(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088001
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】積層チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20230619BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20230619BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08
B32B27/32
B32B27/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202598
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡久 正志
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 依史
(72)【発明者】
【氏名】齋木 計宏
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111BA31
3H111DA11
3H111DA26
3H111DB09
3H111DB20
3H111EA04
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK46
4F100AK46B
4F100AK64
4F100AK64A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DA02
4F100DA02A
4F100DA02B
4F100DD01
4F100DE01
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4F100EH17
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4F100JK06
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4F100JL11A
4F100JL11B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】強度や耐熱性等に優れるとともに、接着剤レスで優れた層間接着性を示し、アニール後の層間接着性も良好である積層チューブを提供する。
【解決手段】管状の内層11と、その外周面に形成される外層12とを備えた積層チューブであって、前記内層11が、平均粒径0.1~10μmの有機粒子が含まれた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層であり、前記外層12が、アミン価15~100mmol/kgのポリアミド樹脂層であり、前記内層11と外層12との界面における内層11側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起を有する積層チューブとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂層とポリアミド樹脂層とが密着状態で積層された層構造を有する積層チューブであって、
前記ポリプロピレン樹脂層におけるポリプロピレン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、そのポリプロピレン樹脂層中に平均粒径0.1~10μmの有機粒子が含まれ、
前記ポリアミド樹脂層におけるポリアミド樹脂が、アミン価15~100mmol/kgのポリアミド樹脂であり、
前記ポリプロピレン樹脂層と前記ポリアミド樹脂層との界面における、前記ポリプロピレン樹脂層側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起を有する、
積層チューブ。
【請求項2】
前記凸状隆起の高さが0.1~10μmの範囲である、請求項1記載の積層チューブ。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂層とポリアミド樹脂層との界面における直線距離での前記凸状隆起の個数が、2~20個/100μmである、請求項1または2記載の積層チューブ。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂層における有機粒子の割合が5~20質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層チューブ。
【請求項5】
前記有機粒子が、ポリエチレンおよびエチレン-プロピレン共重合体の少なくとも一方からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層チューブ。
【請求項6】
前記ポリプロピレン樹脂層が内層であり、前記ポリアミド樹脂層が外層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、自動車等の車両内の冷却システムの配管に用いられる、積層チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車内の冷却システムの配管材料には、強度や耐熱性に優れることから、ポリアミド樹脂が採用されている。また、電気自動車内の冷却システムの配管材料にも、従来、ガソリン車と同様のポリアミド樹脂が採用されている。
そして、近年、自動車等の車両の電動化が進むなか、電気自動車内を冷却するニーズが益々高まっている。
【0003】
しかしながら、ポリアミド樹脂からなるチューブは、価格の面で課題が残る。そのため、前記課題を解決するために廉価なポリプロピレン樹脂を用いたチューブの使用も検討されている。
また、ポリアミド樹脂層とポリプロピレン樹脂層とを積層することによって、両層の特性を生かした、低コストかつ高機能のチューブも検討されている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4909267号公報
【特許文献2】特開2012-82885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアミド樹脂層に対するポリプロピレン樹脂層の層間接着性は低い。このように十分な層間接着性がないと、チューブ外層の保護が受けられず、チューブ内を流れる流体の内圧により、チューブが破裂しやすくなるといった問題が生じる。また、前記のような積層チューブを曲げ加工等する際に、各層の樹脂の融点近傍でアニール(熱処理)することから、その際に層間接着性が低下しやすいといった問題もある。
【0006】
そこで、ポリアミド樹脂層とポリプロピレン樹脂層との間に接着剤を塗布して接着することが検討されるが、その接着に伴う作業コスト等の点で難点がある。
また、前記特許文献2に開示のチューブでは、ポリプロピレン樹脂層を無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層とし、これにより、ポリアミド樹脂層との接着性を高めるようにしているが、積層チューブを曲げ加工等する際に行うアニール(熱処理)により、層間接着性が低下しやすくなる等の問題が依然として残る。そのため、この点において未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、強度や耐熱性等に優れるとともに、接着剤レスで優れた層間接着性を示し、アニール後の層間接着性も良好である、積層チューブの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、各種実験により、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層と、ポリアミド樹脂層との積層構造を有するチューブに対する層間接着性等の改良を検討した。
その結果、前記ポリアミド樹脂層におけるポリアミド樹脂として、アミン価が15~100mmol/kgのポリアミド樹脂を用い、さらに、前記ポリプロピレン樹脂層の材料中に、特定の粒径を示す有機粒子を加え、製法等の工夫により、前記ポリアミド樹脂層と前記ポリプロピレン樹脂層との界面において、前記ポリプロピレン樹脂層側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起が現れるようにすることを想起した。
このようにしたところ、前記ポリアミド樹脂のアミノ基と、前記ポリプロピレン樹脂の無水マレイン酸変性基との化学結合により、両層の層間接着性が向上し、さらに、前記凸状隆起による投錨効果(アンカー効果)によって、両層間の接触面積が増えるとともに摩擦力も向上することで、より効果的な層間接着性の付与につながることを突き止めた。そのため、接着剤レス(接着剤なし)であっても両層の層間接着性をより向上させることができ、さらに、アニールによる層間接着性低下およびそれに起因するチューブ破裂の問題等を解消することができることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を、その要旨とする。
[1] ポリプロピレン樹脂層とポリアミド樹脂層とが密着状態で積層された層構造を有する積層チューブであって、
前記ポリプロピレン樹脂層におけるポリプロピレン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、そのポリプロピレン樹脂層中に平均粒径0.1~10μmの有機粒子が含まれ、
前記ポリアミド樹脂層におけるポリアミド樹脂が、アミン価15~100mmol/kgのポリアミド樹脂であり、
前記ポリプロピレン樹脂層と前記ポリアミド樹脂層との界面における、前記ポリプロピレン樹脂層側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起を有する、
積層チューブ。
[2] 前記凸状隆起の高さが0.1~10μmの範囲である、[1]に記載の積層チューブ。
[3] 前記ポリプロピレン樹脂層とポリアミド樹脂層との界面における直線距離での前記凸状隆起の個数が、2~20個/100μmである、[1]または[2]に記載の積層チューブ。
[4] 前記ポリプロピレン樹脂層における有機粒子の割合が5~20質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層チューブ。
[5] 前記有機粒子が、ポリエチレンおよびエチレン-プロピレン共重合体の少なくとも一方からなる、[1]~[4]のいずれかに記載の積層チューブ。
[6] 前記ポリプロピレン樹脂層が内層であり、前記ポリアミド樹脂層が外層である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層チューブ。
【発明の効果】
【0010】
以上のことから、本発明の積層チューブは、強度や耐熱性等に優れるとともに、接着剤レスであっても優れた層間接着性を示し、さらに、アニールを行っても良好な層間接着性を示すことができる。そのため、アニールによる層間接着性低下およびそれに起因するチューブ破裂の問題等を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る積層チューブの一例を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る積層チューブの積層状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
なお、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
【0013】
本発明の一実施形態である積層チューブ(以下、「本積層チューブ」という)は、先に述べたように、ポリプロピレン樹脂層とポリアミド樹脂層とが密着状態で(直に)積層された構造を有するチューブである。そして、前記ポリプロピレン樹脂層におけるポリプロピレン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであり、そのポリプロピレン樹脂層中に平均粒径0.1~10μmの有機粒子が含まれ、前記ポリアミド樹脂層におけるポリアミド樹脂が、アミン価15~100mmol/kgのポリアミド樹脂である。さらに、前記積層チューブは、前記ポリプロピレン樹脂層と前記ポリアミド樹脂層との界面における、前記ポリプロピレン樹脂層側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起を有するものである。
【0014】
ここで、
図2は、前記ポリプロピレン樹脂層と前記ポリアミド樹脂層との界面を模式的に示したものである。すなわち、
図2において、1はポリプロピレン樹脂層であり、2はポリアミド樹脂層であり、3は有機粒子である。図示のように、ポリプロピレン樹脂層1とポリアミド樹脂層2との界面における、前記ポリプロピレン樹脂層1側には、前記有機粒子3による多数の凸状隆起1aを有している。
前記ポリプロピレン樹脂層1中における有機粒子3の平均粒径は、先に述べたように、0.1~10μmの範囲であり、好ましくは0.1~5μmの範囲、より好ましくは0.3~3μmの範囲である。すなわち、このような平均粒径を示すことにより、前記界面におけるポリプロピレン樹脂層1側に、所望の大きさの凸状隆起1aを多数発現させることができ、その投錨効果(アンカー効果)によって、両層間の接触面積が増えるとともに摩擦力も向上することで、両層の層間接着性を向上させることができるようになる。
なお、前記有機粒子3の平均粒径は、積層チューブを半割し、その積層断面を、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像をもとに、ポリプロピレン樹脂層1内に確認される任意の10個の有機粒子3の粒径を測定し、その平均を求めたものである。
【0015】
また、前記凸状隆起1aの高さ(凹凸の界面における谷と山の間の距離)は、好ましくは0.1~10μmの範囲であり、より好ましくは0.1~5μmの範囲である。
さらに、前記ポリプロピレン樹脂層1とポリアミド樹脂層2との界面における直線距離での前記凸状隆起1aの個数は、2~20個/100μmであることが好ましく、3~15個/100μmであることがより好ましい。
すなわち、これらの規定を満たすことにより、前記凸状隆起1aによる投錨効果等がより高くなり、両層の層間接着性を向上させることができるようになるため、好ましい。
なお、これらの測定は、積層チューブを半割し、その積層断面を、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させたものをもとに測定することにより行われる。
【0016】
つぎに、前記ポリプロピレン樹脂層1およびポリアミド樹脂層2の材料について説明する。
【0017】
《ポリプロピレン樹脂層1用材料》
前記ポリプロピレン樹脂層1の形成材料に用いられるポリプロピレン樹脂は、先に述べたように、無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。なお、前記ポリプロピレン樹脂層1用材料の50質量%以上は無水マレイン酸変性ポリプロピレンが占めており、前記有機粒子3以外のポリプロピレン樹脂層1の形成材料が無水マレイン酸変性ポリプロピレンのみからなる場合も含む。
そして、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、その変性量が、0.05~7質量%のものが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%のものである。すなわち、変性量が低すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられ、逆に変性量が高すぎると、耐熱性が劣る傾向がみられるからである。
また、前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、その融点が、130~180℃のものが好ましく、より好ましくは140~170℃のものである。すなわち、融点が低すぎると、耐熱性が劣る傾向がみられ、逆に融点が高すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0018】
前記ポリプロピレン樹脂層1に含まれる有機粒子3としては、ゴム(エチレン-プロピレン共重合体、エチレンオクテン、エチレンブテン、エチレンヘキセン、エチルアクリレート等)、樹脂(ポリエチレン等)等の有機材料からなる粒子が挙げられる。これらは、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、相溶性の観点から、ポリエチレンおよびエチレン-プロピレン共重合体の少なくとも一方からなる有機粒子が好ましい。
なお、前記有機粒子3は、先に述べた特定の平均粒径を満たすよう予め造粒されたものを、ポリプロピレン樹脂層1用材料に加えるようにしてもよい。また、前記有機粒子3の材料となる樹脂やゴムを、無水マレイン酸変性ポリプロピレンと特定の条件で溶融混練(二軸混錬機による、200~250℃で、1~10分間の溶融混練)してペレット化し、このものを、後記の条件に従い溶融押出成形することにより、結果的に、ポリプロピレン樹脂中に、前記有機粒子3が現れるようにしてもよい。
【0019】
前記ポリプロピレン樹脂層1における有機粒子3の割合は、5~20質量%であることが好ましく、より好ましくは10~15質量%である。すなわち、このような割合で有機粒子3を含有することにより、アニール後の層間接着性を良好にすることができるからである。
ここで、前記ポリプロピレン樹脂層1における有機粒子3の割合は、本積層チューブ製造前であれば、そのポリプロピレン樹脂層1用材料に配合される有機粒子3(あるいはその有機粒子3の材料となる樹脂やゴム)の割合により求めることができる。本積層チューブ製造後であれば、そのポリプロピレン樹脂層1を、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率1000倍で撮影し、二値化処理すること等により、求めることができる。
【0020】
なお、前記ポリプロピレン樹脂層1用材料には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、有機粒子3に加えて、耐候安定剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、耐熱老化防止剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
また、前記ポリプロピレン樹脂層1用材料は、必要に応じ、これらの材料を溶融混練したものをペレット化したものが用いられる。
【0021】
《ポリアミド樹脂層2用材料》
前記ポリアミド樹脂層2の形成材料に用いられるポリアミド樹脂は、先に述べたように、アミン価15~100mmol/kgのポリアミド樹脂である。好ましくは、アミン価20~80mmol/kgのポリアミド樹脂であり、より好ましくは、アミン価25~60mmol/kgのポリアミド樹脂である。このようなアミン価のポリアミド樹脂を用いることにより、前記ポリプロピレン樹脂層1に対する層間接着性等により優れたものとなる。なお、アミン価が低すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられ、逆にアミン価が高すぎると、押出成形性が悪化する傾向がみられる。
ここで、前記ポリアミド樹脂のアミン価は、ポリアミド樹脂の固形分1kgに含まれるアミンのmmol数を示すものである。
【0022】
前記のアミン価を示すポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)等の脂肪族ポリアミド樹脂や、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)等の芳香族ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ポリプロピレン樹脂層1との層間接着性により優れること等から、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。
【0023】
また、前記ポリアミド樹脂は、その融点が、160~280℃のものが好ましく、より好ましくは170~270℃のものである。すなわち、融点が低すぎると、耐熱性が劣る傾向がみられ、逆に融点が高すぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0024】
なお、前記ポリアミド樹脂層2用材料の50質量%以上は、前記アミン価のポリアミド樹脂が占めており、好ましくは前記ポリアミド樹脂層2用材料の70質量%以上が前記アミン価のポリアミド樹脂であり、より好ましくは前記ポリアミド樹脂層2用材料の100質量%が前記アミン価のポリアミド樹脂である。
【0025】
なお、前記ポリアミド樹脂層2用材料には、前記アミン価のポリアミド樹脂に加えて、耐候安定剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、耐熱老化防止剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
また、前記ポリアミド樹脂層2用材料は、必要に応じ、これらの材料を溶融混練したものをペレット化したものが用いられる。
【0026】
本積層チューブにおいては、前記ポリプロピレン樹脂層1とポリアミド樹脂層2との層間を接着剤レスで接着させるため、共押出成形により両層を形成することが好ましい。
【0027】
また、本積層チューブにおいては、前記ポリプロピレン樹脂層1が内層(内側の層)であり、前記ポリアミド樹脂層2が外層(外側の層)であることが、加水分解性の観点から好ましい。
例えば、
図1に示すような、内層11の外周面に外層12が直接形成された二層構造の積層チューブにおいて、その内層11が前記ポリプロピレン樹脂層1と同一の層であり、外層12が前記ポリアミド樹脂層2と同一の層のものが挙げられる。
また、前記外層12の外周面に対し、前記ポリプロピレン樹脂層1と同一の層を形成することにより、三層構造の積層チューブとなるようにしてもよい。
また、これらの積層チューブの外周面に対し、さらに、他の樹脂層やゴム層や補強層(PET糸等の補強糸をブレード編組等して形成された層)を積層するようにしてもよい。
【0028】
《本積層チューブの製造方法》
つぎに、本積層チューブの製造方法について説明する。
すなわち、まず、内層11用の材料(ポリプロピレン樹脂層1用材料)を、先に述べた条件に従い適宜ペレット化し、調製する。また、外層12用の材料(ポリアミド樹脂層2用材料)についても、適宜ペレット化したものを用意する。つぎに、押出成形機を用いて、前記内層11用の材料および外層12用の材料をマンドレル上にチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)して、内層11の外周面に外層12を形成する。なお、必要に応じて、マンドレルは省略しても差し支えない。
このときの押出成形機による各層の押出成形は、200~350℃(好ましくは220~280℃)の温度で、引取り速度1~15m/分(好ましくは3~5m/分)で行われる。特に、外層12用の材料に用いられるポリアミド樹脂の融点よりも20~100℃高い温度(好ましくは20~80℃高い温度)で溶融押出成形(共押出成形)することが望ましい。すなわち、このような条件で製造することにより、内層11中の有機粒子を、外層12との界面付近に偏在させることができ、その結果、前記界面における内層11側に、所望の大きさの凸状隆起を多数発現させることができるようになるからである。
【0029】
そして、このようにして得られた積層チューブを、必要に応じ、各層の樹脂の融点近傍でアニール(熱処理)したり、そのアニールの際に曲げ加工等したりする。
このようにして、本積層チューブ(
図1参照)を製造することができる。
【0030】
このようにして得られる本積層チューブにおいて、チューブ内径は、2~40mmの範囲が好ましく、4~35mmの範囲がより好ましい。また、前記内層11の厚みは、0.1~1.9mmの範囲が好ましく、0.2~1.8mmの範囲がより好ましい。また、前記外層12の厚みは、0.1~1.9mmの範囲が好ましく、0.2~1.8mmの範囲がより好ましい。
【0031】
本積層チューブは、ラジエーターホース、ヒーターホース、エアコンホース等や、電気自動車や燃料電池自動車用の電池パックの冷却用チューブに用いられる。また、前記積層チューブは、自動車用のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等にも用いることができる。
【実施例0032】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す内層用材料(ポリプロピレン樹脂層用材料)および外層用材料(ポリアミド樹脂層用材料)を準備した。
【0034】
〔内層用材料(A)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製、タフマーDF840)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(A)(ペレット)を調製した。
【0035】
〔内層用材料(B)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製のタフマーDF840とタフマーDF8200とを、タフマーDF840:タフマーDF8200=8:2の質量比率で混合したもの)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(B)(ペレット)を調製した。
【0036】
〔内層用材料(C)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製のタフマーDF840とタフマーDF8200とを、タフマーDF840:タフマーDF8200=6:4の質量比率で混合したもの)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(C)(ペレット)を調製した。
【0037】
〔内層用材料(D)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製のタフマーDF840とタフマーDF8200とを、タフマーDF840:タフマーDF8200=2:8の質量比率で混合したもの)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(D)(ペレット)を調製した。
【0038】
〔内層用材料(E)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製、タフマーDF8200)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(E)(ペレット)を調製した。
【0039】
〔内層用材料(F)〕
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500、変性量0.27質量%、融点165℃)100質量部と、エチレン-プロピレン共重合体(三井化学社製、タフマーXM-7070)15質量部を、二軸押出機によって200℃×1~5分間混合し、内層用材料(F)(ペレット)を調製した。
【0040】
〔外層用材料(a)~(e)〕
下記の表1に示す市販のポリアミド樹脂を、外層用材料(a)~(d)として準備した。また、下記の表1に示す外層用材料(e)であるポリフタルアミド(PPA)は、後記のようにして調製した。
【0041】
【0042】
[外層用材料(e)(PPA)の調製]
14.9molのテレフタル酸と、25molの1,6-ヘキサンジアミンと、10molのアジピン酸と、0.6molの安息香酸と、次亜リン酸ナトリウム一水和物、蒸留水を内容量13.6Lのオートクレーブに入れて窒素置換し、190℃から3時間かけて内部温度を250℃に昇温し、内部温度を3.0MPaまで昇圧した。
その状態のまま1時間反応を継続した後、オートクレーブ下部のスプレーノズルから大気放出して、低縮合物を取り出した。その後、前記低縮合物を粉砕機で粉砕し、100℃で48時間乾燥させた。低縮合物を窒素置換した。
そして、このようにして窒素置換した低縮合物を、オートクレーブ中で1時間30分かけて220℃まで昇温し、その状態のまま1時間固相重合反応をさせた後、室温に降温した。このようにして得られたプレポリマーを、スクリュー径30mm、スクリュー軸長に対する軸径の比(L/D)54の二軸押出機で、シリンダ温度330℃、スクリュー回転数170rpm、吐出量5kg/Hで溶融重合させて、融点320℃、アミン価110.0mmol/gのポリフタルアミド(PPA)を得た。
【0043】
≪実施例1~6、比較例1~4≫
後記の表2に示す組み合わせで、内層用材料、外層用材料を、共押出成形が可能な多層押出成形機(プラスチック工学研究所社製の多層押出成形機)を用いて、各外層用材料(各ポリアミド樹脂)の融点よりも20℃高い温度でチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)し、引取り速度3m/分で、積層チューブ(内層の厚み:0.6mm、外層の厚み:0.4mm、内径12mm)を作製した。
【0044】
このようにして得られた積層チューブを半割し、その積層断面を、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させた。
そして、前記画像をもとに、内層内に確認される任意の10個のエチレン-プロピレン共重合体の粒子(有機粒子)の粒径を測定し、その平均粒径(μm)を求めた。
また、前記画像において、内層と外層の界面における内層側に、前記有機粒子による多数の凸状隆起(界面からの高さが0.1μm以上の隆起)が認められるものに関しては、前記界面における直線距離での凸状隆起の個数(個/100μm)を数えた。
これらの結果を、後記の表2に併せて示した。
【0045】
そして、実施例および比較例の積層チューブに関し、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表2に併せて示した。
【0046】
<押出成形性>
前記のようにして共押出成形により作製した積層チューブの外観を目視観察し、下記の評価基準に従い評価した。
〈評価基準〉
○:内層と外層の層乱れがなく、規定肉厚のチューブを採取することができた。
×:内層と外層の層乱れが発生し、規定肉厚のチューブを採取することができなかった。
【0047】
<層間接着性>
前記のようにして共押出成形により作製した積層チューブを半割し、半割したチューブから幅10mmの短冊状の試験片を作製した。そして、ニッパーで試験片の端部を剥離し、剥離部を掴み、引張り試験機で25mm/minの速さで引張り、層間剥離を行った。このとき、剥離強度が安定した状態が30秒続いたときの接着力(N/cm)の平均値を測定し、「接着力(N)」として表記した。
また、前記のように表記した「接着力(N/cm)」の値において、実施例4の値を指数表記で100とし、実施例4の値を基準に、各「接着力(N/cm)」の値を指数に換算した。
そして、層間接着性の評価として、下記の評価基準に従い評価した。
〈評価基準〉
○:前記指数の値が70以上。
×:前記指数の値が70未満。
【0048】
【0049】
前記表2の結果から、実施例の積層チューブは、押出成形性に優れるとともに、良好な層間接着性を示す結果となった。
【0050】
これに対して、比較例1では、内層内の有機粒子(エチレン-プロピレン共重合体の粒子)の平均粒径が大きすぎ、応力集中部位となったと考えられ、その結果、所望の層間接着性が得られなかった。比較例2では、内層内の有機粒子(エチレン-プロピレン共重合体の粒子)の平均粒径が小さすぎ、十分なアンカー効果が得られなかったと考えられ、その結果、所望の層間接着性が得られなかった。比較例3では、外層用材料として使用されるポリアミド樹脂として、本発明の規定よりもアミン価の低いポリアミド樹脂を使用しており、それにより、化学結合の形成割合が低くとなったと考えられ、その結果、所望の層間接着性が得られなかった。比較例4では、外層用材料として使用されるポリアミド樹脂として、本発明の規定よりもアミン価の高いポリアミド樹脂を使用しており、それにより、押出成形機のヘッドの先端に溶融樹脂かす(目やに)がたまりやすくなったことから、押出成形で規定肉厚のチューブを採取することができず、チューブの外観異常もみられるようになった。
本発明の積層チューブは、ラジエーターホース、ヒーターホース、エアコンホース等や、電気自動車や燃料電池自動車用の電池パックの冷却用チューブとして好ましく用いることができる。また、前記積層チューブは、自動車用のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等にも用いることができる。