(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087843
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】蒸気弁および蒸気タービンプラント
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20230619BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20230619BHJP
F16K 1/44 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F01D17/10 B
F01D17/00 V
F16K1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202347
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 蔵
(72)【発明者】
【氏名】二森 都
(72)【発明者】
【氏名】堀井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
【テーマコード(参考)】
3G071
3H052
【Fターム(参考)】
3G071DA02
3G071DA15
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA04
3H052CA13
3H052CD02
3H052EA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】副弁体の破損を防止し、副弁体において蒸気のリークが生ずることを効果的に抑制可能な蒸気弁等を提供する。
【解決手段】実施形態の蒸気弁300において、副弁体330は、開方向に弁棒が移動して副弁体キャップ335と主弁体320との間が離れることによって副弁体蒸気導入孔H330が開放されて副弁体330が開状態になると共に、閉方向に弁棒が移動して副弁体キャップ335と主弁体320とが当接することによって副弁体蒸気導入孔H330が遮断されて副弁体330が全閉状態になるように構成されている。副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置は、副弁体管状部のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面よりも、弁棒の径方向において外側に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁孔が形成された弁座と、
前記弁座に当接可能に設けられた主弁体と、
前記主弁体の内部において摺動可能に収容されており、副弁体蒸気流路が内部に形成されている副弁体と、
前記副弁体に連結され、前記弁孔を貫通している弁棒と
を備え、
前記弁棒の中心軸に沿った軸方向において前記主弁体を開ける開方向に前記弁棒が移動することで前記主弁体と前記弁座との間が離れ、前記軸方向において前記主弁体を閉める閉方向に前記弁棒が移動することで前記主弁体と前記弁座との間が接近するように構成された蒸気弁であって、
前記副弁体は、
前記主弁体よりも前記開方向において前記主弁体から突き出る部分を含む副弁体管状部を有し、前記副弁体蒸気流路へ蒸気を導入するための副弁体蒸気導入孔が前記副弁体管状部に形成されている副弁体本体と、
前記副弁体管状部において前記開方向の側に位置する端部に設置されている副弁体キャップと
を有し、前記開方向に前記弁棒が移動して前記副弁体キャップと前記主弁体との間が離れることによって前記副弁体蒸気導入孔が開放されて前記副弁体が開状態になると共に、前記閉方向に前記弁棒が移動して前記副弁体キャップと前記主弁体とが当接することによって前記副弁体蒸気導入孔が遮断されて前記副弁体が全閉状態になるように構成されており、
前記副弁体キャップと前記主弁体とが当接する当接位置は、前記副弁体管状部のうち副弁体蒸気導入孔が形成された部分の外周面よりも、前記弁棒の径方向において外側に位置する、
蒸気弁。
【請求項2】
前記副弁体キャップにおいて前記主弁体に当接する部分は、前記弁棒の中心軸上に中心を有する球による曲面である、
請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記主弁体において前記副弁体キャップに当接する部分は、前記弁棒の中心軸に直交する面に対して傾斜する傾斜面である、
請求項1または2に記載の蒸気弁。
【請求項4】
前記副弁体蒸気導入孔は、前記弁棒の中心軸に直交する面に対して傾斜するように形成されている、
請求項3に記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記傾斜面が前記弁棒の中心軸に直交する面に対して傾斜する角度と、前記副弁体蒸気導入孔が前記弁棒の中心軸に直交する面に対して傾斜する角度とが、同じである、
請求項4に記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記副弁体蒸気導入孔は、前記蒸気が流入する入口部分の方が、前記蒸気が流出する出口部分よりも、断面積が広い部分を含むように形成されている、
請求項1から5のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項7】
前記副弁体蒸気導入孔は、
前記蒸気が流入する入口側から前記蒸気が流出する出口側に渡って一定の断面積で形成された第1の副弁体蒸気導入孔部と、
前記蒸気が流入する入口において前記第1の副弁体蒸気導入孔部の周りを囲うように設けられ、前記蒸気が流入する入口側から前記蒸気が流出する出口側へ向かって断面積が狭くなるように形成されている第2の副弁体蒸気導入孔部と
を有する、
請求項6に記載の蒸気弁。
【請求項8】
前記副弁体蒸気導入孔は、
前記蒸気が流入する入口側から前記蒸気が流出する出口側に渡って一定の断面積で形成された第1の副弁体蒸気導入孔部と、
前記蒸気が流入する入口において前記第1の副弁体蒸気導入孔部よりも前記閉方向の側に設けられ、前記蒸気が流入する入口側から前記蒸気が流出する出口側へ向かって断面積が狭くなるように形成されている第2の副弁体蒸気導入孔部と
を有する、
請求項6に記載の蒸気弁。
【請求項9】
前記第2の副弁体蒸気導入孔部は、前記第1の副弁体蒸気導入孔部において前記閉方向の側に位置する部分を囲うように設けられている、
請求項8に記載の蒸気弁。
【請求項10】
前記第2の副弁体蒸気導入孔部は、前記第1の副弁体蒸気導入孔部よりも前記閉方向の側に位置する部分に設けられている、
請求項8に記載の蒸気弁。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の蒸気弁
を備える、
蒸気タービンプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気弁および蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンプラントでは、蒸気タービンの入口に主蒸気止め弁および蒸気加減弁が設置されている。蒸気タービンを起動する際には、蒸気タービンにおいて高い熱応力が加わることを防止するために、暖機運転が行われる。
【0003】
暖機運転は、蒸気加減弁を全開状態にし、主蒸気止め弁で蒸気の流量を制御することで実行される。主蒸気止め弁は、例えば、主弁体と副弁体とを有し、暖機運転では、主弁体を全閉状態にし、副弁体の開度を制御することで、主蒸気止め弁を通過する蒸気の流量を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[A]蒸気弁300Jの構成
図7および
図8は、関連技術に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
図7では、鉛直面(xz面)の一部断面を示しており、
図8では、
図7中の領域Aについて拡大して示している。
図7および
図8では、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が第2水平方向yである。
【0006】
関連技術に係る蒸気弁300Jは、
図7および
図8に示すように、弁座310と主弁体320と副弁体330と弁棒340とを備える主蒸気止め弁である。
【0007】
関連技術に係る蒸気弁300Jでは、弁棒340の中心軸CLに沿った軸方向AXにおいて主弁体320を開ける開方向AX1に弁棒340が移動することで主弁体320と弁座310との間が離れる。そして、蒸気弁300Jは、軸方向AXにおいて主弁体320を閉める閉方向AX2に弁棒340が移動することで主弁体320と弁座310との間が接近する。
【0008】
そして、関連技術において、蒸気タービン(図示省略)について暖機運転を行う際には、主蒸気止め弁である蒸気弁300Jは、主弁体320が全閉状態にされた状態で、副弁体330の開度が制御されることで、蒸気の流量が調整される。
図7では、副弁体330が全開状態である場合を示し、
図8では、副弁体330が全閉状態である場合を示している。
【0009】
蒸気弁300Jを構成する各部について順次説明する。
【0010】
[A-1]弁座310
弁座310は、例えば、リング形状であって、弁孔K310が形成されている。ここでは、弁座310は、弁ケーシング(図示省略)の内部(弁室)において、弁棒340と同軸に固定されている。
【0011】
[A-2]主弁体320
主弁体320は、例えば、円筒状であって、弁座310に当接可能に設けられている。ここでは、主弁体320は、弁ケーシング(図示省略)の内部において弁棒340と同軸になるように弁棒340の一端(図では上端)に連結されている。また、主弁体320は、副弁体330を収容する収容空間S320が内部に形成されている。
【0012】
[A-3]副弁体330
副弁体330は、主弁体320の内部に形成された収容空間S320において弁棒340と同軸になるように収容されており、軸方向AXに摺動可能である。副弁体330は、蒸気が外部から副弁体蒸気導入孔H330を介して副弁体蒸気流路F331に導入され、副弁体蒸気流路F331に導入された蒸気が弁孔K310へ流出するように構成されている。
【0013】
ここでは、副弁体330は、副弁体本体331と副弁体キャップ335とを備える。
【0014】
[A-3-1]副弁体本体331
副弁体330において、副弁体本体331は、第1の副弁体本体部3311、第2の副弁体本体部3312、および、第3の副弁体本体部3313を含む。
【0015】
副弁体本体331のうち、第1の副弁体本体部3311は、例えば、外形が円柱形状である。
【0016】
副弁体本体331のうち、第2の副弁体本体部3312は、例えば、外形が円錐台形状であって、軸方向AXにおいて開方向AX1へ向かうに伴って、第1の副弁体本体部3311の外径から減少するように構成されている。
【0017】
副弁体本体331のうち、第3の副弁体本体部3313は、例えば、外形が円柱形状であって、第2の副弁体本体部3312のうち開方向AX1の側に位置する端部と外径が同じである。
【0018】
第3の副弁体本体部3313には、副弁体蒸気導入孔H330が形成されている。副弁体蒸気導入孔H330は、第3の副弁体本体部3313のうち主弁体320から開方向AX1へ突き出る部分(副弁体管状部)に形成されている。副弁体蒸気導入孔H330は、第3の副弁体本体部3313において内部と外部との間を連通するように、弁棒340の径方向(軸方向AXに直交する方向)に沿っている。つまり、副弁体蒸気導入孔H330は、弁棒340の中心軸CLに直交する面に沿うように形成されている。副弁体蒸気導入孔H330は、複数であって、弁棒340の周方向に複数が間を隔てて並ぶように配置されていると共に、弁棒340の軸方向AXにおいて複数が並ぶように配置され、更に軸方向AXの任意段落において、各々の副弁体蒸気導入孔H330は中心軸CLに向かって正確に対向している。
【0019】
また、第3の副弁体本体部3313のうち主弁体320から突き出る部分において副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分よりも開方向AX1の側に位置する部分の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0020】
更に、副弁体本体331には、副弁体蒸気流路F331が形成されている。副弁体蒸気流路F331は、第1の副弁体蒸気流路部F3311、第2の副弁体蒸気流路部F3312、および、第3の副弁体蒸気流路部F3313を含む。
【0021】
第1の副弁体蒸気流路部F3311は、軸方向AXにおいて閉方向AX2の側に位置する端部(下端)が弁座310の弁孔K310に連通し、軸方向AXにおいて開方向AX1の側に位置する端部(上端)が第2の副弁体蒸気流路部F3312に連通している。第1の副弁体蒸気流路部F3311は、複数であって、複数の第1の副弁体蒸気流路部F3311が弁棒340の周りを囲うように、間を隔てて配置されている。
【0022】
第2の副弁体蒸気流路部F3312は、例えば、円錐台形状であって、軸方向AXにおいて開方向AX1へ向かうに伴って、径が減少するように形成されている。
【0023】
第3の副弁体蒸気流路部F3313は、例えば、円柱形状であって、第2の副弁体蒸気流路部F3312のうち開方向AX1の側に位置する端部と径が同じである。第3の副弁体蒸気流路部F3313は、副弁体蒸気導入孔H330に連通している。
【0024】
副弁体蒸気流路F331においては、副弁体蒸気導入孔H330から導入された蒸気が、第3の副弁体蒸気流路部F3313と第2の副弁体蒸気流路部F3312と第1の副弁体蒸気流路部F3311とを順次流れ、弁孔K310へ排出される。
【0025】
[A-3-2]副弁体キャップ335
副弁体キャップ335は、副弁体本体331を構成する第3の副弁体本体部3313(副弁体管状部)において、開方向AX1の側に位置する端部(上端)に取り付けられている。副弁体キャップ335は、第3の副弁体本体部3313の内部に形成された第3の副弁体蒸気流路部F3313を塞ぐように構成されている。
【0026】
ここでは、副弁体キャップ335は、キャップ管状体部3351とキャップ板状体部3352とを含む。
【0027】
副弁体キャップ335において、キャップ管状体部3351は、例えば、円筒形状の管状体であって、弁棒340と同軸である。キャップ管状体部3351の内周面には、第3の副弁体本体部3313の外周面に形成された雄ネジに組み合わされる雌ネジが形成されている。
【0028】
副弁体キャップ335において、キャップ板状体部3352は、例えば、円板状の板状体であって、弁棒340と同軸である。
【0029】
キャップ管状体部3351のうち開方向AX1の側に位置する端部(上端)の外周面は、弁棒340の中心軸CLに沿っている。これに対して、キャップ管状体部3351のうち閉方向AX2の側に位置する端部(下端)の外周面は、弁棒340の中心軸CLに対して傾斜した傾斜面であって、その傾斜面は、弁棒340の径方向において閉方向AX2の側が開方向AX1の側よりも内側に位置している。
【0030】
[A-4]弁棒340
弁棒340は、例えば、円柱状の棒状体であって、開方向AX1の側に位置する端部(上端)が副弁体330に連結されており、止めピン341を用いて副弁体330に固定されている。そして、弁棒340は、弁孔K310を貫通するように軸方向AXに延伸している。
【0031】
[B]副弁体330の動作
[B-1]副弁体330を全開状態にする場合
関連技術に係る蒸気弁300Jにおいて副弁体330を全開状態にする場合には、
図7に示すように、開方向AX1に弁棒340を移動させて副弁体キャップ335と主弁体320との間が離れることによって、全ての副弁体蒸気導入孔H330が開放される。これにより、蒸気が副弁体蒸気導入孔H330から副弁体蒸気流路F331に導入される。副弁体蒸気流路F331のうち第3の副弁体蒸気流路部F3313では、蒸気は、複数の副弁体蒸気導入孔H330を介して、径方向の外側から内側に流れ、中心軸CLにおいて衝突する。その結果、暖機運転では、蒸気の流速が低下した状態で、副弁体蒸気流路F331から蒸気が蒸気タービンへ導入される。
【0032】
[B-2]副弁体330を全閉状態にする場合
これに対して、関連技術に係る蒸気弁300Jにおいて副弁体330を全閉状態にする場合には、
図8に示すように、閉方向AX2に弁棒340(
図7参照)を移動させて副弁体キャップ335と主弁体320とを当接させることによって、全ての副弁体蒸気導入孔H330が遮断される。
【0033】
図8に示すように、関連技術に係る蒸気弁300Jでは、副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置CPは、第3の副弁体本体部3313(副弁体管状部)のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面と一致する。つまり、関連技術に係る蒸気弁300Jにおいて、副弁体330を全閉状態にする場合には、副弁体キャップ335において閉方向AX2の側に位置する尖った先端が、主弁体320において開方向AX1の側に位置する平坦な面に衝突する。
【0034】
関連技術に係る蒸気弁300Jにおいて、副弁体キャップ335と主弁体320との間の衝突が繰り返されたときには、副弁体キャップ335において閉方向AX2の側に位置する先端が破損する場合がある。その結果、蒸気のリークが生じ、副弁体330を的確に全閉状態にすることができない場合がある。
【0035】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、副弁体の破損を防止し、副弁体において蒸気のリークが生ずることを効果的に抑制可能な、蒸気弁、および、蒸気タービンプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
実施形態の蒸気弁は、弁座と主弁体と副弁体と弁棒とを備える。弁座は、弁孔が形成されている。主弁体は、弁座に当接可能に設けられている。副弁体は、主弁体の内部において摺動可能に収容されており、副弁体蒸気流路が内部に形成されている。弁棒は、副弁体に連結され、弁孔を貫通している。蒸気弁は、弁棒の中心軸に沿った軸方向において主弁体を開ける開方向に弁棒が移動することで主弁体と弁座との間が離れ、軸方向において主弁体を閉める閉方向に弁棒が移動することで主弁体と弁座との間が接近するように構成されている。ここで、副弁体は、副弁体本体と副弁体キャップとを有する。副弁体本体は、主弁体よりも開方向において主弁体から突き出る部分を含む副弁体管状部を有し、副弁体蒸気流路へ蒸気を導入するための副弁体蒸気導入孔が副弁体管状部に形成されている。副弁体キャップは、副弁体管状部において開方向の側に位置する端部に設置されている。副弁体は、開方向に弁棒が移動して副弁体キャップと主弁体との間が離れることによって副弁体蒸気導入孔が開放されて副弁体が開状態になると共に、閉方向に弁棒が移動して副弁体キャップと主弁体とが当接することによって副弁体蒸気導入孔が遮断されて副弁体が全閉状態になるように構成されている。副弁体キャップと主弁体とが当接する当接位置は、副弁体管状部のうち副弁体蒸気導入孔が形成された部分の外周面よりも、弁棒の径方向において外側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる蒸気タービンプラントの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)の要部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の変形例に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)の要部を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の変形例に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)の要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、関連技術に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、関連技術に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<第1実施形態>
[A]蒸気タービンプラントの構成
図1は、第1実施形態にかかる蒸気タービンプラントの全体構成を模式的に示す図である。
【0039】
本実施形態の蒸気タービンプラント100においては、
図1に示すように、蒸気発生器111で加熱された蒸気が、主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとが設置された主蒸気管P10を介して、高圧タービン141に作動流体として導入され、高圧タービン141において仕事を行う。そして、高圧タービン141から排出された蒸気は、低温再熱蒸気管P11を経由して、再熱器112に供給され、再熱器112において再度加熱される。再熱器112で加熱された蒸気は、再熱蒸気止め弁V12aとインターセプト弁V12bが設置された高温再熱蒸気管P12を介して、中圧タービン142に作動流体として導入され、中圧タービン142において仕事を行う。蒸気タービンプラント100では、高圧タービン141と中圧タービン142と低圧タービン(図示省略)との間においてタービンロータが連結されており、蒸気の仕事によってタービンロータが回転する。そして、そのタービンロータの回転によって発電機145が駆動し、発電が行われる。
【0040】
[B]蒸気弁300の構成
図2は、第1実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
図2では、
図8と同様に、鉛直面(xz面)の一部断面を拡大して示している。
【0041】
本実施形態の蒸気弁300は、
図1に示す蒸気タービンプラント100を構成する主蒸気止め弁V10aに相当する。本実施形態の蒸気弁300の全体構成について図示を省略しているが、本実施形態の蒸気弁300は、関連技術の場合と同様に、弁座310と主弁体320と副弁体330と弁棒340とを備える主蒸気止め弁である。また、関連技術の場合と同様に、本実施形態の蒸気弁300において、副弁体330は、副弁体本体331と副弁体キャップ335とを備える(
図7参照)。
【0042】
しかし、
図2に示すように、本実施形態の蒸気弁300は、副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置CPが、関連技術の場合と異なる(
図8参照)。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、関連技術の場合(
図7,
図8参照)と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の蒸気弁300において副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置CPは、関連技術の場合と異なり(
図8参照)、第3の副弁体本体部3313(副弁体管状部)のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面と一致していない。本実施形態の蒸気弁300では、副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置CPは、副弁体管状部3313のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面よりも、弁棒340の径方向において外側に位置している。
【0044】
具体的には、副弁体キャップ335において主弁体320に当接する部分(当接位置CP)は、弁棒340の中心軸CL上に中心を有する、半径Rの球による曲面S335上に位置する。上記の曲面S335は、弁棒340の径方向において内側に位置する部分が閉方向AX2の側に位置し、弁棒340の径方向において外側に位置する部分が開方向AX1の側に位置している。
【0045】
そして、本実施形態では、主弁体320において副弁体キャップ335に当接する部分(当接位置CP)は、弁棒340の中心軸CLに直交する面に対して、傾斜角Kで傾斜する傾斜面S320上に位置する。上記の傾斜面S320は、弁棒340の径方向において内側に位置する部分が閉方向AX2の側に位置し、弁棒340の径方向において外側に位置する部分が開方向AX1の側に位置している。
【0046】
これにより、本実施形態では、副弁体管状部3313のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面よりも弁棒340の径方向において外側に位置する、直径φAの当接位置CPにおいて、副弁体キャップ335と主弁体320とが線接触する。
【0047】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の蒸気弁300では、副弁体キャップ335と主弁体320とが当接する当接位置CPは、副弁体管状部3313のうち副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分の外周面よりも、弁棒340の径方向において外側に位置する。本実施形態では、副弁体キャップ335において主弁体320に当接する部分(当接位置CP)は、尖った先端ではない。
【0048】
このため、本実施形態の蒸気弁300では、副弁体330を全閉状態にする場合に、副弁体キャップ335において主弁体320に当接する部分が、尖った先端ではないので、副弁体キャップ335と主弁体320との間の衝突が繰り返されても、副弁体キャップ335において破損が生じにくい。その結果、本実施形態では、副弁体330を的確に全閉状態にすることができるため、蒸気のリークが発生することを効果的に防止可能である。
【0049】
また、本実施形態では、副弁体キャップ335において主弁体320に当接する部分(当接位置CP)は、弁棒340の中心軸CL上に中心を有する球による曲面S335である。このため、曲面S335の加工を容易に行うことができる。更に、副弁体330を全閉にした時、弁棒340と一体化された副弁体330および副弁体キャップ335が、円錐台状となった傾斜面S320に沿って、円錐台状の先端(弁棒340の中心軸CL)に向かうように主弁体320の中心と同心となる位置関係まで、すなわち調心するまで滑る様に移動する。このことから、副弁体キャップ335と主弁体320とが、当接位置CPにおいて確実に密着(密接)するため蒸気シール性が格段に向上することができるようになる。
【0050】
[D]変形例
上記の実施形態では、主弁体320において副弁体キャップ335に当接する部分(当接位置CP)は、弁棒340の中心軸CLに直交する面に対して傾斜する傾斜面S320である場合について説明したが、これに限らない。主弁体320において副弁体キャップ335に当接する部分(当接位置CP)は、平坦な傾斜面S320でなく、曲面S335に対面(対向)する曲面であってもよい。
【0051】
<第2実施形態>
[A]蒸気弁300bの構成
図3は、第2実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)を模式的に示す断面図である。
図3では、
図2と同様に、鉛直面(xz面)の一部断面を拡大して示している。
【0052】
本実施形態の蒸気弁300bは、
図3に示すように、副弁体蒸気導入孔H330の構成が、第1実施形態の場合と異なる。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合(
図2参照)と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、本実施形態の蒸気弁300bにおいて、副弁体蒸気導入孔H330は、弁棒340の中心軸CLに直交する面に対して傾斜するように形成されている。ここでは、副弁体蒸気導入孔H330は、主弁体320において副弁体キャップ335に当接する部分(当接位置CP)を含む傾斜面S320と同様に、弁棒340の径方向において内側に位置する部分が閉方向AX2の側に位置し、弁棒340の径方向において外側に位置する部分が開方向AX1の側に位置している。
【0054】
[B]まとめ
このため、本実施形態の蒸気弁300では、蒸気が傾斜面S320に沿って流れた後に、副弁体蒸気導入孔H330にスムーズに流入して通過する。その結果、本実施形態では、蒸気に含まれる不純物が副弁体蒸気導入孔H330の入口部分に衝突しにくいため、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分において侵食が生ずることを防止可能である。
【0055】
なお、本実施形態では、主弁体320において副弁体キャップ335に当接する部分(当接位置CP)を含む傾斜面S320が中心軸CLに直交する面に対して傾斜する角度A320と、副弁体蒸気導入孔H330が中心軸CLに直交する面に対して傾斜する角度A330とが、同じであることが好ましい(つまり、A320=A330)。これにより、傾斜面S320に沿って流れた蒸気が副弁体蒸気導入孔H330によりスムーズに流入して通過するため、更に効果的に侵食防止を実現可能である。
【0056】
<第3実施形態>
[A]蒸気弁300cの構成
図4は、第3実施形態に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)の要部を模式的に示す断面図である。
図4では、副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分を拡大して示している。
図4において、右側の部分は、
図2と同様に、鉛直面(xz面)の一部断面を拡大して示しており、太い矢印が蒸気の流れに相当する。
図4において、左側の部分は、視線が中心軸CLの径方向に沿ったときに観察される様子を示している。
【0057】
本実施形態の蒸気弁300cは、
図4に示すように、副弁体蒸気導入孔H330の構成が、第1実施形態の場合と異なる。この点、および、関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合(
図2参照)と同様である。このため、重複する事項については、適宜、説明を省略する。
【0058】
図4に示すように、本実施形態では、副弁体蒸気導入孔H330は、蒸気が流入する入口部分の方が、蒸気が流出する出口部分よりも、断面積が広い部分を含むように形成されている。
【0059】
具体的には、本実施形態の副弁体蒸気導入孔H330は、第1の副弁体蒸気導入孔部H331と第2の副弁体蒸気導入孔部H332とを有する。
【0060】
第1の副弁体蒸気導入孔部H331は、例えば、断面が円形状であって、蒸気が流入する入口側から蒸気が流出する出口側に渡って一定の断面積で形成されている。
【0061】
第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、例えば、断面が円形状であって、蒸気が流入する入口において第1の副弁体蒸気導入孔部H331の周りを囲うように設けられ、蒸気が流入する入口側から蒸気が流出する出口側へ向かって断面積が狭くなるように形成されている。ここでは、第2の副弁体蒸気導入孔部H332において入口側の断面積は、第1の副弁体蒸気導入孔部H331の断面積よりも大きく、第2の副弁体蒸気導入孔部H332において出口側の断面積は、第1の副弁体蒸気導入孔部H331の断面積と同じである。
【0062】
なお、本実施形態では、第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、内周面が曲面であるが、平坦面であってもよい。つまり、第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、テーパー形状であってもよい。
【0063】
[B]蒸気の流れについて
本実施形態の蒸気弁300cでは、副弁体330が開状態になったとき、副弁体キャップ335の曲面S335と主弁体320の傾斜面S320との間の開方向AX1の側にギャップが形成され、そのギャップを蒸気が通過する(
図2参照)。このため、副弁体蒸気導入孔H330の入口には、ギャップを通過した蒸気が流入し、そして、副弁体蒸気導入孔H330では、蒸気が、中心軸CLに対して直交する方向に沿って流れる。
【0064】
蒸気には、ドレンや酸化物などの不純物が含まれる。このため、蒸気に含まれる不純物が副弁体蒸気導入孔H330の入口部分に衝突し、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分において侵食が生ずる場合がある。
【0065】
[C]まとめ
しかし、本実施形態の副弁体蒸気導入孔H330は、入口部分の方が出口部分よりも断面積が広くなるように形成されている。このため、本実施形態では、蒸気が副弁体蒸気導入孔H330にスムーズに流入して通過する。その結果、本実施形態では、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分において侵食が生ずることを防止可能である。
【0066】
[D]変形例
本実施形態の変形例について用いて説明する。
【0067】
図5および
図6は、第3実施形態の変形例に係る蒸気弁(主蒸気止め弁)の要部を模式的に示す断面図である。
図5および
図6では、
図4と同様に、副弁体蒸気導入孔H330が形成された部分を拡大して示している。
【0068】
図5および
図6に示すように、副弁体蒸気導入孔H330のうち、第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、上記の実施形態の場合(
図4参照)と異なり、蒸気が流入する入口において第1の副弁体蒸気導入孔部H331よりも閉方向AX2の側に設けられていてもよい。
【0069】
具体的には、
図5に示すように、第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、半円状であって、第1の副弁体蒸気導入孔部H331において閉方向AX2の側に位置する部分を囲うように設けられていてもよい。つまり、第1の副弁体蒸気導入孔部H331において開方向AX1の側に位置する部分に第2の副弁体蒸気導入孔部H332を設けなくてもよい。
図5から判るように、蒸気による浸食は、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分において閉方向AX2の側に位置する部分に特に蒸気に含まれる不純物が衝突する傾向にあるので生じやすい。しかし、本変形例では、上記の実施形態と同様に、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分には、第2の副弁体蒸気導入孔部H332が設けられているので、侵食が生ずることを防止可能である。本変形例では、蒸気流量の制御が容易になるメリットを更に有する。
【0070】
また、
図6に示すように、第2の副弁体蒸気導入孔部H332は、第1の副弁体蒸気導入孔部H331よりも閉方向AX2の側に位置する部分に設けられていてもよい。つまり、第1の副弁体蒸気導入孔部H331よりも閉方向AX2の側に位置する部分以外の部分に第2の副弁体蒸気導入孔部H332を設けなくてもよい。本変形例においても、副弁体蒸気導入孔H330の入口部分において浸食が生じやすい閉方向AX2側の部分に、第2の副弁体蒸気導入孔部H332が設けられている。このため、本変形例においても、侵食が生ずることを防止可能である。また、本変形例では、第1の副弁体蒸気導入孔部H331を形成する際に用いる工具で第2の副弁体蒸気導入孔部H332についても形成することができるため、加工作業を効率的に実施することができる。
【0071】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
100:蒸気タービンプラント,111:蒸気発生器,112:再熱器,141:高圧タービン,142:中圧タービン,145:発電機,300:蒸気弁,300J:蒸気弁,300b:蒸気弁,300c:蒸気弁,310:弁座,320:主弁体,330:副弁体,331:副弁体本体,335:副弁体キャップ,340:弁棒,341:止めピン,3310:副弁体管状部,3311:第1の副弁体本体部,3312:第2の副弁体本体部,3313:第3の副弁体本体部(副弁体管状部),3351:キャップ管状体部,3352:キャップ板状体部,AX:軸方向,AX1:開方向,AX2:閉方向,CL:中心軸,CP:当接位置,F331:副弁体蒸気流路,F3311:第1の副弁体蒸気流路部,F3312:第2の副弁体蒸気流路部,F3313:第3の副弁体蒸気流路部,H330:副弁体蒸気導入孔,H331:第1の副弁体蒸気導入孔部,H332:第2の副弁体蒸気導入孔部,K310:弁孔,P10:主蒸気管,P11:低温再熱蒸気管,P12:高温再熱蒸気管,S320:傾斜面,S320:収容空間,S335:曲面,V10a:主蒸気止め弁,V10b:蒸気加減弁,V12a:再熱蒸気止め弁,V12b:インターセプト弁