(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087983
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】コンクリート製壁高欄の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20230619BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20230619BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E01D19/10
E01D21/00 B
E01D19/12
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202573
(22)【出願日】2021-12-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 圭一
(72)【発明者】
【氏名】小保田 剛規
(72)【発明者】
【氏名】大野 優華
(72)【発明者】
【氏名】山下 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】豊田 正
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059AA19
2D059AA21
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋梁上部工のコンクリート製壁高欄の構築に要する作業時間を短縮する。
【解決手段】このコンクリート製壁高欄の構築方法は、コンクリート床版用の底枠を配置し、コンクリート製のプレキャスト壁高欄部材を前記コンクリート床版の先端に仮置きするとともに、前記型枠内にコンクリート床版用の鉄筋を組み立て、前記コンクリート床版のコンクリートを打設する、ことによって行われる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床版用の底枠を配置し、
コンクリート製のプレキャスト壁高欄部材を前記コンクリート床版用の底枠上の先端に仮置きするとともに、前記型枠内にコンクリート床版用の鉄筋を組み立て、
前記コンクリート床版のコンクリートを打設する
コンクリート製壁高欄の構築方法。
【請求項2】
前記プレキャスト壁高欄部材には、コンクリート床版への定着部材が突出され、前記型枠内に打設されたコンクリート床版のコンクリートに定着する、請求項1に記載のコンクリート製壁高欄の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁上部工のコンクリート製防護壁(壁高欄)の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
張り出し床版を有する既設橋梁の橋梁防護柵の更新工事として、既設の鋼製橋梁防護柵をコンクリート製の橋梁防護壁(コンクリート製壁高欄)に更新する工事がある。鋼製橋梁防護柵とコンクリート製壁高欄では自重の差が大きいため、新しいコンクリート製壁高欄を構築すると、既設の張り出し床版付け根部の耐力が不足する場合がある。この耐力不足に対し、外的な補強が困難な場合には、張り出し床版も同時に更新することが行われる。
【0003】
このような張り出し床版の更新を伴うコンクリート製壁高欄の構築は、張り出し床版を付け根で切断し、必要な耐力を満足する新たな張り出し床版を現場打ちコンクリートにて再構築し、張り出し床版先端部に新たなコンクリート製壁高欄を構築する、という手順で行われる。ここで、張り出し床版と壁高欄のコンクリート配合は一般的に異なるため、張り出し床版と壁高欄はそれぞれ個別に構築することが一般的である。この場合、例えば、張り出し床版先端部の上面に壁高欄と接続する鉄筋を突出させておき、張り出し床版の構築完了後、突出した鉄筋に接続して壁高欄の鉄筋を組立て、型枠の設置、 コンクリート打設を行って壁高欄を構築する。しかし、この手順では、現場打ちコンクリートによる構造物の構築が個別に2回必要であるため、作業に要する時間が長くなる。このため、工程短縮および交通規制の早期解放が望まれる現場においては、張り出し床版および壁高欄の構築方法の改善が望まれる。
【0004】
近年、工期短縮及び交通規制時間の短縮を目的として、既設の床板を撤去した後、工場で製作された、橋軸方向に2m程度の幅を持つプレキャスト床版を敷設する方法が採用されている。壁高欄の構築はプレキャスト床版敷設後に行われることが一般的であるが、壁高欄の構築に際しても、工期短縮を目的として工場で製作されたプレキャスト壁高欄をプレキャスト床版上に構築する方法が採用されている。この方法によると、コンクリートの打設及び養生に時間を費やす必要が無くなるため、全体工期の短縮又は交通規制時間の短縮が可能である。
【0005】
しかし、プレキャスト床版とプレキャスト壁高欄との接続に関しては、例えばプレキャスト床版にアンカー鉄筋を突出状態で設置するとともに、プレキャスト壁高欄にアンカー鉄筋を挿入するアンカー孔を設置し、このアンカー孔にプレキャスト床版から突出させたアンカー鉄筋を挿入し、互いの隙間に例えばモルタルを充填することによって一体化する方法が知られる(例えば引用文献1)。
【0006】
また、アンカー鉄筋の代わりに、アンカーボルトをプレキャスト床版に埋め込み、プレキャスト壁高欄に設けられたアンカー孔にアンカーボルトを挿入し、ナットで固定する方法もある(例えば引用文献2)。
【0007】
さらに、壁高欄のみを更新する工事に関して、既設の壁高欄を撤去した後、既設の張り出し床版上の鉄筋を研り出し、予め工場等で製作した下端部に床版と接続する鉄筋を突出させたプレキャスト壁高欄を張り出し床版上面とプレキャスト壁高欄下端部との間に隙間を開けて設置し、その隙間に無収縮モルタルを充填して壁高欄を構築する方法が知られている(例えば引用文献3)。
【0008】
さらに、コンクリート製のプレキャスト橋桁や現場打コンクリートで構築された床版橋における張り出し床版上の橋梁防護柵の更新工事がある。この更新工事において鋼製防護柵からコンクリート製の壁高欄へと更新する場合は、鋼製防護柵とコンクリート製壁高欄の自重の差が大きく、張り出し床版の付け根の耐力不足が生じる場合があるため、張り出し床版上の橋梁防護柵とともに張り出し床版を更新する場合がある。一般的に張り出し床版はコンクリート構造であるため、張り出し床版をプレキャスト橋桁や床版橋本体との境界で切断撤去し、 現場打コンクリートにより新しい張り出し床版を構築する。その際、既設の壁高欄は既設張り出し床版と一体となって撤去されるため、新しい壁高欄を構築する必要がある。新しい壁高欄は、新しい張り出し床版から突出した鉄筋に新しい壁高欄の鉄筋を接続して鉄筋を組み立て、現場打コンクリートにより構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-115485号公報
【特許文献2】特開平09-29641号公報
【特許文献3】特開2013-36205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鋼橋に敷設されたコンクリート床版の更新は、工期の短縮のため、工場で製作した新しいプレキャスト床版を敷設後、工場で製作したプレキャスト壁高欄を敷設しプレキャスト床版と接続することで行われることが多い。
しかしながら、プレキャスト部材どうしの接続となるため、プレキャスト床版にはアンカー鉄筋やアンカーボルトの設置、プレキャスト壁高欄にはアンカーの設置が必要であり、特にプレキャスト壁高欄の製作は煩雑になりやすい。
【0011】
壁高欄のみの更新工事においては、既設の壁高欄を切断撤去し、既設の張り出し床版はそのまま再利用することから、新たなプレキャスト壁高欄を構築する場合は、プレキャスト壁高欄下端部に床版接続鉄筋を突出させ、張り出し床版上面とプレキャスト壁高欄下端に隙間を開けてプレキャスト壁高欄を設置し、その隙間に無収縮モルタルを充填する、という方法を採っている。
【0012】
しかし、張り出し床版とプレキャスト壁高欄との鉄筋を接続するため、特殊な鉄筋継手の使用や張り出し床版上面に後施工アンカーを施工するなど張り出し床版とプレキャスト壁高欄の鉄筋の接続は複雑である。また、張り出し床版とプレキャスト壁高欄との隙間に無収縮モルタルを充填するため、プレキャスト壁高欄の車道側および外側に型枠を設置する必要がある。
さらに、プレキャスト・コンクリート橋桁やコンクリート床版橋の張り出し床版の更新を伴う壁高欄の更新では、新しく構築される張り出し床版や壁高欄は現場打コンクリートで製作することが一般的であるため、コンクリート打設や養生に費やす時間が必要となり、交通規制の制限を受ける更新工事においては作業時間の制約が厳しい。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、橋梁上部工のコンクリート製壁高欄の構築に要する作業時間を短縮することのできるコンクリート製壁高欄の構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るコンクリート製壁高欄の構築方法は、コンクリート床版用の底枠を配置し、コンクリート製のプレキャスト壁高欄部材を前記コンクリート床版用の底枠上の先端に仮置きするとともに、前記型枠内にコンクリート床版用の鉄筋を組み立て、前記コンクリート床版のコンクリートを打設する、ことによって行われる。
【0015】
前記プレキャスト壁高欄部材には、コンクリート床版への定着部材が突出され、前記型枠内に打設されたコンクリート床版のコンクリートに定着するようにしてもよい。
【0016】
本発明によれば、現場打コンクリートで構築する壁高欄をプレキャスト壁高欄に変更したことで、壁高欄更新工事の作業時間を低減することができる。
また、プレキャスト壁高欄の突出した鉄筋が新設張り出し床版部のコンクリート内に埋め込まれて定着されるので、新設張り出し床版部とプレキャスト壁高欄が一体の構造物として得られる。このため、張り出し床版とプレキャスト壁高欄との隙間を無収縮モルタルなどで埋める作業が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のコンクリート製壁高欄の構築方法の手順を示す流れ図である。
【
図2】同構築方法における既設コンクリート床版1のコンクリート張り出し床版部2を示す断面図である。
【
図3】同構築方法における
図2の既設コンクリート床版1から鋼製橋梁防護柵3を含む既設張り出し床版部2を切断・撤去した状態を示す断面図である。
【
図4】同構築方法における支保工の構築および底枠の組立てを示す断面図である。
【
図5】同構築方法における下側鉄筋7の組立てを示す断面図である。
【
図6】同構築方法におけるプレキャスト壁高欄3Aの仮置きを示す断面図である。
【
図7】同構築方法における新設張り出し床版部の上側鉄筋12の組み立てを示す断面図である。
【
図8】同構築方法におけるコンクリート打設を示す断面図である。
【
図9】プレキャスト壁高欄の構築完了の状態を示す断面図である。
【
図10】プレキャスト壁高欄3Aの車線方向端部に荷重伝達機能を備えた目地構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るコンクリート製壁高欄の構築方法の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
本実施形態は、既設コンクリート床版橋の張り出し床版先端部に敷設された鋼製橋梁防護柵をコンクリート製壁高欄に更新する方法に関する。鋼製橋梁防護柵からコンクリート製壁高欄への更新に伴い、既設コンクリート床版においてコンクリート製壁高欄を支持する張り出し床版先端部の必要な耐力を満足するために、その張り出し床版先端部の更新を同時に行う必要がある。
【0019】
図1は本実施形態の更新作業の手順を示す流れ図である。
本更新作業は、以下の作業手順S1-S8からなる。
S1.既設鋼製橋梁防護柵及び既設張り出し床版先端部の切断・撤去。
S2.支保工の構築。
S3.新設張り出し床版の底枠の組み立て。
S4.新設張り出し床版部の下側鉄筋の組み立て。
S5.プレキャスト壁高欄の仮置き及び高さ・鉛直調整。
S6.新設張り出し床版部の上側鉄筋の組み立て。
S7.床版先端等必要箇所に型枠を設置。
S8.新設張り出し床版部のコンクリート打設、型枠解体。
【0020】
以下、それぞれの作業の詳細を説明する。
(S1.既設鋼製橋梁防護柵及び既設張り出し床版先端部の切断・撤去)
図2は既設橋梁1のコンクリート張り出し床版部2(以下「既設張り出し床版部2」と呼ぶ。)を示す断面図である。既設張り出し床版部2の先端部には、例えば鋼製橋梁防護柵等の撤去対象防護柵3が設けられている。
【0021】
まず、
図3に示すように、既設橋梁1から、鋼製橋梁防護柵3を含む既設張り出し床版部2を切断・撤去する。このとき、残った既設橋梁1の切断面より、新設張り出し床版(図示せず)の鉄筋との継手用の張り出し床版上縁側の既存鉄筋4を突出させておく。本実施形態では、新設張り出し床版付け根の耐力確保のため、新設張り出し床版付け根の断面寸法を大きくする必要があり、張り出し床版下縁側の鉄筋は、後施工アンカー4′を既設橋梁側に設置し、後施工アンカー4′に鉄筋4″を接続して構築する。
【0022】
(S2.支保工の構築とS3.新設張り出し床版の底枠の組み立て)
次に、
図4に示すように、新設張り出し床版を構築するための支保工5の構築と、新設張り出し床版部の底枠6の組み立てを行う。支保工5の強度は、新設張り出し床版部のコンクリート重量とプレキャスト壁高欄部の重量を考慮したものとする。
【0023】
(S4.新設張り出し床版部の下側鉄筋の組み立て)
次いで、
図5に示すように、新設張り出し床版部の下側鉄筋7を組立てる。この際、下側鉄筋7と、既設橋梁1の切断面に後施工アンカーに接続した鉄筋4″とを機械式継手7′等で接続する。本実施形態では、既設コンクリート床版1に設置した後施工アンカーに新設張り出し床版下縁側の鉄筋を機械式継手により接続しているが、鉄筋の接続は重ね継手でもよく、鉄筋に作用する力を伝達できる構造であれば、鉄筋継手構造は問わない。
【0024】
(S5.プレキャスト壁高欄の仮置き及び高さ・鉛直調整)
新設張り出し床版部の下側鉄筋7の組立後、
図6に示すように、既設張り出し床版2の撤去前に張り出し床版付け根より車道中心側に設定された、道路上の有効幅員を確認する基準線を利用して有効幅員調整材8を設置する。有効幅員調整材8の設置後、プレキャスト壁高欄部材3Aを油圧クレーンで吊り上げ、有効幅員調整材8に合わせてプレキャスト壁高欄部材3Aを底枠6上に仮置きする。これにより容易に道路線形の基準値以内にプレキャスト壁高欄部材3Aを設置することができる。
【0025】
なお、
図6に示すように、プレキャスト壁高欄部材3Aの底部には高さ調整材設置用の全ねじボルト9が突出させてあり、プレキャスト壁高欄部材3Aの仮置きの際、高さ調整材10を全ねじボルト9に設置する。プレキャスト壁高欄部材3Aの仮置き後、プレキャスト壁高欄部材3Aの高さを高さ測定器等で確認し、必要により高さ調整治具10で高さを調整すると同時にプレキャスト壁高欄部材3Aの鉛直性を確保する目的で、プレキャスト壁高欄部材3Aの車道側側面と、既設コンクリート床版1の切断部より道路中心側の路面との間を支持材11で互いに支持し合う。支持材11は、プレキャスト壁高欄部材3Aの鉛直性を調整できるように、長さを調節できるものがよく、プレキャスト壁高欄部材3Aの1体につき2か所以上設置することが望ましい。なお、支持材11は、プレキャスト壁高欄部材3Aの鉛直性の確保のみならず、転倒防止用としての機能し得るものである。
【0026】
(S6.新設張り出し床版部の上側鉄筋の組み立て)
プレキャスト壁高欄部材3Aを固定した後、
図7に示すように新設張り出し床版部の上側鉄筋12の組み立てを行う。下側鉄筋7の組立てと同様に、既設コンクリート床版1の切断面に突出させた既存鉄筋と、新設張り出し床版部の上側鉄筋12とを機械式継手7′等で接続する、あるいは、既設コンクリート床版1の切断面に突出させた既存鉄筋4の突出長を重ね継手長以上に突出させ、新設張り出し床版側の鉄筋7と重ね継手で接続してもよく、鉄筋継手構造は問わない。
【0027】
なお、プレキャスト壁高欄部材3Aの車線方向両端部はフラットな面であり構造的に接合されていないが、
図10に示すように荷重伝達機能を備えた目地構造を採用してもよい。
図10に示す荷重伝達機能は、プレキャスト壁高欄部材3Aの車線方向で互いに突き合わされる何れか一方の接合端面に他方側に突出させた接合凸部16を一体に備え、何れか他方のプレキャスト壁高欄3Aの接合端面に、接合凸部16が嵌め込まれる凹溝状の接合凹部17を一体に形成してもよい。
プレキャスト壁高欄部材3Aの設置固定は1橋梁分あるいは径間ごとに連続して行うことで、橋軸方向における並びの線形の良否を確認しやすくなる。
【0028】
(S7.床版先端等必要箇所に型枠を設置とS8.新設張り出し床版部のコンクリート打設、型枠解体)
プレキャスト壁高欄部材3Aの設置固定後、
図8に示すように、プレキャスト壁高欄外側の新設張り出し床版先端の側枠6′や車線方向の端部などの必要な部位に側枠(図示せず)を設置し、底枠6、既設コンクリート床版1の切断面および前記の側枠との間の空間にコンクリート15を流し込むことで新設張り出し床版部の構築を行う。所定の養生期間経過後、底枠、側枠などの型枠を解体する。これにより、
図9に示すように、張り出し床版先端部の更新(新設張り出し床版先端部2Aの構築)と同時にコンクリート製壁高欄の構築が完了する。
【0029】
図7に示したように、プレキャスト壁高欄部材3Aの底部には鉄筋13が突出している。プレキャスト壁高欄部材3Aの底部に突出した鉄筋13は新設張り出し床版部2Aのコンクリート内に埋め込まれて定着される。これにより、新設張り出し床版部2Aとプレキャスト壁高欄3Aは一体の構造物として構築される。
【0030】
本実施形態では、橋軸方向の長さが例えば4.0m程度のプレキャスト壁高欄部材3Aが橋軸方向に並べられる。プレキャスト壁高欄部材3Aから突出させる鉄筋の径、長さ、ピッチ、本数などの配筋設計は、現場打ちコンクリートで壁高欄を構築する場合と同一とすることができるため、特別な設計検討を必要としないことも本構築方法のメリットといえる。
【0031】
以上、本実施形態のコンクリート製壁高欄の構築方法によれば、現場打コンクリートで構築する壁高欄をプレキャスト壁高欄に変更したことで、壁高欄更新工事の作業時間を低減することができる。特に、コンクリート張り出し床版部の更新を伴う壁高欄更新工事の作業時間の大幅な短縮が可能である。
また、プレキャスト壁高欄3Aから突出した鉄筋13が新設張り出し床版部2Aのコンクリート内に埋め込まれて定着されるので、新設張り出し床版部2Aとプレキャスト壁高欄3Aが一体の構造物として得られる。このため、壁高欄のみを更新する工事において必要な、張り出し床版とプレキャスト壁高欄との隙間を無収縮モルタルなどで埋める作業が不要になる。
ここで、本実施形態においては、プレキャスト壁高欄から鉄筋を突出させているが、新設張り出し床版と構造的に一体化されるものであれば、アンカーボルトの先端に定着プレートを設置した構造としてもよい。新設張り出し床版と一体化可能であれば、プレキャスト壁高欄の定着構造にこだわるものではない。
そして、本実施形態のコンクリート製壁高欄の構築方法によれば、張り出し床版と壁高欄の構築が同時に完了するので、早期の交通規制解除が可能となる。
【0032】
上記実施形態では、新設張り出し床版の底枠9の組み立て後、新設張り出し床版部の下側鉄筋7を組立てからプレキャスト壁高欄部材3Aを底枠6上に仮置きしたが、新設張り出し床版部の下側鉄筋7および上側鉄筋12を組立てからプレキャスト壁高欄部材3Aを底枠6上に仮置きしてもよい。すなわち、プレキャスト壁高欄部材3Aの仮置きと新設張り出し床版部の下側鉄筋7および上側鉄筋12の組立ては並行が可能である。
【0033】
なお、ここまで既設橋梁のコンクリート床版の張り出し床版先端部の更新に伴うプレキャスト壁高欄を使用したコンクリート製壁高欄の構築方法を説明したが、本願発明は、本実施形態に限定されるものではなく、新設橋梁のコンクリート床版へのコンクリート製の壁高欄の構築に採用することができる。
【符号の説明】
【0034】
3A…プレキャスト壁高欄部材
6…底枠
7…新設張り出し床版部の下側鉄筋
12…新設張り出し床版部の上側鉄筋
15…コンクリート
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床版用の底枠を配置し、
壁高欄を構成するコンクリート製のプレキャスト壁高欄部材を前記底枠上に、高さ調整材を挟んで前記底枠と前記プレキャスト壁高欄部材の下面との間に隙間を形成した状態で仮置きするとともに、前記コンクリート床版用の前記底枠以外の型枠および鉄筋を組み立て、
前記隙間を含む、前記コンクリート床版用のコンクリート打設空間にコンクリートを打設する
コンクリート製壁高欄の構築方法。
【請求項2】
前記プレキャスト壁高欄部材には、前記コンクリート床版への定着部材が突出され、前記コンクリート打設空間内に打設されたコンクリートに定着する、請求項1に記載のコンクリート製壁高欄の構築方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
なお、
図6に示すように、プレキャスト壁高欄部材3Aの底部には高さ調整材設置用の全ねじボルト9が突出させてあり、プレキャスト壁高欄部材3Aの仮置きの際、高さ調整材10を全ねじボルト9に設置する。プレキャスト壁高欄部材3Aの仮置き後、プレキャスト壁高欄部材3Aの高さを高さ測定器等で確認し、必要により高さ調整
材10で高さを調整すると同時にプレキャスト壁高欄部材3Aの鉛直性を確保する目的で、プレキャス ト壁高欄部材3Aの車道側側面と、既設コンクリート床版1の切断部より道路中心側の路面との間を支持材11で互いに支持し合う。支持材11は、プレキャスト壁高欄部材3A の鉛直性を調整できるように、長さを調節できるものがよく、プレキャスト壁高欄部材3Aの1体につき2か所以上設置することが望ましい。なお、支持材11は、プレキャスト 壁高欄部材3Aの鉛直性の確保のみならず、転倒防止用とし
て機能し得るものである。