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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087933
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202496
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】小杉 匡司
(72)【発明者】
【氏名】小川 清
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA02
4G061BA03
4G061CD18
4G061DA09
4G061DA21
(57)【要約】
【課題】
可撓性を有する薄型のガラス板を製造するに際し、当該ガラス板を支持ガラスと貼り合わせて積層体を作製する工程が含まれる場合に、皺の発生を回避した貼り合わせを可能にすること。
【解決手段】
定盤4上に配置した可撓性を有するガラス板1と、ガラス板1を支持する支持ガラス2との面同士を接触させ、両ガラス1,2が貼り合わされた領域を貼り合わせの起点から放射状に拡大させることで、両ガラス1,2が重ね合わされた積層体3を作製する積層工程P2を含んだガラス板の製造方法について、積層工程P2では、ガラス板1を定盤4からの負圧により吸引した状態で、両ガラス1,2を貼り合わせるようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に配置した可撓性を有するガラス板と、前記ガラス板を支持する支持ガラスとの面同士を接触させ、前記両ガラスが貼り合わされた領域を貼り合わせの起点から放射状に拡大させることで、前記両ガラスが重ね合わされた積層体を作製する積層工程を含んだガラス板の製造方法であって、
前記積層工程では、前記ガラス板を前記ステージからの負圧により吸引した状態で、前記両ガラスを貼り合わせることを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記積層工程の実行前に、前記ガラス板を前記ステージからの負圧により吸引した状態で、前記ステージ上での前記ガラス板の位置を調節する調節工程を実行することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記ステージと前記ガラス板との相互間に、通気性を有する保護シートを介在させることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記保護シートが、前記ステージに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記保護シートの硬度が、前記ガラス板の硬度よりも低いことを特徴とする請求項3又は4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記保護シートの厚みが、100μm以下であることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記保護シートの表面粗さRaが、25nm以上であることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス板は、前記支持ガラスと貼り合わされる面の裏側面が成膜されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可撓性を有する薄型のガラス板と、当該ガラス板を支持する支持ガラスとを貼り合わせて積層体を作製する工程を含んだガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等に代表されるディスプレイに組み込まれるガラス基板は薄板化が推進されているのが現状であり、これに伴って薄型のガラス板(例えば厚みが100μm以下)が製造されている。このような薄型のガラス板は可撓性に富んだ性質を有している。
【0003】
薄型のガラス板に処理(例えば成膜処理)を施すにあたっては、ガラス板の取り扱いを容易にする目的で、ガラス板と、これを支持する支持ガラスとの面同士を接触させて貼り合わせることで、両ガラスが重ね合わされた積層体を利用する場合がある。特許文献1には積層体を作製する手法の一例が開示されている。
【0004】
同手法においては、図7に示すように、定盤100上にガラス板200を配置すると共に、四隅がそれぞれスペーサー300により支持された状態の支持ガラス400をガラス板200の上方に間隔を空けて配置する。そして、矢印Fで示すように、支持ガラス400の中央部を上方から押圧し、支持ガラス400を下凸に湾曲変形させながらガラス板200の中央部に接触させる。これにより、両ガラス200,400の中央部同士が貼り合わせの起点となり、当該起点から貼り合わされた領域が放射状に拡大していくことで、両ガラス200,400が重ね合わされた積層体が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-129189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の手法においては、図8に示すように、ガラス板200の可撓性に起因して、定盤100上に配置されたガラス板200に反りが発生している場合がある。この反りの存在により、支持ガラス400と貼り合わされたガラス板200の一部が支持ガラス400から浮き上がって皺になる問題が生じていた。これは、本来、貼り合わされた領域が起点から放射状に拡大していくべきところ、反りによるガラス板200の凹凸が原因となって意図しない箇所が先行して貼り合わされてしまうためである。
【0007】
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、可撓性を有する薄型のガラス板を製造するに際し、当該ガラス板を支持ガラスと貼り合わせて積層体を作製する工程が含まれる場合に、皺の発生を回避した貼り合わせを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためのガラス板の製造方法は、ステージ上に配置した可撓性を有するガラス板と、ガラス板を支持する支持ガラスとの面同士を接触させ、両ガラスが貼り合わされた領域を貼り合わせの起点から放射状に拡大させることで、両ガラスが重ね合わされた積層体を作製する積層工程を含んだ方法であって、積層工程では、ガラス板をステージからの負圧により吸引した状態で、両ガラスを貼り合わせることを特徴とする。
【0009】
本方法では、積層工程にてガラス板をステージからの負圧で吸引することで、ガラス板に存在する反りをステージに倣うように矯正することが可能となる。そして、ガラス板から反り(凹凸)を除去した状態の下で、ガラス板と支持ガラスとを貼り合わせることができる。これにより、両ガラスが貼り合わされた領域について、当該領域を確実に貼り合わせの起点から放射状に拡大させることが可能となる。その結果、意図しない箇所が先行して貼り合わされてしまうことが防止され、ガラス板の一部が支持ガラスから浮き上がって皺になることを回避できる。
【0010】
上記の方法において、積層工程の実行前に、ガラス板をステージからの負圧により吸引した状態で、ステージ上でのガラス板の位置を調節する調節工程を実行することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、ガラス板をステージからの負圧により吸引し、ガラス板の反りを除去した状態の下で位置の調節を行うため、調節の精度を高めることができ、ひいては支持ガラスとの貼り合わせの精度を高めることが可能となる。
【0012】
上記の方法において、ステージとガラス板との相互間に、通気性を有する保護シートを介在させることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、ガラス板と支持ガラスとを貼り合わせやすくなる。両ガラスを貼り合わせるにあたっては、ステージが負圧によりガラス板を吸引しようとする力(以下、吸引力と表記)を、ガラス板が支持ガラスと貼り付こうとする力よりも小さくする必要がある。ステージとガラス板との相互間に通気性を有する保護シートを介在させれば、介在させない場合と比較して吸引力を抑制でき、吸引力が両ガラスの円滑な貼り合わせを阻害する程に過大となることを抑制できる。その結果、ガラス板と支持ガラスとを貼り合わせやすくなる。また、上述のとおり吸引力を抑制できることで、調節工程を実行する際にステージ上でガラス板を移動させやすくなり、ガラス板の位置の調節が行いやすくなる。さらには、保護シートの存在により、位置の調節のためにガラス板を移動させるに際し、ガラス板がステージと擦れて傷付くことも防止できる。
【0014】
上記の方法において、保護シートがステージに固定されていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、調節工程を実行する際に、ガラス板を移動させるのに付随して保護シートがずれてしまうことを回避でき、ガラス板の位置の調節を円滑に行うことが可能となる。
【0016】
上記の方法において、保護シートの硬度がガラス板の硬度よりも低いことが好ましい。ここで言う「保護シートの硬度がガラス板の硬度よりも低い」とは、保護シートを構成する材料として、ガラス板のモース硬度と同じ、またはガラス板よりもモース硬度の高い材料を含まないことを意味している。
【0017】
このようにすれば、保護シートとの接触によってガラス板が傷付いてしまうことを確実に回避することが可能となる。
【0018】
上記の方法において、保護シートの厚みが100μm以下であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、保護シートの厚みが十分に薄いことから、保護シートと重なり合った際のガラス板の平坦性を確保しやすくなり、皺の発生を回避したガラス板と支持ガラスとの貼り合わせを実現する上で一層有利となる。
【0020】
上記の方法において、保護シートの表面粗さRaが25nm以上であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、調節工程の実行に伴いガラス板をステージ上で移動させる際に、ガラス板と保護シートとの滑りをガラス板の移動に好適な状態にすることが可能となる。
【0022】
上記の方法において、ガラス板は、支持ガラスと貼り合わされる面の裏側面が成膜されていてもよい。
【0023】
成膜されたガラス板には反りが発生しやすい。そのため、成膜されたガラス板を支持ガラスと貼り合わせて積層体を作製するに際し、本開示に係る方法を適用すれば、その効果を好適に享受することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本開示に係るガラス板の製造方法によれば、可撓性を有する薄型のガラス板を製造するに際し、当該ガラス板を支持ガラスと貼り合わせて積層体を作製する工程が含まれる場合に、皺の発生を回避した貼り合わせが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ガラス板の製造方法に含まれた調節工程を示す側面図である。
図2】ガラス板の製造方法に含まれた積層工程を示す側面図である。
図3】ガラス板の製造方法に含まれた積層工程を示す側面図である。
図4】ガラス板の製造方法に含まれた積層工程を示す側面図である。
図5】ガラス板の製造方法に使用する定盤および保護シートの周辺を拡大して示す断面図である。
図6】ガラス板の製造方法に使用する定盤および保護シートを示した平面図である。
図7】従来における課題を説明するための図である。
図8】従来における課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係るガラス板の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の説明で参照する各図面に表示したX方向、Y方向、及び、Z方向は、互いに直交する方向である。
【0027】
本製造方法は、図1図4に時系列の順で示すように、可撓性を有する薄型のガラス板1と、当該ガラス板1を支持する支持ガラス2とを貼り合わせることで、両ガラス1,2が重ね合わされた積層体3を作製する工程を含んでいる。
【0028】
上記工程として、具体的には、ガラス板1と支持ガラス2との貼り合わせ前に、ステージとしての定盤4上でガラス板1の位置を調節する調節工程P1(図1)と、調節工程P1の実行後に、ガラス板1と支持ガラス2との合わせ面1a,2a同士を接触させ、両ガラス1,2を貼り合わせる積層工程P2(図2図4)とを含んでいる。
【0029】
両ガラス1,2は、その材質として、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の様々な材質とすることが可能であるが、耐久性の観点から、本実施形態では無アルカリガラスとしている。
【0030】
両ガラス1,2の各々において、相互に貼り合わされる側の面となる合わせ面1a,2aは、その表面粗さRa(算術平均粗さ)が1.0nm以下とされている。表面粗さRaは、例えば両ガラス1,2に対する研磨加工、或いは、ケミカルエッチングにより制御でき、具体的には、研磨パッドの番手の調整、エッチング液の濃度、液温度、処理時間の調整等により制御される。なお、合わせ面1a,2aの表面粗さRaの値が小さいほど、合わせ面1a,2a同士を貼り合わせた際に両面が密着しやすいため、表面粗さRaは、0.5nm以下であることが更に好ましく、0.2nm以下であることが最も好ましい。
【0031】
両ガラス1,2の形状は特に限定されないが、本実施形態での両ガラス1,2は共に矩形状に形成されている。ガラス板1の厚みは200μm以下とされている。支持ガラス2はガラス板1よりも厚みが大きく、支持ガラス2の厚みは300μm~2000μmとされている。ガラス板1は、合わせ面1aの裏側となる面が成膜(例えばITO膜等)されている。本実施形態では、成膜の影響によりガラス板1に反りが発生し、ガラス板1に凹凸が形成されている。反りの大きさは、ガラス板1の厚みよりも大きい場合がある(例えば1.5mm~3mm)。ここで言う「反り」とは、ガラス板1を定盤4上に載置した場合に、ガラス板1の端部が定盤4から浮き上がった寸法(後述の載置面4aから浮き上がった寸法)の最大値である。なお、本実施形態とは異なり、ガラス板1は非成膜であってもよく、非成膜の場合でも反りは発生し得る。
【0032】
支持ガラス2の面積はガラス板1の面積よりも大きくなっている。つまり、合わせ面2aは合わせ面1aよりも面積が大きく、両ガラス1,2を貼り合わせた際には、支持ガラス2の端部がガラス板1の端部から食み出した状態となる。
【0033】
ここで、上記の調節工程P1および積層工程P2を実行するための設備の概要について、図1図4を参照して説明する。
【0034】
定盤4は両工程P1,P2を実行するための作業台であり、本実施形態では金属で構成されている。定盤4はガラス板1が載置される載置面4aを有し、載置面4aは水平な平坦面に形成されている。載置面4a上には通気性を有する保護シート5が固定されており、両工程P1,P2の実行時には保護シート5がガラス板1と定盤4との相互間に介在する。定盤4は、矢印F1で示すように、両工程P1,P2の実行時に、負圧により保護シート5を介してガラス板1に吸引力を作用させることが可能である(詳細は後述)。
【0035】
保護シート5は一例として紙、ポリエチレンテレフタレート、高発泡ポリエチレンなどの樹脂等の材質により構成される。保護シート5の硬度はガラス板1の硬度よりも低くなっている。これは、保護シート5との接触によりガラス板1が傷付くことを防止する目的である。ここで言う「保護シート5の硬度はガラス板1の硬度よりも低くなっている」とは、保護シート5を構成する材料として、ガラス板1のモース硬度と同じ、またはガラス板1よりもモース硬度の高い材料を含まないことを意味している。また、保護シート5の厚みは100μm以下とされている。これは、保護シート5と重なり合った際のガラス板1の平坦性を確保しやすくする目的である。なお、保護シート5の厚みは好ましくは80μm以下である。さらに、保護シート5の表面粗さRaは25nm以上とされている。これは、調節工程P1の実行時に、ガラス板1と保護シート5との滑りを好適な状態とする目的である。また、保護シート5の表面粗さRaは例えば150nm以下とすることができる。
【0036】
スペーサー6は、定盤4の載置面4a上に四つが配置(図1図4には二つのみを図示)されると共に、載置面4a上にてガラス板1よりも外周側に配置されている。各スペーサー6は、支持ガラス2のコーナー部を下方から支持する支持部材として機能し、四つのスペーサー6は、支持ガラス2の四隅に対応するように配置されている。四つのスペーサー6により支持された支持ガラス2は、定盤4上のガラス板1に対して上方に間隔を空けた状態で配置される。また、支持ガラス2は、湾曲変形が許容された状態でスペーサー6に支持されている。
【0037】
本実施形態では支持部材としてスペーサー6を使用しているが、これに限定されるものではない。支持部材としては、以下の(1),(2)の条件を満たす限りで任意の部材を使用してよい。(1)支持ガラス2を定盤4上のガラス板1とは間隔を空けて対向させた状態で支持することが可能。(2)支持ガラス2の湾曲変形を許容した状態で支持ガラス2の端部を支持することが可能。上記(1),(2)の条件を満たす部材として、例えば、矩形状をなす支持ガラス2の四辺を支持する枠状の部材を支持部材としてもよいし、支持ガラス2の対向する二辺のみを支持する部材を支持部材としてもよい。
【0038】
ここで、定盤4が保護シート5を介してガラス板1に吸引力F1を作用させるための機構の詳細について、図5及び図6を参照して説明する。
【0039】
定盤4の載置面4aには、ガラス板1を吸引するための複数の吸引孔4bが形成されている。吸引孔4bは、X方向およびY方向に沿って配列されている。載置面4a上において吸引孔4bが形成された領域の面積は、ガラス板1の面積よりも大きくなっている。各吸引孔4bは、図示省略の負圧発生装置(例えば真空ポンプ等)と接続されており、当該装置の稼働により保護シート5を介してガラス板1に負圧を作用させて吸引する。
【0040】
保護シート5は、テープ7(図1図4では図示省略)により定盤4の載置面4aに貼り付けられている。保護シート5には、当該保護シート5を厚み方向(Z方向)に貫通した複数の貫通孔5aが形成されており、当該貫通孔5aにより保護シート5に通気性が付与されている。貫通孔5aは、X方向およびY方向に沿って配列されている。保護シート5において貫通孔5aが形成された領域の面積は、ガラス板1の面積よりも大きくなっている。これにより、定盤4が保護シート5を介してガラス板1の全体を吸引することが可能となっている。
【0041】
なお、定盤4の吸引孔4bおよび保護シート5の貫通孔5aの形状は、円形であってもよいし、円形以外の形状であってもよい。また、定盤4の吸引孔4bの位置と保護シート5の貫通孔5aの位置は一致している必要はない。定盤の吸引孔4bの最大径は1mm~10mmとされる。また、保護シート5の貫通孔5aの最大径は1μm~1mmとされる。なお、吸引孔4b及び貫通孔5aの最大径とは、吸引孔4b及び貫通孔5aの重心を通る直線において、最大の長さとなる直線の長さを意味する(例えば、孔の形状が楕円形である場合には長径が最大径となる)。そして、定盤4の吸引孔4bの数や保護シート5の貫通孔5aの数は、ガラス板1の厚みに応じて設定可能である。例えば、ガラス板1の厚みが100μm以上の場合、ガラス板1を定盤4に強く吸引させるために定盤4の吸引孔4bの数は保護シート5の貫通孔5aの数よりも多いことが好ましく、また、定盤4の吸引孔4bの位置は保護シート5の貫通孔5aの位置と一致することが好ましい。一方で、ガラス板1の厚みが100μm未満の場合、ガラス板1全体に対して吸引力を加えるために、多孔質樹脂などにより構成される保護シート5を使用したり、保護シート5の貫通孔5aの数を定盤4の吸引孔4bの数よりも多くすることが好ましい。これにより、ガラス板1と支持ガラス2とを貼り合わせやすくなる。
【0042】
以下、上記の設備を用いたガラス板の製造方法の具体的な手順について説明する。
【0043】
最初に、図1に示した調節工程P1を実行する。調節工程P1では、ガラス板1を定盤4からの負圧により吸引した状態の下、ガラス板1を保護シート5上で滑らせる。これにより、定盤4上でのガラス板1のX方向およびY方向における位置を調節する(図1にはX方向における調節を例示)。このとき、負圧により定盤4がガラス板1を吸引しようとする吸引力F1の強さは、ガラス板1に発生した反りを定盤4の載置面4aに倣うように矯正できる強さで、且つ、ガラス板1を保護シート5上で滑らせることが可能な強さに調節される。以上により調節工程P1が完了する。
【0044】
調節工程P1が完了すると、図2図4に示した積層工程P2を実行する。積層工程P2では、まず、図2に示すように、四つのスペーサー6の各々の上に支持ガラス2のコーナー部が位置するように調節した上で、スペーサー6に支持ガラス2を載せる。なお、スペーサー6に支持ガラス2を載せる時点においても、定盤4によるガラス板1の吸引は継続する。スペーサー6に載せられた支持ガラス2は、当該支持ガラス2に付与される外力、或いは、自重によりスペーサー6上で湾曲変形(弾性変形)が可能である。
【0045】
スペーサー6に支持ガラス2を載せ終わると、次に、図3に矢印F2で示すように、支持ガラス2の中央部を上方から押圧し、支持ガラス2の合わせ面2aを下凸に湾曲変形させる。そして、ガラス板1の合わせ面1aにおける中央部1axと、支持ガラス2の合わせ面2aにおける中央部2axとを接触させる。これにより、相互に接触した中央部1ax,2ax同士が貼り合わせの起点となる。なお、中央部1ax,2ax同士を接触させる時点においても、定盤4によるガラス板1の吸引は継続する。ここで、本実施形態では、支持ガラス2の中央部を上方から押圧しているが、変形例として中央部以外の部位(端部よりも内側の任意の部位)を上方から押圧するようにしてもよい。この場合、中央部1ax,2ax同士以外の箇所が貼り合わせの起点となる。
【0046】
上述のように中央部1ax,2ax同士を接触させた後には、両ガラス1,2が貼り合わされた領域が、上記起点を中心に放射状に拡大していくことで、図4に示した積層体3が作製される。なお、貼り合わされた領域が拡大していく際には、定盤4に吸引された状態にあるガラス板1の各部位が順次に支持ガラス2側に浮き上がって貼り付いていく。このとき、負圧により定盤4がガラス板1を吸引しようとする吸引力F1の強さは、ガラス板1の各部位が支持ガラス2に貼り付こうとする密着力よりも弱くなるように調節される。以上により積層工程P2が完了する。
【0047】
ここで、上記の実施形態に対しては、下記のような変形例を適用することも可能である。上記の実施形態においては、ガラス板1が相対的に下方に配置され、支持ガラス2が相対的に上方に配置されているが、両ガラス1,2の配置は本実施形態とは逆転していてもよい。ただし、可撓性を有するガラス板1の取り扱いを考慮すると、上記の実施形態における配置とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラス板
1a 合わせ面
1ax 中央部
2 支持ガラス
2a 合わせ面
2ax 中央部
3 積層体
4 定盤(ステージ)
5 保護シート
P1 調節工程
P2 積層工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8