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特開2023-8786がんぎ車、がんぎ車を製造するための工具、およびがんぎ車を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008786
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】がんぎ車、がんぎ車を製造するための工具、およびがんぎ車を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
G04B15/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022032309
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】21183466.8
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ビヨ-ライエ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・エフェリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヴェラルド
(57)【要約】
【課題】がんぎ車を製造するための方法、およびがんぎ車を製造するための方法を実現するための切削工具を提供すること。
【解決手段】本発明は、
- 半径方向のアーム(13)によって外縁(12)に接続されたハブ(11)、および外縁(12)の周囲の周りに規則的に分散した歯(14)を備えるがんぎ車時計仕掛けを作製するステップと、
- がんぎ車時計仕掛けと同軸に整列した切削工具(20)によって個々の歯(14)の自由端の断面の縮小を同時に機械加工するステップと
を含む、がんぎ車(10)を製造するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんぎ車(10)を製造するための方法であって、
- 半径方向のアーム(13)によって外縁(12)に接続されたハブ(11)、および前記外縁(12)の周囲の周りに規則的に分散した歯(14)を備える未完成品のがんぎ車時計仕掛けを作製するステップと、
- 前記がんぎ車時計仕掛けと同軸に整列した切削工具(20)によって個々の歯(14)の自由端の断面の縮小を同時に機械加工するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
断面の前記縮小は、ベベル(143)を含む縮小された端部部分(140)によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械加工される断面の前記縮小は、前記がんぎ車時計仕掛けが刻まれる平面に対して直角の回転表面(142)の形を有する縮小された端部部分(140)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
断面の前記縮小は、前記がんぎ車時計仕掛けが刻まれる平面に対して実質的に平行の平らな表面(144)を含む縮小された端部部分(140)によって形成される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
がんぎ車の前記時計仕掛けを作製する前記ステップはLIGA法によって実施される、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記機械加工するステップはフライス削りによって実施される、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記機械加工するステップは、
- その回転軸が前記がんぎ車時計仕掛けの回転軸と同じになるように前記切削工具(20)を位置決めするステップと、
- 前記がんぎ車時計仕掛けの前記回転軸に対して同軸の方向に沿って、前記がんぎ車時計仕掛けに向かう並進で前記切削工具(20)を案内し、縮小された端部部分(140)を単一の切削操作で生成するために前記がんぎ車時計仕掛けの個々の歯(14)の端部の一部をブランキングするステップと、
- 前記工具を除去するステップと
の連続した動作を含む、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のがんぎ車(10)を製造するための方法を実現するための切削工具(20)であって、回転駆動されることが意図された実質的に円筒状のボディー(21)を含み、前記円筒状のボディー(21)は、前記ボディー(21)の直径面内で延在する切削縁(220)を有する少なくとも1つの切削歯(22)をその端部のうちの1つに備え、前記切削縁(220)は、機械加工される部品の上に少なくとも1つの回転表面(142)を生成するように適合された部分を有し、その回転軸は前記工具の回転軸と同軸であることを特徴とする切削工具(20)。
【請求項9】
前記切削縁(220)は、「傾斜部分」(221)と呼ばれる、前記工具の前記回転軸に対して鈍角または鋭角を形成する部分を備える、請求項8に記載の切削工具(20)。
【請求項10】
前記切削縁(220)は、「直線部分」と呼ばれる、前記工具の前記回転軸に対して平行の部分を備える、請求項8に記載の切削工具(20)。
【請求項11】
前記切削縁(220)は、「直角部分」(222)と呼ばれる、前記軸に対して直角を形成する部分を備える、請求項9または10に記載の切削工具(20)。
【請求項12】
前記切削縁(220)は、機械加工された表面の機能構造または装飾構造を生成するように適合される輪郭を有する、請求項8から11のうちいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計学の分野、詳細には機械式時計ムーブメントの分野に存する。
【0002】
より詳細には、本発明は、がんぎ車、がんぎ車を製造するための工具、およびがんぎ車を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんぎ車は時計学の分野でよく知られており、これは、パレットを介してテンプ輪の発振を維持するために、がんぎ車にエネルギーを供給する主ぜんまいに接続されることが意図される。
【0004】
より詳細には、がんぎ車は、半径方向の分岐によってハブに接続された外縁の周囲の周りに分散した歯を含む。パレットは、がんぎ車の歯と協働することが意図されたパレット-ストーンを含む。
【0005】
この協働は摩擦をもたらし、この摩擦の強度は、がんぎ車の耐用年数を長くし、また、時間測定の精度を高くするために、最小にすることが何年にもわたって探求されている。
【0006】
最も常習的な解決法は、前記歯と収集パレットの間の接触表面を縮小するために、がんぎ車の個々の歯の端部にベベルを生成することである。この構造は前記歯の端部の潤滑と結合されている。
【0007】
これらの解決法は満足のいくものであるが、エスケープの製造がいくつかの困難をもたらす。詳細には、個々の歯のベベルは、特殊な機械加工によって個別に製造される。
【0008】
比較的遅いことに加えて、この製造方法は、時計学的使用によって要求される厳しい公差を保証する問題をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、容易に、かつ、速やかにがんぎ車を得ることができる解決法を提案することによって上記の欠点を解決し、がんぎ車の寸法要求事項に対する考慮事項が保証される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、
- 回転軸の周りに回転駆動されることが意図された未完成品のがんぎ車時計仕掛け(エボーシュ)であって、半径方向のアームによって外縁に接続されたハブ、および外縁の周囲の周りに規則的に分散した歯を備えるがんぎ車時計仕掛けを製造するステップと、
- がんぎ車時計仕掛けと同軸に整列した切削工具によって個々の歯の自由端の断面の縮小を同時に機械加工するステップと
を含む、がんぎ車を製造するための方法に関している。
【0011】
「同軸」という用語は、切削工具の回転軸ががんぎ車の時計仕掛けの回転軸と同じであることを意味している。
【0012】
この特徴により、歯の自由端の材料の除去が単一の切削操作で実施され、それによりがんぎ車の寸法要求事項に対する考慮事項を保証することができ、その一方で前記がんぎ車の複雑性を軽減し、かつ、製造時間を短くすることができる。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、単独で、あるいは技術的に可能なあらゆる組合せに従って得られる以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0014】
特定の実施形態では、断面の縮小は、ベベルを含む縮小された端部部分によって形成される。
【0015】
特定の実施形態では、機器加工される断面の縮小は、がんぎ車時計仕掛けが刻まれる平面に対して直角の回転表面の形を有する縮小された端部部分を含む。
【0016】
特定の実施形態では、断面の縮小は、がんぎ車時計仕掛けが刻まれる平面に対して実質的に平行の平らな表面を含む縮小された端部部分によって形成される。
【0017】
特定の実施形態では、がんぎ車時計仕掛けを作製するステップはLIGA法によって実施される。
【0018】
特定の実施形態では、機械加工するステップはフライス削りによって実施される。
【0019】
特定の実施形態では、機械加工するステップは、
- その回転軸ががんぎ車時計仕掛けの回転軸と同じになるように切削工具を位置決めするステップと、
- がんぎ車時計仕掛けの回転軸に対して同軸の方向に沿って、がんぎ車時計仕掛けに向かう並進で切削工具を案内し、縮小された端部部分を単一の切削操作で生成するためにがんぎ車時計仕掛けの個々の歯の端部の一部をブランキングするステップと、
- 工具を除去するステップ
の連続した動作を含む。
【0020】
別の態様によれば、本発明は、例えば上で説明したがんぎ車を製造するための方法を実現するための切削工具に同じく関しており、切削工具は、回転軸の周りに回転駆動されることが意図された実質的に円筒状のボディーを含み、円筒状のボディーは、ボディーの直径面内で延在する切削縁を有する少なくとも1つの切削歯をその端部のうちの1つに備え、前記切削縁は、機械加工される部品の上に少なくとも1つの回転表面を生成するように適合された部分を有し、その回転軸は工具の回転軸と同軸である。
【0021】
より正確には、切削縁は、縮小された端部部分を生成するために、がんぎ車時計仕掛けの個々の歯の自由端の一部をブランキングするように適合される。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、単独で、あるいは技術的に可能なあらゆる組合せに従って得られる以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、切削縁は、「傾斜部分」と呼ばれる、工具の回転軸に対して鈍角または鋭角を形成する部分を備える。
【0024】
特定の実施形態では、切削縁は、「直線部分」と呼ばれる、工具の回転軸に対して平行の部分を備える。
【0025】
特定の実施形態では、切削縁は、「直角部分」と呼ばれる、前記軸に対して直角を形成する部分を備える。
【0026】
特定の実施形態では、切削縁は、機械加工された表面の機能構造または装飾構造を生成するように適合される輪郭を有する。
【0027】
さらに別の態様によれば、本発明は、例えば上で説明したがんぎ車を製造するための方法を実現することによって得られるがんぎ車に関連することができ、がんぎ車は、半径方向のアームによって外縁に接続されたハブ、および外縁の周囲に規則的に分散した歯を含み、歯の各々は、中間部分によって外縁に接続された、縮小された端部部分を含む。歯の各々の縮小された端部部分は、中間部分の厚さに対して縮小された厚さを含み、また、回転表面を含み、歯の各々の回転表面は同じ回転軸を共有する。
【0028】
有利には、回転軸はがんぎ車の回転軸と同じである。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、単独で、あるいは技術的に可能なあらゆる組合せに従って得られる以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0030】
特定の実施形態では、個々の歯の縮小された端部部分はベベルを含み、ベベルは、それぞれ同じ切頭体の部分を形成する傾斜した曲線表面をそれらが有するように配置される。
【0031】
特定の実施形態では、個々の歯の縮小された端部部分は、歯の衝撃平面を画定する端部表面を含み、前記端部表面は長方形台形の形を有する。
【0032】
特定の実施形態では、個々の歯の縮小された端部部分は、がんぎ車が刻まれる平面に対して実質的に平行の平らな表面を含み、前記平らな表面はベベルに接続される。
【0033】
特定の実施形態では、個々の歯の縮小された端部部分は、回転表面と、がんぎ車が刻まれる平面に対して実質的に平行の平らな表面とを含み、回転表面は、同じ回転円筒の部分をそれらの各々が形成するように配置される。
【0034】
特定の実施形態では、歯の回転表面および/または平らな表面は、撥油性効果または親油性効果をもたらす表面状態を有することができる。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる、全く非制限の例として与えられる以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の例示的実施形態によるがんぎ車の斜視図、およびこのがんぎ車の歯の詳細図である。
図2図1のがんぎ車の詳細図である。
図3】別の例示的実施形態によるがんぎ車の歯の詳細図である。
図4】さらに別の例示的実施形態によるがんぎ車の歯の詳細図である。
図5】本発明によるがんぎ車を作製することが意図された切削工具の斜視図である。
図6図5の工具の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は本発明によるがんぎ車10を示したもので、従来通り、半径方向のアーム13によって外縁12に接続されたハブ11、および外縁12の周囲の周りに規則的に分散し、がんぎ車10の回転軸に対してオーソラジアルの方向に沿って延在している歯14を備える。
【0038】
本テキストにおいては、がんぎ車10が刻まれる平面P(図面には示されていない)が画定され、平面Pは、前記がんぎ車10の回転軸に対して直角である。さらに、本テキストの残りの部分で使用されている「厚さ」という用語は、がんぎ車10の回転軸に対して平行の方向に沿って考察される寸法を意味している。
【0039】
図1の詳細図に示されているように、歯14の各々は、中間部分120によって外縁12に接続された、縮小された端部部分140を含む。有利には、歯14の各々の縮小された端部部分140は、中間部分120の厚さに対して縮小された厚さを含む。
【0040】
個々の歯14は、縮小された端部部分140の自由端に端部表面141を備えており、前記端部表面141は歯14の衝撃平面を画定している。「衝撃平面」の概念については、応力を伝達するためにパレットのパレット-ストーンと接触することが意図された表面を画定するものと、当業者に知られている。
【0041】
さらに、歯14の各々の縮小された端部部分140は回転表面142を含み、この回転表面142は、歯14の各々の回転表面142のすべてが同じ回転軸を共有するように配置されている。回転軸は、有利には、図2に示されているようにがんぎ車10の回転軸と同じである。
【0042】
詳細には、図1および図2に示されている例示的実施形態では、個々の歯14の回転表面142はベベル143を形成し、ベベル143は、それぞれ同じ切頭体の部分を形成する傾斜した曲線表面をそれらが有するように配置され、その回転軸は車の回転軸と同じである。切頭体の言及は、ここでは、傾斜した曲線表面が刻まれる仮想幾何学図の参照であることは明らかであり、ベベル143の構造を特定する目的しか有していない。
【0043】
図1の詳細図に正確に示されているように、個々の歯14の縮小された端部部分140は、回転表面142に加えて、平面Pに対して実質的に平行の平らな表面144を含むことができる。より正確には、平らな表面144は、一方では円弧を形成している曲線縁によって回転表面142に接続されており、円弧の中心はがんぎ車10の回転軸と一致し、また、他方では曲線縁の反対側の、歯14の正方線方向に対して直角の縁によって端部表面141に接続されている。
【0044】
ベベル143の代替として、図3の詳細図に示されている例示的実施形態では、回転表面142は、同じ回転円筒の部分をそれらの各々が形成するように配置することができ、その回転軸はがんぎ車10の回転軸と同じである。
【0045】
言い換えると、図1および図2に示されている例示的実施形態とは対照的に、回転表面142は平面Pに対して直角であり、傾斜していない。
【0046】
図4に示されている本発明のさらに別の例示的実施形態では、個々の縮小された端部部分140は、ベベル143によって形成された1つの回転表面142のみを含む。したがって前記縮小された端部部分140は、もはや、平面Pに対して実質的に平行の平らな表面144を含んでいない。
【0047】
すべての歯14のベベル143はそれぞれ同じ切頭体の部分を形成する傾斜した曲線表面を有しており、その回転軸は車の回転軸と同じである。
【0048】
個々のベベル143の傾斜した曲線表面は端部表面141に対してセカントであり、したがって後者は直角を含む台形の形を有している。したがってここでは、個々の歯14の自由端の厚さはしたがって可変であることが理解される。
【0049】
有利には、歯14の回転表面142および/または平らな表面144は、撥油性効果または親油性効果をもたらす表面状態を有することができる。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、上で説明したがんぎ車10を得るためにがんぎ車時計仕掛けを機械加工するための切削工具20に関している。
【0051】
切削工具20は、回転駆動されることが意図されたフライス削り-カッターの形態である。図5に示されているように、本発明の例示的実施形態では、切削工具20は、工具キャリアに締め付けられることが意図された第1の端部、および第1の端部の反対側の第2の端部を備えた実質的に円筒状のボディー21を含む。切削工具20のボディー21は、その回転軸と同じである縦方向の軸に沿って延在している。
【0052】
切削工具20のボディー21は、その第2の端部に少なくとも1つの切削歯22を担っており、後者は前記第2の端部を越えて延在している。
【0053】
図5および図6に示されている例示的実施形態では、工具は2つの切削歯22を含み、それらの各々は、切削工具20のボディー21の直径面内で延在している切削縁220を有している。
【0054】
正確には、とりわけ図6に示されているように、2つの切削歯22は直径方向に互いに反対側であり、また、切削工具20のボディー21の直径面の両側にそれぞれ配置されている。言い換えると、2つの切削歯22は全く同じであり、また、中心対称に従って互いに対して配置されており、その軸は切削工具20の回転軸と同じである。
【0055】
個々の切削歯22の切削縁220は、機械加工される部品の上に回転表面を生成することができる部分を有しており、その回転軸は工具の回転軸に対して同軸である。
【0056】
より正確には、前記部分は「傾斜部分」221と呼ばれ、工具の回転軸に対して鈍角または鋭角を形成する。
【0057】
図5はとりわけ切削縁220を示しており、その傾斜部分221は切削工具20のボディー21に向かって傾斜している。言い換えると、2つの切削縁220の傾斜部分221を互いに分離している距離は、縁が切削工具20のボディー21の第2の端部から遠ざかるにつれて長くなっている。
【0058】
この特徴により、機械加工中、上で説明し、また、図1の詳細図および図4の詳細図に示されているベベル143の形を有する回転表面142を生成するために、がんぎ車10時計仕掛けの歯14の上の材料の除去を実施することができる。この材料除去の間、切削工具20のボディー21は、以下でより詳細に説明されるように、がんぎ車時計仕掛けに対して同軸になるように配置される。
【0059】
別法として、切削縁220は、図面には示されていない、工具の回転軸に対して平行の「直線部分」と呼ばれる部分を備えることも可能である。この直線部分は、有利には、機械加工中、その回転軸の周りの切削工具20の回転によって、がんぎ車の歯14の各々の上に回転表面142を生成するように適合され、すべての回転表面142は同じ円筒の部分を表す。
【0060】
切削縁220は、傾斜部分221または直線部分に加えて、切削工具20の回転軸に対して直角を形成する「直角部分」222と呼ばれる部分を備えることができる。この直角部分222は、有利には、個々の切削歯22の端部に配置され、傾斜部分221または直角部分222よりも工具の回転軸からより遠くに離れている。
【0061】
有利には、この直角部分222により、上で説明した縮小された端部部分140の平らな表面144を作製することができる。
【0062】
さらに、傾斜部分221または直線部分および/または直角部分222は、回転表面142の、および/またはがんぎ車10の歯14の平らな表面144の機能構造または装飾構造を生成するように適合された輪郭を有することも可能である。
【0063】
この輪郭は、とりわけクレストおよびトラフの連続を含むことができる。
【0064】
「機能構造」という用語は、ここでは、機械加工された表面に撥油性効果または親油性効果を持たせることができる表面状態を意味している。
【0065】
当業者にそれ自体が知られている方式で、切削歯22は逃げ角を含むことができ、また、多結晶性立方晶窒化ホウ素、単結晶性または多結晶性ダイヤモンド、あるいは超硬合金などの任意の適切な材料から構築され、あるいは例えばタングステン-コバルト・カーバイドからできている、あるいはタングステン-ニッケル・カーバイドからできている金属マトリックスを有する複合材料から構築され、その上に多結晶性ダイヤモンド製コーティング、「DLC」(Diamond-like carbon:ダイヤモンド様炭素)製コーティング、窒化チタン製コーティング、炭化チタン製コーティング、等々などの適切なコーティングが例えば堆積される。
【0066】
また、本発明は、別の態様によれば、上で説明したがんぎ車を製造するための方法にも関している。
【0067】
この製造方法は、外縁12、半径方向のアーム13によって外縁12に接続されたハブ11、および外縁12の周囲に規則的に分散した歯14を備えるがんぎ車時計仕掛けを作製する予備ステップを含む。
【0068】
このステップの後、がんぎ車時計仕掛けは、従来のがんぎ車、すなわち従来技術のがんぎ車と無矛盾になる。さらに、この予備ステップの間に、当業者に知られている任意の方法、例えばブランキングおよびソーイングによってがんぎ車時計仕掛けを得ることが可能である。
【0069】
しかしながら以下で詳細に考察される理由により、LIGA法によってがんぎ車時計仕掛けを得ることが有利である。
【0070】
以下のステップは、縮小された端部部分140を個々の歯14毎に得るために、上で説明した、がんぎ車時計仕掛けに対して同軸に整列した切削工具20によって、個々の歯14の自由端の断面の縮小を同時に機械加工するステップからなっている。したがってこの方法を実現した後、上で説明したがんぎ車10が得られる。
【0071】
ここでは、「同軸に整列した」という用語は、工具の回転軸とがんぎ車時計仕掛けの回転軸が同じであることを意味している。したがって断面の縮小はがんぎ車時計仕掛けの歯14の厚さの縮小に対応している。
【0072】
機械加工するステップは、機械加工される断面の縮小が、ベベル143を形成する回転表面142の形を有する縮小された端部部分140を含むように実施することができる。
【0073】
別法としては、機械加工するステップは、機械加工される断面の縮小が、平面Pに対して直角の回転表面142の形を有する縮小された端部部分140を含むように実施することも可能である。
【0074】
さらに、機械加工するステップは、機械加工される断面の縮小が、がんぎ車が刻まれる平面Pに対して実質的に平行の平らな表面144によって形成される縮小された端部部分140を含むように実施することも可能である。
【0075】
この方法の別の例示的実施形態では、機械加工するステップは、機械加工される断面の縮小が、ベベル143によってのみ形成される縮小された端部部分140を含むように実施することができる。
【0076】
機械加工するステップは、有利にはフライス削りによって実施され、
- その回転軸ががんぎ車時計仕掛けの回転軸と同じになるように切削工具20を位置決めするステップと、
- がんぎ車時計仕掛けの回転軸に対して同軸の方向に沿って、がんぎ車時計仕掛けに向かう並進で切削工具20を案内し、がんぎ車時計仕掛けの個々の歯14の端部の一部をブランキングするステップであって、それにより前記部分の厚さを単一の切削操作で縮小し、この操作により個々の歯14の縮小された端部部分を得ることができる、ステップと、
- 切削工具20を除去するステップ
の連続した動作を含む。
【0077】
がんぎ車時計仕掛けに対する切削工具20の特定の位置決めにより、ブランキング操作後に得られる縮小された端部部分は、一方では前記がんぎ車のすべての歯14に対して全く同じであり、また、他方では単一の機械加工操作で得られる。
【0078】
有利には、がんぎ車時計仕掛けがLIGA法によって得られる場合、がんぎ車時計仕掛けは、基板の上に正確に分配された複数の他のがんぎ車時計仕掛けから構築される。前記基板は、がんぎ車時計仕掛けに対して正確に配置され、かつ、切削工具20に対する前記時計仕掛けの各々の正確な位置を示すために光センサによって読み取られるように適合された光導波路-マークを含む。したがって光学的に実施されるため、機械加工されるがんぎ車時計仕掛けの各々に対して、切削工具20の位置決め操作を速やかに、かつ、正確に実施することができる。
【0079】
さらに、別法または追加として、切削またはブランキング工具20を案内する操作の間、方法は、必要に応じて切削工具20の位置を修正するために、機械加工された、または機械加工されるがんぎ車時計仕掛けに対する切削工具の位置を光学検証する操作を含むことができる。
【符号の説明】
【0080】
10 がんぎ車
11 ハブ
12 外縁
13 半径方向のアーム
14 歯
20 切削工具(ブランキング工具)
21 ボディー
22 切削歯
120 中間部分
140 縮小された端部部分
141 端部表面
142 回転表面
143 ベベル
144 平らな表面
220 切削縁
221 傾斜部分
222 直角部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】