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特開2023-87857耐熱塗料、耐熱ガラス、加熱調理器及び調理器用トッププレート
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  • 特開-耐熱塗料、耐熱ガラス、加熱調理器及び調理器用トッププレート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087857
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】耐熱塗料、耐熱ガラス、加熱調理器及び調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20230619BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20230619BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230619BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C09D183/04
F24C15/10 B
C09D7/61
B32B17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202380
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA18A
4F100AG00B
4F100AK52A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13A
4F100DE00A
4F100GB71
4F100JJ03A
4F100JN01A
4F100JN28
4J038DL031
4J038HA376
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA14
4J038NA23
4J038PB06
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】塗布作業性に優れ、かつ耐熱樹脂層の変色を抑えることができる耐熱塗料を提供する。
【解決手段】加熱調理器において、ガラス基板上に配置される耐熱樹脂層を形成するために用いられる耐熱塗料であって、シリコーン樹脂成分(A)と、平均粒子径が0.2μm以下である透明微粒子(B)とを含む、耐熱塗料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器において、ガラス基板上に配置される耐熱樹脂層を形成するために用いられる耐熱塗料であって、
シリコーン樹脂成分(A)と、
平均粒子径が0.2μm以下である透明微粒子(B)とを含む、耐熱塗料。
【請求項2】
前記透明微粒子(B)が、無機微粒子である、請求項1に記載の耐熱塗料。
【請求項3】
前記透明微粒子(B)が、硫酸バリウム微粒子である、請求項1又は2に記載の耐熱塗料。
【請求項4】
耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記透明微粒子(B)の含有量が、1質量%以上、99質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の耐熱塗料。
【請求項5】
顔料(C)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐熱塗料。
【請求項6】
前記顔料(C)が着色顔料を含み、
耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記着色顔料の含有量が、40質量%以下である、請求項5に記載の耐熱塗料。
【請求項7】
顔料分散剤(D)を含み、
耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記顔料分散剤(D)の含有量が、1質量%以下である、請求項5又は6に記載の耐熱塗料。
【請求項8】
加熱調理器に用いられる耐熱ガラスであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の主面上に配置されている、耐熱樹脂層と、
を備え、
前記耐熱樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の耐熱塗料の硬化物層である、耐熱ガラス。
【請求項9】
前記耐熱樹脂層100質量%中、前記透明微粒子(B)の含有量が、1質量%以上、99質量%以下である、請求項8に記載の耐熱ガラス。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の耐熱ガラスを備える、加熱調理器。
【請求項11】
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面側に配置されている、耐熱樹脂層と、
を備え、
前記耐熱樹脂層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の耐熱塗料の硬化物層である、調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器において、ガラス基板上に配置される耐熱樹脂層を形成するために用いられる耐熱塗料に関する。また、本発明は、上記耐熱塗料を用いた耐熱ガラス及び該耐熱ガラスを用いた加熱調理器に関する。また、本発明は、上記耐熱塗料を用いた調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器には、耐熱ガラスが用いられている。上記耐熱ガラスは、ガラス基板と該ガラス基板上に配置された耐熱樹脂層とを備える。上記耐熱樹脂層は、一般に、シリコーン樹脂を含む(例えば、下記の特許文献1)。
【0003】
加熱調理器に用いられる上記耐熱ガラスの一例としては、調理器用トッププレートが挙げられる。上記調理器用トッププレートは、例えば、電磁調理器、ラジアントヒーター調理器及びガス調理器等の上部に備えられている。上記調理器用トッププレートが上記耐熱樹脂層を備えることにより、調理器内部の構造を隠蔽したり、耐熱性を高めたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017-033960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記耐熱樹脂層は、上記ガラス基板上に耐熱塗料を塗布した後、塗布された耐熱塗料を焼成して硬化させることにより形成される。
【0006】
上記耐熱塗料として、一般に、粘性調整剤を含む耐熱塗料が用いられている。粘性調整剤を含む耐熱塗料を用いることにより、ガラス基板上への耐熱塗料の塗布性を高めることができ、かつ塗布された耐熱塗料(耐熱塗料層)の形状維持性を高めることができる。このため、粘性調整剤を含む耐熱塗料を用いることにより、耐熱塗料の塗布作業性を良好にすることができる。
【0007】
しかしながら、上記耐熱塗料に用いられる従来の粘性調整剤は、有機物により構成されているため、上記耐熱塗料の焼成時や加熱調理器の使用時などの高温環境下において、該有機物が酸化したり、熱分解したり、炭化したりすることがある。このため、耐熱樹脂層が変色して、美観が損なわれることがある。
【0008】
本発明の目的は、塗布作業性に優れ、かつ耐熱樹脂層の変色を抑えることができる耐熱塗料を提供することである。また、本発明は、上記耐熱塗料を用いた耐熱ガラス及び該耐熱ガラスを用いた加熱調理器を提供することも目的とする。さらに本発明は、上記耐熱塗料を用いた調理器用トッププレートを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る耐熱塗料は、加熱調理器において、ガラス基板上に配置される耐熱樹脂層を形成するために用いられる耐熱塗料であって、シリコーン樹脂成分(A)と、平均粒子径が0.2μm以下である透明微粒子(B)とを含むことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る耐熱塗料では、前記透明微粒子(B)が、無機微粒子であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る耐熱塗料では、前記透明微粒子(B)が、硫酸バリウム微粒子であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る耐熱塗料では、耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記透明微粒子(B)の含有量が、1質量%以上、99質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る耐熱塗料は、顔料(C)を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係る耐熱塗料では、前記顔料(C)が着色顔料を含み、耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記着色顔料の含有量が、40質量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る耐熱塗料は、顔料分散剤(D)を含み、耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、前記顔料分散剤(D)の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る耐熱ガラスは、加熱調理器に用いられる耐熱ガラスであって、ガラス基板と、前記ガラス基板の一方の主面上に配置されている、耐熱樹脂層と、を備え、前記耐熱樹脂層が、上述した耐熱塗料の硬化物層であることを特徴としている。
【0017】
本発明に係る耐熱ガラスでは、前記耐熱樹脂層100質量%中、前記透明微粒子(B)の含有量が、1質量%以上、99質量%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る加熱調理器は、上述した耐熱ガラスを備えることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面側に配置されている、耐熱樹脂層と、を備え、前記耐熱樹脂層が、上述した耐熱塗料の硬化物層であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塗布作業性に優れ、かつ耐熱樹脂層の変色を抑えることができる耐熱塗料を提供することができる。また、本発明によれば、上記耐熱塗料を用いた耐熱ガラス及び該耐熱ガラスを用いた加熱調理器を提供することができる。さらに本発明によれば、上記耐熱塗料を用いた調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
[耐熱塗料]
本発明に係る耐熱塗料は、加熱調理器において、ガラス基板上に配置される耐熱樹脂層を形成するために用いられる耐熱塗料である。なお、上記加熱調理器において、上記耐熱樹脂層が、上記ガラス基板上に、直接配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。本発明に係る耐熱塗料を硬化させることにより、耐熱塗料の硬化物層である耐熱樹脂層を形成させることができる。
【0024】
本発明に係る耐熱塗料は、シリコーン樹脂成分(A)と、平均粒子径が0.2μm以下である透明微粒子(B)とを含む。
【0025】
本発明に係る耐熱塗料は、上記の構成を備えるので、塗布作業性に優れ、かつ耐熱樹脂層の変色を抑えることができる。
【0026】
透明微粒子(B)は、粘性調整剤として良好に機能する。
【0027】
粘性調整剤は、耐熱塗料に適切な流動性を付与する機能を有するものである。すなわち、せん断応力が高いときには耐熱塗料の粘度を低下させる一方、せん断応力が低いときには耐熱塗料の粘度を向上させる働きをする。本発明に係る耐熱塗料では、塗布時の粘度を適度に低下させることができるので、塗布性を高めることができ、また、塗布後の粘度を適度に大きくすることができるので、塗布された耐熱塗料(耐熱塗料層)の形状が良好に維持される。そのため、耐熱塗料の塗布作業性を高めることができる。
【0028】
また、本発明に係る耐熱塗料では、該耐熱塗料の焼成時や加熱調理器の使用時などの高温環境下に晒された場合であっても、耐熱樹脂層の変色を抑えることができる。したがって、本発明に係る耐熱塗料では、耐熱樹脂層を所望の色調に調整することができる。なお、変色が生じやすい従来の耐熱樹脂層では、該耐熱樹脂層に淡色系の色調を付与することは困難であるものの、本発明に係る耐熱塗料では、耐熱樹脂層に淡色系の色調を良好に付与することができる。
【0029】
また、本発明に係る耐熱塗料では、保管時の耐熱塗料の粘度を適度に大きくすることができる。したがって、本発明に係る耐熱塗料では、比重の大きい成分が沈降しにくく、貯蔵安定性を高めることができる。
【0030】
以下、耐熱塗料に含まれる各成分などについて説明する。
【0031】
(シリコーン樹脂成分(A))
上記耐熱塗料は、シリコーン樹脂成分(本明細書において、シリコーン樹脂成分(A)と記載することがある)を含む。シリコーン樹脂成分(A)は、硬化反応により、硬化可能な成分である。シリコーン樹脂成分(A)は、硬化により、シリコーン樹脂の硬化物を形成可能である限り特に限定されない。シリコーン樹脂成分(A)は、シリコーン樹脂前駆体であってもよい。シリコーン樹脂成分(A)を用いることにより、耐熱性の高い樹脂層を得ることができる。シリコーン樹脂成分(A)として、従来公知のシリコーン樹脂成分を使用可能である。シリコーン樹脂成分(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
シリコーン樹脂成分(A)は、シラノール基を有するシリコーン化合物であることが好ましい。
【0033】
得られる耐熱樹脂層の耐熱性をより一層高める観点からは、シリコーン樹脂成分(A)は、ケイ素原子にメチル基又はフェニル基が直接結合したシリコーン化合物であることが好ましい。この場合に、ケイ素原子にメチル基が直接結合していてもよく、ケイ素原子にフェニル基が直接結合していてもよく、同一のケイ素原子にメチル基とフェニル基とが直接結合していてもよい。
【0034】
シリコーン樹脂成分(A)は、モノマー(単量体)を含んでいてもよく、シリコーンオリゴマーを含んでいてもよく、シリコーン樹脂を含んでいてもよい。シリコーン樹脂成分(A)は、シリコーンモノマー、シリコーンオリゴマー又はシリコーン樹脂であることが好ましい。なお、上記シリコーン樹脂は、変性シリコーン樹脂であってもよい。
【0035】
シリコーン樹脂成分(A)として使用可能な市販品としては、例えば、信越化学工業社製「ストレートシリコーンワニスKR282」、「ストレートシリコーンワニスKR271」、「ストレートシリコーンワニスKR311」、「変性シリコーンワニスKR211」、「シリコーンアルキッドワニス」及び「シリコーンエポキシワニスES100N」、並びにモメンティブ社製「TSR-145」等が挙げられる。
【0036】
上記耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、シリコーン樹脂成分(A)の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記シリコーン樹脂成分(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる耐熱樹脂層の耐熱性及び硬度をより一層高めることができる。
【0037】
なお、本明細書において溶剤とは、他の成分を溶かしたり、希釈させたりする性質を有し、かつ乾燥後の塗膜中に残存しにくい物質の総称である。例えば、有機溶剤としては、有機溶剤労働安全衛生法施行令別表第六の二に掲げる第二種有機溶剤が挙げられる。
【0038】
(透明微粒子(B))
上記耐熱塗料は、平均粒子径が0.2μm以下である透明微粒子(本明細書において、透明微粒子(B)と記載することがある)を含む。透明微粒子(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
透明微粒子(B)における「透明」微粒子とは、以下を満足する微粒子である。すなわち、透明微粒子(B)は、透明微粒子(B)10質量%とシリコーン樹脂90質量%からなる厚み10μmの薄膜を得たときに、上記薄膜の波長440nm~730nmにおける透過率の最小値が80%以上である性質を示す微粒子である。なお、厚み10μmの上記薄膜は、より具体的には、透明微粒子(B)とシリコーン樹脂(モメンティブ社製「TSR-145」)とを用いて形成させることができる。
【0040】
上記薄膜の上記透過率は、透過率測定器(例えば、朝日分光社製「TLV-304-BP」)を用いて測定することができる。
【0041】
透明微粒子(B)は、無機微粒子であることが好ましい。この場合には、耐熱樹脂層の変色をより一層効果的に抑えることができる。
【0042】
透明微粒子(B)としては、硫酸バリウム微粒子、酸化チタン微粒子及び酸化亜鉛微粒子等が挙げられる。
【0043】
透明微粒子(B)は、硫酸バリウム微粒子であることが好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、硫酸バリウム微粒子は、熱、空気及び薬品に対する耐性が高く、安定性に優れる無機微粒子である。そのため、硫酸バリウム微粒子を用いることにより、耐熱樹脂層の変色を抑えるという効果がかなり効果的に発揮される。上記硫酸バリウム微粒子は、超微粒子沈降性硫酸バリウムであることが好ましい。
【0044】
本発明の効果を発揮する観点から、透明微粒子(B)の平均粒子径は0.2μm以下である。
【0045】
透明微粒子(B)の平均粒子径は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。透明微粒子(B)の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。特に、透明微粒子(B)の平均粒子径が上記上限以下であると、重量当たりの表面積を大きくすることができるので、透明微粒子(B)間の相互作用が効果的に働き、増粘効果を高めることができる。
【0046】
透明微粒子(B)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される体積分布から導かれるメディアン径である。
【0047】
上記耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、透明微粒子(B)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記透明微粒子(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0048】
(顔料(C))
上記耐熱塗料は、顔料(本明細書において、顔料(C)と記載することがある)を含むことが好ましい。顔料(C)を用いることにより、調理器の意匠性を高めたり、調理器内部の隠蔽性を高めたりすることができる。顔料(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
顔料(C)としては、着色顔料及び体質顔料等が挙げられる。顔料(C)は、着色顔料を含んでいてもよく、体質顔料を含んでいてもよく、着色顔料と体質顔料とを含んでいてもよい。顔料(C)は、調理器の意匠性及び調理器内部の隠蔽性等を考慮して、複数種類を適宜組み合わせて使用可能である。
【0050】
上記着色顔料は、有色の無機物である限り、特に限定されない。上記着色顔料としては、例えば、TiO粉末、ZrO粉末及びZrSiO粉末等の白色の顔料粉末;Coを含む青色の無機顔料粉末;Coを含む緑色の無機顔料粉末;Ti-Sb-Cr系及びTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末;Co-Si系の赤色の無機顔料粉末;Feを含む茶色の無機顔料粉末;Cuを含む黒色の無機顔料粉末等が挙げられる。上記着色顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
Coを含む青色の無機顔料粉末としては、Co-Al系及びCo-Al-Ti系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末としては、CoAl粉末等が挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末としては、CoAl-TiO-LiO粉末等が挙げられる。
【0052】
Coを含む緑色の無機顔料粉末としては、Co-Al-Cr系及びCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末としては、Co(Al,Cr)粉末等が挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末としては、(Co,Ni,Zn)TiO粉末等が挙げられる。
【0053】
Feを含む茶色の無機顔料粉末としては、Fe-Zn系の無機顔料粉末等が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末としては、(Zn,Fe)Fe粉末等が挙げられる。
【0054】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末としては、Cu-Cr系の無機顔料粉末、及びCu-Fe系の無機顔料粉末等が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末としては、Cu(Cr,Mn)粉末、及びCu-Cr-Mn粉末等が挙げられる。Cu-Fe系の無機顔料粉末としては、Cu-Fe-Mn粉末等が挙げられる。
【0055】
上記体質顔料は、着色顔料とは異なる無機顔料粉末である。上記体質顔料としては、特に限定されないが、例えば、鱗片状、針状又は球状の無機顔料粉末を用いることができる。体質顔料を用いることにより、耐熱ガラス及び調理器用トッププレートの機械的強度を高めることができる。上記体質顔料としては、例えば、タルク及びマイカ等が挙げられる。上記体質顔料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
また、顔料(C)の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下である。上記顔料(C)の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、耐熱塗料中での顔料(C)の分散性をより一層高めることができる。
【0057】
顔料(C)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される体積分布から導かれるメディアン径である。
【0058】
上記耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、顔料(C)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。上記顔料(C)の含有量が上記下限以上であると、調理器の意匠性及び調理器内部の隠蔽性をより一層高めることができる。上記顔料(C)の含有量が上記上限以下であると、耐熱ガラス及び調理器用トッププレートの耐熱性及び耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0059】
上記耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、上記着色顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記着色顔料の含有量が上記下限以上であると、調理器の意匠性及び調理器内部の隠蔽性をより一層高めることができる。上記着色顔料の含有量が上記上限以下であると、耐熱ガラス及び調理器用トッププレートの耐熱性及び耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0060】
上記耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、上記体質顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。上記体質顔料の含有量が上記下限以上であると、調理器の意匠性及び調理器内部の隠蔽性をより一層高めることができる。上記体質顔料の含有量が上記上限以下であると、耐熱ガラス及び調理器用トッププレートの耐熱性及び耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0061】
(顔料分散剤(D))
上記耐熱塗料は、顔料分散剤(本明細書において、顔料分散剤(D)と記載することがある)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。顔料分散剤(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
顔料分散剤(D)としては、アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0063】
耐熱樹脂層の変色を抑える観点からは、上記耐熱塗料中の顔料分散剤(D)の含有量は少ないことが好ましい。また、顔料分散剤(D)を含有させることで耐熱塗料が安定化し、透明微粒子(B)間の相互作用が小さくなり、その結果、耐熱塗料の増粘効果が小さくなるため、上記耐熱塗料中の顔料分散剤(D)の含有量は少ないほど好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、顔料分散剤(D)の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、耐熱塗料は、顔料分散剤(D)を実質的に含有しないことが特に好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0064】
もっとも、顔料(C)の分散性を高める観点からは、耐熱塗料中の溶剤を除く成分100質量%中、顔料分散剤(D)を、3質量%以上で含有させてもよく、5質量%以上で含有させてもよい。
【0065】
(溶剤)
上記耐熱塗料は、溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤を用いることにより、耐熱塗料に含まれる成分の溶解性を向上させたり、耐熱塗料の粘度を良好に調整したりすることができる。
【0066】
上記溶剤としては、キシレン等の有機溶剤が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記耐熱塗料中の溶剤の含有量は特に限定されない。上記耐熱塗料中の溶剤の含有量は目的とする耐熱塗料の粘度等に応じて適宜変更可能である。上記耐熱塗料100質量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0068】
(他の成分)
上記耐熱塗料は、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、透明微粒子(B)に相当しない有機系又は無機系の粘性調整剤、レベリング剤、消泡剤、架橋剤、硬化触媒等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
[耐熱ガラス及び加熱調理器]
本発明に係る耐熱ガラスは、加熱調理器に用いられる耐熱ガラスであって、ガラス基板と、上記ガラス基板の一方の主面上に配置されている耐熱樹脂層とを備える。本発明に係る耐熱ガラスでは、上記耐熱樹脂層が、上述した耐熱塗料の硬化物層である。
【0070】
上記ガラス基板として、加熱調理器の耐熱ガラスに用いられている従来のガラス基板を使用可能である。
【0071】
上記耐熱ガラスにおいて、上記耐熱樹脂層は、1層の構造を有していてもよく、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。また、上記耐熱ガラスにおいて、上記耐熱樹脂層は、上記ガラス基板の一方の主面の表面全体に配置されていてもよく、部分的に配置されていてもよい。
【0072】
上記耐熱ガラスにおいて、上記耐熱樹脂層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0073】
上記耐熱ガラスにおいて、上記耐熱樹脂層100質量%中、上記透明微粒子(B)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、好ましくは99質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0074】
本発明に係る加熱調理器は、上記耐熱ガラスを備える。上記加熱調理器では、上記耐熱ガラスの上記耐熱樹脂層側が加熱される側となるように、上記耐熱ガラスが配置されていることが好ましい。
【0075】
[調理器用トッププレート及びその製造方法]
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有するガラス基板と、上記ガラス基板の上記裏面側に配置されている耐熱樹脂層とを備える。本発明に係る調理器用トッププレートでは、上記耐熱樹脂層が、上述した耐熱塗料の硬化物層である。
【0076】
上記調理器用トッププレートにおいて、上記耐熱樹脂層は、1層の構造を有していてもよく、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。
【0077】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0078】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0079】
図1に示す調理器用トッププレート1は、ガラス基板2と耐熱樹脂層3とを備える。
【0080】
ガラス基板2は、調理面2a及び裏面2bを有する。調理面2a及び裏面2bは、ガラス基板2において、互いに対向する表面である。調理面2aは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2bは、調理器の内部側において光源や加熱装置と対向する面である。従って、調理面2a及び裏面2bは、表裏の関係にある。
【0081】
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過するガラス基板であることが好ましい。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、調理器用トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。なお、ガラス基板における「透明」とは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0082】
調理器用トッププレートは、加熱及び冷却が繰り返しなされる。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有することが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましく、-5×10-7/℃~+5×10-7/℃の範囲内であることが特に好ましい。低膨張な結晶化ガラスの具体例としては、例えば、LAS系結晶化ガラスである日本電気硝子社製「N-0」等が挙げられる。なお、ガラス基板として、ホウケイ酸ガラス基板などを用いてもよい。
【0083】
ガラス基板2の厚みは、特に限定されない。ガラス基板2の厚みは、光透過率などに応じて適宜設定することができる。ガラス基板2の厚みは、例えば、2mm~6mm程度とすることができる。
【0084】
耐熱樹脂層3は、ガラス基板2の裏面2b側に配置されている。耐熱樹脂層3は、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。ガラス基板2の裏面2bと耐熱樹脂層3とは接している。耐熱樹脂層3は、1層の構造を有する。耐熱樹脂層3は、シリコーン樹脂成分(A)と透明微粒子(B)とを含む上述した耐熱塗料の硬化物層である。したがって、耐熱樹脂層3は、シリコーン樹脂と透明微粒子(B)とを含む。
【0085】
耐熱樹脂層3の厚みは、特に限定されない。耐熱樹脂層3の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。耐熱樹脂層3の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、繰り返しなされる加熱及び冷却による耐熱樹脂層3のガラス基板2からの剥離をより確実に防止できると共に、調理器用トッププレート1の意匠性や調理器内部の隠蔽性をより一層向上させることができる。
【0086】
以下、調理器用トッププレート1の製造方法について説明する。
【0087】
調理器用トッププレート1の製造方法は、ガラス基板2の裏面2b上に、上述した耐熱塗料を塗布する工程(塗布工程)と、ガラス基板2を焼成することにより、耐熱塗料を硬化させて耐熱樹脂層3を形成する工程(硬化工程)とを備えることが好ましい。
【0088】
上記塗布工程において、上記耐熱塗料の塗布方法は特に限定されない。上記耐熱塗料の塗布方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法及びスプレー法等が挙げられる。また、耐熱塗料の塗布厚みは、所望とする耐熱樹脂層の厚みにより適宜変更可能である。
【0089】
上記硬化工程では、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を焼成する。焼成により耐熱塗料は硬化する。焼成条件は、耐熱塗料が硬化する条件である限り特に限定されない。なお、上記焼成の前に、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を乾燥及び/又は加熱してもよい。乾燥や加熱により、耐熱塗料に含まれる溶剤が揮発しやすくなる。
【0090】
なお、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を乾燥する際は、室温で放置してもよく、風乾してもよい。また、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を加熱する際の加熱温度は、例えば、20℃以上、又は30℃以上、200℃以下、又は100℃以下とすることができる。また、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を加熱する際の加熱時間は、例えば、1分以上、1時間以下とすることができる。
【0091】
ガラス基板2の焼成温度は、200℃以上であってもよく、250℃以上であってもよく、400℃以下であってもよく、450℃以下であってもよい。焼成時間としては、例えば、10分以上、又は30分以上、1時間以下とすることができる。
【0092】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0093】
図2に示す調理器用トッププレート1Aは、ガラス基板2と耐熱樹脂層3Aとを備える。図2に示す調理器用トッププレート1Aと、図1に示す調理器用トッププレート1とでは、耐熱樹脂層の構成が異なる。
【0094】
耐熱樹脂層3Aは、ガラス基板2の裏面2b側に配置されている。耐熱樹脂層3Aは、第1の耐熱樹脂層31と、第2の耐熱樹脂層32とを有する。耐熱樹脂層3Aは、2層の構造を有する。第1の耐熱樹脂層31がガラス基板2の裏面2b上に配置されており、第2の耐熱樹脂層32が第1の耐熱樹脂層31のガラス基板2側とは反対側の表面上に配置されている。ガラス基板2の裏面2bと耐熱樹脂層3Aとは接しており、ガラス基板2の裏面2bと第1の耐熱樹脂層31とは接している。第1の耐熱樹脂層31及び第2の耐熱樹脂層32はそれぞれ、シリコーン樹脂成分(A)と透明微粒子(B)とを含む上述した耐熱塗料の硬化物層である。第1の耐熱樹脂層31を形成するための耐熱塗料の組成と、第2の耐熱樹脂層32を形成するための耐熱塗料の組成とは異なる。
【0095】
第1の耐熱樹脂層31及び第2の耐熱樹脂層32はそれぞれ、着色顔料を含んでいてもよい。この場合に、第1の耐熱樹脂層31が第1の着色顔料を含んでいてもよく、第2の耐熱樹脂層32が第1の着色顔料とは異なる第2の着色顔料を含んでいてもよい。この場合、意匠性や調理器内部の隠蔽性を考慮して、適宜の着色顔料の組み合わせを選定することができる。
【0096】
第1の耐熱樹脂層31及び第2の耐熱樹脂層32の厚みは、特に限定されない。第1の耐熱樹脂層31及び第2の耐熱樹脂層32の厚みはそれぞれ、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。第1,第2の耐熱樹脂層31,32の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、繰り返しなされる加熱及び冷却による耐熱樹脂層3Aのガラス基板2からの剥離をより確実に防止できると共に、調理器用トッププレート1Aの意匠性や調理器内部の隠蔽性をより一層向上させることができる。
【0097】
耐熱樹脂層3A全体の厚み(第1の耐熱樹脂層31と第2の耐熱樹脂層32との合計厚み)も、特に限定されない。耐熱樹脂層3A全体の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、好ましくは70μm以下、より好ましくは30μm以下である。耐熱樹脂層3A全体の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、繰り返しなされる加熱及び冷却による耐熱樹脂層3Aのガラス基板2からの剥離をより確実に防止できると共に、調理器用トッププレート1Aの意匠性や調理器内部の隠蔽性をより一層向上させることができる。
【0098】
以下、調理器用トッププレート1Aの製造方法について説明する。
【0099】
調理器用トッププレート1Aの製造方法は、ガラス基板2の裏面2b上に、第1の耐熱塗料を塗布する工程(第1の塗布工程)と、ガラス基板2を焼成することにより、第1の耐熱塗料を硬化させて第1の耐熱樹脂層31を形成する工程(第1の硬化工程)と、第1の耐熱樹脂層31のガラス基板2側とは反対側の表面上に第2の耐熱塗料を塗布する工程(第2の塗布工程)と、ガラス基板2を焼成することにより、第2の耐熱塗料を硬化させて第2の耐熱樹脂層32を形成する工程(第2の硬化工程)とを備えることが好ましい。
【0100】
本実施形態では、第1の耐熱塗料及び第2の耐熱塗料のそれぞれが、上述した耐熱塗料であるが、本発明では、第1の耐熱塗料及び第2の耐熱塗料の内の少なくとも一方が上述した耐熱塗料であればよい。
【0101】
上記第1,第2の塗布工程において、上記第1,第2の耐熱塗料の塗布方法は特に限定されない。また、上記第1,第2の耐熱塗料の塗布厚みは、所望とする第1,第2の耐熱樹脂層の厚みにより適宜変更可能である。
【0102】
上記第1,第2の硬化工程では、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を焼成する。焼成により耐熱塗料は硬化する。焼成条件は、第1,第2の耐熱塗料が硬化する条件である限り特に限定されない。なお、上記焼成の前に、耐熱塗料が塗布されたガラス基板2を乾燥及び/又は加熱してもよい。乾燥や加熱により第1,第2の耐熱塗料に含まれる溶剤が揮発しやすくなる。
【0103】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的断面図である。
【0104】
図3に示す調理器用トッププレート1Bは、ガラス基板2と耐熱樹脂層3Bと無機遮光層4とを備える。図3に示す調理器用トッププレート1Bと、図1に示す調理器用トッププレート1とでは、無機遮光層の有無が異なる。
【0105】
無機遮光層4は、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。耐熱樹脂層3Bは、無機遮光層4のガラス基板2側とは反対側の表面上に配置されている。耐熱樹脂層3Bは、無機遮光層4を介して、ガラス基板2の裏面2b上に配置されている。耐熱樹脂層3Bは、シリコーン樹脂成分(A)と透明微粒子(B)とを含む上述した耐熱塗料の硬化物層である。
【0106】
無機遮光層4は、調理器内部の構造を隠蔽することを目的として設けられる遮光層である。従って、耐熱樹脂層3Bとともに無機遮光層4を設けることにより、調理面2a側から視たときに、調理器内部の構造をより効果的に隠蔽でき、調理器用トッププレート1Bの美観性をより一層高めることができる。
【0107】
無機遮光層4は、無機物を含む層であり、可視光の透過率が低い層であれば、特に限定されない。無機遮光層4は、例えば、着色顔料とガラスとを含む層である。この場合、着色顔料としては、例えば、Cu-Cr-Mn系黒色無機顔料を用いることができる。また、ガラスとしては、例えば、B-SiO系ガラス粉末を用いることができる。なお、無機遮光層4は、チタン等の金属層であってもよい。
【0108】
本実施形態において、無機遮光層4は、着色顔料とガラスとを含む、多孔質膜である。このように無機遮光層4は、多孔質膜であることが望ましいが、実質的に空隙を有さない、緻密な膜であってもよい。無機遮光層4が緻密な膜であれば、接着剤がガラス基板2側にしみ出しにくくなり、調理面2a側から視たときに、シミとしてより目立ちにくくなる。
【0109】
無機遮光層4の厚みは、特に限定されない。無機遮光層4の厚みは、例えば、無機遮光層4の光透過率や、機械的強度、あるいは熱膨張係数などに応じて適宜設定することができる。なお、無機遮光層4は、通常、ガラス基板2と異なる熱膨張係数を有する。このため、繰り返しの加熱及び冷却により無機遮光層4が損傷する場合がある。
【0110】
この損傷をより一層抑制する観点から、無機遮光層4の厚みは、薄い方が好ましい。無機遮光層4の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0111】
調理器用トッププレート1Bの製造方法についても、特に限定されず、無機遮光層4を形成すること以外は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の方法により製造することができる。
【0112】
無機遮光層4の形成方法は、特に限定されない。無機遮光層4は、例えば、下記の方法により形成することができる。
【0113】
まず、着色顔料とガラス粉末との混合粉末に溶媒を加えてペースト化する。得られたペーストをガラス基板2の裏面2b上に、スクリーン印刷法などを用いて塗布し、乾燥させる。その後、焼成することにより無機遮光層4を形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用するガラス粉末の組成などに応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、200℃~900℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、10分~1時間程度とすることができる。
【0114】
なお、無機遮光層4が金属層である場合は、スパッタリング法及びCVD法等により無機遮光層4を形成させることができる。
【0115】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0116】
以下の耐熱塗料の材料を用意した。
【0117】
<シリコーン樹脂成分(A)>
フェニルメチルシリコーン樹脂(信越化学工業社製「KR-282」、市販品中にキシレンを50質量%含む)
【0118】
<粘性調整剤>
透明微粒子(B):
硫酸バリウム微粒子(堺化学工業社製「BF-40」、平均粒子径:0.01μm)
透明微粒子(B)に相当しない粘性調整剤:
硫酸バリウム微粒子(堺化学工業社製「B-34」、平均粒子径:0.3μm)
ウレア系増粘剤(BYK社製「BYK-420」)
アマイド系増粘剤(楠本化成社製「ディスパロン6900-10X」)
【0119】
<顔料(C)>
着色顔料(白顔料、石原産業社製「CR-90」)
【0120】
<溶剤>
キシレン
【0121】
以下のガラス基板を用意した。
【0122】
透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃、厚み:4mm)
【0123】
(実施例1)
耐熱塗料の作製:
下記の表1に示す配合成分を配合(配合単位は質量部)し、下記の表1に示す組成を有する耐熱塗料(ペースト)を作製した。なお、表中、シリコーン樹脂成分(A)の含有量は、シリコーン樹脂の含有量ではなく、市販品(信越化学工業社製「KR-282」)の含有量で示した。
【0124】
調理器用トッププレートの作製:
得られた耐熱塗料を、ガラス基板の表面上に塗布厚みが15μmとなるように、スクリーン印刷した。次いで、300℃及び30分間の条件でガラス基板を焼成し、耐熱塗料を硬化させた。このようにして、ガラス基板の表面上に耐熱樹脂層が配置された調理器用トッププレート(1)を得た。また、スクリーン印刷後、320℃及び30分間の条件、340℃及び30分間の条件、360℃及び30分間の条件でガラス基板をそれぞれ焼成したこと以外は調理器用トッププレート(1)の作製方法と同様にして、調理器用トッププレート(2)~(4)を得た。
【0125】
(実施例2)
透明微粒子(B)の配合量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、耐熱塗料及び調理器用トッププレート(1)~(4)を作製した。
【0126】
(比較例1)
透明微粒子(B)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、耐熱塗料及び調理器用トッププレート(1)~(4)を作製した。
【0127】
(比較例2~4)
透明微粒子(B)の代わりに、表1に示す粘性調整剤を表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、耐熱塗料及び調理器用トッププレート(1)~(4)を作製した。
【0128】
[評価]
(1)耐熱塗料の塗布作業性(耐熱塗料の粘度)
得られた耐熱塗料の25℃及び5rpmでの粘度(1)、25℃及び10rpmでの粘度(2)、25℃及び50rpmでの粘度(3)を測定した。なお、粘度(1)~(3)は、東機産業社製「B型粘度計TVB-10H」を用いて測定した。また、粘度(1)と粘度(3)との比(粘度(1)/粘度(3))を算出した。
【0129】
(2)耐熱樹脂層の変色
300℃で30分間焼成して得られた上記調理器用トッププレート(1)における耐熱樹脂層と、320℃、340℃又は360℃で30分間焼成して得られた上記調理器用トッププレート(2)~(4)における耐熱樹脂層とのL表色系における色差ΔEを測定した。色差ΔEは、色差計(コニカミノルタ社製「CM600d」)を用いて、調理器用トッププレートの調理面側から評価した。
【0130】
耐熱塗料の組成及び結果を下記の表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例1,2で得られた耐熱塗料では、上記粘度(1)の値が適度に大きく、かつ上記粘度(3)の値が適度に小さかった。実施例1,2で得られた耐熱塗料は、塗布時において良好な流動性を有するので、ガラス基板上に良好に塗布することができた。また、実施例1,2で得られた耐熱塗料は、塗布後に粘度が適度に大きくなるので、塗布された耐熱塗料(耐熱塗料層)の形状が焼成されるまで良好に維持された。そのため、塗布作業性を高めることができた。また、実施例1,2で得られた耐熱塗料では、耐熱樹脂層の変色が効果的に抑えられていた。
【0133】
一方、比較例1で得られた耐熱塗料は、上記粘度(1)の値が小さかった。そのため、耐熱塗料を塗布したときに、塗布された耐熱塗料(耐熱塗料層)の形状が崩れやすく、塗布作業性に劣っていた。また、比較例2,3で得られた耐熱塗料では、得られた耐熱樹脂層に変色が見られた。また、比較例4で得られた耐熱塗料は、上記粘度(1)の値が小さかった。そのため、耐熱塗料を塗布したときに、塗布された耐熱塗料(耐熱塗料層)の形状が崩れやすく、塗布作業性に劣っていた。
【符号の説明】
【0134】
1,1A,1B…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…調理面
2b…裏面
3,3A,3B…耐熱樹脂層
4…無機遮光層
31…第1の耐熱樹脂層
32…第2の耐熱樹脂層
図1
図2
図3