(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087950
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ドライクリーニング用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/62 20060101AFI20230619BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230619BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C11D1/62
C11D3/20
C11D3/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202519
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 光正
(72)【発明者】
【氏名】近藤 志郎
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC13
4H003AE05
4H003AE06
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC03
4H003EB04
4H003ED02
4H003ED28
4H003FA04
4H003FA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】常温で、かつ予備洗浄を必要としない本洗のみのドライクリーニングにおいて、洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去できるドライクリーニング用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(1)で表される化合物3~81質量%、(B)特定のアミド化合物10~77質量%、(C)安定化剤1~79質量%、(D)水8~35質量%を含み、質量比率(D)成分/(A)成分が0.35以上1.2未満であることを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物。
式中、R
1はC8~22のアルキル基、C8~22のアルケニル基又はC8~22のヒドロキシアルキル基、R
2、R
3、R
4は独立にC1~4のアルキル基又はC2~4のヒドロキシアルキル基で、X
p-はハロゲンイオン、モノアルキル硫酸イオン等。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表される化合物3~81質量%、(B)一般式(2)で表される化合物10~77質量%、(C)安定化剤1~79質量%、(D)水8~35質量%を含み、質量比率(D)成分/(A)成分が0.35以上1.2未満であることを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【化1】
式(1)中、R
1は炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基又は炭素数8~22のヒドロキシアルキル基であり、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、X
p-はハロゲンイオン、炭素数1~3のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数1~12のモノアルキルリン酸エステルイオン、炭素数1~12のジアルキルリン酸エステルイオン又は炭素数2~4のヒドロキシアルカンカルボン酸イオンであり、p:1~3である。
【化2】
式(2)中、R
5は炭素数8~22のアルキル基又は炭素数8~22のアルケニル基であり、A
1、A
2はそれぞれ炭素数2~4のアルキレン基であり、m、nはそれぞれA
1O、A
2Oの平均繰返し数を示し、m+nは1~10である。m+nが1超の場合、複数のA
1、A
2は互いに同一であってもよいし異なってもよい。
【請求項2】
(C)成分がアルコール系溶剤、アルコール系溶剤のアルキレンオキサイド付加物であるエーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーニング用洗浄剤組成物に関する。さらに詳しくは、常温で、かつ予備洗浄を必要としない本洗のみのドライクリーニングにおいて、洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去できるドライクリーニング用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライクリーニングとは、衣類などの洗濯物をパラフィン、ナフテン、芳香族炭化水素などの石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、ジクロロペンタフルオロプロパンなどの合成溶剤を用いてクリーニングする方法であり、ドライクリーニングによって、洗濯物に付着する機械油、植物油、ワックスなどの油溶性汚れを効果的に除去することができる。
しかし、ドライクリーニング溶剤は非水溶性であるために、醤油、ソース、コーラ、ジュース、コーヒー、米粒や、食塩を主体とした人体からの汗ジミなどの水溶性汚れを落とすことは困難である。
【0003】
従来、この対策として、水分を含有するドライクリーニング用前処理剤や、ドライクリーニング用洗浄剤に一定量の水とドライクリーニング溶剤を添加し可溶化した状態のササラ液を、汚れ部にスプレー又はブラッシングする前処理操作により、水溶性汚れを除去しやすくしている。
しかし、これらの前処理操作は、洗濯物を一点ごとに点検して汚れを確認した上で処理する方法であり、作業が煩雑で作業効率が悪く、労力を要し、非効率であるとともに、注意を怠ると部分的な汚染や脱色を生ずる危険があり、さらに作業環境を汚染し、人体への接触や吸い込みなどによる皮膚障害や神経系、呼吸器、肝臓などの臓器に重篤な損傷を引き起こす可能性がある。
【0004】
このために、特許文献1では、予洗工程での汚染溶剤を蒸留し、予洗工程以降で本洗い工程を行う2浴ないし3浴方式の予洗工程である1浴又は2浴に添加するだけで、水溶性汚れを除去することができ、皺や収縮の発生を極力抑えることができるドライクリーニング用洗浄剤組成物を開示している。
また、特許文献2では、10℃以下の低温における水可溶化力が良好で、且つ洗浄力、帯電防止効果が良好なドライクリーニング用洗浄剤組成物およびそれを用いたドライクリーニング用洗浄液を開示している。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、皺、収縮、型崩れなどを発生することなく洗濯物への水溶性汚れ、油性汚れを除去するため、2浴ないし3浴洗浄法のような予洗工程を含む洗浄方法が必須であった。また、該ドライクリーニング用洗浄剤組成物を本洗浄工程のみで処理すると皺、収縮、型崩れなど洗濯物へ過大なダメージが生じた。
一方、特許文献2では、わじみや収縮などを防ぐため、10℃以下の低温で洗浄するためのドライクリーニング用洗浄剤を提示しているが、室温でドライクリーニングを行うとわじみや収縮などを防ぐことはできず、また10℃以下の低温でドライクリーニングを行うことは、設備や時間、環境、経費面から問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-282082
【特許文献2】特開平10-008091
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、常温で、かつ予備洗浄を必要としない本洗のみのドライクリーニングにおいて、洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、(A)一般式(1)で表される化合物3~81質量%、(B)一般式(2)で表される化合物10~77質量%、(C)安定化剤1~79質量%、(D)水8~35質量%を含み、質量比率(D)成分/(A)成分が0.35以上1.2未満であることを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物により、常温で、かつ予備洗浄を必要としない本洗のみで洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去できるドライクリーニング用洗浄剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】
式(1)中、R
1は炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基又は炭素数8~22のヒドロキシアルキル基であり、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、X
p-はハロゲンイオン、炭素数1~3のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数1~12のモノアルキルリン酸エステルイオン、炭素数1~12のジアルキルリン酸エステルイオン又は炭素数2~4のヒドロキシアルカンカルボン酸イオンであり、p:1~3である。
【化2】
式(2)中、R
5は炭素数8~22のアルキル基又は炭素数8~22のアルケニル基であり、A
1、A
2はそれぞれ炭素数2~4のアルキレン基であり、m、nはそれぞれA
1O、A
2Oの平均繰返し数を示し、m+nは1~10である。m+nが1超の場合、複数のA
1、A
2は互いに同一であってもよいし異なってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、常温で、かつ予備洗浄を必要としない本洗のみのドライクリーニングにおいて、洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去できるドライクリーニング用洗浄剤組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、(A)一般式(1)で表される化合物
3~81質量%、(B)一般式(2)で表される化合物10~77質量%、(C)安定化剤1~79質量%、(D)水8~35質量%を含み、質量比率(D)成分/(A)成分が0.35以上1.2未満であることを特徴とする。
【化3】
式(1)中、R
1は炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基又は炭素数8~22のヒドロキシアルキル基であり、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、X
p-はハロゲンイオン、炭素数1~3のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数1~12のモノアルキルリン酸エステルイオン、炭素数1~12のジアルキルリン酸エステルイオン又は炭素数2~4のヒドロキシアルカンカルボン酸イオンであり、p:1~3である。
【化4】
式(2)中、R
5は炭素数8~22のアルキル基又は炭素数8~22のアルケニル基であり、A
1、A
2はそれぞれ炭素数2~4のアルキレン基であり、m、nはそれぞれA
1O、A
2Oの平均繰返し数を示し、m+nは1~10である。m+nが1超の場合、複数のA
1、A
2は互いに同一であってもよいし異なってもよい。
【0011】
次に、本発明の洗浄前処理剤組成物の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分について説明する。
【0012】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は下記一般式(1)で表される化合物であり、
【化5】
式(1)中、R
1は炭素数8~22のアルキル基、炭素数8~22のアルケニル基又は炭素数8~22のヒドロキシアルキル基であり、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基であり、X
p-はハロゲンイオン、炭素数1~3のモノアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イ
オン、炭素数1~12のモノアルキルリン酸エステルイオン、炭素数1~12のジアルキルリン酸エステルイオン又は炭素数2~4のヒドロキシアルカンカルボン酸イオンであり、p:1~3である。
【0013】
具体的には、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムベンゼンスルホネート、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム―p―トルエンスルホネート、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルアンモニウムブチルホスフェート(モノブチルホスフェート/ジブチルホスフェート=1/1)、オクタデシルエチルジヒドロキシエチルアンモニウムエチルサルフェート、オレイルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、オクタデシルジヒドロキシプロピルメチルアンモニウム-p-トルエンスルホネート、β-ヒドロキシアルキル(C16~18)エチルジヒロドロキシプロピルアンモニウムエチルサルフェート、β-ヒドロキシアルキル(C12~14)ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムキシレンスルホネート、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムサルフェート、ラウリルジエチルヒドロキシアンモニウムナイトレート、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムホスフェート、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムグルコネートなどを挙げることができる。
好ましくは水溶性汚れの洗浄性の観点から、R1は炭素数12~18のアルキル基であり、R2は炭素数1~3のアルキル基であり、R3は炭素数1~3のアルキル基又は炭素数2~3のヒドロキシアルキル基であり、R4は炭素数2~3のヒドロキシアルキル基であり、Xn-は炭素数1~2のモノアルキル硫酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、キシレンスルホン酸イオン、炭素数4~8のモノアルキルリン酸エステルイオン又は炭素数4~8のジアルキルリン酸エステルイオンであり、n:1~2である。
これら一般式(1)で表される化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0014】
本発明組成物において(A)成分の配合量は、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、3~81質量%であり、水溶性汚れの洗浄性と組成物の粘度、経済性の観点から3~45質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましい。
【0015】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は下記一般式(2)で表される化合物であり、
【化6】
式(2)中、R
5は炭素数8~22のアルキル基又は炭素数8~22のアルケニル基であり、A
1、A
2はそれぞれ炭素数2~4のアルキレン基であり、m、nはそれぞれA
1O、A
2Oの平均繰返し数を示し、m+nは1~10である。m+nが1超の場合、複数のA
1、A
2は互いに同一であってもよいし異なってもよい。
具体的には、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(6モル)オクタデシルアミドエーテル、ポリオキシエチレン(4モル)ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドエーテル、カプリル酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン(10モル)ラウリン酸モノエタノールアミドエーテルなどを挙げることができる。
好ましくは水溶性汚れの洗浄性の観点から、R
5は炭素数12~20のアルキル基又は炭素数12~20のアルケニル基であり、A
1、A
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、m+nは1~6である。
さらに好ましくは、R
5は炭素数12~18のアルキル基又は炭素数12~18のアル
ケニル基であり、A
1、A
2は炭素数2~3のアルキレン基であり、m+nは1~4である。
これら一般式(2)で表される化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
本発明組成物において(B)成分の配合量は、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、10~77質量%であり、組成物の粘度、経済性の観点から15~50質量%が好ましい。
【0016】
<(C)成分>
本発明組成物に使用する安定化剤に特に制限はなく、アルコール系溶剤、アルコール系溶剤のアルキレンオキサイド付加物であるエーテル系溶剤、エステル系溶剤またはグリコール系溶剤などを挙げることができる。
具体的には、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール系溶剤、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のアルコール系溶剤のアルキレンオキサイド付加物であるエーテル系溶剤、酢酸エチル、カプロン酸エチル、吉草酸ペンチル、サリチル酸メチル等のエステル系溶剤を挙げることができる。
引火事故を未然に防ぐ観点から、引火点が40℃以上の成分を使用することが好ましく、50℃以上の成分がより好ましい。
これらの(C)成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
本発明組成物において(C)成分の配合量は、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、1~79質量%であり、組成物の粘度の観点から5~79質量%が好ましく、8~79質量%がより好ましい。
【0017】
<(D)成分>
本発明組成物において、(D)成分の水としては特に制限されないが、例えば水道水、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などが挙げられる。これらの中でも、不純物等の影響が少ない観点から、脱イオン水、純水、超純水、蒸留水が好ましい。
(D)成分の配合量は、ドライクリーニング用洗浄液を基準に、8~35質量%であり、水溶性汚れの洗浄性と生地へのダメージ抑制の観点から、15~25質量%がより好ましい。
【0018】
<(D)成分/(A)成分>
(D)成分と(A)成分の質量比率((D)成分/(A)成分)は、0.35以上1.2未満である。
上記の質量比率が0.35より小さいと、本洗のみのドライクリーニングにおいて油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去することができない恐れがあり、上記の質量比率が1.2より大きいと、洗濯物収縮などの生地へのダメージが生じる恐れがある。
【0019】
<任意成分>
任意成分としては、洗浄剤に配合される公知の添加剤等であれば特に制限されないが、一般式(1)で表される化合物以外のカチオン界面活性剤、高級脂肪酸の多価アルコールエステルやそのエチレンオキサイド付加物、防錆剤、シリコーン化合物、抗菌剤、ドライクリーニング用溶剤などを含有させることができる。
【0020】
<製造方法>
ドライクリーニング用洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び任意成分の各成分の、1つ以上を混合することで得られる。
【0021】
<形態>
ドライクリーニング用洗浄剤組成物の形態は液体状であるが、洗浄機への供給のしやすさやなどから、低粘度であることが好ましい。粘度は100mPa・s未満が好ましく、80mPa・s未満がより好ましく、50mPa・s未満がさらに好ましい。
【0022】
<使用方法>
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物はそのまま使用しても良いが、事前にドライクリーニング用溶剤や(C)成分により希釈・調整した後、使用しても良い。
【0023】
<ドライクリーニング用溶剤>
使用するドライクリーニング用溶剤としては、特に限定されないが、例えばテトラクロロエチレン等の塩素系溶剤、石油系炭化水素等の石油系溶剤、HFC-365等のフッ素系溶剤などがあり、1種又は2種以上を使用することができる。
生地の風合い変化やボタンなどの付属品へのダメージを抑制する観点から、テトラクロロエチレン等の塩素系溶剤、石油系炭化水素等の石油系溶剤が好ましい。
【0024】
<ドライクリーニング用洗浄剤組成物使用量>
ドライクリーニング用洗浄剤組成物はドライクリーニング用溶剤等に配合し、水溶性および油性汚れの洗浄性ならびに生地へのダメージを抑制する観点から、ドライクリーニング用溶剤を基準に(A)成分としては0.0003~5質量%が好ましく、0.003~5質量%がより好ましい。(B)成分としては0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。(C)成分としては0.0001~10質量%が好ましく、0.001~5質量%がより好ましい。(D)成分としては0.015~0.2質量%が好ましく、0.02~0.16質量%がより好ましい。
(D)成分と(A)成分の質量比率((D)成分/(A)成分)は、0.35以上1.2未満である。
上記の質量比率が0.35より小さいと、本洗のみのドライクリーニングにおいて油溶性汚れと水溶性汚れを同時に除去することができない恐れがあり、上記の質量比率が1.2より大きいと、洗濯物収縮などの生地へのダメージが生じる恐れがある。
【0025】
<使用機械>
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、商業的に使われるドライクリーニング用洗浄機であれば特に制限されないが、蒸留機を搭載した石油系溶剤機、テトラクロロエチレン機、フッ素系溶剤機などの機械に好適に使用することができる。
【0026】
<処理条件>
使用するドライクリーニング用溶剤の温度は常温で使用すればよく特に限定されないが、0℃~40℃の範囲が好ましい。0℃以下では洗浄力が低下するおそれがあり、40℃以上では溶剤の揮発性が高まる他、ボタンなどの衣類等の付属品へのダメージが起こる可能性がある。
【実施例0027】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[使用原料]
(A)成分、(A)成分の比較成分(a)として、以下に示す化合物を用いた。
(A)-1:オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムメタキシレンスルホネート(合成品)
(A)-2:ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-p-トルエンスルホネー
ト(合成品)
(A)-3:オクタデシルエチルジヒドロキシエチルアンモニウムエチルサルフェート(合成品)
(a)-1:ジオクタデシルメチルヒドロキシエチルアンモニウムメタキシレンスルホネート(合成品)
【0028】
[(A)-1合成]
耐圧反応容器(オートクレーブ)にオクタデシルジメチルアミン35.5質量部、メタキシレンスルホン酸22.2質量部、イオン交換水10.0質量部、3-メチル-3-メトキシブタノール27.0質量部を仕込んだ。次に、60℃にて窒素置換し、エチレンオキシド 5.3質量部を吹き込んだ。(モル比:オクタデシルジメチルアミン/メタキシレンスルホン酸/エチレンオキシド=1/1/1)そして、90~100℃で2時間攪拌しながら反応させて(A)-1の溶液(有効分 61%)を得た。その後、105℃・3時間で送風乾燥して有効分100%品を得た。
[(A)-2合成]
モル比:ドデシルジメチルアミン/p-トルエンスルホン酸/エチレンオキシド=1/1/1に変更した以外は(A)-1と同様の方法で合成した。
[(A)-3の合成]
加温の可能なガラス容器にオクタデシルジエタノールアミン40.0質量部、3-メチル-3-メトキシブタノール42.8質量部を仕込んだ。次に70~90℃で加熱混合し、ジエチル硫酸17.2質量部を滴下した。滴下終了後、70~90℃で2時間攪拌しながら反応を進行させて(A)-3を得た。その後、105℃・3時間で送風乾燥して有効分100%品を得た。
[(a)-1合成]
モル比:ジオクタデシルメチルアミン/メタキシレンスルホン酸/エチレンオキシド=1/1/1に変更した以外は(A)-1と同様の方法で合成した。
【0029】
(B)成分として、以下に示す化合物を用いた。
(B)-1:オレイン酸ジエタノールアミド(商品名:スタホームDO、日油(株)社製)(B)-2:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(商品名:アミゾールCDE-G、川研ファインケミカル(株)社製)
(B)-3:ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド(商品名:アミゾールCME、川研ファインケミカル(株)社製)
【0030】
(C)成分として、以下に示す化合物を用いた。
(C)-1:3-メチル-3-メトキシ-ブタノール(商品名:ソルフィット、(株)クラレ社製)
(C)-2:ブチルグリコール(ブチルセロソルブ)(商品名:ブチルグリコール、日本乳化剤(株)社製)
【0031】
(D)成分として、イオン交換水を用いた。
【0032】
[ドライクリーニング用洗浄剤組成物の作製]
[実施例1]
下記の原料を、表1の質量%比になるように配合して混合し、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を得た。
(A-2)不揮発分 10質量%
(B-1) 20質量%
(C-1) 62質量%
イオン交換水 8質量%
【0033】
[実施例2~20、比較例1~12]
表1、2に示した配合に従って、実施例1と同様に操作して、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を得た。
【0034】
[汚染布]
ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価に用いた汚染布は下記の方法により作製した。
(1)染料汚染布(水溶性汚れ)
クリーニング総合研究所の水溶性汚れ除去判定用の染料汚染布作製法に準じて作製した。汚染布地としてポリエステルポンジを、汚染染料としてAcid Violet 6B[東京化成(株)]とKayacyl Blue HRL[日本化薬(株)]を4:6の質量比で混合したものを用いた。染料の0.075質量%水溶液に布地を常温で2分間浸漬し、反射率が35±1%になるようにマングルを用いて絞り、100℃で90秒間乾燥した。試験布は、4cm×10cmのサイズに裁断した。
(2)醤油汚染布(水溶性汚れ)
汚染布地としてウールモスリンを用い、醤油調味料[キッコーマン(株)]の中に、布地を常温で2分間浸漬し、反射率が45±2%になるようにマングルを用いて絞り、80℃で90秒間乾燥した。試験布は、4cm×10cmのサイズに裁断した。
(3)油性汚染布(油性汚れ)
汚染布地としてウールモスリンを用い、油化学協会法に準じて、牛脂硬化油3g、流動パラフィン9g、カーボン0.35g及び1,1,1-トリクロロエタン1,500mlからなる汚れ成分液中に、布地を常温で2分間浸漬し、反射率が35±2%になるようにマングルを用いて絞り、風乾した。試験布は、4cm×10cmのサイズに裁断した。
【0035】
[評価方法]
実施例及び比較例において、性能評価は下記の方法により行った。
(1)洗浄性
容量500mlのステンレスポットに、直径0.5mmのスチールボール10個とテトラクロロエチレン100mlを入れ、ドライクリーニング用洗浄剤組成物0.5mlを添加溶解した。次いで、ステンレスポットに、汚染布(染料汚染布、醤油汚染布又は油性汚染布)を1枚入れ、ラウンダ・オ・メーター[(株)大栄科学精機製作所、L-20]を用いて常温(20℃)で10分間洗浄し、1分間遠心脱液したのち、自然乾燥した。洗浄率は、カラーメーター[(株)村上色彩技術研究所、CM-53D]を用いて550nmにおける反射率を測定し、次式に従って洗浄率を算出した。
洗浄率(%)={(S2-S1)/(W-S1)}×100
S1:洗浄前の汚染布の反射率、S2:洗浄後の汚染布の反射率、W:汚染前の白布反射率である。
【0036】
(1-1)醤油汚染布洗浄性
◎:30%以上
〇:20%以上30%未満
△:10%以上20%未満
×:10%未満
(1-2)染料汚染布洗浄性
◎:95%以上
〇:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
(1-3)油性汚染布洗浄性
◎:60%以上
〇:55%以上60%未満
△:50%以上55%未満
×:50%未満
△以上を合格とした。
【0037】
(2)収縮率
容量500mlのステンレスポットに、直径0.5mmのスチールボール10個とテトラクロロエチレン100mlを入れ、ドライクリーニング用洗浄剤組成物0.5mlを添加溶解した。次いで、30cm×30cmサイズに裁断し、生地中央に縦横20cmの長さの十字線をクリーニングペンで書いたレーヨン試験布を、ステンレスポットに1枚入れ、ラウンダ・オ・メーター[(株)大栄科学精機製作所、L-20]を用いて常温(20℃)10分間洗浄し、1分間遠心脱液したのち、自然乾燥した。
収縮率はノギスを使用し、試験前後の十字線の縦横の長さをそれぞれ測り、次式に従って算出した。
収縮率(%)={(S1―S2)/(S1)}×100
S1:洗浄前の長さ、S2:洗浄後の長さである。
◎:0.15%未満
〇:0.15%以上0.25%未満
△:0.25%以上0.35%未満
×:0.35%未満
△以上を合格とした。
【0038】
(3)粘度
20℃で、B型粘度計2号ローターを用いて粘度測定を行った。
◎:50mPa・s未満
〇:50mPa・s以上80mPa・s未満
△:80mPa・s以上100mPa・s未満
×:100mPa・s以上
△以上を合格とした。
【0039】
試験結果を表1~2に示す。表1~2に示したように本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、油性汚れを評価する油性汚染布の他、水溶性汚れを評価する染料汚染布、醤油汚染布でも洗浄率が高いにも関わらず、生地のダメージである収縮率も低く抑制されており、非常に優れていることが分かった。
さらに(C)成分が5質量%を超えると組成物の粘度は大きく低下し、自動投入機を用いた薬剤投入が可能となりため、作業者の手間削減も期待できた。
【0040】
【0041】
【0042】
以上説明したように、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物によれば、常温かつ予備洗浄を必要としない本洗のみのドライクリーニングにおいて、洗濯物収縮などの生地へのダメージを抑制しつつ、油溶性汚れと水溶性汚れを同時に洗浄できる。
本発明は、石油系溶剤、テトラクロロエチレン、ジクロロペンタフルオロプロパンなどのドライクリーニング用溶剤を使用する洗浄機に広く利用可能である。