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  • 特開-多セル型電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088018
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】多セル型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/124 20210101AFI20230619BHJP
   H01M 50/112 20210101ALI20230619BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230619BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20230619BHJP
【FI】
H01M50/124
H01M50/112
H01M50/121
H01M50/119
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202631
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 恭章
(72)【発明者】
【氏名】森木 絢斗
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 靖典
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD09
5H011DD23
(57)【要約】
【課題】水素の透過を抑制するバリア層の破れが生じにくい多セル型電池を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係る多セル型電池1では、内部が隔壁6により複数のセル7に区画されている樹脂製の容器の各セル7に発電要素8が収納されているとともに、容器の外面における隔壁6の外側の位置に、隔壁6に沿った凸状のリブ12が形成されており、リブ12における隔壁6と交差する方向の断面形状は、外面3上での幅が外面から突出した頂部での幅より大きい形状であり、外面3上に、リブ12を覆ってアルミ箔10またはアルミラミネートフィルムが貼られている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が隔壁により複数のセルに区画されている樹脂製の容器の各セルに発電要素が収納されている多セル型電池であって、
前記容器の外面における前記隔壁の外側の位置に、前記隔壁に沿った凸状のリブが形成されており、
前記リブにおける前記隔壁と交差する方向の断面形状は、前記外面上での幅が前記外面から突出した頂部での幅より大きい形状であり、
前記外面上に、前記リブを覆ってアルミ箔またはアルミラミネートフィルムが貼られている多セル型電池。
【請求項2】
請求項1に記載の多セル型電池であって、前記リブは、
頂部の頂面と、
前記頂面の両サイドの斜面部と、
前記頂面と前記斜面部との境目の肩部とを有する形状のものである多セル型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、多セル型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるような多セル型電池が使用されている。同文献の電池では、発電要素が角形ケースにおけるそれぞれ独立した収容部に収容されている。角形ケース内の各収容部は隔壁で仕切られている。同文献の電池では、角形ケースの長側面をバリア層で覆っている。バリア層は、水素の透過を抑制するためのアルミ層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-227099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、アルミ層に破れが生じやすいという問題点があった。破れが生じやすい箇所は、内部に隔壁がある位置の外側に当たる箇所である。この箇所には、角形ケースの樹脂成形上の都合により、隔壁に沿った凸状のリブが形成されている。アルミ層はリブを覆って配置されている。リブ上に張られたアルミ層には、リブの形状に伴うストレスが掛かる。このためアルミ層がその箇所で破れやすいのである。
【0005】
本開示技術は、前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、水素の透過を抑制するバリア層の破れが生じにくい多セル型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における多セル型電池は、内部が隔壁により複数のセルに区画されている樹脂製の容器の各セルに発電要素が収納されている構造の電池であって、容器の外面における隔壁の外側の位置に、隔壁に沿った凸状のリブが形成されており、リブにおける隔壁と交差する方向の断面形状は、外面上での幅が外面から突出した頂部での幅より大きい形状であり、外面上に、リブを覆ってアルミ箔またはアルミラミネートフィルムが貼られているものである。
【0007】
上記態様における多セル型電池では、リブの断面形状が台形状である。このため、頂部での幅が外面上での幅より小さい形状である。この形状のため、容器の外面上に貼られたバリア層であるアルミ箔またはアルミラミネートフィルムにおいて、特定の箇所に集中してストレスが掛かることがない。このため、リブを覆う位置においてもバリア層の破れが生じにくい。
【0008】
上記態様に係る多セル型電池ではさらに、リブが、頂部の頂面と、頂面の両サイドの斜面部と、頂面と斜面部との境目の肩部とを有する形状であることが望ましい。このようになっていれば、複数の多セル型電池をスタック状態にしてスタック荷重Fを掛けた場合であっても、肩部同士の突き合わせ箇所での肩部の変形が少ない。このため、多セル型電池間の位置ずれが生じにくく、拘束力も十分に発揮される。
【発明の効果】
【0009】
本開示技術によれば、水素の透過を抑制するバリア層の破れが生じにくい多セル型電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る多セル型電池の正面図である。
図2図1の多セル型電池の内部構造を示す切開斜視図である。
図3図1中のA-A箇所の断面図である。
図4】実施の形態に係る多セル型電池の容器のうちリブの部分の水平断面図である。
図5】参考例における図4に相当する図である。
図6】スタック状態にしたときの位置ずれが小さいことを説明する断面図である。
図7】参考例の場合に位置ずれが生じやすいことを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示技術を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は、図1に示す多セル型電池1として本開示技術を具体化したものである。図1の多セル型電池1は、6個の発電要素を容器2に内蔵しておりそれらの直列接続体である1つの電池として機能するように構成したものである。図1には、多セル型電池1の外面のうち、長方形状の広い面積を持つ長側面3が見えている。多セル型電池1には、正負の対外端子4、5が設けられている。
【0012】
多セル型電池1の容器2の内部は、図2に示すように隔壁6により複数のセル7に区画されている。各セル7には発電要素8が収納されている。各発電要素8は、隔壁6の上部の位置に設けられた接続箇所9にて、直列に接続されている。容器2は樹脂の成形品である。図2に示される容器2は、説明のために手前側の長側面3の部分を切除した状態で示しているものである。
【0013】
図1に戻って、多セル型電池1の長側面3には、アルミ箔10が貼られている。アルミ箔10は、多セル型電池1の使用時に発生することがある水素等のガスを透過させないためのバリア層である。図1中の長側面3には、上記で説明したものの他に、蓋11が見えている。蓋11は、上記の接続箇所9とは別にそれより低い位置に設けられているセル間接続構造を封止する部材である。当該セル間接続構造は公知であり、本開示技術としての特徴部分ではないため説明を省略する。アルミ箔10は、長側面3のうち周辺部分および蓋11の上を除いた大部分の領域を覆っている。アルミ箔10は、後述するリブ12も覆っている。
【0014】
多セル型電池1における隔壁6が設けられている位置における水平断面構造を図3に示す。図3に示されるように、容器2の長側面3における、内部に隔壁6が存在している位置の外側に該当する位置には、凸状のリブ12が形成されている。リブ12は、図1に破線で示されるように、縦方向に形成されている。これは、隔壁6に沿ったものである。リブ12は、隔壁6を有する多セル構造の容器2の成形上の都合によりものである。図1におけるリブ12は、アルミ箔10に覆われているが、その凸状の形状により外部からでも認識可能である。
【0015】
図3中には、左右の発電要素8の正極集電部材13および負極集電部材14も見えている。正極集電部材13と負極集電部材14とは、前述の接続箇所9の位置、および蓋11の内側の位置で互いに接続されている。これにより多セル型電池1の全体として直列接続体をなしている。図1では発電要素8を破線で示しているが、これは参考上示しているものであり、外部から発電要素8が見える訳ではない。
【0016】
リブ12についてさらに説明する。図4に示すように、リブ12の幅は同図中の上下で異なっている。より詳しく言えば、長側面3上での幅W1が、頂部での幅W2より大きい。このようにリブ12の断面形状は台形状である。リブ12の表面は、頂部の頂面15と、頂面15の両サイドの斜面部16とにより構成されている。斜面部16は、同図中で斜め上向きの斜面である。頂面15と斜面部16との境目には肩部17がある。肩部17では、頂面15と斜面部16とが鈍角をなしている。肩部17は、微視的にはある程度の曲面部分を有していてもよい。図4では、発電要素8およびアルミ箔10を省略して示している。本形態ではリブ12の上記断面形状により、図3中に示したアルミ箔10において、特定の箇所に強いストレスが掛かるということがない。
【0017】
これに対して図5に示すように、リブ22の側壁部26が斜面状でなくほぼ垂直になっていると、アルミ箔10のうち特定の箇所に強いストレスが掛かる。強いストレスが掛かる場所は、頂面25と側壁部26との境目の肩部27の上の箇所である。アルミ箔10のこの箇所はほぼ直角に折り曲げられた形になるからである。図5のリブ22を有する多セル型電池ではこのため、アルミ箔10の破れがその箇所で生じやすい。一方、図4のリブ12を有する本形態の多セル型電池1では、肩部17の上の位置であってもアルミ箔10の破れが生じにくい。
【0018】
本形態でリブ12の断面形状を台形状とすることによるメリットは、上記のアルミ箔10の破れの抑制以外にもある。第1に、スタック状態での多セル型電池1同士の位置ずれを抑制できることが挙げられる。図5のような矩形リブ22を有する場合には位置ずれが生じやすいのに対して、台形状のリブ12とすることにより位置ずれが抑制されるのである。複数の多セル型電池1をスタック状態にすると、図6に示すように、多セル型電池1の長側面3同士が向き合うことになる。さらに、リブ12同士が突き合わせられる。このときのリブ12同士での位置のずれPが位置ずれである。矩形リブ22の場合にはずれPが大きいのに対して、リブ12が台形状である場合にはずれPが小さいのである。
【0019】
矩形リブ22の場合に位置ずれが生じる原因は、頂面25の引けにある。頂面25の引けとは、頂面25がわずかに凹面状となっていることによる凹みである(図5参照)。凹みの深さを引け量Dという。頂面25の引けは、樹脂成形の都合上不可避的にある程度生じるものである。矩形リブ22を有する多セル型電池をスタック状態にすると、図7に示すように、肩部27同士が突き合わせられる形となり、矩形リブ22の中央部分には隙間28ができる。隙間28は、引け量Dの約2倍である。このような状態であることから、多セル型電池にスタック荷重Fが掛かると、ずれPが生じやすい。肩部27同士が突き合い、かつ隙間28がある程度大きいことから、もともとのずれPの量が公差の範囲内であったとしても、スタック荷重Fに基づき横向きの力が働くためである。このためずれPが拡大され、目視でも把握できる程度に大きくなってしまうことがある。
【0020】
これに対して台形状のリブ12を有する本形態の場合には、まず引け量D自体が図5の場合よりも小さい。引け量Dは概ね、頂面の幅に比例する。図4における長側面3上での幅W1が矩形リブ22の幅と同じくらいだとすれば、頂部での幅W2と当然それより小さい。このため引け量Dが矩形リブ22の場合より小さいのである。図4の場合でも、肩部17同士の突き合わせ状態にはなっている。しかし、肩部17は鈍角であるためさほど急峻ではなく、また上記のように引け量Dも小さいため、スタック荷重Fが掛かっても、それに基づく左右方向の力はごくわずかである。このため、もともと公差の範囲内のずれPがあったとしても、拡大されることはない。このためずれPが小さいのである。
【0021】
上記のずれPの大小が生じる要因により、スタック荷重Fによる拘束力にも差が出る。矩形リブ22の場合には、突き合わされている肩部27が急峻であり引け量Dも大きいため、事実上、矩形リブ22同士の突き合わせが、両端の肩部27の箇所でのみ起こっているといえる。このため肩部27が撓んでしまい、拘束力が十分には発揮されないのである。
【0022】
これに対して、本形態の台形状のリブ12の場合には、肩部17自体の形状が緩やかであり、引け量Dも小さい。このため肩部17の撓みがほとんどなく、頂面15の全体同士が突き合わせられていると言ってよい状況にある。そして、肩部17と、スタック荷重Fの作用位置である頂面15の中央との間の距離が短い。このため十分な拘束力が発揮される。
【0023】
第2に、内圧に対する耐性が犠牲になっていないことが挙げられる。多セル型電池1の使用状況によりセル7の内圧が上昇する場合がある。そのような場合にはセル7が膨張しようとして、容器2を変形させようとする力が働くことになる。その力は長側面3の面と隔壁6との接続部位にクラックを生じさせるように作用する。容器2にリブ12もしくはリブ22が形成する目的として、上記のクラックの発生に対する抵抗力を付与することが挙げられる。クラックの発生に対する抵抗力は、リブ12、22の底部での幅に依存する。リブ12の長側面3上での幅W1は矩形リブ22の幅と同等程度あるので、矩形リブ22の場合と比較して、クラックの発生に対する抵抗力が劣っているということはない。
【0024】
第3に、台形状のリブ12の場合には、矩形リブ22の場合よりも断面積が小さい。このことは樹脂の必要量がその分少なくて済むことを示している。このため台形状のリブ12の場合には、矩形リブ22の場合と比較して、製品重量の軽量化、必要とする原料樹脂量の削減という点で優れている。
【0025】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、多セル型電池1における、隔壁6を有する容器2の外面上の、隔壁6の外側に相当する位置にリブ12を設けるとともに、リブ12の断面形状を台形状としている。これにより、容器2の外面側に設けたバリア層であるアルミ箔10の破れが生じにくい多セル型電池1が実現されている。
【0026】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、容器2の具体的な形状は任意である。容器2におけるセル7の数も任意である。容器2における発電要素8の接続形態は直列には限られない。
【0027】
容器2を構成する合成樹脂の種類には特段の限定はない。発電要素8の電池種は、充放電時に水素等のガスの発生があるものであれば何でもよい。主として挙げられるのはニッケル水素電池であるが、それに限定されるものではない。バリア層としてはアルミ箔10を挙げたが、アルミ層と樹脂フィルムを積層したものであるアルミラミネートフィルムであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 多セル型電池 10 アルミ箔
2 容器 12 リブ
3 長側面 15 頂面
6 隔壁 16 斜面部
7 セル 17 肩部
8 発電要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7