(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087909
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】還元剤の製造方法及び還元性水素水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
C09K3/00 109
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202463
(22)【出願日】2021-12-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】504093799
【氏名又は名称】有限会社木村研究所
(71)【出願人】
【識別番号】502179754
【氏名又は名称】石山 禎子
(71)【出願人】
【識別番号】596121253
【氏名又は名称】會田 光子
(74)【代理人】
【識別番号】100167483
【弁理士】
【氏名又は名称】林 裕己
(72)【発明者】
【氏名】木村 光夫
(57)【要約】
【課題】溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】 亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Aを生成する第1の処理と、活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、化合物Aと、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、を行うことにより、目的の還元剤を製造することで、上記課題を解決する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Aを生成する第1の処理と、
活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、化合物Aと、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、
を備えることを特徴とする還元剤の製造方法。
【請求項2】
前記第2の処理において、さらに、フマル酸を混合する
ことを特徴とする請求項1に記載の還元剤の製造方法。
【請求項3】
前記第2の処理において、さらに、酸化マグネシウムを混合する
ことを特徴とする請求項2に記載の還元剤の製造方法。
【請求項4】
前記還元剤の製造方法は、さらに、
二亜硫酸塩と高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Bを生成する第3の処理と、
を備え、
前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合する
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の還元剤の製造方法。
【請求項5】
亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、ポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、
フマル酸、シリカゲル、酸化マグネシウム、ゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む材料と、化合物Aと、活性炭と、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、
を備えることを特徴とする還元剤の製造方法。
【請求項6】
前記還元剤の製造方法は、さらに、
二亜硫酸塩とポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Bを生成する第3の処理と、
を備え、
前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合する
ことを特徴とする請求項5に記載の還元剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の還元剤の製造方法により製造された還元剤を水に加えて、還元性水素水溶液を生成する
ことを特徴とする還元性水素水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤の製造方法及び還元性水素水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等において、プラント機器を構成する部材に放射性物質が付着した場合、部材から放射性物質を除去するために化学除染が行われることがある。これに関連する技術として、例えば、放射性物質を含む酸化被膜が付着した除染対象物から、酸化剤等を用いて放射性物質を溶出させて除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1。)。この方法では、酸化剤として過マンガン酸を添加した処理水に除染対象物を浸漬させて、酸化被膜に含まれる成分とともに放射性物質を溶出させた後、該処理水をイオン交換樹脂に接触させて、処理水に含まれる放射性物質をイオン交換樹脂に吸着させて除去する。また、当該技術では、処理水から酸化剤を除去するため、上述のように放射性物質を溶出させた後の処理水に還元剤を添加して、酸化剤と還元剤との反応により沈殿物を生成させた後、処理水から該沈殿物を除去することが開示されている。
【0003】
原発事故由来の放射性物質として、汚染土についてはトリチウム(3H)、ストロンチウム(Sr-90)、ヨウ素(I-131)、セシウム(Cs-137))があり、処理水(多核種除去設備(ALPS)などを使って「汚染水」からトリチウム以外の放射性物質を規制基準以下まで取り除いたもの)についてはトリチウム(3H)がある。
【0004】
トリチウム(3H)、ストロンチウム(Sr-90)、ヨウ素(I-131)、セシウム(Cs-137)では、中性子が電子(β線)と反電子ニュートリノを放出して陽子になるβ-壊変(崩壊)が起こる。プルトニウム(Pu-239)では、ヘリウム原子核であるα線が放出されるα壊変が起こる。
【0005】
ところで、中性子の速度を核分裂に適したスピードに減速させる減速材がある。核分裂によって放出された中性子は高スピードで動き回っているため効率良く核分裂を起こすことができない。そこで中性子のスピードを落とすための「減速材」が必要となる。減速材としては、水(軽水)、重水、または黒鉛が使われていることが多い。軽水炉の場合、原子炉内が大量の水で満たされており、これにより核分裂反応の速度を一定レベル以下に落とすことができる。
【0006】
なお、還元剤に関して、高還元性を有する水を生成して、その還元性を利用して尿石分解及び脱消臭を行う技術が開示されている(例えば、特許文献2)。また、弱酸性、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法に関する技術が開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-92442号公報
【特許文献2】特許第3715254号
【特許文献3】特許第6944143号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小川俊雄著、「強電解水の原理と応用」、SLI出版、1995年
【非特許文献2】小川俊雄著、「強電解水の電子活動度とその殺菌作用」、Journal of Atmospheric Electricity, Vol. 18, No. 1, pp. 67-94, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように処理水から酸化剤を除去するため、放射性物質を溶出させた後の処理水に還元剤を添加する場合、還元剤は、扱いやすいものが望ましく、より強い還元性を有するものが望ましい。
【0010】
また、還元剤を減速材として採用する場合、酸素は放射線の効果を増強する放射線増感剤となり得るため、水中の減速材に対して、溶存酸素をゼロにすることが求められる。
【0011】
そこで、本発明では、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係る還元剤の製造方法は、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Aを生成する第1の処理と、活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、化合物Aと、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、を備えることを特徴とする。
【0013】
前記還元剤の製造方法は、前記第2の処理において、さらに、フマル酸を混合することを特徴とする。
【0014】
前記還元剤の製造方法は、前記第2の処理において、さらに、酸化マグネシウムを混合することを特徴とする。
【0015】
前記還元剤の製造方法は、さらに、二亜硫酸塩と高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Bを生成する第3の処理と、を備え、前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合することを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態に係る還元剤の製造方法は、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、ポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フマル酸、シリカゲル、酸化マグネシウム、ゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む材料と、化合物Aと、活性炭と、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、を備えることを特徴とする。
【0017】
前記還元剤の製造方法は、さらに、二亜硫酸塩とポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Bを生成する第3の処理と、を備え、前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合することを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態に係る還元性水素水溶液の製造方法は、上記のうちいずれかの還元剤の製造方法により製造された還元剤を水に加えて還元性水素水溶液を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤の製造方法、及び還元性水素水溶液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】強電解水の電子活動度(pe)-pHダイアグラムである。
【
図2】実施例1~実施例12の5日間のORPの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態では、特殊ペレットによる静磁場相互作用により水分子の水素をイオン化して水素イオン水を生成する方法を説明する。この水素イオン水は強還元水であり、強還元水を利用して放射性物質から放出される高速中性子の弾性衝突(散乱)を繰り返させることで中性子のエネルギーを失わせ、減速させることができる。
【0022】
すなわち、特殊ペレットによる水分子の水素のイオン化により、常温常圧の溶存酸素ゼロのプロトン水が生成する。このプロトン水は、強力な放射性中性子の減速材となり得るものであり、散乱衝突を繰り返して放射性中性子のエネルギーを減速することができる。酸素は放射線の効果を増強する放射線増感剤となり得るため、水中の減速材に対して、溶存酸素をゼロにする必要がある。溶存酸素O2は常磁性を示し、放射性中性子は磁気モーメントを持つ。
【0023】
中性子は、電荷ゼロ、質量939.57Mev、スピン1/2、磁気モーメント-1.9131核磁子であり、β-壊変して陽子となる。中性子は主にプロトンとの相互作用で散乱されるが、磁気モーメントを担った原子との磁気相互作用によっても散乱される。
【0024】
中性子は電荷を持たない粒子なので、物質中の電子との相互作用で直接電離を起こすことはほとんどない。したがって原子核との弾性衝突による散乱と原子核反応が中性子と物質の主な作用である。
【0025】
エネルギーの大きい(速い)中性子は、物質(例えば、水)中で原子核と弾性衝突を繰り返してエネルギーを失い、減速される。弾性衝突(散乱)では、エネルギーE0の中性子が質量数Aの原子核に衝突するとき、1回の衝突で失う最大のエネルギーが4AE0/(A+1)2である。したがって、中性子は軽い原子からなる物質中(水、パラフィン等)ほど効果的にエネルギーを失って減速され、例えば、プロトンとの衝突では最高100%、1回平均40%のエネルギーが中性子から失われることになる。
【0026】
一方、水中のプロトンは中性子から大きなエネルギーを受け取るため、プロトン自身が高エネルギーの荷電粒子となって二次的に電離を引き起こす。物質(プロトン)に入射した中性子が相互作用によってその進行方向をプロトンとの核力相互作用によって散乱が起きる(核散乱)。原子が磁気モーメントを持っている時、磁気的相互作用によっても散乱が起こる(磁気散乱)。散乱の過程で入射中性子のエネルギーが変わらない弾性散乱では、散乱波が干渉を起こして回折線を生じる。中性子と散乱体の間でエネルギーの授受があって、散乱後の中性子のエネルギーが変わる中性子非弾性散乱が起きる。中性子がプロトンと衝突を繰り返してそのエネルギーを失う減速中性子反応が生じる。(1)中性子放出で原子核が崩壊すれば弾性散乱、(2)γ線放出で原子核が崩壊すれば中性子捕獲、(3)核分裂で原子核が崩壊すれば核分裂が生じる。弾性散乱の場合には、複合核形成した後に中性子放出で原子核が崩壊する場合と、原子核と直線ポテンシャル散乱する場合とがある。
【0027】
エネルギーが1MeV以上の中性子は、減速材の原子核(プロトン)の弾性散乱や非弾性散乱によって減速する。1MeV未満の中性子は弾性散乱のみで減速するが、1eV程度になると化学結合の影響を少し受ける。減速の度合いにより、高速中性子、中速中性子、低速中性子(熱中性子)の3つに分けることができる。核分裂が起きて新たに放出される中性子のエネルギーはかなり高いため、高速中性子といわれる。
【0028】
媒質の原子核は静止しておらず、温度に対応して微細な熱振動をしているので、速度の非常に遅い中性子は原子核との衝突によってエネルギーを失うだけでなく、エネルギーを得ることもある。吸収も発生もない無限媒質において十分時間が経つと、中性子と媒質との正味のエネルギーのやりとりがゼロになる。このような状態を熱平衡状態といい、媒質と熱的平衡状態にある中性子を熱中性子という。
【0029】
ところで、トリチウム(3H)、ストロンチウム(Sr-90)、ヨウ素(I-131)、セシウム(Cs-137)等の放射性核種では、中性子が電子と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象、すなわちβ-壊変(崩壊)が起こる。β-壊変では、質量数が変化しないで、核種が一つ増加する。β-壊変において、原子核から高速の電子が放出されるが、この電子のことをβ-線という。β-壊変の際には電子の他に、反電子ニュートリノが放出されるので、エネルギーはその両者に分配される。
【0030】
β-線の物質との相互作用は、電離作用と制動放射である。β-線もα線と同様に荷電粒であるから、物質中の軌道電子との静電相互作用(クーロン散乱)によってエネルギーを失う。
【0031】
高エネルギーの電子のβ-線が原子核の近くを通過するとき、核の強い電場のために制動(ブレーキ)を受けて進路や速度が変化するが、これによって失ったエネルギーは電磁波(X線、γ線)として放出される。これを制動放射と呼ぶ。
【0032】
β-線のプロトンとの相互作用は,電離(イオン化)作用と制動放射である。β-線は荷電粒子であるから、軌道電子との静電相互作用(クーロン散乱)によってエネルギーを失う。
【0033】
β-線と水分子との反応に関して、β-線は水分子中の電子と相互作用に電離励起を引き起こし、散乱を繰り返しながら水分子中を進み運動エネルギーを失う。
【0034】
さて、陽子、中性子、中間子の粒子は、クォークと、その反粒子の反クォークからできており、スピンが半奇数の粒子である。
【0035】
クォークには、電荷が+2/3のアップクォーク(u)、チャームクォーク(c)、トップクォーク(t)と、電荷が-1/3のダウンクォーク(d)、ストレンジクォーク(s)、ボトムクォーク(b)の6種類がある。
【0036】
反クォークには、電荷が+2/3の反アップクォーク(反u)、反チャームクォーク(反c)、反トップクォーク(反t)と、電荷が+1/3の反ダウンクォーク(反d)、ストレンジクォーク(反s)、ボトムクォーク(反b)の6種類がある。
【0037】
中性子は、電荷+2/3のアップクォーク(u)1個と-1/3のダウンクォーク(d)2個からできている。陽子は、電荷+2/3のアップクォーク(u)2個と、-1/3のダウンクォーク(d)1個からできている。
【0038】
中間子は、クォークと反クォークが強い相互作用を媒介するグルーオンのはたらきによって結合した複合粒子の一種である。代表的な中間子はπ(パイ)中間子であり、電荷が+1、0、-1の3種類(π+,π0,π-)がある。
【0039】
α線はα粒子、すなわち原子核から放出された4Heの原子核である。放出の直後は数MeVのエネルギーのHe2+イオンであるが、物質中で大部分のエネルギーを失うとともに周囲の系と電子をやり取りしつつ、次第に中和され進路(飛跡)の末端近くでは中性のHe原子になっている。α線のエネルギーはおよそ2MeVから12MeVの範囲であり、核種によって固有な一定の値をとる。α線のエネルギーはα壊変の半減期と関係があり、ある放射壊変系列では短寿命の核種から放出されるα線の方がエネルギーが大きい。α線は重い粒子であるから物質中の進路が曲がることは稀で、直進しやすく透過力が小さい。
【0040】
α線が物質中を透過する時には、主に軌道電子との静電(クーロン)相互作用によってエネルギーを失う。一方、エネルギーを与えられた軌道電子は原子から飛び出し(電離)100~200eV程度のエネルギーの電子線としてさらに物質との相互作用を起こすことになる。
【0041】
β壊変(崩壊)では、原子核内の中性子を形成している3つのクォーク、すなわちアップクォーク(u)1個、ダウンクォーク(d)2個のうち、1個のダウンクォークがW±(中性)ウィークボソン(uクォーク、反クォーク(反u))のuアップクォークとβ-壊変反応で入れ替わり交換され、中性子は陽子に変わる。
中性子(u,d,d)+Z(u,反u) → 陽子(u,d,u)+W-(d,反u)
β-壊変により、中性子は一旦弱い力を媒介するW-ウィークボソンを放出して、中性子が陽子に変わる。W-ウィークボソンは瞬時に電子と反電子ニュートリノ(中性)に変わり、発生した電子はβ線(放射線)となり、反電子ニュートリノはどこかに飛んで行ってしまう。ニュートリノは電子から電荷と重さを取ったもので、β-壊変で中性子は陽子に変わり、電子(β線)で電荷を持たない軽い粒子反電子ニュートリノが生成する。β-壊変反応後、ニュートリノが電子と同時に放出される。ニュートリノは中性であって、電子より圧倒的に軽い素粒子である。
【0042】
弱い力の相互作用により、弱い力のウィークボソンがβ線(高速の電子の流れ)の放射線を出す際の反応(β崩壊)を引き起こす。弱い力によって原子核が壊れて放射線が発生する。陽子と中性子は、ウィークボソンと強い相互作用を引き起こす。ウィークボソンは、陽子と中性子が核力によって結合している。
【0043】
ウィークボソンは弱い相互作用を媒介する素粒子で、スピン1のベクトルボソンであり、WボソンとZボソンの二種類が存在する。Wボソンは陽子の約80倍で、Zボソンは約90倍と、他の素粒子に比べて大きな質量を持ち、ごく短時間のうちに別の粒子に崩壊してしまうという特徴を持つ。
【0044】
Wボソンは電荷+1、-1(W+、W-)をもち、両者は互いに反粒子の関係にある。すなわち、W+ボソンは、アップクォーク(+2/3の電荷)、反ダウンクォーク(+1/3の電荷)を有する。W-ボソンは、ダウンクォーク(-1/3の電荷)、反アップクォーク(-2/3の電荷)を有する。Zボソンは電荷0で、反粒子は自分自身である。Zボソン(中性)は、アップクォーク(+2/3の電荷)、反アップクォーク(-2/3の電荷)を有する。
【0045】
弱い相互作用は、β崩壊に代表される粒子の種類を変える相互作用である。
β崩壊 n→P++e-+νe
(n:中性子、P+:プロトン、e-:電子、νe:反電子ニュートリノ)
β崩壊では4つのフェルミオンが関わっており、フェルミ相互作用である。フェルミオンは、フェルミ統計に従う粒子のことであり、電子、陽子、中性子,μ粒子や、3H等のスピンが半奇数の素粒子や複合粒子である。
【0046】
上記の反応は、
n→P++W- W-→e-+νe
の二段階で起きている。それぞれの反応では、2つのフェルミオンと、1つのボソンが関わっており、湯川相互作用と呼ばれる。
【0047】
水中の水素イオンのプロトン化は、上述の通り、中性子から大きなエネルギーを受け取るため、それ自体が高エネルギーの荷電粒子(電荷のある粒子)となって、2次的な電離(イオン化)を引き起こす。このようなプロトンを反跳陽子と呼ぶ。
【0048】
次に水分子に関して言及する。水分子の2個の水素の電子は、酸素原子が引き寄せる力が大きいため酸素の方へ片寄っている(酸素の電気陰性度:3.5、水素の電気陰性度:2.2、差1.4、イオン性:39%)。その結果、酸素はややマイナスに帯電し、その分水素はプラスに帯電している。マイナス電荷の重心とプラスの電荷の重心が一致しないため、水分子は極性分子で双極子モーメントを持っている。水分子は弱い電解質で半導体であり、水分子同士が静電気的な力による相互作用により水素結合を形成している。
【0049】
水素の原子核に正の電荷を持つ陽子があり、負の電荷を持つ電子との間には電気的な力が働き、静電気力(クーロン力)による楕円運動をしている。陽子と電子の2個の粒子が相対的に向き合う運動エネルギー(回転運動エネルギー)と位置エネルギー(静電エネルギー)は、水素の内部エネルギーであり、陽子と電子間には電気的引力が働く。陽子に対して引力がある(クーロン励起反応)電荷を持つ粒子が楕円運動をすると磁場ができ、電子は磁石の振舞をする。
【0050】
陽子の自転により、原子核には核スピン角運動量が存在する。電子スピン角運動量による磁気モーメントに比べると、核スピン角運動量による磁気モーメントはかなり小さい。電子に比べると陽子の質量が大きいので、陽子の磁気モーメントは小さくなる。
【0051】
陽子と荷電粒子の電子間のクーロン力(電荷または磁荷の間に働く力であり、静電気力や静磁気力)の相互作用(クーロン相互作用)によって電子のエネルギーの一部が陽子に与えられて陽子が励起される。これをクーロン励起(陽子の引力)という。クーロン励起では、電子は陽子の近傍を通るが核内には入らないので、クーロン相互作用によりエネルギーの受け渡しを行う。
【0052】
放射線増感剤を用いると、酸素の存在により放射線の効果が増強される。
【0053】
電子は運動エネルギーを持つ楕円運動を行い、陽子との間にクーロン力が働く。電子は陽子との距離(位置)に応じたエネルギー(位置エネルギー)を持つ。位置エネルギーは相対的なものであり、電子スピンによる磁気モーメントを持つ電子の自転運動は正の値になったり負の値になったりする。
【0054】
プロトン(水素)は、極性分子と相互作用をして強い分極効果を示す。
【0055】
固体内における誘電分極に関して、原子核プロトンに対する電子雲(外側の電子軌道)の偏りによって分極する。
【0056】
分極に関して、結晶の中の原子は、周囲の原子の電子が作る外部の電場によって外側の電子軌道(電子雲)が歪められる。その結果、プラス電荷の重心とマイナス電荷の重心が一致しないずれた状態が生じる。
【0057】
中心の陽イオンは強い力で電子の陰イオンと引きつけ、引きつけられた相手の陰イオンの電子の電子軌道は歪んで分極した状態で陽イオンの電子雲と重なり合い強い結合を形成する。ここでは両イオンの雲の重なる度合いが大きくなるほど共有結合性の度合いも大きくなる。
【0058】
水素原子には2種類の回転運動がある。一つは電子が陽子の周りを回る運動である。もう一つは電子がコマのように回る運動である。電子の自転は、電子スピンで左回りと右回りがある。陽子自身も自転している。水素原子の電子は、原子核(陽子)の周りを不定期的に楕円運動し動き回っている。電子が存在する存在確率の高い所は電子雲が厚く、低い所は雲が薄くなっている。原子半径の電子の大きさは電子雲の大きさであり、電子雲の中心は陽子である。水素原子は、不均一(複数の相が共存することに起因する不均一性)な磁場の中で2方向に分裂する。
【0059】
水素原子の電子が作る外部の電場によって電子軌道(電子雲)が歪められる。その結果、陽子のプラス電荷の重心と、電子雲のマイナス電荷の重心が一致しないずれた(滑る)状態を生じる分極状態になる。
【0060】
中心の陽イオンは強い力で陰イオンを引きつけ、陰イオンの電子軌道は歪んで陽イオンは電子雲と重なり合い強い結合を形成する。
【0061】
水素原子中にある電子1個は、原子核(陽子)1個から引カポテンシャル(クーロン励起反応で静電引力が起きる)以外に電子から静電斤力ポテンシャルの影響を受けている。電子が受ける力は、中心力(陽子の引力)である。
【0062】
水素原子核(陽子)の周りの電子雲は、陽子からの中心引力によって運動している。電子の楕円運動の曲線に沿って流れる電流は一つの磁石に相当し、磁気モーメントを持つ。電子は球状の電子雲で運動し、陽子の周りを回転するだけでなく、電子スピンにより磁石になる。原子核は、陽子の核スピンと自転により小さな磁気モーメントを持つ。
【0063】
次に、本実施形態における特殊ペレットについて説明する。本実施形態における特殊ペレットは、亜硫酸塩と高分子樹脂とを用いて合成された化合物A(高分子強電解質)と、活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、金属マグネシウムとを含む混合試薬(混合物)である。
【0064】
化合物Aは高分子強電解質である。高分子強電解質としては、ポリスチレンスルホン酸が知られている。亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸カリウム(K2SO3)がある。亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、亜硫酸水素カリウム(KHSO3)がある。これら4つの亜硫酸塩または亜硫酸水素塩は加熱分解する。これらの化合物それぞれと、ポリスチレン樹脂とを混合し、金属性容器に入れて加熱すると、ポリスチレンスルホン酸が生成される。
【0065】
ポリスチレンスルホン酸は、水溶液中で巨大な電荷を持つマクロイオンや高電荷イオンと反対符号の小さな電荷を持つ多数の対イオンH+、Na+、K+に完全に解離する。対イオンが獲得する静電気エネルギーは大きい。
【0066】
静電気エネルギーは荷電粒子間に働くポテンシャルエネルギーであり、高分子電解質の鎖は有効イオン電荷と対イオンの静電相互作用により大きな広がりを示す。高分子イオンは、高分子鎖に沿って正または負の電荷を有する。水中では解離してポリイオンと対イオンになる。高分子鎖中の解離基が高分子ポリイオンと低分子イオンの対イオンに解離するもので、この際液は電流を通過する。対イオンは自由に動き回るが、高分子電解質は動き回らない。高分子イオンと低分子イオンに解離した時、同符号を持つため互いに反発し、高分子鎖イオンが大きく広がりやすい有効イオン電荷に対応する自由対イオンが増加し、浸透圧が上昇する。
【0067】
ポリスチレンのベンゼン環に電子供与性置換基-SO3
2-を付与すると加水分解速度が増大する。絶縁体(ポリスチレンなど)にイオンが付くと、その物質は帯電する。多くを帯電させるため、絶縁体に金属を置くと、水分子にイオンの移動により帯電が起こる。
【0068】
次にフマル酸に言及する。水分子は中性の求核性であり、求電子剤によって電子密度の大きい反応点のある水分子の酸素を攻撃する。フマル酸は求電子剤(電子受容体)であり、水分子の電子を受容する。水分子には解離性の水素があり、フマル酸などの電子受容体(酸化剤)により電離(イオン化)して水素イオン(プロトン)と電子を生成する。
【0069】
ここで、活性炭にフマル酸を添加することについて説明する。活性炭の大部分は炭素であり、表面の化学的な性質は疎水性であるが、表面は官能基(例えば、弱酸性のカルボキシル基(-COOH)、フェノール性ヒドロキシル基、フェノール(C6H5OH)、カテコール(C6H6O2)、ピロガロール(C6H6O3),弱酸性のキノン型カルボニル基ベンゾキノン(C6H4O2))のため若干の親水性もある。これらの部位は、酸性化合物や塩基性化合物を吸収する。
【0070】
活性炭、シリカゲル、及びゼオライトは、吸着能を有する。固体液体の絶縁物同士の接触によって静電荷が発生し、電気量は極めて少ないが数千ボルトの大きい電場をつくる。このため固体界面は常に帯電していて、吸着質(溶質)と吸着剤(活性炭、シリカゲル、ゼオライト、アルミナ、イオン交換樹脂)または吸着剤同士の間でも静電引力、または斥力が起きる。
【0071】
絶縁体は、固体内で電荷移動が起こると電流は流れない。固体内では、正電荷は負極に、負電荷は正極に引き付けられ、電荷の分離が起こっている。この固体は誘電体で、電気双極子で誘電分極している。誘電分極は自発分極をする。
【0072】
誘電体は、電場の中に置くと分極し、静電誘導作用の媒介する電媒質(一つの場所から他の場所へ伝達する仲介物)、エネルギー準位の異なる両物質(水分子と絶縁体など)の電子を共有しており、水分子の電子を剥離する静電分離が起こる。絶縁体と水分子の接触により電子を放出する。水分子はプラスイオンに、電子過剰の絶縁体はマイナスイオンになる。静電気は電子の移動で起こる。双極性分子(水分子など)と無極性分子(絶縁体、不動態など)が共存する時、双極性分子が無極性分子を分極させる。その結果、静電引力が生じる。
【0073】
静電気引力は、空間的に相隔った物体が互いに引き合う力である。静電気引力は、すべての物体間に存在し、電気的、磁気的引力な帯電体に働く。磁極、分子、原子、素粒子などの間には、特殊な引力が働く。
【0074】
活性炭は、その成分の大部分が微結晶の炭素で非常に発達した微細孔構造を形成し、優れた吸着能力を持つ。活性炭は、極性の大きい水を吸着せず、極性の小さいものを吸着する。疎水性分子は、水溶液中で不安定なために水からはじき出されるような状態になり、活性炭はそのようにはじき出された疎水性分子を吸着する(活性炭疎水性吸着)。活性炭では、疎水性の強い吸着剤でポリスチロールのような無極性な表面があれば、疎水性吸着が見られる。
【0075】
ゼオライトは、沸石類と呼ばれる結晶性アルミノ珪酸塩の総称であり、結晶構造に応じて、モルデナイト(Na8[(AlO2)3(SiO2)48]24・H20)、A型ゼオライト(Na12[(AlO2)12(S2O2)12]27・H2O)、等が存在する。ゼオライトは、水分子を連続的に脱水、復水したり(ゼオライト水)、陽イオン交換能や分子ふるい作用(多孔性固体物質の分子スケールのふるい効果分離)を有する固体酸性触媒である。ゼオライトは、吸着剤、廃水処理剤などの作用がある。
【0076】
次に酸処理について言及する。活性炭を処理すると、硫化水素、アンモニア、アルデヒドなどを除去できる。活性炭の酸処理によって悪臭成分を化学吸着させたり、反応によって無臭物質に変えたりする。活性炭は、疎水性の強い吸着剤で、水溶液からの吸着に適している。活性炭は、金属や金属化合物を吸着する。活性炭は、水中のカビや臭いや発がん物質の吸着除去、雑菌などの除去もできる。
【0077】
ゼオライトはアルカリ成分が多く、酸処理によりNa+はフマル酸のプロトンに交換される。
【0078】
活性炭やゼオライト、シリカゲル等の吸着剤に対して酸処理を行う酸処理剤の一例として、アスコルビン酸(ビタミンC)、リンゴ酸、ベンジルアミン、アミノエタノールアミン、ポリエチレンイミン、フマル酸が挙げられる。吸着剤を酸処理することにより、吸着剤の表面積が大きくなり吸着量が増える。
【0079】
シリカゲルの不絶物Na+イオンは、ケイ酸イオンの表面及び体積拡散を促進する。そのため、吸着剤としての寿命を長くするため、シリカゲルを酸処理し、できるだけ純粋なものにする。化学的、物理的な安定性、細孔容積、表面の極性、表面積、細孔径、粉体粒子径の大きさを広範囲に変えることができる。活性な金属とシリカゲル表面に分散させたものを用いると耐酸性の触媒になる。
【0080】
次の水素の還元性について説明する。水素は、優れた還元剤であることが知られている。還元剤は、対象物質を還元する作用を有するものであり、一般的に、対象物質から酸素を奪うもの、対象物質に水素を与えるもの、または対象物質に電子を与えるものである。
【0081】
図1は、強電解水の電子活動度(pe)-pHダイアグラム(非特許文献1及び非特許文献2のFig. 2.2参照)である。
図1では、水1[l(リットル)]について食塩1.0[g]を添加した0.1%食塩水をpe-pHダイアグラムが実践で示されている。水はその電気伝導度が小さすぎて、電解電流をある大きさ以上にすることができないため、電解物質として少量の食塩を添加している。
【0082】
図1のpe-pHダイアグラムは、無限希釈食塩水の中に存在する電子、水素イオン、水素、酸素、塩素の各成分の濃度の関係を示すものである。実際に生成される電解水のpe、pHの値を測定して、このダイアグラムの面上のどの位置にあるかを見ることによって、その電解水の性質を知ることができる。電子活動度(有効電子濃度)pe、水素イオン活動度(濃度)pHと、塩素成分の濃度の関係がpe-pHダイアグラムから確認できる。
【0083】
また、電子活動度(pe)と酸化還元電位(ORP)EHとは、25℃、1気圧の標準状態で、pe=16.90EH[V]で表すことができ、これより、EH[V]=0.05917peとなる。
【0084】
よって、
図1のpe-pHダイアグラムにおいて、pH5.5~10.5、かつ酸化還元電位(ORP)-450mV~-850mVの領域の測定値をプロットすると、その範囲は、水素濃度が高く、かつpe=約-9~約-15であるので、強力な電子供与能力があることが分かる。
【0085】
そして、例えば、pe=10(ORP:0.6V)の水からpe=-11の強還元水がえら得たとする。pe=-11の強還元水には1011[mol/l]の有効電子濃度があり、強力な電子供与能力がある。これがpe=10に戻るまでの差Δpe=21によって強い還元力が発揮されることになる。
【0086】
上記のことに鑑みて、本実施形態では、酸化還元電位(ORP)-450mV~-850mVまでの、溶存酸素ゼロの強還元水を生成する還元剤を製造する。また、その還元剤を水に加えて、還元性水素水溶液(水素イオン(プロトン)含有水溶液)を製造する。
【0087】
本実施形態に係る混合物(化合物A、吸着剤、金属マグネシウムの混合物であるが、さらにはアスコルビン酸、リンゴ酸、ベンジルアミン、アミノエタノールアミン、ポリエチレンイミン、及びフマル酸から選択されるいずれかの材料、及び/または酸化マグネシウムを混合してもよい。)である特殊ペレットを水と接触させると、これらの混合物との相互作用により、水の分解が行なわれる。以下では、当該混合物の生成及びその混合物を用いた測定に関する実施例を説明する。
【実施例0088】
[実施例1]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
亜硫酸ナトリウムとポリスチレン樹脂を70%:30%の重量比で混合した混合物を作製する。その混合物をステンレス製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物A1が生成される。
(2)化合物A1:20g、金属マグネシウム(リボン状切粉):14g、フマル酸:2g、活性炭:10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
1日目は、常温常圧下で、上記で作製したティーバッグを水道水1[l]を入れた容器に入れ、24時間そのまま放置する。24時間経過後、ORP,pH、溶存酸素量(DO)を測定する。
2日目は、同じ容器に新たに水道水1[l]を入れ替え、それに前日使用した特殊ペレットを入れる。前日と同様に24時間そのまま放置し、ORP、pH、DOを測定する。上記の工程を5日間行う。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表1】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):10.06、ORP(平均):-765.8[mV]である。これより、実施例1の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0089】
[実施例2]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:20g、金属マグネシウム(リボン状切粉):14g、シリカゲル:20g、活性炭:10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表2】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):10.42、ORP(平均):-779.2[mV]である。これより、実施例2の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0090】
[実施例3]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:2g、シリカゲル:20g、活性炭:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表3】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):8.67、ORP(平均):-720.80[mV]である。これより、実施例3の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0091】
[実施例4]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:2g、活性炭:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表4】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.66、ORP(平均):-692.8[mV]である。これより、実施例4の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0092】
[実施例5]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:2g、活性炭:5g、酸化マグネシウム:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表5】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.14、ORP(平均):-629.6[mV]である。これより、実施例5の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、ほぼ中性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0093】
[実施例6]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:40g、金属マグネシウム(リボン状切粉):30g、フマル酸:5g、ゼオライト:10g、活性炭:20gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表6】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.11、ORP(平均):-626.8[mV]である。これより、実施例6の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、ほぼ中性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0094】
[実施例7]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A2の合成
亜硫酸カリウムとポリスチレン樹脂を70%:30%の重量比で混合した混合物を作製する。その混合物をステンレス製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物A2が生成される。
(2)化合物A2:20g、金属マグネシウム(リボン状切粉):14g、フマル酸:6g、活性炭:10g、シリカゲル:10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表7】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.61、ORP(平均):-558.4[mV]である。これより、実施例7の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0095】
[実施例8]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:3g、活性炭:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表8】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):6.57、ORP(平均):-615.2[mV]である。これより、実施例8の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0096】
[実施例9]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:20g、金属マグネシウム(リボン状切粉):14g、フマル酸:5g、活性炭:10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表9】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.79、ORP(平均):-628[mV]である。これより、実施例9の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0097】
[実施例10]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:3g、活性炭:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表10】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.36、ORP(平均):-603[mV]であり、特にORPに関しては緩やかな右肩下がりで下降している。これより、実施例10の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱アルカリ性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0098】
[実施例11]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A1の合成
実施例1と同様の方法で、化合物A1を生成する。
(2)化合物A1:10g、金属マグネシウム(リボン状切粉):7g、フマル酸:5g、活性炭:5gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表11】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):7.04、ORP(平均):-599.2[mV]である。これより、実施例11の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、ほぼ中性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0099】
[実施例12]
<特殊ペレットの作製>
(1)化合物A2の合成
実施例7と同様の方法で、化合物A2を生成する。
(1)化合物Bの合成
二亜硫酸カリウムとポリスチレン樹脂を30%:70%の重量比で混合した混合物を作製する。その混合物をステンレス製の容器に入れ、加熱器を用いてその容器を200℃で1時間加熱する。加熱処理後、加熱器から容器を取り出し、自然冷却させる。これにより、化合物Bが生成される。
(2)化合物A2:20g、金属マグネシウム(リボン状切粉):20g、化合物B:2g、フマル酸:10g、活性炭:10gを特殊ペレットとしてティーバッグに入れ、封をする。
<測定方法>
測定方法は、実施例1で行った測定方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
<測定結果>
5日間測定したORP、pH、DOを以下に示す。
【表12】
<評価>
5日間を通して、溶存酸素量(平均):0.0、pH(平均):5.87、ORP(平均):-456[mV]である。これより、実施例12の特殊ペレットは、溶存酸素量ゼロで、弱酸性で、十分な還元力を有する還元剤となり得る。
【0100】
[総合評価]
実施例1~実施例12の5日間の測定結果からいずれの実施例においても、溶存酸素量がゼロであることが確認できる。また、いずれの実施例においても、ORPが-400[mV]より低い値であって還元性を示しており、水素イオン(プロトン)を生成することが可能と考えられる。
【0101】
図2は、実施例1~実施例12の5日間のORPの変化を示すグラフである。実施例1~11で用いた特殊ペレットは、実施例12で用いた特殊ペレットと比べて、還元力がより強いことが分かる。その中でも、実施例1~3については、特に還元性が強い。
【0102】
本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例1~12)は、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Aを生成する第1の処理と、活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む吸着剤と、化合物Aと、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、を備える。
【0103】
このように構成することにより、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0104】
前記第2の処理において、さらに、フマル酸を混合してもよい。また、前記第2の処理において、さらに、実施例5に示すように酸化マグネシウムを混合してもよい。
【0105】
前記還元剤の製造方法は、実施例12に示すように、さらに、二亜硫酸塩と高分子樹脂とを反応させて高分子電解質である化合物Bを生成する第3の処理と、を備え、前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合してもよい。
【0106】
このように構成することにより、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例1~12)は、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩と、ポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Aを生成する第1の処理と、フマル酸、シリカゲル、酸化マグネシウム、ゼオライトのうち少なくともいずれか1つを含む材料と、化合物Aと、活性炭と、金属マグネシウムとを混合する第2の処理と、を備える。
【0108】
このように構成することにより、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、還元剤の製造方法(実施例12)は、さらに、二亜硫酸塩とポリスチレン樹脂とを反応させて化合物Bを生成する第3の処理と、を備え、前記第2の処理において、さらに、化合物Bを混合する。
【0110】
このように構成することにより、溶存酸素ゼロの強還元水の水素イオン(プロトン)を発生させる還元剤としての特殊ペレットを生成することができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、還元性水素水溶液の製造方法は、上記のいずれかに記載の還元剤の製造方法により製造された還元剤を、水に加えて還元性水素水溶液を生成する。
【0112】
このように構成することにより、特殊ペレットを水に加えて金属マグネシウムと他の混合物と水とを反応させることで、水素イオン(プロトン)を発生させることができる。その結果、上述したように、中性子の減速材としての機能も期待できる。
【0113】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。