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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087860
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】補剛構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
E04B1/58 D
E04B1/58 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202384
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】大林 優
(72)【発明者】
【氏名】小野 喜信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】車 創太
(72)【発明者】
【氏名】塩出 宏紀
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA14
2E125AA33
2E125AA35
2E125AB12
2E125AC14
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG23
2E125AG25
2E125AG31
2E125AG34
2E125BA55
2E125BB02
2E125BB37
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】設置スペースの低減及び構成の簡素化を図りながら、圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮して一対の補剛材の一体化も図ること。
【解決手段】圧縮力を受ける圧縮鋼材5と、その圧縮鋼材5の長手方向に直交する方向にて圧縮鋼材5を両側から挟み込む状態で配設された一対の木製の補剛材6とが備えられ、一対の補剛材6には圧縮鋼材5の軸力を負担させずに、一対の補剛材6によって圧縮鋼材5の座屈を抑制する補剛効果を発揮する補剛機能部と、一対の補剛材6の一体化を図る一体化機能部との両方の機能部を有する補剛・一体化機能部7が備えられている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮力を受ける圧縮鋼材と、その圧縮鋼材の長手方向に直交する方向にて圧縮鋼材を両側から挟み込む状態で配設された一対の木製の補剛材とが備えられ、
前記一対の補剛材には前記圧縮鋼材の軸力を負担させずに、一対の補剛材によって圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮する補剛機能部と、前記一対の補剛材の一体化を図る一体化機能部との両方の機能部を有する補剛・一体化機能部が備えられている補剛構造。
【請求項2】
前記補剛・一体化機能部は、前記圧縮鋼材に設けられて圧縮鋼材の長手方向に長い横長形状の貫通孔部と、その貫通孔部を貫通して両端部に補剛材を固定させる固定部とが備えられている請求項1に記載の補剛構造。
【請求項3】
前記貫通孔部の上下幅は、前記固定部の上下幅と略同等に設定され、貫通孔部に貫通された固定部の上下方向での移動を規制自在としている請求項2に記載の補剛構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮力を受ける圧縮鋼材と、その圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛材とが備えられた補剛構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような補剛構造を補剛ブレースに適用したものが知られており、その補剛構造では、ブレース鋼材が建物の柱梁架構内に斜めに配置され、そのブレース鋼材の長手方向に直交する方向にてブレース鋼材を両側から挟み込む状態で一対の補剛材が配設されており、補剛材として木材を使用することで、補剛ブレースの軽量化が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の補剛構造では、補剛材の内部に、補剛材の一端部から他端部の全長に亘って貫通する収容孔が形成され、その収容孔内にブレース鋼材が配設されている。これにより、一対の補剛材にて長手方向に直交する方向(弱軸方向)でのブレース鋼材の座屈を抑制しながら、補剛材に対してブレース鋼材を長手方向で移動自在として、補剛材にはブレース鋼材の軸力を負担させずに、補剛材によってブレース鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6719199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の補剛構造では、一対の補剛材を貫通するボルトが備えられ、このボルトによって一対の補剛材の一体化が図られている。しかしながら、一対の補剛材を貫通する状態でボルトを配設するために、ブレース鋼材にもボルトを貫通させるための孔部を形成しなければならず、構成の複雑化及びコストアップを招く可能性がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の補剛構造では、ブレース鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮するための収容孔等の部材と、一対の補剛材の一体化を図るためのボルト等の部材とが別々に備えられているので、各部材の設置スペースや構成を別々に確保しなければならず、設置スペースの増大化及び構成の複雑化を招くことになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、設置スペースの低減及び構成の簡素化を図りながら、圧縮力を受ける圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮して一対の補剛材の一体化も図ることができる補剛構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、圧縮力を受ける圧縮鋼材と、その圧縮鋼材の長手方向に直交する方向にて圧縮鋼材を両側から挟み込む状態で配設された一対の木製の補剛材とが備えられ、
前記一対の補剛材には前記圧縮鋼材の軸力を負担させずに、一対の補剛材によって圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛効果を発揮する補剛機能部と、前記一対の補剛材の一体化を図る一体化機能部との両方の機能部を有する補剛・一体化機能部が備えられている点にある。
【0009】
本構成によれば、補剛機能部と一体化機能部との両方の機能部を有する補剛・一体化機能部が備えられているので、一対の補剛材には圧縮鋼材の軸力を負担させずに、一対の補剛材によって圧縮鋼材の座屈を抑制する補剛効果を適切に発揮できながら、一対の補剛材の一体化も図ることができる。しかも、補剛機能部と一体化機能部とを別々に備えるのではなく、補剛・一体化機能部を備えるだけであるので、設置スペースの低減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記補剛・一体化機能部は、前記圧縮鋼材に設けられて圧縮鋼材の長手方向に長い横長形状の貫通孔部と、その貫通孔部を貫通して両端部に補剛材を固定させる固定部とが備えられている点にある。
【0011】
本構成によれば、補剛・一体化機能部は、貫通孔部と固定部との簡易な部材により構成することができるので、構成の簡素化をより一層図ることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記貫通孔部の上下幅は、前記固定部の上下幅と略同等に設定され、貫通孔部に貫通された固定部の上下方向での移動を規制自在としている点にある。
【0013】
本構成によれば、貫通孔部内での固定部の上下方向での移動を規制することで、補剛材に余計な力が作用するのを抑制することができ、補剛効果だけを効果的に発揮することができる。
【0014】
例えば、地震等により圧縮鋼材に引張力が作用することで、圧縮鋼材が降伏して塑性化した後には、圧縮力が作用すると、圧縮鋼材の面方向に対して直交する方向(弱軸方向)だけでなく、圧縮鋼材の面方向に沿う方向(強軸方向)にも、圧縮鋼材が座屈する可能性がある。圧縮鋼材を両側から挟み込む一対の補剛材によって、圧縮鋼材の面方向に対して直交する方向(弱軸方向)での圧縮鋼材の動きを規制しているので、圧縮鋼材の面方向に沿う方向(上下方向、強軸方向)において圧縮鋼材が動く可能性がある。そこで、本構成によれば、貫通孔部内での固定部の上下方向での移動を規制することで、固定部にて圧縮鋼材の面方向に沿う方向(上下方向、強軸方向)での圧縮鋼材の動きを規制して、圧縮鋼材の座屈を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における架構面の正面図
図2】(A)図1におけるII-II線での縦断面図、(A)図2(A)におけるB-B線での縦断面図
図3】(A)第1実施形態における補剛ブレースと梁との接合部位を示す図、(B)第1実施形態における補剛ブレースと梁との接合部位における補剛ブレースの断面図
図4】第2実施形態における補剛ブレースの断面図
図5】第3実施形態における補剛ブレースの断面図
図6】第4実施形態における補剛ブレースの断面図
図7】第5実施形態における補剛ブレースの断面図
図8】第6実施形態における補剛ブレースと梁との接合部位を示す図
図9】第6実施形態における補剛ブレースと梁との接合部位を示す図
図10】第6実施形態における補剛ブレースと梁との接合部位を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る補剛構造を補剛ブレースに適用した実施形態について図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この補剛ブレース1は、ホテル等の各種の建物に適用可能であり、建物は、図1に示すように、柱3と梁4とを備えた柱梁架構を有し、上下の梁4と左右の柱3とで囲まれた架構面に補剛ブレース1が配置されている。このように、補剛ブレース1は、建物における部屋間の間仕切り等に配置することができる。
【0017】
補剛ブレース1は、図1に示すように、間仕切り部2において、左右方向の右側と左側とに左右一対備えられ、左右一対の補剛ブレース1の夫々が、その上端部が上方側の梁4の左右方向の端部部位に接合され、その下端部が下方側の梁4の左右方向の中央部位に接合された傾斜姿勢にて備えられている。
【0018】
補剛ブレース1は、図2に示すように、ブレース鋼材5(圧縮鋼材に相当する)と木製の補剛材6とが備えられている。ブレース鋼材5は、所定の厚みを有する平鋼材にて構成され、補剛材6は、例えば、正方形状の木製材にて構成されている。補剛材6は、ブレース鋼材5の長手方向に直交して側面部に対向する方向(図2(A)において左右方向)にてブレース鋼材5を両側から挟み込む状態で一対備えられている。この実施形態では、ブレース鋼材5の側面部に沿う上下方向(図2(A)において上下方向)に2つの補剛材6を隣接して並ぶ状態で配設して、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材6を2組備えており、合計4つの補剛材6が備えられている。
【0019】
このようにして、補剛ブレース1は、ブレース鋼材5の周囲が木製の補剛材6にて覆われていることから、間仕切り部2において露出可能な補剛ブレース1として備えられている。
【0020】
補剛ブレース1には、図2に示すように、一対の補剛材6によってブレース鋼材5の座屈を抑制する補剛効果を発揮する補剛機能部と、一対の補剛材6の一体化を図る一体化機能部との両方の機能部を有する補剛・一体化機能部7が備えられている。
【0021】
補剛・一体化機能部7は、図2に示すように、ブレース鋼材5に設けられた貫通孔部71と、その貫通孔部71を貫通して両端部に補剛材6を固定させる固定部72とが備えられている。この実施形態では、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材6が2組備えられているので、2組の補剛材6の夫々に対応するように、貫通孔部71及び固定部72も2つずつ備えられている。
【0022】
図1では図示を省略するが、貫通孔部71及び固定部72は、ブレース鋼材5の長手方向において、所定の間隔を隔てて(例えば一定ピッチ)複数備えられている。
【0023】
固定部72は、図2に示すように、一対の補剛材6の夫々に固着された一対のカプラー部材73と、その一対のカプラー部材73同士を接合させるハイテンションボルト74及びナット75とが備えられている。
【0024】
補剛材6におけるブレース鋼材5の長手方向に直交する方向(図2(A)において左右方向)の外方側面部61には、内方側に凹入する円形状の凹部62が備えられ、その凹部62の中央部には、補剛材6を貫通する円形状の補剛材用貫通孔部63が備えられている。補剛材用貫通孔部63の直径は、円形状のカプラー部材73の外径よりも所定量(例えば、0.5mm)だけ小さく設定されており、一対のカプラー部材73の夫々は、補剛材用貫通孔部63を貫通する状態で補剛材6に固着されている。カプラー部材73は、その長手方向の長さが補剛材用貫通孔部63の長さよりも所定量だけ長く設定されており、カプラー部材73の外方側端部を凹部62の底部に合わせて装着することで、カプラー部材73の内方側端部が所定量だけ貫通孔部71内に突出する状態で備えられている。
【0025】
カプラー部材73を補剛材6に固着させる場合には、例えば、カプラー部材73の外周部にねじ切り部が形成されており、そのねじ切り部を補剛材6の補剛材用貫通孔部63の内壁部に螺合させることで、補剛材用貫通孔部63を貫通する状態で補剛材6にカプラー部材73を固着させることができる。また、ねじ切り部を形成しなくても、カプラー部材73を補剛材6に圧入させることで、補剛材用貫通孔部63を貫通する状態で補剛材6にカプラー部材73を固着させることもできる。
【0026】
一対のカプラー部材73の夫々は、その外方側端部が凹部62内に露出し、その内方側端部が貫通孔部71内に存在する状態で配設されている。一対のカプラー部材73が、その内方側端部同士が当接する状態で、貫通孔部71を貫通している。カプラー部材73は、その内部が円筒状に形成されており、その内部空間によって一対のカプラー部材73の全長に亘る挿通空間が形成されている。その挿通空間の両端部が補剛材6の凹部62に露出していることから、その挿通空間にハイテンションボルト74を挿通させてナット75にて締結することで、一対のカプラー部材73が接合されている。
【0027】
このように、補剛・一体化機能部7は、補剛材6に固着された一対のカプラー部材73を接合することで、一対の補剛材6の一体化を図る一体化機能部が備えられている。
【0028】
貫通孔部71は、図2(B)の下方側に示すように、固定部72におけるカプラー部材73の外径よりもブレース鋼材5の長手方向(図2(B)において左右方向)に長い横長形状に形成されている。貫通孔部71の上下幅は、固定部72におけるカプラー部材73の上下幅(外径)と略同等に設定され、貫通孔部71に貫通された固定部72におけるカプラー部材73の上下方向での移動を規制自在としている。カプラー部材73は、貫通孔部71の横幅方向では所定量の移動が許容されているが、貫通孔部71の上下方向では移動が規制されている。
【0029】
このように、補剛・一体化機能部7は、図2に示すように、貫通孔部71の横幅方向でカプラー部材73の所定量の移動を許容することで、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動が許容されており、一対の補剛材6の夫々にはブレース鋼材5の軸力を負担させていない。一対の補剛材6の夫々は、ブレース鋼材5の長手方向に直交する方向(図2(A)において左右方向)の内方側面部64がブレース鋼材5の面部に対向する状態で配設されている。ブレース鋼材5が座屈しようとしても、補剛材6の内方側面部64がブレース鋼材5の側面部に当接することで、ブレース鋼材5の座屈を抑制することできる。よって、補剛、一体化機能部7は、ブレース鋼材5の軸力を負担させずに、一対の補剛材6によってブレース鋼材5の座屈を抑制する補剛効果を発揮する補剛機能部が備えられている。
【0030】
本実施形態では、図2(A)に示すように、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5との間に多少の隙間を形成するように配設されている。これにより、ブレース鋼材5に対してその長手方向に補剛材6が移動するときに、その移動をスムーズに行うことができるので、補剛材6に対してブレース鋼材5の軸力を負担させない状態を適切に実現し易くなっている。ちなみに、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5との間の隙間をどのような大きさの隙間とするかは適宜変更が可能である。また、隙間を設けずに、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5とを当接させる状態に配設することもできる。
【0031】
この実施形態では、カプラー部材73について、左右に分割して左右一対備えられているが、例えば、左右に分割せずに一体物にて構成することもできる。
【0032】
図3に基づいて、補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成について説明する。図3は、図1において右側に配設された補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成を示しているが、図1において左側に配設された補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成も、同様の構成であるので、図3を用いて、右側に配設された補剛ブレース1のみ説明する。
【0033】
図3に示すように、補剛ブレース1の上端部位では、補剛材6が存在せず、所定量だけブレース鋼材5が露出する露出部位11が備えられている。梁4の下フランジ41の下面部には、プレート体12が備えられている。露出部位11において、ブレース鋼材5の上端部位となる第1溶接部位13と、ブレース鋼材の下端部位となる第2溶接部位14と、ブレース鋼材5の長手方向の端部部位となる第3溶接部位15とが、梁4に対する溶接対象部位となっている。これにより、露出部位11における第1~第3溶接部位13~15を、プレート体12を裏当て材として用いながら、プレート体12及び梁4の下フランジ41の下面部に溶接している。
【0034】
補剛材6の端部部位には、一対の補剛材6の一体化を図る端部用一体化部16が備えられている。端部用一体化部16は、ブレース鋼材5に設けられた端部用貫通孔部17と、その端部用貫通孔部17を貫通して両端部に補剛材6を固定させるボルト18及びナット19等の締結具とが備えられている。
【0035】
補剛材6において端部用一体化部16の配設箇所には、内方側に凹入する円形状の端部用凹部65が備えられ、その端部用凹部65の中央部には、補剛材6を貫通する円形状の端部用貫通孔部66が備えられている。ボルト18が、補剛材6に形成された端部用貫通孔部66、及び、ブレース鋼材5に形成された端部用貫通孔部17の両孔部を貫通する状態で配設され、そのボルト18をナット19にて締結することで、一対の補剛材6の一体化が図られている。
【0036】
ちなみに、図3では、端部用一体化部16として、ボルト18及びナット19等の締結具を用いた例を示したが、例えば、補剛・一体化機能部7と同様に、カプラー部材73、ハイテンションボルト74、ナット75等の固定部72を用いて、一対の補剛材6の一体化を図ることもできる。
【0037】
ブレース鋼材5に形成された端部用貫通孔部17は、図3(B)に示すように、ボルト18の外径よりもブレース鋼材5の長手方向に長い横長形状に形成されており、ボルト18が、端部用貫通孔部17の横幅方向では所定量の移動が許容されている。これにより、図2にて示す補剛・一体化機能部7における貫通孔部71とカプラー部材73との関係と同様に、端部用貫通孔部17の横幅方向でボルト18の所定量の移動を許容することで、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動が許容されており、一対の補剛材6の夫々にはブレース鋼材5の軸力を負担させていない。
【0038】
以下、補剛ブレース1の下端部と梁4とを接合する接合構成について説明するが、補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成と比較して、端部用貫通孔部17の形状だけが異なり、その他の構成が、補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成と同様であるので、端部用貫通孔部17についてのみ説明し、その他の構成については、その説明及び図示を省略する。
【0039】
補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成では、図3(B)に示すように、端部用貫通孔部17が、ボルト18の外径よりもブレース鋼材5の長手方向に長い横長形状に形成している。それに対して、補剛ブレース1の下端部と梁4とを接合する接合構成では、端部用貫通孔部17の内径が、ボルト18の外径と同等に設定されている。これにより、ボルト18が端部用貫通孔部17内での移動が規制されており、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動を規制する状態で梁4に補剛ブレース1が接合されている。
【0040】
このように、本実施形態では、補剛ブレース1の上端側部位において、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動が許容される状態で梁4に接合され、補剛ブレース1の下端側部位において、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動を規制する状態で梁4に接合されている。
【0041】
逆に、補剛ブレース1の上端側部位において、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動を規制する状態で梁4に接合され、補剛ブレース1の下端側部位において、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動が許容される状態で梁4に接合させることもでき、補剛ブレース1の上端側部位と下端側部位とのどちらを、ブレース鋼材5の長手方向においてブレース鋼材5に対して補剛材6の移動を許容させるかは適宜変更が可能である。
【0042】
ここで、ブレース鋼材5の厚みについて、補剛ブレース1と梁4とを接合する接合箇所での耐力を補強するために、接合箇所及びその隣接位置におけるブレース鋼材5の厚みを厚くすることが考えられる。しかしながら、この実施形態では、接合箇所及びその隣接位置におけるブレース鋼材5の厚みを厚くすることなく、ブレース鋼材5の長手方向の全長に亘って同一の厚みとして、ブレース鋼材5の製造のし易さ、及び、ブレース鋼材5の製造コストの低減を図ることを優先している。
【0043】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、補剛・一体化機能部7における固定部72を、どのような部材にて構成するのかの別実施形態である。図4に基づいて、第2実施形態における固定部72を中心に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。ちなみに、この第2実施形態における図4は、第1実施形態における図2(A)に対応するものである。
【0044】
図4に示すように、固定部72は、ブレース鋼材5に形成された貫通孔部71を貫通させる通しボルト77と、その通しボルト77を締結するナット78とが備えられている。通しボルト77は、その両端部位が凹部62に突出する状態で、ブレース鋼材5に形成された貫通孔部71、及び、一対の補剛材6の夫々に形成された補剛材用貫通孔部63を貫通するように配設されている。補剛材用貫通孔部63の内径は、通しボルト77の外径よりも少し小径又は略同等に設定されている。
【0045】
第1実施形態の図2(A)では、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5との間に隙間を形成する状態で配設した例を示している。それに対して、図4では、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5との間の隙間にテフロン(登録商標)材等の滑り材76を介在させている。この場合も、ブレース鋼材5に対してその長手方向に補剛材6が移動するときに、その移動をスムーズに行うことができる。
【0046】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態も、第2実施形態と同様に、補剛・一体化機能部7における固定部72を、どのような部材にて構成するのかの別実施形態である。図5に基づいて、第3実施形態における固定部72を中心に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。ちなみに、この第3実施形態における図5は、第1実施形態における図2(A)に対応するものである。
【0047】
図5に示すように、固定部72は、一対の補剛材6の夫々に固着された一対のカプラー部材80と、その一対のカプラー部材73同士を接合させるハイテンションボルト74及びナット75とが備えられ、構成部材については、第1実施形態と同様である。
【0048】
この第3実施形態では、カプラー部材80の長さが第1実施形態とは異なっている。カプラー部材80の長さは、補剛材用貫通孔部63の長さと同等に設定されている。よって、ハイテンションボルト74のみが貫通孔部71を貫通する状態で備えられている。
【0049】
この第3実施形態でも、第2実施形態と同様に、補剛材6の内方側面部64とブレース鋼材5との間にテフロン材等の滑り材76を介在させている。
【0050】
〔第4実施形態〕
この第4実施形態は、補剛材6の別実施形態である。図6に基づいて、第4実施形態における補剛材8を中心に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。ちなみに、この第4実施形態における図6は、第1実施形態における図2(A)に対応するものである。
【0051】
第1実施形態では、図2(A)に示すように、断面が正方形状の木製材にて補剛材6を構成し、ブレース鋼材5の上下方向に2つの補剛材6を隣接して並ぶ状態で配設して、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材6を2組備えており、合計4つの補剛材6が備えられている。
【0052】
それに対して、第4実施形態では、図6に示すように、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材8を1組備えており、合計2つの補剛材8が備えられている。補剛材8は、その断面が、正方形ではなく、ブレース鋼材5の上下方向に長い長方形状に形成されている。この場合には、補剛材8が2つだけ備えられているので、補剛。一体化機能部7における貫通孔部71及び固定部72も1つずつ備えられている。
【0053】
〔第5実施形態〕
この第5実施形態は、補剛・一体化機能部7における貫通孔部71の形状についての別実施形態である。図7に基づいて、第5実施形態における貫通孔部83を中心に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。ちなみに、この第5実施形態における図7は、第1実施形態における図2(B)に対応するものである。
【0054】
第1実施形態では、図2(B)に示すように、貫通孔部71が、固定部72におけるカプラー部材73の外径よりもブレース鋼材5の長手方向に長い横長形状に形成され、貫通孔部71の上下幅を、固定部72におけるカプラー部材73の上下幅(外径)と略同等に設定している。
【0055】
それに対して、第5実施形態では、図7に示すように、貫通孔部83が、固定部72におけるカプラー部材73の外径よりも所定量だけ大きい内径を有する円形状に形成されている。貫通孔部83は、いわゆるルーズ孔として備えられており、その横幅方向だけでなく、上下方向や斜め方向等、その中心を基準とする径方向に、カプラー部材73の所定量の移動を許容している。これにより、補剛・一体化機能部7は、ブレース鋼材5の長手方向だけでなく、ブレース鋼材5の上下方向等にも、ブレース鋼材5に対して補剛材6の移動が許容されており、一対の補剛材6の夫々にはブレース鋼材5の軸力を負担させていない。
【0056】
〔第6実施形態〕
この第6実施形態は、補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成の別実施形態である。図8図10に基づいて、第6実施形態における補剛ブレース1の上端部と梁4とを接合する接合構成を中心に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等によりその説明は省略する。ちなみに、この第6実施形態における図8~10は、第1実施形態における図3に対応するものである。
【0057】
第1実施形態では、図3に示すように、補剛ブレース1の上端部位にブレース鋼材5が露出する露出部位11が備えられ、その露出部位11における第1~第3溶接部位13~15を、プレート体12を裏当て材として用いながら、プレート体12及び梁4の下フランジ41の下面部に溶接している。ブレース鋼材5の厚みについては、接合箇所及びその隣接位置におけるブレース鋼材5の厚みを厚くすることなく、ブレース鋼材5の長手方向の全長に亘って同一の厚みとすることで、ブレース鋼材5を製造し易く、ブレース鋼材5の製造コストの低減を図っている。
【0058】
それに対して、第6実施形態では、図8に示すように、補剛ブレース1の上端部位にブレース鋼材5が露出する露出部位11が備えられ、その露出部位11には、補剛ブレース1と梁4との接合箇所を補強する補強プレート21が備えられている。このように、補強プレート21を備えることで、補剛ブレース1と梁4とを接合する接合箇所での耐力を補強することができながら、ブレース鋼材5の長手方向の全長に亘って同一の厚みとして、ブレース鋼材5を製造し易く、ブレース鋼材5の製造コストの低減を図っている。
【0059】
補強プレート21は、ブレース鋼材5の上下方向と直交する方向に延びる姿勢で、溶接等によりブレース鋼材5に接合されている。図8(B)に示すように、ブレース鋼材5と補強プレート21とが十字状に備えられている。補強プレート21の長さは、図8(A)に示すように、ブレース鋼材5における露出部位11よりも長く設定されており、露出部位11よりも下方側部位は、図8(B)において点線で示すように、ブレース鋼材5の上下方向に並ぶ2つの補剛材6の間に配設されている。
【0060】
溶接部位については、露出部位11における第3溶接部位15を、プレート体12を裏当て材として用いながら、プレート体12及び梁4の下フランジ41の下面部に溶接している。
【0061】
また、第6実施形態では、図8に代えて、図9に示すように、補強プレート21の長さを短くすることもできる。例えば、補強プレート21の長さを、ブレース鋼材5における露出部位11よりも少し短く設定することができる。この場合には、ブレース鋼材5の上下方向に並ぶ2つの補剛材6を一体化する一体化部22が備えられている。この一体化部22については、詳細な説明や図示は省略するが、例えば、補剛・一体化機能部7における固定部72や端部用一体化部16と同様の構成とすることができる。
【0062】
補剛材6について、図8及び図9に示すものでは、第1実施形態と同様に、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材6を2組備え、合計4つの補剛材6が備えられた補剛ブレース1に適用した場合を示している。ここで、第4実施形態の図6に示すように、ブレース鋼材5を両側から挟み込む一対の補剛材8を1組備え、合計2つの補剛材8を備えることもできる。このように、2つの補剛材8を備えた補剛ブレース1に適用した場合について、図10を用いて説明する。
【0063】
図10に示すように、補強プレート21の長さは、ブレース鋼材5における露出部位11よりも長く設定されているので、補強プレート21は、補剛材8が存在しない露出部位11を超えて、補剛材8が存在する部分まで延出されている。そこで、補剛材8には、補強プレート21を配設させるための切り欠き部9が備えられている。切り欠き部9は、補剛材8の端部部位からブレース鋼材5の長手方向に沿って切り欠いた直線状に形成されている。
【0064】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、本発明に係る補剛構造を補剛ブレース1に適用した場合を説明したが、補剛ブレースに限らず、圧縮力を受ける圧縮鋼材を有するものであればよく、各種のものに適用することができる。
例えば、本発明に係る補剛構造を、上弦材と下弦材とその上弦材及び下弦材を繋ぐ斜材とを有するトラス構造において、斜材や上弦材を圧縮鋼材として適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 補剛ブレース
5 ブレース鋼材(圧縮鋼材)
6 補剛材
7 補剛・一体化機能部
8 補剛材
71 貫通孔部
72 固定部
83 貫通孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10