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特開2023-88047ワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物
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  • 特開-ワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088047
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】ワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/00 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
C11C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202671
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】荻 宏行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健司
(72)【発明者】
【氏名】土井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森重 貴裕
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BA30
4H059BA33
4H059CA51
4H059CA72
4H059CA73
4H059DA02
4H059DA04
(57)【要約】
【課題】ワックス自体が有する物性に大きな影響を与えることなく、熱を加えた際のシャープメルト性をワックスに付与することができるワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表されるジエステル化合物からなるワックス用シャープメルト性付与剤。式中、Rは炭素数11~21のアルキル基を示し、nは1~4の整数を示す。式(I):R-C(=O)O-[CHCHO]n-CHCHO-OC(=O)-R
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるジエステル化合物からなるワックス用シャープメルト性付与剤。
【化1】
[式(I)中、Rは炭素数11~21のアルキル基を示し、nは1~4の整数を示す。]
【請求項2】
請求項1に記載のワックス用シャープメルト性付与剤およびワックスを含有し、前記ワックス用シャープメルト性付与剤の含有量が、前記ワックス100質量部に対し、0.01~0.5質量部であることを特徴とするワックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスに少量添加することでシャープメルト性を付与することができるワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワックスとしては、一般的に、ろう状の固形エステルや、パラフィンワックスなどが挙げられる。前者は高級脂肪酸と高級アルコールからなる合成エステルワックスなどであり、後者は石油から精製して得られる。ワックスは滑性、耐水性、可塑性、光沢性などを示すことから、各種素材の機能性を向上させる目的で添加剤として様々な用途において使用されている。特に、ワックスを樹脂に添加して樹脂の硬さや、撥水性、表面平滑性などを制御する場合や、固体(ろう)状態のワックスを融点以上の温度に加熱して油状に相変化させて使用する場合などに、好適に用いられる。ワックスは、例えば、トナーや、金属成形加工用の離型剤、ゴムコーティング剤の潤滑性の向上剤などに使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トナー樹脂に対して、1~5質量部のパラフィンワックスとポリプロピレンワックスを併用することにより、トナーを熱定着する際に紙の定着ローラからの離型性に寄与し、長期耐刷による感光体ローラへのフィルミング(感光体表面に残存したトナーがクリーニングブレードで除去される際の摩擦熱により、シャープに融解することで、感光体表面に付着する現象)を低減することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、アルミニウム塗装板材の成形加工に際して、金型の離型剤として用いる、カルナバワックスや、パラフィンワックス等の固体ワックスの融解温度を60~80℃の温度域に制御することで、金型へのワックスの堆積や、型離れ不良等の問題を解決できることが提案されている。
さらに、特許文献3では、ゴム用コーティング剤の助剤として、融解温度が70~100℃の固体ワックスが用いられている。このワックスの融解温度範囲は、ゴム部品保管環境温度や滑り性の観点から選定されたものであり、室温でベトツキがなく、非粘着性の点ですぐれている。特許文献3には、このようなワックスは、ゴムとコーティング剤との密着性を向上させ、コーティング皮膜表面に滑り性、非粘着特性を有するワックス微小凹凸を形成せしめて、滑り性、非粘着性の課題を解決できることが提案されている。
【0005】
このように、固体状態のワックスが加熱されることで、当該ワックスが融解を経由し、液体状態に至る温度依存的な変化を引き起こして各種素材に作用し、素材の機能性が向上する。従来は特定物性のワックスを使用したり、種々のワックスを併用したりすることにより、素材の機能向上が図られてきた。
しかし、いずれの場合においても、機能性を付与する樹脂の物性や材質に応じて、最適な特性を有するワックスを見出すためには困難が伴う。また、種々のワックスを併用する場合、ワックス単体が有している融点、融解時の吸熱量などの物性に影響を与え、最適なワックス特性を得ることは困難な場合があった。そのため、ワックスに少量添加するだけで、最適なワックス特性を得ることが可能な添加剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-36850
【特許文献2】WO2013/031344
【特許文献3】特開2005-306963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ワックス自体が有する物性に大きな影響を与えることなく、熱を加えた際のシャープメルト性をワックスに付与することができるワックス用シャープメルト性付与剤およびこれを含有するワックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ワックス100質量部に対し、特定のジエステル化合物を0.5質量部以下の割合で添加することにより、ワックスの融解挙動をシャープメルトにできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記式(I)で表されるジエステル化合物からなるワックス用シャープメルト性付与剤である。
【0009】
【化1】
【0010】
[式(I)中、Rは炭素数11~21のアルキル基を示し、nは1~4の整数を示す。]
【0011】
また本発明は、本発明のワックス用シャープメルト性付与剤およびワックスを含有し、前記ワックス用シャープメルト性付与剤の含有量が、前記ワックス100質量部に対し、0.01~0.5質量部であることを特徴とするワックス組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワックス用シャープメルト性付与剤によれば、ワックスにワックス用シャープメルト性付与剤を少量添加することで、ワックスにシャープメルト性(クイックな融解特性)を付与することができ、高いワックス熱応答特性を有するワックス組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、融解ピークの融解開始温度の計測方法を測定する方法を説明するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のワックス用シャープメルト性付与剤、ワックスおよびそれらからなるワックス組成物について説明する。
尚、ワックスの融解挙動、融解熱、融解熱量などに可能な限り影響を及ぼさず、ワックスの融解開始温度を融解温度(示差走査熱量分析における融解ピークトップ温度)に近づけ、吸熱ピークの半値幅を狭くすることをシャープメルト性と定義する。
また、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は、「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上5以下を表す。
【0015】
〔ワックス用シャープメルト性付与剤〕
本発明で用いられるワックス用シャープメルト性付与剤は、下記式(I)で表されるジエステル化合物であり、二価アルコールの両末端に、Rとして示される炭素数11~21のアルキル基を有したジエステル化合物である。炭素数11~21のアルキル基は、直鎖アルキル基が好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
[式(I)中、Rは炭素数11~21のアルキル基を示し、nは1~4の整数を示す。]
【0018】
式(I)で表されるジエステル化合物は、例えば、二価アルコールに相当する部分の原料として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびペンタエチレングリコールから選ばれる少なくとも一つの二価アルコールを用い、末端アルキル基Rに相当する部分の原料として、炭素数11~21のアルキル基を有する一価の飽和脂肪酸を用い、エステル化反応を行うことによって得られる。エステル化反応に用いられる一価の飽和脂肪酸としては、炭素数11~21のアルキル基を有する一価の直鎖飽和脂肪酸が好適に用いられる。
【0019】
アルキル基Rの炭素数が小さすぎると、ワックスが融解する際のシャープメルト性が得られ難くなることがある。またアルキル基Rの炭素数が大きすぎると、工業的に供給安定性に問題が生じることがあるだけでなく、シャープメルト性が得られにくくなる。アルキル基Rの炭素数は11~21であり、好ましくは13~21であり、より好ましくは16~21であり、よりさらに好ましくは17~21である。
一価の直鎖飽和脂肪酸として、具体的には、ベヘニン酸(Rの炭素数21)、ステアリン酸(Rの炭素数17)、パルミチン酸(Rの炭素数15)、ミリスチン酸(Rの炭素数13)、ラウリン酸(Rの炭素数11)等が挙げられる。
【0020】
これらを用いてエステル化反応を行う方法には様々あるが、無触媒にて、または塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂のようなプロトン酸触媒やルイス酸触媒を用いて、一般的なエステル化反応の手順に従って行なうことができる。さらに、適宜アルカリ性水溶液による脱酸工程や、吸着処理などの精製処理が行われてもよい。
【0021】
このような方法で合成された式(I)のジエステル化合物は、酸価が1.0mgKOH/g以下、水酸基価が5mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましくは、酸価が0. 3mgKOH/g以下、水酸基価が3mgKOH/g以下である。
なお、酸価はJOCS(日本油化学会)2.3.1-96に準拠して、水酸基価はJOCS(日本油化学会)2.3.6.2-96に準拠して、それぞれ測定することができる。
【0022】
〔ワックス〕
本発明で用いられるワックスは、透明融点50~100℃で融解するろう状の化合物であり、例えば、パラフィン、脂肪酸エステル、アミドエステル等のワックスが挙げられる。透明融点については、好ましくは70~90℃である。ワックスは、好ましくは脂肪酸エステルである。
なお、透明融点はJOCS(日本油化学会)2. 2. 4. 1またはJIS K-0064(日本工業規格)に準拠して測定することができる。
【0023】
本発明においてワックスとして用いられる脂肪酸エステルは、脂肪酸とアルコールとのエステルであれば特に制限はないが、脂肪酸として一価の直鎖飽和脂肪酸を用いた脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸の炭素数は、16~22が好ましく、18~22がより好ましい。これらの中でも、ステアリン酸(炭素数18)、ベヘニン酸(炭素数22)が特に好ましく、ベヘニン酸がさらに好ましい。
アルコールとしては、一~六価の飽和脂肪族アルコールが好ましく、一~四価のものがより好ましい。それらの中でも四価の飽和脂肪族アルコール(炭素数5~10)、一価の飽和脂肪族アルコール(炭素数18~22)、二価の飽和脂肪族アルコール(炭素数2~4)が特に好ましく、ジエチレングリコールがさらに好ましい。
【0024】
〔ワックス組成物〕
本発明のワックス組成物は、上記ワックス用シャープメルト性付与剤および上記ワックスを含有する。ワックス用シャープメルト性付与剤の含有量は、ワックス100質量部に対し、0.01~0.5質量部であり、好ましくは0.01~0.1質量部である。
ワックス用シャープメルト性付与剤の含有量が0.01質量部未満および0.5質量部超いずれの場合も、ワックスにシャープメルト性を十分に付与することが難しい。
ワックスに適量のシャープメルト性付与剤を添加することによって、ワックスの加熱時の軟化が抑制され、融点に到達する直前までワックスの固形状態が維持され、かつ、融点に到達した時点でワックスが迅速に融解する。したがって、本発明のワックス組成物は、ワックス単体と比べて、高いワックス熱応答性を有する。
【実施例0025】
以下にワックス及び本発明のワックス用シャープメルト性付与剤の合成例と、ワックス組成物の調製例を示す。なお、本発明は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、「%」は質量基準を意味する。
【0026】
<合成例:ワックスの合成>
[ワックス(A1)の合成]
温度計、窒素導入管、攪拌羽および冷却管を取り付けた3Lの4つ口フラスコに、ペンタエリスリトールを200g(1.5mol)、ベヘニン酸を2083g(6.1mol)加え、窒素気流下、250℃で反応させた。得られたエステル粗生成物は2180gであり、酸価が7.1mgKOH/gであった。
本エステル粗生成物にトルエン436gおよび2-プロパノール230gを入れ、エステル粗生成物の残存酸価の2.0倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した。その後、30分間静置して水層部(下層)を分離・除去した。排水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層の溶剤を180℃、1kPaの減圧条件下で留去し、濾過を行い、ワックス(A1)を2058g得た。得られたワックス(A1)の酸価、水酸基価および透明融点の値を表1に示す。
【0027】
[ワックス(A2)~(A3)の合成]
表1に示す原料アルコールと原料直鎖飽和脂肪酸を用い、ワックス(A1)の合成法に準じてワックス(A2)~(A3)の合成を行った。各ワックスの酸価、水酸基価および透明融点の値を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
<合成例:ワックス用シャープメルト性付与剤の合成>
式(I)で表されるジエステル化合物の合成は、以下のように実施した。
[ワックス用シャープメルト性付与剤(B1)の合成]
温度計、窒素導入管、攪拌羽および冷却管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、ジエチレングリコールを120g(1.1mol)、ステアリン酸を672g(2.4mol)加え、窒素気流下、220℃で反応させた。得られたエステル粗生成物は752gであり、酸価が7.3mgKOH/gであった。
本エステル粗生成物にトルエン150gおよび2-プロパノール109gを入れ、エステル粗生成物の残存酸価の2.0倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した。その後、30分間静置して水層部(下層)を分離・除去した。排水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層の溶剤を180℃、1kPaの減圧条件下で留去し、濾過を行い、ワックス用シャープメルト性付与剤(B1)を721g得た。得られたワックス用シャープメルト性付与剤(B1)の酸価、水酸基価および透明融点の値を表2に示す。
【0030】
[ワックス用シャープメルト性付与剤(B2)~(B7)の合成]
表2に示す原料アルコールと原料直鎖飽和脂肪酸とを用い、ワックス用シャープメルト性付与剤(B1)の合成法に準じてワックス用シャープメルト性付与剤(B2)~(B7)の合成を行った。なお、ワックス用シャープメルト性付与剤(B1)と同様に、ワックス用シャープメルト性付与剤(B2)~(B7)の酸価、水酸基価および透明融点の値をそれぞれ表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
〔測定方法〕
本発明において用いた各種評価法を、次に示す。
(1)酸価:
ワックスおよびワックス用シャープメルト性付与剤の酸化は、JOCS(日本油化学会)2.3.1-96に準拠し測定した。
(2)水酸基価:
ワックスおよびワックス用シャープメルト性付与剤の水酸基価は、JOCS(日本油化学会)2.3.6.2-96に準拠し測定した。
(3)透明融点:
ワックスおよびワックス用シャープメルト性付与剤の透明融点は、JOCS(日本油化学会)2.4.4.1に準拠し測定した。
【0033】
(4)シャープメルト性付与率:
示差走査熱量測定専用の密閉式アルミパンにサンプル10mgを採取し、示差走査熱量測定(日立製:DSC7000X)で融解ピークの融解開始温度を計測した。また、測定条件は以下に記載したとおりである。
・測定モード:昇温降温測定
・温度条件:30℃+(10℃/min)⇒180℃-(10℃/min)⇒0℃+(10℃/min)⇒180℃
・融解ピークの融解開始温度の計測法:
示差走査熱量測定の模式的なグラフを図1に示す。本明細書における融解ピークの融解開始温度とは、示差走査熱量測定の2度目の昇温中に出現する最初の吸熱ピーク曲線において、該曲線の立上がりからピークに至る間の曲線における傾きが最大となる接線(一点鎖線) と、ベースライン(一点鎖線) との交点に対応する温度を意味する。
【0034】
尚、シャープメルト性付与率(R)は、「ワックス用シャープメルト性付与剤を添加する前のワックスの融解ピークの融解開始温度(℃)をx」とし、「ワックス用シャープメルト性付与剤添加後のワックスの融解ピークの融解開始温度(℃)をy」としたとき、以下の計算式(1)で求めることができる。
シャープメルト性付与率(R)=(y-x)/x×100 ・・・(1)
シャープメルト性付与率より、シャープメルト性付与効果を評価した。シャープメルト性付与効果の評価基準は、3.0%以上を◎、1.0%以上3.0%未満を○、1.0%未満を×とした。
【0035】
(5)昇温時の吸熱ピークの半値幅の測定方法
示差走査熱量測定専用の密閉式アルミパンにサンプル10mgを採取し、示差走査熱量測定用の熱分析装置(日立製:DSC7000X)にセットして、上記(4)のシャープメルト性付与率と同条件の温度変化プログラムで、吸熱ピークを測定した。得られたピークについて、吸熱ピークトップ温度から吸熱曲線のベースラインへの垂線の1/2の高さでの吸熱ピークの幅を半値幅としてワックス組成物のシャープメルト性を評価した。
シャープメルト性の評価基準は、2.0℃未満を◎、2.0℃以上4.0℃未満を○、4.0℃以上を×とした
【0036】
<ワックス組成物の調製および評価>
[実施例1]
攪拌羽、窒素導入管を取り付けた0.5L容器のセパラブルフラスコに、ワックス(A1)を200g、ワックス用シャープメルト性付与剤(B1)を1g加え、窒素気流下、150℃で1時間攪拌した。その後、冷却、固化、粉砕を経て、ワックス組成物を得た。
得られたワックス組成物のシャープメルト性付与効果を、示差走査熱量測定(日立製:DSC7000X)により評価した。
【0037】
[実施例2~4、比較例1~4]
表1に示すワックス及び、表2に示すワックス用シャープメルト性付与剤を用いて、実施例1と同様にしてワックス組成物を得た。得られたワックス組成物のシャープメルト性付与効果を、示差走査熱量測定(日立製:DSC7000X)により評価した。
【0038】
【表3】
【0039】
表3の結果より、実施例1~4のワックス組成物は、ワックス用シャープメルト性付与剤を所定量含有することによって、少なくとも1.0%のシャープメルト性付与率を示した。これにより、ワックスにシャープメルト性を付与し、融解ピークの融解開始温度を上げることで、離型性や、コーティング被膜表面の滑り性等を制御することができ、ワックスとしての機能を高める効果が得られる。
【0040】
実施例1~4に対し、比較例1~4では本発明のワックス用シャープメルト性付与剤を添加しないため、ワックスのシャープメルト性付与率は低い結果となった。
比較例1においてはワックス用シャープメルト性付与剤(B4)の式(I)における末端アルキル基Rの炭素数が7であり、本発明における下限値である炭素数11よりも小さいので、添加効果が得られなかった。
比較例2においてはワックス用シャープメルト性付与剤(B5)の式(I)における末端アルキル基Rの炭素数が23であり、本発明における上限値である炭素数21よりも大きいので、添加効果が得られなかった。
比較例3においてはワックス用シャープメルト性付与剤(B6)の式(I)における繰り返し単位nが7であり、本発明における上限値である4よりも大きいので、添加効果が得られなかった。
比較例4においてはワックス用シャープメルト性付与剤(B7)の式(I)における末端アルキル基Rの炭素数が27であり、本発明における上限値である炭素数21よりも大きく、且つ、透明融点がワックス(A3)よりも高いので、添加効果が得られなかった。
図1