(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088008
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20230619BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
B29B17/00
B29B17/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202617
(22)【出願日】2021-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明した「樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法」に係る装置について、2020年12月16日開催の「SENTAN Maker’s Pitch ~ものづくり最前線の街豊田で創出するイノベーション~」で、基礎技術の紹介と共に開発を公開、2021年3月10日掲載開始の「ものづくり創造拠点SENTANホームページ」で公開、2021年3月11日と12日の2日間、スカイホール豊田(豊田市総合体育館)で開催された展示会「とよたビジネスフェア2021」(主催:豊田市、豊田商工会議所)のブース「豊田市役所ものづくり産業振興課/ものづくりミライ塾」に出展して公開
(71)【出願人】
【識別番号】510128199
【氏名又は名称】豊田市
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟津 雅耶
(72)【発明者】
【氏名】市川 暢啓
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智貴
(72)【発明者】
【氏名】川上 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸鹿島 裕也
(72)【発明者】
【氏名】濱本 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 博紀
(72)【発明者】
【氏名】浜田 敏明
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA28
4F401AC11
4F401AD20
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA49
4F401CA58
4F401CA60
4F401CB02
4F401CB16
4F401CB35
(57)【要約】
【課題】廃棄対象となった熱可塑性樹脂製品を、身近な生活の場であっても、より低コストで簡単に資源化することができる樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法を提供する。
【解決手段】資源化処理装置1は、廃棄処理対象のペットボトル90を、破砕により一片状の廃棄物片93に分断する破砕手段10と、廃棄物片93を収容可能な内部空間30Sの周囲を覆う側壁31を有する有底筒状に形成され、側壁31には、内部空間30Sとその外側を貫通する孔35が、溶融前状態にある廃棄物片93の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心AXを中心に自転可能に配設した加熱容器30と、加熱容器30を加熱するヒータ50と、加熱容器30を回転させるモータ60と、制御手段2を備え、制御手段2は、廃棄物片93を内部空間30Sに収容した状態の加熱容器30に対し、ヒータ50による温度制御と、モータ60による回転制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる廃棄物破砕手段と、
前記廃棄物片を収容可能な内部空間と、前記内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、前記側壁には、前記内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある前記廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段と、
前記廃棄物収容手段を加熱する加熱手段と、
回転力を発生し、伝達させて前記廃棄物収容手段を回転させる駆動手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記廃棄物片を前記内部空間に収容した状態の前記廃棄物収容手段に対し、前記加熱手段による温度制御と、前記駆動手段による回転制御を行うこと、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記加熱手段は、電磁誘導加熱を行うヒータであり、前記廃棄物収容手段は、前記ヒータで、電磁誘導によりジュール熱を発生可能な金属からなること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記廃棄物収容手段は、前記側壁に接続する底のうち、前記軸心を含む中央部で、前記駆動手段から回転力を出力する出力軸に連結され、
前記加熱手段は、前記底のうち、前記中央部外側にある外周部と対向した配置で設けられていること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記内部空間の外側として、前記廃棄物収容手段の周りにある外周空間部を介して、前記廃棄物収容手段を囲うカバー手段を備えていること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
当該樹脂製品廃棄物の資源化処理装置は、教具として用いられ、前記カバー手段は、外部から前記外周空間部を確認可能に透けた態様で、形成されていること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記樹脂製品廃棄物を投入する搬入口と、前記廃棄物収容手段の前記内部空間へと前記廃棄物片を排出する搬出口と、前記搬入口と前記搬出口とを繋ぐ移送経路とを有する廃棄物供給手段を備え、
前記廃棄物破砕手段は、前記移送経路に設けられていること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記廃棄物破砕手段は、第1の切断刃と第2の切断刃を有し、
前記第1の切断刃は、投入された筒形状の前記樹脂製品廃棄物をその長手方向、または前記長手方向と直交する方向に切断する共に、前記第2の切断刃は、前記第1の切断刃による切断後の前記樹脂製品廃棄物を一片状の廃棄物片に分断すること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記外周空間部の雰囲気を吸引して外部に排出する排気手段を備えていること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、
前記樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理装置。
【請求項10】
熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、
前記樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる第1工程と、
前記廃棄物片を収容可能な内部空間と、前記内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、前記側壁には、前記内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある前記廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段を用いて、
前記廃棄物片が前記廃棄物収容手段の前記内部空間に収容され、前記廃棄物片の入った前記廃棄物収容手段を加熱する第2工程と、
前記廃棄物収容手段を自転させ、前記第2工程の実行で、前記廃棄物片が溶融したスラリー状物質を、前記廃棄物収容手段の自転に伴う遠心力により、前記孔を通じて、前記廃棄物収容手段の周りにある外周空間部に排出して冷却することにより、前記熱可塑性樹脂材を再生する第3工程と、を有すること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、
前記樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、
を特徴とする樹脂製品廃棄物の資源化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄対象となった熱可塑性樹脂製品を資源に代える樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ジュース、水等の飲料水や、醤油、ドレッシング等の調味料をはじめ、日々の食生活に密接に関連した飲食材を収容する樹脂製容器として、いわゆるペットボトルは、広く使用されている。ペットボトルは、役割を終えた後、廃棄対象となる。近年、このようなペットボトルや、食材の販売に用いられた包装資材等、廃棄対象の樹脂製品は、地域の自治体等を通じて回収され、資源のリサイクル化に向けて処理されている。その一例とし、廃棄するペットボトルからフレーク状のペット材を再生させる技術が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、ペットボトルを破砕したボトル本体の破片、キャップやリングの破片、及びラベルの破片(破砕片)を、洗浄水を循環させた水槽内に落下させ、水槽の側壁上部にある開口部から水を排出することで、水に浮遊したキャップの破片とリングの破片を回収すると共に、水槽内で水を撹拌しながら回転する回転パドルを通じて、水中に浮き沈みするボトル本体の破片を排出して回収するペットボトル破砕洗浄分別装置である。
【0004】
特許文献1によると、再利用可能なペボトル本体の破片だけを、廃棄すべき不要なプラスチック材料と分別して取り出すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、飲料水を購入したコンビニエンスストアや自動販売機等には、ペットボトル専用の回収箱が設置されており、飲料水を飲み終えて空になったペットボトルは、この回収箱に一旦、投入されて回収される。回収箱内に収容された空のペットボトルは、専門業者により、トラックに載せられて所定の場所まで運搬される。このような空のペットボトルは、特に嵩張るため、運搬で実際に運びだすことできる空のペットボトル数量は限られてしまい、運搬コストが実質的に割高となり、問題となっていた。
【0007】
他方、特許文献1の技術は、飲料水を飲み終えて空になったペットボトルを、そのままペットボトル破砕洗浄分別装置に投入すると、再利用可能なボトル本体の破片を、それ以外の材質で廃棄処分する破片と分別して回収することはできる。しかしながら、特許文献1では、装置全体の構造が、大掛かりとなって複雑化すると共に、装置本体が大型化してしまう。そのため、このようなペットボトル破砕洗浄分別装置を、前述したように、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等、限られた狭いスペースに設置しようとした場合、スペース等の制約上、装置の設置が困難となる虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、廃棄対象となった熱可塑性樹脂製品を、身近な生活の場であっても、より低コストで簡単に資源化することができる樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置は、以下の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる廃棄物破砕手段と、前記廃棄物片を収容可能な内部空間と、前記内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、前記側壁には、前記内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある前記廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段と、前記廃棄物収容手段を加熱する加熱手段と、回転力を発生し、伝達させて前記廃棄物収容手段を回転させる駆動手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記廃棄物片を前記内部空間に収容した状態の前記廃棄物収容手段に対し、前記加熱手段による温度制御と、前記駆動手段による回転制御を行うこと、を特徴とする。
(2)(1)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記加熱手段は、電磁誘導加熱を行うヒータであり、前記廃棄物収容手段は、前記ヒータで、電磁誘導によりジュール熱を発生可能な金属からなること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記廃棄物収容手段は、前記側壁に接続する底のうち、前記軸心を含む中央部で、前記駆動手段から回転力を出力する出力軸に連結され、前記加熱手段は、前記底のうち、前記中央部外側にある外周部と対向した配置で設けられていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記内部空間の外側として、前記廃棄物収容手段の周りにある外周空間部を介して、前記廃棄物収容手段を囲うカバー手段を備えていること、を特徴とする。
(5)(4)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、当該樹脂製品廃棄物の資源化処理装置は、教具として用いられ、前記カバー手段は、外部から前記外周空間部を確認可能に透けた態様で、形成されていること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記樹脂製品廃棄物を投入する搬入口と、前記廃棄物収容手段の前記内部空間へと前記廃棄物片を排出する搬出口と、前記搬入口と前記搬出口とを繋ぐ移送経路とを有する廃棄物供給手段を備え、前記廃棄物破砕手段は、前記移送経路に設けられていること、を特徴とする。
(7)(6)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記廃棄物破砕手段は、第1の切断刃と第2の切断刃を有し、前記第1の切断刃は、投入された筒形状の前記樹脂製品廃棄物をその長手方向、または前記長手方向と直交する方向に切断する共に、前記第2の切断刃は、前記第1の切断刃による切断後の前記樹脂製品廃棄物を一片状の廃棄物片に分断すること、を特徴とする。
(8)(4)乃至(7)のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記外周空間部の雰囲気を吸引して外部に排出する排気手段を備えていること、を特徴とする。
(9)(1)乃至(8)のいずれか1つに記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、前記樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、を特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法は、以下の構成を有する。
(10)熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、前記樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる第1工程と、前記廃棄物片を収容可能な内部空間と、前記内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、前記側壁には、前記内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある前記廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段を用いて、前記廃棄物片が前記廃棄物収容手段の前記内部空間に収容され、前記廃棄物片の入った前記廃棄物収容手段を加熱する第2工程と、前記廃棄物収容手段を自転させ、前記第2工程の実行で、前記廃棄物片が溶融したスラリー状物質を、前記廃棄物収容手段の自転に伴う遠心力により、前記孔を通じて、前記廃棄物収容手段の周りにある外周空間部に排出して冷却することにより、前記熱可塑性樹脂材を再生する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
(11)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、前記樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法の作用・効果について説明する。
【0012】
(1)熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる廃棄物破砕手段と、廃棄物片を収容可能な内部空間と、内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、側壁には、内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段と、廃棄物収容手段を加熱する加熱手段と、回転力を発生し、伝達させて廃棄物収容手段を回転させる駆動手段と、制御手段と、を備え、制御手段は、廃棄物片を内部空間に収容した状態の廃棄物収容手段に対し、加熱手段による温度制御と、駆動手段による回転制御を行うこと、を特徴とする。
【0013】
この特徴により、例えば、飲料水を購入したコンビニエンスストアや自動販売機等の場所に、ペットボトル専用の回収箱に代えて、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置が設置されると、樹脂製品廃棄物は、その場所で、この資源化処理装置により、軽く・持ち運びに嵩張らない繊維状の態様となった、その素材である熱可塑性樹脂材に、簡単に再生して資源化することができる。そのため、例えば、従来、回収箱内に収容した空のペットボトル等の樹脂製品廃棄物を、処理場所までトラック等で運ぶ運搬コストに比べ、資源化した熱可塑性樹脂材を運ぶ運搬コストは、実質的に割安となり、コストダウンとなる。
【0014】
従って、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置によれば、廃棄対象となった熱可塑性樹脂製品を、身近な生活の場であっても、より低コストで簡単に資源化することができる、という優れた効果を奏する。
【0015】
(2)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、加熱手段は、電磁誘導加熱を行うヒータであり、廃棄物収容手段は、ヒータで、電磁誘導によりジュール熱を発生可能な金属からなること、を特徴とする。
【0016】
この特徴により、廃棄物収容手段の内部空間に収容された廃棄物片を、加熱ムラを抑えて、より均等に加熱することができるようになるため、廃棄物片全体に対し、完全に溶融しなかった非溶融物や、局部的に過度な加熱を受けて変質した変質物等による異物が残存することなく、均一な状態で溶融したスラリー状物質が得られる。
【0017】
(3)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、廃棄物収容手段は、側壁に接続する底のうち、軸心を含む中央部で、駆動手段から回転力を出力する出力軸に連結され、加熱手段は、底のうち、中央部外側にある外周部と対向した配置で設けられていること、を特徴とする。
【0018】
この特徴により、加熱手段の熱が、廃棄物片を収容した廃棄物収容手段の内部空間で対流し、内部空間に収容された廃棄物片全体に、均一な状態で伝熱し易く、廃棄物片は、均一な状態で溶融することができる。
【0019】
(4)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、内部空間の外側として、廃棄物収容手段の周りにある外周空間部を介して、廃棄物収容手段を囲うカバー手段を備えていること、を特徴とする。
【0020】
この特徴により、1以上の熱可塑性樹脂製品が、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置の廃棄物供給手段の搬入口から投入されると、投入した分の熱可塑性樹脂製品から再生した繊維状の熱可塑性樹脂材が、小さくまとまった状態で、外周空間部に集積される。このような状態の熱可塑性樹脂材は、追加工により、例えば、不織布、棒状または板状に形成される建材や生活用品等の素材になり得る。
【0021】
(5)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、当該樹脂製品廃棄物の資源化処理装置は、教具として用いられ、カバー手段は、外部から外周空間部を確認可能に透けた態様で、形成されていること、を特徴とする。
【0022】
この特徴により、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置が、例えば、幼稚園や保育園、小中学校等、学びの施設の場や、自治体の主催で行事を行う公共施設の場、啓蒙活動を行う企業内の場のほか、家庭内等に設置されると、主に小さな子供や、未来を背負う若者等は、カバー部材手段超しに外周空間部で、樹脂製品廃棄物から熱可塑性樹脂材に再生される様子を観察することができる。
【0023】
(6)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、樹脂製品廃棄物を投入する搬入口と、廃棄物収容手段の内部空間へと廃棄物片を排出する搬出口と、搬入口と搬出口とを繋ぐ移送経路とを有する廃棄物供給手段を備え、廃棄物破砕手段は、移送経路に設けられていること、を特徴とする。
【0024】
この特徴により、搬入口が、例えば、コンビニエンスストアや自動販売機等の場所に設置されている周知のペットボトル専用回収箱の投入口近傍の高さに配置されていれば、人が、これまでのペットボトル専用回収箱の投入口に投入する感覚で、樹脂製品廃棄物を搬入口に投入できる。そのため、樹脂製品廃棄物の投入者が、例えば、幼稚園児や小学生等、たとえ小さな子供であっても、樹脂製品廃棄物を搬入口に投入すれば、搬入口より低い位置で、再生された熱可塑性樹脂材を取り出すことができる。
【0025】
(7)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、廃棄物破砕手段は、第1の切断刃と第2の切断刃を有し、第1の切断刃は、投入された筒形状の樹脂製品廃棄物をその長手方向、または長手方向と直交する方向に切断する共に、第2の切断刃は、第1の切断刃による切断後の樹脂製品廃棄物を一片状の廃棄物片に分断すること、を特徴とする。
【0026】
この特徴により、例えば、飲料水500ml入り用の容積をなす周知のペットボトル等の樹脂製品廃棄物から廃棄物片を、最も大きい寸法部位で数mm程度と、細かな一片状に裁断することができる。そのため、廃棄物片を、廃棄物収容手段の内部空間に投入せず、細かな一片状のまま、資源として活用することもできる。
【0027】
(8)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、外周空間部の雰囲気を吸引して外部に排出する排気手段を備えていること、を特徴とする。
【0028】
この特徴により、廃棄物片の溶融時に生じる臭気や溶融ガス(煙)は、排気手段によって吸引して除去されるため、人は、安全衛生上、不快を感じず、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置を使用することができる。
【0029】
(9)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理装置において、樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、を特徴とする。
【0030】
この特徴により、日常生活を営む生活圏内で近年、無数に出回っている多くのPET製容器(ペットボトル)が、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置により、簡単にPET材に再生して資源化することができる。それ故に、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置や資源化処理方法は、世界的な課題となっている環境問題の解決に向けて寄与することができ、ひいては、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成の一助として、大いに貢献できる。
【0031】
(10)熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、該熱可塑性樹脂材を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、樹脂製品廃棄物を、破砕により一片状の廃棄物片に分断させる第1工程と、廃棄物片を収容可能な内部空間と、内部空間の周囲を覆う側壁を有する有底筒状に形成され、側壁には、内部空間とその外側を貫通する孔が、溶融前の状態にある廃棄物片の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心を中心に自転可能に配設された廃棄物収容手段を用いて、廃棄物片が廃棄物収容手段の内部空間に収容され、廃棄物片の入った廃棄物収容手段を加熱する第2工程と、廃棄物収容手段を自転させ、第2工程の実行で、廃棄物片が溶融したスラリー状物質を、廃棄物収容手段の自転に伴う遠心力により、孔を通じて、廃棄物収容手段の周りにある外周空間部に排出して冷却することにより、熱可塑性樹脂材を再生する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
【0032】
この特徴により、例えば、飲料水を購入したコンビニエンスストアや自動販売機等の場所に、ペットボトル専用の回収箱に代えて、本発明に係る樹脂製品廃棄物が設置されると、樹脂製品廃棄物は、その場所で、この資源化処理装置により、軽く・持ち運びに嵩張らない繊維状の態様となった、その素材である熱可塑性樹脂材に、簡単に再生して資源化することができる。そのため、例えば、従来、回収箱内に収容した空のペットボトル等の樹脂製品廃棄物を、処理する場所までトラック等で運ぶ運搬コストに比べ、資源化した熱可塑性樹脂材を運ぶ運搬コストは、実質的に割安となり、コストダウンとなる。
【0033】
従って、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法によれば、廃棄対象となった熱可塑性樹脂製品を、身近な生活の場であっても、より低コストで簡単に資源化することができる、という優れた効果を奏する。
【0034】
(11)に記載する樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製容器であること、を特徴とする。
【0035】
この特徴により、日常生活を営む生活圏内で近年、無数に出回っている多くのPET製容器(ペットボトル)が、本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置により、簡単にPET材に再生して資源化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態に係る資源化処理装置を正面側から概略的に示す説明図である。
【
図2】
図1中、破砕手段の第1切断部をA矢視で示す図である。
【
図3】
図1に示す資源化処理装置のうち、加熱容器とヒータを分解斜視で示す説明図である。
【
図4】
図3に示す加熱容器とヒータの断面図である。
【
図5】実施形態に係る資源化処理装置の機能を説明する図である。
【
図6】実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法により、樹脂製品廃棄物から熱可塑性樹脂材を再生するまでの一連の工程を示すフローチャート図である。
【
図7】実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法により、繊維状に再生されたPET材を示す説明図である。
【
図8】実施形態に係る樹脂製品廃棄物の効果を確認する検証実験に対し、条件と結果をまとめた表を示す図である。
【
図9】
図8に続き、検証実験の最適条件の下、投入するペットボトルの数量と、投入したペットボトルからPET材に再生されるまでの時間との関係をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る有機廃棄物の資源化処理装置、及びその資源化処理方法について、好ましい一の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
本発明に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置(以下、単に「資源化処理装置」と称する)は、熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となった樹脂製品廃棄物から、熱可塑性樹脂材を資源として再生させる装置である。資源化処理装置は、処理対象の樹脂材を、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)等、熱可塑性樹脂材とするが、本実施形態では、ポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)であり、樹脂製品廃棄物は、飲食用の内容物の一例として、水やジュース等の飲料水を収容していた空のPET製容器(ペットボトル)である。また、本発明に係る有機廃棄物の資源化処理方法は、本実施形態では、この資源化処理装置を用いて、廃棄処理対象となった空のペットボトルから、PET材を資源として再生させる場合を挙げて、説明する。
【0039】
はじめに、本発明に係る資源化処理装置について、説明する。
図1は、実施形態に係る資源化処理装置を正面側から概略的に示す説明図であり、
図2は、
図1中、破砕手段の第1切断部をA矢視で示す図である。
図3は、
図1に示す資源化処理装置のうち、加熱容器とヒータを分解斜視で示す説明図であり、
図4は、
図3に示す加熱容器とヒータの断面図である。
図6は、実施形態に係る資源化処理装置の機能を説明する図である。
【0040】
なお、説明の便宜上、資源化処理装置1において、
図1中、左右方向を幅方向Wとし、上下方向を高さ方向Hとし、
図2中、左右方向(
図1の紙面と垂直な方向)を奥行方向Dと定義する。
図3以降の各図についても、定義した方向に準ずる。また、
図5では、ペットボトル90において、容器開口側(
図5中、左下側)と底側(
図5中、右上側)を結ぶ方向を、長手方向Lとし、長手方向Lと直交する方向を、第1方向M、第2方向Nとして、ペットボトル90の各方向を定義する。
【0041】
図1~
図4に示すように、資源化処理装置1は、制御手段2と、破砕手段10(廃棄物破砕手段)と、供給手段20(廃棄物供給手段)と、加熱容器30(廃棄物収容手段)と、ヒータ50(加熱手段)と、モータ60(駆動手段)と、カバー部材70(カバー手段)と、排気手段80等を備えている。資源化処理装置1は、本体制御部3、本体処理内部4、及び本体処理外部5に大別される。
【0042】
資源化処理装置1は、環境問題への潜在意識の変革にあたり、資源のリサイクル化意識を育成して高めることを目的に、廃棄物の回収を積極的に行うための教具として開発された装置であり、資源化できる有効な廃棄物の回収率向上を図って、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成の一助として貢献できる装置である。資源化処理装置1は、主に小さな子供や、未来を背負う若者等を対象に、例えば、幼稚園や保育園、小中学校等、学びの施設の場や、自治体の主催で行事を行う公共施設の場、啓蒙活動を行う企業内の場のほか、家庭内等で、活用される教具である。なお、
図1には、資源化処理装置1は、その要部の構成だけを概略的に示した構成となっているが、着ぐるみのように、例えば、恐竜や怪獣、動物、人気のキャラクター等の外観であしらったボディー手段により、その内部に、
図1に示すような資源化処理装置1の要部を構成し、資源化処理装置1の要部全体が、外から見えないよう、ボディー手段で包み込まれていても良い。
【0043】
<本体処理外部5について>
はじめに、本体処理外部5について、
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。本体処理外部5には、破砕手段10と供給手段20が設けられている。破砕手段10は、ペットボトル90を破砕して、一片状の廃棄物片93に分断させるユニットである。供給手段20は、ペットボトル90を投入する搬入口21と、加熱容器30の内部空間30Sに向けて廃棄物片93を排出する搬出口22と、搬入口21と搬出口22とを繋ぐ移送経路23とを有するユニットである。破砕手段10は、供給手段20の移送経路23に設けられている。
【0044】
具体的に説明する。移送経路23は、筒状の外周壁で包囲された内部に、投入された略筒形状のペットボトル90を挿通可能に形成されている。供給手段20の搬出口22は、後述するように、本体処理内部4にある加熱容器30の開口部33に近接する位置に配置されている。移送経路23では、外周壁の一部が、開口した周壁開口部24となっている。周壁開口部24では、この切り刃と干渉しない周辺部分は、メッシュ状に形成されている。
【0045】
破砕手段10は、本実施形態では、第1切断部10Aと第2切断部10Bの2つに分かれている。第1切断部10Aは、
図1及び
図2に示すように、移送経路23のうち、搬入口21寄り部分に設けられている。第1切断部10Aは、搬入口21から投入されて搬出口22側に移動するペットボトル90の送出方向と直交する方向(ペットボトル90の進行を横切る方向)に沿った配置で設けれた第1回転軸12と、第1回転軸12を中心に回転可能な取り付けられた第1切断刃11(第1の切断刃)と、第1切断刃11を回転させるための動力源である第1切断駆動部13を有する。
【0046】
第1切断部10Aに有する第1切断刃11は、切り刃を外周に有する円盤状の切断刃であり、第1切断刃11の切り刃は、周壁開口部24に配置されている。第1切断駆動部13にあるモータで発生した動力が、第1切断刃11の回転力として伝達可能となっており、第1切断刃11は、周知技術による動力伝達機構を介して、第1切断駆動部13で生じた動力を受けて回転する。
【0047】
第1切断刃11は、本実施形態では、
図1に1つ設けられているが、例えば、2つの第1切断刃11が、一方向から視て、互いに90度に捩じった状態で、略+字状の配置で設けられていても良い。これにより、第1切断刃11は、搬入口21から投入されたペットボトル90を、概ね長手方向Lに沿って、例えば、1つの第1切断刃11で2分割、2つの第1切断刃11で4分割等、ボトル周方向で複数に分割することができ、ペットボトル90を複数分割で切断した分断後ペットボトル91(切断後の樹脂製品廃棄物)が得られる。
【0048】
このとき、ペットボトル90に付いているボトルキャップやキャップリングを、供給手段20の搬入口21に投入する前に、予めペットボトル90から切り落とした上で、第1切断刃11は、ペットボトル90を、複数(例えば、2~4)に分割して切断する。ペットボトル90の切断で生じた切粉92は、周壁開口部24を通じて、供給手段20の外に置いた受け部25に集積されるようになっている。
【0049】
第2切断部10Bは、
図1に示すように、移送経路23のうち、搬出口22寄りの部分に設けられている。第2切断部10Bは、互いに平行に配置された2つの第2回転軸16と、一対の第2切断刃15(第2の切断刃)と、第2切断刃15を回転させるための動力源である第2切断駆動部17を有する。第2切断刃15はそれぞれ、略円筒状に形成された串刃で、第2回転軸16を中心に回転可能に取り付けられている。第2切断部10Bでは、一方の第2回転軸16で回転する一方の第2切断刃15の串刃と、他方の第2回転軸16で回転する他方の第2切断刃15の串刃とが、双方に間隙を設けた状態で、互いに重なり合う態様に配置されている。
【0050】
第2切断駆動部17にあるモータで発生した動力が、第2切断刃15の回転力として伝達可能となっており、第2切断刃15は、周知技術による動力伝達機構を介して、第2切断駆動部17で生じた動力を受けて回転する。これにより、第2切断刃15は、ペットボトル90を、第1切断刃11で複数分割に切断した分断後ペットボトル91に対し、その概ね長手方向Lと直交する第1方向M、第2方向Nに沿って破砕することにより、最も大きい寸法部位で数mm程度と、細かな一片状の廃棄物片93に裁断することができる。
【0051】
<本体処理内部4について>
次に、本体処理内部4について、
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。本体処理内部4は、
図1及び
図3に示すように、加熱容器30と、ヒータ50と、モータ60と、カバー部材70等からなる。加熱容器30、ヒータ50、及びモータ60は、基台6上の天板7に立設された二段状の架台53に配設されている。加熱容器30は、架台53の上段部に配置され、モータ60は、架台53の下段部に固設されている。
【0052】
加熱容器30は、廃棄物片93を収容可能な内部空間30Sと、内部空間30Sの周囲を覆う側壁31と、側壁31に接続する底部34と、底部34と対向する天井部32と、モータ60の出力軸61と連結させる接続部36を有し、天井部32に開口部33を含んだ有底筒状に形成されている。加熱容器30の外観は、略円筒形状であるが、
図4に示すように、側壁31では、壁厚は、高さ方向Hの中央付近より上方の部分に比べ、中央付近から下端側で徐々に小さくなっている。すなわち、加熱容器30の内部空間30Sは、高さ方向Hの中央付近から下側に向けて拡がった形態になっている。
【0053】
底部34は、側壁31の壁厚より小さい薄板材で、熱伝導性を高めた状態で形成されており、ヒータ50により生じる熱が、底部34から加熱容器30全体に伝導し易くなっている。
図4に示すように、底部34のうち、孔35を有する容器周方向の部分は、側壁31の一部となっている。底部34には、内部空間30Sとその外側を貫通する孔35が、例えば、側壁31側に容器周方向に4等分配置で4つ、直径1~2mm程と、溶融前の状態にある廃棄物片93の通過を不可とした大きさで穿孔されている。なお、
図1、
図3、
図4、及び
図6には、4つの孔35が、側壁31に図示されているが、孔35の数や径、配置位置は、適宜変更可能である。
【0054】
モータ60は、回転力を出力軸61に発生し、伝達させて加熱容器30を回転させるインバータ制御付きの動力源で、出力軸61の回転を自在に制御可能となっている。加熱容器30は、接続部36でモータ60の出力軸61と螺合等で連結することにより、軸心AXを中心に自転可能となっている。また、加熱容器30は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン等、電磁誘導加熱(IH:induction heating)を行うヒータ50により、電磁誘導によりジュール熱を発生可能な金属からなる。
【0055】
ヒータ50は、前述したように、電磁誘導加熱によって加熱容器30を加熱するヒータである。ヒータ50は、内部空間30Sに収容された廃棄物片93を、その原料であるPET材(ポリエチレンテレフタラート)の融点260℃を超えて加熱し、溶融することができる温度まで、加熱容器30を加熱できる性能を有している。ヒータ50は、電磁誘導に必要なコイル部51、セラミック製のプレート部52を有する。
図3及び
図4に示すように、モータ60は、架台53の下段部に、出力軸61を上向きにして固設され、出力軸61は、架台53の上段部に延びている。架台53の上段部には、出力軸61を保持する軸受け62が、軸心AXに合わせて配設され、軸受け62の外周には、コイル部51が、架台53の上段部に埋設した形態で、装着されている。プレート部52は、コイル部51上に配設されている。
【0056】
すなわち、加熱容器30は、その底部34のうち、軸心AXを含む中央部34Aで、モータ60から回転力を出力する出力軸61に連結され、ヒータ50は、底部34のうち、中央部34Aの外側にある外周部34Bと対向した配置で設けられている。
【0057】
基台6上には、カバー部材70が、加熱容器30、ヒータ50、及びモータ60の周りにある外周空間部73Sを介して、これらの加熱容器30等を包囲する状態で、設けられている。カバー部材70は、例えば、無色透明のアクリル製板等、透明な樹脂製板により、外部から外周空間部73Sの様子を確認することができる部材である。カバー部材70は、側部カバー71と天井部カバー72を有している。側部カバー71は、矩形状に形成された天板7の外縁四辺に沿った口字状で、供給手段20の搬出口22を包囲して形成されており、四辺のうちの一辺上にある扉の部分で、開閉可能となっている。カバー部材70の内側には、排気手段80のホース81の先端部が、配置されている。天井部カバー72は、第2切断部10Bの周りで本体処理内部4を塞ぐよう、基台6の天板7と対向した配置で形成されている。
【0058】
<本体制御部3について>
次に、本体制御部3について、
図1を用いて説明する。本体制御部3には、制御手段2と排気手段80の吸引排気部82が、基台6の天板7の下に配設されている。排気手段80は、可撓性を有する変形自在なホース81と、外周空間部73Sの雰囲気に含むガス(廃棄物片93の溶融により生ずる溶融ガスや臭気等)を、ホース81を通じて吸引可能であると共に、フィルタにより、吸引したガスを清浄化して外部に排気可能な吸引排気部82を備える。
【0059】
制御手段2は、破砕手段10の第1切断駆動部13のモータ、第2切断駆動部17のモータと、ヒータ50と、モータ60と、排気手段80の吸引排気部82等と、それぞれ電気的に接続されている。制御手段2は、廃棄物片93を内部空間30Sに収容した状態の加熱容器30に対し、ヒータ50の温度制御と、モータ60による回転制御を行う。なお、図示されていないが、資源化処理装置1に、供給手段20に投入されたペットボトル90を検出可能な樹脂製品廃棄物センサが設けられ、制御手段2が、樹脂製品廃棄物センサに基づいて、破砕手段10、ヒータ50、モータ60、及び排気手段80を制御しても良い。これにより、ペットボトル90が供給手段20に投入されると、破砕手段10、ヒータ50、モータ60、及び排気手段80が、制御手段2によってオン状態となり、資源化処理装置1は、自動運転で、投入したペットボトル90を、廃棄物片93とスラリー状物質94を経て、繊維状のPET材95に再生することができるようになる。
【0060】
次に、本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法について、
図5及び
図6を用いて、説明する。本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法では、一例として、前述の資源化処理装置1が用いられ、樹脂製品廃棄物は、前述したように、飲食用の内容物の一例として、水やジュース等の飲料水を収容していて、その役割を終えて廃棄対象となった空のPET製容器(ペットボトル90)である。
【0061】
本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法は、廃棄処理の対象となった空のペットボトル90から、その原料であるPET材(熱可塑性樹脂材)を資源として再生するにあたり、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有してなる。
図5は、実施形態に係る資源化処理装置の機能を説明する図である。
【0062】
第1工程では、ペットボトル90を、
図5に示すように、破砕により一片状の廃棄物片93に分断させる。第2工程では、廃棄物片93が加熱容器30の内部空間30Sに収容され、廃棄物片93の入った加熱容器30を加熱する。第3工程では、加熱容器30を軸心AXで自転させ、第2工程の実行で、廃棄物片93が溶融したスラリー状物質94を、加熱容器30の自転に伴う遠心力により、加熱容器30の側壁31にある孔35を通じて、加熱容器30の周りにある外周空間部73Sに排出して空冷することにより、繊維状のPET材を再生する。
【0063】
具体的に説明する。
図6は、実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法により、樹脂製品廃棄物から熱可塑性樹脂材を再生するまでの一連の工程を示すフローチャート図である。
図7は、実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法により、繊維状に再生されたPET材を示す説明図である。
【0064】
第1工程の実施にあたり、
図5及び
図6に示すように、前もって、蓋であるキャップと、それと一対のキャップリングを取り外しておき、水等で洗浄された状態としたボトル本体(以下、単に「ペットボトル90」と称する)を、供給手段20の搬入口21に投入する(
図5中、第1段階P1)。これにより、ペットボトル90は、自由落下により、移送経路23を通じて、破砕手段10の第1切断部10A、第2切断部10Bへと送られる。
【0065】
次の第2段階P2では、ペットボトル90は、
図6に示すように、第1切断部10Aにより、長手方向Lに沿って2分割した分断後ペットボトル91に切断される。そして、次の第3段階P3では、分断後ペットボトル91は、第2切断部10Bにより、最も大きい寸法部位で数mm程度と、細かな一片状の廃棄物片93に裁断される。
【0066】
第2工程では、廃棄物片93が、供給手段20の搬出口22から落下して、開口部33を通じて加熱容器30の内部空間30Sに収容される。このとき、廃棄物片93が、内部空間30Sの容積に対し、満杯近くまで収容されてしまうと、加熱容器30の自転時に開口部33からこぼれ落ちてしまう虞があるため、廃棄物片93の収容量を、例えば、内部空間30Sの半分までにすると良い。あるいは、内部空間30Sに廃棄物片93を満杯程度に収容する場合には、廃棄物片93の収容後、加熱容器30の自転時に開口部33を閉塞する蓋(天井部32)を、加熱容器30に設けることが好ましい。
【0067】
第3段階P3に続く第4段階P4では、廃棄物片93の入った加熱容器30を、ヒータ50により、例えば、270℃と、260℃超の温度で加熱し、内部空間30Sにある廃棄物片93を溶融させて、
図5に示すように、スラリー状物質94を生成する。このとき、スラリー状物質94が、均一な粘性をなした状態になるまで、廃棄物片93を十分に加熱して溶融させておくことが重要である。特に、加熱容器30の内部空間30Sで生成されたスラリー状物質94全体の中で、スラリー状物質94の粘度が、部分的にバラツキを有した状態になっていると、後述する第3工程で、スラリー状物質94が、加熱容器30の孔35を通過するにあたり、粘度の違いによって、孔35内の流動性の差異が生じてしまう。その結果、再生されるPET材の性状に、悪影響が出てしまうからである。
【0068】
第3工程の実施にあたり、第4段階P4に続く第5段階P5では、ヒータ50により、加熱容器30を、第4段階P4から加熱し続けることで、スラリー状物質94を加熱した状態としながら、加熱容器30を、モータ60により、軸心AXを中心に所定の周速で回転(自転)させる。このとき、加熱容器30内にあるスラリー状物質94が、適度な粘性を均一に維持できるよう、制御手段2が、ヒータ50による加熱容器30への温度制御を行いながら、モータ60による加熱容器30の回転制御を行うことが好ましい。
【0069】
第5段階P5の実行により、加熱容器30内にあるスラリー状物質94は、加熱容器30の自転に伴う遠心力により、側壁31にある孔35を通じて、加熱容器30の周りにある外周空間部73Sに排出し、大気で空冷されることにより、硬化して繊維化する(第6段階P6)。かくして、ペットボトル90は、廃棄物片93を溶融したスラリー状物質94を経て、
図7に示すように、ちょうど綿菓子に似た繊維状のPET材95に再生される。
【0070】
次に、実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法の効果を確認する目的で、検証実験を行った。
【0071】
<実験方法>
実験では、資源化処理装置1を用いて、実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法により、洗浄された空のペットボトル90を裁断した廃棄物片93を、加熱容器30に相当する実験用加熱容器内に投入し、加熱して溶融したスラリー状物質94を生成した。スラリー状物質94の入った実験用加熱容器を自転させ、スラリー状物質94を、実験用加熱容器の側壁の孔を通じて、外周空間部73Sに放散し、空冷を経て、再生された繊維状のPET材について、繊維径の測定と共に、目視の観察による官能評価を行った。
【0072】
図8は、実施形態に係る樹脂製品廃棄物の効果を確認する検証実験に対し、条件と結果をまとめた表を示す図である。実験では、
図8に示すように、「〇」、「△」、「×」という3段階の基準で、結果を評価した。「〇」は、「繊維状のPET材に対し、色や縮れ等の美観良否項目と、太さ・長さ・だまの有無等といった形状良否項目との双方で、品質上、バラツキがなく安定しており、良好な状態でPET材が再生されている」との判断である。「△」は、「繊維状のPET材に対し、美観良否項目と形状良否項目の中で、一部でバラツキがなく安定しているものの、その残りがバラツキを有しており、品質上、やや不安定な状態でPET材が再生されている」との判断である。「×」は、「繊維状のPET材に対し、美観良否と形状良否の双方とも、品質上、バラツキを有しており、不安定な状態でPET材が再生されている」との判断である。
【0073】
<実験条件>
(1)実験用加熱容器の仕様;直径Φ106mm、高さ40mmの筒状容器(加熱容器30)
(2)実験用加熱容器の回転数(rpm);500、700、900、1000
(3)(2)の回転数に対する実験用加熱容器の周速(m/min);500(rpm)で166.4、700(rpm)で233.0、900(rpm)で299.6、1000(rpm)で332.8
(4)孔;直径Φ1.6mm、数4、実験用加熱容器の側壁のうち、底面から5mmの高さで、容器周方向に4等分した位置に配置
(5)ヒータ50による廃棄物片93の加熱温度;260℃超えるものの、270℃未満の範囲内にある低温度帯(
図8に示す表で、「低」と表示)、270~300℃近傍の範囲内にある中間温度帯(
図8に示す表で、「中」と表示)、300℃を超える高温度帯(
図8に示す表で、「高」と表示)
(6)1つの廃棄物片93の大きさ;最も大きい寸法部位で数mm程度の細片
(7)ペットボトル90の大きさ;飲料水500ml入りだった空のボトル
(8)ペットボトル90の投入数(本);1~3
【0074】
<実験結果>
図9は、
図8に続き、検証実験の最適条件の下、投入するペットボトルの数量と、投入したペットボトルからPET材に再生されるまでの時間との関係をグラフで示す図である。
図8に示すように、ヒータ50による廃棄物片93の加熱が低温度帯である場合、実験用加熱容器の回転が、500、700、900、及び1000と、何れの回転数(rpm)であっても、結果は「×」であった。また、廃棄物片93の加熱が中温度帯である場合、実験用加熱容器の回転が、900、1000(rpm)であれば、結果は「〇」であったが、700(rpm)で結果は「△」で、500(rpm)では、結果は「×」だった。また、廃棄物片93の加熱が高温度帯である場合、実験用加熱容器の回転が、700、900、1000(rpm)であれば、結果は「〇」であったが、500(rpm)では、結果は「×」だった。
【0075】
また、ペットボトル90の投入から繊維状のPET材に再生されるまでの繊維化時間は、ペットボトル90を1本投入した場合で3(min)、2本連続で投入した場合で5(min)、3本連続で投入した場合で8(min)であった。また、再生されたPET材の繊維径は、官能評価の結果に関わらず、概ね30μmであった。
【0076】
(考察)
実験結果より、廃棄物片93が中温度帯以上(270~300℃近傍)で加熱されていれば、実験用加熱容器内では、収容されている廃棄物片93全体が、十分に加熱されて溶融し、生成されたスラリー状物質が、全体的に均一な粘度をなし、低粘性の状態になっているものと、考えられる(温度設定条件)。また、実験用加熱容器の回転数が900(rpm)以上になれば、実験用加熱容器の周速は、概ね300(m/min)以上となり、実験用加熱容器内に収容されたスラリー状物質に、実験用加熱容器の自転時に伴い、より大きな遠心力が作用する(周速設定条件)。このような温度設定条件と周速設定条件を満たせば、上述したように、スラリー状物質は、全体的に均一な粘度で、かつ低粘性をなした状態となっているため、実験用加熱容器の孔を流動し易く、孔内で停滞することなく、実験用加熱容器内からスムーズに外周空間部73Sに放散される。
【0077】
そのため、外周空間部73Sに放散されたスラリー状物質は、大気によって冷やされ、美観良否項目と形状良否項目についても、安定した品質で、繊維状のPET材として再生されるものと推察される。また、前述のような温度設定条件と周速設定条件を満たせば、スラリー状物質は、全体的に均一な粘度で、かつ低粘性をなした状態で、実験用加熱容器の孔を流動し易くなっている。そのため、1本あたりのペットボトル90の繊維化時間は、ペットボトル90の投入数量に依らず、概ね2.5~3(min)であることが判る。
【0078】
その反対に、前述ように、廃棄物片93が中温度帯以上の温度条件と、実験用加熱容器の周速が概ね300(m/min)以上の周速設定条件に対し、何れの条件を満たさない場合、実験用加熱容器内に収容されたスラリー状物質は、全体的に均一な粘度で、かつ低粘性をなした状態となっていない。実験用加熱容器の周速が概ね300(m/min)の場合に比べ、スラリー状物質に作用する遠心力は、小さくなり、実験用加熱容器内から外周空間部73Sへと放散し難くなる。そのため、スラリー状物質の流動性は、通過する孔によって、差異を生じてしまい、外周空間部73Sに放散されたスラリー状物質は、空冷後、美観良否項目と形状良否項目に対し、バラツキを有した不安定な品質で、繊維状のPET材に再生されてしまうものと推察される。
【0079】
また、廃棄物片93が中温度帯以上の温度条件を満たしていても、実験用加熱容器の周速が概ね300(m/min)以上の周速条件を満たしていない場合には、実験用加熱容器内では、生成されたスラリー状物質は、全体的に均一な粘度をなし、低粘性の状態になっている。しかしながら、実験用加熱容器の回転数が700(rpm)の場合、スラリー状物質に作用する遠心力は、実験用加熱容器の周速が概ね300(m/min)の場合に比べ、小さくなる。
【0080】
そのため、実験用加熱容器内に収容されているスラリー状物質は、比較的均一な粘度で、かつ低粘性をなした状態となっているものの、実験用加熱容器の周速が概ね300(m/min)の場合に比べ、スラリー状物質は、実験用加熱容器内から外周空間部73Sに向けて放散し難くなる。その結果、スラリー状物質の流動性は、通過する孔によって、差異を生じてしまい、外周空間部73Sに放散されたスラリー状物質は、空冷後、美観良否項目と形状良否項目に対し、バラツキを有した不安定な品質で、繊維状のPET材に再生されてしまうものと推察される。
【0081】
次に、本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理装置1、及び樹脂製品廃棄物の資源化処理方法の作用・効果について説明する。
【0082】
本実施形態に係る資源化処理装置1は、熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となったペットボトル90から、PET材95を資源として再生させるペットボトル90の資源化処理装置において、ペットボトル90を、破砕により一片状の廃棄物片93に分断させる破砕手段10と、廃棄物片93を収容可能な内部空間30Sと、内部空間30Sの周囲を覆う側壁31を有する有底筒状に形成され、側壁31には、内部空間30Sとその外側を貫通する孔35が、溶融前の状態にある廃棄物片93の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心AXを中心に自転可能に配設された加熱容器30と、加熱容器30を加熱するヒータ50と、回転力を発生し、伝達させて加熱容器30を回転させるモータ60と、制御手段2と、を備え、制御手段2は、廃棄物片93を内部空間30Sに収容した状態の加熱容器30に対し、ヒータ50による温度制御と、モータ60による回転制御を行うこと、を特徴とする。
【0083】
また、本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法は、熱可塑性樹脂からなり、廃棄処理の対象となったペットボトル90から、PET材95を資源として再生させる樹脂製品廃棄物の資源化処理方法において、ペットボトル90を、破砕により一片状の廃棄物片93に分断させる第1工程と、廃棄物片93を収容可能な内部空間30Sと、内部空間30Sの周囲を覆う側壁31を有する有底筒状に形成され、側壁31には、内部空間30Sとその外側を貫通する孔35が、溶融前の状態にある廃棄物片93の通過を不可とした大きさで穿孔されていると共に、軸心AXを中心に自転可能に配設された加熱容器30を用いて、廃棄物片93が加熱容器30の内部空間30Sに収容され、廃棄物片93の入った加熱容器30を加熱する第2工程と、加熱容器30を自転させ、第2工程の実行で、廃棄物片93が溶融したスラリー状物質94を、加熱容器30の自転に伴う遠心力により、孔35を通じて、加熱容器30の周りにある外周空間部73Sに排出して冷却することにより、PET材95を再生する第3工程と、を有すること、を特徴とする。
【0084】
このような特徴により、例えば、飲料水を購入したコンビニエンスストアや自動販売機等の場所に、ペットボトル専用の回収箱に代えて、資源化処理装置1が設置されると、ペットボトル90は、その場所で、資源化処理装置1により、軽く・持ち運びに嵩張らない繊維状の態様となったPET材95に、簡単に再生させて資源化することができる。そのため、従来、回収箱内に収容した空のペットボトルを、処理する場所までトラックで運ぶ運搬コストに比べ、資源化したPET材95を運ぶ運搬コストは、実質的に割安となり、コストダウンとなる。しかも、特許文献1のような装置と比べても、資源化処理装置1は、簡単な構造で、小型化して構成することができる。特に、資源化処理装置1は、例えば、コンビニエンスストアや、スーパーマーケット等、公共性を有した施設をはじめ、様々な身近な生活の場に対し、限られた狭いスペースでも設置し易い。
【0085】
従って、本実施形態に係る資源化処理装置1によれば、廃棄対象となったペットボトル90を、身近な生活の場であっても、より低コストで簡単に資源化することができる、という優れた効果を奏する。また、本実施形態に係る樹脂製品廃棄物の資源化処理方法についても、本実施形態に係る資源化処理装置1と同様の効果を奏する。
【0086】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、ヒータ50は、電磁誘導加熱を行うヒータであり、加熱容器30は、ヒータ50で、電磁誘導によりジュール熱を発生可能な金属からなること、を特徴とする。
【0087】
この特徴により、加熱容器30の内部空間30Sに収容された廃棄物片93全体を、加熱ムラを抑えて、より均等に加熱することができるようになるため、廃棄物片93全体に対し、完全に溶融しなかった非溶融物や、局部的に過度な加熱を受けて変質した変質物等による異物が残存することなく、均一な状態で溶融したスラリー状物質94が得られる。
【0088】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、加熱容器30は、側壁31に接続する底部34のうち、軸心AXを含む中央部34Aで、モータ60から回転力を出力する出力軸61に連結され、ヒータ50は、底部34のうち、中央部34A外側にある外周部34Bと対向した配置で設けられていること、を特徴とする。
【0089】
この特徴により、ヒータ50からの熱が、廃棄物片93を収容した加熱容器30の内部空間30Sで対流し、内部空間30Sに収容された廃棄物片93全体に、均一な状態で伝熱し易く、廃棄物片93は、均一な状態で溶融することができる。
【0090】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、内部空間30Sの外側として、加熱容器30の周りにある外周空間部73Sを介して、加熱容器30を囲うカバー部材70を備えていること、を特徴とする。
【0091】
この特徴により、1以上のペットボトル90が、資源化処理装置1の供給手段20の搬入口21から投入されると、投入した分のペットボトル90から再生した繊維状のPET材95が、
図7に示すように、小さくまとまった状態で、外周空間部73Sに集積される。このような状態のPET材95は、追加工により、例えば、不織布、棒状または板状に形成される建材や生活用品等の素材になり得る。
【0092】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、当該樹脂製品廃棄物の資源化処理装置は、教具として用いられ、カバー部材70は、外部から外周空間部73Sを確認可能に透けた態様で、形成されていること、を特徴とする。
【0093】
この特徴により、資源化処理装置1が、例えば、幼稚園や保育園、小中学校等、学びの施設の場や、自治体の主催で行事を行う公共施設の場、啓蒙活動を行う企業内の場のほか、家庭内等に設置されると、主に小さな子供や、未来を背負う若者等は、カバー部材70超しに外周空間部73Sで、ペットボトル90からPET材95に再生される様子を観察することができる。それを機に、子供や若者等が、一例として、恐竜や人気のキャラクター等の外観であしらったボディー手段で包み込んだ資源化処理装置1を、遊び感覚で利用して、廃棄処理対象となった空のペットボトル90を、積極的に回収するようになると、資源のリサイクル化意識や環境問題への潜在意識が、必然的に子供や若者等に育成されて高められ、資源化処理装置1は、資源化できる有効な廃棄物の回収率の向上に寄与することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、ペットボトル90を投入する搬入口21と、加熱容器30の内部空間30Sへと廃棄物片93を排出する搬出口22と、搬入口21と搬出口22とを繋ぐ移送経路23とを有する供給手段20を備え、破砕手段10は、移送経路23に設けられていること、を特徴とする。
【0095】
この特徴により、
図1及び
図5に示すように、搬入口21が、コンビニエンスストアや自動販売機等の場所に設置されている周知のペットボトル専用回収箱の投入口近傍の高さに配置されていれば、人が、これまでのペットボトル専用回収箱の投入口に投入する感覚で、ペットボトル90を搬入口21に投入できる。また、ペットボトル90の投入者が、例えば、幼稚園児や小学生等、たとえ小さな子供であっても、ペットボトル90を搬入口21に投入すれば、搬入口21より低い位置で、再生された繊維状のPET材95を取り出すことができる。
【0096】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、破砕手段10は、第1切断刃11と第2切断刃15を有し、第1切断刃11は、投入された筒形状のペットボトル90をその長手方向Lに切断する共に、第2切断刃15は、第1切断刃11による分断後ペットボトル91を一片状の廃棄物片93に裁断すること、を特徴とする。
【0097】
この特徴により、廃棄物片93全体に対し、完全に溶融しなかった非溶融物や、局部的に過度な加熱を受けて変質した変質物等による異物が残存することなく、均一な状態で溶融したスラリー状物質94が得られ易くなる。また、例えば、飲料水500ml入り用の容積をなす周知のペットボトル90から廃棄物片93を、最も大きい寸法部位で数mm程度と、細かな一片状に裁断することができる。そのため、廃棄物片93を、加熱容器30の内部空間30Sに投入せず、細かな一片状のまま、資源として活用することができる。繊維状のPET材95と同様、資源化した廃棄物片93は、軽く・持ち運びに嵩張らない態様となっているため、資源化した廃棄物片93を運ぶ運搬コストは、従来、回収箱内に収容した空のペットボトルを、処理する場所までトラックで運ぶ運搬コストに比べ、実質的に割安となり、コストダウンとなる。
【0098】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1では、外周空間部73Sの雰囲気を吸引して外部に排出する排気手段80を備えていること、を特徴とする。
【0099】
この特徴により、廃棄物片93の溶融時に生じる臭気や溶融ガス(煙)は、排気手段80によって吸引して除去されるため、人は、安全衛生上、不快を感じず、資源化処理装置1を使用することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る資源化処理装置1、樹脂製品廃棄物の資源化処理方法では、樹脂製品廃棄物は、例えば、ジュースや水の飲料水等、飲食用内容物を収容していた空のポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)製のペットボトル90であること、を特徴とする。
【0101】
この特徴により、日常生活を営む生活圏内で近年、無数に出回っている多くのペットボトル90が、資源化処理装置1により、簡単にPET材95に再生して資源化することができる。それ故に、資源化処理装置1や樹脂製品廃棄物の資源化処理方法は、世界的な課題となっている環境問題の解決に向けて寄与することができ、ひいては、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成の一助として、大いに貢献できる。
【0102】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0103】
(1)例えば、実施形態では、廃棄対象となった空のペットボトル90から、資源として、繊維状のPET材95を再生する資源化処理装置1としたが、本発明に係る資源化処理装置は、廃棄物破砕手段により樹脂製品廃棄物を分断した一片状の廃棄物片を、資源として処理可能な構造で構成された装置であっても良い。
【0104】
(2)また、実施形態では、空のペットボトル90から繊維状のPET材95を再生する資源化処理装置1としたが、本実施形態に係る資源化処理装置1に基づいて、再生された繊維状のPET材95を、例えば、板状に圧縮した建材や、布状に圧縮した不織布、インゴットのように、塊状の素材等、一般的な材料の形態に加工しても良い。
【0105】
(3)また、実施形態では、樹脂製品廃棄物をペットボトル90とし、再生して資源化する熱可塑性樹脂材をPET材95としたが、資源化対象の樹脂材は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)等、熱可塑性樹脂材でも良い。また、樹脂製品廃棄物をペットボトル90としたが、樹脂製品廃棄物は、ペットボトル90以外にも、工業製品等を収容していた容器、店で購入した食料品等を詰めていた袋、スーパーマーケット等で販売されている肉や鮮魚等を包む樹脂製トレー、包装資材をはじめ、熱可塑性樹脂材からなる様々な樹脂製品を対象に、その製品の役割を終えて廃棄対象となった樹脂製品であれば良い。
【0106】
(4)また、本実施形態に係る資源化処理装置1に、加熱容器30内で溶融途上にある廃棄物片93や、完全に溶融したスラリー状物質94の温度を、非接触で計測する温度センサが装着されていると、繊維状のPET材95を生成するのに必要なスラリー状物質94の温度を、精緻に管理することができる。また、加熱容器30の回転を、非接触で計測する回転数センサが装着されていると、加熱容器30の回転により、スラリー状物質94を孔35から放散するにあたり、繊維状のPET材95を生成するのに最適な加熱容器30の回転数を、精緻に管理することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 資源化処理装置
2 制御手段
10 破砕手段(廃棄物破砕手段)
11 第1切断刃(第1の切断刃)
15 第2切断刃(第2の切断刃)
20 供給手段(廃棄物供給手段)
21 搬入口
22 搬出口
23 移送経路
30 加熱容器(廃棄物収容手段)
30S 内部空間
31 側壁
34 底
34A 中央部
34B 外周部
35 孔
50 ヒータ(加熱手段)
60 モータ(駆動手段)
61 出力軸
70 カバー部材(カバー手段)
73S 外周空間部
80 排気手段
90 ペットボトル(樹脂製品廃棄物)
91 分割後ボトル部分(切断後の樹脂製品廃棄物)
93 廃棄物片
94 スラリー状物質
95 PET材(熱可塑性樹脂材)
AX 軸心
L (樹脂製品廃棄物の)長手方向
M、N 長手方向と直交する方向