(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088052
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230619BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20230619BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20230619BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230619BHJP
B24D 5/00 20060101ALI20230619BHJP
B24D 9/04 20060101ALI20230619BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
B24B19/02
B24B1/00 A
B24B27/06 D
B24B27/06 Q
B24D5/00 P
B24D9/04
B28D5/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202679
(22)【出願日】2021-12-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(71)【出願人】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【テーマコード(参考)】
3C049
3C063
3C069
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA03
3C049AA09
3C049AB04
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB03
3C049CB05
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BA24
3C063EE10
3C063EE23
3C063EE29
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB04
3C069BC02
3C069CA04
3C069EA01
3C069EA02
3C158AA05
3C158AA14
3C158CA02
3C158DA03
3C158DA12
5F057AA12
5F057AA41
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB07
5F057BB08
5F057BB09
5F057CA01
5F057CA02
5F057CA18
5F057DA03
5F057DA11
5F057DA15
5F057EB16
5F057EB17
5F057EB24
5F057EB27
5F057FA13
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、溝加工工程(STEP100/
図1)に先立つパッド溝形成工程(STEP10/
図1)と、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)と、溝加工工程(STEP100/
図1)に続く研磨工程(STEP110/
図1)と、切断工程(STEP120/
図1)と、第1面加工工程(STEP130/
図1)と、第2面加工工程(STEP140/
図1)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝を研磨するための円筒状のパッドであって、側面全体に前記複数の凸溝に対応した複数のパッド溝が形成された研磨パッドと、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソーであって、該複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸溝に対応したボビン溝が形成されたワイヤーソー装置と
を備えることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
少なくとも前記溝加工ドラム砥石により前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する際に使用される、該半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備えることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する切断工程と
を備え、
前記溝加工工程に先立って、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する、前記複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を用いて、該溝加工工程により形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドの側面全体に前記複数の凸溝に対応した複数のパッド溝を形成するパッド溝形成工程と、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する前記溝加工ドラム砥石を用いて、前記切断工程で使用する、前記複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸溝に対応したボビン溝を形成するボビン溝形成工程と
が実行され、
前記溝加工工程では、前記溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成すると共に、前記パッド溝加工工程によりパッド溝が形成された研磨パッドを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら該半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を研磨し、
前記切断工程では、前記ボビン溝形成工程により形成された複数のボビン溝にそれぞれワイヤーが配置されたワイヤーソーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体結晶ウェハの製造方法において、
前記パッド溝形成工程は、
前記溝加工ドラム砥石を、円筒状のパッド溝加工砥石の側面全体に圧接して前記複数の凸溝に対応したパッド加工溝を形成し、
前記パッド加工溝が形成された前記パッド溝加工砥石を、前記研磨パッドの側面全体に圧接して該複数の凸溝に対応した複数のパッド溝を形成することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の半導体結晶ウェハの製造方法において、
少なくとも前記溝加工工程において、前記半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して該半導体結晶インゴットが回転自在に支持されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝を研磨するための円筒状のパッドであって、側面全体に前記複数の凸溝に対応した複数のパッド溝が形成された研磨パッドと、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソーであって、該複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸溝に対応したボビン溝が形成されたワイヤーソー装置と
を備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、(1)半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、これに対応させた2つの追加部材の合計3部材から構成される。
【0009】
(2)追加部材の1つ目の部材は、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドであって、側面全体に前記複数の凸溝に対応した複数のパッド溝が形成されている。
【0010】
(3)追加部材の2つ目の部材は、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させるワイヤーソー装置であって、ワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸溝に対応したボビン溝が形成されている。
【0011】
そして、これら(1)溝加工ドラム砥石と、(2)研磨パッドと、(3)ワイヤーソー装置とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、(2)ピッチが正確に一致する研磨パッドにより凹溝に沿った研磨をすることができると共に、(3)凹溝と同一形状のワイヤーボビンを介して周回するワイヤーにより、複数の凹溝に正確に配置された複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0012】
加えて、スライス状に切断されて得られる半導体ウェアは、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッドにより角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0013】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0014】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明において、
少なくとも前記溝加工ドラム砥石により前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する際に使用される、該半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に複数の凹溝を形成する際に少なくとも使用する、半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備える。
【0016】
これにより、一対の保護板により、半導体結晶インゴットの両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝を両端面の際まで形成することができ、ひいては、半導体結晶ウェハをより多く切断して得ることができる。
【0017】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、精度よく半導体結晶インゴットをより多くスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に効率よく製造することができる。
【0018】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する切断工程と
を備え、
前記溝加工工程に先立って、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する、前記複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を用いて、該溝加工工程により形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドの側面全体に前記複数の凸溝に対応した複数のパッド溝を形成するパッド溝形成工程と、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する前記溝加工ドラム砥石を用いて、前記切断工程で使用する、前記複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸溝に対応したボビン溝を形成するボビン溝形成工程と
が実行され、
前記溝加工工程では、前記溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成すると共に、前記パッド溝加工工程によりパッド溝が形成された研磨パッドを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら該半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を研磨し、
前記切断工程では、前記ボビン溝形成工程により形成された複数のボビン溝にそれぞれワイヤーが配置されたワイヤーソーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断することを特徴とする。
【0019】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、(1)半導体結晶インゴットの側面全体に溝加工ドラムの複数の凸溝に対応した凹溝を形成する溝加工工程に先立って、当該溝加工ドラム(複数の凸溝)を用いて、次の2つの工程が実行される。
【0020】
まず、1つ目の工程は、(2)パッド溝形成工程により、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドであって、側面全体に複数の凸溝に対応した複数のパッド溝が形成される。
【0021】
2つ目の工程は、(3)ボビン溝形成工程により、切断工程で使用する、複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に複数の凸溝に対応したボビン溝が形成される。
【0022】
そして、これら(1)溝加工ドラム砥石と、(2)研磨パッドと、(3)ワイヤーソー装置とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工工程において、溝加工ドラムによって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、(2)研磨工程において、ピッチが正確に一致する研磨パッドにより凹溝に沿った研磨をすることができると共に、(3)切断工程において、凹溝と同一形状のワイヤーボビンを介して周回するワイヤーにより、複数の凹溝に正確に配置された複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0023】
加えて、スライス状に切断されて得られる半導体ウェアは、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッドにより角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0024】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0025】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、第3発明において、
前記パッド溝形成工程は、
前記溝加工ドラム砥石を、円筒状のパッド溝加工砥石の側面全体に圧接して前記複数の凸溝に対応したパッド加工溝を形成し、
前記パッド加工溝が形成された前記パッド溝加工砥石を、前記研磨パッドの側面全体に圧接して該複数の凸溝に対応した複数のパッド溝を形成することを特徴とする。
【0026】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、パッド溝形成工程において、予め、複数の凸溝に対応したパッド加工溝を形成したパッド溝加工砥石を準備する。そして、該パッド溝加工砥石により、研磨パッドの側面全体に圧接してパット加工溝に対応した複数のパッド溝を形成することで、該パット溝を、溝加工ドラム砥石の複数の凸溝と同一形状とすることができる。
【0027】
これにより、研磨工程において、研磨パッドにより複数の凹溝にぴったり一致する複数のパッド溝により該凹溝を研磨することができる。
【0028】
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、より研磨性を向上させて、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0029】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、第3発明または第4発明において、
少なくとも前記溝加工工程において、前記半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して該半導体結晶インゴットが回転自在に支持されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【0030】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、少なくとも、半導体結晶インゴットの側面全体に複数の凹溝を形成する溝加工工程において、半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して半導体結晶インゴットが回転自在に支持される。
【0031】
これにより、一対の保護板により、半導体結晶インゴットの両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝を両端面の際まで形成することができ、ひいては、半導体結晶ウェハをより多く切断して得ることができる。
【0032】
このように、第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをより多くスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
【
図2】
図1のSiCウェハの製造方法におけるパット溝形成工程、ボビン溝形成工程および溝加工工程により構成される本実施形態のSiCウェハの製造装置を示す説明図。
【
図3】
図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程、研磨工程および切断工程の内容を示す説明図。
【
図4】
図1のSiCウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【
図5】
図2のSiCウェハの製造装置の変更例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/
図1)に先立つパッド溝形成工程(STEP10/
図1)と、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)と、溝加工工程(STEP100/
図1)に続く研磨工程(STEP110/
図1)と、切断工程(STEP120/
図1)と、第1面加工工程(STEP130/
図1)と、第2面加工工程(STEP140/
図1)とを備える。
【0035】
図2~
図4を参照して各工程の詳細および本実施形態のSiCウェハの製造装置について説明する。
【0036】
図2に示すパッド溝形成工程(STEP10/
図1)と、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)とでは、溝加工工程(STEP100/
図1)において使用する溝加工ドラム砥石20を共通に用いて、以下の加工を行う。
【0037】
溝加工ドラム砥石20は、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11を形成するためのドラム砥石であって、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面に形成されている。
【0038】
まず、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)では、複数の凹溝11を研磨するための円筒状の研磨パッド30に対する加工であって、研磨パッド30と溝加工ドラム砥石20とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、溝加工ドラム砥石20を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体に複数の凸溝21に対応した複数のパッド溝31が形成される。
【0039】
このとき、研磨パッド30は、(必要に応じて適度な水分を含ませた上で)冷凍させることにより固化させた状態でパット溝31が形成される。そして、パット溝31が形成された研磨パット30は、解凍(必要に応じて乾燥)処理した後で、以下の工程で用いられる。
【0040】
また、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)では、切断工程(STEP120/
図1)で使用するワイヤーソー装置4の複数のワイヤー42を周回させるワイヤーソーボビン40に対する加工であって、ワイヤーソーボビン40と溝加工ドラム砥石20とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、溝加工ドラム砥石20をワイヤーソーボビン40に圧接することによりワイヤーソーボビン40の側面全体に複数の凸溝21に対応した複数のボビン溝41が形成される。
【0041】
なお、本実施形態では、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)からボビン溝形成工程(STEP20/
図1)の順番で加工を行っているが、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)からパッド溝形成工程(STEP10/
図1)の順番で加工をおこなってもよい。
【0042】
次に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、共通の溝加工ドラム砥石20により、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0043】
具体的に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面全体に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0044】
このとき、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される。
【0045】
保護板15は、例えば、ポリ塩化ビニールなどの合成樹脂であり、SiCインゴット10とは必要に応じて接着剤などを介して接合される。
【0046】
かかる一対の保護板15,15により、SiCインゴット10の両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝11を両端面の際まで形成することができ、ひいては、後述するSiCウェハ100をより多く切断して得ることができる。
【0047】
また、SiCインゴット10を回転軸に挟持して固定する際に、必要に応じて保護板15,15を加工(例えば、穴あけ)して固定することができる。加えて、この場合にも、SiCインゴット10自体の加工を伴わないため、SiCインゴット10を傷めることもない。
【0048】
以上の加工工程により形成されたSiCインゴット10の複数の凹溝11と、研磨パッド30の複数のパッド溝31と、ワイヤーソーボビン40の複数のボビン溝41とは、溝加工ドラム砥石20の複数の凸溝21に対応した同一形状となっている。
【0049】
そのため、
図3に示すように、溝加工工程(STEP100/
図1)でSiCインゴット10に複数の凹溝11を形成するとほぼ同時に、研磨工程(STEP110/
図1)において、凹溝11とピッチが同一の研磨パッド30の複数のパッド凸部32(隣接する2つのパッド溝31,31間の凸部)により、凹溝11に沿った研磨をすることができる。
【0050】
ここで、研磨工程(STEP110/
図1)では、CMPスラリー(化学的機械的液体研磨剤)を介して研磨してもよいが、研磨パッド30の表面に一時的にまたは連続的に粉末研磨剤(バフ研磨剤)を添加するようにしてもよい。
【0051】
なお、研磨パッド30の表面への粉末研磨剤(バフ研磨剤)の添加は、例えば、後述するパッド溝加工砥石20´と同一形状のバフに粉末研磨剤(バフ研磨剤)を塗布しておき、かかるバフを研磨パッド30の表面に一時的にまたは連続的に接触させることにより行ってもよい。
【0052】
さらに、切断工程(STEP120/
図1)では、溝加工工程(STEP100/
図1)において形成された複数の凹溝11に、切断加工装置であるワイヤーソー装置4の複数のワイヤー42を配置し、ワイヤー42を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断する。
【0053】
このとき、複数の凹溝11と同一形状のボビン溝11が形成されたワイヤーボビン40を介してワイヤー42が周回することにより、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー42で精度よくSiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができる。
【0054】
加えて、スライス状に切断されて得られるSiCウェア100は、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッド30により角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0055】
なお、本実施形態の半導体結晶ウェハ(SiCウェハ)の製造装置(切断装置)の構成としては、上述の溝加工ドラム砥石20と、研磨パッド30と、ワイヤーソー装置40により構成される。
【0056】
次に、
図4に示すように、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0057】
具体的には、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0058】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0059】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0060】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより他面120に研削加工が施される。
【0061】
なお、研削加工後には、ドレッサー等によりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0062】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0063】
次に、第2面加工工程(STEP140/
図1)では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0064】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0065】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサー等をダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0066】
かかる第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断研磨工程により得られた高い平坦性を有するトランスファレス切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0067】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0068】
なお、第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0069】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法および装置によれば、(1)溝加工ドラム砥石20と、(2)研磨パッド30と、(3)ワイヤーソー装置4とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工ドラム砥石20によってSiCインゴット10の側面全体に形成された複数の凹溝11に対して、(2)ピッチが正確に一致する研磨パッド30により凹溝11に沿った研磨をすることができると共に、(3)凹溝11と同一形状のボビン溝41を有するワイヤーボビン40を介して周回するワイヤー42により、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー41で精度よくSiCインゴット10をスライス状に1回で切断することができ、高品質なSiCウェハ100を簡易かつ確実に製造することができる。
【0070】
なお、上記実施形態において、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)は、パット溝31およびパッド凸部32が、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11(溝加工ドラム砥石20の複数の凸溝21)と同一形状となるように変更されてもよい。
【0071】
具体的には、
図5に示すように、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)おいて、予め、円筒状のパッド溝加工砥石20´を準備し、溝加工ドラム砥石20とパッド溝加工砥石20´とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら圧接することにより、複数の凸溝21に対応したパッド加工溝21´(パッド加工凸部22´)をパッド溝加工砥石20´に形成する。
【0072】
次いで、パッド溝加工砥石20´と研磨パッド30とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、パッド溝加工砥石20´を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体にパッド加工溝21´(パッド加工凸部22´)に対応した複数のパッド溝31´を形成する。
【0073】
これにより、研磨工程(STEP110/
図1)において、研磨パッド30´により複数の凹溝11にぴったり一致する複数のパッド凸部32´により凹溝11を研磨することができ、研磨性をより向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェア洗浄工程が行われてもよい。
【0075】
また、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【0076】
さらに、本実施形態では、溝加工工程(STEP100/
図1)において、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0077】
例えば、溝加工工程(STEP100/
図1)において、一対の保護板15,15を省略して回転軸に直接SiCインゴット10を固定してもよい。
【0078】
また、溝加工工程(STEP100/
図1)以外の工程、例えば、研磨工程(STEP110/
図1)や切断工程(STEP120/
図1)においても、SiCインゴット10の両端面を一対の保護板15,15により保護した状態で加工処理を行うようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、
図3において、同一の縦方向において、溝加工工程(STEP100/
図1)と研磨工程(STEP110/
図1)とが同時に行われる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、溝加工工程(STEP100/
図1)が縦方向で行われると共に、研磨工程(STEP110/
図1)が横方向で同時に行われてもよく、その逆に、溝加工工程(STEP100/
図1)が横方向で行われると共に、研磨工程(STEP110/
図1)が縦方向で同時に行われてもよい。また、溝加工工程(STEP100/
図1)の後に、研磨工程(STEP110/
図1)が行われてもよい。
【0081】
さらに、本実施形態では、
図2,
図3,
図5において、SiCインゴット10、溝加工ドラム砥石20、研磨パッド30などが横たわった状態の配置で説明したが、これに限定されるものではなく、これらを立てた状態で加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…SiC結晶(半導体結晶)、4…ワイヤーソー装置、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、15,15…一対の保護板、20…溝加工ドラム砥石、20´…パッド溝加工砥石、21…凸部、21´…パッド加工溝、22´…パッド加工凸部、30…研磨パッド、31,31,31´…パッド溝、32,32´…パッド凸部、40…ワイヤーソーボビン、41…ボビン溝、42…ワイヤー、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝を研磨するための円筒状のパッドであって、側面全体に前記複数の凸部に対応した複数のパッド溝が形成された研磨パッドと、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソーであって、該複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸部に対応したボビン溝が形成されたワイヤーソー装置と
を備えることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
少なくとも前記溝加工ドラム砥石により前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する際に使用される、該半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備えることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する切断工程と
を備え、
前記溝加工工程に先立って、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する、前記複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を用いて、該溝加工工程により形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドの側面全体に前記複数の凸部に対応した複数のパッド溝を形成するパッド溝形成工程と、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する前記溝加工ドラム砥石を用いて、前記切断工程で使用する、前記複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸部に対応したボビン溝を形成するボビン溝形成工程と
が実行され、
前記溝加工工程では、前記溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成すると共に、前記パッド溝形成工程によりパッド溝が形成された研磨パッドを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら該半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を研磨し、
前記切断工程では、前記ボビン溝形成工程により形成された複数のボビン溝にそれぞれワイヤーが配置されたワイヤーソーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体結晶ウェハの製造方法において、
前記パッド溝形成工程は、
前記溝加工ドラム砥石を、円筒状のパッド溝加工砥石の側面全体に圧接して前記複数の凸部に対応したパッド加工溝を形成し、
前記パッド加工溝が形成された前記パッド溝加工砥石を、前記研磨パッドの側面全体に圧接して該複数の凸部に対応した複数のパッド溝を形成することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の半導体結晶ウェハの製造方法において、
少なくとも前記溝加工工程において、前記半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して該半導体結晶インゴットが回転自在に支持されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成するためのドラム砥石であって、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、
前記複数の凹溝を研磨するための円筒状のパッドであって、側面全体に前記複数の凸部に対応した複数のパッド溝が形成された研磨パッドと、
前記複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断するワイヤーソーであって、該複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸部に対応したボビン溝が形成されたワイヤーソー装置と
を備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、(1)半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する、該複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石と、これに対応させた2つの追加部材の合計3部材から構成される。
【0009】
(2)追加部材の1つ目の部材は、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドであって、側面全体に前記複数の凸部に対応した複数のパッド溝が形成されている。
【0010】
(3)追加部材の2つ目の部材は、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させるワイヤーソー装置であって、ワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸部に対応したボビン溝が形成されている。
【0011】
そして、これら(1)溝加工ドラム砥石と、(2)研磨パッドと、(3)ワイヤーソー装置とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、(2)ピッチが正確に一致する研磨パッドにより凹溝に沿った研磨をすることができると共に、(3)凹溝と同一形状のワイヤーボビンを介して周回するワイヤーにより、複数の凹溝に正確に配置された複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0012】
加えて、スライス状に切断されて得られる半導体ウェハは、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッドにより角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0013】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0014】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明において、
少なくとも前記溝加工ドラム砥石により前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する際に使用される、該半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備えることを特徴とする。
【0015】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、溝加工ドラム砥石によって半導体結晶インゴットの側面全体に複数の凹溝を形成する際に少なくとも使用する、半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を備える。
【0016】
これにより、一対の保護板により、半導体結晶インゴットの両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝を両端面の際まで形成することができ、ひいては、半導体結晶ウェハをより多く切断して得ることができる。
【0017】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、精度よく半導体結晶インゴットをより多くスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に効率よく製造することができる。
【0018】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断する切断工程と
を備え、
前記溝加工工程に先立って、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する、前記複数の凹溝に対応した複数の凸部が側面に形成された溝加工ドラム砥石を用いて、該溝加工工程により形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドの側面全体に前記複数の凸部に対応した複数のパッド溝を形成するパッド溝形成工程と、
前記溝加工工程において前記半導体結晶インゴットに圧接して使用する前記溝加工ドラム砥石を用いて、前記切断工程で使用する、前記複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に前記複数の凸部に対応したボビン溝を形成するボビン溝形成工程と
が実行され、
前記溝加工工程では、前記溝加工ドラム砥石を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら前記半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を形成すると共に、前記パッド溝形成工程によりパッド溝が形成された研磨パッドを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら該半導体結晶インゴットに圧接することにより該凹溝を研磨し、
前記切断工程では、前記ボビン溝形成工程により形成された複数のボビン溝にそれぞれワイヤーが配置されたワイヤーソーにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断することを特徴とする。
【0019】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、(1)半導体結晶インゴットの側面全体に溝加工ドラムの複数の凸部に対応した凹溝を形成する溝加工工程に先立って、当該溝加工ドラム(複数の凸部)を用いて、次の2つの工程が実行される。
【0020】
まず、1つ目の工程は、(2)パッド溝形成工程により、半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝を研磨するための円筒状の研磨パッドであって、側面全体に複数の凸部に対応した複数のパッド溝が形成される。
【0021】
2つ目の工程は、(3)ボビン溝形成工程により、切断工程で使用する、複数のワイヤーを周回させるワイヤーソーボビンの側面全体に複数の凸部に対応したボビン溝が形成される。
【0022】
そして、これら(1)溝加工ドラム砥石と、(2)研磨パッドと、(3)ワイヤーソー装置とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工工程において、溝加工ドラムによって半導体結晶インゴットの側面全体に形成された複数の凹溝に対して、(2)研磨工程において、ピッチが正確に一致する研磨パッドにより凹溝に沿った研磨をすることができると共に、(3)切断工程において、凹溝と同一形状のワイヤーボビンを介して周回するワイヤーにより、複数の凹溝に正確に配置された複数のワイヤーで精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0023】
加えて、スライス状に切断されて得られる半導体ウェハは、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッドにより角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0024】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0025】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、第3発明において、
前記パッド溝形成工程は、
前記溝加工ドラム砥石を、円筒状のパッド溝加工砥石の側面全体に圧接して前記複数の凸部に対応したパッド加工溝を形成し、
前記パッド加工溝が形成された前記パッド溝加工砥石を、前記研磨パッドの側面全体に圧接して該複数の凸部に対応した複数のパッド溝を形成することを特徴とする。
【0026】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、パッド溝形成工程において、予め、複数の凸部に対応したパッド加工溝を形成したパッド溝加工砥石を準備する。そして、該パッド溝加工砥石により、研磨パッドの側面全体に圧接してパット加工溝に対応した複数のパッド溝を形成することで、該パット溝を、溝加工ドラム砥石の複数の凸部と同一形状とすることができる。
【0027】
これにより、研磨工程において、研磨パッドにより複数の凹溝にぴったり一致する複数のパッド溝により該凹溝を研磨することができる。
【0028】
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、より研磨性を向上させて、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0029】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、第3発明または第4発明において、
少なくとも前記溝加工工程において、前記半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して該半導体結晶インゴットが回転自在に支持されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【0030】
第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、少なくとも、半導体結晶インゴットの側面全体に複数の凹溝を形成する溝加工工程において、半導体結晶インゴットの両端面を保護する一対の保護板を介して半導体結晶インゴットが回転自在に支持される。
【0031】
これにより、一対の保護板により、半導体結晶インゴットの両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝を両端面の際まで形成することができ、ひいては、半導体結晶ウェハをより多く切断して得ることができる。
【0032】
このように、第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをより多くスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
【
図2】
図1のSiCウェハの製造方法におけるパット溝形成工程、ボビン溝形成工程および溝加工工程により構成される本実施形態のSiCウェハの製造装置を示す説明図。
【
図3】
図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程、研磨工程および切断工程の内容を示す説明図。
【
図4】
図1のSiCウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【
図5】
図2のSiCウェハの製造装置の変更例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/
図1)に先立つパッド溝形成工程(STEP10/
図1)と、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)と、溝加工工程(STEP100/
図1)に続く研磨工程(STEP110/
図1)と、切断工程(STEP120/
図1)と、第1面加工工程(STEP130/
図1)と、第2面加工工程(STEP140/
図1)とを備える。
【0035】
図2~
図4を参照して各工程の詳細および本実施形態のSiCウェハの製造装置について説明する。
【0036】
図2に示すパッド溝形成工程(STEP10/
図1)と、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)とでは、溝加工工程(STEP100/
図1)において使用する溝加工ドラム砥石20を共通に用いて、以下の加工を行う。
【0037】
溝加工ドラム砥石20は、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11を形成するためのドラム砥石であって、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面に形成されている。
【0038】
まず、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)では、複数の凹溝11を研磨するための円筒状の研磨パッド30に対する加工であって、研磨パッド30と溝加工ドラム砥石20とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、溝加工ドラム砥石20を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体に複数の凸
部21に対応した複数のパッド溝31が形成される。
【0039】
このとき、研磨パッド30は、(必要に応じて適度な水分を含ませた上で)冷凍させることにより固化させた状態でパット溝31が形成される。そして、パット溝31が形成された研磨パット30は、解凍(必要に応じて乾燥)処理した後で、以下の工程で用いられる。
【0040】
また、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)では、切断工程(STEP120/
図1)で使用するワイヤーソー装置4の複数のワイヤー42を周回させるワイヤーソーボビン40に対する加工であって、ワイヤーソーボビン40と溝加工ドラム砥石20とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、溝加工ドラム砥石20をワイヤーソーボビン40に圧接することによりワイヤーソーボビン40の側面全体に複数の凸
部21に対応した複数のボビン溝41が形成される。
【0041】
なお、本実施形態では、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)からボビン溝形成工程(STEP20/
図1)の順番で加工を行っているが、ボビン溝形成工程(STEP20/
図1)からパッド溝形成工程(STEP10/
図1)の順番で加工をおこなってもよい。
【0042】
次に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、共通の溝加工ドラム砥石20により、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0043】
具体的に、溝加工工程(STEP100/
図1)では、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面全体に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0044】
このとき、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される。
【0045】
保護板15は、例えば、ポリ塩化ビニールなどの合成樹脂であり、SiCインゴット10とは必要に応じて接着剤などを介して接合される。
【0046】
かかる一対の保護板15,15により、SiCインゴット10の両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝11を両端面の際まで形成することができ、ひいては、後述するSiCウェハ100をより多く切断して得ることができる。
【0047】
また、SiCインゴット10を回転軸に挟持して固定する際に、必要に応じて保護板15,15を加工(例えば、穴あけ)して固定することができる。加えて、この場合にも、SiCインゴット10自体の加工を伴わないため、SiCインゴット10を傷めることもない。
【0048】
以上の加工工程により形成されたSiCインゴット10の複数の凹溝11と、研磨パッド30の複数のパッド溝31と、ワイヤーソーボビン40の複数のボビン溝41とは、溝加工ドラム砥石20の複数の凸部21に対応した同一形状となっている。
【0049】
そのため、
図3に示すように、溝加工工程(STEP100/
図1)でSiCインゴット10に複数の凹溝11を形成するとほぼ同時に、研磨工程(STEP110/
図1)において、凹溝11とピッチが同一の研磨パッド30の複数のパッド凸部32(隣接する2つのパッド溝31,31間の凸部)により、凹溝11に沿った研磨をすることができる。
【0050】
ここで、研磨工程(STEP110/
図1)では、CMPスラリー(化学的機械的液体研磨剤)を介して研磨してもよいが、研磨パッド30の表面に一時的にまたは連続的に粉末研磨剤(バフ研磨剤)を添加するようにしてもよい。
【0051】
なお、研磨パッド30の表面への粉末研磨剤(バフ研磨剤)の添加は、例えば、後述するパッド溝加工砥石20´と同一形状のバフに粉末研磨剤(バフ研磨剤)を塗布しておき、かかるバフを研磨パッド30の表面に一時的にまたは連続的に接触させることにより行ってもよい。
【0052】
さらに、切断工程(STEP120/
図1)では、溝加工工程(STEP100/
図1)において形成された複数の凹溝11に、切断加工装置であるワイヤーソー装置4の複数のワイヤー42を配置し、ワイヤー42を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断する。
【0053】
このとき、複数の凹溝11と同一形状のボビン溝11が形成されたワイヤーボビン40を介してワイヤー42が周回することにより、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー42で精度よくSiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができる。
【0054】
加えて、スライス状に切断されて得られるSiCウェハ100は、いずれもその周縁がピッチが正確に一致した研磨パッド30により角部が均一に面取りされているため、切断後に改めて面取り加工などを施す必要もない。
【0055】
なお、本実施形態の半導体結晶ウェハ(SiCウェハ)の製造装置(切断装置)の構成としては、上述の溝加工ドラム砥石20と、研磨パッド30と、ワイヤーソー装置40により構成される。
【0056】
次に、
図4に示すように、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0057】
具体的には、第1面加工工程(STEP130/
図1)では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0058】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0059】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0060】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより他面120に研削加工が施される。
【0061】
なお、研削加工後には、ドレッサー等によりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0062】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0063】
次に、第2面加工工程(STEP140/
図1)では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0064】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0065】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサー等をダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0066】
かかる第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断研磨工程により得られた高い平坦性を有するトランスファレス切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0067】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0068】
なお、第1面加工工程(STEP130/
図1)および第2面加工工程(STEP140/
図1)の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0069】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法および装置によれば、(1)溝加工ドラム砥石20と、(2)研磨パッド30と、(3)ワイヤーソー装置4とが対応した凹凸の溝形状となっていることから、(1)溝加工ドラム砥石20によってSiCインゴット10の側面全体に形成された複数の凹溝11に対して、(2)ピッチが正確に一致する研磨パッド30により凹溝11に沿った研磨をすることができると共に、(3)凹溝11と同一形状のボビン溝41を有するワイヤーボビン40を介して周回するワイヤー42により、複数の凹溝11に正確に配置された複数のワイヤー41で精度よくSiCインゴット10をスライス状に1回で切断することができ、高品質なSiCウェハ100を簡易かつ確実に製造することができる。
【0070】
なお、上記実施形態において、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)は、パット溝31およびパッド凸部32が、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11(溝加工ドラム砥石20の複数の凸
部21)と同一形状となるように変更されてもよい。
【0071】
具体的には、
図5に示すように、パッド溝形成工程(STEP10/
図1)おいて、予め、円筒状のパッド溝加工砥石20´を準備し、溝加工ドラム砥石20とパッド溝加工砥石20´とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら圧接することにより、複数の凸
部21に対応したパッド加工溝21´(パッド加工凸部22´)をパッド溝加工砥石20´に形成する。
【0072】
次いで、パッド溝加工砥石20´と研磨パッド30とを互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながら、パッド溝加工砥石20´を研磨パッド30に圧接することにより研磨パッド30の側面全体にパッド加工溝21´(パッド加工凸部22´)に対応した複数のパッド溝31´を形成する。
【0073】
これにより、研磨工程(STEP110/
図1)において、研磨パッド30´により複数の凹溝11にぴったり一致する複数のパッド凸部32´により凹溝11を研磨することができ、研磨性をより向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェハ洗浄工程が行われてもよい。
【0075】
また、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【0076】
さらに、本実施形態では、溝加工工程(STEP100/
図1)において、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0077】
例えば、溝加工工程(STEP100/
図1)において、一対の保護板15,15を省略して回転軸に直接SiCインゴット10を固定してもよい。
【0078】
また、溝加工工程(STEP100/
図1)以外の工程、例えば、研磨工程(STEP110/
図1)や切断工程(STEP120/
図1)においても、SiCインゴット10の両端面を一対の保護板15,15により保護した状態で加工処理を行うようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、
図3において、同一の縦方向において、溝加工工程(STEP100/
図1)と研磨工程(STEP110/
図1)とが同時に行われる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、溝加工工程(STEP100/
図1)が縦方向で行われると共に、研磨工程(STEP110/
図1)が横方向で同時に行われてもよく、その逆に、溝加工工程(STEP100/
図1)が横方向で行われると共に、研磨工程(STEP110/
図1)が縦方向で同時に行われてもよい。また、溝加工工程(STEP100/
図1)の後に、研磨工程(STEP110/
図1)が行われてもよい。
【0081】
さらに、本実施形態では、
図2,
図3,
図5において、SiCインゴット10、溝加工ドラム砥石20、研磨パッド30などが横たわった状態の配置で説明したが、これに限定されるものではなく、これらを立てた状態で加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…SiC結晶(半導体結晶)、4…ワイヤーソー装置、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、15,15…一対の保護板、20…溝加工ドラム砥石、20´…パッド溝加工砥石、21…凸部、21´…パッド加工溝、22´…パッド加工凸部、30…研磨パッド、31,31,31´…パッド溝、32,32´…パッド凸部、40…ワイヤーソーボビン、41…ボビン溝、42…ワイヤー、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。