(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087862
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】アセトアミノフェン含有錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/08 20060101AFI20230619BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20230619BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230619BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20230619BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20230619BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230619BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230619BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230619BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230619BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A61K33/08
A61K31/136
A61K31/192
A61K31/522
A61K33/06
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/36
A61P29/00
A61P1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202386
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】立花 政明
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC05
4C076CC16
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF36
4C076GG13
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
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4C086MA03
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4C086MA52
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4C086ZA68
4C206AA01
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4C206DA24
4C206GA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA17
4C206MA30
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZA68
(57)【要約】
【課題】アセトアミノフェンを含有する錠剤において、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低い錠剤の提供。
【解決手段】下記(A)~(D)成分を含む薬物層を有し、(D)成分/(A)成分で表される質量比が0.4~3.2であり、(D)成分/(C)成分で表される質量比が1.4~10であるアセトアミノフェン含有錠剤、又は、下記(A)~(E)成分を含む薬物層を有し、(E)成分の含有割合が、薬物層の総質量に対して1質量%以上であるアセトアミノフェン含有錠剤。
(A)成分:アセトアミノフェン
(B)成分:イブプロフェン
(C)成分:カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上
(D)成分:マグネシウムを含有する制酸剤
(E)成分:クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アセトアミノフェンと、
(B)成分:イブプロフェンと、
(C)成分:カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上と、
(D)成分:マグネシウムを含有する制酸剤と、
を含む薬物層を有し、
前記(D)成分/前記(A)成分で表される質量比が0.4~3.2であり、
前記(D)成分/前記(C)成分で表される質量比が1.4~10である、アセトアミノフェン含有錠剤。
【請求項2】
前記(D)成分が、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のアセトアミノフェン含有錠剤。
【請求項3】
前記薬物層が、(E)成分:クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1又は2に記載のアセトアミノフェン含有錠剤。
【請求項4】
前記(C)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して4.6~7.6質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセトアミノフェン含有錠剤。
【請求項5】
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.8~1.2である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアセトアミノフェン含有錠剤。
【請求項6】
(A)成分:アセトアミノフェンと、
(B)成分:イブプロフェンと、
(C)成分:カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上と、
(D)成分:マグネシウムを含有する制酸剤と、
(E)成分:クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上と、
を含む薬物層を有し、
前記(E)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して1質量%以上である、アセトアミノフェン含有錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアミノフェン含有錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬の有効成分として用いられている。一方、アセトアミノフェンは結合力が低いため、アセトアミノフェンを含有する錠剤は、経時により硬度低下が生じることが知られている。
【0003】
錠剤の経時による硬度低下を解決するための技術として、例えば特許文献1には、アセトアミノフェン等の活性成分に、マンニトール、結晶セルロース及びカルメロースを添加する技術が開示されている。
【0004】
ところで、解熱鎮痛薬やかぜ薬等の一般用医薬品には、種々の症状に対する幅広い薬理効果を期待して複数の有効成分が配合されることがある。アセトアミノフェンを含有する解熱鎮痛薬においても、複数の有効成分の組み合せが検討されている。
例えば特許文献2には、アセトアミノフェンとイブプロフェンと無水カフェインとを併用した解熱鎮痛剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4989733号公報
【特許文献2】特許第5830412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アセトアミノフェンとイブプロフェンとカフェイン又は無水カフェインとを併用した錠剤は、アセトアミノフェンによる経時による硬度低下が顕著になり、従来の技術では、経時的な硬度低下に対して十分な抑制効果が得られない。
また、錠剤にカフェイン又は無水カフェインを配合すると、錠剤の衝撃に対する摩損性やもろさの指標である摩損度が高くなる傾向にある。カフェイン又は無水カフェインの有効最小量まで含有量を減らしても、摩損度が十分に改善されない場合があった。
【0007】
本発明は、アセトアミノフェンを含有する錠剤において、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低い錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マグネシウム系制酸剤は、イブプロフェンに対して反応性が高く、イブプロフェンとマグネシウム系制酸剤とを併用すると錠剤が湿潤して硬度が低下する傾向にある。そのため、一般的に、イブプロフェンを含む錠剤に制酸剤を配合する場合、マグネシウム系制酸剤は不向きである。
しかし、本発明者らは鋭意検討した結果、アセトアミノフェンとイブプロフェンとカフェイン又は無水カフェインとの組み合わせにおいて、意外にもマグネシウム系制酸剤を併用すると、錠剤の経時的な硬度低下を抑制でき、摩損度も改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:アセトアミノフェンと、
(B)成分:イブプロフェンと、
(C)成分:カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上と、
(D)成分:マグネシウムを含有する制酸剤と、
を含む薬物層を有し、
前記(D)成分/前記(A)成分で表される質量比が0.4~3.2であり、
前記(D)成分/前記(C)成分で表される質量比が1.4~10である、アセトアミノフェン含有錠剤。
[2] 前記(D)成分が、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種以上である、前記[1]のアセトアミノフェン含有錠剤。
[3] 前記薬物層が、(E)成分:クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上をさらに含む、前記[1]又は[2]のアセトアミノフェン含有錠剤。
[4] 前記(C)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して4.6~7.6質量%である、前記[1]~[3]のいずれかのアセトアミノフェン含有錠剤。
[5] 前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.8~1.2である、前記[1]~[4]のいずれかのアセトアミノフェン含有錠剤。
[6] (A)成分:アセトアミノフェンと、
(B)成分:イブプロフェンと、
(C)成分:カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上と、
(D)成分:マグネシウムを含有する制酸剤と、
(E)成分:クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上と、
を含む薬物層を有し、
前記(E)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して1質量%以上である、アセトアミノフェン含有錠剤。
[7] 前記(D)成分/前記(A)成分で表される質量比が0.4~3.2である、前記[6]のアセトアミノフェン含有錠剤。
[8] 前記(D)成分/前記(C)成分で表される質量比が1.4~10である、前記[6]又は[7]のアセトアミノフェン含有錠剤。
[9] 前記(D)成分が、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる1種以上である、前記[6]~[8]のいずれかのアセトアミノフェン含有錠剤。
[10] 前記(C)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して4.6~7.6質量%である、前記[6]~[9]のいずれかのアセトアミノフェン含有錠剤。
[11] 前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.8~1.2である、前記[6]~[10]のいずれかのアセトアミノフェン含有錠剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アセトアミノフェンを含有する錠剤において、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低い錠剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のアセトアミノフェン含有錠剤(以下、単に「錠剤」ともいう。)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する。以下、本発明の好ましい態様を挙げて説明する。
[第一の態様]
本発明の第一の態様の錠剤は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む薬物層を有し、(D)成分/(A)成分で表される質量比は0.4~3.2であり、(D)成分/(C)成分で表される質量比は1.4~10である。
薬物層は、以下に示す(E)成分をさらに含むことが好ましい。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、アセトアミノフェンである。
アセトアミノフェン(N-(4-hydroxyphenyl)acetamide)は、別名パラセタモールとも呼ばれ、日本薬局方に収載されている解熱鎮痛成分である。
【0013】
(A)成分の中位径は、0.1~200μmが好ましく、1~90μmがより好ましい。(A)成分の中位径が上記下限値以上であると、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。(A)成分の中位径が上記上限値以下であると、体内での(A)成分の溶出性が良好になりやすい。
なお、本明細書において、「中位径」とは、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。
粒子径は、体積平均粒子径を意味し、例えば、レーザー回折・散乱粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、イブプロフェンである。
イブプロフェン((RS)-2-(p-isobutylphenyl)propionic acid)は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)に分類される化合物である。
【0015】
(B)成分の中位径は、0.1~80μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、5~20μmがさらに好ましい。(B)成分の中位径が上記下限値以上であると、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。(B)成分の中位径が上記上限値以下であると、体内での(B)成分の溶出性が良好になりやすい。
【0016】
<(C)成分>
(C)成分は、カフェイン及び無水カフェインから選ばれる1種以上である。
カフェイン及び無水カフェインは、日本薬局方に収載されている鎮痛補助成分である。
後述の粉体混合物の杵及び臼へのの付着が抑制されやすい観点から、(C)成分としては、無水カフェインが好ましい。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(C)成分の中位径は、20~600μmが好ましく、150~400μmがより好ましい。(C)成分の中位径が上記下限値以上であると、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。(C)成分の中位径が上記上限値以下であると、体内での(C)成分の溶出性が良好になりやすい。
【0018】
<(D)成分>
(D)成分は、マグネシウムを含有する制酸剤である。
本発明において、制酸剤とは、日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められる制酸力が50mL以上であるものをいう。
日本薬局方(第17局)で規定される制酸力試験法によって求められる制酸力とは、1g当たりの0.1mol/L塩酸の消費量(mL)で示される。
【0019】
(D)成分としては、例えば酸化マグネシウム(制酸力:460~500mL)、合成ヒドロタルサイト(制酸力:240~310mL)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(制酸力:210~250mL)、ケイ酸アルミン酸マグネシウム(制酸力:250~290mL)、水酸化マグネシウム(制酸力:320~360mL)、炭酸マグネシウム(制酸力:200~240mL)等が挙げられる。これの中でも、打錠時において臼との摩擦が低減される観点から、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好ましい。
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
酸化マグネシウムの中位径は、10~400μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。
合成ヒドロタルサイトの中位径は、10~400μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの中位径は、10~400μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。
(D)成分の中位径が上記下限値以上であると、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。(D)成分の中位径が上記上限値以下であると、体内での(D)成分の溶出性が良好になりやすい。
【0021】
<(E)成分>
(E)成分は、クロスカルメロースナトリウム及び部分α化デンプンから選ばれる1種以上である。
クロスカルメロースナトリウムは、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)の架橋重合物である。
部分α化デンプンは、デンプンの一部をα化したものである。
(E)成分は、崩壊剤として含有することが知られているが、本発明では、経時的な錠剤の硬度低下を抑制し、かつ摩損度を改善する効果を奏する。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
クロスカルメロースナトリウムの中位径は、10~400μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。
部分α化デンプンの中位径は、10~400μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。
(E)成分の中位径が上記下限値以上であると、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。(E)成分の中位径が上記上限値以下であると、錠剤中での分布の均一性が良好になりやすい。
【0023】
<含有量・質量比>
1錠当たりの(A)成分の含有量は、50~160mgが好ましく、60~120mgがより好ましく、70~90mgがさらに好ましい。1錠当たりの(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。1錠当たりの(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0024】
薬物層中の(A)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して10~30質量%が好ましく、14~25質量%がより好ましい。薬物層中の(A)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。薬物層中の(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0025】
1回当たりの(A)成分の服用量は、130~200mgが好ましく、140~180mgがより好ましく、150~170mgがさらに好ましい。1回当たりの(A)成分の服用量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。1回当たりの(A)成分の服用量が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0026】
1錠当たりの(B)成分の含有量は、50~160mgが好ましく、60~120mgがより好ましく、70~90mgがさらに好ましい。1回当たりの(A)成分の服用量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。1回当たりの(A)成分の服用量が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0027】
薬物層中の(B)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して10~30質量%が好ましく、14~25質量%がより好ましい。薬物層中の(B)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。薬物層中の(B)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0028】
1回当たりの(B)成分の服用量は130~200mgが好ましく、140~180mgがより好ましく、150~170mgがさらに好ましい。1回当たりの(A)成分の服用量が上記下限値以上であれば、解熱鎮痛効果が十分に得られる。1回当たりの(A)成分の服用量が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0029】
1錠当たりの(C)成分の含有量は、10~35mgが好ましく、15~30mgがより好ましく、23~27mgがさらに好ましい。1錠当たりの(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、鎮痛補助効果が十分に得られる。1錠当たりの(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、摩損度がより低くなる。さらに、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
なお、本発明において、(C)成分の質量は、無水物換算とする。
【0030】
薬物層中の(C)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して1.5~10質量%が好ましく、4.6~7.6質量%がより好ましい。薬物層中の(C)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、鎮痛補助効果が十分に得られる。薬物層中の(C)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、摩損度がより低くなる。さらに、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0031】
1回当たりの(C)成分の服用量は、20~70mgが好ましく、30~60mgがより好ましく、46~54mgがさらに好ましい。1回当たりの(C)成分の服用量が上記下限値以上であれば、鎮痛補助効果が十分に得られる。1回当たりの(C)成分の服用量が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0032】
1錠当たりの(D)成分の含有量は、35~250mgが好ましく、45~155mgがより好ましく、60~120mgがさらに好ましい。1錠当たりの(D)成分の配合量が上記範囲内であれば、十分な制酸力が得られる。加えて、服用しやすい錠剤の大きさになる。加えて、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなり、摩損度がより低くなる。
【0033】
薬物層中の(D)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して5~50質量%が好ましく、9~48質量%がより好ましい。薬物層中の(D)成分の含有割合が上記範囲内であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、摩損度がより低くなる。
薬物層中のマグネシウムの含有割合は、薬物層の総質量に対して0.1~35質量%が好ましく、0.6~29質量%がより好ましい。薬物層中のマグネシウムの含有割合が上記範囲内であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、摩損度がより低くなる。
【0034】
1回当たりの(D)成分の服用量は、70~500mgが好ましく、90~310mgがより好ましく120~240mgがさらに好ましい。1回当たりの(D)成分の服用量が上記範囲内であれば、十分な制酸力が得られる。加えて、服用しやすい錠剤の大きさになる。
【0035】
1錠当たりの(E)成分の含有量は、5~150mgが好ましく、10~100mgがより好ましく、20~80mgがさらに好ましい。1錠当たりの(E)成分の含有量が上記下限値以上であれば、摩損度がより低くなる。加えて、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。1錠当たりの(E)成分の含有量が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。加えて、保存後の錠剤が膨れにくくなる。
【0036】
薬物層中の(E)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して1質量%以上が好ましく、1~30質量%がより好ましく、2~30質量%がさらに好ましい。薬物層中の(E)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、経時による錠剤の硬度低下がより生じにくくなる。加えて、摩損度がより低くなる。薬物層中の(E)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。加えて、保存後の錠剤が膨れにくくなる。
【0037】
(D)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「D/A比」ともいう。)は0.4~3.2であり、0.4~2が好ましい。D/A比が上記下限値以上であれば、(D)成分が(A)成分との粒子間の結合をつなぎ留めるため、打錠時の応力が経時的に緩和されることによる(A)成分同士の結合力又は(A)成分と他の成分との結合力の低下を抑制でき、経時による錠剤の硬度低下が生じにくくなる。加えて、摩損度が低くなる。D/A比が上記上限値以下であれば、(D)成分同士の結合数が過多となりにくく、経時による錠剤の硬度低下が生じにくくなる。加えて、摩損度が低くなる。
【0038】
(D)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「D/C比」ともいう。)は1.4~10であり、1.4~6.2が好ましい。D/C比が上記下限値以上であれば、(C)成分の低い結合力を補い、摩損度が低くなる。加えて、経時による錠剤の硬度低下が生じにくくなる。D/C比が上記上限値以下であれば、(D)成分同士の結合数が過多となりにくく、経時による錠剤の硬度低下が生じにくくなる。加えて、摩損度が低くなる。
【0039】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)は0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、1がさらに好ましい。A/B比が上記範囲内であれば、相乗的解熱鎮痛作用が得られやすくなり、作用持続時間が長くなるため、(C)成分の含有割合が低くても、高い解熱鎮痛効果が得られる。加えて、(B)成分による胃傷害や腸傷害が抑制されやすくなる。
【0040】
(D)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「D/B比」ともいう。)は0.21~3.13が好ましく、0.4~3.2がより好ましい。D/B比が上記下限値以上であれば、打錠時において臼との摩擦が低減される。D/B比が上記上限値以下であれば、(D)成分同士の結合数が過多となりにくく、経時による錠剤の硬度低下が生じにくくなる。加えて、摩損度が低くなる。
【0041】
なお、(D)成分の種類に応じた各成分の含有割合及び質量比の好ましい範囲を以下に示す。
((D)成分が酸化マグネシウム(以下、「(D-1)成分」ともいう。)である場合)
薬物層中の(A)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して19~22質量%が好ましい。
薬物層中の(B)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して19~22質量%が好ましい。
薬物層中の(C)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して5.9~7質量%が好ましい。
薬物層中の(D-1)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して9~20質量%が好ましく、9~16質量%がより好ましい。
薬物層中の(E)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して3質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。薬物層中の(E)成分の含有割合の上限値は30質量%が好ましい。
(D-1)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「D-1/A比」ともいう。)は0.4~1.05が好ましく、0.4~0.75がより好ましく、0.5~0.6がさらに好ましい。
(D-1)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「D-1/C比」ともいう。)は1.4~3.4が好ましく、1.4~2.4がより好ましく、1.5~2がさらに好ましい。
(D-1)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「D-1/B比」ともいう。)は0.21~1.1が好ましく、0.44~0.75がより好ましい。
【0042】
((D)成分が合成ヒドロタルサイト(以下、「(D-2)成分」ともいう。)である場合)
薬物層中の(A)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して16~23質量%が好ましく、19~21質量%がより好ましい。
薬物層中の(B)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して16~23質量%が好ましく、19~21質量%がより好ましい。
薬物層中の(C)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して5.2~7.1質量%が好ましく、6.1~6.5質量%がより好ましい。
薬物層中の(D-2)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して28~48質量%が好ましく、34~38質量%がより好ましい。
薬物層中の(E)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。薬物層中の(E)成分の含有割合の上限値は30質量%が好ましい。
(D-2)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「D-2/A比」ともいう。)は1.2~2.9が好ましく、1.6~2がより好ましい。
(D-2)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「D-2/C比」ともいう。)は4~9.2が好ましく、5.3~6.2がより好ましい。
(D-2)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「D-2/B比」ともいう。)は1.25~2.9が好ましく、1.6~1.94がより好ましい。
【0043】
((D)成分がメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(以下、「(D-3)成分」ともいう。)である場合)
薬物層中の(A)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して14~25質量%が好ましく、19~23質量%がより好ましい。
薬物層中の(B)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して14~25質量%が好ましく、19~23質量%がより好ましい。
薬物層中の(C)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して4.6~8質量%が好ましく、6~7.2質量%がより好ましい。
薬物層中の(D-3)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して10~46質量%が好ましく、14~29質量%がより好ましい。
薬物層中の(E)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。薬物層中の(E)成分の含有割合の上限値は30質量%が好ましい。
(D-3)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「D-3/A比」ともいう。)は0.4~3.2が好ましく、0.6~1.5がより好ましい。
(D-3)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「D-3/C比」ともいう。)は1.4~10が好ましく、2~4.8がより好ましい。
(D-3)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「D-3/B比」ともいう。)は0.4~3.2が好ましく、0.6~1.5がより好ましい。
【0044】
<任意成分>
錠剤には、本発明の効果等を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外の生理活性成分(以下、「他の生理活性成分」ともいう。)、(E)成分以外の添加剤(以下、「他の添加剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0045】
他の生理活性成分としては、例えばアスピリン(アセチルサリチル酸)、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブフェキサマック、ジクロフェナック、アルクロフェナック、エトドラック、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム等の非ステロイド抗炎症剤;ニトラゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタ-ル、アミバルビタ-ル、アリルイソプロピリアセチル尿素等の催眠・鎮静剤;フェニトイン、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン、バルプロ酸等の抗てんかん剤;塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等の鎮うん剤;ハロペリドール、クロルジアゼポキシド、ジアゼバム、スルピリド等の精神神経用剤;アトロピン等の鎮けい剤;ジゴキシン等の強心剤;ピンドロール、ジソピラミド等の不整脈剤;ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等の利尿剤;塩酸プラゾシン等の抗高血圧剤;硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ジピリダモール等の冠血管拡張剤;ノスカピン、ツロプテロール、トラニラスト等の鎮咳剤;塩酸ブロムヘキシン等の去痰剤;エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、グリセオフルビン等の抗生物質;フマル酸クレマスチン等の抗ヒスタミン剤;デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、酢酸クロルマジノン等のステロイド剤;ビタミンA類、葉酸(ビタミンM類)等のビタミン剤;ファモチジン、メトクロプラミド、オメプラゾール、トレピブトン、スクラルファート等の消化器系疾患治療剤;乾燥水酸化アルミニウムゲル(制酸力:約300~340mL)、炭酸水素ナトリウム(制酸力:100~140mL)、炭酸カルシウム(制酸力:180~220mL)、沈降炭酸カルシウム(制酸力:180~220mL)、水酸化カルシウム(制酸力:250~290mL)等の(D)成分以外の制酸剤(以下、「他の制酸剤」ともいう。);クロフィブラート、メルカプトプリン、メトトレキサート、メシル酸ジヒドロエルゴタミン等が挙げられる。
他の生理活性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
他の添加剤としては、例えば(E)成分以外の崩壊剤(以下、「他の崩壊剤」ともいう。)、賦形剤、結合剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味剤等が挙げられる。
【0047】
他の崩壊剤としては、例えばカルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば糖類、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、リン酸二水素カリウム、L-システイン等が挙げられる。糖類として具体的には、単糖類(キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース、異性化乳糖、その他各種オリゴ糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
【0048】
結合剤としては、例えばデンプン、可溶性デンプン、デキストリン、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ゼラチン、トラガントガム、ローカストビーンガム、カゼイン等の天然高分子;ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチル化デンプンナトリウム、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、部分けん化酢酸ビニルとビニルエーテルの共重合体、(メタ)アクリル酸及びそのエステル又は塩の重合体若しくは共重合体、マレイン酸及びそのエステル又は塩の重合体若しくは共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)等の合成高分子等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0049】
香料としては、例えばメントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等が挙げられる。
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース、マンニトール、エリスリトール等が挙げられる。
酸味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びこれらの塩等が挙げられる。
他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
錠剤が任意成分を含有する場合、任意成分の含有割合は、錠剤の総質量に対して10~60質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましく、30~40質量%がさらに好ましい。任意成分の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤の賦形性、崩壊性を向上しやすい。任意成分の含有割合が上記上限値以下であれば、解熱、鎮痛効果が発揮されやすい。
ただし、他の制酸剤の含有割合は、経時による錠剤の硬度低下をより抑制する観点から、錠剤の総質量に対して1質量%未満が好ましく、錠剤は実質的に他の制酸剤を含有しないことがより好ましい。ここで、「実質的に他の制酸剤を含有しない」とは、意図せずして含有するものを除き、他の制酸剤を積極的に配合しないことを意味する。
なお、錠剤を構成する各成分の合計量は、錠剤の質量基準に対して100質量%を超えない。
【0051】
<摩損度>
摩損度は、錠剤の衝撃に対する摩損性やもろさの指標である。
摩損度は、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法を参考に、1錠が650mg以下の場合は合計量が6.5gにできるだけ近い値となる数の錠剤を試料とし、1錠が650mgを超える場合は10錠を試料とし、試験機にて25±1rpmの回転速度で100回転させた後に、全錠剤の質量を精密に測定し、回転前の全錠剤の質量(初期質量)に対する減少質量の質量百分率を算出することにより求められる値をいう。
【0052】
第十七改正日本薬局方の参考情報によれば、錠剤の摩損度は1.0%以下が好ましいとされている。しかしながら、実際の商用生産では、傾斜をつけた搬送経路から、数10kgの錠剤がドラム缶に直接投入される。また、錠剤をコーティングしてコーティング錠とする場合にはコーティングパンに100kg以上の錠剤が仕込まれ、100回転以上の衝撃が加わることもある。そのため、本発明における錠剤の摩損度は、0.5%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましく、0.15%以下がさらに好ましく、0.1%以下が特に好ましく、0.05%以下が最も好ましい。錠剤の摩損度が上記上限値以下であれば、実際の生産において摩損が生じにくい。
【0053】
<錠剤の形態>
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から錠剤の径φとして5~14mmが好ましく、6~13mmがより好ましく、7~12mmがさらに好ましい。また1錠当たりの錠剤質量は、150~550mgが好ましい。
また、錠剤の形状としては特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。
【0054】
錠剤は、単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよい。
錠剤が単層錠の場合、錠剤は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて(E)成分及び任意成分の1つ以上とを含む薬物層で構成される。一方、錠剤が積層錠の場合、錠剤は、前記薬物層と、薬物層以外の層(任意層)とで構成される。
なお、錠剤が積層錠の場合、任意層は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分のいずれか1以上を含んでいてもよいし、いずれも含まなくてもよい。任意層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有割合等は、錠剤1錠当たりのこれらの成分の服用量等を勘案して適宜、選択することができる。また、上述した任意成分は、薬物層のみに含まれていてもよいし、任意層のみに含まれていてもよいし、薬物層及び任意層の両方に含まれていてもよい。錠剤が単層錠の場合、任意成分は薬物層に含まれる。
【0055】
<製造方法>
本発明の第一の態様の錠剤は、薬物層を構成する成分を含む粉体混合物を打錠成形して薬物層を形成することで得られる。このようにして得られる錠剤は、少なくとも(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分が同一層に存在する。
以下、本発明の第一の態様の錠剤の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む粉体混合物を打錠して薬物層を形成する打錠工程を有する。
【0056】
粉体混合物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて(E)成分及び任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。各成分を混合する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。混合に使用する装置としては、例えばボーレコンテナミキサー、V型混合機、Wコーン型混合機等が挙げられる。
【0057】
なお、粉体混合物を調製する際、各成分は粉体状で用いてもよいし、流動性を改善する目的で予め造粒しておいてもよい。
造粒方法としては、例えばローラーコンパクター(フロイント・ターボ株式会社製)等を用いた圧縮造粒、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)等を用いた高速攪拌造粒、フローコーター(フロイント産業株式会社製)等を用いた流動層造粒等が挙げられる。これらの中でも、顆粒が潰れやすく、製造直後の錠剤硬度を高められる点で、流動層造粒が好ましい。
粉体混合物に含まれる成分のうち、特に(A)成分は結合力が低く、また(B)成分は打錠時の装置への付着性が高いため、造粒することが好ましく、中でも流動層造粒が好ましい。例えば、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方と、結晶セルロースや糖アルコール等の賦形剤とを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を結合剤として噴霧して、流動層造粒機で造粒することが好ましい。なお、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び任意成分は造粒しなくてもよいし、造粒してもよい。
【0058】
粉体混合物を打錠する方法としては、例えば臼と杵とを備えた打錠機を用いて打錠する方法が挙げられる。打錠機としては、高い生産効率を有するロータリー式打錠機が好ましい。
ロータリー式打錠機は、回転盤を備える。回転盤の回転速度は適宜調整可能だが、10~100rpmが好ましく、25~60rpmがより好ましい。回転盤の回転速度が上記下限値以上であれば、生産効率を高められる。回転盤の回転速度が上記上限値以下であれば、圧縮時間が長くなることで薬物層中の空気が抜けやすく錠剤硬度が高められる。
なお、錠剤が積層錠である場合、薬物層を構成する成分を含む粉体混合物(以下、「第一の粉体混合物」ともいう。)は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分を含む粉体混合物(以下、「第二の粉体混合物」ともいう。)よりも後に充填されてもよい。
【0059】
得られた錠剤は、服用性の向上等を目的として、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。
なお、本明細書において、コーティング前の錠剤を「素錠」ともいう。また、コーティング後の錠剤を「コーティング錠」ともいう。
また、本明細書において、コーティング処理により薬物層の表面に形成されたコーティング層は、薬物層の一部とみなす。
【0060】
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも被膜形成剤、可塑剤及び着色剤の1つ以上を含有することが好ましい。
被膜形成剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばマクロゴール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、カルナウバロウ等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
着色剤としては、例えば酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキ等が挙げられる。
コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
素錠をコーティング処理する方法特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。コーティング処理に使用する装置としては、例えばハイコーター、アクアコーター、ドリアコーター等が挙げられる。
【0062】
<作用効果>
本発明の第一の態様の錠剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を特定の質量比で含む薬物層を有するので、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低い。
【0063】
[第二の態様]
本発明の第二の態様の錠剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含む薬物層を有し、(E)成分の含有割合は薬物層の総質量に対して1質量%以上である。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分は、それぞれ第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
(A)~(D)成分の1錠当たりの好適な含有量、薬物層中の好適な含有割合及び1回当たりの好適な服用量は、それぞれ第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
また、好適なD/A比、D/C比、A/B比及びD/B比は、それぞれ第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
1錠当たりの(E)成分の含有量は、5~150mgが好ましく、10~100mgがより好ましく、20~80mgがさらに好ましい。また、薬物層中の(E)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して1質量%以上が好ましく、1~30質量%がより好ましく、2~30質量%がさらに好ましい。好ましい理由は、第一の態様と同様である。(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種組み合わせて用いることがより好ましい。
【0065】
錠剤には、本発明の効果等を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分は、第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
錠剤の摩損度、錠剤の形状及び錠剤の形態は、それぞれ第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
本発明の第二の態様の錠剤は、薬物層を構成する成分を含む粉体混合物を打錠成形して薬物層を形成することで得られる。このようにして得られる錠剤は、少なくとも(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分が同一層に存在する。
以下、本発明の第二の態様の錠剤の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分を含む粉体混合物を打錠して薬物層を形成する打錠工程を有する。
【0067】
粉体混合物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分と、必要に応じて任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。
各成分は粉体状で用いてもよいし、流動性を改善する目的で予め造粒しておいてもよい。
また、粉体混合物を打錠した後に、コーティング剤によりコーティング処理してもよい。
各成分を混合する方法、造粒する方法、粉体混合物を打錠する方法、コーティング処理する方法及びコーティング剤は、それぞれ第一の態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0068】
本発明の第二の態様の錠剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、特定量の(E)成分とを含む薬物層を有するので、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低い。
【実施例0069】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各例で使用した原料、打錠条件及び評価方法は、以下の通りである。
【0070】
「使用原料」
使用原料として、以下に示す化合物を用いた。
・アセトアミノフェン:スペラネクサス株式会社製、商品名「アセトアミノフェン」、中位径60μm。
・イブプロフェン:BASF社製、商品名「イブプロフェン25」、中位径25μm。
・無水カフェイン:白鳥製薬株式会社製、商品名「無水カフェイン02/05」、中位径210μm。
・酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製、商品名「酸化マグネシウム重質」、中位径55μm。
・合成ヒドロタルサイト(協和化学工業株式会社製、商品名「アルカマックSN」、中位径150μm。
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業株式会社製、商品名「ノイシリン」、中位径120μm。
・クロスカルメロースナトリウム(クロスCMC-Na):ニチリン化学工業株式会社製、商品名「キッコレートND-2HS」、中位径110μm。
・部分α化デンプン:旭化成株式会社製、商品名「PCS PC-10」、中位径70μm。
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社製、商品名「HPC-SSL」。
・軽質無水ケイ酸:富士シリシア株式会社製、商品名「サイリシア350」、中位径2μm。
・トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製、商品名「局方松谷コーンスターチ」、中位径20μm。
・結晶セルロース:旭化成株式会社製、商品名「セオラス UF-702」、中位径95μm。
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、商品名「ステアリン酸マグネシウム」、中位径2μm。
・ヒプロメロース:信越化学工業株式会社製、商品名「TC-5R」。
・ポリエチレングリコール6000(マクロゴール6000):日油株式会社製、商品名「マクロゴール6000」
・酸化チタン:フロイント産業株式会社製、商品名「酸化チタン」、中位径1μm。
・タルク:松村産業株式会社製、商品名「ハイフィラー」、中位径10μm。
【0071】
[測定・評価方法]
<硬度の測定>
錠剤をPTP(Press Through Package)包装材料(住友ベークライト株式会社製、商品名「VSL-4610N」)を用いてPTP包装した。PTP包装が施された錠剤を50℃、75%RHで5週間保存した。
保存前と保存後の錠剤10錠の硬度を硬度計 (ジャパンマシナリー株式会社製、製品名「WHT」)を用いて測定し、その平均値を求めた。保存前の錠剤の硬度を「初期硬度」とする。
【0072】
<摩損度の測定>
摩損度は、第十七改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法を参考にして測定した。具体的には、1錠が650mg以下の場合は合計量が6.5gにできるだけ近い値となる数の錠剤を試料とし、1錠が650mgを超える場合は10錠を試料とし、試験機にて25±1rpmの回転速度で100回転させた後に、全錠剤の質量を精密に測定し、回転前の全錠剤の質量(初期質量)に対する減少質量の質量百分率を算出した。
なお、摩損度試験には、コーティング前の錠剤(素錠)を用いた。
【0073】
[例1~33]
(A)成分1.5kgと、(B)成分1.5kgとを流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、製品名「FLO-5」)に仕込み、濃度が5質量%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧しながら流動層造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物の中位径は155μmであった。
【0074】
1錠当たりの組成が表1~8に示す配合組成となるように、先に得られた造粒物と、(C)成分と(D)成分と(E)成分と任意成分(ただし、コーティング剤として用いた任意成分を除く)とを合計で2.5kg量り取り、ビニール袋に入れて振って混合し、粉体混合物を得た。
得られた粉体混合物を打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「リブラ2」)を用い、予圧2kN、本圧7kNの条件にて打錠し、素錠を得た。打錠に用いた臼の径φは表1~8に示したものを用いた。臼及び杵の具体的な形状は以下の通りであった。
・臼杵:φ9mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ1.5mm、 R1=3.2、R2=9.5)。
・臼杵:φ9.5mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ1.5mm、 R1=3.8、R2=10.0)。
・臼杵:φ10mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ1.5mm、 R1=4.0、R2=11.5)。
・臼杵:φ11mm(2段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さ1.6mm、 R1=4.4、R2=12.5)。
【0075】
別途、ヒプロメロースを60g、マクロゴール6000を20g、酸化チタンを20g、タルクを20g混合し、得られた混合物を固形分濃度が15質量%となるように水に分散させコーティング液を調製した。
コーティング機(フロイント産業株式会社製、製品名「ハイコーターFZ LABO30型」)を用いて、素錠1kgの表面にコーティング液を噴霧した後、乾燥させて、錠剤を得た。なお、コーティング剤として用いた任意成分の1錠当たりの配合割合が表1~8に示す値となるように、コーティング液の噴霧量を調整した。
得られた錠剤について、硬度及び摩損度を測定した。結果を表1~8に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表中、「D/A比」は、(D)成分/(A)成分で表される質量比である。「D/B比」は、(D)成分/(B)成分で表される質量比である。「A/B比」は、(A)成分/(B)成分で表される質量比である。「D/B比」は、(D)成分/(B)成分で表される質量比である。
【0085】
表1~8の結果より、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を特定の質量比で含む薬物層を有する錠剤、並びに、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、特定量の(E)成分を含む薬物層を有する錠剤は、経時的な硬度低下が抑制され、かつ摩損度が低く、摩損が生じにくかった。
例13~17を比較すると、(E)成分を含有する例14~17で得られた錠剤は、(E)成分を含まない例13で得られた錠剤に比べて経時的な硬度低下をより抑制できた。同様に、例19~22で得られた錠剤は、例18で得られた錠剤に比べて経時的な硬度低下をより抑制でき、例24~27で得られた錠剤は、例23で得られた錠剤に比べて経時的な硬度低下をより抑制できた。また、(E)成分を含有する例は、摩損度が低く、摩損をより抑制できた。
【0086】
対して、(D)成分を含まない例29で得られた錠剤は、保存後に硬度が低下しやすかった。また、摩損度が高く、摩損しやすかった。
D/A比が0.4未満である例30で得られた錠剤は、保存後に硬度が低下しやすかった。また、摩損度が高く、摩損しやすかった。
D/A比が0.4未満であり、D/C比が1.4未満である例31で得られた錠剤は、保存後に硬度が低下しやすかった。また、摩損度が高く、摩損しやすかった。
D/A比が3.2超である例32で得られた錠剤は、保存後に硬度が低下しやすかった。また、摩損度が高く、摩損しやすかった。
D/C比が10超である例33で得られた錠剤は、保存後に硬度が低下しやすかった。また、摩損度が高く、摩損しやすかった。