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特開2023-88051カッタビットおよびカッタビットの製造方法
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  • 特開-カッタビットおよびカッタビットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088051
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】カッタビットおよびカッタビットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20230619BHJP
   E21B 10/46 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E21D9/087 C
E21B10/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202678
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594086152
【氏名又は名称】株式会社丸和技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】嘉屋 文康
【テーマコード(参考)】
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D054BA04
2D054BB05
2D129AB05
2D129BA19
2D129GA09
2D129GB01
(57)【要約】
【課題】比較的簡易に製造可能で、かつ、耐摩耗性を有したカッタビットと、このカッタビットの製造方法を提案する。
【解決手段】掘削機に固定される母材2と、母材2に固定された刃材3とを備えており、母材2の外面に沿って複数の硬質チップ4,4,…が埋め込まれているカッタビット1。
鋳型の内面に沿って複数の硬質チップ4,4,…を配置する工程と、鋳型に溶かした金属を注入して母材2を形成する工程と、母材2の先端に刃材3を固定する工程とを備えるカッタビット1の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機に固定される母材と、
前記母材に固定された刃材と、を備えるカッタビットであって、
前記母材の外面に沿って複数の硬質チップが埋め込まれていることを特徴とする、カッタビット。
【請求項2】
前記各硬質チップに貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカッタビット。
【請求項3】
同一の棒材が複数の前記硬質チップの前記貫通孔に挿通されていることで複数の前記硬質チップが列状に並設されていることを特徴とする、請求項2に記載のカッタビット。
【請求項4】
並設された複数の前記硬質チップの列が、複数行並設されていることを特徴とする、請求項3に記載のカッタビット。
【請求項5】
前記貫通孔に係止されたアンカーにより、前記硬質チップが所定の位置に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のカッタビット。
【請求項6】
前記硬質チップがサーメットチップであることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のカッタビット。
【請求項7】
鋳型の内面に沿って複数の硬質チップを配置する工程と、
前記鋳型に溶かした金属を注入して母材を形成する工程と、
前記母材の先端に刃材を固定する工程と、を備えているカッタビットの製造方法。
【請求項8】
前記各硬質チップに貫通孔が形成されており、
前記貫通孔に挿通した取付部材を利用して、複数の前記硬質チップを配列することを特徴とする、請求項7に記載のカッタビットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中掘削機に用いられるカッタビットおよびカッタビットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法、推進工法、TBM等によるトンネル工事は、カッタビットが設置されたトンネル掘削機により行う。カッタビットは、刃材としての超硬チップを決められた角度を保持しつつ、脱落しない強度と耐摩耗性を有している必要がある。一方、刃材を保持する母材は、地山の切削に伴い磨耗することや、掘削機から脱落する場合がある。カッタビットが脱落した場合や、カッタビットが磨耗した場合には、掘削作業を中断してカッタビットを交換あるいは取り付ける必要があるが、掘削作業を中断すると、工期短縮化の妨げになる。そのため、耐摩耗性を向上させてカッタビットの長寿命化を図る場合がある。
例えば、特許文献1には、超硬合金からなる硬性チップと硬性チップよりも軟性な超硬合金からなる軟性チップとを相互に固着してなるカッタビットが開示されている。特許文献1のカッタビットは、軟性チップが地盤に当接して地盤を掘削することで、硬性チップに加わる衝撃を軟性チップが緩衝するとともに、硬性チップによって高い耐摩耗性を確保するものである。しかしながら、特許文献1のカッタビットのように、強度の高い材料でカッタビットを構成すると、カッタビットのコストが高くなる。
また、特許文献2には、刃材を固定する母材の外面に肉盛り溶接が施されたカッタビットが開示されている。特許文献2のカッタビットによれば、肉盛り溶接により母材の摩耗が抑制されて、カッタビットの摩耗や剥落のリスクの低減化を図ることができる。しかしながら、母材の外面に肉盛り溶接を行う作業に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-241681号公報
【特許文献2】特開2013-087426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、比較的簡易に製造可能で、かつ、耐摩耗性を有したカッタビットと、このカッタビットの製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明のカッタビットは、掘削機に固定される母材と、前記母材に固定された刃材とを備えており、前記母材の外面に沿って複数の硬質チップが埋め込まれている。
このカッタビットの製造方法は、鋳型の内面に沿って複数の硬質チップを配置する工程と、前記鋳型に溶かした金属を注入して母材を形成する工程と、前記母材の先端に刃材を固定する工程とを備えている。
かかるカッタビットは、硬質チップにより母材の摩耗が抑制されるため、長寿命化を図ることができる。
また、硬質チップは、母材を形成する(鋳型に溶かした金属を注入する)際に埋め込まれるため、製造時の手間も少ない。
【0006】
なお、前記各硬質チップに貫通孔が形成されているのが望ましい。硬質チップに貫通孔が形成されていれば、この貫通孔に挿通した取付部材(例えば、棒材やアンカー)を利用して、複数の前記硬質チップを配列することでき、鋳型に溶かした金属(鋳ぐるみ材)を注入する際に、硬質チップが移動して偏って配置されることを防止できる。なお、取付部材には、母材を構成する鋳ぐるみ材(例えばSS材)よりも融点が高いモリブデンやタングステン等の材料を使用するのが望ましい。また、取付部材は、ステンレスなどの材料でも対応可能である。
また、同一の棒材を複数の前記貫通孔に挿通することで複数の前記硬質チップを列状に並設できる。さらに、並設された複数の前記硬質チップの列を複数行並設することで、硬質チップを面状に配置することができる。
なお、前記硬質チップが切削工具等で使用されたサーメットチップであれば、材料コストの低減化が可能となり、また、廃材の有効利用が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカッタビットおよびカッタビットの製造方法によれば、比較的簡易かつ安価に製造可能で、なおかつ、耐摩耗性を有していて長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るカッタビットを示す断面図である。
図2】硬質チップの例を示す斜視図である。
図3】カッタビットの模式的に示す分解斜視図である。
図4】カッタビットの製造方法を示すフローチャートである。
図5】(a)は鋳型形成工程を示す断面図、(b)はチップ配置工程を示す断面図、(c)は硬質チップの配置状況を示す平面図である。
図6】(a)は他の形態に係るカッタビットを示す断面図、(b)はその他の形態に係るカッタビットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、シールドマシンのカッタヘッドに固定されて地山の切削を行うカッタビット1について説明する。図1にカッタビット1を示す。カッタビット1は、図1に示すように、母材2と、母材2にろう付けされた刃材3とを備えている。本実施形態では、ろう付けに使用するろう材として銀ろうを使用する。
【0010】
母材2は、掘削機(カッタヘッド)に固定されて刃材3を支持する部材であって、いわゆるシャンク材である。母材2は、刃材3を決められた角度に、かつ、脱落しないように保持する。本実施形態の母材2は、刃材3よりも膨張係数が大きく、かつ、構造部材として十分な剛性、強度を有する材料により構成されている。本実施形態では、母材2を構成する材料として、SS材やSKC材等を使用するが、母材2を構成する材料は限定されるものではない。
母材2には、その先端側に開口する凹部21が形成されている。本明細書において、母材2の先端とは、母材2の前面22と背面23との角部をいう。凹部21は、母材2の先端に形成された欠損部分である。刃材3は、母材2に直接固定(ろう付け)される。
【0011】
母材2の前面22は、カッタビット1の進行方向前側の面であり、図1に示すように、先端部(刃材3)側に向うに従って後面24から離れるように傾斜している。母材2の背面23は、地山(切削面)に対向する面であり、先端部(刃材3)側に向うに従って底面25から離れるように傾斜している。背面23の延長面と前面22の延長面とが交わる角部は鋭角となる。本実施形態では、背面23に折れ点が形成されているが、背面23は平面(折れ点のない平坦な面)であってもよい。
母材2の後面24は、カッタビット1の進行方向後側の面であり、底面25は、図示せぬカッタヘッドに当接する面である。本実施形態の母材2の後面24と底面25は、直角に交わっている。なお、後面24および底面25の必ずしも直角である必要はない。また、母材2の形状は限定されない。
【0012】
母材2には、複数の硬質チップ4,4,…が埋め込まれている。硬質チップ4は、母材2の外面(底面以外の表面)に沿って配設されている。すなわち、複数の硬質チップ4,4,…は、前面22、背面23、後面24および側面に面した状態で埋め込まれている。
本実施形態の硬質チップ4は、炭化チタンや炭窒化チタンを主成分としたサーメットチップであり、切削工具等で使用した物を再利用している。図2に硬質チップ4を示す。
図2に示すように、各硬質チップ4の中央部には、切削工具等に取り付けるために設けられた貫通孔41が形成されている。図3に硬質チップ4の設置例を示す。本実施形態では、図3に示すように、同一の棒状の取付部材5が貫通孔41に挿通された複数の硬質チップ4,4,…の列を、連結部材51により連結して母材2の外面に沿って複数行並設することで、硬質チップ4を面状に配設する。
【0013】
刃材3は、断面視四角形状の超硬チップからなり、図1に示すように、母材2の前面22と背面23に沿って配設されている。本実施形態の刃材3は、母材2の先端部において前面31および背面32が露出していて、底面33および後面34が、凹部21(母材2)にろう付けされている。刃材3の前面31と背面32との交差部は鋭角となっている。一方、刃材3の前面31と底面33との交差部および底面33と後面34との交差部は直角になっていて、背面32と後面34との交差部は鈍角になっている。
【0014】
以下、本実施形態のカッタビット1の製造方法について説明する。図4にカッタビット1の製造方法を示す。カッタビット1の製造方法は、図4に示すように、鋳型形成工程S1と、チップ配置工程S2と、母材形成工程S3と、刃材固定工程S4とを備えている。図5のカッタビット1の施工状況を示す。
鋳型形成工程S1は、鋳型6を形成する工程である。本実施形態の鋳型6は、砂型であり、図5(a)に示すように、母材2の形状に応じたキャビティ61を有した状態で、砂を固めることにより形成する。キャビティ61の上面は開口(開口部62)している。
【0015】
チップ配置工程S2では、図5(b)に示すように、鋳型6の内面(キャビティ61の側面)および開口部62に沿って複数の硬質チップ4,4,…を配置する。複数の硬質チップ4,4,…は、貫通孔41に取付部材5を挿通した状態で配列する。このとき、母材2の外面に面する側の面が揃うように、隙間なく硬質チップ4を配置するのが望ましい。
本実施形態では、図5(c)に示すように、複数の硬質チップ4,4,…に貫通させた取付部材5を連結部材51により連結することで、複数の硬質チップ4,4,…の列を複数行並設させた状態で、母材2の前面、背面、後面、側面に沿って面状に配設する。すなわち、複数の硬質チップ4,4,…は、棒状の取付部材5を連結部材51を介して網状または格子状に組み合わせることにより面状に配列する。また、鋳型の開口に配設された取付部材5と、鋳型の前面、後面、両側面に配設された取付部材5とを連結するとともに、鋳型の対向する面(母材2の前面と後面、側面同士)に配設された取付部材5同士を、対向する面同士の間に横架された連結部材51により連結することで、硬質チップ4,4,…を箱型に配置する。なお、取付部材5および連結部材51には、母材2を構成する鋳ぐるみ材(例えばSS材)よりも融点が高いモリブデンやタングステン等の材料を使用することで、鋳型に鋳ぐるみ材を注入した際に溶融することを防止する。なお、取付部材5には、ステンレス等を使用してもよい。
【0016】
母材形成工程S3では、鋳型6(キャビティ61)に鋳ぐるみ材(溶かした金属)を注入して母材2を形成する。鋳型6に注入した鋳ぐるみ材が固化したら、鋳型6から母材2を取り出す。
刃材固定工程S4では、母材2の先端に刃材3を固定する。刃材3は母材2の凹部21にろう付けする。
【0017】
以上、本実施形態のカッタビット1によれば、硬質チップ4が母材2の外面に面して配設されているため、母材2の摩耗が抑制され、切削能力の長寿命化を図ることができる。そのため、カッタビット1の交換の頻度を少なくでき、手間を低減できる。
硬質チップ4は、面状に配置されているため、母材2が部分的に摩耗することが防止されている。
また、硬質チップ4は、母材2を形成する際に埋め込まれるため、製造時の手間も少ない。複数の硬質チップ4,4,…は、一面を母材2の表面に合わせて配置しているため、切削時の抵抗が硬質チップ4により増加することがない。また、硬質チップ4を隙間なく配置することで、母材2の耐摩耗性がより向上する。
また、硬質チップ4は、取付部材5により位置決めされているため、鋳ぐるみ材を注入した際に位置が偏って配置されることを防止できる。
また、硬質チップ4を貫通する取付部材5および取付部材5同士を連結する連結部材51は、母材2に埋め込まれているため、硬質チップ4が母材2から抜け出すことが防止されている。そのため、硬質チップ4による母材2の摩耗抑制効果が長期的に維持され、その結果、カッタビット1の長寿命化が可能となる。
硬質チップ4に使用済のサーメットチップを使用することで、材料コストの低減化、および、廃材の有効利用が実現されている。また、硬質チップ4として、使用済みのサーメットチップを加工せずにそのまま使用できるため、加工等に要する手間を省略できる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、カッタビット1をシールドマシンに用いる場合について説明したが、カッタビット1を使用する掘削機は限定されるものではなく、例えば、トンネルボーリングマシンや推進工法における掘進機等に使用してもよい。
刃材3の母材2への固定方法はろう付けに限定されるものではない。また、ろう付けに使用するろう材は、銀ろうに限定されるものではない。
前記実施形態では、硬質チップ4として、使用済みのサーメットチップを再利用するものとしたが、硬質チップ4は、新品の材料であってもよい。また、硬質チップ4の材質は限定されるものではない。
硬質チップ4を鋳型に設置する際に使用する取付部材5の構成は限定されるものではない。例えば、図6(a)に示すように、取付部材5としてアンカー52(Jフック、Lフック等)を使用してもよい。このとき、アンカー52同士を連結すれば、硬質チップ4の抜け出しを防止できる。また、図6(b)に示すように、複数のアンカー52の一端部同士を結束すれば、硬質チップ4を配置作業がより容易になる。この場合には、各アンカー52の中間部において、アンカー52同士を連結部材51を介して連結するのが好ましい。
【符号の説明】
【0019】
1 カッタビット
2 母材
21 凹部
22 前面
23 背面
24 後面
25 底面
3 刃材
31 前面
32 背面
33 後面
34 底面
4 硬質チップ
41 貫通孔
5 取付部材
51 連結部材
6 鋳型
61 キャビティ
62 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6