば、最大圧縮荷重をかけると殆ど瞬時に爆裂したのが、本発明の粗骨材を使用すると、コンクリートに粘りが生じ、最大圧縮荷重又は最大引張荷重をかけてから、好ましくは20分以上破断しない。したがって、例えば地震などにより建造物に大きな荷重がかかっても、人が避難する時間を確保することが可能となる。
【0022】
加えて、本発明の粗骨材は、、針金の曲げ加工により極めて安価に簡便に製造することができる。したがって、コンクリートの資材として有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例のコンクリート用粗骨材10Aの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例のコンクリート用粗骨材10Aの製造方法の説明図である。
【
図3】
図3は、実施例のコンクリート用粗骨材10Bの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例のコンクリート用粗骨材10Cの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例のコンクリート用粗骨材10Dの斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例のコンクリート用粗骨材10Eの斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例のコンクリート用粗骨材10Fの斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例のコンクリート用粗骨材10Gの斜視図である。
【
図9】
図9は、実施例のコンクリート用粗骨材10Hの斜視図である。
【
図10】
図10は、実施例のコンクリート用粗骨材10Iの斜視図である。
【
図11】
図11は、実施例のコンクリート用粗骨材10Jの斜視図である。
【
図13A】
図13Aは、実施例のコンクリート用粗骨材10Lの製造過程の斜視図である。
【
図13B】
図13Bは、実施例のコンクリート用粗骨材10Lの製造過程の斜視図である。
【
図13C】
図13Cは、実施例のコンクリート用粗骨材10Lの製造過程の斜視図である。
【
図14】
図14は、実施例のコンクリート用粗骨材10Mの斜視図である。
【
図15】
図15は、実施例のコンクリート用粗骨材10Nの斜視図である。
【
図16】
図16は、実施例のコンクリート用粗骨材10Oの斜視図である。
【
図17】
図17は、実施例のコンクリート用粗骨材10Pの斜視図である。
【
図18A】
図18Aは、実施例のコンクリート用粗骨材10Qの製造過程の斜視図である。
【
図19】
図19は、実施例のコンクリート用粗骨材10Rの斜視図である。
【
図20】
図20は、実施例のコンクリート用粗骨材10Sの斜視図である。
【
図21B】
図21Bは、実施例のコンクリート用粗骨材10Tの製造過程の斜視図である。
【
図22】
図22は、実施例のコンクリート用粗骨材10Uの斜視図である。
【
図23B】
図23Bは、実施例のコンクリート用粗骨材10Vの製造過程の斜視図である。
【
図24】
図24は、実施例のコンクリート用粗骨材10Wの斜視図である。
【
図25】
図25は、実施例のコンクリート用粗骨材10Xの斜視図である。
【
図26】
図26は、実施例のコンクリート用粗骨材10Yの斜視図である。
【
図27】
図27は、実施例のコンクリート用粗骨材10Zの斜視図である。
【
図28】
図28は、実施例のコンクリート用粗骨材10KSの斜視図である。
【
図30】
図30は、実施例のコンクリート用粗骨材10Bの集合状態の斜視図である。
【
図31】
図31は、圧縮強度試験において、供試体が崩壊するまで荷重を持続した場合の崩壊後の供試体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のコンクリート用粗骨材を実施例により詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0025】
(全体形状)
図1は、本発明の一実施例のコンクリート用粗骨材10Aの斜視図である。この粗骨材10Aは、針金がその針金の線径より大きいピッチで螺旋状に巻かれた螺旋部分をし、この螺旋部分は自重により変形しない合成を有する。より具体的には、粗骨材10Aは、針金がソレノイド型に巻かれ、直線状の螺旋軸L1を有する第1の螺旋部分1と、第1の螺旋部分1の巻方向M1を螺旋軸L2の方向とする第2の螺旋部分2を有する。第1の螺旋部分1も第2の螺旋部分2も巻き線同士の間には隙間があいている。また、第2の螺旋部分2の螺旋内に、第1の螺旋部分1の端部の螺旋層以外の全ての巻き線が入るように、第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2とが絡まっている。この場合、第2の螺旋部分2の巻き線は、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1の周りの全周に均等に配置されており、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1方向から粗骨材10Aを見た場合、第2の螺旋部分2を形成する針金が第1の螺旋部分1の螺旋軸L1を中心として放射状に位置している。また、第2の螺旋部分2の個々の螺旋形状(一巻き分の巻き線により形成される螺旋層の形状)は略円形であるため、粗骨材10Aの全体形状はドーナツ型となっている。
【0026】
本発明において、第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2のそれぞれの螺旋形状、螺旋径、巻き数、及び螺旋ピッチは、第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2からなる粗骨材10A全体が、該粗骨材10Aを配合した生コンクリートをホースに通すポンプ圧送が可能となるように適宜定める。即ち、粗骨材10Aの最大径を、従来の粗骨材である砂利や砕石と同程度の大きさにすることが好ましい。具体的には、粗骨材10Aの最大径をJIS A 5005、JIS A 5308に規定される粒度と粒径の範囲とすることが好ましい。個々の螺旋形状は、円、楕円、角丸矩形等とすることができる。
【0027】
本実施例の粗骨材10Aにおいて、第1の螺旋部分1を形成する針金と第2の螺旋部分2を形成する針金は同径であるが、別個の針金から形成されている。即ち、この粗骨材10Aは2本の針金で形成されている。なお、後述するように、本発明の粗骨材においては、第1の螺旋部分と第2の螺旋部分を1本の針金から形成することもできる。
【0028】
(針金)
本発明において、第1の螺旋部分1を形成する針金と第2の螺旋部分2を形成する針金は、鉄線、鋼線等の種々の金属材料から形成することができるが、コンクリート内においての螺旋部分1、2にバネ性は不要であることから、螺旋部分1、2を形成する針金は、ピアノ線、硬鋼線等のバネ材料よりも安価な鉄線等の軟鋼線が好ましく、銅線などを用いてもよい。また、針金として鉄線等の磁性材料を用いると、粗骨材やそれを用いたコンクリート製品の搬送工程で磁石を利用できるようになるので好ましい。一方、鋼線を使用すると粗骨材自体の強度が高くなることによりコンクリートの強度も高くなる点で好ましい。
【0029】
後述するように、針金として、複数本の針金を撚り合わせた撚り線や、異形断面針金を使用してもよい。これにより、針金とモルタル部分との結合を強くしてコンクリートの強度を向上させることができる。
【0030】
第1の螺旋部分1を形成する針金と第2の螺旋部分2を形成する針金の太さは同じでも異なっていてもよく、それぞれ針金の線径を好ましくは0.5mm~6mm、より好ましくは1mm~3mm、さらに好ましくは1mm~2mmである。なお、本発明において針金の線径は、粗骨材の形状に応じて適宜設定することができる。
【0031】
(粗骨材の製造方法)
粗骨材10Aの製造方法としては、まず針金をソレノイド型に巻くことにより第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2をそれぞれ形成し、次に
図2に示すように第1の螺旋部分1に第2の螺旋部分2を絡めていく。この場合、第2の螺旋部分2をその螺旋の回転方向に矢印のように回すことで容易に第2の螺旋部分2の全ての巻き層を第1の螺旋部分1に絡めることができる。次に、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1の周りの全周に第2の螺旋部分2が存在するように第2の螺旋部分2の隣り合う巻き線同士の間を広げることで、
図1に示した粗骨材10Aを製造することができる。この場合、第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2との溶接や接着は不要であり、針金の塑性変形により
図1に示した形状の粗骨材10Aを得ることができる。したがって、この粗骨材10Aは、線材の加工により極めて容易に安価に製造することができ、例えば、特許文献3に記載されている金属製の織網を用いた中空の粗骨材に比して概略1/10以下の材料コストで製造することができる。
【0032】
(変形態様)
本発明のコンクリート用粗骨材は種々の態様をとることができる。例えば、
図3に示した粗骨材10Bは、第1の螺旋部分1及び第2の螺旋部分2が、
図1に示した粗骨材10Aよりも細い針金で形成され、それぞれの巻き数も多くなっている。また、この粗骨材10Bでは、第1の螺旋部分1の螺旋径よりも第2の螺旋部分2の螺旋径が大きい。
【0033】
図4に示した粗骨材10Cは、第1の螺旋部分1の針金の線径を、第2の螺旋部分2の針金の線径よりも太くし、第1の螺旋部分1を螺旋面が円形のソレノイド型とするが、第2の螺旋部分2の螺旋形状を角丸矩形とし、第2の螺旋部分2による第1の螺旋部分1の半径方向の張り出しの程度を少なくしたものである。したがって、この粗骨材10Cの全体形状は円筒形となっている。
粗骨材10Cにおいて、線径の太い第1の螺旋部分1はコンクリート構造物の主筋の機能を担い、線径の細い第2の螺旋部分2はコンクリート構造物の帯筋の機能を担う。
【0034】
図5に示した粗骨材10Dは、
図4の示した粗骨材10Cに対して第1の螺旋部分1の巻き数を多くし、粗骨材10Dの全体形状を高さの高い円筒形としたものである。
【0035】
図6に示した粗骨材10Eは、
図3に示した粗骨材10Bに対して、第1の螺旋部分1の一部の巻き線(より具体的には全ての巻き数の2/3)が第2の螺旋部分2の螺旋内に入っている。
【0036】
図7に示した粗骨材10Fは、ソレノイド型の第1の螺旋部分1の全ての巻き数の約1/2の巻き数が第2の螺旋部分2の螺旋内に位置し、第1の螺旋部分1の残りの巻き数が第3の螺旋部分3の螺旋内に位置するように、第1の螺旋部分1に第2の螺旋部分2と第3の螺旋部分3が絡まっている。第1の螺旋部分1、第2の螺旋部分2、第3の螺旋部分3はそれぞれ別個の針金で形成されているので、本実施例の粗骨材10Fは3本の針金で形成されている。
本発明の粗骨材に設ける螺旋部分の個数に制限はない。
【0037】
図8に示した粗骨材10Gは、
図1に示した粗骨材10Aに対し、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1の周りの全周ではなく半周以下の範囲に第2の螺旋部分2が設けられている。また、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1が略直線であるのに対し、第2の螺旋部分2はその螺旋軸L2が円弧状になるように隣り合う巻き線同士の間が広げられている。
【0038】
図9に示した粗骨材10Hは、
図8に示した粗骨材10Gと同様に、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1の周りの全周ではなく半周以下の範囲に第2の螺旋部分2が設けられている。また、この粗骨材10Hにおいては、第1の螺旋部分1の螺旋軸L1も第2の螺旋部分2の螺旋軸L2も円弧状の曲線であり、第2の螺旋部分2だけでなく、第1の螺旋部分1においても個々の巻き線同士の間に間隙が形成され、全体として2つのC字型を組み合わせた嵩高い形状となっている。そのため、生コンクリート内での粗骨材10Hの分散性は極めて良好となる。
【0039】
図10に示した粗骨材10Iは、
図9に示した粗骨材10Hと同様に、第1の螺旋部分1と第2の螺旋部分2がそれぞれ湾曲した螺旋軸L1、L2を有し、全体として2つのC字型を組み合わせた嵩高い形状となっているが、この粗骨材10Iは、1本の針金から形成されている。
このように、本発明の粗骨材は、1本の針金で形成してもよく、複数本の針金で形成してもよい。
【0040】
上述した粗骨材10A~10Iが複数の螺旋部分を有するのに対し、
図11に示した粗骨材10Jは、一つの螺旋部分1を有する。この粗骨材10Jの螺旋部分1は直線状の螺旋軸L1を有する。螺旋部分1の螺旋径は、螺旋軸L1方向の両端部で小径であり、中央部に向かって漸次大径になっている。これにより、粗骨材10J全体としては、2つの円錐の底面同士を貼り合わせた嵩高い形状となり、この粗骨材10Jも生コンクリート内での分散性が極めて良好となる。
【0041】
また、この粗骨材10Jの螺旋部分1の内部では、螺旋軸L1に沿って針金の直線状部分4が形成されている。この直線状部分4では複数本の針金が並列している。直線状部分4の針金の本数は当該針金の硬さ、線径などに応じて定められ、1本でもよい。直線状部分4が存在することにより螺旋部分1の螺旋軸方向の伸びが規制され、この粗骨材10Jを混ぜたコンクリートにおいて、粗骨材10Jとモルタルとの付着が維持され、コンクリートの引張強度や圧縮強度が向上する。
【0042】
螺旋部分1と直線状部分4を有する粗骨材10Jの製造方法としては、まず、直線状部分4を形成し、直線状部分4の周りに螺旋部分1を形成していけばよい。また、螺旋部分1と直線状部分4との固定方法としては、これらをカシメればよく、必要に応じて溶接してもよい。
【0043】
図12Aに示した粗骨材10Kは、
図11に示した粗骨材10Jに対して螺旋部分1の螺旋径が螺旋軸L1方向で一定であり、全体として円柱状形状をしている。
図12Bに示した粗骨材10K’は、
図12Aに示した粗骨材10Kに対して螺旋軸L1部分の針金が螺旋軸L1方向から見て十字になるように螺旋軸部分の2つのループを交叉させたものである。
【0044】
図12Aに示した粗骨材10Kや
図12Bに示した粗骨材10K’は、フォーミングマシンで容易に量産することができる。また、後述する実験例に示すように、これらを粗骨材として用いたコンクリートは、セメントとして一般的なポルトランドセメントを用いた場合でも、高強度コンクリートよりも高い圧縮強度と引張強度を発揮することが可能である。そのため、経済的効果が顕著に優れた粗骨材となる。
【0045】
図13Dに示した粗骨材10Lは、両端部が小径で中央部が大径の螺旋部分1の内部に波形に湾曲した針金5が放射状に設けられている。この粗骨材10Lの製造方法としては、まず
図13Aに示すように複数本の針金5の両端6を針金で巻き締め、複数本の針金5をロープ状に捩る。次に
図13Bに示すように、ロープ状に捩った針金の束を、ロープの撚りをとくように逆方向に捩り、針金5を波形に湾曲させる。一方、別途針金をソレノイド型に巻いて螺旋部分1を形成し、螺旋部分1の内部に
図13Bに示した針金5の束を入れ、
図13Cに示すように、螺旋部分1内に入れた針金5の束をさらに逆方向に捩ると共にその両端部が互いに近づく方向に両端部に力をかけ、針金5の束の中央部が膨らむようにする。そして螺旋部分1の端部を針金5の束の端部の位置に引っ張り、そこで捩って固定する。こうして
図13Dに示した粗骨材10Lを得ることができる。
【0046】
図14に示した粗骨材10Mは、ソレノイド型に巻いた針金の一端を他端側に引っ掛けて固定することで、一つの螺旋部分1により全体をドーナツ形に形成したものである。この場合、針金の固定は、その端部の曲げと締付により行ってもよく、溶接により行ってもよい。
【0047】
図15に示した粗骨材10Nは、針金で形成した四面体形状の各頂点に、該針金によるループ7を設けたものであり、1本の針金で形成されている。
図16に示した粗骨材10Oは、針金で形成した立方体の各頂点に、該針金によるループ7を設けたものであり、1本の針金で形成されている。
図17に示した粗骨材10Pは、針金で形成した球形の両極に該針金で形成したループ7を有する。これらも1本の針金で形成されている。このように本発明の粗骨材は、針金で形成した立体形状の頂点にループ7を設けた態様を含む。この場合、立体形状は四面体や立方体に限られず、針金で外形を形成したものであれば種々の立体形状とすることができ、立体形状を複数本の針金で形成してもよい。また、立体形状の辺にループを設けてもよい。ループ7があることにより粗骨材はアンカー効果を発揮するので、コンクリートの強度を高めることができる。また、こうしてできる粗骨材も嵩高く、立体内部にモルタルが入り込むので、モルタル内での粗骨材の分散性もよい。なお、頂点や辺にループ7を有する立体形状の粗骨材においても、針金としては上述した粗骨材10Aと同様のものを使用することができる。
【0048】
本発明においては、針金と金網を組み合わせることにより針金の螺旋部分の螺旋形状が維持されるようにしてもよい。この場合、金網としては、種々の織網、溶接金網、パンチングメタル等を使用することができる。材料コストを下げる点から織網が好ましい。
【0049】
図18Bに示した粗骨材10Qは、
図1に示した粗骨材10Aと同様にソレノイド型に巻いた螺旋部分1を平織の金網8に絡めたものである。螺旋部分1を金網8に絡める方法としては、
図18Aに示すように、螺旋部分1の針金を金網8の目を通すように当て、螺旋部分1の螺旋の巻き方向に螺旋部分1を回していくことにより
図18Bに示した粗骨材10Qを得ることができる。生コンクリート内で粗骨材10Qを分散させたときに螺旋部分1の形状を潰れにくくすると共に分散性を向上させるため、螺旋部分1の全長が金網8に絡むようにすることが好ましい。
【0050】
針金による螺旋部分1の複数個を一つの金網8に絡ませてもよい。
図19に示した粗骨材10Rは、一つの針金8に二つの螺旋部分1を、それらが交叉するように絡ませたものである。
【0051】
図20に示した粗骨材10Sは、軸L3の周りに、該軸L3と平行な螺旋面を有する螺旋部分1を放射状に配置したものである。この粗骨材10Sを用いたコンクリートは、コンクリート柱で一つの粗骨材10Sの軸L3となる部分の針金が他の粗骨材10Sの螺旋部分1と絡まり合うためか、強い引張荷重がかかってもなかなか破断しない性質を発揮する。
【0052】
図21Aに示した粗骨材10Tは対向する二対の螺旋部分1a、1a、1b、1bを有し、全体として毬型となっているものである。この粗骨材10Tは、
図21Bに示したように、まず、1本の針金を湾曲させることにより、平面上に、大径の一対の螺旋部分1aと小径の一対の螺旋部分1bとからなる4つ葉形状を形成し、次に小径の一対の螺旋部分1bを前記平面から引き起こし、次に小径の螺旋部分1bを囲むように大径の螺旋部分1aを前記平面から引き起こすことにより製造することができる。
【0053】
図22に示した粗骨材10Uは、螺旋軸L1の周りに巻き方向が逆向きの螺旋部分1c、1dを有するもので、1本の針金で形成したものである。
【0054】
図23Aに示した粗骨材10Vは、大径の螺旋部分1aからなる螺旋層の中に小径の螺旋部分1bからなる螺旋層を嵌め込んだものである。この粗骨材10Vは、
図23Bに示すように、大径の螺旋部分1aからなる螺旋層と小径の螺旋部分1bからなる螺旋層を1本の針金から形成し、大径の螺旋部分1aからなる螺旋層の中に小径の螺旋部分1bからなる螺旋層を押し込むことにより製造することができる。
【0055】
図24に示した粗骨材10Wは、扇形に開いた大径の螺旋部分1aからなる螺旋層の両端を小径の螺旋部分1bとしたものである。その粗骨材10Wの両端を小径の螺旋部分1bとすることにより、粗骨材10Wの端部同士が過度に絡み合うことによるモルタル内での粗骨材10Wの分散性の低下を防止することができる。
【0056】
上述した種々の実施例は螺旋部分が概略円形または楕円形であるが、本発明の粗骨材において螺旋部分は矩形等の多角形であってもよい。螺旋部分が多角形の粗骨材は、多角柱の芯材に針金を巻くことにより得ることができる。
【0057】
図25に示した実施例の粗骨材10Xは、1本の針金を非常に大きなピッチで1回半程度巻くことにより螺旋状としたものである。このピッチの大きい螺旋形状は金属の旋盤加工の切削屑に似ているが、本実施例の粗骨材10Xは自重で変形しない剛性を有しており、モルタルと混合しても当初の形状を保持する点で異なる。
【0058】
図26に示した実施例の粗骨材10Yは、1本の針金が二つ折りにされ、該針金の両端部同士が線径よりも大きいピッチで複数回撚り合わされ、輪側の端部の螺旋部分1の形状は撚りが戻されて拡径した捻れた輪となっている。この粗骨材10Yにおいて、二つ折りにされた針金同士が複数回撚り合わされている部分の中間にも拡径した輪を形成してもよい。
【0059】
図27に示した実施例の粗骨材10Zは、2本の針金の中央部が撚り合わさり、両端が開いた形状をしたものである。ここで、一方の端部を形成する2本の針金5a-1、5b-1で形成される面と、他方の端部を形成する2本の針金5a-2、5b-2で形成される面とは略垂直に交叉する。このように一方の端部で形成される面と他方の端部で形成される面を捻れの関係とすることにより、粗骨材10Zがモルタル中で偏らず、良好に分散しやすくなる。
【0060】
これら実施例の粗骨材10X、10Y、10Zもフォーミングマシンで容易に安価に製造することができ、量産性に優れている。
【0061】
上述した種々の実施例は螺旋部分を1本の針金を螺旋状に巻くことにより、又は螺旋状に巻いた複数本の針金を組み合わせることにより、又は2本の針金を撚り合わせて螺旋部分を形成すること等により得られるが、本発明の粗骨材は、複数本の針金を撚り合わせた撚り線を用いて同様に形成してもよい。例えば、
図28の粗骨材10KSは、
図12Aに示した粗骨材10Kと同様の形状を撚り線5Sで形成したものである。針金として撚り線5Sを使用することにより、コンクリート内で粗骨材とモルタル部分とが強固に接着し、粗骨材とモルタル部分との界面剥離を抑制できるのでコンクリートの圧縮強度や引張強度が向上する。
【0062】
撚りの程度としては、例えば線径1.6mm、長さ30cmの針金2本を撚る場合、撚りの回数は35~38回程度とするとよい。
【0063】
複数本の針金を撚る場合に、亀の子タワシのように撚りの部分に放射状に針金を突出させてもよい。
【0064】
針金とモルタル部分との接着力を向上させるため、針金として、断面形状が針金の長手方向にわたって均一でなく、所定間隔で変化している異形断面の針金を使用してもよい。例えば、
図29に示すように、断面が扁平化した領域が所定間隔で繰り返されている異形断面の針金5Xを使用することができる。異形断面の針金5Xは、針金を部分的に押し潰すことにより容易に得ることができ、針金の表面をスパッタ等で荒らす場合に比して針金とモルタル部分との接着力を安価に向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の粗骨材の変形例について説明したが、上述した粗骨材の構成要素は適宜組み合わせることができる。
【0066】
(粗骨材の適用例)
本発明のコンクリート用粗骨材は、従来のコンクリートの配合組成における粗骨材の一部又は全部に代替することができる。この場合、本発明の粗骨材は嵩高く、モルタルと混合すると、モルタル内で粗骨材同士が絡まり合うが密に重なり合うことはなく、モルタル内で偏在することはない。モルタルに混ぜた本発明の粗骨材の多くは、例えば
図30に示したように粗骨材10Bの螺旋部分の一巻き分ずつの巻き線同士が接触した状態分散するか、あるいは粗骨材のループにより粗骨材同士が絡まった状態で分散する。いずれの場合も針金で形成された螺旋部分、立体又はループの内部にモルタルが浸入し、針金とモルタルが強く付着した状態で一体化する。そのため、本発明の粗骨材を用いたコンクリートによれば、硬化後に強い荷重がかかっても、螺旋部分をなす針金とコンクリートのモルタル部分とが剥離することを防止でき、コンクリートの圧縮強度、引張強度、剪断強度、曲げ強度が、顕著に向上する。
【0067】
本発明の粗骨材と混ぜるモルタルは、一般的なポルトランドセメントと砂と水から形成することができる。高強度コンクリートの製造に使用される混和剤や特殊な繊維は不要である。従って、本発明の粗骨材を用いて製造したコンクリートは、リサイクルにも適したものとなる。一方、必要に応じて本発明の粗骨材を高強度コンクリート用のモルタルに混ぜても良い。従来の高強度コンクリートに粘り強さを付与し、爆裂を抑制することができる。
【0068】
また、本発明の粗骨材と混ぜるモルタルの砂としては、再生コンクリートから形成したものを使用することもでき、これによっても一般的な砂を用いた場合と同様のコンクリート強度を発揮させることができる。
【0069】
コンクリートの打設方法としては、常法にしたがいモルタル中に粗骨材を分散させて生コンクリートを調製し、生コンクリートを型に流し入れ、次いで加振してもよく、加振しつつ生コンクリートを型に流し入れてもよい。
【0070】
また、型内の捨てコンの上に粗骨材を入れ、次いでモルタルを流し入れ、加振してもよい。これにより所定量の粗骨材を正確に型内に入れることができる。
【0071】
本発明のコンクリート用粗骨材の好ましい適用例としては、コンクリートプレキャスト製品において、例えば、中空の本発明の粗骨材を使用し、引張や曲げに対して従前よりも強い軽量鉄筋コンクリート板を製造することができる。また、鉄筋を使用しないコンクリート構造物(例えば、ダム壁、地面に直に敷設される道路、建造物のベタ基礎、舗装広場等)にも好ましく適用できる。特殊な適用例としては、地面から離れた位置に設置される高速道路の鉄筋コンクリート床版等に好ましく適用できる。本発明のコンクリート用粗骨材であって針金を磁性材料から構成した場合には、コンクリートパネルを電磁石に引きつけて搬送、設置、撤去することが可能となり、作業性が向上する。
【実施例0072】
以下、本発明の粗骨材の効果を実験例により具体的に説明する。
実験例1~8
<供試体の作製>
供試体型となる供試体作製用容器は内径10cm、深さ20cmの円柱状の有底筒状容器である。この容器を用いて次のようにして供試体を作製した。
まず、供試体1個分の粗骨材の充填量として、空の容器に約一杯弱の粗骨材を用意しておく。
次に、セメントと砂と水を混合してモルタルを作る。モルタルは、次の配合を基本とした。
水:0.55kg
セメント:2kg
砂:4kg
【0073】
モルタルに上述の粗骨材を加えて撹拌し、得られた混合物の適量の容器への充填と加振を繰り返す。この間、モルタルが容器から溢れ、粗骨材も容器から溢れ出てくるものがあるが、溢れ出た粗骨材は容器内に戻し、最終的に予め用意した粗骨材の全量又は9割以上が容器内に充填されるようにする。
【0074】
こうして容器内に当初用意した粗骨材の全量と、水:セメント:砂=0.55:2:4のモルタルとが混合した未硬化コンクリートを得る。
【0075】
容器内に充填された未硬化コンクリートを水中で原則として28日間養生することにより硬化させ、この硬化物を容器から取り出して供試体とする。
【0076】
この場合、粗骨材やモルタルの配合を表1に示すように変えた。
なお、比較例1として粗骨材を充填しなかったものを作製した。比較例2は、特許文献3に記載の粗骨材と同様に金属メッシュを用いたものとして、球体の周りに矩形のフランジがある形状で、シート状の金属メッシュ(平織り)で形成したものを用いた。この粗骨材は、シート状の金属メッシュにプレス加工することにより半球状の凹みを形成したものを一対作製し、これを重ね合わせて針金で縫い止めることにより作製した。
【0077】
<評価>
それぞれについて圧縮強度試験(JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法)と、引張強度試験(JIS A 1113 コンクリートの割裂引張強度試験方法)を行った。圧縮強度試験と引張強度試験は、一般財団法人建材試験センターで行った。結果を表1に示す。
【0078】
実験例9~14
モルタルとして、USスーパーモルタル(ウチダ商事株式会社)を、その標準加水量(水4.3kg、スーパーモルタル25kg)の水と混合して調製したモルタルを使用し、表2の粗骨材を用いて実験例1~8と同様に供試体を製造し、圧縮強度試験と引張強度試験を行った。結果を表2に示す。
【0079】
実験例15~22
モルタルの配合比を、水:セメント:砂=0.55:3:3 とする以外は実験例1~8と同様にして供試体を作製し、圧縮強度試験と引張強度試験を行った。結果を表3に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
表1から、金属メッシュを球状に成型した比較例2の粗骨材を用いた実験例2に比して、実施例の粗骨材を用いた実験例4、5、6では引張強度が高い。したがって、本実施例の粗骨材は、簡単に安価に製造できかつ、コンクリート強度の向上に有用であることがわかる。
【0084】
表2の実験例10と実験例12から、同様の粗骨材形状であっても、螺旋部分の径の大きさなどによって引張強度が異なることがわかる。
【0085】
表1の実験例3や表3の実験例17、19、20から、本発明の実施例の粗骨材を使用すると、通常のポルトランドセメントを使用した場合でも高強度コンクリート以上の圧縮強度や引張強度を達成できることがわかる。
【0086】
さらに、殆ど全ての実施例の実験例から、本発明の粗骨材を用いたコンクリートは、最大荷重をかけてもすぐに割れたり崩れたりしないことがわかる。特に、実験例4では、加圧開始後最大荷重がかかってからも供試体の外観に殆ど変化がなく、加圧開始後18分30秒経過しても供試体は割れず、荷重の印加を打ち切った。実験例14~21においても、同様に、供試体に最大荷重がかかったのちも供試体は割れたり崩れたりせず、加圧開始後10数分以上にわたって供試体は外観を保持していた。
【0087】
最大加圧を記録後、一端荷重が低下するが、再度荷重が上がっていくものもあった。これは、コンクリート内部で複雑に絡み合った粗骨材の作用によるものと推察される。
【0088】
したがって、本発明の粗骨材を用いたコンクリートで建造物を作製すると、例えば、大地震などにより過大な荷重が建造物に加わってもその建造物がコンクリートの爆裂により直ちに崩壊することはなく、避難のための時間の確保しやすいことわかる。
【0089】
図31は、実験例19において、供試体が崩壊するまで最大荷重を加え続けた場合に得られた崩壊後の供試体の様子を示している。供試体は、少しずつ崩れていく粘りのあるものであった。同図から、コンクリート内では粗骨材10Kが良好に分散し、かつ粗骨材10K同士が絡まり合っていることがわかる。
【0090】
さらに表3から、砂として再生コンクリートを使用した実験例18、21は、通常の砂を使用した対応する実験例17、20と略同程度の引張強度を達成できていることから、本発明の粗骨材は、再生コンクリートを用いたコンクリートにおいても強度を向上させることがわかる。よって、本発明の粗骨材は、コンクリート解体物の有効利用にも役立つことがわかる。