(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087957
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】デジタル保護リレー装置、及びデジタル保護リレー装置の表示方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/04 20060101AFI20230619BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H02H3/04 D
H02H3/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202540
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 三雄
【テーマコード(参考)】
5G142
【Fターム(参考)】
5G142AB03
5G142AC06
5G142BC02
5G142BD05
5G142DD01
5G142DD13
5G142DD16
5G142EE10
5G142FF26
5G142GG02
(57)【要約】
【課題】、筺体内部に大きな空間が必要な表示器や、高価な表示器を用いることなく、少なくとも多彩な情報の表示と長寿命とを両立する。
【解決手段】電力系統を保護するデジタル保護リレー装置100において、複数の表面実装型LED304を有する表示器101と、入力情報に基づいて、表示器101に表示する情報の内容を演算して複数の表面実装型LED304の点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を表示器101に出力する表示制御部102と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統を保護するデジタル保護リレー装置であって、
複数の表面実装型LEDを有する表示器と、
入力情報に基づいて、前記表示器に表示する情報の内容を演算して前記複数の表面実装型LEDの点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を前記表示器に出力する表示制御部と、を備える
デジタル保護リレー装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記複数の表面実装型LEDの前記点灯パターンとして、文字、数字、及び記号の各々を表現した点灯パターンを記憶する記憶部、を備え、
前記表示制御部は、前記記憶部に格納された前記点灯パターンから前記表示器に表示する情報の内容を演算した結果に対応する点灯パターンを読み出し、読み出した前記点灯パターンを制御する前記点灯信号を生成する
請求項1に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項3】
前記表示器は、前記複数の表面実装型LEDで構成される集合体を複数個有し、
前記表示制御部は、前記表示器に表示する情報の内容を演算した結果に基づいて、前記複数の表面実装型LEDで構成される各集合体を所定値以下の時間間隔で順に点灯させる
請求項1に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記複数の表面実装型LEDで構成される複数の前記集合体の中で特定の集合体の点灯時間を変化させる
請求項3に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項5】
前記入力情報の一つとして操作者の入力操作を受け付ける入力装置、を備え、
前記表示制御部は、前記入力装置に対する前記操作者の入力操作を基に、前記複数の表面実装型LEDで構成される複数の集合体の点灯を制御して、設定操作に用いられる文字列を前記表示器に表示し、表示されている前記文字列の内容と前記入力装置に対する入力操作の内容とに基づいて、当該デジタル保護リレー装置の保護機能に関する設定を実行する
請求項1に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項6】
前記入力情報の一つとして操作者の入力操作を受け付ける入力装置、を備え、
前記表示制御部は、前記入力装置に対する前記操作者の入力操作を基に、前記複数の表面実装型LEDで構成される複数の集合体の点灯を制御して、前記電力系統の保護機能に関する情報を表す文字列を前記表示器に表示する
請求項1に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項7】
前記表示制御部を、当該デジタル保護リレー装置の保護制御のための演算を行う保護制御演算部と共用する
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデジタル保護リレー装置。
【請求項8】
電力系統を保護するデジタル保護リレー装置の表示方法であって、
前記デジタル保護リレー装置が、入力情報に基づいて、複数の表面実装型LEDを有する表示器に表示する情報の内容を演算する処理と、
前記デジタル保護リレー装置が、前記演算の内容に基づいて、前記複数の表面実装型LEDの点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を前記表示器に出力する処理と、を含む
デジタル保護リレー装置の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)を用いた表示器を有するデジタル保護リレー装置、及びデジタル保護リレー装置の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高価な表示器を用いることなく入力状態を使用者に容易に確認させることを目的とするデジタル形保護継電器が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、「電流及び電圧の入力状態を表示する表示器を備えたデジタル形保護継電器において、入力状態を示す値であって所定の特性図上の象限番号を演算する演算回路を備え、表示器は、象限番号を表示可能なLEDで構成され、演算回路が出力する象限番号を示すデータを入力として象限番号を表示する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたデジタル形保護継電器は、象限番号を表示可能なLEDを有し、内部で演算された象限番号のみ表示することを可能としている。そのため、電力系統の監視及び保護で頻繁に使用されるアルファベットの小文字や「φ」等の記号を表現することができない。このように、従来は、デジタル保護リレー装置上のLEDによる状態表示表現に制限があった。したがって、電力系統の状態やデジタル保護リレー装置について詳細な情報を確認するためには、ノート型PC(Personal Computer)やタブレット端末等の外部装置をデジタル保護リレー装置に接続する必要があった。また、従来、操作者が簡易な表示装置しか持たないデジタル保護リレー装置に対して設定操作を行う場合、デジタル保護リレー装置に外部装置を接続し、外部装置の画面に表示される内容を確認して設定を行う必要があった。
【0005】
また、デジタル保護リレー装置で異常が検出された場合、異常内容の確認や復旧作業も外部装置を接続して行う必要があった。操作者は外部装置をデジタル保護リレー装置まで持ち運び、デジタル保護リレー装置へ接続する必要があるため、確認や復旧の作業に手間と時間を要していた。
【0006】
近年、デジタル保護リレー装置においては、小型化及び低価格化の要求が強い。しかし、LCD(Liquid Crystal Display)やセグメントで分割された汎用LED等には、厚みがある。また、付随する基板の表面積を広く占有する表示器では、デジタル保護リレー装置の筐体そのものや、筐体内部に実装する基板の小型化を妨げる。
【0007】
さらに、LCD及びVFD(Vacuum Fluorescent Display)蛍光管等のような、表示器と基板がセットになっている製品は高価でありコストがかさむので、デジタル保護リレー装置に使用することができない。このような理由から、従来、操作者がデジタル保護リレー装置から取得できる情報は、LEDの点灯/消灯や現象番号等の簡単な情報に限られていた。このため、文字や記号で表現された詳細かつ多彩な情報を、デジタル保護リレー装置から直接読み取ることができなかった。
【0008】
また、デジタル保護リレー装置は、15年以上の長期的な運用を求められる装置である。そのため、表示器においてもデジタル保護リレー装置の運用中に寿命を迎えることのない、長寿命なものが求められる。例えば、LCD表示器の場合、LCDを制御するための専用のマイクロコンピュータ(以下「専用マイコン」と略称する)と、データを格納するためのメモリと、LCDとがまとめて基板に実装された形状(以下「LCDモジュール」と呼称する)で販売されている。つまり、LCD、専用マイコン、及びメモリ等が予め基板に実装された状態で使用することが一般的である。
【0009】
また、LCDモジュールに使用されている半導体の多くは民生品向け仕様の製品であり、デジタル保護リレー装置のような長期的な運用に耐えられる仕様となっていない。一方、産業用仕様の半導体を用いてLCDモジュールを製作した場合、特注仕様となりさらに価格が上昇する。このように、従来、デジタル保護リレー装置において、多彩な表現が可能な手段と、長寿命との両立が困難であった。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、筺体内部に大きな空間が必要な表示器や、高価な表示器を用いることなく、少なくとも多彩な情報の表示と長寿命とを両立するデジタル保護リレー装置及びその表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様におけるデジタル保護リレー装置は、電力系統を保護するデジタル保護リレー装置であって、複数の表面実装型LEDを有する表示器と、入力情報に基づいて、表示器に表示する情報の内容を演算して複数の表面実装型LEDの点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を表示器に出力する表示制御部と、を備える。
【0012】
また、本発明の一態様におけるデジタル保護リレー装置の表示方法は、電力系統を保護するデジタル保護リレー装置の表示方法であって、デジタル保護リレー装置が、入力情報に基づいて、複数の表面実装型LEDを有する表示器に表示する情報の内容を演算する処理と、デジタル保護リレー装置が、上記演算の内容に基づいて、複数の表面実装型LEDの点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を表示器に出力する処理と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の少なくとも一態様によれば、筺体内部に大きな空間が必要な表示器や、高価な表示器を用いることなく、少なくとも多彩な情報の表示と長寿命とを両立するデジタル保護リレー装置及びその表示方法を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るデジタル保護リレー装置の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るデジタル保護リレー装置のLED文字表示器の文字点灯方法を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るデジタル保護リレー装置のLED文字表示器を点灯させるときに使用するLED点灯信号表の例を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るLED点灯パターンを用いたLED文字表示器の点灯方法の例を示す正面模式図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置したLEDの点灯を用いて表現する文字の例(1)を示す図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置したLEDの点灯を用いて表現する文字の例(2)を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置したLEDの点灯を用いて表現する文字の例(3)を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る表面実装型LEDの集合体の点灯を高速で切り替えるデジタル保護リレー装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るLED文字表示器の文字点灯方法を実現するLED点灯信号の内容の例を示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る表面実装型LEDの集合体の点灯を高速で切り替えた際のLED文字表示器の表示例を示す図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係るLED文字表示器を使用した切替可能なメニュー表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係るデジタル保護リレー装置の構成について
図1を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル保護リレー装置の構成例を示す図である。
図示するデジタル保護リレー装置100は、LED文字表示器101、保護制御演算部102、不揮発性メモリ103、操作部104、入力変換器105、A/D変換部106、出力回路107、及び入出力端子108を有して構成されている。例えば、操作部104としては、押圧式の複数の操作スイッチが用いられる。
【0018】
デジタル保護リレー装置100の保護制御対象である電力系統の電流及び電圧のアナログ信号が、入出力端子108を介して、デジタル保護リレー装置100内部の入力変換器105へ入力する。入力変換器105は、入力された高レベルの電流及び電圧のアナログ信号を、A/D変換部106の電子回路が認識(処理)できる低レベルの信号へ変換し、A/D変換部106に入力する。A/D変換部106は、入力変換器105から入力されたアナログ信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号(電流信号及び電圧信号)を保護制御演算部102へ入力する。
【0019】
保護制御演算部102は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略称する)で構成され、例えば
図2に示すように、プロセッサ301と、不揮発性の内蔵メモリ302を備える。プロセッサ301は、本実施形態に係るデジタル保護リレー装置100の機能を実現するソフトウェアのプログラムを内蔵メモリ302又は不揮発性メモリ103から読み出し、該プログラムを不図示のRAM(Random Access Memory)に展開して実行する。プロセッサ301及び内蔵メモリ302を備えた保護制御演算部102は、デジタル保護リレー装置100の動作を制御するコンピューターの一例として用いられる。
【0020】
保護制御演算部102は、入力変換器105及びA/D変換部106から得られたデジタル信号の電流及び電圧の値に異常がないかを監視する。正常な電流及び電圧の情報は、不揮発性メモリ103に整定値情報(保護制御又は発報を実施する値)として保存されている。保護制御演算部102は、A/D変換部106から入力されたデジタル信号の電流及び電圧と、不揮発性メモリ103から読み出した整定値情報とをそれぞれ比較し、比較の結果に応じた処理を実行する。保護制御演算部102は、比較の結果から電流又は電圧に異常を検出した場合には、出力回路107へ出力信号を出力する。そして、出力信号を受けた出力回路107は、入出力端子108を介して、外部の遮断装置へ遮断命令信号を出力する。
【0021】
また、保護制御演算部102は、電力系統の電流及び電圧の情報、並びに操作部104が出力する操作信号などの入力情報に基づいて、LED文字表示器101に表示する情報の内容を演算する。そして、保護制御演算部102は、その演算の結果に基づいて、複数の表面実装型LED(チップLED)の点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号をLED文字表示器101に出力する。LED文字表示器101には、電力系統の状態を表す情報、電力系統の保護機能に関する情報などが表示される。
【0022】
LED文字表示器101は、
図2に示すように複数個の表面実装型LED304を、縦横に配置して構成されている。例えば、表面実装型LEDのサイズは、1.0mm×0.5mm程度の極小サイズから数mm×数mmのサイズまであるが、いずれも小型であり点状とも言えるサイズである。表面実装型LED304は小型であり、縦横に複数個配置しても厚みや実装面積が圧迫されることはないため、デジタル保護リレー装置100を従来よりも小型化することが可能である。必要な文字数や文字の大きさに応じて、LED文字表示器101に配置する表面実装型LED304の数を変更する。
【0023】
また、LED文字表示器101は、操作部104を操作者が操作することで、不揮発性メモリ103に保存されている整定値情報や、入力されている電圧及び電流の値を表示したり、デジタル保護リレー装置100の設定を行うための情報(例えば、
図11参照)を表示したりする。
【0024】
LED文字表示器101に表示させる情報の例として、入力変換器105及びA/D変換部106を介して保護制御演算部102に入力されている、電圧及び電流の入力値情報の数値がある。入力値情報には、「mA」、「A」、「V」、「π」、「φ」等の単位が必要である。したがって、デジタル保護リレー装置100に入力値情報を直接表示させるには、これらの単位の表現が必要となる。
【0025】
また、デジタル保護リレー装置100は、設定や動作確認を装置単品で実施する。このため、デジタル保護リレー装置100では、操作者が操作部104を操作してこれらの作業を実施することを可能としている。デジタル保護リレー装置100は、アルファベットやギリシャ文字、数字、及び記号で構成した設定情報をLED文字表示器101に表示し、操作部104でコマンドの遷移や決定、数値の入力等を行い、自装置の動作条件の設定や設定されている情報の確認等作業を行う。以降、本明細書において、アルファベットやギリシャ文字、数字、及び記号を区別しない場合、又は総称する場合には、「文字」又は「情報」と称する。
【0026】
次に、デジタル保護リレー装置100においてLED文字表示器101が備える表面実装型LED304を点灯させて情報を表示する方法について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0027】
図2は、デジタル保護リレー装置100のLED文字表示器101の文字点灯方法を示す図である。
図3は、デジタル保護リレー装置100のLED文字表示器101を点灯させるときに使用するLED点灯信号表の例を示す図である。
【0028】
デジタル保護リレー装置100では、保護制御演算部102とLED文字表示器101を、信号線303で接続する。ここでは、一例として、縦5個×横5個の計25個の表面実装型LED304によりLED文字表示器101を構成する。本明細書では、このような複数の表面実装型LED304を集合配置した状態を、複数の表面実装型LED304の集合体305と記載する。
【0029】
信号線303は、[D00]~[D24]の25本で構成し、1本の信号線303が1つの表面実装型LED304と接続している。すなわち、25本の信号線303のそれぞれが25個の表面実装型LED304と個別に接続している。保護制御演算部102から信号線303の各々に点灯信号を入力することで、表面実装型LED304を点灯させ、LED消灯状態(
図2右上の消灯時)からLED点灯状態へ遷移させる(
図2右下の点灯時)。
【0030】
表示させる内容によって点灯信号を入力する信号線303を変えることで、点灯させる表面実装型LED304を選択することができる。LED点灯信号表200(
図3参照)に記載しているように、点灯させる表面実装型LED304に応じて点灯信号を入力する信号線303を選択し、表面実装型LED304に点灯信号を入力することで対応LED座標の表面実装型LED304が点灯する。情報の表現に必要な表面実装型LED304を点灯させることで、LED文字表示器101(点灯時)に情報を表示させる。
【0031】
図3には、アルファベットの「A」を表示する場合のLED点灯信号表200の例が示されている。LED点灯信号表200は、「信号線」、「対応LED座標」、「点灯信号」の各項目を有する。「信号線」は、信号線303の識別情報([D00]~[D24])を示す項目である。
【0032】
「対応LED座標」は、複数の表面実装型LED304の集合体305における各表面実装型LED304の座標(位置)を表す項目である。例えば、
図3に示す例では、
図2に示した集合体305の最下段(上から5段目)の対応LED座標が右から“0”~“4”、その上の段(4段目)の対応LED座標が右から“5”~“9”、中央の段(3段目)の対応LED座標が右から“10”~“14”、その上の段(2段目)の対応LED座標が右から“15”~“19”、及び最上段(1段目)の対応LED座標が右から“20”~“24”である。対応LED座標“24”~“0”のそれぞれが、信号線“D00”~“D24”に対応する。
【0033】
「点灯信号」は、表面実装型LED304ごとに点灯/消灯を指示する情報(例えば、0又は1のフラグ情報)を格納した項目であり、消灯の場合は“0”、点灯の場合は“1”である。
【0034】
LED点灯信号表200の「対応LED座標」と「点灯信号」の内容は、後述する
図4~
図7に示す情報400内の点灯パターンデータ402の内容と同じである。表現文字ごとにLED点灯信号表200を作成して内蔵メモリ302に保存してもよい。少なくとも「信号線」と「対応LED座標」との対応関係を内蔵メモリ302に保存しておくことで、保護制御演算部102が、表現文字ごとに点灯パターンデータ402を参照してLED点灯信号表200を作成することができる。
【0035】
このように、デジタル保護リレー装置100は、点灯させる表面実装型LED304を選択することにより、複数の表面実装型LED304で多彩な文字、数字、及び記号を表現することを可能としている。表示させる文字数や内容に応じてLED文字表示器101(複数の表面実装型LED304で構成される集合体305)を複数個設けることで、複数の文字、及びさらに複雑な情報の表示にも対応可能である。複数の集合体305に対する表示制御については、後述する第3の実施形態において詳細に説明する。
【0036】
以上のとおり、第1の本実施形態に係るデジタル保護リレー装置100は、縦横に配置された複数の表面実装型LED304を有する表示器(LED文字表示器101)と、入力情報に基づいて、表示器に表示する情報の内容を演算して複数の表面実装型LED304の点灯パターンを制御する点灯信号を生成し、当該点灯信号を表示器に出力する表示制御部(保護制御演算部102)と、を備えて構成される。
【0037】
上記のように構成された第1の本実施形態に係るデジタル保護リレー装置100は、表面実装型LED304を縦横に配置して表面実装型LED304の点灯を制御する。これにより、筺体内部に大きな空間が必要な表示器や、高価な表示器を用いることなく、少なくともセグメントに分割されたLEDでは表現できなかった多彩な情報(文字、数字、記号)の表示を実現できる。
【0038】
また、本実施形態では、長期運用の耐久性においても、部品信頼性に劣るLCDモジュール等のグラフィック表示器を使用せず、表面実装型LED304及び駆動用(制御IC)それぞれの半導体に対し、産業用仕様の部品の使用が可能となることで、長寿命を確保することができる。そして、本実施形態では、小型化及び低価格化を実現した上で長寿命を満たし、多彩な情報の表示が可能となることで、デジタル保護リレー装置100の長期にわたる操作利便性を格段に向上させることができる。
【0039】
また、LCDモジュールは、低温環境で表示が薄くなる等の特性を有しているため、視認信頼性にも問題がある。電力系統の保護制御を行うデジタル保護リレー装置に適用する表示器は、視認性に対する信頼性も求められる。この点に関して、本実施形態では、グラフィック表示器を使用せず、複数の表面実装型LED304で構成される集合体305を用いて情報を表示することで、長寿命と併せて視認性に対する高い信頼性も確保することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、操作者がデジタル保護リレー装置100に外部装置を接続することなく、デジタル保護リレー装置100に対する設定操作や、デジタル保護リレー装置100に保存されている入力情報や設定情報の読み取りが可能になる。したがって、本実施形態では、デジタル保護リレー装置100から直接得られる情報を格段に増やし、デジタル保護リレー装置100に対して外部装置を用いずに実施可能な直接作業の幅を大きく広げることができる。それゆえ、これらの作業にかかる手間や時間を短縮することが可能である。
【0041】
また、第2の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100では、表面実装型LED304の点灯制御は、デジタル保護リレー装置100の本来の機能である保護制御を行うための保護制御演算部102を使用して実行される。すなわち、デジタル保護リレー装置100では、表示制御部(表示制御を行う場合の保護制御演算部102に相当)を、デジタル保護リレー装置100の保護制御のための演算を行う保護制御演算部(保護制御を行う場合の保護制御演算部102に相当)と共用する。
【0042】
上記構成の本実施形態では、表面実装型LED304を使用することで、LCDモジュールのようにLCDと一体に基板に実装される表示制御の専用マイコンを使用することなく、長寿命(及び高信頼性)のマイコンや制御IC(例えば、
図8参照)を選定することができる。すなわち、本実施形態では、LCDモジュールと異なり、マイコン及び制御IC(Integrated Circuit)に使用できる半導体の自由度が高くなるため、マイコン及び制御ICに産業用半導体(長寿命、高信頼性)を用いることが可能となる。
【0043】
ただし、本発明は、デジタル保護リレー装置100の本来の機能である保護制御を行うための保護制御演算部102とは別に、LED文字表示器101(複数の表面実装型LED304)の点灯制御を行う表示制御部(マイコン)を備える構成を排除するものではない。保護制御演算部102と表示制御部を別々にした構成であっても、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0044】
<第2の実施形態>
第1の実施形態で説明したとおり、デジタル保護リレー装置100から得られる情報を文字、数字、及び記号として表示するために多数の表面実装型LED304の点灯を制御する必要がある。第2の実施形態では、LED文字表示器101の表示機能を制御するための表示制御機能と、電力系統の保護機能を制御するための演算を行う保護制御演算機能とを、一つの保護制御演算部102で実現するための好ましい表示方法を説明する。
【0045】
従来、LCDモジュール等のグラフィック表示器は、表示制御用の高機能のマイコン等を実装してLCDモジュール等の動作を制御することで表示を行っていた。このように、グラフィック表示器は、表示制御用の高機能のマイコンが必要となり、部品のコストが増大するともに、基板上の実装面積を占有していた。
【0046】
第1の実施形態において説明したとおり、本発明で使用する複数の表面実装型LED304の点灯制御の原理は単純である。このため、
図1に示すデジタル保護リレー装置100の本来の役割である保護制御のための演算を行う保護制御演算部102に、LED文字表示器101が備える複数の表面実装型LED304の点灯制御を行わせることが可能である。
【0047】
保護制御演算部102に表面実装型LED304の点灯制御を行わせる場合、LED点灯制御用のマイコンを別途実装しなくてもよいため、コストの抑制と、実装の省スペース化が可能である。しかし、LED点灯制御を行う表面実装型LED304が多数になると、保護制御演算部102の演算性能が表面実装型LED304の点灯制御に使用され、デジタル保護リレー装置100本来の役割である保護制御演算に係る性能が低下する。そこで、第2の本実施形態では、以下に説明するような構成とすることにより、表面実装型LED304の点灯制御によって保護制御演算部102の演算性能が低下することを抑えている。
【0048】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るLED点灯パターンを用いたLED文字表示器101の点灯方法の例を示す正面模式図である。
図4に示すように、本実施形態では、保護制御演算部102の演算性能低下を解決するために、LED文字表示器101で表示する文字や数字、記号に対するLED点灯パターンを決めておく。そのLED点灯パターンに関する情報400を、保護制御演算部102の内部に設けられた内蔵メモリ302又は不揮発性メモリ103に保存しておく。そして、保護制御演算部102は、表示させる文字のLED点灯パターンに関する情報400を内蔵メモリ302等から読み出し、LED文字表示器101に文字を表示させる構成とする。本実施形態では、LED点灯パターンに関する情報400が内蔵メモリ302に保存されているものとして説明を行う。内蔵メモリ302に情報400を保存した場合、不揮発性メモリ103に情報400を保存した場合よりも、プロセッサ301による情報400の読み出し速度が速くなる。
【0049】
図4に示すように、デジタル保護リレー装置100において表示が必要な文字、数値、及び記号について、複数の表面実装型LED304の点灯によってどのように表現するかを決めておき、その情報400を内蔵メモリ302へ外部装置等を用いて保存する。保存する情報400は、表現文字401と、文字毎の点灯パターンデータ402と、LED点灯パターン403である。LED点灯パターン403は、実際に点灯パターンデータ402に基づいて表面実装型LED304が点灯した際の外観を示すイメージであり、表現文字401の種類と対応する。点灯パターンデータ402は、LED点灯パターン403のとおり点灯するLED点灯パターン(対応LED座標ごとの点灯信号)を示す情報である。
【0050】
例えば、LED文字表示器101に情報として“A”の表示が必要になった際に、プロセッサ301が、保護制御演算部102の内蔵メモリ302から表現文字“A”の点灯パターンデータ402を読み出す。そして、プロセッサ301が、読み出した“A”の点灯パターンデータ402を点灯パターン404としてLED文字表示器101へ入力することで、指定されたLED点灯パターン“A”で表面実装型LED304を点灯させる。
【0051】
次に、表現する文字に対し、縦に5個及び横に5個を配置した表面実装型LED304によるLED点灯パターンの一例を
図5~
図7に示す。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置した表面実装型LED304の点灯を用いて表現する文字の例(1)を示す図である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置した表面実装型LED304の点灯を用いて表現する文字の例(2)を示すブロック図である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る縦に5個及び横に5個を配置した表面実装型LED304の点灯を用いて表現する文字の例(3)を示す図である。
【0052】
図5には、表現文字として大文字のアルファベット“A”~“Z”に対する各LED点灯パターンの例が示されている。また、
図6には、表現文字として小文字のアルファベット“a”~“z”に対する各LED点灯パターンの例が示されている。また、
図7には、表現文字としてアラビア数字“1”~“0”、各種記号“(”~“_”、及びギリシャ文字“φ”~“π”に対する各LED点灯パターンの例が示されている。
【0053】
このように、表現する文字と点灯させる表面実装型LED304の点灯パターンを作成し、その点灯パターンを内蔵メモリ302等へ保存し、読み出して点灯制御することで、保護制御演算部102の演算性能を多く使用することなく、多数の表面実装型LED304の点灯を制御することが可能である。
【0054】
以上のとおり、第2の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100では、表示制御部(保護制御演算部102)は、複数の表面実装型LED304の点灯パターンとして、文字、数字、及び記号の各々を表現した、使用者が認識可能な点灯パターンを記憶する記憶部(内蔵メモリ302又は不揮発性メモリ103)、を備える。そして、表示制御部は、記憶部に格納された点灯パターンから表示器(LED文字表示器101)に表示する情報の内容を演算した結果に対応する点灯パターンを読み出し、読み出した点灯パターンを制御する点灯信号を生成するように構成されている。
【0055】
上記のように構成された第2の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100は、表示器を制御する専用のマイコンを実装せず、保護制御演算部102にLED点灯制御を行わせた場合でも内蔵メモリ302等に保存された点灯パターンデータ402を読み出し、LED文字表示器101へ出力するだけの構成である。これにより、本実施形態は、保護制御演算部102は高度なLED点灯制御の演算が不要となる。したがって、保護制御演算部102の保護制御の演算性能を損なうことなく、LED文字表示器101が備える複数の表面実装型LED304の点灯制御を行うことができる。
【0056】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態では、表面実装型LED304を多数配置し点灯を制御することで、文字、数字、及び記号を表現することを可能としている。しかし、複数の表面実装型LED304からなる複数の集合体305を同時に点灯させることで、デジタル保護リレー装置100の消費電力が増大する。また、保護制御演算部102から点灯信号を出力するための信号出力ピンの数には限りがある。例えば、1本の信号線303(
図2参照)に対し、1個の表面実装型LED304を接続した場合は、点灯を制御可能な表面実装型LED304の数はわずかな数となる。そこで、第3の実施形態では、表面実装型LED304の異なる集合体305の表示を所定の時間間隔で切り替える構成とする。
【0057】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る表面実装型LED304の集合体の点灯を高速で切り替えるデジタル保護リレー装置100の構成例を示すブロック図である。
本実施形態は、
図8に示すように、消費電力の抑制と、少ない信号線で多くの表面実装型LED304の点灯制御とを実現するため、点灯させる表面実装型LED304を文字毎に高速で複数回に分けて点灯させる。それにより、一度に点灯する表面実装型LED304の数を減らし、消費電力の抑制と、限られた信号線303で多くの表面実装型LED304の点灯制御を可能とする。
【0058】
図8では、1文字の表示を行う縦5個及び横5個の表面実装型LED304を配置した集合配置LED(集合体305)を6個並べることで、6文字分の表示が可能なLED文字表示器101の例を示している。LED文字表示器101は、合計150個の表面実装型LED304で構成される。LED文字表示器101は、保護制御演算部102が出力するLED点灯信号に基づいて、表面実装型LED304を点灯する。
【0059】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るLED文字表示器101の文字点灯方法を実現するLED点灯信号の内容の例を示す図である。
図9に示すLED点灯信号内容900は、32bitの情報で構成される。LED点灯信号内容900は、「ビット」、「送信信号」及び「送信順序」の項目を有する。「ビット」が示す各情報(数字)は、
図3の対応LED座標に相当する。ビットごとに「送信信号」の情報(0又は1)が設定される。「送信順序」に示された(1)~(4)は、保護制御演算部102が出力する8bitのLED点灯信号806の順序を表している。
【0060】
32bitのうち、0bit~24bitは、集合体305を構成する25個の表面実装型LED304ごとに点灯/消灯を指示する情報(
図3及び
図4の点灯信号に相当)としている。また、25bit~30bitは、点灯文字(集合体305)を切り替える情報としている。この25bit~30bitの情報の内容を切り替えることで、
図8において[25]~[30]で示す信号線に接続した6個の集合体305の点灯を切り替える。31bit目は未使用としている。
【0061】
LED点灯信号806は、保護制御演算部102から信号線303(
図2参照)を介し、8bitずつ4回に分けて、LED点灯回路802及び点灯文字切替回路803に出力される。LED点灯回路802及び点灯文字切替回路803は、4回分の8bitのLED点灯信号806(
図9のLED点灯信号(1)~(4))を受信し、受信したビット情報を一時的に保持する。LED点灯回路802及び点灯文字切替回路803は、一例としてフリップフロップ回路を用いて構成することができる。
【0062】
LED点灯回路802は、切替制御信号生成回路801から出力された切替制御信号805を受信することで、4つの8bitのLED点灯信号806に基づいて、25bitのLED点灯信号807をLED文字表示器101の各集合体305へ出力する。LED点灯回路802は、
図9のLED点灯信号(1)~(4)[24:0]を利用して25bitのLED点灯信号807を生成する。
【0063】
また、点灯文字切替回路803は、切替制御信号生成回路801から出力された切替制御信号805を受信することで、4つの8bitのLED点灯信号806に基づいて、6bitの点灯文字切替信号808をLED文字表示器101の各集合体305へ出力する。点灯文字切替回路803は、特に
図9のLED点灯信号(4)[30:25]を利用して6bitの点灯文字切替信号808を生成する。
【0064】
LED文字表示器101は、LED点灯回路802から受信した25bitのLED点灯信号807と、点灯文字切替回路803から受信した6bitの点灯文字切替信号808とに従って、点灯対象の集合体305が備える表面実装型LED304を点灯させる。
【0065】
切替制御信号生成回路801は、保護制御演算部102と信号線で接続されており、保護制御演算部102から出力される切替タイミング信号804を受信する。切替タイミング信号804は、LED点灯回路802及び点灯文字切替回路803の各々が備えるフリップフロップ回路(図示略)の出力の切替タイミングを指示する信号である。切替タイミング信号804は、フリップフロップ回路が保持するビット情報をリセットする信号としても機能する。切替タイミング信号は、
図9に示した複数の表面実装型LED304で構成された各集合体305の表示を切り替えるタイミング(時間間隔)を示し、本実施形態ではn[ms](
図10参照)とする。そして、切替制御信号生成回路801は、切替タイミング信号804に基づいて、LED点灯回路802及び点灯文字切替回路803の切替動作を制御するための切替制御信号805を、それぞれのフリップフロップ回路に出力する。
【0066】
ある時刻のLED点灯信号内容900では、「表示文字選択」において25ビット目が“1”である。また、「LED点灯信号」が示す表現文字は“A”(
図2~
図4参照)である。したがって、
図8に示すように、[25]で示す信号線と接続された表面実装型LED304の集合体305(第1文字1001)が選択されている。
【0067】
なお、上述した切替制御信号生成回路801、LED点灯回路802、及び点灯文字切替回路803は、例えば、超小型の電子回路である制御ICによって構成することができる。
【0068】
次に、本発明の第3の実施形態に係る表面実装型LED304の集合体305の点灯を高速で切り替えた際のLED文字表示器101の表示例について、
図10を参照して説明する。
【0069】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る表面実装型LED304の集合体305の点灯を高速で切り替えた際のLED文字表示器101の表示例を示す図である。
図10の上側には、LED文字表示器101に表示される文字を、1文字ずつ切り替える場合の視認イメージ1000の例が示されている。また、
図10の下側には、各文字のLED点灯切替イメージの例が示されている。
【0070】
一例として、最終的な視認イメージ1000を表示するために、6文字分の表面実装型LED304の集合体305(集合配置LED)を、n[ms]の間隔で表示する文字を切り替える様子を示す。6文字分の各集合体305を、第1文字1001~第6文字1006とする。第1文字1001“LED点灯なし”、第2文字1002“P”、第3文字1003“U”、第4文字1004“T”、第5文字1005“E”、及び第6文字1006“S”の順に時分割で表示される。第1文字1001~第6文字1006を一通り切り替えることで1サイクルとなり、1サイクルはn[ms]×m[文字]の周期[ms/cycle]である。
【0071】
図10では、第1文字1001~第6文字1006の順で表示する文字を切り替える様子を記載しているが、表示する文字を切り替える順番はこの限りではない。切替えを行う時間n[ms]を所定の短い時間とすることで、人間の眼では残像により6文字全て(
図10では実際に点灯するのは5文字)が点灯しているように見える。そのため、視認イメージ1000に示した“SETUP”という表示内容を、使用者に認識させることが可能である。切替えを行う時間n[ms]は、予め実験やシミュレーション等により求めて内蔵メモリ302又は不揮発性メモリ103に保存しておく。
【0072】
以上のとおり、第3の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100において、表示器(LED文字表示器101)は、複数の表面実装型LED304で構成される集合体305を複数個有し、表示制御部(保護制御演算部102)は、表示器に表示する情報の内容を演算した結果に基づいて、複数の表面実装型LED304で構成される各集合体305を所定値以下の時間間隔(例えば、n[ms])で順に点灯させるように制御する。このように、複数の集合体305を所定値以下の時間間隔で順に点灯させることで、表示器に表示された複数の文字等の情報を、使用者が違和感なく視認できる。
【0073】
また、第3の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100によれば、文字ごとに点灯させる表面実装型LED304の集合体305(集合配置LED)を選択し、点灯させる集合体305を切り替えることで一度に点灯する集合体305は1文字分となる。このため、デジタル保護リレー装置100の消費電流は、1文字分の集合体305を構成する表面実装型LED304の点灯に必要な消費電流とすることが可能である。したがって、デジタル保護リレー装置100のLED文字表示器101の消費電力の増大を抑えることができる。
【0074】
また、点灯させる表面実装型LED304の集合体305を切り替えることにより、保護制御演算部102で使用する信号線303の数を減らすことができる。それにより、少ない数の信号線303で、LED文字表示器101に配置されている多くの表面実装型LED304の点灯を制御することができる。
【0075】
[第3の実施形態の変形例]
また、デジタル保護リレー装置100において、表示制御部(保護制御演算部102)は、複数の表面実装型LED304で構成される複数の集合体305の中で特定の集合体305の点灯時間を変化させるように制御してもよい。
【0076】
特定の文字の遷移時間(一の文字を表示してから他の文字を表示するまでの時間)、例えば、第6文字1006から第1文字1001に遷移する時間を、他の文字の遷移時間に比べて短い時間とすることで、第6文字1006の点灯時間が短くなり、他の文字に比べ暗く見える。逆に、遷移時間を長くすることで文字の点灯時間が長くなり、他の文字に比べ明るく見える。
【0077】
このように、デジタル保護リレー装置100において、文字(表面実装型LED304の集合体305)ごとの点灯時間(遷移時間)を調整することで、LED文字表示器101に表示される文字、数字、及び記号等の中で明暗を調整することが可能である。それゆえ、例えば、LED文字表示器101の表示情報の一部を強調等することができ、より幅広い表現を実現できる。
【0078】
<第4の実施形態>
LED文字表示器101においてアルファベットの大文字/小文字、数字、及び記号等を表現することで、デジタル保護リレー装置100に保護機能の簡易的な設定情報を表示させることが可能である。以下、第4の実施形態では、デジタル保護リレー装置100において、操作部104に対する操作者の入力操作を基に、LED文字表示器101を用いて設定操作したり、設定情報等を参照したりする方法を説明する。
【0079】
図11は、本発明の第4の実施形態に係るLED文字表示器101を使用した切替可能なメニュー表示の例を示す図である。
図11には、デジタル保護リレー装置100に設ける設定情報の一例であって、第1階層から第4階層で構成される設定情報を示す。
【0080】
[設定操作]
本実施形態では、初期表示1100では「SETUP」と表示される。「SETUP」は、デジタル保護リレー装置100の各種設定を行う表示モードである。ここから操作部104、例えば、「→」の記号が書かれた操作スイッチ等を操作者が押下することで、第2階層1101の表示に遷移する。また、同一階層内で異なる項目に遷移する場合は、「↑」、「↓」のような表示がある操作スイッチ等の操作によって表示項目を遷移させる。図中での第2階層1101では、試験に関する設定及び日時の設定を可能としている。
【0081】
第一階層(初期表示1100)の「SETUP」から第2階層1101に遷移した場合には「CHECK」が表示され、手動点検と自動点検の点検モードを切り替える設定表示となる。点検モードを切り替える場合は、「→」の記号が書かれた操作スイッチ等を操作者が押下することで、このまま第3階層の点検モード設定表示1102へ遷移し、設定を行うことができる。設定操作では、自動点検を表す「AUTO」、及び手動点検を表す「MANUAL」の表示を切り替えていずれかを選択し、「決定」のような肯定の意味を表示した操作スイッチ等を操作することで、点検モードを設定することが可能である。
【0082】
また、第2階層1101の「CHECK」が表示されているときに、例えば、「↓」の記号が書かれた操作スイッチ等を操作者が押下することで、「TEST」に遷移する。さらに、「TEST」が表示された状態で「→」の記号が書かれた操作スイッチ等を操作者が押下することで、「TEST」から第3階層の試験設定表示1103に遷移する。試験設定表示1103ではじめに表示された「DOTEST」を選択し、操作部104を操作して「決定」することで、デジタル保護リレー装置100の試験を実施することが可能である。
【0083】
また、試験設定表示1103では、「DOTEST」が表示されているときに「↓」の記号が書かれた操作スイッチ等を操作者が押下することで、デジタル保護リレー装置100の試験を実施する際の条件等を設定するフェーズに移行し、任意の数値や文字等の入力を可能としている。例えば、「←」及び「→」の操作スイッチで文字位置を指定した後、「↓」及び「↑」の操作スイッチを操作し、
図5~
図7に定義された表現文字を順に切り替えて入力する構成としてもよい。
図11の例では、試験対象が短絡選択継電器又は地絡選択継電器「50L」と「50M」、整定値が定格負荷電圧(又は定格負荷電流)の10倍「×10」に設定されている。
【0084】
また、第2階層1101において「TEST」から「TIME」に遷移した後、「TIME」から第3階層の年月日設定表示1104に遷移する。年月日設定表示1104では、デジタル保護リレー装置100の設定操作を実施したときの年月日の設定を行うことが可能である。さらに、第3階層の年月日設定表示1104の「YEAR」、「MONTH」、及び「DAY」から第4階層1105へ遷移し、各項目の値を設定することが可能である。
【0085】
[情報参照]
さらに、デジタル保護リレー装置100に設定された情報等を参照する場合は、第1階層で初期表示1100の「SETUP」から他項目へ遷移する操作を行い、情報参照表示1106の「STATUS」を表示する。そして、この「STATUS」が表示された状態から第2階層1107へ遷移し、「↑」、「↓」等の操作を実施して、デジタル保護リレー装置100に設定された値や入力値情報、年月日等の情報を参照することが可能である。例えば、
図11の例では、保護機能の動作条件が「10.0A」、設定対象が「RELAY」、その種類が「51_IS」、現状の負荷電流が「2.5A」、デジタル保護リレー装置100に設定された現在時刻「TIME」が「2021年」・・・といった情報が示されている。
【0086】
以上のとおり、第4の実施形態に係るデジタル保護リレー装置100は、入力情報の一つとして操作者の入力操作を受け付ける入力装置(操作部104)を備える。表示制御部(保護制御演算部102)は、入力装置に対する操作者の入力操作を基に、複数の表面実装型LED304で構成される複数の集合体305の点灯を制御して、設定操作に用いられる文字列を表示器(LED文字表示器101)に表示し、表示されている文字列の内容と入力装置に対する入力操作の内容とに基づいて、当該デジタル保護リレー装置の保護機能に関する設定を実行するように構成されている。
【0087】
また、表示制御部(保護制御演算部102)は、入力装置に対する操作者の入力操作を基に、複数の表面実装型LED304で構成される複数の集合体305の点灯を制御して、電力系統の保護機能に関する情報を表す文字列を表示器に表示するように構成されている。
【0088】
上記のように構成されたデジタル保護リレー装置100において、文字や数字、記号を表示させることにより、デジタル保護リレー装置100の設定操作、試験実行操作、設定情報の確認等の作業が、デジタル保護リレー装置100を用いて直接実施することができる。つまり、従来、デジタル保護リレー装置100にノート型PC等の外部装置を接続して実施したいたこれらの作業を、簡便に行うことができる。これにより、本実施形態は、デジタル保護リレー装置100の設定や情報確認に必要な手間と時間を減らすことができ、デジタル保護リレー装置100の利便性を大きく向上させることを可能とする。
【0089】
さらに、本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、デジタル保護リレー装置及びその表示方法について詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0090】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態において、信号線(制御線や情報線も含む)は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0092】
100…デジタル保護リレー装置、101…LED文字表示器、102…保護制御演算部、103…不揮発性メモリ、104…操作部(操作スイッチ)、105…入力変換器、106…A/D変換部、107…出力回路、108…入出力端子、200…LED点灯信号表、301…プロセッサ、302…内蔵メモリ、303…信号線、304…表面実装型LED(チップLED)、305…集合体、401…文字、402…点灯パターンデータ、403…LED点灯パターン、404…点灯パターン、801…切替制御信号生成回路、802…LED点灯回路、803…点灯文字切替回路、804…切替タイミング信号、805…切替制御信号、806…LED点灯信号(8bit)、808…点灯文字切替信号(6bit)、807…LED点灯信号(25bit)、900…LED点灯信号内容、1000…視認イメージ、1001~1006…第1文字~第6文字、1100…初期表示、1101…第2階層、1102…点検モード設定表示、1103…試験設定表示、1104…年月日設定表示、1105…第4階層、1106…情報参照表示、1107…第2階層