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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087974
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20230619BHJP
   A01D 41/02 20060101ALI20230619BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
A01D41/12 C
A01D41/02 B
A01D41/12 B
A01D69/00 301
A01D69/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202563
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】大田 彰
(72)【発明者】
【氏名】山根 達也
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AA01
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA13
2B076AA03
2B076DA10
2B076DB06
2B076EA01
2B076EB04
2B076EC23
2B076ED12
2B076ED22
2B076ED23
(57)【要約】
【課題】排出クラッチを機械的に入切操作するコンバインであっても、横パイプの折畳状態でオーガが排出駆動されることを防止する。
【解決手段】収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク7と、エンジンの動力で駆動され、穀粒タンク7内の穀粒を機外に排出するオーガ9と、エンジンからオーガ9に至る動力伝動経路に設けられ、オーガ9の駆動を入切する排出クラッチと、排出クラッチを機械的に操作する穀粒排出レバーと、を備えるコンバイン1であって、オーガ9は、穀粒タンク7に接続される縦パイプ10と、縦パイプ10の上端部に接続され、且つ折畳可能な横パイプ11と、を備えて構成され、横パイプ11が折畳状態の可能性があるとき、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させるエンジン停止制御手段を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、
エンジンの動力で駆動され、前記穀粒タンク内の穀粒を機外に排出するオーガと、
前記エンジンから前記オーガに至る動力伝動経路に設けられ、前記オーガの駆動を入切する排出クラッチと、
前記排出クラッチを機械的に操作する排出クラッチ操作具と、を備えるコンバインであって、
前記オーガは、
前記穀粒タンクに接続される縦パイプと、
前記縦パイプの上端部に接続され、且つ折畳可能な横パイプと、を備えて構成され、
前記横パイプが折畳状態の可能性があるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させるエンジン停止制御手段を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記エンジン停止制御手段は、前記横パイプが伸長状態でないとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記横パイプは、前記縦パイプを中心として格納位置と穀粒排出位置との間を旋回動作可能であり、
前記エンジン停止制御手段は、前記横パイプが前記格納位置にあるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
オペレータが乗車する操縦部を更に備え、
前記横パイプは、前記縦パイプを中心として格納位置と穀粒排出位置との間を旋回動作可能であり、
前記エンジン停止制御手段は、前記操縦部のオペレータを検出し、且つ前記横パイプが所定の旋回位置にあるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記エンジン停止制御手段は、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる前に、前記排出クラッチの入操作継続時間を計測し、該入操作継続時間が所定時間を超えたら前記エンジンを停止させる請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
作業走行と非作業走行とを切り換える走行副変速機構と、
前記横パイプが伸長状態で、且つ前記走行副変速機構が非作業走行状態のとき、前記横パイプの折り畳みを促す報知を行う報知制御手段と、を更に備える請求項2に記載のコンバイン。
【請求項7】
駐車時に機体を停止状態に維持する駐車ブレーキ機構と、
前記横パイプが伸長状態で、且つ前記駐車ブレーキ機構が入状態のとき、前記横パイプの折り畳みを促す報知を行う報知制御手段と、を更に備える請求項2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガの横パイプを折畳可能としたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、エンジンの動力で駆動され、穀粒タンク内の穀粒を機外に排出するオーガと、エンジンからオーガに至る動力伝動経路に設けられ、オーガの駆動を入切する排出クラッチと、を備えるコンバインにおいて、オーガの横パイプを折畳可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなコンバインでは、作業時における横パイプの必要長さを確保しつつ、非作業時(非作業走行時、機体格納時など)には、横パイプを折り畳んでコンパクトの格納することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4901502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のコンバインでは、横パイプを折り畳むと、横パイプ内の回転軸が露出状態となるため、折畳状態で誤って排出クラッチを入操作すると、露出状態の回転軸が回転するおそれがある。なお、排出クラッチをアクチュエータで入切動作させるコンバインでは、横パイプの折畳状態で排出クラッチ操作具が入操作されても、排出クラッチの入動作(アクチュエータの入駆動)を規制することが可能であるが、アクチュエータを使わずに排出クラッチを機械的に入切操作するコンバインでは、排出クラッチの入動作を規制することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンクと、エンジンの動力で駆動され、前記穀粒タンク内の穀粒を機外に排出するオーガと、前記エンジンから前記オーガに至る動力伝動経路に設けられ、前記オーガの駆動を入切する排出クラッチと、前記排出クラッチを機械的に操作する排出クラッチ操作具と、を備えるコンバインであって、前記オーガは、前記穀粒タンクに接続される縦パイプと、前記縦パイプの上端部に接続され、且つ折畳可能な横パイプと、を備えて構成され、前記横パイプが折畳状態の可能性があるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させるエンジン停止制御手段を備える。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインであって、前記エンジン停止制御手段は、前記横パイプが伸長状態でないとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる。
また、請求項3の発明は、請求項1に記載のコンバインであって、前記横パイプは、前記縦パイプを中心として格納位置と穀粒排出位置との間を旋回動作可能であり、前記エンジン停止制御手段は、前記横パイプが前記格納位置にあるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる。
また、請求項4の発明は、請求項1に記載のコンバインであって、オペレータが乗車する操縦部を更に備え、前記横パイプは、前記縦パイプを中心として格納位置と穀粒排出位置との間を旋回動作可能であり、前記エンジン停止制御手段は、前記操縦部のオペレータを検出し、且つ前記横パイプが所定の旋回位置にあるとき、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる。
また、請求項5の発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバインであって、前記エンジン停止制御手段は、前記排出クラッチの入操作に応じて前記エンジンを停止させる前に、前記排出クラッチの入操作継続時間を計測し、該入操作継続時間が所定時間を超えたら前記エンジンを停止させる。
また、請求項6の発明は、請求項2に記載のコンバインであって、作業走行と非作業走行とを切り換える副変速機構と、前記横パイプが伸長状態で、且つ前記副変速機構が非作業走行状態のとき、前記横パイプの折り畳みを促す報知を行う報知制御手段と、を更に備える。
また、請求項7の発明は、請求項2に記載のコンバインであって、駐車時に機体を停止状態に維持する駐車ブレーキ機構と、前記横パイプが伸長状態で、且つ前記駐車ブレーキ機構が入状態のとき、前記横パイプの折り畳みを促す報知を行う報知制御手段と、を更に備える。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、横パイプが折畳状態の可能性があるとき、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させるので、排出クラッチを機械的に入切操作するコンバインであっても、横パイプの折畳状態でオーガが排出駆動されることを防止できる。
また、請求項2の発明によれば、横パイプが伸長状態でないとき、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させるので、横パイプが折畳状態のときだけでなく、横パイプの折畳作業中などにおいても、誤操作によるオーガの排出駆動を防止できる。
また、請求項3の発明によれば、横パイプが格納位置にあるとき、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させるので、横パイプの折畳状態を検出するスイッチなどを備えていないコンバインでも、横パイプが折畳状態の可能性が高い格納位置において、誤操作によるオーガの排出駆動を防止できる。
また、請求項4の発明によれば、操縦部のオペレータを検出し、且つ横パイプが所定の旋回位置にあるとき、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させるので、横パイプの折畳状態を検出するスイッチなどを備えていないコンバインでも、横パイプが所定の旋回位置(操縦部のオペレータと近づく位置)にあるときは、誤操作によるオーガの排出駆動を防止できる。
また、請求項5の発明によれば、排出クラッチの入操作に応じてエンジンを停止させる前に、排出クラッチの入操作継続時間を計測し、該入操作継続時間が所定時間を超えたらエンジンを停止させるので、誤操作に気付き、所定時間内に排出クラッチ操作具を切操作すれば、エンジン停止を回避できる。その結果、不要なエンジン停止を減らし、再始動時のバッテリやスタータの負荷を低減させることができる。
また、請求項6の発明によれば、横パイプが伸長状態で、且つ副変速機構が非作業走行状態のとき、横パイプの折り畳みを促す報知を行うので、横パイプが伸長状態のままの非作業走行によって伸長状態の横パイプに大きな負荷がかかることを防止できる。
また、請求項7の発明によれば、横パイプが伸長状態で、且つ駐車ブレーキ機構が入状態のとき、横パイプの折り畳みを促す報知を行うので、横パイプが伸長状態のままのトラック運搬によって伸長状態の横パイプに大きな負荷がかかることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバイン(横パイプ伸長状態)の平面図である。
図2】コンバイン(横パイプ折畳状態)の平面図である。
図3】折畳状態(棒状操作具係合状態)の横パイプを示す斜視図である。
図4】折畳状態(棒状操作具係合状態)の横パイプを別角度から視た斜視図である。
図5】折畳状態(棒状操作具係合状態→係合解除状態)の横パイプを示す平面図である。
図6】伸長状態の横パイプを示す平面図である。
図7】排出動力伝動経路、排出クラッチ及び排出操作レバーを示す斜視図である。
図8】排出操作レバーの側面図である。
図9】制御装置の入出力構成を示すブロック図である。
図10】エンジン停止制御の処理手順を示すフローチャートである。
図11】報知制御の処理手順を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態のエンジン停止制御の処理手順を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態の報知制御の処理手順を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態のエンジン停止制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、図示しないクローラ走行装置に支持した機体2を備える。機体2の前部一側には、オペレータが着座する運転席3を備えた操縦部4が設けられる。また、機体2の前方には、穀稈を刈取りながら、操縦部4の他側に配置された脱穀部5まで刈取り穀稈を搬送する前処理部6が昇降可能に連結されている。
【0009】
脱穀部5において脱穀と選別がなされた穀粒は、運転席3の後方に設けた穀粒タンク7内に一時的に貯留され、脱穀済みの排稈は、機体2の後部に配置される後処理部8を介して機外に排出される。また、機体2は、穀粒タンク7内に一時的に貯留された穀粒をトラックやトレーラ等の輸送手段に排出するために、昇降及び旋回自在なオーガ9を備えている。
【0010】
図1図7に示すように、オーガ9は、穀粒タンク7の底部後側から立設した縦パイプ10と、この縦パイプ10の上部に昇降及び旋回自在に支持した横向きの横パイプ11を備えている。なお、横パイプ11の略中間部は、脱穀部5の側枠から立設したオーガ受け12によって支承できるようになっている。オーガ受け12で支承される位置は格納位置であり、横パイプ11は、縦パイプ10を中心として格納位置と穀粒排出位置との間を旋回動作される。
【0011】
横パイプ11は、連結部Jにおいて折畳可能に構成されている。具体的に説明すると、横パイプ11は、駆動側螺旋軸13を内装した駆動側横パイプ11aと、この駆動側横パイプ11aに対して図2に実線で示す如く略平行に折畳可能で、また、図1に実線で示し、かつ図2に二点鎖線で示すように直線状に伸長した状態では駆動側螺旋軸13から動力が伝達される従動側螺旋軸14を内装した従動側横パイプ11bと、を備えている。
【0012】
従動側螺旋軸14は、その軸方向に移動可能で、且つ駆動側横パイプ11aに内装された駆動側螺旋軸13にカップリングする連結螺旋軸14aと、この連結螺旋軸14aに嵌合して連結螺旋軸14aの回転が伝達される図示しない穀粒搬送用螺旋軸と、を備えている。
【0013】
駆動側横パイプ11aの先端部には、駆動側螺旋軸13を回転自在に保持する軸受部15が設けられている。この軸受部15は、駆動側螺旋軸13の軸受15aと、従動側螺旋軸14の連結螺旋軸14aを嵌合させるガイド部15bと、を備えている。
【0014】
駆動側横パイプ11aの先端部と従動側横パイプ11bの基端部には、格納姿勢状態にある従動側横パイプ11bを伸長姿勢としたとき、両パイプ11a、11bの連結面を形成するフランジ16a、16bがそれぞれ設けられている。
【0015】
また、駆動側横パイプ11aのフランジ16aと従動側横パイプ11bのフランジ16bの上下には、それぞれホルダ18a、18b、19a、19bが固設されている。これらのホルダ18a、18b、19a、19bは、駆動側横パイプ11aに対して従動側横パイプ11bを回動可能に連結する縦軸17を挿通支持している。
【0016】
駆動側横パイプ11aの先端部には、従動側横パイプ11bを伸長姿勢に保持するためのロック金具21が設けられている。ロック金具21は、クランプアーム22を従動側横パイプ11bの基端部に設けた係止部材23に係止させ、次いでロックレバー24を固定方向に回動させることによって横パイプ11を伸長姿勢に保持することができる。
【0017】
従動側横パイプ11bの基端側下部の機体2外側寄りには、従動側横パイプ11bを操縦部4側から揺動操作可能な棒状操作具25の基端部が枢支されている。従動側横パイプ11bを駆動側横パイプ11aに対して略並行に折り畳んだ折畳状態では、棒状操作具25の把持部B側を駆動側横パイプ11aの先端側下部の操縦部4寄りに設けた樹脂製クランプ26に保持することができる。このとき、棒状操作具25は、駆動側横パイプ11aと従動側横パイプ11bの下方で、且つ両パイプ11a、11bと略直交する状態で樹脂製クランプ26に保持される。なお、樹脂製クランプ26は、駆動側横パイプ11aの操縦部4寄りに固設した正面視L字状のホルダ27の下面側に嵌着してある。
【0018】
棒状操作具25は、把持部B側を下方に曲げ形成した丸棒またはパイプ材からなり、その基端部には、図示しない取付孔を備えたプレート25aが固設されている。このプレート25aの取付孔を枢支すべく、従動側横パイプ11bの機体2外側寄りにはホルダ28が固設してあり、該ホルダ28にプレート25aを揺動自在で且つ若干の上下動を融通させながらカラー29及びボルト30を用いて取り付けてある。
【0019】
また、横パイプ11は、従動側横パイプ11bを駆動側横パイプ11aに対して略並行に折り畳んだ折畳状態のとき、従動側横パイプ11bの開き方向への不要な揺動動作を防止するための構成を有する。具体的に説明すると、棒状操作具25の把持部B側の上面には、従動側横パイプ11bの開き防止ストッパーとして突片31を固設してある。この突片31は、棒状操作具25を樹脂製クランプ26に保持した状態で、樹脂製クランプ26が嵌着するホルダ27の外側に当接して開き防止ストッパーとして作用する。
【0020】
なお、図中の符号32は、従動側横パイプ11bを駆動側横パイプ11aに対して略並行に折り畳んだとき、従動側横パイプ11bが上下方向に揺動しないように保持するとともに、駆動側横パイプ11aと従動側横パイプ11bとの間隔を保持する排出筒保持部材である。排出筒保持部材32は、駆動側横パイプ11aに取り付けてあり、その従動側横パイプ11bとの当接面にはクッション材33が貼付されている。
【0021】
穀粒タンク7内に一時的に貯留された穀粒をオーガ9によってトラックやトレーラ等の輸送手段に排出する際は、駆動側横パイプ11aに対して略並行に折り畳まれて従動側横パイプ11bを、その揺動支点軸である縦軸17を中心に図2に二点鎖線で示すA矢印の如く揺動させて、当該従動側横パイプ11bが駆動側横パイプ11aの先端から直線状に延長される伸長状態とする。
【0022】
従動側横パイプ11bを揺動させるには、先ず樹脂製クランプ26に保持されている棒状操作具25の保持状態を解除して、棒状操作具25を図5に示すC矢印方向に揺動させ、次いで、従動側横パイプ11bの揺動支点軸である縦軸17の下端部P、即ち該縦軸17を挿通支持する駆動側横パイプ11aの下部ホルダ18bから縦軸17の下端が下方に突出する部分に、当該棒状操作具25の中途部を機体2の前方側から当接させる。
【0023】
このとき、平面視における棒状操作具25の先端部、即ち把持部B側は、駆動側横パイプ11aの脱穀部5側外周の延長線X(図5参照)から突出して操縦部4に臨むので、コンバイン1の操縦部4に搭乗したオペレータが、当該棒状操作具25を操作する際に操縦部4から身を乗り出しての不安定な作業姿勢を強いられることがない。
【0024】
そして、棒状操作具25の中途部に当接する縦軸17の下端部Pは、従動側横パイプ11bの基端側に基端部を枢支した棒状操作具25の梃子支点として作用するので、棒状操作具25の把持部Bを持って平面視で時計回り方向に回動させると、梃子支点(P)を介しての梃子作用によって、重量の重い従動側排出筒11を少ない操作力でスムーズに揺動させることができる。
【0025】
上述の如く棒状操作具25の中途部を梃子支点である縦軸17の下端部Pに当接させた状態で、当該棒状操作具25の把持部B側を平面視で時計回り方向に押しながら、従動側横パイプ11bをその揺動支点軸である縦軸17を中心に約180度揺動させると、図6に示すように、従動側横パイプ11bが駆動側横パイプ11aの先端から直線状に延長された伸長状態となる。
【0026】
その後、棒状操作具25を駆動側横パイプ11aの先端側下部の操縦部4寄りに設けた樹脂製クランプ36に保持するとともに、駆動側横パイプ11aの先端部に備えるロック金具21のクランプアーム22を、従動側横パイプ11bの基端部に設けた係止部材23に係止させ、次いでロックレバー24を固定方向に回動させることによって、従動側横パイプ11bを駆動側横パイプ11aに連結固定した横パイプ11の伸長状態を保持することができる。
【0027】
しかる後に、直線状に連結固定された横パイプ11を上限位置まで起こしてから、この横パイプ11を穀粒の輸送手段であるトラックやトレーラ等の待機位置まで旋回させ、次いで適切な高さ位置まで下降させて停止することにより、穀粒タンク7内に一時的に貯留された穀粒を排出することが可能になる。
【0028】
図7に示すように、穀粒タンク7内の底部には、穀粒タンク7内の穀粒をオーガ9に向けて搬送する横螺旋軸51が前後方向に沿って回転可能に配置されている。横螺旋軸51の前端側は、排出動力伝動経路52を介してエンジン(図示せず)に連結され、横螺旋軸51の後端側は、縦パイプ10内の縦螺旋軸(図示せず)を介して、横パイプ11内の前述した螺旋軸(駆動側螺旋軸13、従動側螺旋軸14など)に連結されている。
【0029】
排出動力伝動経路52には、オーガ9の駆動を入切する排出クラッチ53が介設されている。排出クラッチ53の入操作に応じて穀粒タンク7内の横螺旋軸51にエンジン動力が伝動されると、横螺旋軸51の回転に連動して縦パイプ10内及び横パイプ11内の螺旋軸が回転し、穀粒タンク7内の穀粒が縦パイプ10内及び横パイプ11内を通って機外に排出される。
【0030】
排出クラッチ53は、伝動ベルト54を動力伝動可能な緊張状態と、動力伝動不能な弛緩状態とに切り換えるテンションプーリ55を備えたベルトテンション方式のクラッチ機構であり、テンションプーリ55に機械的に連結された穀粒排出レバー56(排出クラッチ操作具)によって入切操作される。図7及び図8に示すように、穀粒排出レバー56は、上下方向に揺動操作可能であり、下方への揺動操作に応じて排出クラッチ53が入状態に切り換えられ、上方への揺動操作に応じて排出クラッチ53が切状態に切り換えられる。また、穀粒排出レバー56の基部には、穀粒排出レバー56の入操作を検出する穀粒排出レバー検出スイッチ57が配置されている。なお、本実施形態では、排出クラッチ53と穀粒排出レバー56の機械的な連結手段として、ワイヤ部材58を用いているが、ロッド部材などであってもよい。
【0031】
機体2には、各種の制御を行う制御装置60が搭載されている。制御装置60の入力側には、前述した穀粒排出レバー検出スイッチ57と、オーガ9(横パイプ11)の左旋回操作、右旋回操作、上昇操作及び下降操作が可能なオーガ操作レバー61と、オーガ9(横パイプ11)の自動旋回制御を実行操作するオーガ自動旋回スイッチ62と、オーガ9(横パイプ11)の旋回位置を検出するオーガ旋回ポテンショメータ69と、オーガ9(横パイプ11)の上限を検出するオーガ上限検出スイッチ63と、オーガ9(横パイプ11)の伸長状態を検出するオーガ作業状態検出スイッチ64と、操縦部4におけるオペレータの存在を検出するオペレータ検出スイッチ65と、エンジンの回転を検出するエンジン回転センサ66と、駐車時に機体2を停止状態に維持する駐車ブレーキ(図示せず)の入切状態を検出する駐車ブレーキ検出スイッチ67と、作業走行と非作業走行とを切り換える走行副変速機構(図示せず)の変速状態を検出する走行副変速検出スイッチ68と、が接続されている。なお、オーガ9(横パイプ11)の伸長状態を検出するオーガ作業状態検出スイッチ64は、例えば、両横パイプ11a、11bに設けられるフランジ16a、16b同士の近接又は当接を検出するマイクロスイッチ、マグネットスイッチなどを用いて構成することができる。
【0032】
また、制御装置60の出力側には、オーガ9(横パイプ11)を旋回させるオーガ旋回モータ71と、オーガ9(横パイプ11)を昇降させるオーガ昇降シリンダ72と、エンジンを停止させるエンジン停止装置73と、警報を出力する警報装置74と、音声を出力する音声装置75と、操縦部4において各種の表示を行う表示モニタ76と、が接続されている。
【0033】
制御装置60は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能的な構成として、エンジン停止制御手段及び報知制御手段を備える。
【0034】
エンジン停止制御手段は、横パイプ11が折畳状態の可能性があるとき、排出クラッチ53の入操作(穀粒排出レバー検出スイッチ57のON)に応じてエンジンを停止させる。このようなエンジン停止制御手段によれば、排出クラッチ53を機械的に入切操作するコンバイン1であっても、横パイプ11が折り畳まれた状態でオーガ9が排出駆動されることを防止できる。
【0035】
また、本実施形態のエンジン停止制御手段は、オーガ作業状態検出スイッチ64の検出信号に基づいて横パイプ11が伸長状態でないと判断したとき、排出クラッチ53の入操作(穀粒排出レバー検出スイッチ57のON)に応じてエンジンを停止させる。このようなエンジン停止制御手段によれば、横パイプ11が折畳状態のときだけでなく、横パイプ11の折畳作業中などにおいても、誤操作によるオーガ9の排出駆動を防止できる。
【0036】
また、本実施形態のエンジン停止制御手段は、排出クラッチ53の入操作(穀粒排出レバー検出スイッチ57のON)に応じてエンジンを停止させる前に、排出クラッチ53(穀粒排出レバー検出スイッチ57のON)の入操作継続時間を計測し、該入操作継続時間が所定時間を超えたらエンジンを停止させる。このようなエンジン停止制御手段によれば、誤操作に気付き、所定時間内に穀粒排出レバー56を切操作すれば、エンジン停止を回避できる。その結果、不要なエンジン停止を減らし、再始動時のバッテリやスタータの負荷を低減させることができる。なお、本実施形態のエンジン停止制御手段は、排出クラッチ53(穀粒排出レバー検出スイッチ57のON)の入操作継続時間を計測している間、所定の警報作動を行い、穀粒排出レバー56の切操作を促す。これにより、不要なエンジン停止をさらに減らすことが可能になる。
【0037】
報知制御手段は、横パイプ11が伸長状態で、且つ走行副変速機構が非作業走行状態のとき、横パイプ11の折り畳みを促す報知を行う。このような報知制御手段によれば、横パイプ11が伸長状態のままの非作業走行によって伸長状態の横パイプ11に大きな負荷がかかることを防止できる。
【0038】
また、本実施形態の報知制御手段は、横パイプ11が伸長状態で、且つ駐車ブレーキ機構が入状態のとき、横パイプ11の折り畳みを促す報知を行う。このような報知制御手段によれば、横パイプ11が伸長状態のままのトラック運搬によって伸長状態の横パイプ11に大きな負荷がかかることを防止できる。
【0039】
つぎに、上記のような機能構成を実現する制御装置60の処理手順について、図10及び図11を参照して説明する。なお、図10及び図11に示すフローチャートの各処理ステップは、制御装置60が実行する処理の概要を示しており、明細書の記載内容と一致しない場合がある。
【0040】
図10に示すように、制御装置60は、エンジン停止制御手段を実現するエンジン停止制御において、まず、穀粒排出レバー検出スイッチ57の検出信号に基づいて、穀粒排出レバー56が入操作されたか否かを判断し(ステップS11)、この判断結果がYESの場合はステップS12に進み、NOの場合は上位ルーチンに復帰する。
【0041】
制御装置60は、ステップS12に進むと、オーガ作業状態検出スイッチ64の検出信号に基づいて、横パイプ11が伸長状態であるか否かを判断し、この判断結果がYESの場合は上位ルーチンに復帰し、NOの場合はステップS13に進む。
【0042】
制御装置60は、ステップS13に進むと、穀粒排出レバー56の入操作継続時間が所定時間に達したか否かを判断し、この判断結果がYESの場合はエンジンを停止させ(ステップS14)、NOの場合は所定の警報を行い(ステップS15)、穀粒排出レバー56の切操作を促す。
【0043】
図11に示すように、制御装置60は、報知制御手段を実現する報知制御において、まず、オーガ作業状態検出スイッチ64の検出信号に基づいて、横パイプ11が伸長状態であるか否かを判断し(ステップS22)、この判断結果がYESの場合はステップS22に進み、NOの場合は上位ルーチンに復帰する。
【0044】
制御装置60は、ステップS22に進むと、走行副変速検出スイッチ68の検出信号に基づいて、走行副変速機構が非作業走行状態であるか否かを判断し、この判断結果がYESの場合は、横パイプ11の折り畳みを促すモニタ報知(ステップS23)及び音声報知(ステップS24)を実行させ、NOの場合はステップS25に進む。
【0045】
制御装置60は、ステップS25に進むと、駐車ブレーキ検出スイッチ67の検出信号に基づいて、駐車ブレーキ機構が入状態であるか否かを判断し、この判断結果がYESの場合はステップS26に進み、NOの場合はステップS27に進む。
【0046】
制御装置60は、ステップS26に進むと、エンジン回転センサ66の検出信号に基づいて、エンジンが停止状態であるか否かを判断し、この判断結果がYESの場合は、前述したステップS23及びステップS24に進み、横パイプ11の折り畳みを促すモニタ報知及び音声報知を実行させ、NOの場合はステップS27に進む。制御装置60は、ステップS27に進むと、モニタ報知及び音声報知を停止させて上位ルーチンに復帰する。
【0047】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、収穫した穀粒を貯留する穀粒タンク7と、エンジンの動力で駆動され、穀粒タンク7内の穀粒を機外に排出するオーガ9と、エンジンからオーガ9に至る動力伝動経路に設けられ、オーガ9の駆動を入切する排出クラッチ53と、排出クラッチ53を機械的に操作する穀粒排出レバー56と、を備えるコンバイン1であって、オーガ9は、穀粒タンク7に接続される縦パイプ10と、縦パイプ10の上端部に接続され、且つ折畳可能な横パイプ11と、を備えて構成され、横パイプ11が折畳状態の可能性があるとき、排出クラッチ53の入操作に応じてエンジンを停止させるエンジン停止制御手段を備えるので、排出クラッチ53を機械的に入切操作するコンバイン1であっても、横パイプ11の折畳状態でオーガ9が排出駆動されることを防止できる。
【0048】
また、エンジン停止制御手段は、横パイプ11が伸長状態でないとき、排出クラッチ53の入操作に応じてエンジンを停止させるので、横パイプ11が折畳状態のときだけでなく、横パイプ11の折畳作業中などにおいても、誤操作によるオーガ9の排出駆動を防止できる。
【0049】
また、エンジン停止制御手段は、排出クラッチ53の入操作に応じてエンジンを停止させる前に、排出クラッチ53の入操作継続時間を計測し、該入操作継続時間が所定時間を超えたらエンジンを停止させるので、誤操作に気付き、所定時間内に穀粒排出レバー56を切操作すれば、エンジン停止を回避できる。その結果、不要なエンジン停止を減らし、再始動時のバッテリやスタータの負荷を低減させることができる。
【0050】
また、コンバイン1は、作業走行と非作業走行とを切り換える走行副変速機構と、横パイプ11が伸長状態で、且つ走行副変速機構が非作業走行状態のとき、横パイプ11の折り畳みを促す報知を行う報知制御手段と、を更に備えるので、横パイプ11が伸長状態のままの非作業走行によって伸長状態の横パイプ11に大きな負荷がかかることを防止できる。
【0051】
また、コンバイン1は、駐車時に機体を停止状態に維持する駐車ブレーキ機構を更に備え、報知制御手段は、横パイプ11が伸長状態で、且つ駐車ブレーキ機構が入状態のとき、横パイプ11の折り畳みを促すので、横パイプ11が伸長状態のままのトラック運搬によって伸長状態の横パイプ11に大きな負荷がかかることを防止できる。
【0052】
つぎに、本発明の第2実施形態及び第3実施形態について、図12図14を参照して説明する。ただし、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることで、第1実施形態の説明を援用する。
【0053】
第2実施形態のエンジン停止制御手段は、オーガ9(横パイプ11)が格納位置にあるとき、排出クラッチ53の入操作に応じてエンジンを停止させる点が第1実施形態と相違している。具体的には、図12に示すように、ステップS12において、オーガ9(横パイプ11)の伸長状態を判断するのではなく、オーガ9(横パイプ11)が格納位置にあるか否かを判断し、この判断結果がYESのとき、ステップS13に進むようにしてある。このような第2実施形態のエンジン停止制御手段によれば、横パイプ11の折畳状態を検出するスイッチなどを備えていないコンバイン1でも、横パイプ11が折畳状態の可能性が高い格納位置において、誤操作によるオーガ9の排出駆動を防止できる。なお、横パイプ11が格納位置に位置するか否かは、オーガ旋回ポテンショメータ69の検出信号に基づいて判断することが可能であるが、オーガ受け12に設けたマイクロスイッチやマグネットスイッチで検出するようにしてもよい。
【0054】
また、第2実施形態の報知制御手段は、図13に示すように、ステップS26において、エンジンが停止状態であるか否かを判断するのではなく、オーガ9が穀粒排出中であるか否かを判断し、この判断結果がNOの場合は、前述したステップS23及びステップS24に進み、横パイプ11の折り畳みを促すモニタ報知及び音声報知を実行させ、YESの場合はステップS27に進む点が第1実施形態と相違している。このような第2実施形態の報知制御によれば、駐車ブレーキ機構が入状態で行われる穀粒排出中に無駄な報知を行うことが防止される。
【0055】
第3実施形態のエンジン停止制御手段は、操縦部4のオペレータを検出し、且つ横パイプ11が所定の旋回位置にあるとき、排出クラッチ53の入操作に応じてエンジンを停止させる点が第1実施形態と相違している。具体的には、図14に示すように、ステップS12において、オーガ9(横パイプ11)の伸長状態を判断するのではなく、操縦部4にオペレータが存在し(ステップS12-1)、且つオーガ9(横パイプ11)が格納位置にあるか否かを判断しており(ステップS12-2)、この両判断結果がYESのとき、ステップS13に進むようにしてある。このような第3実施形態のエンジン停止制御手段によれば、横パイプの折畳状態を検出するスイッチなどを備えていないコンバイン1でも、横パイプ11が所定の旋回位置(操縦部4のオペレータと近づく位置)にあるときは、誤操作によるオーガ9の排出駆動を防止できる。なお、第3実施形態における所定の旋回位置は、格納位置に限定されず、横パイプ11が操縦部4のオペレータと近づく旋回範囲内で任意に設定できる。また、操縦部4におけるオペレータの存在を検出するオペレータ検出スイッチ65は、例えば、操縦部4の運転席3や床部に設けられる圧電センサ、静電容量センサなどを用いて構成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 コンバイン
2 機体
4 操縦部
5 脱穀部
7 穀粒タンク
9 オーガ
10 縦パイプ
11 横パイプ
52 排出動力伝動経路
53 排出クラッチ
56 穀粒排出レバー
57 穀粒排出レバー検出スイッチ
60 制御装置
64 オーガ作業状態検出スイッチ
65 オペレータ検出スイッチ
66 エンジン回転センサ
67 駐車ブレーキ検出スイッチ
68 走行副変速検出スイッチ
69 オーガ旋回ポテンショメータ
73 エンジン停止装置
74 警報装置
75 音声装置
76 表示モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14