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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087879
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】樹木支持吊床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20230619BHJP
   E04B 1/36 20060101ALI20230619BHJP
   E04G 3/30 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E04B5/43 Z
E04B1/36 Q
E04G3/30 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202412
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武文
(72)【発明者】
【氏名】田垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 直行
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003AA02
2E003AC02
2E003EB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹木に固定される樹木固定部と、樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造において、特に重量のある床構造を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合であっても、張弦床構造体として合理的な構成を採用しながら、樹木の損傷を極力抑えて、樹木に樹木固定部を安定して固定する。
【解決手段】樹木固定部10が、樹木1に形成された貫通孔1aに嵌入される乾燥木材製の乾燥木質嵌入部材11と、乾燥木質嵌入部材11に固定されて吊り部材20が掛け下げられる固定部材13と、を有して構成されており、床構造体30が、床梁31と、床梁31の腹部から下方に突出する束柱33と、束柱33の下端部と床梁31の端部とを連結する張弦部材37と、を有して構成されており、吊り部材20と張弦部材37とが床梁31の端部において連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木に固定される樹木固定部と、当該樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、当該吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造であって、
前記樹木固定部が、前記樹木に形成された貫通孔に嵌入される乾燥木材製の乾燥木質嵌入部材と、当該乾燥木質嵌入部材に固定されて前記吊り部材が掛け下げられる固定部材と、を有して構成されており、
前記床構造体が、床梁と、当該床梁の腹部から下方に突出する束柱と、当該束柱の下端部と前記床梁の端部とを連結する張弦部材と、を有して構成されており、
前記吊り部材と前記張弦部材とが前記床梁の端部において連結されている樹木支持吊床構造。
【請求項2】
前記吊り部材と前記張弦部材とを前記床梁の端部にて連結する連結部材を備え、
前記連結部材が、前記床梁の下面に添えられた状態で当該床梁を貫通する吊り部材の下端に接続されている請求項1に記載の樹木支持吊床構造。
【請求項3】
前記床構造体が、平面視で三角形の各辺に前記床梁を配置すると共に、当該配置された夫々の前記床梁の腹部から下方に突出する前記束柱の下端部同士を連結する束柱連結部材を有して構成されている請求項1又は2に記載の樹木支持吊床構造。
る。
【請求項4】
前記樹木の成長に応じて前記吊り部材の長さ調整可能な吊り長さ調整部を備える請求項1~3の何れか1項に記載の樹木支持吊床構造。
【請求項5】
前記樹木の外表面と前記床構造体の端部との間に緩衝材が介在されている請求項1~4の何れか1項に記載の樹木支持吊床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木に固定される樹木固定部と、当該樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、当該吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り部材の下端に床構造体が接続して当該床構造体を吊り支持する吊床構造が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
特許文献1記載の吊床構造では、床構造体(10)は、床梁(14)と、当該床梁(14)の腹部から下方に突出する束柱(18)と、当該束柱(18)の下端部と前記床梁(14)の端部とを連結する張弦部材(26)と、を有する所謂張弦床構造体として構成されていると共に、床梁(14)に対して、吊り部材(12)は端部において最も外側に接続されており、張弦部材(26)は床梁(14)の端部において吊り部材(12)の接続箇所よりも内側に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3308212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように張弦床構造体を採用した吊床構造では、吊り部材と張弦部材とが床梁の端部に対して互いに異なる箇所で接続されているので、床梁の端部において吊り部材から伝達される張力と張弦部材から伝達される張力とによって比較的大きな回転モーメントが付加されることになって、特に重量のある床構造を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合には、床梁の十分な高強度化や高剛性化が必要となり、コストアップや構造の煩雑化の要因となる。
また、上述の張弦床構造体を採用した吊床構造において、吊り部材を樹木に固定される樹木固定部に掛け下げることで、樹木によって床構造体を支持する樹木支持吊床構造を実現することができるが、この場合には、樹木に対して樹木固定部を安定して固定しながら、樹木の損傷を極力抑えることが重要となる。しかしながら、樹木に固定されて吊り部材が掛け下げられる樹木固定部の形態によっては、樹木への安定した固定が困難になる上に、樹木内部での水分通導を阻害して樹木の損傷を引き起こす場合がある。例えば、樹木の外周に巻き付けたバンドにより樹木固定部を固定する方法では、樹木内部において主に外周側の導管を通じて行われる水分通導がバンドによって阻害されることが考えられる。また、樹木に直接的に埋め込んだ金属製のスクリューボルトにより樹木固定部を固定する方法では、特に重量のある床構造を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合には、比較的小径のスクリューボルトから樹木に対して非常に大きな応力がかかることで樹木が損傷し易くなって、樹木固定部の安定性が損なわれることが考えられる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、樹木に固定される樹木固定部と、当該樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、当該吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造において、特に重量のある床構造を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合であっても、張弦床構造体として合理的な構成を採用しながら、樹木の損傷を極力抑えて、樹木に樹木固定部を安定して固定することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、樹木に固定される樹木固定部と、当該樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、当該吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造であって、
前記樹木固定部が、前記樹木に形成された貫通孔に嵌入される乾燥木材製の乾燥木質嵌入部材と、当該乾燥木質嵌入部材に固定されて前記吊り部材が掛け下げられる固定部材と、を有して構成されており、
前記床構造体が、床梁と、当該床梁の腹部から下方に突出する束柱と、当該束柱の下端部と前記床梁の端部とを連結する張弦部材と、を有して構成されており、
前記吊り部材と前記張弦部材とが前記床梁の端部において連結されている点にある。
【0007】
本構成によれば、樹木に形成された貫通孔に嵌入されて固定部材が固定される乾燥木質嵌入部材は、樹木内部の水分を吸収することにより当該貫通孔内で若干膨張する。よって、樹木に対して乾燥木質嵌入部材が強固に固定されることになるので、当該乾燥木質嵌入部材に対して安定して固定部材を固定することができる。加えて、乾燥木質嵌入部材と樹木の貫通孔の内面との接触面積が比較的広く確保されているので、特に重量のある床構造体を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合であっても、樹木にかかる応力を極力小さくして、当該応力による樹木の損傷を抑制することができる。また、樹木には貫通孔を形成する必要があるが、樹木内部において主に外周側の導管を通じて行われる水分通導を阻害せずに維持することができる。
更に、床構造体においては、吊り部材と張弦部材とが床梁の端部において連結されているので、その床梁の端部において張弦部材から伝達される張力を直接的に吊り部材から伝達される張力により受けることができる。よって、特に重量のある床構造体を吊り支持して吊り部材に比較的大きな張力が発生する場合であっても、これら張力に起因して床梁の端部に比較的大きな回転モーメントが付加されることを回避して、床梁の過剰な高強度化や高剛性化を不要とすることができる。
従って、本発明により、樹木に固定される樹木固定部と、当該樹木固定部に掛け下げられる吊り部材と、当該吊り部材の下端に接続されて吊り支持される床構造体と、を備えた樹木支持吊床構造において、張弦床構造体として合理的な構成を採用しながら、樹木の損傷を極力抑えて、樹木に樹木固定部を安定して固定することができる技術を提供することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記吊り部材と前記張弦部材とを前記床梁の端部にて連結する連結部材を備え、
前記連結部材が、前記床梁の下面に添えられた状態で当該床梁を貫通する吊り部材の下端に接続されている点にある。
【0009】
本構成によれば、吊り部材は、床梁を貫通することで屈曲することなくその下端を床梁の下面に位置せることができ、一方、張弦部材は、床梁の腹部から下方に突出する束柱の下端部と床梁の端部とを連結することで屈曲することなくその端部を床梁の下面に位置させることができる。よって、これら吊り部材と張弦部材とを、これらの屈曲を回避しながら、床梁の端部の下面に添えられた連結部材により連結することができる。
更に、連結部材に対し吊り部材からは略鉛直上向きの張力が伝達されることになるが、その張力の鉛直成分を床梁の端部の下面に好適に支持することができる。また、連結部材に対し張弦部材からは略水平内向きの張力が伝達されることになるが、その張力の水平成分を床梁の軸力により好適に支持することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記床構造体が、平面視で三角形の各辺に前記床梁を配置すると共に、当該配置された夫々の前記床梁の腹部から下方に突出する前記束柱の下端部同士を連結する束柱連結部材を有して構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、床構造体を、平面視で三角形の各辺に床梁を配置した三角形配置構成とするので、平面視で四角形の各辺に床梁を配置した一般的な四角形配置構造とする場合と比較して、合理的な構成を採用しながら、平面の剛性を向上しつつ軽量化を図ることができる。更に、上記束柱連結部材により、平面視で三角形の各辺に配置された夫々の床梁の束柱の下端部同士を連結することで、当該束柱の倒れを軽減して安定化させることができる。
また、上記三角形配置構造の床構造体を複数組み合わせれば、例えば樹木の配置等に合わせて多様な形状の床を構築することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記樹木の成長に応じて前記吊り部材の長さ調整可能な吊り長さ調整部を備える点にある。
【0013】
本構成によれば、上記吊り長さ調整部により、樹木の成長に合わせて吊り部材の長さを伸長して、床構造体の設置高さを維持することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記樹木の外表面と前記床構造体の端部との間に緩衝材が介在されている点にある。
【0015】
本構成によれば、上記緩衝材により、樹木の外表面に対して床構造体の端部が衝撃を加えることを緩和して、当該樹木の外表面の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における樹木支持吊床構造の全体構成を示す正面図
図2図1における樹木固定部の拡大図
図3図1における床構造体の端部の拡大図
図4】別の実施形態における樹木固定部の拡大図
図5】床構造体の概略構成を示す斜視図
図6】複数の床構造体の配置例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態の樹木支持吊床構造(以下「本吊床構造」と呼ぶ。)100は、図1に示すように、樹木1に対して床構造体30を吊り支持したものとして構成されている。即ち、本吊床構造100は、樹木1に固定される樹木固定部10と、当該樹木固定部10に掛け下げられる吊り部材20と、当該吊り部材20の下端に接続されて吊り支持される床構造体30と、を備える。
【0018】
床構造体30は、図1及び図5に示すように、木材からなる床梁31と、その床梁31の略中央部である腹部から下方に突出する木材からなる束柱33と、その束柱33の下端部と床梁31の端部とを連結する張弦部材37と、を有して木質の床構造体として構成されている。
【0019】
床構造体30は、図5に示すように、3つの床梁31A,31B,31Cを平面視で三角形の各辺に配置した平面視三角形構成とされている。このことで、平面視で四角形の各辺に床梁を配置した一般的な四角形配置構造とする場合と比較して、合理的な構成を採用しながら、平面の剛性が向上しつつ軽量化が図られている。
【0020】
夫々の床梁31A,31B,31Cには、その腹部から下方に突出する束柱33A,33B,33Cが設けられている。そして、束柱33A,33B,33Cの倒れを軽減して安定化させるために、これら束柱33A,33B,33Cの下端部同士が束柱連結部材40により連結されている。上記張弦部材37や上記束柱連結部材40としては、索条体や棒鋼やターンバックルなどを利用することができるが、本実施形態では、適宜張力を調整可能なターンバックルが利用されている。
【0021】
床構造体30において、平面視で三角形の各辺に配置された夫々の床梁31A,31B,31Cの束柱33A,33B,33Cの上端部に位置する腹部同士をつなぐ3つの小梁41が設けられている。この小梁41により床構造体30の水平方向の剛性が向上されている。そして、床梁31A,31B,31及び小梁41上に、木材からなる複数の床板43が敷設されている。
床構造体30は、上述のような三角形配置構成とされているので、図6に示すように、この三角形配置構造の床構造体30を複数組み合わせれば、例えば樹木1の配置に合わせて多様な形状の床を構築することができる。
【0022】
本吊床構造100は、張弦床構造体として合理的な構成を採用しながら、樹木1の損傷を極力抑えて、樹木1に樹木固定部10を安定して固定するための構成を採用しており、その詳細について以下に説明を加える。
【0023】
図1及び図2に示すように、樹木1に固定される樹木固定部10は、樹木1に形成された貫通孔1aに嵌入される乾燥木材製の乾燥木質嵌入部材11と、当該乾燥木質嵌入部材11に固定されて吊り部材20が掛け下げられる固定部材13と、を有して構成されている。また、吊り部材20は、バックル本体22の回転により長さ調整可能なターンバックル21で構成されており、固定部材13は、そのターンバックル21を接合可能な接合金具14で構成されている。
【0024】
ターンバックル21のバックル本体22は、樹木1の成長に応じて当該ターンバックル21の長さ調整可能な吊り長さ調整部として機能する。このことで、樹木1の成長に合わせてバックル本体22の回転によりターンバックル21の長さが伸長されて、床構造体30の設置高さが維持される。また、ターンバックル21のバックル本体22による長さの調整代は、例えば本吊床構造100の維持年数での樹木1の予測生長長さを考慮して決定されている。
【0025】
尚、図1及び図2では、固定部材13とそれに掛け下げられる吊り部材20とを、接合金具14とターンバックル21とで構成したが、図4に示すように、吊り部材20をワイヤ23で構成し、固定部材13をそのワイヤ23を掛け下げることができるフック18で構成することもできる。また、吊り部材20を、ターンバックル21(図1及び図2を参照)以外のワイヤ23(図4を参照)などで構成する場合において、バックル本体22のような吊り長さ調整部を省略しても構わない。
【0026】
乾燥木質嵌入部材11は、樹木1に形成された円形断面の貫通孔1aと略同径の円柱状に形成されている。乾燥木質嵌入部材11には、その中心軸に沿ってラグスクリューボルト12が埋設されており、その両端部には固定用ボルト17が螺合可能なボルト穴が形成されている。
そして、固定部材13は、樹木1の貫通孔1aに嵌入された乾燥木質嵌入部材11の床構造体30側の端面(図1図2、及び図3の右側の端面)に対して、ラグスクリューボルト12の端部に螺合される固定用ボルト17により固定されている。
一方、乾燥木質嵌入部材11の床構造体30とは反対側の端面(図1図2、及び図3の左側の端面)には、乾燥木質嵌入部材11が樹木1の貫通孔1aから床構造体30側に抜けることを防止するための抜け止め金具15が、ラグスクリューボルト12の端部に螺合される固定用ボルト17により固定されている。
【0027】
上記のように樹木1の貫通孔1aに嵌入された乾燥木質嵌入部材11は、樹木1内部の水分を吸収することにより当該貫通孔1a内で若干膨張することで、樹木1に対して強固に固定される。このことで、乾燥木質嵌入部材11に対して固定部材13が安定して固定される。更に、乾燥木質嵌入部材11と貫通孔1aの内面との接触面積が比較的広く確保されている。このことで、特に重量のある床構造体30を吊り支持して吊り部材20に比較的大きな張力が発生しても、樹木1にかかる応力が極力小さくって、当該応力による樹木1の損傷が抑制される。また、樹木1の水分導通は、貫通孔1aが形成された場合であっても、主に外周側の導管を通じて阻害されることなく維持された状態となる。
【0028】
図1及び図3に示すように、樹木1に固定された樹木固定部10には吊り部材20が略鉛直方向に掛け下げられており、その下端に床構造体30を構成する床梁31の端部が接続されている。このことで、床梁31の端部において、張弦部材37から伝達される張力を、直接的に吊り部材20から伝達される張力により受けることができる状態となる。よって、特に重量のある床構造体30を吊り支持して吊り部材20に比較的大きな張力が発生する場合であっても、これらの張力に起因した床梁31の端部に対する比較的大きな回転モーメントの付加が回避される。結果、床梁31の過剰な高強度化や高剛性化が不要となる。
【0029】
床構造体30の床梁31の端部において、吊り部材20と張弦部材37とが連結されている。具体的には、金具からなる連結部材25が、床梁31の端部の下面に添えられた状態で固定されており、その連結部材25に張弦部材37の端部が接続されている。更に、この連結部材25には、上記張弦部材37に加えて、床梁31の端部に形成された吊り部材貫通孔31aを通って当該床梁31を上下に貫通する吊り部材20の下端が接続されている。このような構成により、吊り部材20は、屈曲することなく、床梁31の吊り部材貫通孔31aを通って、その下端を連結部材25に接続することができる。一方、張弦部材37についても、屈曲することなく、床梁31の腹部から下方に突出する束柱33の下端部と床梁31の端部とを連結することができる。
尚、本実施形態において、吊り部材20の下端と連結部材25との接合は、当該連結部材25に形成されたねじ穴に対して、吊り部材20の下端に形成されたねじを螺合する形態で行われているが、その接合方法については適宜変更可能である。
【0030】
床梁31の端部の下面に添えられた連結部材25に対して、吊り部材20からは略鉛直上向きの張力が伝達されるので、その張力の鉛直成分が連結部材25を介して床梁31の端部の下面により好適に支持されることになる。また、連結部材25に対して、張弦部材37からは略水平内向きの張力が伝達されるので、その張力の水平成分が連結部材25を介して床梁31の軸力により好適に支持されることになる。
【0031】
樹木1の外表面と床構造体30の端部との間には、樹木1の外表面に対して床構造体30の端部が衝撃を加えることを緩和して当該樹木1の外表面の損傷を抑制するために、緩衝材45が介在されている。尚、緩衝材45の厚みや材質等については、床構造体30が樹木1の外表面に向けて作用する力を考慮して適宜決定することができる。また、樹木1の外表面に対して床構造体30の端部が確実に離間している場合やその衝突による衝撃が問題とならない場合には、上記緩衝材45を省略しても構わない。
【0032】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0033】
(1)上記実施形態では、吊り部材20と張弦部材37とを、床梁31の端部の下面に添えられた連結部材25にて連結するように構成したが、床梁31における連結部材25の設置個所や吊り部材20と張弦部材37との連結方法については適宜変更可能である。
【0034】
(2)上記実施形態では、床構造体30を3つの床梁31A,31B,31Cを平面視で三角形の各辺に配置した平面視三角形構成としたが、4つ以上の床梁31を各辺に配置した平面視で4角形又はそれ以上の多角形となる構成を採用しても構わない。
【0035】
(3)上記実施形態では、床構造体30において、夫々の床梁31の腹部から下方に突出する束柱33の下端部同士を連結する束柱連結部材40を設けたが、例えば束柱33の倒れを別の方法で軽減して、当該束柱連結部材40を省略することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 樹木
1a 貫通孔
10 樹木固定部
11 乾燥木質嵌入部材
13 固定部材
14 接合金具(固定部材)
18 フック(固定部材)
20 吊り部材
21 ターンバックル(吊り部材)
22 バックル本体(吊り長さ調整部)
23 ワイヤ(吊り部材)
25 連結部材
30 床構造体
31 床梁
31A 床梁
31B 床梁
31C 床梁
33 束柱
33A 束柱
33B 束柱
33C 束柱
37 張弦部材
40 束柱連結部材
45 緩衝材
100 樹木支持吊床構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6