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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087959
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】研削除去システムおよび研削除去方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/10 20060101AFI20230619BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230619BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20230619BHJP
   B08B 5/04 20060101ALI20230619BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20230619BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20230619BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B24B55/10
E04G23/02 Z
E04G23/08 Z
B08B5/04 A
B08B1/04
B24B23/02
B25F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202542
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390031978
【氏名又は名称】株式会社テクネット
(71)【出願人】
【識別番号】511148639
【氏名又は名称】株式会社ジオ環境システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】林 拓宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 浩
(72)【発明者】
【氏名】望月 文人
(72)【発明者】
【氏名】山脇 慎平
(72)【発明者】
【氏名】田丸 哲也
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 充一
【テーマコード(参考)】
2E176
3B116
3C047
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB36
2E176DD64
3B116AA31
3B116AB52
3B116BA03
3B116BA04
3B116BA13
3B116BA15
3B116BB21
3B116BB62
3B116BB73
3B116BB75
3B116BB88
3B116CD22
3B116CD35
3C047FF07
3C047FF19
3C047JJ12
3C064AA04
3C064AA08
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC01
3C064AC09
3C064BA11
3C064BA12
3C064BB82
3C064CA88
3C064CB61
3C064CB71
3C064CB82
3C064CB91
3C158AA03
3C158AC05
3C158CB03
3C158CB05
(57)【要約】
【課題】粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去システムおよび研削除去方法を提供する。
【解決手段】対象物14を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去システム10であって、対象物14を研削する研削手段16と、対象物14を湿潤化するための泡を対象物14に供給する泡供給手段22とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去システムであって、
前記対象物を研削する研削手段と、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給する泡供給手段とを備えることを特徴とする研削除去システム。
【請求項2】
前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲して設けられる被覆手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の研削除去システム。
【請求項3】
前記対象物から使用済の泡を回収する泡回収手段と、この泡回収手段で回収された泡を再利用するために前記泡供給手段に供給する再利用手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の研削除去システム。
【請求項4】
対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去方法であって、
研削手段を前記対象物に近接配置するステップと、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給するステップと、前記対象物を泡で湿潤化した後、前記研削手段で前記対象物を研削するステップとを有することを特徴とする研削除去方法。
【請求項5】
前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲する位置に被覆手段を設けるステップをさらに有し、前記対象物を湿潤化するための泡を前記被覆手段の内側の前記対象物に供給することを特徴とする請求項4に記載の研削除去方法。
【請求項6】
前記対象物から使用済の泡を回収するステップと、回収された泡を前記対象物を湿潤化するための泡として再利用するステップとをさらに有することを特徴とする請求項4または5に記載の研削除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石綿含有仕上塗材の研削除去作業に好適な研削除去システムおよび研削除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の外壁には、アスベスト(石綿)を含有した建築用仕上塗材が施工されていることが多く、建物解体時にはあらかじめその仕上塗材を除去する必要がある。石綿障害予防規則では、アスベスト含有仕上塗材の除去を行う際には一般環境へのアスベスト粉じんの漏えいを防ぐため、作業エリアを隔離し研削部をカバーで覆って粉じんを吸引したり、湿潤化しながら作業を行うように定められている。
【0003】
そのため、従来は、図5に示すように、市販の電動グラインダー1に集じんカバー2を取り付けるとともに、この集じんカバー2にHEPAフィルター付きの掃除機3を取り付けた装置を使用して、粉じんを吸引しながら乾式工法による研削除去を行っている。
【0004】
なお、これに類似した従来の装置として、例えば特許文献1に記載のコンクリートはつり集塵装置が知られている。この装置は、重機に装着可能に構成されるとともにコンクリートの表面をはつるためのハンマーと、ハンマーの周囲を囲うように配置される集じんカバーと、この集じんカバーと連結されるとともに、吸引したはつり粉じんを回収する回収手段とを備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-019259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の従来の電動グラインダーを用いた乾式工法による研削作業では、以下のような問題があった。
【0007】
まず第一に、研削作業中に切削面に不陸があるとカバーが追従できず、カバーと切削面との間の隙間から粉じんが漏えいして飛散するおそれがある(粉じん飛散リスク)。第二に、カバーに装着している掃除機のフィルターが短時間(例えば作業開始してから数十分)で目詰まりを起こすと、粉じんの吸引不足を招いてカバーから粉じんが漏えいするため、これを防ぐために、頻繁にHEPAフィルターの交換を行うとコスト増となる(作業効率低下・粉じん飛散リスク)。第三に、建物の入隅や出隅ではカバーの適用が困難となり、粉じん漏えいのリスクが上がる(粉じん飛散リスク)。第四に、研削時の負荷を掛けながら長時間作業を行うと、電動グラインダーのモータが発熱し焼損してしまうことがある(作業効率低下)。このため、このような問題を解決することができる粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去システムおよび研削除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る研削除去システムは、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去システムであって、前記対象物を研削する研削手段と、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給する泡供給手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の研削除去システムは、上述した発明において、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲して設けられる被覆手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の研削除去システムは、上述した発明において、前記対象物から使用済の泡を回収する泡回収手段と、この泡回収手段で回収された泡を再利用するために前記泡供給手段に供給する再利用手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る研削除去方法は、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去方法であって、研削手段を前記対象物に近接配置するステップと、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給するステップと、前記対象物を泡で湿潤化した後、前記研削手段で前記対象物を研削するステップとを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の研削除去方法は、上述した発明において、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲する位置に被覆手段を設けるステップをさらに有し、前記対象物を湿潤化するための泡を前記被覆手段の内側の前記対象物に供給することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の研削除去方法は、上述した発明において、前記対象物から使用済の泡を回収するステップと、回収された泡を前記対象物を湿潤化するための泡として再利用するステップとをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る研削除去システムによれば、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去システムであって、前記対象物を研削する研削手段と、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給する泡供給手段とを備えるので、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去システムを提供することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の研削除去システムによれば、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲して設けられる被覆手段をさらに備えるので、粉じん飛散防止性と作業効率性をより一層優れたものにすることができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の研削除去システムによれば、前記対象物から使用済の泡を回収する泡回収手段と、この泡回収手段で回収された泡を再利用するために前記泡供給手段に供給する再利用手段とをさらに備えるので、使用済の泡を再利用することで、泡の材料コストを低減することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る研削除去方法によれば、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去方法であって、研削手段を前記対象物に近接配置するステップと、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給するステップと、前記対象物を泡で湿潤化した後、前記研削手段で前記対象物を研削するステップとを有するので、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去方法を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る他の研削除去方法によれば、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲する位置に被覆手段を設けるステップをさらに有し、前記対象物を湿潤化するための泡を前記被覆手段の内側の前記対象物に供給するので、粉じん飛散防止性と作業効率性をより一層優れたものにすることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の研削除去方法によれば、前記対象物から使用済の泡を回収するステップと、回収された泡を前記対象物を湿潤化するための泡として再利用するステップとをさらに有するので、使用済の泡を再利用することで、泡の材料コストを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る研削除去システムおよび研削除去方法の実施の形態を示す構成図である。
図2図2は、本発明に係る研削除去システムの研削装置の実施の形態を示す縦断面図である。
図3図3は、本発明に係る研削除去システムの研削装置の実施の形態を示す正面図である。
図4図4は、本発明に係る研削除去システムの研削装置の実施の形態を示す横断面図である。
図5図5は、従来の市販グラインダにカバーを装着した一例を示す写真図であり、(1)は斜め一方から撮影、(2)は斜め他方から撮影したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る研削除去システムおよび研削除去方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る研削除去システム10は、コンクリート外壁12の表面に設けられた石綿含有仕上塗材14(対象物)を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去するものである。この研削除去システム10は、研削位置Pの石綿含有仕上塗材14を研削するグラインダー16と、粉じんの漏えいを防止するためにグラインダー16の周囲を包囲して設けられるカバー18と、発泡装置20と、泡供給装置22と、回収装置24と、再利用装置26を備える。
【0024】
グラインダー16は、研削手段であり、エアーコンプレッサーを用いたエア駆動式の軽量のエアーグラインダーで構成される。エアーグラインダーの使用により装置が軽量化され、連続運転でもグラインダー16への負荷が生じず、水に濡れても感電のおそれがなくなる。なお、本発明の研削手段はエアーグラインダーに限るものではなく、電動駆動式グラインダーなど他の形式のグラインダーを用いることもできる。
【0025】
グラインダー16は、図2図4に示すように、本体ケース28と、本体ケース28内に収容された駆動部30と、駆動部30に接続した回転砥石32とを備えている。本体ケース28の端部には、図示しないエアーコンプレッサーから延びるホース34が接続している。このホース34を通じて本体ケース28の図示しない給気孔に圧縮空気を供給可能である。
【0026】
駆動部30は、エアーモータおよび動力伝達機構(不図示)を有しており、エアーモータの回転駆動力を動力伝達機構を介して直接的または間接的に回転砥石32に伝達するものである。駆動部30のエアーモータとしては、例えば、本体ケース28側に固定したシリンダ内に複数枚の羽根を有するロータを回転自在に設け、シリンダに設けた給気孔から圧縮空気を導入することによりロータを回転する構成を用いることができる。シリンダには、給気孔のほか、排気を外部に排出するための排気孔を設けてもよい。回転砥石32は、駆動部30の出力軸36に対して回転可能に取り付けられる円環板状の研削砥石である。回転砥石32を対象物に近接した状態で回転することで、対象物の表面を研削することができる。
【0027】
カバー18は、グラインダー16の回転砥石32の背面側を覆うように本体ケース28に固定された円盤状の基体部38と、基体部38の外周縁に沿って円筒状に配置されたスポンジからなるスポンジ部40とを備えた被覆手段である。
【0028】
基体部38には、泡の供給口42のみが設けられる。研削除去時の泡の必要量は外壁12の劣化状態や仕上塗材14の種類によって異なる。そのため、研削作業中に泡の供給量を変化させる必要があるため、カバー18には泡の供給口42のみを設けている。供給口42には、泡供給装置22から延びるホース44が接続している。研削位置Pに対する泡の供給量の調整は、カバー18のスポンジ部40と、外壁12の表面との隙間調整で行うことが可能である。スポンジ部40と外壁12の隙間の開け方で任意の量の泡を供給することができる。研削作業中に隙間を開けても粉じんは飛散せず、泡に包まれた粉じんが流れ出るのみである。
【0029】
また、カバー18の基体部38の背面側の左右両側と上側の3か所には、手で把持するためのU字状のハンドル46が取り付けられている。なお、基体部38と本体ケース28、基体部38とスポンジ部40などの接続部分は、ボルトなどの固定部材48を用いて固定される。
【0030】
発泡装置20は、図1に示すように、研削位置Pを湿潤化するための泡を生成するためのものである。この発泡装置20において、例えば、水などの液体に一定量の起泡剤(例えば界面活性剤)と、粉じんの飛散を防止するための飛散防止剤を添加することにより発泡させた泡を生成することができる。水で希釈した起泡剤を例えば30~50倍程度の体積に発泡させるようにしてもよい。
【0031】
泡供給装置22は、図1に示すように、発泡装置20で生成した泡をカバー18の内側の研削位置Pに供給するための泡供給手段であり、例えばポンプとホースで構成することができる。図2に示すように、泡供給装置22から延びるホース44は、カバー18の供給口42に接続している。グラインダー16による研削工法は乾式切削であるため、カバー18周りの不具合や吸引不足が粉じん漏えいリスクに直結する。そこで、泡供給装置22により泡を所定の圧力でホース44を介してカバー18内に供給し、その泡で研削位置Pを湿潤化させて研削作業を行うようにすれば、上記の粉じん漏えいリスクを大幅に低減することができる。
【0032】
回収装置24は、使用済の泡を回収する泡回収手段であり、例えば、カバー18の外側に排出された使用済の泡を吸引する吸引装置と、吸引装置で吸引した泡を回収容器に導くホースと、ホースで導かれた使用済の泡を収容する回収容器で構成することができる。
【0033】
再利用装置26は、回収装置24で回収した使用済の泡を再利用する再利用手段であり、例えば、使用済の泡を起泡剤を含む薬剤と仕上塗材14とに分離する分離手段と、分離した起泡剤を含む薬剤を発泡装置20に供給する供給手段で構成することができる。研削後の泡は、回収後に元の起泡剤に戻るため、その液体をろ布などの分離手段でろ過することにより仕上塗材14のみを分離除去し、ろ過処理された起泡剤を再利用することができる。分離した仕上塗材14は、所定の後処理を経てから廃棄処分する。
【0034】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、グラインダー16にカバー18およびハンドル46を装着しておく。続いて、ハンドル46を手に持ち、図1に示すように、グラインダー16をコンクリート外壁12の表面の石綿含有仕上塗材14に近接配置する。一方、発泡装置20で泡を生成し、この泡を泡供給装置22でカバー18の内側に供給可能な状態にしておく。
【0035】
次に、グラインダー16の回転砥石32を研削位置Pに押し当て、泡供給装置22で泡をカバー18の内側の研削位置Pに供給して湿潤化した後、回転砥石32を回転させる。これにより、研削位置Pから出る粉じんを泡で包み込むように研削する。泡の供給量は、カバー18のスポンジ部40と外壁12の表面との間の隙間の開き具合で調整する。この開き具合は、ハンドル46を外壁12に押し当てる力加減や、押し当て角度で調整可能である。
【0036】
カバー18と外壁12の表面との間の隙間から漏れ出た研削済の泡は、回収装置24によって回収され、再利用装置26に送られる。再利用装置26は、研削済の泡から分離して取り出した起泡剤を発泡装置20に供給して再利用する。使用済の泡を再利用することで、泡の材料コストを低減することができる。なお、研削済の泡から分離した仕上塗材14は廃棄処分される。
【0037】
本実施の形態によれば、研削作業中に研削面に不陸等があっても粉じんは泡に包まれた状態で流れ出すだけであるため、環境への飛散リスクはない。また、エアーコンプレッサーを用いることで、グラインダー16の稼働と、発泡装置20による泡の製造が連続的に可能なため、作業員の任意の作業時間を設定できるため効率的な作業が可能である。さらに、従来の装置のように高価なHEPAフィルターの交換が生じないためコストダウンに繋がる。
【0038】
したがって、本実施の形態によれば、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去システムを提供することができる。
【0039】
上記の実施の形態においては、石綿含有仕上塗材を研削する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、鉛やクロムなどの有害物が含まれた塗装物をはく離する作業にも適用可能であり、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
なお、上記の実施の形態においては、カバー18を用いる場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、カバー18を取り付けて作業することができないような入隅部や出隅部の研削作業にも適用可能である。例えば、泡供給装置22からの泡を研削位置に直接塗り付け、タガネ等の研削手段で研削作業を行ってもよい。泡の中で研削しているので粉じんが拡散することはない。タガネとしては、エアコンプレッサーと接続し、圧縮空気を動力として研削部に針状のニードルを往復運動させて連続で当てることにより除去作業を行う小型のエアー式タガネを用いることが望ましい。このように、入隅部や出隅部周りの狭隘部であっても、供給した泡の中で研削作業を行うことで、粉じん拡散を防ぐことができる。
【0041】
以上説明したように、本発明に係る研削除去システムによれば、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去システムであって、前記対象物を研削する研削手段と、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給する泡供給手段とを備えるので、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去システムを提供することができる。
【0042】
また、本発明に係る他の研削除去システムによれば、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲して設けられる被覆手段をさらに備えるので、粉じん飛散防止性と作業効率性をより一層優れたものにすることができる。
【0043】
また、本発明に係る他の研削除去システムによれば、前記対象物から使用済の泡を回収する泡回収手段と、この泡回収手段で回収された泡を再利用するために前記泡供給手段に供給する再利用手段とをさらに備えるので、使用済の泡を再利用することで、泡の材料コストを低減することができる。
【0044】
また、本発明に係る研削除去方法によれば、対象物を研削するとともに、その際に生じる粉じんを除去する研削除去方法であって、研削手段を前記対象物に近接配置するステップと、前記対象物を湿潤化するための泡を前記対象物に供給するステップと、前記対象物を泡で湿潤化した後、前記研削手段で前記対象物を研削するステップとを有するので、粉じん飛散防止性と作業効率性に優れた研削除去方法を提供することができる。
【0045】
また、本発明に係る他の研削除去方法によれば、前記粉じんの漏えいを防止するために前記研削手段の周囲を包囲する位置に被覆手段を設けるステップをさらに有し、前記対象物を湿潤化するための泡を前記被覆手段の内側の前記対象物に供給するので、粉じん飛散防止性と作業効率性をより一層優れたものにすることができる。
【0046】
また、本発明に係る他の研削除去方法によれば、前記対象物から使用済の泡を回収するステップと、回収された泡を前記対象物を湿潤化するための泡として再利用するステップとをさらに有するので、使用済の泡を再利用することで、泡の材料コストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明に係る研削除去システムおよび研削除去方法は、建物の解体工事における石綿含有仕上塗材などの研削除去作業に有用であり、特に、粉じん飛散防止性と作業効率性を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0048】
10 研削除去システム
12 外壁
14 石綿含有仕上塗材(対象物)
16 グラインダー(研削手段)
18 カバー(被覆手段)
20 発泡装置
22 泡供給装置(泡供給手段)
24 回収装置(泡回収手段)
26 再利用装置(再利用手段)
28 本体ケース
30 駆動部
32 回転砥石
34,44 ホース
36 出力軸
38 基体部
40 スポンジ部
42 供給口
46 ハンドル
48 固定部材
P 研削位置
図1
図2
図3
図4
図5